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禁書「恋も2度目なら、って思うんだよ」

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/29(土) 19:55:22.82 ID:LdIk4XvJ0 [1/18]
 いつだったか、とある人が何気なく言っていた事を思い出した。

「恋愛ってのは、思いこみみてェなもンだ」

 聞いた時は対して気にもしてなかった。
 けれど、いま振り返ってみれば、まさに言葉の通りだと気づかされる。

 多分、彼女が勝っていた点はソコで。
 多分、自分が足りてなかった点もソコで。

 太陽が一番空高い位置に居座って、サンサンと日差しを大地へと突き刺す時刻。
 第七学区のとある公園のベンチに座りながら、
 白い修道服に身にまとう小さなシスターさんこと禁書目録は、そんなことを考えていた。

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/29(土) 20:08:15.18 ID:LdIk4XvJ0 [2/18]
 季節は秋から冬へと移ろうとしていた。
 
「……ふにゃあ~っ」

「やっぱり外は寒いね、スフィンクス」

 いつもの定位置である白い修道服の胸元に飼い猫のスフィンクスが、
 流石にこの時期は寒いですぜお嬢さん、と言いたげな鳴き声をあげる。
 禁書目録はスフィンクスの言いたいことをなんとなく察して、同意した。

 暑苦しい夏が過ぎ、鮮やかな秋も終りに近づく。
 もう少しで、学園都市にも真っ白な世界が広がる冬が訪れるだろう。

「みんな寒そうにしているんだよ」

 公園から見える歩道を歩く幾人かの学生たちへと視線が移る。
 
 街中をさまよう秋風から身を守るように、
 学生たちは思い思いにマフラーに口元を埋めたり
 両手をコートのポケットにつっこんでだりして、防寒に徹していた。

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/29(土) 20:15:20.28 ID:LdIk4XvJ0
「まだお昼を過ぎたばかりなのに、さむーい。吐いた息も白くなっちゃうねー」

 はぁー…とゆっくりと息をはけば、それは白へと変り、すぐに空気中へと消失した。
 あまりにも早く四散してしまうため、なんともあっけない印象を受ける。

 身軽さのせいで、枯れ葉は秋風に逆らうこともできない。
 カサカサ、カサカサ。
 地面を擦れるようにゆったりと移動していく。
 禁書目録の足元にも朱色に染まった紅葉の残骸が数枚、朽ち果てていた。

 秋から冬への変化は、何故、こうも哀愁ばかり漂うのだろうか。
 ちょっぴり不思議だ。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/29(土) 20:23:30.47 ID:LdIk4XvJ0
「にゃあ、にゃあ、にゃあ!」

 禁書目録の胸元から顔出しているスフィンクスがまた鳴いた。
 今度は三度、大きな声で。
 毛並みを立ててつぶらな瞳をしかめている当たり、本当に寒いのだろう。
 一人と一匹の同居人である上条当麻の家にあるこたつが恋しいのかもしれない。

「にゃっ!」

 帰ろうよ、と催促する飼い猫。

「ごめんね」

 けれども、少女はベンチから立ち上がろうともしない。

「ごめんね、スフィンクス」

 少しでも寒さが紛れるように猫の頭を撫でてやりながら、
 禁書目録は、憂いを帯びた瞳を猫へと向けた。

「今はちょっと、あの家には帰りたくないかも」

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/29(土) 20:30:57.53 ID:LdIk4XvJ0
 敗因は何か、と問われても現時点で明快な答えは用意できない。
 
 禁書目録は決して無知でも無能でもない。
 一般人には計り知れないほどの膨大な知識を有し、それを正しく行使することができる。

 それでも、どうにもできない分野というものは存在するのだ。

 お昼前からベンチで考えて、考えて、考えて。
 少しばかり掌につかめた答えの欠片だって、大したものではない。

 本当にやっかいなことになったもんだ、と少女は眉をしかめた。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/29(土) 20:40:07.10 ID:LdIk4XvJ0
 くしゅ、とスフィンクスが鼻を鳴らす。
 細められた目が、撫でられる手の感触のぬくもりが気持ちいいのだよと語りかけてくる。
 甘えるように手の甲に頬ずりしてくる仕草が愛らしい。

「これからどうしたらいいんだろう。ね、スフィンクス?」

 尋ねてみても、猫はうっとりとしたまま。
 禁書目録は自由気ままなスフィンクスに苦笑して、
 人差指で額をウリウリと小刻みに擦ってやった。

 んにゃぁー、と。

 なんともまぁ、気持ち良さそうに鳴くもんだ。

「ほんとに、どうしよっかなー」

 困惑しているはずなのに。
 猫とおなじように呑気な声で、そう、禁書目録は呟いた。 
 
 

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/29(土) 20:48:17.51 ID:LdIk4XvJ0
 どうしようかな。
 なんて、しらじらしく口にする自分自身も可笑しく感じる。
 真実は、時にどうにもならないというのに。

「そうそう、どうにもならないんだよ」

 どうにもならない。
 どうにもできない。
 どうにも変らない。

 聡い禁書目録は、そのことをしっかりと理解していて。
 
「嫌だね、スフィンクス」

 先ほどから愚痴ってばかりの主人に、猫は飽きずに耳を傾けている。

「よく見え過ぎていることほど、嫌になるものはないんだよ」

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/29(土) 20:54:31.13 ID:LdIk4XvJ0
 さらに付け加えるならば。
 よく覚え過ぎてしまう脳内構造もやっかいだ。

 人からは「便利だ」とか「凄い」とか褒められるけれど。
 実際のところ本人にとってしてみれば、いい事よりもわるい事のほうばかりだから。

 口にすることは出来ない本音を言えば。
 絶対記憶能力で手に入れた十万三〇〇〇冊の魔道書。
 禁書目録の最大価値ですら、少女にはメリットですらない。

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/29(土) 21:01:24.15 ID:LdIk4XvJ0
 かつて、少女は失うことを恐れた。
 大切だった日々を、愛していた人達を、掛け替えのない自分の記憶を。
 
 手放したくない。
 消してしまいたくない。
 
 【――――忘れたくないよっ!】

 そう願って、死んで、生き返って。
 また願って、死んで、生き返って。

 繰り返しの人生だった―――らしい。
 
「……やっぱり、私には一年半まえからの記憶しかないから」

 後になって、そういう風に流離の人生を歩んでいたのだと聞かされた。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/29(土) 21:07:28.50 ID:LdIk4XvJ0
『……地獄の底までついてきてくれる?』

 かつて、そんな意地悪な問い向けた男が叶えてくれた、
 禁書目録最大の夢。
 
 【記憶を失わないこと】

 まさしく素晴らしいことだと思っていた。

 大切な日々とずっと過ごせる。
 愛している人たちとずっと笑いあえる。
 掛け替えのない自分だけの記憶を、ずっとずっと紡いでいける。

 なんて素敵なことだろうか!! 

 そう、思っていたはずなのに。

 真実はまこと、上手いことねじれていて、どうにもできない。

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/29(土) 21:15:24.13 ID:LdIk4XvJ0
「これは罰なのかもしれないね」

 猫に語りかけているのか、自分に言い聞かせているのか。
 発言の方向をいまいち曖昧にしたまま、禁書目録はしゃべり続ける。
 にゃー、とつられて鳴くスフィンクスも、どこか悲しげだ。

「記憶を失わないってことはさ、」

 とんとん、と気を紛らわすように靴裏で地面をこつく。

「絶対記憶能力を持つ私は、もう、絶対に『忘れる』ことが出来ないの」

 とん、とん、とん。

「どうにもならないけど、どうしようか」

 真実は変わらない癖に、手放すことも許されない。
 そんな現状に、禁書目録を足踏みをする他なかった。

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/29(土) 21:24:08.19 ID:LdIk4XvJ0
――

彼からの報告を聞いたのは昨晩のこと。

「ちょっと、いいか?」と神妙な顔で声をかけてくるものだから、
また魔術関連の厄介事でも起きたのだろうかと思った。
禁書目録は、珍しく眉毛と目尻をキリリとさせて、テーブルを挟んで彼を対面した。

緊迫した空気の中、互いにゴクリと息をのむ。

「あ、あのさ」

軽い沈黙を破ったのは彼。

「なに?」

少女もすぐさま返答した。

「……お、俺さ!」

柄にもなく身体を強張らせてつつ、
真っ赤な顔で彼は予想外のことを喋り、少女を心底驚かせたのだ。

「――――彼女が、出来たんだ」

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/29(土) 21:29:37.77 ID:LdIk4XvJ0
 第三次世界大戦が終結し大まかな戦後処理も片付いた。
 だからといって、完全に魔術と科学の対立が解消された訳もなく。
 互い違いのボタンのような「ズレ」が両者には残っている。

 非常に危うい天秤の上で成り立っている平和が崩れるのではないか。
 更なる大戦の影すら頭に過らせていた禁書目録にしてみれば、
 ガッチガチに固まっている男が発した話題は、余りにも遠いもので。

 禁書目録が、

「…………は?」

 と、情けない返事をしてしまったのは仕方ないことだった。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/29(土) 21:38:13.64 ID:LdIk4XvJ0
「その、だから。上条さんにも、ようやく彼女が出来たんですよ」

「……かのじょができた?」

「お、おう!」

「…………えーっと。
 つまり、その彼女ってのは……、loverってこと、でいいのかな?」

「え? ラ、ラバ?」

「ラバじゃない。loverだよlover。恋人なのかって聞いたんだよ!」

「こ、こここ恋人ぉぉお!?」

「違うの?」

「いや、その。 ………ちがくありませんが。
 ズバッと言われるとと恥かしいやら照れるやらで…」

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/29(土) 21:46:47.46 ID:LdIk4XvJ0
「ふ~ん、そっか。良かったね。―――オメデト」

「……え?」

「どうしてそんな豆鉄砲食らったような顔をしているのかな」

「あ、いや、だって」

「だってって、なに?」

「…………いやぁー、オマエに一度や二度噛みつかれることは覚悟していたのですが……」

「予想と違ったって?」

「今までの経験上ですと、インデックスさんは「こういうこと」になると、
 いつもわたくしに噛みついて来たものですから……」

「いやだなとうま。
 それじゃあ、私がいつも噛みつきマシーンが如くガッチンガッチンしてるみたいなんだよ!」

「俺は真実を言ったまでで」

「……そんなにお望みなら噛んであげてもいいけどぉ!?」

「いえいえいえいえ。結構です! いやー有難いな! 
 噛まれることなもなく「おめでとう」のお言葉まで頂けて!! 上条さん嬉しくて泣きそうだよ畜生!」

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/29(土) 22:02:23.99 ID:LdIk4XvJ0
 キラリと光るモノが彼の瞳の中に映った
 いつものように自慢の犬歯を見せつけると、禁書目録はガーッ! と唸り立ちあがった。

「げぇ!?」

 嫌になるほど見慣れた彼女の臨戦態勢に危険を察知した上条も飛び上がる。
 こたつの中でぬくぬくと暖を取っていたスフィンクスも、部屋の変化に気がついたらしい。
 ひょっこりと顔をのぞかせ、ビックリした様子で二人を見つめる。

「とぉぉぉぉまぁぁぁぁぁ!!!???」

「ギャー!!! 噛まねぇって言ったじゃねーかぁああああ!!!」

ぎゅあぎゃあと全速力での追いかけっこがはじまった。
右に左に、後ろに前に。単身用アパートの狭い一室で、二人は器用に動き回る。

「とうまが失礼なこと言うからでしょ!?」

「ひいいいいい! 悪かった! 俺が悪かったからああ!!」

大声をあげながら言い争う。
男はいつも通りに逃げ回り、少女は少し憂いた目で追いかけ回す。

いつもと同じようでいつもと違う光景を、スフィンクスだけが見守った。

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/29(土) 22:19:36.15 ID:LdIk4XvJ0 [18/18]
「ぐぬぬ、いつもより手ごわいかも…っ」

「オマエの行動パターンは分把握済だ!
 伊達にオマエと毎日のように喧嘩していませんことよ!!」

「キ―ッ!」

「今日という今日こそ、俺の勝利のようだな!」

 ベットの上で「はっはっは―!」と高笑いをして勝利宣言をする上条。
 禁書目録は心底悔しいそうな視線を向けていたが、
 
 一息ついて肩の力を抜くと、

「噛んだりしないよ。もう、二度とね」

 にっこりと笑いながら、そう、言った。

「オマエ、さっき」

「ただの冗談だよ。
 とうまが余りにも失礼なこというから、ちょっとからかっただけかも」

「……冗談に見えませんでしたよー?」

「私の演技力をなめてもらっちゃ困るんだよ!」

 フフン、と胸を張って自慢する禁書目録に、上条もようやく口角をあげる。

36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 22:49:50.52 ID:LdIk4XvJ0
「ははっ。こりゃ、一本とられたな」

「へっへーん。一本、とってやったんだよ」

 互いに顔を向け合ってにひひと笑った。
 ちゃんと笑えた。

「―――とうま、よかったね」

 再び、禁書目録がおめでとう、と言うと。

「おう。サンキュ」

 上条当麻は微笑んだ。
 
 とてもとても微笑ましそうに。
 甘い砂糖菓子のようにとろけるように。
 
 一番近くにいたはずの禁書目録が、みたことも無い程、幸せそうに。

38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 23:00:08.61 ID:LdIk4XvJ0
――

「恋愛ってのは、思いこみみてェなもンだ」

 白い髪に白い肌。赤い瞳が特徴的な少年、一方通行が吐き捨てた。
 ぐだらねェ、と言いたげな雰囲気が、こちらまでひしひしと伝わってくる。

「ロマンに欠ける台詞ね、ソレ」

「うっせェ。オマエの頭の中がお花畑なだけだろォが」

「なにそれ超ムカつく」

「あァ?」

「なによ、やる気?」

 ポテトをむしゃむしゃと食す禁書目録の隣に陣取っている御坂美琴が、一方通行に突っかかる。
 バチバチと見えない火花を散らす二人をみて、ついついため息がもれそうになる。

(まーたはじまった……)

 出会うたびに何度も何度も言い合って。
 よく飽きないよなと思う。
 相性がいいのか悪いのか。
 
 ……まぁ、上条と些細な事で喧嘩をする自分が言えた事ではないのだが。 


39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 23:11:17.93 ID:LdIk4XvJ0
 いつものならストッパーとなる人物がいて。
 適度な所で二人の間を割って入って言い合いを止めるのだけれど。
 
 生憎、今回はタイミングは悪かった。

 【目に入れても痛くない】を素でやってのける程、
 一方通行が可愛がっている打ち止めは
 現在、お化粧室にお花を摘みに行っていて席を外している。

 今回は御坂と禁書目録の二人で遊びに出掛けているため、
 もう一人のストッパー役である上条当麻もこの場にいない。

「ほんと、アンタってムカつくのよねぇー。ええ? この白モヤシ!」

「誰がモヤシだコラァ! 残念な体型してる奴に言われたかねェーよ!」

「なっ!? ざ、残念って……」

「何か間違ったこと言ったかァ?」

「黙れロリコン!」

「ロッ!? ……どいつもこいつも、俺をどうやっても変態扱いしてェよォだなァ……ッ!」

 ああ、もう。
 次から次へとよく悪口が出るもんだ。

44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 23:22:31.39 ID:LdIk4XvJ0
 少し前までの私たちの関係を知っている人がこの場面を見たらどう思うだろうか。
 
 私と御坂美琴はさほど親しくなかった。
 むしろツンツン頭の少年の存在をかけて、無意識にいがみ合っていた関係とも言える。

 私と一方通行は互いに「顔を知っている」程度だった。
 知らず知らずの内に、打ち止めの命の恩人になっていたらしいけれど。

 御坂美琴と一方通行の関係は―――あんまりくわしくは知らない。
 当麻曰く「敵対してた仲」らしい。
 ……現在進行形で敵対して火花バチバチだけどね。

 それでも、以前であれば、
 ファーストフード店のまで遊びに来たり、
 ばったり遭遇して能力使用零の平和的な口げんかしたりなんてことは無かっただろう。

 まぁ、色々あったんだよ。
 ロシアとか第三次世界大戦後の後処理の時とかに。
 くわしい経緯は省くけど、ね。

47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 23:32:19.77 ID:LdIk4XvJ0
 どうして一方通行がいちいちつっかかってくるのか。
 元知人・現友人の御坂は気づいているのだろうかと
 チラッと横目で彼女の顔を確認したが、
 目尻を釣り上げて本気でキレている当たり、答えは出ている。

(この子の鈍感レベルって、多分とうまと同等なんだよ……)

 ここまで来るといっそあっぱれ、である。

「若ハゲ!」

「―――てめっ、言ってはいけねェことを……ッ!!」

 二人の小学生レベルの言い合いを聞き流しながら、
 禁書目録はストッパー役の女の子がココに戻ってくるのを待つ。

 言い合いを止めるのが、
 面倒くさいとか面倒くさいとか面倒くさいとか。
 そういうことではない。
 
 適材適所というものなんだよ、と頭の中で言い訳して、
 少女はポテト消費に集中するのであった。

 そんな事があったのが先週の末。


48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 23:39:58.23 ID:LdIk4XvJ0
――

彼の発言はまさに「その通り」だった。

御坂美琴が勝っていた点はまさにソコで。
禁書目録が足りていなかった点もまさにソコで。

習慣の差というのか。
女子のしての差というか。

「お前には、この微妙な違いは分からないんだろうね」

胸元では窮屈になったようで
禁書目録の膝の上で丸まることを選択肢した飼い猫は、やはり、にゃーと鳴くだけ。

それでも、少女にとっては大きな気休めになっていた。
相槌のようなものがある会話と、何もない一人言では、
なんとなく感じる空しさが断然違うのだから。

50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 23:44:48.16 ID:LdIk4XvJ0
「多分、そうであってほしかったんだろうね」

 禁書目録の中で名言第一位のランク付けされた少年の本音を、
 勝手に代弁してみたり。

「代弁、っていうか、ただの予想だけど」 

 かの少年は誰にしても内心を吐露しそうにないから。
 ……ま。これも、勝手な予想だけど。

52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 23:49:29.44 ID:LdIk4XvJ0
 思いこみとはつまり、どれだけその人のことが好きだと信じられるかなのだ。

 迷いなくぶれることなく、ただ「好き」と。
 辛いことがあっても怖いことがあっても。
 逃げることなく「好きだ」と思いこめるほどに、その人を慕う。

「そんなの、無理無理」

 自分にはできないことだと禁書目録は達観している。

 だって、いままで逃げ続けていたのだから。

「私には、思いこむことなんて出来なかったんだよ」 

54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 23:56:56.54 ID:LdIk4XvJ0
 身体にしみついた習慣までは死なない
 不死鳥のように。頭の中に純粋さだけを残して。全て置き去りにして。
 けれども、死んだのは、消えてなくなったのは『記憶』という『心』の部分だけで。

 身体に染みついてしまった習慣はそのまま残り積もっていく。
 正しくいえば、身体に刻まれた自己防衛本能は、消え去っていないのだ。

「……身体がね、人を「想う」ことを自然とセーブしてしまうんだろうね、きっと」

 心は覚えていないけれど、身体は覚えているのだろう。

 親を失うのは辛かったはずだ。
 友を手放すのは怖かったはずだ。
 仲間と離れるのは苦しかったはずだ。

 私であって私ではない『禁書目録』は、いったい幾度の別れを経験したのだろうか。

56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 00:02:30.67 ID:uiEt3tcI0
 何度も何度も。引き離されて、失って、殺されて。
 何度も何度も。嫌だ、嫌だ、嫌だと泣いたのだろう。

 そうやって人との別れを繰り返していく内に、
 『禁書目録』の身体には、自己防衛本能が芽生えていくのだろう。

 親や友、仲間との別れでさえも耐えられないというのに。

 ――――恋をしたら、どうなるのだ?


57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 00:08:42.71 ID:uiEt3tcI0
 自己防衛本能か、はたまた生存本能か。
 適切に説明できる語句は、禁書目録すらも所持していない。
 ちゃんと日本語勉強しておけばよかったかなと、場違いなことも考えてみたり。 

「……私は、そこまで「思いこめなかった」」

 過去形なのは、気がついてしまったから
 結局のところ、自分は薄々自覚してた感情に気づかないふりをしたのだ、と。

 禁書目録は、もう死なない。
 上条当麻が、地獄の底から引きずりあげてくれたから。もう、死なない。
 身体にしみついた癖は、すでに要らないものだった。


58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 00:14:33.42 ID:uiEt3tcI0
 自分は――――禁書目録は。
 恋をすること自体に、億劫になっていたのだ。

「気がつくのが少し、遅すぎたかな……」

 敗因はそれだけじゃないけれど、もっともっとたくさんあるのだろうけど。
 考えて考えて気がついた真実の欠片は、まだ、この程度だ。

「ああ、本当にどうしようね」

 また、どうしようと禁書目録は呟いた。
 どうにもならないと知っている癖に。困った困った、と乾いた笑いを浮かべる。

「―――もう、お手上げだよ」

 ばんざーいと空に向けて両手をあげると、
 撫でられることに快感を覚えていた猫が、「途中でやめんなよ!」と言いたげに少女をにらんだ。

61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 00:19:54.98 ID:uiEt3tcI0
 お手上げだ。
 どうにもならないのに、どうしようと嘆かずにはいられない。

 もう、少女は死なない。
 もう、少女は失わない。
 もう、少女は忘れない。――――忘れられない。

 忘れなくていい日常は、昨日までは幸せにの日常だった。
 それに嘘はない。
 
 けれども、忘れられない日常は、今日からとても悲しい日常になる。
 それも嘘じゃない。

「だって、『忘れなれられない』。気がついてしまったら『捨てられない』」

 禁書目録は気がついてしまった。
 気がついて、しまったのだ。


62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 00:26:44.98 ID:uiEt3tcI0
 だから、少女にとって絶対記憶能力にメリットはないのだ。
 必要悪の教会としての居場所も『禁書目録』としての価値も。
 さほど固執しようとは思わない。

 禁書目録として生まれ生きて、そして出会った。出会ったの、彼に。
 禁書目録じゃなかったかったら、きっと知り合うことも無く。
 だから、感謝くらしはしていた価値だけど、それも、もう意味は為さない。

 ああ、デメリットばかりが瞳の奥に浮かんでくる。

「いやな子」

 ポツリと、呟く。

「にゃ!?」

 『え、俺!?』とガ―ンと石化するスフィンクス。

「違う違う」

 禁書目録はすぐに否定し、

「わたしのこと」

 と、訂正した。


63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 00:31:28.53 ID:uiEt3tcI0
 曖昧だ。
 視線もグルグルと揺れがちだし、思考も円を描くばかりだ。

(……結局、心もグルグルで、曖昧なのかも)

 気がついたのは、ちくちくと胸をさす痛み。
 気がついたのは、ほわほわと胸を包む温かさ。

 はっきりとは、わからない。わかったらわかったで、さらに最悪な気もするが。

65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 00:36:07.72 ID:uiEt3tcI0
好きなのかな。好き、なのかな?
……わからないや。でも、たぶん、好き。

あのね、恋愛なんて、したことないの。
だって、人を好きなったことなんて、なかったもん。

わたしは愛情を向けているのかな。
わたしはただ、自分が憧れに近い感情を頂いているだけなのかな。

正直、わかんない。

でもね。
でもね。
気になってたたんだよ。

一喜一憂してたの、子供のように。
あなたの言葉にあなたの笑顔に。

好きです。
好きでした。
好きです。

ああでも、遅くて、もう無理で。
これほどまでに無理な片思いなんて。はは、なんて、馬鹿らしい。

68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 00:52:09.32 ID:uiEt3tcI0
 神さまは常に救いと試練をお与えになる。
 
 救いがなければ余りにも世界は非情で。
 試練がなかれば余りにも世界は怠惰で。
 
 救いを与えてくれたのが上条当麻ならば、試練を与えてくれるのも上条当麻だ。

 禁書目録は永遠という名の籠に閉じ込められた。
 彼女は自分の底にある感情を気が付き『記憶した』。

 彼女の脳という名の書庫の中に、『恋』という本が新たに加わる。
 加わったからには。二度、破棄できない。

70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 00:59:37.40 ID:uiEt3tcI0
 都市をさまよう秋風はさらに冷たく。
 頬に当たる冷たさは多分、風のせいだろう。
 流れる雫は気のせいだ。
 『歩く教会』は防寒対策もばっちりだけれど、
 布がない顔の部分だけはどうしようもない。

「にゃ、にゃ、にゃ」

 背伸びをして、少女の頬に流れる何かをなめとろうとする猫の背を撫でる。

「スフィンクス、お前にだけは教えてあげるよ」

 一人と一匹の秘密だよ、と小さな声で。

「あのね、スフィンクス」

 許しをこうことは出来ないから、せめて。

「私はこれからずーっとずーっと、とうまに囚われて生きていくんだよ」

 ずっとずっと。本当の最後の最後の死ぬまで、ずっと。

72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 01:16:50.28 ID:uiEt3tcI0
 それはデメリット。そして囚われの原因。
 どうにもならないのにどうしようと呟きたくなるほど、面倒なこと。

「さっきも言ったけどね。私はもう忘れられないの」

 もう死ねないから。
 いっそ殺してと言えない弱さが憎い。

「一度覚えてしまったことは、永遠に、忘れない、消えない」

 ずっとずっと続いていく。

「―――とうまが好きなんだって気が付いた時点で、もう、駄目」

 しかも、気がついた時点で、時既に遅し。




「好きだって感情は、ずっとずっと、私の中に生き続ける」



永遠の片思いだ。


73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 01:20:36.39 ID:uiEt3tcI0
 好きなのだ。
 永遠に。
 上条当麻だけが、禁書の唯一の人となる。

 記憶を忘れないということは、感情を忘れないということ。
 記憶を忘れられないということは、感情に一生縛られるということ。

 報われないのに。
 続きがないのに。
 ずっとずっと一方通行なのに。

 せめてもっと早く気がついていれば。……なんて、後の祭り。ただのいい訳。」

76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 01:31:12.67 ID:uiEt3tcI0
 
「恋も2度目なら、って思うんだよ」

 きっと、かの白い少年もいつかは。二度目の恋に落ちるだろう。
 「恋は思いこみ」だと知っている彼ならば、尚の事。……これも予測だけど。

 正直、羨ましい。

「恋も2度目なら叶うっていうでしょ?」

 けれど、猫に語りかける少女に、それは訪れない。

「恋も2度目なら……」

 2度目があれば、先のない恋に囚われ続けることもないのに。
 けれどそれも儚い幻想。

 禁書目録だからこそ、彼女はずっと、囚われ続けてしまう。

「……どうしようね、本当に」

 どうにもならないのに、また。ポツリ。


77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 01:33:24.35 ID:uiEt3tcI0
 どうにもならない。
 
 上条当麻は相手を選んだ。自分以外の娘を選んだ。 
 禁書目録は気がついた。忘れることのできない永遠の恋に。
 
 どうにもならない。
 そんな未来を、晴れ渡った秋空に重ねることも叶わなくて。

「にゃーにゃー」

「……さて、帰ろうか」

 きっと、一人と一匹の同居人の家には、旧知人・現友人も居るだろうけど。

「――――どうにも、ならないから」

 禁書目録に、2度目の恋は訪れない。


78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 01:35:15.82 ID:uiEt3tcI0
終り。書き溜めゼロでノリで書いてたんだ。投下遅くてすまんかった

コメント

女にとって戀は上書き保存だぞ
新しい戀を見つけりゃ前の男なんて過去だからどうも思っちゃ居ない
おかげで平気で元彼の話してくるし
男は個別保存で未練たらたらだが
つまり作者は間違いなく男

No title

※1
おまえインデックスさんなめてんだろ

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