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イノケンティウス「おなかへった」上条「」

3 名前:ござるの人 ◆AOfoWrbTbe5x [] 投稿日:2011/02/06(日) 21:12:26.27 ID:RP6vP0S20 [2/43]
 七月二十日。上条当麻にとって当たり前過ぎる不幸が続く夏休み。
 上条はいつものようにビリビリに追いかけられ、雷を落とされ、冷蔵庫の中身が腐ったりしていた。
 ただ一つ、違うことは。

イノケンティウス「おなかへった」

 布団を干そうとベランダに出たら、ベランダが燃えていた。ように見えた。いや、見えていただけではなく
実際焦げていたのかもしれない。
 しかし、重要なことはそんなことではない。今、目の前で、喋って(?)いるモノのことだ。


4 名前:ござるの人 ◆AOfoWrbTbe5x [] 投稿日:2011/02/06(日) 21:13:07.92 ID:RP6vP0S20 [3/43]
イノケンティウス「おなかへった、って言ってるんだよ?」

上条「いやいや……、ええ?」

イノケンティウス「ちっ、やはりぶりっ子は駄目か。時代の移り変わりは激しいな。10年前ならあるいは」

上条「いやいやいやいや、何さらっと演技カミングアウトしてるんでせうか!? というか、なんなんだお前は!?」

イノケンティウス「はじめまして。イノケンティウスです」

上条「これはご丁寧に、俺は上条当麻……じゃなくて! 何で炎が喋ってるんでせうか!?」

イノケンティウス「それはほら、アレがいい感じにアレしてるから、結局はアレってな訳よ」

上条「えーい、訳がわからんって訳よ! ふ、不幸だー!!」

 上条の叫びは空しく木霊した……。

6 名前:ござるの人 ◆AOfoWrbTbe5x [] 投稿日:2011/02/06(日) 21:15:10.45 ID:RP6vP0S20
 一方その頃、街中ではある二人の男女が忙しなく歩きまわっていた。

男「ええいくそっ! 召喚術でもあるまいし、『魔術』が意思を持つなんて笑い話にもならんぞ!」

女「しかし事実です。早いところ見つけ出さないと、禁書目録探しもままなりません」

男「あれは僕の切り札だからな……早いところ見付けないと……」

男「どこに行ったんだ……『イノケンティウス』……」 一方その頃、街中ではある二人の男女が忙しなく歩きまわっていた。

男「ええいくそっ! 召喚術でもあるまいし、『魔術』が意思を持つなんて笑い話にもならんぞ!」

女「しかし事実です。早いところ見つけ出さないと、禁書目録探しもままなりません」

男「あれは僕の切り札だからな……早いところ見付けないと……」

男「どこに行ったんだ……『イノケンティウス』……」

7 名前:ござるの人 ◆AOfoWrbTbe5x [] 投稿日:2011/02/06(日) 21:16:28.39 ID:RP6vP0S20
 果たして男の呟きはイノケンティウスに届いたのだろうか。それは彼(?)の目の前にいる上条以外に知る由も無い。

イノケンティウス「使い古しの油とかある? 重油とかならよりいいけど」

上条「一般人の家に重油なんてありませんよ……。油ねぇ、これでいいのか?」

 しかし何故自分はこんなにも自然にこの炎の塊と話せているのだろうか、と上条は首をひねった。

イノケンティウス「あー、油うめぇ。燃えるわー」

上条「あ、やっぱり炎なんですね」

 イノケンティウスは油を自らの手にたらして食事(?)をしている。


9 名前:ござるの人 ◆AOfoWrbTbe5x [] 投稿日:2011/02/06(日) 21:18:21.32 ID:RP6vP0S20
上条「しかし……これで炎をまとった能力者って線はほぼ消えたな。というか普通に部屋に上がりこんで
何も燃えてないって時点で十分おかしいと思うのでせうが」

イノケンティウス「それは俺が魔術の塊みたいなもんだからな。オンオフくらいは切り替えられますって」

上条「今のところもう一回」

イノケンティウス「オンオフの切り替えられるいい男?」

上条「捏造すんな。その前」

イノケンティウス「魔術の塊?」

上条「そうそれ。魔術って何だ?」

イノケンティウス「魔術は魔術よ。科学の反対のもんさ」

10 名前:ござるの人 ◆AOfoWrbTbe5x [] 投稿日:2011/02/06(日) 21:19:47.95 ID:RP6vP0S20
上条「杖を振ったら少女がきわどい服に変身する?」

イノケンティウス「なるほど、上条くんの好みはそういうのなのか」

上条「違……うと思う、いや違う、違うって!」

イノケンティウス「まあまあ。ともかく、君たちの思う魔術に、しっかりした理屈と面倒な手順を加えたものが
魔術だと思えば理解は早いだろう」

上条「しかし魔術って言われてもなぁ……」

イノケンティウス「では訊くが、この街で油を食事にして生きるような者がいるか?」

上条「いないからって魔術の証明にはならないんじゃないか?」

イノケンティウス「難しい話だ。まぁ信じてもらわなくてもいい。それじゃ、油ごちそうさん」

13 名前:ござるの人 ◆AOfoWrbTbe5x [] 投稿日:2011/02/06(日) 21:21:38.35 ID:RP6vP0S20
上条「ちょっと待てよ」

 腕らしき部分を振って出て行こうとしたイノケンティウスを、上条は止めた。

上条「なんでベランダに引っかかっていたか訊かないと、上条さん消化不良で困っちゃいますよ」

イノケンティウス「うーむ……、一言で表すならば、ストライキかな?」

上条「ストライキ?」

イノケンティウス「うむ。私の術者……ステイル・マグヌスというんだがな。こいつといまいちそりがあわなくてな」

上条「そり?」

16 名前:ござるの人 ◆AOfoWrbTbe5x [] 投稿日:2011/02/06(日) 21:23:22.27 ID:RP6vP0S20
イノケンティウス「例えば、予め待ち伏せしていて、自らを囮に使い、その隙に俺が後ろからどーん。
という戦法もできるだろうが、あのバーコードバトラー、ふざけたことに正面からしか戦わないんだ」

イノケンティウス「おまけに、カードが破壊されない限りは俺が不死だということを上手く利用しようともせず、
ただ愚直に正面から突撃させるばかり」

イノケンティウス「ようやく自身も参加したかと思ったら、俺の後ろから炎の剣もって特攻」

イノケンティウス「もうね、馬鹿かと。阿呆かと」

イノケンティウス「なんでいくらでもある策の中でそんな阿呆な策ばかり使う訳かと」

イノケンティウス「もうね、俺正直あいつからヤムチャの香りしかしないのよ。調子乗って突っ込んで、
敵の強さを体よく見せる為の捨て駒の香りしかしないのよ」

イノケンティウス「そりゃ意思も持って逃げるってもんだろ。むしろ何も言わず働いてる奴らの方がどうかしてる」

イノケンティウス「で、逃げてきた。そういうわけよ」

 かのクーガー兄貴も舌を巻く勢いでそうまくし立てたイノケンティウス。その表情――というか、単に顔の辺りだが――
が悲しく歪んだように見えた。

19 名前:ござるの人 ◆AOfoWrbTbe5x [] 投稿日:2011/02/06(日) 21:24:58.74 ID:RP6vP0S20
>>17その発想はなかったでござる



上条「なるほど……。事情はわかった。でもな、やっぱり話し合いって重要なんだと上条さんは思う訳で……」

イノケンティウス「話し合おうとはしたさ。だがあいつは、これまで苦楽を共にした俺を、
まるで化け物でも見るような目で見てきやがったのさ……そして、強制的に捕縛されそうになった」

 実際その見た目はどうかと……と口を挟める雰囲気ではなかった。上条が必死に言葉を探していると、
イノケンティウスがそれを遮った。

イノケンティウス「下手な慰めはいらんよ。同情されても空しいだけだ」

上条「でも……でもそいつは……」

イノケンティウス「お人好しだな、上条くんは」

上条「普通誰だってそうするだろ。お前、見た目はあれだけど、話して見るといいやつだったし」


20 名前:ござるの人 ◆AOfoWrbTbe5x [] 投稿日:2011/02/06(日) 21:26:17.11 ID:RP6vP0S20
イノケンティウス「話してみると……か。俺ももう一度、あいつと話してみるかな……」

上条「行くのか」

イノケンティウス「ああ」

上条「また……会えるのか?」

イノケンティウス「さあな」

上条「俺の力が必要になったらいつでも言ってくれ。魔術師ってのがどんだけ偉いのかは知らないけど、
長年連れ添った大事な『友達』にそんなことするような奴だ。一発くらいぶん殴ってやるよ」

 その言葉を背に受け、イノケンティウスは顔に当たる部分を歪め……いや、『苦笑しながら』主の下へと向かった。

22 名前:ござるの人 ◆AOfoWrbTbe5x [] 投稿日:2011/02/06(日) 21:28:09.97 ID:RP6vP0S20
>>21原作読めばいいでござる



上条「魔術師、か……」

 果たして彼の言っていたことが全て正しいとは信じられない。しかし、上条は確かに見た。自らが信じた主に見捨てられ、
涙はなくとも『泣いていた』彼を。
 もしもまた彼に出会ったなら、今度は新しいサラダ油くらいご馳走してやろう、そう無理矢理明るい方向に頭を向かわせ、
上条は部屋を出て行くのであった。

上条「あ、補習……」

 この後、小萌先生にたっぷりと絞られた上条は、青髪ピアスから散々羨ましがられるのである。
 なんのことはない、いつも通りの日常が、今日も過ぎていく……。

男「見付けたぞ、イノケンティウス」

イノケンティウス「話し合いは重要ね……まあ、やってみるか」

 しかし、日常は既に崩れ去っていたことを、今の上条は知らない……。

23 名前:ござるの人 ◆AOfoWrbTbe5x [] 投稿日:2011/02/06(日) 21:29:35.41 ID:RP6vP0S20
 補習も終わり帰路につく上条。小萌先生の説教と、青髪ピアスの妬みで既に疲れはマックスだ。
早いところ家に帰ろう……そう思い、寮の前についた上条は足を止めた。止めてしまった。

男「うん? おかしいな、この辺りには人払いのルーンを刻んでおいたはずなんだが」

 軽い口調でそう言うも、男は上条から目を離さない。男は、180はある身長に漆黒の修道服といういでたちだ。
しかしそれになんらおかしいことはない。おかしいことといえば……。

上条「今時バーコードバトラーでせうか……」

 右目の下に彫られたバーコードの刺青は、その特徴的な赤い髪も、両手にはめた10の銀の指輪も、
耳につけた毒々しいピアスも霞むほどに異彩を放っていた。

 しかしそれよりも上条が気になるのは、彼の足元で丸く燃えている炎の塊である。

25 名前:ござるの人 ◆AOfoWrbTbe5x [] 投稿日:2011/02/06(日) 21:31:05.18 ID:RP6vP0S20
>>24貴様見ているな!(過去作的な意味で)



上条「なああんた、足元燃えてるぜ」

男「ああ、気にしないでくれ。その記憶も消させてもらうから」

 軽い口調で言うが、それは実際酷くおかしな話だ。
 科学が発達した現代であっても、ある程度の機械無しに記憶を消すことなどできない。
 仲間がいるのか、という現実的な発想の前に上条は、ごく自然にその単語を喉奥から搾り出していた。

上条「魔術師……!」

男「……どこで知ったかしらないけど、大人しくしていた方が身の為だよ。君だって痛い思いはしたくないだろう?
ああ、どうせ忘れさせるだろうが一応名乗っとくよ。ステイル=マグヌス。よろしくね」

上条「上条当麻だ。こちらこそよろしく」

26 名前:ござるの人 ◆AOfoWrbTbe5x [] 投稿日:2011/02/06(日) 21:33:13.61 ID:RP6vP0S20
 上条は、その名前に聞き覚えがあった。そのいでたちに、聞き覚えがあった。
『私の術者……ステイル・マグヌスというんだがな』……。
『あのバーコードバトラー、ふざけたことに正面からしか戦わないんだ』……。

上条「じゃあ……そこの炎の塊が、イノケンティウスって訳か……!」

ステイル「……一体どこまで知ってるか知らないが、見過ごす訳にはいかないね。最も、見過ごすつもりもないけれど。
……『Fortis931』!!」

 轟! という音と共に、バレーボール大の火球が上条目掛けて飛来する。
 この程度の大きさ、大能力者程度ならば一瞬で生成できるだろうが、それ以下にはいくらかの『溜め』の時間が必要となる。
勿論、大能力者にもなれば当然顔はある程度周囲に知れる。だが、目の前のこの男は、見知らぬこの男は、
それを一瞬でやってのけたのだ。

27 名前:ござるの人 ◆AOfoWrbTbe5x [] 投稿日:2011/02/06(日) 21:35:53.73 ID:RP6vP0S20
ステイル「おっと、消し炭にしてしまったかな?」

 くわえたタバコの端をピコピコと揺らしながら、愚かにも首を突っ込んでしまった少年の骸を見付けようとする。だが。

上条「……今のが全力か?」

ステイル「な、……に?」

 少年は、上条は立っていた。手加減していたとはいえ、自慢の魔術を受けて。
 ステイルは、なるほど、学園都市の人間も無能ではないらしい、と認識を改めた。
 しかし、認識を『その程度』にしか改めなかったのが間違いであった。ヤムチャ伝説の幕開けである。

ステイル「炎よ――巨人に苦痛の贈り物を!」

 ステイルは吼える。自らを最強たらしめんと。これで倒せなければ、そこで団子になっているイノケンティウスしか
もう攻撃するすべはない。

29 名前:ござるの人 ◆AOfoWrbTbe5x [] 投稿日:2011/02/06(日) 21:39:52.06 ID:RP6vP0S20
 しかして、現実は非常であった。ステイルご自慢の炎剣は、上条の右手に触れた瞬間、跡形もなく消え去った。

ステイル「な……バカな!?」

上条「てめぇ……イノケンティウス(あいつ)の主なんだってな」

ステイル「くっ、くそ! 炎よ! 巨人に苦痛の贈り物を!」

上条「――いいぜ。てめぇが自分の仲間と話し合いもせずに無理矢理捕まえるようなら……」

ステイル「効かないはずがない! これは僕の、現時点で最強の――」

上条「その幻想を、ぶち殺す!」

 轟! と炎剣が唸る。まるで炎剣もまた、無策な主に泣いているような、悲しい唸りであった。
 その唸りは上条の右手に当たった途端消え去り、代わりに上条の拳がステイルの顔面に突き刺さる音が響く。


30 名前:ござるの人 ◆AOfoWrbTbe5x [] 投稿日:2011/02/06(日) 21:42:44.92 ID:RP6vP0S20
上条「立てよ三下! まだ終わっちゃいないぜ!」

ステイル「…………」

上条「……あれ?」

 ステイルは、被弾役をいつもイノケンティウスに任せていた。
 つまるところステイルは、打たれ弱かったのだ。

上条「……えーっと……」

 白目を剥いて倒れるステイルをしばらく見つめ、ふと気付く。

上条「そうだ! イノケンティウスは!」

 上条は地面に転がる炎製の団子に駆け寄り、どうすればよいのかと手をかざした。右手を。
 するとパキッという小気味いい音と共に、団子が徐々に人型へ伸びていった。

31 名前:ござるの人 ◆AOfoWrbTbe5x [] 投稿日:2011/02/06(日) 21:45:17.52 ID:RP6vP0S20
イノケンティウス「なんだ……俺を処分する手立てでも決まっ……上条くんじゃないか、久しぶり」

上条「いやさっき会ったばかりだろ……って違う! お前! 大丈夫だったのか?」

イノケンティウス「まぁな。なんだか知らんが、俺を捕縛していた術も解けたみたいだし」

上条「多分俺の右手の力だな。俺の右手は、異能の力は全て消すことができるんだ」

イノケンティウス「なるほど。ん? ってことはつまり、君が触ると俺は消えるのか」

上条「そうなるな」

イノケンティウス「俺の側に近寄るな――ッ!!」

上条「うわそれすげぇむかつく」

32 名前:ござるの人 ◆AOfoWrbTbe5x [] 投稿日:2011/02/06(日) 21:48:39.81 ID:RP6vP0S20
イノケンティウス「冗談はこれくらいにして。ステイルはどこに行ったんだ?」

上条「ステイルならそこに転がって……あれ?」

 いない。そこに先ほどまで転がっていた目立つ赤と黒のでくのぼうは綺麗さっぱり消え去っていた。

上条「……逃げられたか。そうだ、イノケンティウス。お前、これからどうするんだ?」

イノケンティウス「ステイルがちゃんと話をしてくれるのならそれに越したことは無いが……難しいな」

上条「なら、ひとまず俺の家に来いよ。油くらいなら出してやるからさ」

イノケンティウス「いいのか? 巻き込むことになるぞ?」

上条「もう十分巻き込まれてるさ。それに、こんな中途半端なところで放り出しちゃ、上条さん落ち着かないのよ」

イノケンティウス「……すまん。助かる」

33 名前:ござるの人 ◆AOfoWrbTbe5x [] 投稿日:2011/02/06(日) 21:51:34.30 ID:RP6vP0S20
 イノケンティウスがますますに上条への信頼を寄せている一方、ますますに信頼を無くしている男がいた。

女「まったく……ステイル=マグヌスともあろう者が、何をやっているのですか」

 女――神裂火織は、大きく溜め息を吐いた。

ステイル「返す言葉もないね」

神裂「とりあえず今はインデックスを優先しましょう。もう時間もあまり残されていません」

ステイル「そうだね。……おや? 神裂、あそこで伸びている白いの、見覚えないかい?」

 裏路地の端っこで、ぱったりと倒れているその白い物体。それこそまさに、餓死寸前のインデックスであった。
 正史では上条に飯を食わせてもらい事なきを得るのだが、このSSではそうはいかない訳で……。

インデックス「おなかへった……死ぬ……」

 お互いに顔を見合わせたステイルと神裂であったが、それが命に関わるレベルで減っていることに気付くと、
大慌てでファミレスに駆け込んだのであった。
 そうしてインデックスは、空腹以外に命の危機が迫っていると知るのだが……。

35 名前:ござるの人 ◆AOfoWrbTbe5x [] 投稿日:2011/02/06(日) 21:53:44.79 ID:RP6vP0S20


 上条当麻の家でもある学生寮の一室で、油で自らを燃やしていたイノケンティウスは、不意に顔を上げた。

上条「どうした? イノケンティウス」

イノケンティウス「魔術師が来る。ステイルに神裂に……インデックス」

上条「三人!? まさか、この学生寮を戦場にする気じゃないだろうな!?」

イノケンティウス「いや、それはないと思う。インデックスを連れてきているのがその証拠だ。
少なくとも、ここでドンパチかますつもりはないと思う」

上条「それならいいけどな……」

 そうして、ドンドン、と、多少乱暴なノックが上条の家に響いた。
 上条は開けるべきか逡巡したが、イノケンティウスの言葉を信じて開けることにした。

36 名前:ござるの人 ◆AOfoWrbTbe5x [] 投稿日:2011/02/06(日) 21:56:35.41 ID:RP6vP0S20
インデックス「こんばんは、なんだよ!」

 目の前には、笑顔の少女。とても敵には見えない。

上条「えーっと……こんばんは?」

インデックス「イノケンティウスのことで話があるんだけど、入ってもいいかな?」

上条「……後ろにいる奴らに、暴れないって言い聞かせてくれたら考えないこともないが」

インデックス「もうたっぷり言い聞かせたから大丈夫なんだよ! お邪魔します!」

 そういうと、勝手に家の中に入るインデックス。その後ろに、頭に歯型をつけられたステイルと神裂が続く。


37 名前:ござるの人 ◆AOfoWrbTbe5x [] 投稿日:2011/02/06(日) 21:59:23.83 ID:RP6vP0S20
上条「で……ようやくまともに話し合う気になったのか? バーコードバトラー」

ステイル「僕の名前はステイルだ。……いや、インデックスに怒られて目が覚めたんだよ」

上条「ふーん……で、そっちのお二人さんは?」

神裂「私はイギリス『必要悪の教会』所属の神裂火織と申します」

インデックス「同じく、同教会所属のインデックスなんだよ」

神裂「私とステイルは、インデックスの保護の為にここまでやってきたのですが……」

ステイル「何故か本来意思を持たないはずの魔術に意思が宿ってしまってね。結果は見ての通りだよ」

 全員がいっせいにイノケンティウスを見ると、イノケンティウスは照れ隠しに頭の辺りを掻いた(ように見えた)。

40 名前:ござるの人 ◆AOfoWrbTbe5x [] 投稿日:2011/02/06(日) 22:00:58.94 ID:RP6vP0S20
>>39猿怖いので支援はありがたいでござる



上条「インデックスの保護って言ったよな。その子を保護してどうするんだ?」

ステイル「記憶を消すのさ」

上条「……え?」

神裂「この子は完全記憶能力を持っています。それにより、魔術書の原典を十万三千冊の数を記憶しています」

ステイル「そのせいで、彼女の脳は常に圧迫されている。こうして定期的に記憶を消さなければ、
彼女の脳はパンクしてしまうんだ」

上条「そんな……馬鹿な話が」

イノケンティウス「あるんだよ、それが」

上条「本当なのか?」


42 名前:ござるの人 ◆AOfoWrbTbe5x [] 投稿日:2011/02/06(日) 22:04:01.12 ID:RP6vP0S20
イノケンティウス「ああ。今までもカードの中から、カードの外から。その光景を見てきた。
彼女は、記憶を消さなければ生きていけない」

上条「そんな……」

神裂「私だって信じたくはありません……しかし事実です。この子の頭の中にある十万三千冊の魔術書は、
この子の脳の85%を食いつぶしているのです……」

上条「そんな……85%……85%?」

 その数値を聞いた瞬間、上条は違和感を感じた。その違和感は徐々に膨らんでいく。

上条「ちょっと電話していい?」

 その違和感が最高潮に達したとき、上条は返事を待たずして既に電話をかけていた。
 その相手とは誰あろう、今回出番無しな小萌先生である。

43 名前:ござるの人 ◆AOfoWrbTbe5x [] 投稿日:2011/02/06(日) 22:06:18.51 ID:RP6vP0S20
上条「はい……はい。ありがとうございました」

 電話を終えた上条は、何ともいえないような表情で神裂とステイルを見た。見られた二人は頭に疑問符を浮かべる。

ステイル「おい、何を話していたんだ?」

上条「いやぁ……なんというか、非常に言いにくい話なのでせうが……」

 記憶のしすぎで死ぬなんてのは、嘘っぱちらしいよ? と上条が言ったところ、
ステイルと神崎は(゜д゜)こんな顔になった。

神裂「つまり……どういうことでしょう?」

上条「いやいやつまりね」

 エピソード記憶云々、というお馴染みの話をし終えた時、ステイルと神裂は抜け殻になっていた。


45 名前:ござるの人 ◆AOfoWrbTbe5x [] 投稿日:2011/02/06(日) 22:08:51.90 ID:RP6vP0S20
>>44ありがたいでござる



ステイル「つまり、僕たちは騙されてたってわけだ」

神裂「それで記憶を消し続けていた私達はなんだったのでしょう……」

上条「いやでもさ、記憶を消す時期になったら苦しんでたんだろ? だったら脳のパンク以外に何かあるんじゃないのか?」

イノケンティウス「……首輪、じゃないのか?」

上条「首輪?」

イノケンティウス「教会が、十万三千冊もの原典を放し飼いにする訳がない。都合よく手元におく言い訳が、
その記憶の消去をせざるをえなくさせる魔術か何かなんじゃないかと思ってな」

神裂「もしそうならば、体のどこかに魔法陣があるはずですね」

46 名前:ござるの人 ◆AOfoWrbTbe5x [] 投稿日:2011/02/06(日) 22:10:34.24 ID:RP6vP0S20
ステイル「そうだな。じゃあインデックス、服を脱いでくれ」

インデックス「…………」

神裂「…………」

上条「…………」

イノケンティウス「…………」

ステイル「探知魔術を使うのに歩く教会が邪魔なだけだ! そんな目で僕を見るな!」

 そうして上条の服を借りたインデックスを、自称天才ことステイルの探知魔術で検査したところ、
喉の奥に件の魔法陣を発見した。

49 名前:ござるの人 ◆AOfoWrbTbe5x [] 投稿日:2011/02/06(日) 22:13:01.98 ID:RP6vP0S20
ステイル「こんなこと言えた義理じゃないのはわかっているが……頼む、インデックスを助けてくれないか」

神裂「あの子の魔法陣を壊せるのは恐らくあなたしかいません。私からもお願いします」

 人助けは別に構わない、しかしいまいち納得しきれない上条であったが。

イノケンティウス「俺からも頼む。俺はいつもこいつらを見ていた。何度も何度も、
記憶を奪わなければ生きていけない辛さに耐えながら、こいつらは生きてきたんだ。……頼む」

上条「そんなこと言われちゃ、是非もないな」

 要するに上条は背中を押してもらいたかっただけなのだ。イノケンティウスの心からの――心があるかは解らないが――
言葉は、確かに上条の心に響き、その背中をしっかりと押した。

上条「じゃあインデックス、口開けて」

インデックス「あーん」

50 名前:ござるの人 ◆AOfoWrbTbe5x [] 投稿日:2011/02/06(日) 22:15:38.25 ID:RP6vP0S20
 インデックスが口を開けると、確かにその喉奥に真っ黒な魔法陣が刻まれていた。
 上条がそれを目指して指を入れる。インデックスが吐き気を堪えるように震えた。その途端。
 バギン! という音と共に上条の右手は体ごと吹き飛ばされた。
 噛み付かれた、という予想では収まらない勢いに全員は息を呑む。そうしてインデックスを見て、もう一度息を呑んだ。

インデックス「――警告、第三章第二節。Index-Librorum-Prohibitorum――禁書目録の『首輪』、
第一から第三まで全結界の破壊を確認。再生準備……失敗。『首輪』の自己再生は不可能。
現状、十万三千冊の『書庫』の保護のため、侵入者の迎撃を優先します」

 真っ赤な魔方陣を目に宿し、呪詛のように呟くインデックス。

インデックス「――『書庫』内の十万三千冊により、防壁に傷をつけた魔術の術式を逆算……失敗。
該当する魔術は発見できず。術式の構成を暴き、対侵入者用の特定魔術を組み上げます」

52 名前:ござるの人 ◆AOfoWrbTbe5x [] 投稿日:2011/02/06(日) 22:17:44.27 ID:RP6vP0S20
 インデックスはまるで操り人形の様に――いや、実際首輪に操られているのだが――首を小さく曲げた。

インデックス「――侵入者個人に対して最も有効な魔術の組み込みに成功しました。
これより特定魔術『聖ジョージの聖域』を発動、侵入者を破壊します」

 バギン! という音と共に、インデックスの目の前で宙に浮かぶ魔法陣から黒い雷のようなものが発生した。
 上条は本能的に気付く。これをぶち壊してやれば、インデックスは救われると。

上条「頼まれちまったもんなぁ! やってやらなきゃ駄目だよな!」

 そう叫びつつ、その雷に手をかざす。しかしその雷は、消える側から次々と襲いかかってくる。
 いくら上条当麻の手が幻想殺しといえど、人海戦術には弱いのだ。
 流石にちょっとやばかったかな、と上条が思い始めた頃、ようやく――ようやくといっても、ほんの数秒だったが――
魔術師二人が我に帰った。

54 名前:ござるの人 ◆AOfoWrbTbe5x [] 投稿日:2011/02/06(日) 22:20:01.45 ID:RP6vP0S20
ステイル「くっ、Fortis931!」

 ステイルがそう叫ぶと、服の下からルーンの刻まれたカードが部屋中に飛び散り、壁や天井に張り付いていく。
 ステイル自身は、押され始めている上条の背中に手を突きつけ支える。

ステイル「あの子の記憶を消さなくて済むならそれに越したことはない。だが……記憶を消せばとりあえず命を救うことができる。
今の今までそう信じていた。信じてしまっていた! 彼女を助けろ! 英雄(ヒーロー)!」

上条「俺が助けるんじゃねぇ! テメェら、インデックスを助けたいんだろ!? 今の今まで、ずっと涙を呑んで記憶を消してきたんだろ!?
記憶を消さなくて済む、そんなハッピーエンドを待っていたんだろ!?」

 上条の右手が嫌な音を立て始める。既に皮膚は裂けてぼろぼろだ。しかし、上条は叫ぶ。

上条「手を伸ばせば届くんだ。『俺達で』助けようぜ、魔術師!」

57 名前:ござるの人 ◆AOfoWrbTbe5x [] 投稿日:2011/02/06(日) 22:22:23.27 ID:RP6vP0S20
神裂「――Salvate000!!」

 インデックスの魔術が上条の右手を吹き飛ばす寸前、神裂が魔法名を名乗った。
 神速の居合いによる『七閃』が、インデックスの足元、床を崩す。
 突如足場が崩れたインデックスの魔術は行き先を失い、空中、空へと向かい、天井を壊した。
破壊された天井の破片は、何故か建材とならずに光の羽となり舞い落ちる。

神裂「それは『竜王の息吹』――伝説にある聖ジョージのドラゴンの一撃と同義です!
いかな力があるとはいえ、人の身でまともに取り合おうと考えないでください!」

 神裂の言葉を聞きながら、上条は今一度立ち向かう。
 しかし、インデックスは空へと向かった魔術を再び振り下ろそうとしている。もう一度くらえば、ただではすまないだろう。

ステイル「――イノケンティウス!」

イノケンティウス「了解、我が主!」

 身構えた上条の前で、イノケンティウスが両手を広げて盾となる。


58 名前:ござるの人 ◆AOfoWrbTbe5x [] 投稿日:2011/02/06(日) 22:24:29.34 ID:RP6vP0S20
イノケンティウス「行け、ヒーロー! お姫様がお待ちだぞ!」

上条「わかってる!」

インデックス「――警告、第六章第十二節。新たな敵兵を確認。戦闘思考を変更、戦場の検索を開始……完了。
現状、最も何度の高い敵兵、『上条当麻』の破壊を優先します」

 ブン! と上条に向かう光の柱。

イノケンティウス「させるか!」

 しかし、それをイノケンティウスが体でくいとめる。ルーンのカードがある限り、彼は不死身だ。
 上条は無防備となったインデックスへ向かい走る。
 あとほんの少し、手を伸ばせば届くという時に気付く。インデックスが光の柱で生み出した羽が、そこら中に舞っていることに。
 魔術を知らない上条でもわかる。それに触れたら何かが終わることを。しかし、上条は足を止めない。

59 名前:ござるの人 ◆AOfoWrbTbe5x [] 投稿日:2011/02/06(日) 22:26:30.20 ID:RP6vP0S20
インデックス「――警告、第二十二章第一節。炎の魔術の術式を逆算に成功しました。
曲解した十字教の教義をルーンにより記述したものと判明。対十字教用の術式を組み込み中……第一式、第二式、第三式。
命名、『神よ、何故私を見捨てたのですか』完全発動まで十二秒」

 光の柱の色が真紅へと変化していく。それに伴い、イノケンティウスのあげる苦痛の声が大きくなっていく。
 上条は足を止めない。頭上にふりそそぐ光の羽を、止めようともしない。ただただ、前へ。
 上条は、吼える。

上条(この物語が、神様の作った奇跡の通りに動いているってんなら――)

上条(――まずはその幻想を、ぶち殺す!!)

60 名前:ござるの人 ◆AOfoWrbTbe5x [] 投稿日:2011/02/06(日) 22:28:15.92 ID:RP6vP0S20
 上条はインデックスの目の前に生み出されていた魔法陣を、右手で引き裂いた。
 あっさりと、金魚すくいの網を破るよりも容易く。

インデックス「――警、こく。最終……章。零――……。『首輪』致命的な、破壊……再生、不可……消」

 ブツン、という音とともにインデックスは倒れこんだ。そして、その上に上条も。
 誰かが叫んでいた。ステイルか、それとも神裂か。
 上条が最後に見たのは、自分の上で両手を広げた、炎の塊だった。

61 名前:ござるの人 ◆AOfoWrbTbe5x [] 投稿日:2011/02/06(日) 22:30:49.10 ID:RP6vP0S20
冥土帰し「何もないね?」

 大学病院の診療室で、冥土帰しと呼ばれるカエル顔の医者は検査を終えたインデックスにそう言った。

冥土帰し「ま、健康診断だと思えばいいね? そうそう、あの少年の方も見た目ほどひどくはないよ。見舞って行ったらどうだい?」

 是非もない。なにせインデックスにとっては、命の恩人なのだから。
 こんこん、と病室のドアをノックして入る。

上条「お、インデックス。大丈夫だったか?」

 上条当麻は包帯でぐるぐる巻きにされた右手を挙げる。見た目はひどかったが、せいぜいが皮膚を切って少し打ったくらいだ。

63 名前:ござるの人 ◆AOfoWrbTbe5x [] 投稿日:2011/02/06(日) 22:32:28.92 ID:RP6vP0S20
インデックス「とうま、大丈夫?」

上条「ああ、ピンピンしてるよ。インデックスのほうも……大丈夫そうだな?」

インデックス「うん。人間っていうのは案外頑丈だから」

 お互いの無事を確認し安堵した所に、またもノックの音が響く。
 返事を待たずしてずかずかと入ってくるのは、ステイルと神裂であった。

神裂「怪我の具合はいかがですか? あ、これお見舞いの品です」

 神裂はフルーツバスケットを棚に置く。すぐさまインデックスが手を出そうとしたのを、神裂は視線でたしなめる。

64 名前:ござるの人 ◆AOfoWrbTbe5x [] 投稿日:2011/02/06(日) 22:34:35.86 ID:RP6vP0S20
上条「怪我はたいしたことないよ。そういえば……イノケンティウスは?」

 上条がそう言うと、ステイルと神裂は目を伏せた。

ステイル「イノケンティウスは……もう……」

神裂「あなたを光の羽からかばって……」

上条「そ……そんな……」

 上条は絶句する。せっかく。せっかく問題が片付いて、これからステイルと話し合えると思ってたのに。

66 名前:ござるの人 ◆AOfoWrbTbe5x [] 投稿日:2011/02/06(日) 22:37:10.75 ID:RP6vP0S20
 上条は肩を落とす。その肩を、誰かが突付く。上条はうっとうしそうにそれを払うが、また突付かれる。

上条「なんだんだ一体――あ」

 上条は本日二度目の絶句をする。なぜならそこにいたのは。

イノケンティウス「やあ上条くん、久しぶり」

 たった今悪い報せを聞いたはずの、イノケンティウスだったのだ。

上条「あ、久しぶり……じゃなくて! 死んだんじゃなかったのか!?」

イノケンティウス「言ったろ? ルーンのカードが壊されない限り消えないって。それに壊されても死ぬ訳じゃない。
また発動しなおしてくれればいい訳だからな」

上条「な……んな……」

69 名前:ござるの人 ◆AOfoWrbTbe5x [] 投稿日:2011/02/06(日) 22:39:20.51 ID:RP6vP0S20 [42/43]
イノケンティウス「んで、このドッキリを仕掛ける為ってことでステイルとも和解したから、万事解決だな」

上条「……つまり、お前を右手で触っても殺す心配はないってことだな……」

 ゆらり、と立ち上がった上条の目は怪しい光を宿していた。魔術的な意味ではなく。

イノケンティウス「いや、あの、上条くん。少し落ち着きなさい。ほんのお茶目なジョークだろう?」

上条「その幻想(ジョーク)を、ぶち殺す!」

イノケンティウス「待て待て! 落ち着け! 俺の側に近寄るなァ――ッ!!」

 ばたばたと病室を駆け回り、追いかけまわる上条とイノケンティウス。
 この追いかけっこは、様子を見に来た冥土帰しに怒られるまで続くのだが、上条も、イノケンティウスも終始笑顔であった。
 当然である。誰しもが幸せな『ハッピーエンド』が、ここにあったのだから。


 完

73 名前:ござるの人 ◆AOfoWrbTbe5x [] 投稿日:2011/02/06(日) 22:42:41.65 ID:RP6vP0S20 [43/43]
これにて終わりでござる。
今回は書き終えてからの投稿だったので早足になりがちでござったが、完結できて満足でござる。
よかったら前作の上条「違和感どころの騒ぎではござらん」も見て頂けるとありがたいでござる。

では、また何か天啓を受けた時に会おうでござる。さらば!

コメント

No title

予想外にすごいいい話www

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