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上条「どうせ俺はレベル0の霊能力者ですよ……」

730 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/19(日) 20:08:34.55 ID:DrGDPmM0 [1/20]
以下より投下させて頂きます。
「学園都市がもし霊能都市だったら?」というコンセプトで1巻のパロディです。
長くなってしまった為に、申し訳ありませんが17レス程お借りします。

731 名前:上条「どうせ俺はレベル0の霊能力者ですよ……」 1/17[saga] 投稿日:2010/12/19(日) 20:09:37.61 ID:DrGDPmM0 [2/20]



「待ちなさいっていってんでしょーが、大人しく私と勝負なさい!!」


有名な私立女子中学校の制服に身を包んだ可憐な少女にその見た目に反するようなガサツな台詞を吐かれながら、
上条当麻は完全下校時刻を過ぎて人通りの少なくなった大通りを逃げ回っていた。


必死に走りながらも後ろを着けるビリビリと全身から紫電を発する少女を尻目に、
アレまともに喰らったらマジ死んじゃうから!万が一って言葉を知らないのかあのお嬢は!?
と疲労を訴える足に叱責を入れてスピードを上げる。


「……つーか俺が何したって言うんだよう!?」

「この御坂美琴より強い人間が居る、理由はそれで十分!!」


答えながら次の瞬間には既に詠唱を口ずさむ美琴にもう逃げられまいと悟った上条は、
咄嗟に彼女の方角へと自身の右手を向ける。
高位能力者の詠唱は恐ろしく速い。


「――――天に棲まわる火雷神(ほのいかづちのかみ)よ、その威光を貸し与えたまえ!!」


唱が終わると共に迸る、時に『超電磁砲』と称される美琴の一撃は
しかし瞬間、避雷針のように突き出された上条の右手の前で砕け散った様な動きを見せ、消えた。


「~~~っ、本当に何なのよアンタ!?何で学園都市第三位の私が勝てないのよ!!」



学園都市。
そこは科学と霊魂が交差する、異教の街。







732 名前:上条「どうせ俺はレベル0の霊能力者ですよ……」 2/17[saga] 投稿日:2010/12/19(日) 20:10:39.59 ID:DrGDPmM0 [3/20]


七月二十日、晴れ。
夏休み初日にも関わらず強制補習の呼び出しから暫く学校へ通うことが決定された上条当麻のテンションは低い。


授業の方についていけないのは確かに自分の責任であるが、能力開発の分野については全く非が無い。
これは生まれ持った体質から来るどうしようもないもので、それを何とかしようと自分はこの学園都市にいるというのに。


「補習なんかでどうにかなったら苦労しねーっつーのに…………不幸だ」


考え出したらネガティブ思考が無限ループだ。
モチベーションを上げるためにも、帰ってきたらフカフカのベッドにダイブできるように今のうちに布団でも干しておこう。
思い直してベランダへと向かえば、おかしい。何故だか既に布団が干してある。


俺ん家、布団コレしか無かったよな。
自分の中で一応確認してから(何せ自分の不幸体質は何を引き起こすか分からない)恐る恐るそこへ続く扉を開ければ


可愛らしい外国人の女の子が、ベランダで干されてた。


(……は、あぁ!?)
割と本気で驚きながら、その柔らかそうな頬をプニプニ突いて反応を確かめる。
『もしも』を考えると、脈を測るようなダイレクトな真似なんて出来なかった。


「あ、あの~?生きてらっしゃいます?てゆうか日本語通じてます?」


あいどんとすぴーくいんぐりっしゅ、なんて今時小学生でももっとマシになりそうな発音で付け加えながら
根気強くその死体かもしれない女の子の頬を突き続けると、「ん……、」と艶めかしく呟きながら女の子はソロソロと思い瞼を開けてくれた。


暫く目をパチパチとさせていた彼女は考え込むようにして押し黙り、そして、
なんと人の家の鉄棒の上にグッタリと乗っかったまま呑気にこう仰ってくれた。


「取り敢えず、自己紹介が必要だね」


…………それは一先ずウチに上がってから致しましょうか。出来れば玄関から。




733 名前:上条「どうせ俺はレベル0の霊能力者ですよ……」 3/17[saga] 投稿日:2010/12/19(日) 20:11:32.75 ID:DrGDPmM0 [4/20]


少女をリビングへと回収し改めてじっくりと観察してみた上条は、
彼女が着ている服が実は修道服であることに気付いて思わず納得した。ああ、ナルホド。


「もしかして『外』から来たシスターさん?どこの宗派の人?」

「私の名前はインデックス。所属はイギリス清教だよ」


……………………。
おかしい。いやはや、おかしい。
イギリス清教は良い。なんたってイギリスの国教だ、俺だってそれくらいは知っている。
だが何だ『インデックス』って、目次か!?
てゆうかよくよく考えてみれば『外』の来客だって普通ベランダに吊るされたりしないぞ!?


「正式名称はIndex-Librorum-Prohibitorum、禁書目録。
魔法名はDedicatus545『献身的な子羊は強者の知恵を守る』だよ、よろしくね。ハイ、あなたの番」


「いや『インデックス』ってやっぱり解らなっ……まあいいや。
本場の人には俺らみたいな似非宗教家には理解できない何かがあるんだって考えることにする。
俺は上条当麻。見ての通り学園都市で霊能力について学ぶ健全な学生です」


本場、似非。
総人口230万人の内その8割を学生が占める学生の街である学園都市は、その実態を超心理学について霊能専門で取り扱った独立霊能教育機関とする。
『精神と魂の関係性においての科学的解明』をモットーにした研究の副産物として
昨晩の美琴のような霊能力者を人工的に生産しているのだが、一般には『霊能者を創る街』という認識の方が圧倒的に強かったりする。


「似非宗教家って……学園都市の霊能者のそーゆーところ嫌いだよ、信仰や信心がなってないんだもん」

「本物のシスターさんに言われると申し訳ないばかりです、ハイ。
 でもウチは『個人の能力を最も引き出す手段』の利用を最優先にしてるから仕方ないってゆうか……」


通常霊能者というのは仏教や神道,キリスト教など何らかの宗教に基づいて除霊や退魔を行うのだが、学園都市の霊能者というのはその意識が殆どない。
仏教の真言(マントラ)を攻撃の主軸にしながら神道方式の祈祷を補助として使うなど
色々な宗派が雑に混ざり合った宗教観などまるで無い学生が大抵であり、学校もそうなるよう様々なものを教え込んでいる。


個人の能力がどの宗教のどの宗派で最も発揮されるか分からない。したがって偏らない教育を目指す。
それが学園都市の方針でもあった。




734 名前:上条「どうせ俺はレベル0の霊能力者ですよ……」 4/17[saga] 投稿日:2010/12/19(日) 20:12:24.29 ID:DrGDPmM0 [5/20]


「それよりもお前、なんでウチのベランダに居たわけ?そっちの説明まだだけど」

「それは………」

上条が尋ねたのはごく自然なことだ。
だがそれをチラチラとこちらを見遣り答えるのを躊躇うのは、やはり何か複雑な事情があるのだろう。
大方見ず知らずの人間を巻き込みたくないとかそんなところかと見切りをつけた上条は先手を打つことにした。


「いいよ、どんな突拍子のないことでも素直に言っちまって。
お前がここに来た時点で俺ももう関わっちまったんだ、こうなったら何も知らない方が万一のときに危険だ」


上条の言葉にインデックスも決心が付いたらしい。
おもむろに口を開くと、上条が思った以上に『突拍子もない事』を彼女は喋り出した。


「私……追われてるの、私が持つこの10万3000冊の魔道書の所為で」


――――――へ?魔道書?


上条の反応にインデックスはやはり彼が何も気付いていなかったことを悟る。


「あの……霊能者を育てる学園都市の学生さんだし、『禁書目録』って聞いて少しは感づくと思ってたんだけど……
 本来の『禁書目録』は非道徳な書物から信徒を護ることを目的に作られた危険な書物を纏めたリストなんだけど、
 私も同じでそうゆう危険な魔道書を知識として記憶しているの、10万3000冊分」

「――――――ゴメン、俺バカだから全く気付かなかった。先生やっぱり補習って必要なんだネ」


10万3000冊。
あまりにも膨大すぎて上条には最早想像もできないが、それだけの知識を有していれば彼女が狙われる理由は何となく理解できる。




735 名前:上条「どうせ俺はレベル0の霊能力者ですよ……」 4/17[saga] 投稿日:2010/12/19(日) 20:13:04.28 ID:DrGDPmM0 [6/20]


「あー、それなら一つ聞いておかないといけない事があるんだけど」


上条の切りだしにインデックスは唾を飲む。
彼女の表情は、出て行けと言われることを想定し覚悟していた。
しかし上条の発言は彼女にとって思いがけないものだった。


「お前、自分隠すような霊装持ってたりしない?」

「え……?ううん、持ってないけど………」

「よかったー!!いや、さっきベランダから引き上げるときにお前に触っちゃっただろ?
 俺の右手、『幻想殺し』て言って他人の霊装や術式を何でも構わずブチ壊しちゃう一品でさ~
 ――――俺が昔住んでた『外』の町。霊能者さんが張ってくれた結界を俺が壊しちゃうもんだからいつも幽霊だらけで、
 お蔭でいつも疫病神だのなんだの言われてたんだけどさ……よかった、お前持ってなくて」


話していた上条は、インデックスが静かに涙を流していることに気付く。
同情されたのだろうかと感じそれを否定しようとするが、インデックスはひどく嬉しそうに上条の手を握ってきた。


「ありがとう!!本当にありがとう!!霊装や術式を全部壊せるってことは、私を探知するための術も全部効かないってことなんだよ!!
 とうまは疫病神なんかじゃない、私は今、とうまに救われたんだよ!!!」


上条は、インデックスに手をとられたまま動けなかった。
『ありがとう』、『救われた』………そんな事を他人から言われたのは初めてだ。
―――――俺が誰かの役に立てたなんて、初めてだ。


「う……グスっ、ひぐっ……うぅ……」

「とうま……?泣いてるの………?」

「―――俺、この能力の所為で、ずっとレベル0で……努力したって右手が邪魔して皆みたいに術の一つも使えなくてっ、
 こんな右手……皆の邪魔しか出来ないと思ってた、誰かの役に立てるなんて……思わなかったっ!!!」


インデックスは泣き崩れる上条の頭をそっと撫でた。


「とうまは私を助けてくれた、私をこうやって受け入れてくれた……本当に、ありがとう」


子を愛しむ母のように、慈愛に満ちた聖女のように。




736 名前:上条「どうせ俺はレベル0の霊能力者ですよ……」 6/17[saga] 投稿日:2010/12/19(日) 20:13:47.50 ID:DrGDPmM0 [7/20]


上条とインデックスはそのまま彼の部屋で幾日かを過ごした。
その中で彼は、彼女が自身の持つ強力な魔術を使えなくなっていることを知る。
そして――――



ドガァアアアン!!!
と、美琴の猛攻を知る上条ですら首が竦む様な爆発音が近くで轟いた。
一体何がと驚愕する上条を尻目に対するインデックスは周囲の警戒を始める。


「魔術の感じがする……きっと最後にここで気配が途絶えた私がそのまま見つからなくて、最終手段に出たんだよ!!」

「おい、最終手段って……まさか!!」

「私を……炙り出すことだよ、一般人を人質に」


上条は顔を真青にした。
ここには上条の学友達 ―――それも底辺校のほとんどチカラを持たない学生が大勢暮らしているのだ。
何の危険も知らないままに。
何の罪もないままに。


「………っ、巻き込んでたまるか………巻き込んで、たまるかよっ!!」

「とうまっ!!」


突如飛び出した上条を懸命に引きとめようとするインデックスの手は、しかし虚しく上条の手を掴めずに空ぶった。
いくら上条が『全ての術式を打ち破る右手』を持つとしても、それで自分という強力な魔術師を追ってきた人間に叶うとは思えない。
インデックスは慌てて上条を追い外へ出た。
だがインデックスは知らない。
派手な爆発を起こした囮の他に、もう一人魔術師がいることを。



「――――久しぶりですね、インデックス」


『幻想殺し』と離れたことで探知に関する一切の防護を失ったインデックスは、そこで運命を喫することとなる。




737 名前:上条「どうせ俺はレベル0の霊能力者ですよ……」 7/17[saga] 投稿日:2010/12/19(日) 20:16:23.06 ID:DrGDPmM0 [8/20]


上条は爆発音が聞こえた階下へと向かった。
するとエレベーター……ではなく、その横にある非常階段からヌクリと大柄の男が突如として現れた。
二メートル近い伸長を誇るその白人は、インパクトの割に上条よりも何処か幼げに見えた。


「………お前が、インデックスを追っている『魔術師』か?」

「そうだよ。僕が禁書目録を『処分』しに来たエクソシストだ」


バーコード型の刺青で彩られたその顔から判断するにインデックスと同じ年ごろであろう漆黒の修道服に身を包んだ男は
各所に散りばめた毒々しいピアスや指輪、そして口元に添えた煙草の所為で『神父』とも『不良』とも呼べない奇妙な出で立ちを描いていた。


「………エクソシストは司祭以上じゃなきゃ名乗れないんじゃなかったっけ?」

「馬鹿そうな見た目の割に知ってるじゃないか。―――でも言うだろう?必要なのは資格じゃない、技術だ」

「っ、この不良神父め!!」


言葉は、合図となった。上条は一心不乱に拳を作った右手を振りかざす。彼の武器はそれしかない。
相対する男はそれを余裕の笑みで交わしながらさも可笑しそうに笑みを浮かべる。


「待ちなよ。君が僕らを邪魔するって言うなら、僕もそれなりの礼儀を通したい。
 ――――Fortis931。敢えてステイル=マグヌスではなくそう名乗った意味が、君には解るかな?」


上条は先を待たずに再びステイルへと殴りかかる。インデックスにも、ここの学生たちにも危害を加えることは許せなかった。


「殺し名、だよ ―――― 炎よ。巨人に苦痛の贈り物を」


ステイルが呟いた瞬間、オレンジ色の軌道が轟を上げて爆発した。上条がとっさに顔を庇った指先の向こうで、彼は確かに笑っていた。
信念と決意に満ち足りた瞳で。


「やりすぎたか、な?」


自身の意思を阻もうとする存在を葬る事に関して、ステイルは躊躇わない。
しかしここは学生寮だ。人の出入りはチェックしたものの全員が確実に安全であるという保証はできない。
だがそこで、首を竦めて溜息を吐いたステイルは不穏な音を耳にする。ザリ……というコンクリートを踏みしめた自分以外の足音。


「―――お前にどんな考えがあろうと、それでも、インデックスを殺すことが『正義』なんてワケがねえ」


738 名前:上条「どうせ俺はレベル0の霊能力者ですよ……」 8/17[saga] 投稿日:2010/12/19(日) 20:20:06.00 ID:DrGDPmM0 [9/20]

ビクッ!と自身が作りあげた灼熱地獄から聞こえてきた声に、ステイルの動きが一瞬で凍結する。
轟きと共に辺り一面の火炎と黒煙が渦を巻いて吹き飛ばされた。
まるでその中央でいきなり現れた『何か』が、全てを掻き消したかのように。
上条当麻はそこにいた。


上条は再び拳を振りかざす。
脅えた様にそれを見上げたステイルは、それでも足を踏み止め詠唱を発する。


「――― 世界を構築する五大元素の一つ、偉大なる炎よ。それは生命を育む恵みの光にして、邪悪を罰する捌きの光なり。
 それは穏やかな幸福を満たすと同時、冷たき闇を滅する凍える不幸なり。その名は炎、役割は剣。
 顕現せよ、我が身を喰らいて力と為せ ―――――――――ッ!!!」


次の瞬間、ステイルの修道服の胸元が大きく膨らみボタンを幾つか弾き飛ばした。
酸素を大きく吸いこみながら現れたのはただの大きな炎の塊ではない。必殺の名を与えられたっ灼熱の巨人。
そんな『常識外れの存在』を見て息を呑んだ上条は、


「無駄だ」


彼が呟いた瞬間、ジリリリリリリ!!!!と途端周囲のベルが合唱を広げた。まさに魔法でも起こったかのようなタイミングで人工の雨が降り注ぐ。
ステイルは違和感を拭えない。おかしい。火災報知機は作動しないよう自身の『霊装』であるルーンを敷いたはずだ。
それが、どうして。


「インデックスはお前から逃げる中で、必死に対抗策を考えていた。だから俺達はこの数日間で幾つかの護符を各所の水場に張り付けた。
 ――――― 一定以上の魔力を察知したら、その近辺に置かれた『霊装』に停止命令を下す護符だ!!」


ステイルは慄いた。
つまりは水場から一番遠い此処でも先程の『魔女狩りの王』という巨大な魔力を察知されるということは避けられなかったということだろう。
だがそれがどうした。『魔女狩りの王』はこんな水程度で消される程軟ではない。
しかし、彼のそんな希望すらも上条の言葉は次々と打ち消してしまう。


「『ルーン』を形作ったコピー用紙は壊れなくても、それを印刷するインクは落ちちまう。―――これで終ぇなんだよ魔術師」


上条の言葉に魔術師は体全体を震わせた。
それでも、彼は折れなかった。ここで諦めてしまう訳にはいかなかった。


「ァ、――――灰は灰に、塵は塵に。吸血殺しの紅十字!!!」


だが、世界は動かない。
上条当麻はそれを認識するとステイルの懐へと飛び込んだ。握り込んだ拳は、脅えた彼の顔面へと正確に注ぎこまれた。

739 名前:上条「どうせ俺はレベル0の霊能力者ですよ……」 9/17[saga] 投稿日:2010/12/19(日) 20:22:26.29 ID:DrGDPmM0 [10/20]

「―――お前にどんな考えがあろうと、それでも、インデックスを殺すことが『正義』なんてワケがねえんだよ。
 なのにどうして、どうしてお前はそんな眼で!そんな決意を持った眼でアイツを殺そうとするんだよ!!!」


ムクリと起き上ったステイルは暫く何も答えなかった。
そして上条の言葉にギリ…と唇を噛み締めると、酷く悲痛な貌でこう吐き捨てた。


「……僕に彼女を殺すことなんて出来ないよ―――― だって彼女は、既に『死んでいる』んだから」


ステイルの唐突な答えに、上条は呆然とするしかない。
インデックスが、死んでいる?
アリエナイ。だってアイツは俺と一緒に普通に暮らして、普通に喋って。大体俺は霊視なんて……


「君は強い霊視を持っていながらその強さ故に人間と幽霊の判別が付かないらしい。彼女は確かに幽霊だ、だから生前の様な魔術が使えない」


言葉が出なかった。
インデックスが死んでいる?一体どうして、何故死んだ?
ステイルは続ける。


「10万3000冊の知識を有する彼女が疚しい人間に狙われたら?このまま彼女が地上を彷徨い続ければ?―――学園都市の人間なら解るだろう」


いくら落ちこぼれの上条だって、簡単に解る。答えは。


「……悪霊に、……なる………?」

「そうなれば彼女は酷く苦しむことになる。優しさを持ったあの手が、多くの人々の血で汚れることになる。僕にはそれが、耐えられない」


真実、ステイルはインデックスの為に動いていた。
インデックスの為に上条と対峙しインデックスの為に上条を殺す覚悟をしていた。
彼女の手を汚さない為に、自身の手を汚そうとしていた。


「それでも、インデックスを消しちまうなんて、やっぱりダメなんだ」

「っ、だからそんな詭弁は!!」

「だって、成仏できないってことは、アイツは何か未練があるってことなんだろ?だったらそれを無下にしちゃいけないんだ」


ステイルは上条が憎かった。自分に出来なかった、『足掻く』という選択肢を選んだ上条が。
それと同時に彼は願った。自分が道を選び直すことが、未だ遅くはない事を。


740 名前:上条「どうせ俺はレベル0の霊能力者ですよ……」 10/17[saga] 投稿日:2010/12/19(日) 20:23:26.57 ID:DrGDPmM0 [11/20]


インデックスは路地裏を走っていた。
彼女を襲った日本刀を武器とする黒髪の魔術師は、
その和装に反する左脚部分を根元から切ったジーンズと臍丸出しに余剰を縛られたTシャツという異様な姿でまだ近くの大通りを探っている。


インデックスにとって、誰かを巻き込まないで済むということだけが救いだった。
敵側の人払いのルーンが張り巡らされている為にこの近辺を出歩くものは誰もいない。
しかしそれは同時にそんな場所にただ一人存在するインデックスがどうしても目立ってしまうことを示唆していた。
このままでは直ぐに見つかってしまう、そんな考えが彼女の頭に浮かんで消えた。


すると、思考を走らせ意識を反らした一瞬で、その魔術師はインデックスの前に姿を現した。
彼女には魔術師が使う探知を防ぐ術がない。
そして彼女を護る為に常時展開していた霊装『歩く教会』と呼ばれる彼女の修道服もまた何故か魔力を発揮できない今では使用できなかった。


やられる。
そんな一言が彼女を支配した。今の彼女には逃げる手段も防ぐ手段も攻める手段も残っていない。
だが、魔術師が返したのはあまりにも意外な反応だった。


「―――― やはり、あなたは私達を覚えてはいないのですね?」

「………え?」


どうゆう事?
インデックスがそう聞き返す前に魔術師は彼女に刀を突きだした。そのまま大きく振りかざされる刃に、インデックスは為す術がない。


「――――っ、」


だが、覚悟を決めて息を呑んだインデックスに与えられたのは頭に乗せられた大きな手だった。


「インデックスに、手を出すな………コイツを消すなっつったんだよ!!!」


彼女の目の前に立っていたのは、刀を構えた魔術師の腕をしっかりと捉えた上条当麻の姿だった。




741 名前:上条「どうせ俺はレベル0の霊能力者ですよ……」 11/17[saga] 投稿日:2010/12/19(日) 20:25:33.73 ID:DrGDPmM0 [12/20]


「この場所が判った―――― ということはステイルですね?彼は負けましたか」

「ステイルの顔を見ても、お前の顔を見てもはっきりと解る……お前らコイツが大事なんだろ!?
だったらどうしてコイツの未練を断ち切ってやろうとしねえんだ!!なんで、コイツを成仏させてやらねえんだ!!」


インデックスには、2人の会話が理解できなかった。
『未練』?『成仏』?それではまるで自分が――――――――――


魔術師は上条の手を振り解きながら再びその剣を振るった。
すると次の瞬間、上条の後ろに聳えていた風力発電のプロペラがバターのように斜めに切り刻まれた。


「あなたの言う通りですよ、少年。私は彼女の同僚で……親友でした。
 しかし、私は知っている。彼女の様な力ある善良な魂が悪霊と化したときどうなるか。
そして、その自分の罪に気付いてしまった時どうなるか」


魔術師が持つ攻撃性のあまりの威力に一瞬慄いた上条だが、彼はそれでも自身の唯一の武器である拳を翳した。
魔術師はそれに動じない。強大な力を持ちながら、警告するように上条の頬を掠める様なゆるい一撃を加えた。


「私の名は神裂火織。もう一つの名を名乗らせる前に――― どうか此処から立ち去って下さい」


一切の応えを見せない上条に、神裂は今度こそ『攻撃』と呼べる一撃を見せた。
一瞬だけブレた神裂の右手が織り成したその一撃は、都合七つもの直線的な刀傷を何十メートルにも渡って地面へと走り描いた。
砕かれた拳大のアスファルトが上条の肩、胸、膝、腕―――― 至る所を穿つ。


「今の一撃、『七閃』の斬撃速度は一瞬と呼ばれる時間に七度殺すレベルです。そして七閃を潜りぬけた先には真説『唯閃』が待っています」

「降参できるかってんだよ、魔術師!!」


上条は己でも気付かぬ内に血が滴っていた拳を握りしめ、眼の前の女の顔面を抉り潰そうとする。
が、それより前に恐るべき身体能力を誇る神裂のブーツが上条の鳩尾へと突き刺さった。
肺に溜め込んだ空気と共に血を吐きだしきる前に、既に神裂は刀を納めていた黒鞘で上条を殴り飛ばす構えに入っている。
上条の体が竜巻のように回転し、地面を転がった。


インデックスにはそれを見ているしか出来ない。
彼女は彼どころか自分を守る術だって何も持たない。
インデックスは願った、チカラが欲しい。
自身を受け入れてくれた上条当麻という少年を護るだけの、立った一つのチカラを。
そして、その願いを受け入れた彼女の体は見る見るうちに光を彩り――――



742 名前:上条「どうせ俺はレベル0の霊能力者ですよ……」 12/17[saga] 投稿日:2010/12/19(日) 20:27:03.16 ID:DrGDPmM0 [13/20]


「いけません、インデックス!!」


余裕を保っていた神裂が突如悲鳴をあげた。彼女の視線の先を追い上条も目を向けると、息を呑んだ。
そこには、黒々とした光に包まれて轟きを奏でるインデックスと呼んでいた筈の人物がそこにいた。


「………インデッ、クス?」


恐ろしいほどに両眼を真っ赤にさせたインデックスが、何かを爆発させた。
するとそれだけで先程まで優位に立っていた神裂の体が遥か後方へと吹き飛ばされてゆく。
上条はそれを、彼女と認めたくなかった。
今あるこの現状を『インデックス』と称するには、あまりにも『それ』は禍々し過ぎた。


「…………始まってしまったんだ、………彼女の悪霊化が………」


呟いたのはステイルだった。
そう言えば神裂が人払いを施したのはステイルであると告げていた。彼ならば此処に立ち入れるのも頷ける。


「なんとかアイツを元に戻す術はないのかよ!?」

「ないから僕らはこうなる前に彼女を消そうとしたんだ!!こうなった彼女が誰かを傷つける前に!!」


上条は歯噛みする。
なんとかインデックスを元に戻し、共に彼女の未練を果たして成仏させてやろうと考えるが自分の落ちこぼれな頭では何も策が見つからない。


「『聖ジョージの聖域』を発動、魔術師2名の破壊を優先に攻撃を開始します」


両目から深紅の魔方陣を宿らせたインデックスが小さく呟くと、その魔方陣が凄まじい音を立てて一気に拡大した。
重なるように配置された直径二メートル強のそれら2つは彼女が持つ左右の眼球の動きに合わせ静かに動く。
インデックスが何か、最早人の頭には理解出来ない様な『何か』を謳った。
瞬間。インデックスの両目を中心軸としていた魔方陣が輝き、発生した巨大な亀裂の奥から現れた光の柱が上条達に襲いかかった。


否、それは明らかにステイルのみを狙っていた。
隣に立つ上条には目もくれず一直線に彼を襲った光の柱を、ステイルの前へと躍り出た上条は自身の右手で受け止める。
お前の助けなど要らないというように顔を顰めたステイルに上条は叫んだ。


「俺にはアイツの生い立ちも人生も解らねえ!!考えろ、アイツの未練は何だ!!アイツはどうしたら安らかな眠りに就ける!?」



743 名前:上条「どうせ俺はレベル0の霊能力者ですよ……」 13/17[saga] 投稿日:2010/12/19(日) 20:28:30.15 ID:DrGDPmM0 [14/20]


「そんなの僕にだって解らないさ!!僕がイギリスを離れ戻って来た時には、既に彼女は死んでいた!!
彼女が何故死んだのか、それすら僕は理解できない!!」


悲痛なステイルの叫びを前に、上条はどうすればインデックスを救えるか。それだけを考える。
インデックスを元に戻す方法、あるいは彼女を無事に成仏させる方法は彼女の『未練』にある筈だ。
彼女をこの世に縛り付けるほどの強い『未練』。
それが彼女を苦しめている。


ステイルが光の柱を巻き散らすように『魔女狩りの王』を顕現させる。
人型までに膨れ上がった巨大な火炎が両手を広げて、柱に打ち消される度に復活する盾と変わった。


「警告、炎の魔術の術式を逆算に成功しました。対十字教用の術式を組み込み中…命名『神よ何故私を見捨てたのですか』完全発動まで12秒」


純白だった光の柱が血の様な真っ赤な色へと変化してゆく。
それと共に『魔女狩りの王』の再生スピードが格段に弱まり、徐々に光の柱に押され始めた。
完全に掻き消された『魔女狩りの王』を前に、光の柱は強烈な速さで二人を襲う。


「――――― Salvare000!!」


光の柱がぶつかる直前、上条は神裂の叫びを聞いた。神裂の持つ二メートル近い長さの日本刀が大気を裂き、インデックスの足場を崩す。
突然にバランスを失った彼女の体が揺らぎ、連動するように光の柱の軌道が逸れた。
その隙をついて上条はインデックスの傍へと駆け寄る。


彼女の下へ走ったとして、自分に何ができるのかは解らない。
もしかしたら、自分は死ぬかもしれない。
そうだとしても、上条に後悔はなかった。
『ありがとう』――――― 自身が死ぬほど望んでいた言葉をくれた彼女を、自身の死と引き換えにしても助けたかった。


「インデックス!!!!!」


上条はインデックスへと自身の右手を必死に伸ばした。
全てのあらゆる術式を打ち壊すこの右手。
上条の右手が彼女の体を捉えた瞬間。右手は、確かに『何か』を打ち壊した。


そして彼が打ち壊した『幻想』は、インデックスの『記憶』と『感情』を爆発させた。




744 名前:上条「どうせ俺はレベル0の霊能力者ですよ……」 13/17[saga] 投稿日:2010/12/19(日) 20:30:41.14 ID:DrGDPmM0 [15/20]

上条が壊した何かによって、決壊したダムの様にインデックスの『記憶』と『感情』が上条の中へと流れ込んでゆく。
それは後ろに控えたステイルと神裂も同じらしく、突然の状況に二人も目を白黒させている。


『―――― 助けて欲しいんだ』


上条の知らない草原で、インデックスの『記憶』の中の男が彼女に言った。


『君の知識で、私を助けて欲しい。私にはまだ為さねばならないことがある。生きねばならない理由がある。
だから、君の知識で私を助けて欲しい』

『……あなたの決意は素晴らしいものだと思う。だから、私もあなたの力になりたい』


インデックスは男の願いを受け入れた。そっとその白い手を乞う様にして差し出された男のそれへと重ねる。
場面展開。
インデックスの『記憶』が何処か遠くの教会へと流れてゆく。
インデックスは修道服を着た大勢の大人に囲まれながらも凛とした態度を崩さない。
しかし彼女のそんな表情も、彼女の想いを抉るかの如く告げられた次の言葉に崩されてしまう。


『君が助けようとしたローマ正教の男は死んだよ。ローマ正教から、イギリス清教との密通の疑いで処分された』


インデックスの顔が氷づいた様に固まり、その顔色が段々と青く染まっていった。
大人達は続ける。


『悲しいものだね。―――――― 君には、誰かを救うことなんて出来はしないんだよ』


うぁあああああああああ!!!!!!!!!!!
悲痛な叫びを上げるインデックス。しかし、教会の人間はそれに動じない。
無情にも剣に近い何かを取り出して、その切先をインデックスへと差し向ける。


『君にもそれ相応の、処罰を受けて貰わなければならない』


彼らにインデックスを殺すつもりはなかったのかもしれない。
剣から放たれたのは斬劇ではなく、彼女を捕える様にして現れた光の縄状の物体だった。
だがインデックスは大粒の涙をポロポロと零しながらその刃を両手で受け止める。
そして、


――――――― インデックスは向けられた刃を、自身の心臓部へと深く突き刺した。



745 名前:上条「どうせ俺はレベル0の霊能力者ですよ……」 15/17[saga] 投稿日:2010/12/19(日) 20:33:37.92 ID:DrGDPmM0 [16/20]


「まさか……彼女を殺したのは教会の者だったというのか!?」


驚愕に満ちたステイルの声が上条の耳を撃った。
教会の人間。つまりインデックスは、自分の仲間に殺されたというのか。
否、それよりも。


「お前の『未練』は、………『救おうとした人を救えなかった』こと、なんだな………」


上条の正面で禍々しい光を放ちながら立つインデックスは、抱きしめる程の近い距離で聞かなければ解らない小声で終始呟いていた。


「――――― とうま、を……とうまを、護らなくちゃ……とう、ま、を………」


インデックスは自分の『未練』を自分自身で断ち切ろうとしていた。
自分を護る為に、自身を追ってきた魔術師と対峙しボロボロに傷ついてゆく上条を、インデックスは今度こそ救おうとしていた。


「護ら、なくちゃ。……こん、ど、こそ。ちゃんと、救わなくちゃ。……とうま。……私が、護ると決めた人………」

「インデックス……――――――――」


上条はゆっくりと彼女の体を受け入れた。
『幻想殺し』を宿した右手と、何の力も持たない左手をそっと彼女の背中へと回す。


「インデックス……――――― 俺はとっくに救われてんだよ、お前に!!
お前は俺に『ありがとう』って、『救われた』って言ってくれた!それだけで俺は……もうとっくに救われてんだよ、インデックス!!!」


機械の如く真っ赤に染め上げたインデックスの瞳から音もなく一筋の涙が伝い落ちた。
インデックスの唇が小さく震え、そして静かな言葉をつくる。


「……と、うま。――― 私は、あなたを救えたの?……ほんとう、に、ちゃんと護れた、の?」


上条は力強くインデックスを握り締めた。
彼女の顔を隣に、上条は自分の言葉を、想いを、ただインデックスへと伝える。


「俺は自分が嫌いだった、この右手が憎かった。――― でも、お前が教えてくれた。
 俺には一人の女の子を救うだけのチカラがあるって。誰かを護れるって。……お前が教えてくれたんだよ、インデックス」



746 名前:上条「どうせ俺はレベル0の霊能力者ですよ……」 16/17[saga] 投稿日:2010/12/19(日) 20:35:57.74 ID:DrGDPmM0 [17/20]


「――――― とう、まぁ………!!」


インデックスの涙が上条の右手に触れた。
黒々とした何かに取り巻かれていたインデックスの体が徐々に正常へと戻ってゆく。


「インデックス―――――!!」


しかし、一度闇に包まれた彼女を素直に解放するほど世界は甘くなかった。


「……っ、な!!」


インデックスから急に発せられた爆風はステイル戦、神裂戦で消耗した上条の体に絶大なダメージを与えた。
インデックスが再び禍々しい光に取りつかれてゆく。今度は、彼女の意思とは関係なしに。


「……とうまぁ!!……っ、とうまぁ!!!」


恐怖に怯えたインデックスが上条の名を叫ぶ。
途端、ビクンと大きく反り返った彼女の体が一瞬大きく膨らみ、その背から純白の光の羽根が大きく翼を広げた。


「それは『竜王の吐息』―― 伝説にある聖ジョージのドラゴンの一撃と同義です!
いかなる力があるとはいえ、人の身でまともに取り合おうと考えないで下さい!!」


神裂の言葉を背にしながら、しかし上条は見た。
その『竜王の吐息』が上条ではなく、それを媒介とするインデックス自身を狙っている事に。


「――――――っ、インデックス!!!!!!」


上条が自身の意思に逆らおうとしていることに気付き、『竜王の吐息』は狙いの標準をインデックスから上条へと定め変える。
頭上には何十枚と舞う光の羽根、
眼の前にはたった一つの想いすら打ち壊され、叶えようとした願いも潰されようとする一人の少女。
どちらかを救えばどちらかが倒れるという、たったそれだけのお話。
勿論、答えは決まっていた。



(神様……この物語が、アンタの作った奇跡の通りに動いてるってんなら――――まずは、その幻想をぶち殺す!!)



747 名前:上条「どうせ俺はレベル0の霊能力者ですよ……」 16/17[saga] 投稿日:2010/12/19(日) 20:37:44.16 ID:DrGDPmM0 [18/20]









「なんつってな、引っかかったぁ!あっはっはのはーっ!!」


ナースコールがぷーぷー鳴る。
頭のてっぺんを思いっきり丸かじりされた少年の絶叫が病棟中に響き渡った。





―――――――― けど、あれで良かったのかい?
―――――――― けど、あれで良かったんじゃないですか?




そして。
一度『死んだ』上条当麻の物語の一幕は、君達が知る通りの結末を迎える。







―――――――― 俺、なんだかあの子にだけは泣いて欲しくないなって思ったんです。









                                   ≪上条「どうせ俺はレベル0の霊能力者ですよ……」≫(完)






748 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/19(日) 20:40:19.94 ID:DrGDPmM0 [19/20]
以上で終了です。
お付き合い頂いた方はこんな駄文を長々と読んで下さりありがとうございました。

戦闘シーンの練習も兼ねて書いたのですが、まんま1巻ですね。
できるだけ短く収めようと省くところはかなり省きましたしレス数も途中で間違えてしまったので読みにくかったと思います。
申し訳ありませんでした。
それでは。

Tag : とあるSS総合スレ

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