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一方通行「帰ンぞ 欠陥電気」

420 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/13(火) 02:22:45.40 ID:cbAJjCg0 [2/11]
>>375の続き








「―ッ」

意識を覚醒させた一方通行は、布団を跳ね除け上半身を起こした。
その呼吸は荒く、顔は強張って額からは汗が滲み出ている。
一方通行は右手で額を押さえ、焦燥感にかられるように働かない頭を動かしあやふやな記憶を辿った。
(待て待て待て、どォなってやがンだ……!)
今自分は自宅にいる。どういうわけか布団で寝ていた。
それはありえない、自分は家には戻って…いや、戻ってきた。
(欠陥電気と飯を食って……)
記憶を消すこともできず欠陥電気を逃がしてしまった。
そして、実験の関係者であろう男達を退けた後、超電磁砲が現れ自分は欠陥電気を抱え―――――

「―――――クソがァッ!!」

一方通行は手元にあった杖を乱暴に投げつける。
杖は大きな音を立てて壁に当たると、カラン、と一度バウンドし床に落ちた。

「……ち、きしょォお…………ッ」

ありえない。ありえない。ありえてはならない。
結局自分は全て投げ出して何一つ目的を果たすことが出来ず、一切合財を欠陥電気に押し付けた。
記憶を消すことも。殺すことも。実験のことを隠し通すことも。何一つ出来なかった。
記憶を消すことを躊躇い。殺すべきタイミングを逃し。残酷な現実を突きつけた。

「…………救いようがねェ、バカ…野朗だ…」



421 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/13(火) 02:24:38.99 ID:cbAJjCg0



一体自分は何をしていた?
打ち止めから、欠陥電気から時間を奪った自分は何が出来た?
悪党にハッピーエンドは相応しくない?
ハッピーエンドどころか、バッドエンドに突き落とされたのは誰だ?
バッドエンドに突き落としたのは誰だ?

「ハッ、クソ過ぎて、笑いもでねェ……」

一方通行はそう呟くと、自嘲的な笑みを浮かべ哂う。
それはとても空虚で乾いた笑いだった。
結局自分はそういう人間なのだと、諦めと失望を抱いた老人のような声だった。

分かっていたはずだ。
芳川と会って欠陥電気を地獄に叩き落したのは他ならぬ自分。筋書きはすでに出来上がっていた。
そして見事にそれを演じきった。最低の結末まで運びきって、考えうる最悪まで持っていった。
最早欠陥電気にこれ以上の絶望はない。
そうだ。自分は完膚なきまでに欠陥電気をズタズタに引き裂いた。
引き裂いた筈なのだ。だというのに彼女は――――――

「クソったれがァアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

許せない。許せる筈がない。許して置けることなどできない。許されると思っているのか―――――――――自分は。
壊したい。殺したい。全てを。何もかも粉々になるまで破壊したい。自分を。学園都市を。世界を。




422 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/13(火) 02:26:52.17 ID:cbAJjCg0



「一方通行っ!!」

打ち止めは自分を責めた。
今はそっとして置いた方が一方通行の為だと思っていたが、それが大きな勘違いだと気付いて。
一方通行の絶叫は悲しすぎた。心が張り裂けそうなその叫びは、ずっと自分を責めている。
それは違う。一方通行だけじゃない。自分も何も出来なかったのだ。
その絶叫は二人のものなのだ。

一方通行に全てを押し付けたのは自分。知っていて、分かっていて何もしなかった。何も出来なかった。
芳川のところで一方通行が知ったことを、自分は全て知っていた。
当然だ、芳川はそもそも妹達の協力でその情報を掴むことが出来たのだから。
妹達の上位存在である自分が知らない筈がない。その上で、何もしなかった。
自分だけ暖かい日向の中を歩いていた。何も知らない欠陥電気を嘲笑うようにして。一人孤独に苦しんでいる一方通行を見ない振りをして。

本当に何もしなかったかと言えば嘘になる。
必死で探した。欠陥電気が助かる方法を。欠陥電気を助ける手段を。
違う。これも嘘だ。自分は欠陥電気を切り捨てた。
欠陥電気の厳しい状況を知った段階で、NW内の情報規制を開始し、
実験の開始が決定されたときには、その情報に触れた個体をNWから締め出した。
だから、まだ殆どの個体がこの事態を知らない。
下手に騒いで、下手に動いて事態の混乱を避けたいという欺瞞を使って。
欠陥電気がそのことに気付けないようにと、欠陥電気のことを思っての行動だと自分を騙して。
一昨日、あの人とシスターと会ったと言った欠陥電気の規制を解除したのは、単に責任を放棄しただけ。
欠陥電気の判断に任せるなんて、奇麗事で誤魔化した酷く自分勝手な都合に過ぎない。




423 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/13(火) 02:28:05.42 ID:cbAJjCg0



妹達を救ったあの人ならどうにかしてくれると。
自分達を大事に思ってくれている一方通行に任せておけばいいと。
お姉さまと同じ記憶を持つ欠陥電気なら最良の判断を下すと。
どうしようもないほど無責任なことを考えて、自分は何もしなかった。
自分は単に、手を汚したくなかっただけだと思い知らされた。

一方通行が欠陥電気の記憶を消すと言った時、自分はなにをした?
彼の邪魔をした。もっといい方法がある筈だと。こんなことしないでと騒ぎ立てた。
単純に、欠陥電気の記憶が消されることに我慢ができなかっただけだ。
切り捨てて置いて、目の前でそうなることが辛くて土壇場で一方通行を裏切った。
自分だけ善人を気取った挙句、中身のない空虚な偽善で一方通行を無駄に苦しめた。

目の前の彼はこんな自分を知ったらどうするだろうか?
身勝手で全てを知っておいて投げ出した自分に欠陥電気が気付いたら、何て言うだろうか?
多分二人は何も言わない。それでも許してくれる。優しく抱きしめてくれる。
本当に愚かで罪深いのは一体誰なのだろうか。そんなことは分かりきっている。
苦しい。とても胸が苦しい。罵ってほしい。最低な奴だと蔑んでほしい。こんなにも薄汚い自分を。
心から、そう思った。



424 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/13(火) 02:29:55.59 ID:cbAJjCg0



打ち止めの制止を振り切って、一方通行は暴れまわる。
能力の制限をかけらようとも、不自由な体だろうと彼は止まらなかった。
窓ガラスは割れ、壁はへこみ、椅子は砕かれ、シーツは裂かれ、それでも彼は止まらなかった。
打ち止めには止められなかった。

部屋は無茶苦茶に荒れ、壊れていないものを見つける方が困難な状態まで破壊尽くされた。
一体どのくらい暴れまわっていただろうか。一方通行は電池が切れたように床に落ちるように座り込んだ。
その瞳には光はなく、腕は痣だらけで足には力がなかった。
一方通行は疲れきっていた。
心も、体もぼろぼろで修復しようがない程に、壊れかかっていた。
動きたくなかった。言葉を発することなど不可能だった。
ただ、視線の先にある自分が壊したガラクタを呆然と眺めることしか彼にはできなかった。

「…、一方通行」

打ち止めがそんな一方通行に声を掛ける。
顔には殴られたような痣をつくり、髪は乱れ上着が破れかかっていた。
止めようとした打ち止めにも一方通行は容赦しなかった。
殴って、振り切って、投げ飛ばす。
一方通行にはもう、守るべきものすら目に入らなくなっていた。

「一方通行…」




425 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/13(火) 02:30:34.37 ID:cbAJjCg0



言葉は返ってこない。
打ち止めは涙を零しながら一方通行へと近づく。
これは罰、これが自分の仕出かした最悪の結末だと言い聞かせながら。
打ち止めは泣き笑いを浮かべ、一方通行を抱きしめる。
一切の反応がなかった。

「…っ」

最早あの時間は帰ってこないのだと。ようやく実感が涌いてきた。
一方通行が皮肉を言って、欠陥電気が文句で返して、打ち止めが二人を笑う時間は、失くなってしまったのだと。

「…………っ」

歯を食いしばる。自分に涙を流して声を上げて泣く資格はないのだから。
頼り切ってしまった結果、一方通行はこんなにもぼろぼろになってしまったのだから。
縋ることなど許される筈がない。

「…ごめんね」

その呟きは誰に対してのものか、打ち止めにも分からなかった。







427 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/13(火) 02:33:01.62 ID:cbAJjCg0





無様にも暴れまわってから、どのくらい時間が経っただろうか。
時計を見上げる気力もなければ、視線を動かすことすら億劫だった。
一方通行は霞がかった頭で途切れ途切れの思考に没頭した。
気が付けば自分を抱きしめていた打ち止めは、壊れた家具や窓ガラスの処理をしている。

「一方通行! そこ邪魔だからどいて! ってミサカはミサカはダメ親父に説教するように言ってみる!」

忙しそうに動き回る打ち止め。
邪魔になった一方通行を、ソファーまで無理やり引きずって寝かせる。
寝かせると言っても、打ち止めの体格ではソファーまで持ち上げることはできないので縁に背を預けさせるといった具合だ。

「お昼は抜きだからね! 夜は……作ってくれたカレーがまだあるから、それ食べよ?」

打ち止めは躊躇いながらも、最後まで言い切って微笑んだ。
一方通行の返事はない。その反応に少しだけ悲しそうにすると、打ち止めは片付けを続ける。
そんな打ち止めをよそに、一方通行は何をするわけでもなくただ呆然と過ごした。
慌ただしく部屋を片付けていく打ち止めとは対照的に、一方通行の時間は乾いた絵の具のように淡々と過ぎていく。

世界はモノクロですっかり色褪せてしまっていた。
時折聞こえる打ち止めの声も、どこか遠い世界の出来事のように一方通行は感じていた。
何か分厚いフィルターを通したように、薄く淡白で現実味の失せた言葉にならない音としか認識できなかった。




429 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/13(火) 02:34:35.74 ID:cbAJjCg0



「……っ、そ、そうだ! お昼はないけどお腹空いたしヤンヤン食べよう! ってミサカはミサカは言ってみたり!」

作業の手を止めた打ち止めは、零れ落ちそうな涙を拭い揺れ動く心を吹き飛ばすように言い放った。

「なんにもしない一方通行にはあげないよ! ってミサカはミサカは働かざるべきもの食うべからずを実践してみたり!」

そう言うと、キッチンに向かって棚から目的のカップを取り出し一人で食べ始める。
打ち止めは気丈に振舞った。小さな体に大きすぎる悲しみを押さえ込むのに必死だった。
少しでも立ち止まると、あっという間に自分は呑み込まれてしまうと思ったから。
罪悪感に押し潰され。後悔に囚われ。自責の念に駆られる。自分を責める材料には困らないのだ。
だから立ち止まるわけには行かない。その全てを無視し前だけを見る。
ここで自分までダメになってしまったら一体誰が一方通行を守るのだろうか。
(――――ダメ!)
考えてはいけない。目の前の作業に没頭しろ。思考は捨てて忙殺されなければならない。
一方通行を守る。その行為すら今の打ち止めにとっては、自己を都合よく肯定するための材料だと考えてしまう。
それは呪いで猛毒だった。
呪ったのは自分で、猛毒に犯したのは自分。
だから打ち止めは一心不乱に目の前のお菓子を食べる。噛んで呑み込む作業を、ただジッと繰り返した。




430 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/13(火) 02:36:36.34 ID:cbAJjCg0



騒がしく動き回っていた打ち止めが作業を止めた部屋には、お菓子を噛み砕く小さな音だけが寂しく響く。
ソファーにもたれ掛かっている一方通行はやはり何の反応も示さず、時間だけが空しく流れていった。
暑くも寒くもなく、乾きも潤いもなく、苦しさも優しさもなくなった胸の奥で、
ぽっかりと空いてしまった心のままに全てを委ね、思い出の中へと一方通行は意識を落とした。

――――下らない言い争いをして家を追い出されたあの日。
ファミレスから家に戻る途中、木漏れ日の中を二人で黙々と歩を進めた穏やかな時間。

雲の切れ目から淡い日差しが部屋に差し込み、優しい風が吹き抜けたあの日に、
心地よいまどろみに包まれながら不毛な押し付け合いをして過ごした無為な時間。

薄っぺらい覚悟を捨てて、淡い期待を抱いて家に戻ったあの時。
打ち止めを膝に寝かせ、欠陥電気の野菜を切る規則正しいリズムに耳を傾けた緩やかな時間。

あの言葉を、はにかむように言った欠陥電気は眩しくて。
その真っ直ぐな言葉はあまりにも優しくて。
胸の中のずっと深いところまで透き通るように響いた。


――――ねえ、わたしさ。あんたのこと好きよ。割とだけど――――


何もなかった心に少しだけ暖かいものが注がれていく。
壊れてヒビの入った隙間を埋めるように、疲れきってくたびれた欠片を癒すように。
ほんの少しだけ、何もなかった空っぽの心に力が湧いたのは、気のせいだろうか。







431 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/13(火) 02:41:44.33 ID:cbAJjCg0 [11/11]
ここまで、なんだ

って、サブタイ忘れてた… 一応『道』ってことで

コメント

No title

冒頭のメタ発言で面白さ半減するんだよな、
このシリーズ。

Re: No title

> 冒頭のメタ発言で面白さ半減するんだよな、
> このシリーズ。

と言う事で、ざくっと直してみました。

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