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唯「ういーにーどきっす!」

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 15:21:03.15 ID:GsX94ckT0 [1/83]

 風は夜の空気に触れてもまだ暖かく、すっかり春になったことを教えてくれた。

 春から入部した後輩と二人で、漂ってきた花の匂いを感じつつ夜道を歩く。

 うすぐらい空は、むず痒い感覚を与えてくる。

 私は急いで、携帯を開いた。

梓「誰にメールしてるんですか?」

唯「憂だよ。もうすぐ帰るねーって」

梓「あぁ……ほんとに仲良いですね」

 呆れたような目をされる。

 私たちの関係はまだあずにゃんには伝えていないし、誰にも伝える気もないけれど、

 様子を見るに憂がすでに話してしまっているようだ。

 私たちの関係はあまりいいものではないのだけれど、どうも憂には自慢らしい。

唯「うらやましい?」

梓「そっ、そんなことは! 私だって憂とは仲良いですしっ」

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 15:25:04.69 ID:GsX94ckT0

唯「……ふぅん?」

 ちょっと梓ちゃんのことが可哀想になったけれど、私が同情しても仕方ない。

梓「そんなことより、明後日、日曜日! 部活あるんですから、忘れずに来て下さいよ!」

唯「えっ、そうだったっけ!?」

梓「ゆいせんぱい……しっかりしてくださいよ。9時からですからね!」

唯「おっけ、ありがとうあずにゃん」

 一応頭に入れておき、あずにゃんの肩にふれた。

 既に何度か日曜の練習をすっぽかしたり遅刻しているので、

 そろそろ先輩として見切りをつけられないよう真面目にならなければいけない。

梓「ほんとに大丈夫ですか……?」

唯「心配するな。これでも君より1年先輩なのだぞ?」

梓「そう、ですよね」

 顔をむずむずさせながら、あずにゃんは言った。

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 15:29:15.44 ID:GsX94ckT0

梓「それでは、日曜日に」

唯「うん、またねあずにゃん」

 あずにゃんと別れると、歩くスピードを速めた。

 小走りになりつつ、携帯を開く。

 『もうお家が見えてるよ』

 送信して、あとは脇目もふらずに家へと駆け込む。

 玄関の明かりが点いた。

 ちゃんと待っているようだ。

 私は安心して、ドアの把手に手をかけた。

唯「ただいまぁ、ういっ」

憂「おかえり、お姉ちゃん」

 くつぬぎまで下りてきて立っていた憂は、にこりと笑うと目を閉じた。

 そして、控えめにくちびるを突き出す。

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 15:33:09.49 ID:GsX94ckT0

憂「んぅっ……」

唯「えへへ。かわいいよぉ憂」

 がっしり憂にしがみついて、小さく震えたくちびるにかぶりつく。

憂「んあっ、むぅ」

 ふんわり柔らかい憂の唇が口の中へ入る。

 唇で挟んで吸いつくと、ちゅるちゅると唾液の音が唇の端っこから聞こえてきた。

唯「んーい~……」

 わたしの口に引っぱって来られた下唇に、そっと歯を立てる。

 優しく、とうもろこしの粒を取るようにくちびるを噛んでいく。

憂「ふっ、んんっ……」

 ぶるぶるっ、と憂が肩を震わせた。

 憂は切ないのか、私の頭をぎゅっと抱いてきた。

 背中はギー太がいるから、ただいまのキスをする時は憂はあまり体を抱いてくれないのだ。

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 15:37:03.32 ID:GsX94ckT0

憂「ぁ、んむ、ふゅっ……」

 さて、こうなるとなかなかキスは終わらない。

 憂はゆっくりと座りこむように、廊下の床に私を引っぱってくる。

 私は憂のくちびるをもぐもぐしたまま、それにくっついて憂を床に押し倒した。

唯「は、ちゅっ……ういっ」

 唇の噛んだところを今度は舐めてなぞっていく。

 夕食の味見をしていたのか、薄くかつおだしとお醤油の風味がする。

憂「ふへ……」

 ようやく唇を解放してあげて、また唇が触れ合うほどに顔を近づける。

唯「ねー、憂……ん、火ぃ消した?」

憂「ふぁ」

 とろけた瞳のまま、憂は首を横にふる。

 くちびるの先がしゅっしゅっと擦れて、愛しさが噴き上げてきたけれどこらえる。

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 15:41:06.46 ID:GsX94ckT0

唯「弱めてきただけ?」

憂「……」

 名残惜しそうに、憂は私の頭を抱いていた手を床に降ろした。

 背中を浮かし、わたしの手を解放してくれる。

 それで私がやっと立ち上がると、憂は恥ずかしそうに笑って、台所へと上がっていった。

唯「ういっ、ご飯のあとでね!」

憂「うん!」

 階段に向けて声をかけると、うれしそうな声が返ってきた。

 私は夕食と、その後のデザートを楽しみに、靴を脱いで部屋へ行くことにした。

 ギー太をスタンドに置いて、制服から部屋着に着替える。

 体が一気に軽くなって、前宙返りしてベッドに飛び込めそうな気すらしたけれど、

 失敗すると痛いのでやめておく。

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 15:45:02.45 ID:GsX94ckT0

 2階のリビングに降りてだらけていると、

 ご飯の準備ができたらしく憂が醤油とだしの香りをただよわせてキッチンから現れた。

 煮物のどんぶりが置かれ、またキッチンに戻り、白いごはんとおぼろ豆腐を持ってやってくる。

唯「……ん、これは」

 どんぶりを覗きこむと、具材はインゲンに人参に、竹の子が入っていた。

唯「……はぁ」

 春になると煮物と言えば、憂は必ず竹の子を入れてくる。

 旬だから、という理由だけでなく、私が苦手なのを知ってのことだ。

 固い歯触りは、細切りにすれば大丈夫なのだが大きな塊で出されると食欲が失せる。

 同様の理由でレンコンも苦手だ。

唯「憂……また竹の子」

憂「だってお姉ちゃん、竹の子好きでしょ?」

唯「好きは好きだけどさぁ……」

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 15:49:00.94 ID:GsX94ckT0

 憂はお料理をテーブルに置くと、私の隣に座った。

憂「だいじょぶだよ、私がちゃんと食べさせてあげるから」

 私のほっぺたを撫でて、憂はそんな風に言う。

 私も私で、おせちのときなどに数の子が出るとみんな憂に食べさせるから、

 その仕返しかもしれない。憂はあの塩味が嫌いなのだそうだ。

 だから、憂は歯触りがいやじゃないようによく噛み砕いてから私に食べさせて、

 私は塩味が抜けるようによく唾液と混ぜてから憂に食べさせてあげるのだ。

 さすがに親の前で食べさせてあげると憂は慌てるのだけれど、

 私はむしろ親の前でくらい堂々としていたいと思うのである。

 かつての悪法が消えた現在でも、

 私はなんとなく、憂との関係を公言できないでいる。

 それは私たちの関係に、どこか後ろめたいものがあるからではないだろうか。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 15:53:07.59 ID:GsX94ckT0

憂「お姉ちゃん?」

 心配そうに憂が覗きこんでくる。

唯「あ、ううん。食べよ食べよ」

 余計なことを考えていた。

 かぶりを振って払い、箸を手に取る。

唯「いただきまーす!」

憂「いただきますっ」

――――

唯「ふぁん……んん、ぐっ」

憂「ん、ぷはぁ。……おいしい? お姉ちゃん」

唯「はふ。おいしいっていうかさぁ……」

 憂のご飯は確かにおいしいし、竹の子だって憂が噛んでくれれば食べられるのだけど、

 それだったら普通においしいものを憂に口移しで食べさせてほしいと思うのだ。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 15:57:06.16 ID:GsX94ckT0

唯「もっと、ハンバーグとかこう、私の好物でやってもらえない?」

憂「そしたら時間かかっちゃうじゃん」

 それまでしていた深いキスなんてなかったようなあけすけな態度で、

 なんとも現実的な問題点を挙げると憂はごくりとお茶を飲んだ。

唯「そりゃね……まぁそっか」

 キスがしたいだけなら、食べ物なんて挟まなくても素直にキスをすればいい。

 口移しなんて理由がなくてもキスができるくらいには、私たちは気安い関係になっているのだし。

 食事の時間は食事の時間として切り分けた方がいいのかもしれない。

 実際わたしも、自分でものを噛むことは喜びだというくらい分かっているつもりだ。

 どちらかと言えば、憂が竹の子やレンコンを食べさせたいというから付き合っているだけで、

 竹の子やレンコンなど献立に出ないほうが私には幸運だと言える。

 憂の口移しが嫌なのではない。

 そのために好きでもない竹の子を食べさせられるくらいなら、口移しなんか無くていいだけだ。

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 16:01:00.23 ID:GsX94ckT0

唯「はふー。ごちそうさま……」

 晩ご飯をたいらげて、お皿を重ねる。

 それを憂が台所に運んで、水に浸ける。

 少し食べ過ぎたか、お腹が苦しい感じだ。

 ちゅーしながら憂にさすってほしい。

 椅子から立ち上がって、ソファに向かう。

唯「ういー、アイスはいいよ」

 台所にいる憂に声をかけた。

 冷凍庫を漁っていた憂は不思議そうに顔を上げる。

憂「いらないの?」

唯「うん、今日は憂だけ食べる。おいで」

 ソファの角に腰かけると、両腕を広げて憂を迎える体制になった。

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 16:05:00.51 ID:GsX94ckT0

 スリッパを鳴らして憂が駆けてくる。

憂「……お姉ちゃん」

 私の前に立った憂は胸の前で手を握ると、どんどん顔を真っ赤にしていく。

唯「おいで。べぇ~」

 口をあんぐり開けて舌を出す。

 憂はソファの背もたれに手を置き、私に覆いかぶさるようにおでこをくっつけてくる。

憂「はあぁ、はぁ……っ、おねえちゃん」

 憂の熱い息が口の中に吹きこまれて、喉の奥を撫でた。

唯「はぁく、きへ……」

憂「ん、んっ……」

 あったかい舌が出て、ぷるぷる震える。

 可愛くてつまみあげたくなるけれど、

 やると怒られて、ひどい時にはちゅーがお預けになってしまう。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 16:09:01.09 ID:GsX94ckT0

憂「ぁん……む」

 O型に開いた口の形を、憂が舌でなぞっていく。

唯「っう、はぁ……」

 とん、と憂の舌が私の舌に乗せられる。

 ご飯の味がたくさん残っていて甘いけれど、そろそろ憂の味だけを楽しみたくもある。

唯「……んー♪」

 舌をひっこめて、口の中に憂の舌を連れていく。

 くちびるがくっつくまで憂を引っぱりこみ、舌が逃げられないように歯で挟む。

 唇は憂にぶつけて遊びながら、そっと舌の動きを開始する。

 ぺろぺろと、こするように。

 憂もぴくぴく舌を動かして、不自由な動きながら私の口の中をなんとか舐めようとする。

 がっしりと憂の腕が私の身体をとらえて抱きしめる。

 キスはもちろんだけど、憂は抱っこも好きなのだ。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 16:13:04.89 ID:GsX94ckT0

憂「ぁんむ……ちゅ、ちゅっ」

 ちゅぅをしながら憂が漏らす声はとっても可愛い。

 私からも憂をぎゅっと抱きしめてあげる。

唯「んい、んいぃ……」

憂「は、おぁ、んんっ……」

 キスをしながら、「憂」と呼ぶ。

 すると憂も一生懸命私を呼ぼうとするのだけれど、

 唇をふさがれて舌を伸ばしたままでは「お姉ちゃん」なんて発音はできない。

憂「ぁ、歯ぁ、はぁひて……」

 だから憂は、名前を呼んであげると呼び返すかわりに、

 もっとキスをがんばろうとするのだ。

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 16:17:01.93 ID:GsX94ckT0

唯「……ん、ぁー」

 歯を開け、舌を解放する。

唯「ちゅぶぁ、んっぐ、っ!」

憂「は、ひゅむ、んんぅっ」

 その瞬間、自由になった憂の舌が、ホンキを見せる。

 わたしたちはもう6年、ほぼ毎日こんなキスを何時間もやっているのだ。

 憂だって普段はされる側といえ、キスだけで私を気持ちよくする方法は熟知している。

唯「んっ、んぁぁっ、んんぅっ!」

 喉の横、歯茎の奥。

 ふかーくふかーくキスをすれば、憂の舌の先っちょがそこにちろちろ触れてくる。

唯「ぁっむ、んふ、んんっく!!」

 床がドンドン鳴っている。

 じっとしていられない私の足が暴れて、あとずさろうとして踏み鳴らしているらしい。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 16:22:09.00 ID:GsX94ckT0

 でも、どんなに暴れたって憂のキスからは逃げられない。

 背後はないと知った私の身体は

 ソファに崩れるように倒れていくが、憂は執心深く密着したキスをしたまま上に乗っかってくる。

憂「ふぅん、んちゅ……はぁ、ちゅぅ、ちゅ、ちゅく」

 憂の脚が絡みついてきて、暴れることもできなくなる。

 こうなるともう、私は憂をひたすら抱きしめる以外に快感をごまかす方法がなくなるのだけど、

 それもそれで胸の内に幸せがぶわぶわっと溢れてきて、気持ちよさを増やしてしまって、

 憂にはそれだって分かりきっていて、つまり、

 憂はもう私を「いかせてあげよう」という気まんまんなわけらしい。

唯「ぁっ、は、んいぃ、うぅい~っ!!」

 その名前を呼んだら、憂のキスがもっと激しくなるなんて知っているはずなのに、

 おろかにも私は必死にうい、ういと叫ぶ。

 私がいって、キスが終わってしまうのは嫌なのに、

 やっぱりどこかであのすごい快感を求めてしまっているのかもしれない。

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 16:25:17.19 ID:GsX94ckT0

憂「んぁ、むふ。る……れちゃっ、ちゅちゅ……ぁー」

 憂の舌が、喉と一緒に舌をこすり、ぐるぐると口の中を走り回る。

 もう、我慢できない。

唯「んむっ、いい! ぅいっむ、ふ、いふううぅぅ!」

 視界の端に、白く細い電撃がチリチリと光る、

 どんどんその数が増えて、太くなっていき、光の残る時間も長くなる。

 頭の中が真っ白に埋め尽くされていき――

唯「んんんんうぁああっ!! んく、ぶ、んんんぅぅーっ!!」

 体の中で熱さと冷たさの波がぶつかり、その波の勢いに突き上げられるように背中がのけぞった。

 憂の身体ごと持ちあがった全身が、凍ったように静止し、

 再びソファに沈み込む。

唯「ぶぁっ……」

 やっと憂のくちびるが離れ、冷えた空気が一気に肺に入ってくる。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 16:29:01.09 ID:GsX94ckT0

憂「お姉ちゃん、んー」

唯「ぁっ……」

 憂が口をすぼめて、唾をたらしてくる。

 私からすすったものか、憂の唾液かは分からないけれど、

 力の入らない体で首を起こし、くちびるに吸いついて受け取る。

唯「んぅ……くっ、こく」

 憂のつばはおいしい。

 憂のお料理にはかなわないけれど、

 こうしてキスをして唾液を受け取る時、とてつもなく幸せなのだ。

唯「ん……ちゅ、ちゅきゅ、ちぅぅ」

憂「はぅ、……んもう、無いよ」

 あまり唾液が出なくなったから夢中で吸っていたら、肩を押されて引っぺがされてしまった。

 もうおしまいらしい。

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 16:33:03.44 ID:GsX94ckT0

 憂はソファを降りて、私の顔の横に座ると、頬をぷにぷに突っつきだした。

憂「明日どーする?」

唯「あひた?」

 まだ興奮さめやらぬ中、ぼんやり応答する。

唯「あぁ……あひた土曜日かぁ」

憂「うん、部活ないでしょ?」

唯「ん、無いよぉ」

 憂が親指でくちびるを撫でてくる。

 またキスがしたくなってしまった。

 動けるようになったら襲おう。

憂「じゃあ……デートいく?」

唯「おー、良いねぇ。映画とか見ようよ」

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 16:37:14.00 ID:GsX94ckT0

憂「映画なんて行ったって、いつもちゅーしてばっかりじゃん」

唯「いやなの?」

憂「いやなわけないよ! ただ、1000円もったいない……」

唯「じゃあ今回は、最後まで見れるように頑張ろうよ」

 ちょっとずつ身体からだるさが抜けてくる。

 ソファにつかまって上半身を起こした。

憂「うーん……できるかなぁ?」

唯「なんかこう、仔犬の映画とか、ナチュラルジオなんとかっぽい大自然の映画とか見てさ」

唯「ちゅーしたくならないような映画なら、いけるんじゃない?」

憂「そうかなぁ……」

 憂はあまり気乗りしないようだった。

 今までも何度か映画は見に行ったけれど、最長で上映開始前から2時間弱キスし続けたことがある。

 その映画のタイトルさえも思い出せない。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 16:41:04.22 ID:GsX94ckT0

唯「ま、いーじゃん。デート用のお小遣いを友達との付き合いに使うわけじゃないでしょ?」

憂「当たり前だよ! けど、だったらお姉ちゃんと可愛いもの買ったりおいしいもの食べたり……」

唯「おいしいものなら食べれるじゃん。これこれ」

 くちびるに指を当てて、ばかな事を言ってみる。

憂「もうっ、そういうのじゃなくてさ……」

唯「でもさ。その理屈だったら、私は憂と映画も見てみたいな」

憂「ん……うん、それは確かに」

唯「じゃあ決定ね。明日はまず映画館に行こう!」

 憂の言葉を遮って、強引に決める。

 憂はちょっと頬を膨らませていたけれど、結局文句は口から飛び出しはしなかった。

 いい加減、「そういうキス」は卒業したい。

 その想いは憂も同じなのだ。

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 16:45:03.35 ID:GsX94ckT0

憂「映画のあとは?」

唯「そだねー、お買い物に……あっ、あと、あそこの凄いおいしかったアイス屋!」

憂「コトブキ?」

唯「そんな名前だったような……まぁ行ったら分かるよね。そこも行こう!」

憂「そしたら後は、ちょっとお洋服も買いに行こうよ」

唯「いいね。可愛いのあるかな?」

憂「お姉ちゃんが着たらなんでも可愛いよ!」

唯「はいはい」

 いきりたつ憂の頭に手を置き、立ち上がる。

唯「じゃプランはそんな感じで、暗くなる前に帰ろうね」

憂「うん。……お姉ちゃんお風呂?」

唯「そだよ。一緒に入るでしょ?」

憂「うん、いっしょいっしょ!」

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 16:49:03.00 ID:GsX94ckT0

 リレーのバトンを受け取るように左手を差し出すと、

 憂が両手で握って立ち上がった。

 手を繋いだまま階段を上がり、着替えを取って引き返してお風呂場に行く。

 シャツを放り、ズボンを脱ぐと、憂が小さく笑った。

憂「お姉ちゃん、パンツびしょびしょだよ?」

唯「う、憂のせいでしょ! いきなり激しくして……」

憂「えへへっ、ごめんね」

 いたずらっぽく笑ったかと思うと、耳の後ろから手が伸びて、目の前に白い景色が広がった。

 ぬるく、甘ったるいような匂いがする。

憂「……私もこうだから、お互いさまってことにしよ?」

 憂は脱いだ服を洗濯かごへ放ると、リボンをほどいた髪をゆらしながら浴室のドアを開けた。

憂「先にシャワーあっためとくね?」

唯「ぁ、うん」

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 16:52:59.97 ID:GsX94ckT0

 お風呂場に入ると、憂は椅子に座ってシャワーを浴びていた。

唯「……うーいっ」

 ひざまずいて、後ろから抱きつく。

憂「お姉ちゃん、手ぇ冷え冷え」

 そう言って、私の体にお湯を当ててくれる。

 ひっついた私の胸と憂の背中にお湯が一旦溜まり、こぼれ落ちていく。

唯「……憂、体洗ってあげるね」

憂「後ろから?」

唯「後ろからがいい?」

憂「ううん、前……私もお姉ちゃん洗いたいし」

唯「ん、おっけ」

 肩に手を置いて立つと、憂の前に回ってしゃがむ。

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 16:57:12.03 ID:GsX94ckT0

唯「椅子降りないとつらいよ?」

憂「ん、そうだね」

 腰を浮かして椅子を後ろにずらすと、お風呂マットの上にお尻を落ちつける。

 私もあぐらをかくようにマットに座り込んだ。

唯「はい憂、私の上のって」

憂「……うん」

 私のお腹のあたりをちらっと見てから、

 憂はなるべく脚を閉じたまま器用に私の横へ膝をつく。

 そしてしがみつくように、足を腰に巻きつけてきた。

唯「髪濡らして?」

憂「了解でーす♪」

 憂がシャワーをとり、頭を撫でながらお湯を通してくれる。

 憂の指の間を髪が抜けていくのが、とても心地いい。

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 17:01:08.92 ID:GsX94ckT0

 きゅ、とシャワーが止められる。

憂「いよっと……」

 私の体につかまりながら前のめりになって、憂がシャンプーのボトルを手に取る。

 首筋があらわになっていたので、くちびるを寄せてみる。

憂「あん、もうっ……ダメでしょ」

唯「えへへ、ついね」

憂「ちゅーならここにしていいから……」

 憂はちょっとお尻を引いて、顔を私の高さに合わせる。

唯「ん。……ちゅっ」

 軽いキスだけをして、すぐ離れる。

 お風呂場であまりキスに夢中になってしまうと、

 倒れて怪我したり体を冷やしたり、とにかく危険が伴うのだ。

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 17:05:13.01 ID:GsX94ckT0

 それに髪を洗っている間は、シャンプーが口に入って憂とのキスが台無しになることもあり得る。

 キスをするにしても、髪を洗ったあとがいい。

唯「うい、シャンプ」

憂「……むー」

 こうやって簡単なキスだけで済ませると、憂は不満そうな顔をするようになってしまった。

 昔は軽いキスだけであんなに顔を真っ赤にして嬉しそうにしてくれたというのに。

 くちびるを曲げて、憂はシャンプーのポンプを2回押して手に取った。

唯「ちょうだい」

 右手で受け皿を作り、憂の手から垂らしてもらう。

 手を憂の後ろに持っていき、両手を合わせてシャンプーを少し暖める。

 またポンプが鳴り、憂が私の髪を洗うぶんのシャンプーを出した。

 そして、まるで私と抱き合うみたいに私の後ろに両手を持ってくる。

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 17:09:03.08 ID:GsX94ckT0

憂「お姉ちゃん目つぶって?」

唯「ほいほい、憂もだよ」

 視界を真っ暗にし、何も見えない中で憂の髪に触れる。

 くしゅくしゅ撫でると、泡が立った。

 同じように憂も私の髪でシャンプーを泡立てる。

 キーボードを弾く時みたいに指を広げて、指先で髪の付け根からこすってあげる。

憂「んーきもちい……」

 憂の甘い声が耳にささやきかけて、くちびるにむしゃぶりつきそうになる。

 実際そういうことも何度かあった。

 憂のくちびるの位置なんて分かっているから、目を閉じていてもキスするぐらいは簡単だが、

 大変なのはキスをやめることのほうなのだ。

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 17:13:08.27 ID:GsX94ckT0

 別にキスに夢中になって風邪をひいたって私は全然構わないけれど、

 どちらかが病気になると、治るまで憂はぜったいキスをしてくれないのだ。

 昔、風邪で倒れた憂にむりやりキスをしたら、しっかり元気なビンタを受けたことを思い出す。

 そして私もしっかり風邪をもらった挙句、完治してもしばらく、

 「まだ病み上がりでしょ」とキスを2週間ほど断られ続けた。

 それ以来、風邪には気を遣っているのだ。

 なんとかキスしたい欲求をこらえて、憂の頭を洗い続ける。

唯「……」

 髪を洗われるのはものすごく気持ちいいし、洗ってあげていると愛しさがこみ上げてくるけれど、

 毎日やっていることだから、キスを我慢するぐらいは無理でもない。

 早く流したいな、とは思うけれど、しっかり洗ってあげたい気持ちも強い。

唯「うい……」

憂「ん、お姉ちゃん……」

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 17:17:05.17 ID:GsX94ckT0

唯「もう綺麗になった?」

 目をつぶったまま問う。

 流石に汚れ落ちまでは分からない、というか憂の汚れなんて目をこらしても見つけたことがない。

憂「ちょっと待ってね、後ろの方もう少し丁寧にやるから……」

 言って、憂の顔が少し近付く。

 憂のくちびるは、いま私のくちびるがある所よりちょっと上にいるみたいだ。

 ひょっとこみたいに口を曲げて、息を吹きかける。

憂「ん、待ってってば」

 憂がくすぐったそうにする。

 あ、これかわいい。

 続けて息を吹きかける。

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 17:21:13.81 ID:GsX94ckT0

唯「ふー、ふーっ」

憂「む。すぅ……」

 すると、息をかけるのと同時に憂が見計らったように深く息を吸った。

 胸がどきりと締められる。

憂「はぁ……」

 肺まで入った憂の息が返される。

 心臓が変に跳ね回る。息が出せない。

憂「……おいしいね、お姉ちゃん」

 たっぷりもって、真っ暗闇にそんな憂の声がする。

憂「っん、んぅ♪」

 次の瞬間、私は泡だらけの手で憂を抱きしめて、くちびるにしゃぶりついていた。

 くちびるを舌でぺろりとなぞってはキスをし、舐めてはキス、舐めてはキス。

唯「ん、ふうっ。ういっ、ういっ」

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 17:25:05.31 ID:GsX94ckT0

 夢中で憂のくちびるをしゃぶっていると、

 ほっぺたが引っぱられて、むりやりキスを中断させられる。

憂「髪洗ってる間はめっ、でしょ?」

 頭を撫でながら叱られる。

 今がチャンスと飛びつこうとするが、その行動も読まれていたのか顎が右手にぶつかる。

 こんどは寂しさに胸が締めつけられる。

唯「やっ、やだぁ! キスしたい、キスしたいよぉ!」

憂「髪流したらいっぱいしてあげるから」

 後ろからきゅ、と音がして、体に温かいお湯がかかる。

唯「う……」

 憂にしがみつきながら、頭を流される。

憂「お姉ちゃん、洗われてるワンコみたいだよ」

 優しく頭を撫でられて、犬でもいいやと思う。

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 17:29:05.88 ID:GsX94ckT0

憂「はい、ヨシ」

唯「ぷふぇ」

 目の周りに残ったお湯を手の甲で拭う。

 次は憂が泡を流し始めた。

 その間はキスするわけにもいかず、ただ閉じている憂の目を見つめているしかなかった。

憂「ふーっ……」

 やがて憂がシャワーを止めるが、まだキスは早い。

 ノズルを置いて、今度はボディソープのボトルを取る。

 再び手を出し、ボディソープを出してもらって憂に抱き着く。

 背中を抱き、すりすりと撫でさする。

憂「ぁん、まだ……」

 冷たかったのか、憂がちょっとえっちな声を出した。

 憂はまだボディソープを出そうとしている途中だったけれど、構わず口に吸いつく。

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 17:33:38.04 ID:GsX94ckT0

憂「んぅー、まっふぇ……」

 舌で憂の口の中をかき回しながら、手をまんべんなく動かして背中を洗ってあげる。

唯「れろぉ、ちゅ」

憂「ぁむ、ぅっふ……は、ちゅ」

 どうにか憂もボディソープを出して、私の背中に手を回す。

 ぎゅっと抱き合いたいけれど、そうすると憂が上に行きすぎてしまってキスが届かなくなる。

 抱き合うよりはキスしてるほうが裸でも気持ちいいので、

 強く抱きしめたいのは我慢する。

 どうしても駄目な時は、体に泡を付けたあと、

 お風呂マットの上に押し倒して体をこすりつけて洗ってあげながら、抱き合ってキスをする。

唯「んっち、ぁむ、ちゅちゅぅ」

 背中から肩を通り、憂の胸に触れる。

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 17:37:06.57 ID:GsX94ckT0

憂「んぁ……おれえひゃん……だめ、らぁの?」

 舌を絡めつつ、憂は器用に喋る。

唯「ん、うんっ」

 頷くと、憂は手を私の太ももに下ろしてきて、泡をなでつけた。

 憂の柔らかい乳房に泡をつけていく。

憂「おれぇひゃ、かけるよ」

唯「ふぁっ、んむ、れぅちゅ……」

 突如憂が言うと、胸にピュッとボディソープが飛んできた。

 一瞬おどろいたけれど、慌てずキスを続ける。

 続けてお腹、脚にボディソープが垂れ、背中にも引っかけられる。

 もういいでしょ。

 そう訴えるように、くちびるで憂をぐいぐい押していく。

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 17:41:12.21 ID:GsX94ckT0

憂「んっ、ちゅぅちうぅ」

 憂が強く唇に吸いつき、キスが離れないようにしながら後ろへ倒れていく。

 滑らないようにしっかりと憂を抱きしめて、しがみつく憂をゆっくり床に下ろす。

 手の甲がマットのふかふかした感触に包まれる。

唯「んい、いいぉ」

 そして、抱えた腕に憂の体の重みがかかる。

 滑り落ちそうになる体は憂に支えられ、憂のもぞもぞという動きでこすられ、また落ちていく。

 私はただ、ぞくぞくして腰が勝手に動くのに任せて、くちびるに吸いつき、

 口の中を舌で探検していればいいだけのことだった。

憂「んぁっ、あむ、ぁ……」

 服を着ているときの憂はふかふかと暖かいけれど、

 はだかんぼで泡まみれになった憂はすべすべでとにかく熱い。

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 17:45:45.19 ID:GsX94ckT0

憂「ま、あぁぅ、んうあぁあんんっっ!」

 太ももが、憂の脚の間にずりずり滑り落ちていった。

 憂の腰がびくびくと跳ね、あやうくキスが途切れそうになる。

憂「ん、んむ。ちゅぷ、くちゅちゃっ……」

 薄く目を開けてみると、憂が涙を浮かべながら一生懸命キスをしているのが分かった。

唯「んい、んいー……」

憂「んむっ!? っ、ふ、ぁめっ、おねえひゃあ、ぁ!」

 前歯の後ろ、上顎の前方をリズミカルに舌先で擦る。

 ここが憂の口の中で一番弱いところ、一番好きな攻められかただ。

憂「んんーん、んんーんっ!!」

 しゅっ、しゅっ、と右へ左へ舐めさする。

 憂の肩が浮いて抵抗のそぶりを見せるが、くちびるを更に深くくっつけて押し戻す。

 完全にくちびるを塞がれてながらも、憂が「お姉ちゃん、お姉ちゃん」とうめいている。

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 17:49:05.16 ID:GsX94ckT0

唯「んい、んっ……」

 この可愛い妹に、早くあの一番すごい気持ちよさをあげたい。

 その一心で、私も一生懸命に憂の口を食べていく。

憂「んんーぁん、んんー!!」

 憂が全身でぎゅっと、お猿さんの子供みたいにしがみつく。

 頭の中には「憂、可愛い」しかなくて、

 それさえも言葉にできずに体をこすりつけて、キスをするだけ。

 この胸を圧すような熱い熱い愛は、きっと10分の1も憂には届いていない。

 せめてあと少しでも届けたいと、胸同士をくっつける。

唯「んいっ……」

憂「んんーん、っ!」

 鼻息が苦しそうだ。舌でちろちろ舐めながら、息を吹き込んであげる。

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 17:53:04.74 ID:GsX94ckT0

憂「んっ……!」

唯「ぁ、ん……」

 憂から息が送り返される。

 憂の身体を巡り巡って帰ってきた空気を肺の奥へと吸いこむ。

 そして再び、私の息を憂にあげる。

憂「うぁ、んんー……」

 憂が身をよじり、体をびくびく痙攣させる。

 逃げるようにタイルに手をついて、けれどボディソープで滑って動けないようだ。

 諦めたように、憂も一緒になって歯茎をぺろぺろ舐めはじめた。

 少し頭が重たくなってきたのを感じる。

 鼻呼吸に戻して、舐めることに集中する。

憂「ん、んんっ……!!」

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 17:57:06.44 ID:GsX94ckT0

 傷口につばをつけるように、丁寧に舐めていく。

 憂の腕が痛いほどに抱きしめてくる。

唯「ういっ……」

憂「んむっ、あ、おねえああぁあぁ!!」

 最後まで口を塞いでいたかったけど、一瞬の隙にくちびるが離れ、憂が叫んだ。

 私にしがみついて、何かに怯えるみたいにびくっ、びくっと震えると、

 やがて床に両手両足を落として、力なくへたれた。

唯「うい。ん」

 くちびるを突き出す。

 憂は弱々しい瞳で私の顔を見ると、

 すぼめたくちびるを小鳥みたいにちゅっ、ちゅっとくっつけてくれた。

唯「かぁわいい、憂」

 頭を撫でると、憂が目を閉じる。

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 18:01:02.47 ID:GsX94ckT0

唯「まだちゅーしたいの?」

憂「……うん」

 恥ずかしげに憂は頷いた。

唯「じゃ、お風呂の中でちゅーしよ。風邪引かないように」

憂「そだね」

 シャワーを出して、体についた泡を落とす。

 落としながら、大事なところに手をやって、軽くだけこすっておく。

 それからお尻だったり腋だったり足だったり、あまりこすり合えなかった所にもお湯を当て、

 しっかりお互いに手で洗ってから湯船につかった。

 お風呂では私が後ろから憂を抱きしめる形で憂に乗ってもらった。

 それで私は憂にのしかかるようにしてちょっと体を伸ばし、

 憂に振り向いてもらってくちびるを合わせた。

 浮力があるお湯の中だからできる体勢だ。

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 18:05:07.83 ID:GsX94ckT0

唯「はむ……ちゅ、ちゅ」

憂「んれっ。す、ちゅぷ」

 憂はまだ懲りていないようで、私の口に平気で舌をつきこんでくる。

 私もそれに応えて感じさせてしまおうとするのだけれど、

 結局憂と一緒に気持ちよくなって、二人で湯船の中で夢中になってキスをしていた。

 お風呂からあがるころには既に日付が変わっていて、

 私たちはいそいそとベッドにもぐり、くちびるを重ねると眠りについた。

 翌日は休日といえど、憂とのデートの予定だったのだから、なるべく早く目が覚めたかったのだ。

 憂も寝ている私にちょっと激しいキスを仕掛けてきたりもせず、おとなしく眠っていた。

 その寝顔があまりに可愛いので舌を差し込んでみたけれど、

 憂は舌をぺろりと舐めただけで起きてくれる気配はなく、

 私は少しいじけながら、抗議として舌を入れっぱなしにして眠ることにした。

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 18:09:03.27 ID:GsX94ckT0

――――

 翌朝、窓から入ってくる日差しに目を開く。

唯「……ん」

 昨晩眠った時と同じように、私は憂と抱き合っていて、

 くちびるは唾が乾いて貼りついてしまっていた。

 カラカラになった舌が、同様の憂の口の中を擦る。

 さすがに痛くて、舌を引っ込めた。

唯「……」

 まだ眠っている憂の寝顔を見つめ、唾液を出していく。

 舌を濡らしつつ、憂を仰向けに寝かせて覆いかぶさる体勢になる。

 右の頬がペリペリ言った。

 どうやら涎で憂の頬とくっついていたらしい。

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 18:13:15.78 ID:GsX94ckT0

 舌で憂のくちびるをこじ開け、つばを垂らしていく。

 そのままではむせるので、舌を叩いて憂の目を覚まさせる。

憂「んー……?」

唯「おふぁよ、うい……」

憂「……ん、おふぁお、……ちゅ」

 ねぼけた顔でくすりと笑い、憂は小さく喉を鳴らす。

 憂がじわっと温かくなったかと思うと、口の中が湿り気を持ち始める。

 憂は私の舌を押し返すと、乾いたくちびるをぺろりと舐めた。

 貼りついたくちびる同士が剥がされる。

唯「ぁむ、ちゅっちゅ」

 離れた後、いくつかキスをしてからベッドに転がる。

唯「ふへぇ……映画だっけ」

憂「うん。それでアイス屋いってお買いもの」

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 18:17:49.54 ID:GsX94ckT0

 布団を持って起き上がる。

 憂がかぶっていた布団もめくれて、一瞬冷たい風に憂が体を震わせた。

唯「うむ……ぁ」

 時計を見ると、11時を過ぎていた。

 憂とキスして寝ると眠りが深くなりすぎていけない。

 普段は目覚ましをかけておくと憂が気付いて起こしてくれるが、

 休日だといつも10時間以上眠ってしまう。

唯「けっこう寝ちゃったね」

 ベッドから降りて、「のび」をする。

憂「あ、ほんとだ。ちょっと急がないと、買い物やる時間なくなっちゃうかな?」

唯「うーむ……」

 目的の映画館まで行くのが早くて40分。電車の都合が悪いともっとかかる。

 映画は短くて90分。移動時間も考えて、2時間考えておくのがいい。

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 18:21:03.45 ID:GsX94ckT0

 ご飯を食べて、おしゃれもしなきゃいけないから出発までの時間もかかる。

 あまりゆっくり買い物をする余裕はないかもしれない。

憂「早く支度しよっ?」

唯「そだね」

 家に居ようと外へ出ようと憂と一緒にいられるのは同じだけれど、

 せっかく遊びに出るのだからキスだけでなく楽しいことをしたい。

 私は、元わたしの部屋へ向かい、今日の服を選ぶことにして、

 憂にはお昼ご飯を作ってもらうことにした。

――――

 ご飯のあと、シャワーを浴びてさっぱりする。

 ゆっくり洗いっこしている時間は無いので、ひとりずつサッと体を洗う。

 キスをしながら体を洗ってもらうのに慣れているとは言っても、特に寂しくはない。

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 18:25:07.62 ID:GsX94ckT0

 シャワーを浴びて髪を乾かしていると、憂が控えめにドアを叩いてきた。

唯「おー、なにー?」

憂「ねぇお姉ちゃん、これ私が着るの?」

唯「うん、そだよ。変だった?」

 とびきり可愛いのをセレクトしたつもりだったけれど、お気に召さなかっただろうか。

憂「こ、このスカートさぁ……」

 ポーズを変えて確かめているのか、とんとん床が鳴る。

憂「短いし、薄すぎない? ちょっと動いただけでふわふわって上がっちゃうよ」

唯「可愛いでしょ?」

憂「かわいいけど……見えちゃうじゃん」

唯「なにが?」

憂「そんなしょうのないことわざわざ言わせようとしないの」

 ドアの向こうで憂がちょっとむくれた。

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 18:29:06.21 ID:GsX94ckT0

唯「あは、ごめんごめん。……でもだいじょぶだよ、スカートの中は見えないから」

憂「見えるって、これ」

唯「大丈夫。鉄壁だもん」

憂「……?」

 髪を乾かし終えて、私も畳んでおいた服に着替える。

 ドアノブに手をかけて開ける。

唯「おぉ、可愛い可愛い!」

憂「う……でも、ちょっと寒いかも」

唯「ほんとに?」

 太ももをさすってあげると、廊下に立っていたせいもあってか肌は冷たい。

唯「今の時間で寒いってなると、帰る時には大変だね」

憂「うん……お姉ちゃんのタイツ借りていい?」

唯「しょうがないなぁ……履いてきたらもうすぐ出かけちゃお」

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 18:33:04.72 ID:GsX94ckT0

 バッグを持ち、玄関で憂が履き替えてくるのを待って、手を繋いでドアノブを持つ。

憂「あっ」

唯「ん?」

 憂が声をあげたので、振り返る。

唯「……ん、ちゅ」

 くちびるが押されて、ひとくち下唇を食べられた。

憂「えへへ。行こっか」

唯「……く、油断した」

 始めたころは、くちびるを合わせるだけのキスを1日に1度するだけだった。

 けれどその数は加速度的に増えていって、すぐに数え切れなくなった。

唯「もう。行くよ」

 だからここでキスされるのは当たり前なんだけれど、

 何故かそれを予想していなかった。

 私はいったい何を慌てているんだろう。

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 18:37:01.67 ID:GsX94ckT0

――――

 電車を乗り継いで、片田舎から大都会へと旅をする。

 駅から出ると、桜ケ丘よりも人はうんと多くて、自然と憂の手を強く握る。

唯「うい、はぐれてない?」

 少し体が離れた気がして振り返る。

憂「ちゃんといるよ、お姉ちゃん」

 憂はにこりと笑って私の腕まで抱きついてくると、体を伸ばして私のくちびるを狙ってきた。

唯「あっ、んむっ」

 また反応できずに唇を奪われてしまう。

 電車の中でも何度か不意打ちでキスをされた。

 今日は憂にキスされてばかりだ。

 しかも、そのどれにもまともに反応できていない。

 映画館で座席にかけたら、存分にキスしてやろうと思う。

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 18:41:08.03 ID:GsX94ckT0

 もちろん今回の目的は映画を見ることなので、上映が始まったら止めなければいけない。

 そのあたりが悩ましいところだ。

 映画館に辿りついて、映画のポスターとにらめっこする。

唯「うーむ……」

 なるべくキスしたくならない映画。

 ドキュメンタリーとか、動物との感動モノだとか。

 意外と気をつけなきゃいけないのがアニメで、まず洋画はみんなアウト。

憂「あっ、これは?」

 憂が指差したポスターでは、ふくふくの仔犬が笑っていた。

 大文字のタイトルは「ニャアニャア、小鳥さんだよ」。

唯「……うぉ」

 りっちゃんでも白けるレベル。

78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 18:45:05.34 ID:GsX94ckT0

唯「こういうのって……最後に死んでお別れだったりするよね」

憂「うん。でも……今日はそういうのを見れるように頑張るんじゃないかな」

唯「……たしかに」

 私たちが恐れるのはそこだ。

 恐ろしいから、それをごまかすためにキスをしている。ような、フシがある。

 私は何かに怯えてキスをするんじゃなく、

 ただ憂を愛して、それが我慢できなくなることで憂にキスをしたいのだ。

唯「見てみよっか。上映時間はどうかな」

憂「うーんと、意外とすぐ……わ、15分前だよ!」

唯「えっ、急がないと!」

 大慌てでチケットを買い、ポップコーンとコーラも忘れず仕入れる。

 なにもキスが目当てで映画館に来ているわけではないのだ。

79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 18:49:04.98 ID:GsX94ckT0

 上映ホールに駆けこみ、席に着く。

 映画が始まるまでキスをするつもりだったけれど、息が切れてそれどころではない。

 席はほとんど最後列の端っこで、客入りも悪いからキスをするにはもってこいだけれど、

 今はまだ待つべきだ。

 キスなら家に帰ってから100回でも1時間でもやればいい。

 そう自分に言い聞かせる。

憂「ふぅ……」

 先に憂の息が整った。

憂「急ぎ過ぎちゃったね」

唯「えへへ、そだね……はぁ、ふ……」

 映画が始まるまでは、ちょっとの間隔があった。

 やがて私も息が整う。

80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 18:53:01.12 ID:GsX94ckT0

唯「うす暗いね……」

 ホールを見渡して言う。

 夕方の日陰のように暗く、ぼやけている。

憂「うん……」

 憂はぎゅっと私の手を握った。

唯「がんばろね、憂。映画に集中したら大丈夫だから」

憂「……」

 答える余裕もないようで、私の手を固く握っている。

唯「無理だったらちゅーしていいからね。ゆっくり慣れていこ」

憂「う、うん、がんばる……」

 ポップコーンをひとつ摘まみ、憂の口に運んであげようとし、やっぱり自分の口に入れる。

憂「お姉ちゃん?」

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 18:57:05.00 ID:GsX94ckT0

唯「ぁぐ」

 舌で一回転させて塩味を舐めてから、指でつまんで取り出す。

 そして憂の口もとへ運んだ。

唯「これを食べて頑張るのじゃ」

憂「ぁ……あむっ」

 私の指まで食べる勢いで憂はポップコーンを食べる。

憂「……つめたい」

 憂が呟くと、ホールがさらに暗くなった。

 前の席が見えるか見えないかというほど暗くなり、スクリーンが黒く光る。

唯「……」

 私も手を握り返し、ポップコーンを口に押し込んだ。

 他の映画の宣伝を挟み、やがて本編が始まる。

82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 19:01:05.22 ID:GsX94ckT0

唯「……」

 映画はあらすじをナレーションして始まった。

 そんなこんなで主人公の男の子はお父さんお母さんと一緒にペットショップにやってきた。

 ここでニャンニャン鳴く犬を買って小鳥さんと名付けるのか、

 それとももっと運命的な出会いをするのか。

 暗闇から目をそむけるため、むりやりハラハラしてみる。

 優しくて、強いワンコが飼いたい、と映画の中で男の子はペットショップの店員さんに言う。

 店員さんはそれでしたら、と画面から外れる。

 次に映ったカットには、ポスターでみたような仔犬が2匹じゃれあっていた。

唯「あっ」

憂「ぁ……」

 そこに白い手がにゅっと伸びてきて、片っぽの仔犬をさらう。

 間引かれた。

83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 19:05:04.81 ID:GsX94ckT0

 カメラは一瞬で切り替わったけれど、

 じゃれ合っていた体勢のまま転がっていた仔犬の姿が頭に焼きついていた。

唯「あ、ぁ……」

 まだ映画が始まって1分も経っていないのに。

 予想もしない精神有害なシーンだった。

 これはいけない、この映画は見てはいけない。

 そんな風に思うけれど、とっくに手遅れで、私はすぐさま憂の方を向こうとした。

 しかしそれより早く、スクリーンが見えなくなって、私の前に憂が立ったのが分かる。

憂「お姉ちゃんちゅう、ちゅうしよっ……」

 憂が私の首にすがりつく。

 だめだ、なんて言えたのはどこか遠くにほっぽり出した理性だけで、

 私は即座に頷いていた。

唯「……し、しずかに、うるさいちゅーしちゃだめだよ?」

84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 19:09:06.65 ID:GsX94ckT0

憂「ん……ぁむっ」

 私の言葉が聞こえなかったのかは分からないけれど、憂ががぶりと私の口に噛みついた。

唯「な、んん……」

 抑えきれるはずがない。

 真っ暗な中であんなものを見せられて、私だって胸があんなに締めつけられたのだ。

 憂だったら周りも、私のことさえ考えられないほどに苦しくなって当たり前だ。

 舌が一気に口の奥まで差し込まれ、息苦しくなる。

 ねちっこく舌が絡み、唾液を練る。

唯「ん、ん、ういっ……」

 とにかく、早く癒してあげなければ。

 憂の頭に手を置き、よしよしと撫でてあげる。

憂「はっ、おねえちゃぁあ……」

85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 19:13:04.47 ID:GsX94ckT0

憂「ん、ぶぷっ、ちゅくちゅっちゅちゃ」

唯「はあ……ん、んんー……」

 いくら我を失っていても、長い経験のせいか憂の舌は自然と気持ちのいいキスをしようとしている。

 憂が気持ちいいキスは、私の気持ちいいキスなわけで、

 あまり激しく攻めてこられると意識が飛びそうになる。

唯「んん、んいっ、ぅいっ……」

 思わず憂の名前を叫びそうになるが、なんとか小さな声に押しとどめる。

 声を出したいぶん、ひたすらに憂の頭をかき撫でる。

憂「は、はむっ、ちゅふ」

唯「うい。ぁむ、もぐ、ふ……うい」

 なるべく諭すように、落ちつけるように憂を呼び続ける。

憂「ぺふ……れろ、ちゅぅ……ちゅ」

86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 19:17:07.30 ID:GsX94ckT0

憂「ん……」

唯「……」

 静かにくちびるが、ただ押しつけられる。

 眠る時のキスを強くしたような感じだ。

憂「……ちゅ」

 やがて、くちびるが離れる。

唯「落ちついた?」

憂「うん……ごめんね」

唯「ううん。私も憂にちゅーしてもらって助かっちゃった」

憂「……」

 憂はまだ席に戻ろうとしなかった。

 私も画面に目をやる勇気が出ないで、憂を見つめている。

87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 19:21:19.36 ID:GsX94ckT0

憂「お姉ちゃん……」

 憂が目を閉じた。周りは真っ暗だ。

唯「しーだよ。周りの人に迷惑にならないように」

憂「わかってる……ん」

 私の膝先に腰掛けて、もたれかかるように憂が顔を近づけてきた。

唯「んっ……」

 くちびるが触れあって、ぞくりとする。

 そのまま軽く唇を突き出したりして、柔らかい感触を楽しみ幸福な時間を過ごす。

 耳には憂の鼻息と、映画の音声だけが聞こえていた。

憂「ちゅん、はぁ。おねえちゃん、ん……」

 BGMでの判断だけれど、犬は最後に死んだ。

88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 19:25:09.75 ID:GsX94ckT0

――――

唯「はふー」

 外のベンチで冷めたポップコーンをかじり、コーラを飲む。

憂「結局だめだったね」

唯「なにが?」

憂「なにがって……」

 くすっ、と憂が笑う。

憂「映画がかな」

唯「そだねー……」

 背もたれにそって首を後ろに倒し、再度ポスターを眺めてみる。

唯「次はあのけいおんっていうの見てみる? 姉と妹が……R18だってや」

憂「お姉ちゃんってほんとエッチなやつばっか目がいくよね……」

唯「憂だってエッチなキス教えてくれたくせにー」

89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 19:28:57.16 ID:GsX94ckT0

憂「あ、あれはエッチっていうか……」

 寂しさを紛らわせたかっただけ、なんだろうけど、そう言ってしまうのは抵抗があるらしい。

 私も同じだ。

 憂との恋の始まりが、両親が帰ってこない寂しさを

 埋めあわせるためだけにしてあげたキスだなんて、信じたくない。

憂「……もっとお姉ちゃんが欲しかっただけだもんっ」

唯「あらあら、そうですかー」

 憂はもっともらしい言い訳をつかい、口をポップコーンでいっぱいにした。

 私もポップコーンのバレルに手を伸ばす。

唯「あむ。うん、おいふぃ」

憂「う、うぅ……ふ」

 塩味を噛んでいると、憂がしかめ面をした。

90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 19:33:08.36 ID:GsX94ckT0

唯「あっ」

 そういえば憂は塩味が苦手なのだ。

 普段映画館でポップコーンを買う時も、

 個別でキャラメルポップコーンを買うのに、急いでいたせいで忘れていた。

 塩味のポップコーンを口いっぱいにいれてしまって、憂は少し涙目になっている。

唯「ほいほい憂、出していいよ」

 口を開き、憂のあごの下に顔を持ってくる。

憂「は、もがっ」

 憂が覆いかぶさり、口を開けて舌でポップコーンを押し出した。

 砕けたポップコーンがぼたぼたと落ちてくる。

唯「……ん、は」

 憂の唾でたっぷり湿っているのもあって、胸がドキドキする。

 竹の子を食べさせられるよりよっぽどいい。

92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 19:37:01.45 ID:GsX94ckT0

憂「はぁ、はふぅ……」

 わざわざ歯で舌をそいで、唾液のサービスをくれると憂は急いでコーラの紙コップを手に取った。

 私は姿勢を戻し、憂の口に入ったポップコーンをたっぷり噛む。

唯「んふふ……」

憂「な、なに笑ってるの?」

 ごしごし涙を拭いてストローをちゅーちゅー吸った後、憂が怒ったように言う。

唯「やっふぁね……」

 少し飲みこむ。

唯「おいひいものを憂に食べさへへもらうほ、ふっごくおいふぃなっへ」

憂「う……もう、そういうこと言わないの」

唯「なんれー?」

 憂は答えなかった。

 口移しを教えてくれた、というか思いついたのも憂だ。

 もとはおいしいものをよりおいしく食べさせてくれるという話だったのに、

 いつから嫌いなものをどうにか食べるための方法になってしまったのだろう。

96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 20:00:06.31 ID:GsX94ckT0

憂「ふぺ。まだ口の中痛いなぁ……」

唯「だいじょぶ?」

憂「んー……口直ししようよ。アイス屋さん!」

唯「しかし……まだポップコーンが」

 バレルにはまだ半分ほどポップコーンが残っている。

 確かにこれを今すぐ食べきろうというのも辛いけれど。

憂「お家に持って帰って食べたらいいんじゃない?」

唯「えぇー?」

 しけってしまったポップコーンはあまり美味しくない。

 憂がふやかして食べさせてくれるというなら別だけれど。

唯「……あ、そうか。それでいいのか」

憂「ん?」

唯「なんでも。ポップコーンは持って帰ることにしよ」

98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 20:04:18.70 ID:GsX94ckT0

憂「うんっ、それじゃアイス屋だよね」

 私のたくらみなどつゆ知らず、憂はぱあっと笑顔になった。

 ベンチから立って、ポップコーンに蓋をかけると私の手を取る。

唯「場所は覚えてるんだよねぇ」

憂「えっと、右だったよね」

唯「そそ、あっちあっち」

 おいしいアイスが食べたいのは私も同じなので、憂を引っぱって歩き出す。

唯「……」

 そういえば、まだ私からキスができていない。

 憂を振り返る。

唯「わっぷ!」

 それを予期していたかのように、キスが飛んできて唇を奪われる。

99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 20:08:38.13 ID:GsX94ckT0

憂「へへっ」

唯「うーむむむ……」

 姉として恋人として、このまま受け身にキスされるばかりではいけない。

 妹なんて道の真ん中で押し倒すぐらいでなければ。

唯「行くよっ、憂」

 憂の手を引っぱり、アイス屋へ向かっていく。

 そこでこれまで後れを取って来たぶんをみんな返してやる。

――――

唯「っと、それの大きいのひとつで。はい、ひとつです」

 大きなジェラートアイスを頼み、憂に店の一番奥の席を確保させておく。

 少し値段は張るけれど、二つ頼むよりは安いし、おいしくなる。

唯「お待ちどうっ」

 白いアイスを手に、憂の横へ腰かける。

101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 20:12:09.64 ID:GsX94ckT0

憂「ありがと、お姉ちゃん」

 アイスは憂に持たせる。

 私たちは座席の上で向き合うような形になって、くちびるの間にアイスを持って来させる。

唯「はむっ……」

 まずはてっぺんにかぶりつく。

 その横から憂がぺろぺろと舌を這わす。

唯「んー、おいふぃ♪」

憂「おいしいね~♪」

 憂がアイスを半回転させると、今度は私がペロペロと舐め、憂がかじった。

憂「ん~♪」

 ほっぺたを押さえた憂の表情が幸せそうでちょっと嫉妬するけれど、

 私はあれ以上の顔をさせられるのだ。

 怒る必要なんてない。

102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 20:16:05.48 ID:GsX94ckT0

 憂も反対側からぺろぺろと舐め、溶けたぶんをすする。

 舐める範囲をわざと大きくして、憂と舌をぶつける。

 冷たい感覚は、普段のキスでは得られない。

憂「お姉ちゃん、鼻にアイスついちゃってるよ」

唯「えっ、ホント? とってー」

 憂がちょっと首を伸ばして、私の顔に接近する。

 冷え冷えの舌が、私の鼻をぺろりと舐め、くちびるがちゅっと吸っていった。

唯「ん、ありがと。……あれっ、憂も」

 指にアイスを乗っけて、憂のくちびるに塗りつける。

憂「んっ……」

 憂が持っていたアイスを横によける。

 服が汚れる心配もない。遠慮なくくちびるにしゃぶりつく。

憂「はっん、……っ!」

104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 20:20:05.95 ID:GsX94ckT0

 くちびるを舐められるのも憂は結構好きで、

 憂をえっちな気分にさせたいときはくちびるを舐めてやるといいのだ。

憂「はぁ、ぁむ、ちゅっ」

 案の定、離れようとした唇に憂は吸いついてくる。

唯「どしたの憂? アイスがついてただけだよ?」

憂「ん、う、もうっ……」

 アイスが元の位置に戻ってきて、むくれたまま憂は再度口をつける。

唯「えへへ。ぺろ、ぺろ……」

 アイスはだいぶ量が減って、丸まってきた。

 舌ももう普通に触れあっているけれど、気にせずアイスを舐め続ける。

 憂の舌はいくらか私に激しいキスを求めるような動きをしているが、相手にしない。

憂「んぅー……ぺろ」

 悩ましげに憂はぶー垂れる。

105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 20:24:04.10 ID:GsX94ckT0

 冷たくて、アイスをいっぱいにまとった憂とのキスは普通においしい。

 口の中まで攻め込んで、ほっぺたの裏側なんかの冷たさも味わってみたいけれど、

 それはアイスがもう少し減るまで我慢だ。

憂「ぺろっ、ぺろ……」

唯「んー、じゅっじゅ」

 コーンよりも下までアイスが減っていく。

 口の中がきんきんに冷えている。

 そろそろ、もういいだろう。

唯「……うーいっ」

 甘えた声を出して、憂の頭に手を伸ばし、撫でてあげる。

憂「ん……おねぇちゃん」

 ほとんどコーンだけになったアイスが退けられる。

107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 20:28:09.43 ID:GsX94ckT0

 さっきまで絡め続けていたせいか、憂の舌先から白い唾液が垂れている。

 まずはそれに吸いつき、くちびるを重ねて舌を押し返す。

憂「はっ、んぐ」

 憂の口の中は冷蔵庫みたいにひんやりしていた。

 アイスなんかよりずっと舐めたかったほっぺたの内側に頬をこすりつける。

憂「ん、んむっ」

 かまって、と言いたげに頬のところへ憂の舌がやってくる。

 舌の裏側を舐められて、つい腰が動く。

唯「んい……」

 そんなに構ってほしいなら構ってあげよう。

 ただしお姉ちゃんの遊びには最後まで付き合ってもらいますからね。

108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 20:32:10.93 ID:GsX94ckT0

憂「はぁ、んん……♪」

 ひんやりした舌同士を絡めると、憂は幸せそうな声を漏らす。

 目を薄く開ける。

 一生懸命に舌を絡めているときの憂の顔は本当にかわいくて、何度見ても胸がきゅんとする。

 憂にこの顔をさせられるのも私だけ。

 こんなに可愛い憂の顔を快感に歪ませられるのも私だけだ。

唯「ん、ちゅぅちゅ、れろっ」

憂「はふ、ちゅちゅぅちゅ……ふぁん、ぅ」

 舌をぴちゃぴちゃさせたいのを我慢していたせいか、

 それとも公共の場だからか、舌が冷たいからか、憂がいつもより早く喘ぎを漏らす。

憂「はぁん、んっ……ひょっほ」

唯「れ、じゅうぅじゅちゅ……れぅれろ」

 大きな快感が恥ずかしいのか、憂がちょっと慌てるが無視して舌でじゃれついていく。

109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 20:36:08.90 ID:GsX94ckT0

 裏に忍ばせて持ち上げて落とし、舌先で表を塗りつぶすようにこすり、

 上あごに逃げたり、また襲いかかったり。

 憂の体がぴくぴく震え、時折大きく椅子がガタンと言う。

憂「ら、ぁめっ、待っ……おねえひゃ、いっひゃうから、いふってばぁ!」

唯「んー、うい~……かわいいよぅ」

 何年キスしていると思っているのだろう。

 憂がいっちゃいそうになっていることくらい分かっている。

 おかしな主張をしているから、無視をして攻め続ける。

 口の中はすっかり熱くなってしまっていた。

憂「んん、は、くちゅ……ちゅ、ちゅぅ……!!」

 憂が自らのくちびるを塞ぎこめるように、私の舌に強く吸いついた。

 テーブルの上に、コーンがぼとりと落ちる。

111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 21:00:13.43 ID:GsX94ckT0

憂「っぅ、ぷは……ぇ」

 仰け反るように離れた私と憂の間に、唾液の糸が伝う。

 憂の激しい吐息に揺れて、すぐぷつりと切れてしまった。

唯「ういー、いっちゃったね?」

 コーンを拾い、ひと口かじる。

憂「……はぁ、は……って、らいもん……」

 ろれつが回らないなりに、憂はどうにかそう言う。

唯「うそつき。ほら憂、コーン落としたでしょ?」

憂「……?」

唯「見てごらん、ここ。握りしめた跡が見えでしょ?」

憂「う、うん」

 ようやく姿勢を直して、憂はこくりと頷く。

112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 21:04:08.19 ID:GsX94ckT0

唯「知ってるぅ、憂? 憂ってね、いく時……」

 耳にくちびるをつけ、その続きをささやく。

憂「あ……ぁ」

 離れると、憂は顔を真っ赤にしていた。

 そして慌てて私の手からアイスのコーンを奪い取ると、

 一気に口に押し込んで噛み始めてしまった。

 コーンの中に残っていたアイスが惜しいところだけど、

 憂の照れた顔が見れただけ、その程度のアイスをくれてやる価値はある。

憂「も、もう出るよ!」

唯「ほいほーい♪」

 憂に押し出されて、アイス屋を出る。

 前に立っていたビルの時計で、もう4時を回っていることを知る。

113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 21:08:17.27 ID:GsX94ckT0

唯「……どうする憂?」

憂「へ?」

唯「もう4時だし、今からお買い物してたら帰るころには暗くなっちゃうよ」

憂「あー……」

 憂も時計を見上げる。

唯「欲しいものがあるならいいけど……」

憂「ううん、今日はもう暗いのはやだ」

 映画館での出来事が尾を引いているみたいだ。

 言われて、私もチクリと胸に痛みが走った。

唯「じゃあ、もう帰ろっか」

憂「うん。駅は……」

唯「あっち、あっち」

114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 21:12:05.20 ID:GsX94ckT0

 憂を連れて、駅に向かう。

 暗くなる前に帰らないと、途端に家に向かうのが大変になる。

 私が初めて憂にキスをしたのも、空がうす暗んできた時間だった。

 だからだろうか、私も憂も、暗くなるとキスが欲しくなってしまう。

 いや、欲しがっているのではない。必要になってしまうのだ。

 電車の中から、赤色に染まっていく太陽を見つめる。

 こてん、と憂の頭が肩に乗る。

 疲れたようで、眠ってしまっていた。

 私まで寝ては乗り越して夜になってしまうので、

 明るいほうの空を眺めて、電車が街に帰るのをじっと待っていた。

唯「……ん?」

 憂の髪から、塩の匂いがかすかにした。

115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 21:16:07.87 ID:GsX94ckT0

唯「……」

 ポップコーンはどこへ消えた。

 バッグの中に入れた覚えはない。

 アイス屋に行く時は憂が手に持っていて――

唯「っく……」

 あそこのテーブルに置いてきたのだ。

 晩ご飯のあと、一粒ずつ憂に口移ししてもらう予定だったのに。

 あんなところで最後までちゅーをして、慌てさせるんじゃなかった。

 どうにも今日はままならない一日だった。

 私のペースに持ち込めたと思ったのに、こうしてばちも当たった。

 私がどんな悪いことをしたというのだろう。

 いまだに「憂とのキス依存症」から抜け出せないのがそんなに悪いことだとでもいうのだろうか。

116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 21:20:12.00 ID:GsX94ckT0

唯「はぁ……」

 仕方ない。

 帰ったらたくさん憂とキスをしよう。

 そうすれば心も晴れる。

 私は眠っている憂のあごを持ち上げ、そっとくちびるを近づける。

憂「……ん」

 まだ、アイスの甘い味がした。

唯「……あ」

 キスは今のうちに満足するぐらいしておいたほうがいいかもしれない。

 明日はあずにゃんが部活があるとかなんとか言っていた。

 あまり夜遅くまでキスをしすぎるとすっぽかす可能性がある。

 いや、すっぽかしてもいいかもしれない。

117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 21:24:16.76 ID:GsX94ckT0

 憂のくちびるを吸う。

憂「んー……?」

 もぞもぞと憂が身をよじる。

 そして、ぺろぺろと私のくちびるを舐めてきた。

唯「ぁ、ん……」

憂「んー、あむ、ちゅちゅぅ」

 起きているのかいないのか、寝ぼけた調子で抱き着いてきて、憂がくちびるを吸ってくる。

 幸せな時間がまた始まった。

 はたして明日、きちんと部活へいけるだろうか。

 そもそも今、きちんと桜ケ丘で電車を降りられるだろうか。

 こうして頭をよぎったということは、きっと大丈夫なんだろう。

120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 21:28:06.01 ID:GsX94ckT0 [83/83]

 安心して、憂の頭を撫でて、もうすこしキスを強くしてもらう。

憂「はむ、ちゅ、きゅちゅううぅ」

唯「ふぁ、ん、んぃ……」

 きっと今日は、私が憂に甘える日だったのだ。

 憂がお母さんやお父さんをつとめる日で、だからポップコーンはなくなったのだ。

 上のくちびると下のくちびる。

 二つのくちびるで、優しさを感じる。

 まもなく、桜ケ丘――。

 無機質のアナウンスがした。


  終わり。


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