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澪「誰かが私を見ていた」

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/11/26(金) 17:13:39.82 ID:l29p1qPt0 [2/22]
私は暗がりの中を這うように進んだ。

誰かの粘つくような
視線が、
視線が、
視線が。

澪「いやだいやだいやだ……っ」

私は震えた。
怖かった。
とてつもなく、恐ろしかった。

指先に何かが触れた。
誰かの冷たい手があった。

顔を上げると、何も映していない瞳が、私を射るように見据えていた。

―――――

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/11/26(金) 17:15:17.99 ID:l29p1qPt0 [3/22]
澪ちゃん、と名前を呼ばれて私は視線を前に戻した。
いつもどおりの笑顔で立っている、ムギがいた。

大丈夫、今はムギ以外、誰の視線も感じない。
部室が、私にとって最高の安らぎの場所だった。

澪「どうしたんだ、ムギ?」

訊ねると、ムギはごめんなさい、と言って悲しそうに眉を顰めた。
今日はお菓子を持って来てないの、と。

澪「大丈夫、いつも持って来るの大変だし」

ムギはそう?と申し訳なさそうに首を傾げた。
そうだよ、と頷く。
ムギから視線を逸らし、私はテーブルの下に目を落とした。

今日は何だか、部室が汚れている気がする。
明日にでもちゃんと掃除しなくちゃ。

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/11/26(金) 17:16:09.93 ID:l29p1qPt0
澪「そういえば他の皆はまだなのかな」

私は訊ねた。
ムギはそろそろ来るはずよ、と言って今にも開きそうな扉を見た。

澪「あれ?ドアに何かが付いてる」

ムギにつられて扉を見ると、そこにはどす黒い色をした物体が張り付いていた。
ムギは、あれはりっちゃんたちが昨日残していった跡よ、とドアに近付くと、それを
愛おしそうに撫でた。

ヌチャ、ヌチャ

乾いているように見えたのに、ムギがその物体を撫でまわす度にそんな音が
漏れた。

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/11/26(金) 17:17:01.33 ID:l29p1qPt0
澪「ふふっ……」

何だかおかしくなって、私は思わず笑ってしまった。
ムギが不思議そうに私を見ると、つられたように笑顔を浮かべた。

その時、突然扉が開いた。
唯と律がいた。
私はドアを開けたまま、入口で突っ立ったままの二人を招き入れる。

澪「早く来いよ、今日はお茶がないらしいけど」

私がそう言うと、唯と律はまるでロボットみたいな動きで中に入ってきた。
唯が寒いね、と私に近付いてきたとき、何かにつまずきかけて立ち止まった。
律も同じように立ち止まり、唯がつまづきかけた原因である物体を、冷めた目で
見下ろした。

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/11/26(金) 17:18:47.55 ID:l29p1qPt0
澪「見ちゃだめっ」

私は叫んだ。
どうしてだか、見ちゃいけない気がした。
そこに在るのは、ただのぼろぼろになった楽器――そう、ギターだ!
ぼろぼろになったギターがあるだけなのに!

唯は、どうして、とは聞かなかった。
律も、冷めた目のままではあるけど、何も言わずにそれを飛び越えて私の傍まで
やって来た。

ムギも、ギターの周りに落ちてある細かく千切れた弦を拾ってから私たちのところに
戻って来る。

今日は何だか静かだな。
いつもの場所に座りながら、私は考えた。
頭に靄がかかっている感じがするのに、心はすっきりと気持ちが良かった。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/11/26(金) 17:20:09.37 ID:l29p1qPt0
>>9
出来れば今日最後まで投下したいと思ってるが、書けるかどうかわからない。
ただ、投下遅いと思うけど今度こそ完結させるつもり。


11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/11/26(金) 17:21:13.69 ID:l29p1qPt0
皆は椅子に座り、黙り込んだままだった。
誰か喋ってくれればいいのに。
そう思った途端、唯たちは一斉に口を開けた。

今日の体育がどうだったとか、
さわ子先生の失態を見てしまったとか、
そんなことを。

以前聞いた事のあるような話ばかりだった気がするけど、
きっと気のせい。

ふいに窓が風のせいか大きな音を立てて鳴った。
その一瞬、私は刺す様な視線を感じた。
帰らなきゃ。
そう思った。だけど、ムギはそんな私の前に何かを置いた。

澪「……これは」

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/11/26(金) 17:22:12.00 ID:l29p1qPt0
ムギは食べて、と言った。
私は改めて、浮かしかけていた腰を下ろすとムギが私の前に置いた何かを見た。
それはさっき、ムギが拾っていたギターの弦のように見えた。

澪「これを食べるの?」

えぇ、とムギは頷く。
私はそっと前を見た。
さっきまで楽しそうに話していた唯と律は、何の感情も籠っていない目で私を
見ていた。

ムギが、早く、と言って私を急かした。
私はムギに渡されたそれを手に持った。

澪ちゃんは、澪はこれを食べなきゃいけない。

皆の目がそう言っていた。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/11/26(金) 17:22:55.03 ID:l29p1qPt0
だから私はわかったと言って細長いそれを口の中に捻じ込むようにして入れた。
口の中で、腐ったような匂いの後から、鉄の味が広がる。

澪「……美味しい!」

私は言った。
この錆びた鉄の味が、癖になりそう。
律が、そりゃあな、と笑った。
唯とムギが、私たちもあるから食べて、と言って私の手元に次々とギターの弦のような
ものを重ねていった。

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/11/26(金) 17:23:43.92 ID:l29p1qPt0
澪「全部食べるよ、大丈夫」

沢山の量があるのに、私は全部全部食べたかった。
皆は誰一人としてそれに手を伸ばそうとはせずに、次々と私がそれを食して行くのを
ただ見詰めているだけだった。

ギターの弦のようなそれは、案外柔らかかった。
しかし、量が量なので顎が痛くなってくる。
それでも最後の一本を食べ終えた時にはもう、日は暮れかかっていた。

澪「夜が来る……」

私は呟いた。
突然、ここ最近ずっと続いている恐怖が私を襲った。

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/11/26(金) 17:25:38.14 ID:l29p1qPt0
誰かがずっと、私を監視している気がして居心地が悪い。

部室だけが私に安らぎを与えてくれる場所だったのに!
どうしてここでも……!

私の恐怖心を更に煽るように、
部活終了のチャイムが鳴り響いた。

私はハッとして辺りを見回した。
窓から差し込むオレンジ色の光だけが、私を照らしていた。

―――――

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/11/26(金) 17:26:56.69 ID:l29p1qPt0
唯『ねえ澪ちゃん、あずにゃんのこと……』

唯『!?』

唯『……澪っ……ちゃん……』グラッ

唯『だめ、やめて、お願い……っ』

グッ

唯『うぁ……っあああ』

唯『み……お、ちゃん……、どうし、て……』

―――――

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/11/26(金) 17:28:46.41 ID:l29p1qPt0
布団に包まっているはずなのに悪寒が止まらない。
がちがちと歯が鳴る。
この部屋には誰もいないはずなのに、誰かの悲鳴や声が止むことは無い。

何も見えない聞こえない!
何も……!

ズッ
 『いやぁぁあああああああああああああああああああ!』

澪「!」

やめろやめろやめろやめろやめろ、
やめてくれ!

澪「あ、あ、っ……」

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/11/26(金) 17:30:08.56 ID:l29p1qPt0
震える指先を伸ばした。
何かを掴んだ。

それは、

澪「……っひ……あ、……りつ……」

違う違う違う!
何でそんなふうな目で見てくるんだっ!何で!

 『澪ちゃん……』

 『ねえ、どうして?ねえ!』

澪「私じゃないっ、私じゃないっ、私は何も知らないんだっ」

両手を振り回し、声を追い払おうとした。
声は私の頭の中でずっとずっとずっと、私を嘲るように響いていた。

『ねえ澪ちゃん』
 『私たちは――』

―――――

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/11/26(金) 17:31:44.97 ID:l29p1qPt0
澪「みんな」

私は部室の扉を開けた。
そこにはもうみんなの姿があって、私は心底ほっとすると部室に足を踏み入れた。

部室の扉には相変わらずどす黒い物体が付いていたし、
ぼろぼろになったギターや、食器棚やソファーの前にも何かの塊が落ちているけど、
それでもいつもの部室には変わりなかった。

澪「今日はちゃんと練習するか?」

私はみんなに訊ねた。
唯は、今日はゆっくりお茶しようよと言った。
律は、絶対に今日は練習しないぞ、澪!と。
ムギは、私が来るのを待っていたかのように立ち上がると、戸棚からお菓子の
お皿を出して私の前に置いた。

澪「今日のお菓子はこれ?」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/11/26(金) 17:33:05.57 ID:l29p1qPt0
ムギは、美味しそうでしょ?と笑った。
私も笑い返した。

澪「いち、にー、さん、しー……」

白と黒の、ゼリーのような何か。
数は8つ。

澪「これ、全部私が食べていいの?」

当たり前よ、とムギが頷いた。
唯と律も、大して興味なさそうに、それでも昨日のように私がそれを噛締める様子を
じっと見詰めていた。

正直、何の味もしなかった。
ただ、少しだけ気持ちが悪くなった。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/11/26(金) 17:34:47.73 ID:l29p1qPt0
―――――
紬『澪ちゃん、唯ちゃん……』

紬『嘘……』

紬「ねえ澪ちゃん、嘘よね!?こんなこ……と!?』

ガッ!

紬『み、おちゃん……っ』

紬『あぁっ……あぁあああ』

紬『……、私たち、……がっ……!』

赤、赤、赤、赤、赤っ!
全部真っ赤!

綺麗だ、すっごく綺麗。

澪『なあムギ、もうすぐ梓の願いが叶うんだ!』
―――――

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/11/26(金) 17:42:48.13 ID:l29p1qPt0
それからも毎日、私は練習せずに、ムギや唯たちが出してくれるお菓子を黙々と食べた。
相変わらず、唯たちは私の食べる様子を眺めているだけだった。
そして、相変わらず私を監視するような視線は絶えることがなかった。
寧ろ以前よりも、その視線を感じることが多くなってきた気がする。

澪「今日は冷えるな」

私は「視線を感じるんだ」と変なことを言ってみんなを心配させないように、
そう言って立ち上がると、窓の傍に寄った。
窓は閉まったままだった。
だから私はカーテンを閉めると、自分の席に戻った。

カーテンを閉めたって、その視線が絶えることはなかったのだけど。
今までなんともなかった部室でまで、私は私を射続けるその視線を感じ、それを
避けるようにみんながくれるお菓子を食べ続けた。

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/11/26(金) 17:52:56.93 ID:l29p1qPt0
汚れていた部室は、日が経つごとに段々綺麗になっていった。
きっと唯たちが掃除してくれているんだ。

澪「なあ皆、そろそろ練習しないか?」

今日の分を食べ終えると、私は言った。
律たちは顔を見合わせると、それぞれ大きく頷いた。

私は久しぶりにベースの入っているケースを開けた。
錆び付いていたのか、変な音を立てて、ケースは開く。

私はそれを見て驚愕した。

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/11/26(金) 17:57:54.95 ID:l29p1qPt0 [21/22]
茶色いベースが、赤く染まっていた。
ベースの弦までが、赤く赤く。

 『やめてえええええええええええええええええええええええええええ』

澪「!?」

声が響いた。
私は咄嗟に耳を塞ぐとケースを閉じる。

まただ!
まだ夜じゃないのに!どうして部室でまで聞こえるの!?

唯たちが、私の様子を見てどうしたの、と集まってきた。
私は引き攣った笑みを浮かべると、立ち上がる。

澪「ごめん、大丈夫」

とにかく、みんなにだけはこんなこと知られちゃいけない。
心配を掛けてしまうから。
だから私は悟られないように、ケースをそっと後ろ手で押して私の身体から離すと、
驚いた拍子に落としてしまったベースを拾って言った。

澪「さあ、練習しよう!」

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/26(金) 21:00:55.72 ID:WF8ZO7bg0
律がおう、と言ってスティックを頭上に翳し、打ち鳴らした。
私はベースを爪弾いた。

私たちの音が、部室に流れるはずだった。

 『ぐっ……あ、いあああああああああああああ』

澪「なっ!?」

私は手を止めると辺りを見回した。
誰もいなかった。

隣でギターを弾いていたはずの唯も、
後ろでキーボードでメロディー奏でていたはずのムギも、
ドラムを叩いていたはずの律も、

誰もいなかった。

―――――

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/26(金) 21:59:39.82 ID:7azo054H0 [1/12]
律『澪、何してんだよ!?唯とムギを離せ!』

律『澪!……ぐっ!?』

ズンッ

律『うっく……みお、知って……』

律『あ……っ、う……やめ、ろ、やめてくれえええええええええええええええ!』

生暖かい液体が降って来る。
それを身体中に浴びながら、倒れている塊を見下ろす。

笑いが止まらなかった。

澪『あはっ、あはははははははははははっ』

澪『これで私たち……』

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/26(金) 22:05:38.52 ID:7azo054H0 [2/12]
                          ―――――

何してんだよ、と律が笑っている。
澪ちゃんどうしたの?とムギが心配そうに顔を顰める。
唯は、私にはい、と何かを差し出してきた。

私はぼんやりしたまま、それを受取る。

  『澪先輩』

澪「ひっ」

私は後ずさった。
聞き覚えのある声が、私を追いかけてくる。

来るな!
来るな来るな来るなっ!

その声を掻き消そうと、私は今受取った何かを投げた。

ヒュッ

それは大きな放物線を描いてから、急速にスピードを上げて床を目掛けて落ちて
いった。
私はそれが床に当たった音を聞く前に、部室を飛び出していた。

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/26(金) 22:22:40.62 ID:7azo054H0 [3/12]
「……さん」

      『ねえ澪先輩?』

「……山さんっ」

      『一緒に、逝きましょう』

「秋山さん!」

さわ子先生の声で、真っ赤だった私の視界が元に戻った。
私は肩を揺すられていた。さわ子先生の心配そうな表情がそこにあった。

さわ子「澪ちゃん、大丈夫なの?」

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/26(金) 22:29:32.73 ID:7azo054H0 [4/12]
澪「……う、あ……」

さわ子「澪ちゃん、私がわかる?」

澪「……」コクコク

私は頷いた。
さわ子先生は、一旦ほっとしたような表情を見せ、私の肩に置いていた手を離した。

澪「せん、せい……」

さわ子「随分痩せ細っちゃって……最近部室に顔出せずにごめんね、澪ちゃん、
りっちゃんや軽音部の皆がいなくなって不安で辛いはずなのに……」

澪「……え?」

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/26(金) 22:39:50.26 ID:7azo054H0 [5/12]
さわ子「大丈夫よ澪ちゃん、きっとすぐに皆見付かるわ」

 先生は何を言ってるんだ?
唯たちは私のすぐ傍に立っているのに。

 『先輩方とずーっと一緒に』
   『お願い、だから……!』
         『コロサナイデ』

        『私たちを、殺さないで』

錆びた鉄のような匂い、
生ぬるい感触、
声、声、声。

赤、
赤、
赤、

澪「っ!?」

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/26(金) 22:45:52.24 ID:7azo054H0 [6/12]
―――――

梓『澪先輩』

梓『私、先輩方とずっとずっと、ずーっと一緒にいたいです』

梓『卒業なんて、しないで下さい』

梓『ずっとずっと、ずーっと』

梓『私の傍に』

梓『いてくれるだけでいいんです』スッ

梓『ねえ澪先輩?』

梓『一緒に逝きましょう』

―――――

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/26(金) 22:49:59.03 ID:7azo054H0 [7/12]
唐突に、強烈に浮かび上がる記憶の断片。
私は声にならない叫びを上げた。

真っ赤なそこに立っているのは、間違いなく私で、
その足元に転がっている塊は、間違いなく皆だった。

澪「嫌っ、違う、違う……!」

頭を大きく振っても、何をしても、
その光景は私の目の前から消えてくれなかった。

さわ子「澪ちゃんっ!?どうしたの!?」

あぁ、そうだ。
部室に行けばいいんだ。

部室に行ったらきっと、みんながいる。
みんなが私を待ってる。
私は部室に行かなきゃ、行かなきゃいけない!

さわ子「ちょっと、澪ちゃ……」

私はさわ子先生を突き飛ばした。
さわ子先生の身体がよろめいた。
私はそのすぐ横を走り抜けた。

部室に行けばこんな記憶――!

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/26(金) 22:55:02.59 ID:7azo054H0 [8/12]
―――――

梓『澪、先輩……?』

梓『どうして抵抗するんですか?』

梓『どうして』

梓『こうしなきゃ、私たちはきっと、ずっと一緒になんていれないんです』

梓『皆一緒に死ねば、私たちは一つに成れる、そうでしょう?』

梓『だから澪先輩、怖がらなくてもいいんです』

梓『大丈夫ですよ、すぐに終わります。ですからそのナイフ』

ズグッ

梓『を……!?』

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/26(金) 22:58:05.61 ID:7azo054H0 [9/12]
梓の身体が、ゆっくりと傾いていく。
刺したお腹の辺りから、赤い血が滴り落ちていく。

澪『……あ、ずさ』

梓『……して……』

澪『梓っ!私……っ』

梓『どう、して……!』

梓『私、たち、永遠に、ずっと一緒、に……!』

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/26(金) 23:02:20.36 ID:7azo054H0 [10/12]
梓の顔から、急速に血の気が失せていく。
それでも、最期まで梓は私を見て、声にならない声で、必死に何かを言っていた。

梓が力尽きるのを、私は震えて見ているしかなかった。

手にはまだ、梓を刺した感触が、耳には梓のくぐもった声が、身体全体には梓の
真っ赤な血が、こびり付いていた。

澪『……ははっ』

私は笑った。
笑うしかなかった。
そうすることでしか、この現実を直視できなかった。

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/26(金) 23:12:11.57 ID:7azo054H0 [11/12]
隠さなきゃ。

私はショックを受けたまま止まっていた脳に呼びかけた。
梓の死体をどこかに……。

けど、どこに?

考える暇はなかった。
私は刺したままになっていたナイフを、梓から抜き取ると、それを梓の首に
持っていった。

何も考えられなかった。
私はナイフで次々と梓の身体を切断していった。

女の子が持つには大きすぎるくらいのナイフは、梓の骨を切断する度に削れていった。
ただのナイフじゃ人は切れないと聞いた事があるし、あんな固いものをよくも、と自分でも思う。
でも、私は必死だった。

何が何だかわからないうちに、梓の首を、胴体を、腕を、足を、手を、切断していった。
その作業が全て終わると、私の手は酷く腫れていた。

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/26(金) 23:18:45.16 ID:7azo054H0 [12/12]
切断した梓を、私は物置に使っている部屋のダンボールに放り込んだ。
それにしっかり封をして、物置の奥に仕舞いこんだ。

律たちは、梓がいなくなった日からずっと、私を疑っていた。
血塗れで部室に一人、立ち尽くしていた私を見つけた日から。

それでも、律たちは私にちゃんと接してくれた。
私は律たちに見付からないように隠れながら、ダンボールに入れた梓の欠片を毎日、
少しずつ噛み砕いていった。

しかし、何れ私が何をしたのかわかってしまう。
私はそれが怖かった。
何よりそれが怖かった。

梓の言葉が、私の頭で何度も繰り返された。

『皆一緒に死ねば、私たちは一つに成れる』

ばれたらきっと、私はお終い。もうみんなとはいられない。
それならばれる前に一つに成ればいい。

梓だって、それを望んでいたのだから。

54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/27(土) 00:36:37.77 ID:WBlv+owW0
だから私は、律たちと一つに成るために三人に刃を向けた。

 みんなの血が、みんなの欠片が混ざり合っていった。
私はそれを笑った。
みんなと一つに成れると思うと、嬉しかった。

嬉しくて仕方がなかった。



澪『ずっと永遠に一緒だよ』




―――――


55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/27(土) 00:39:22.25 ID:WBlv+owW0
澪「……あ、ぁ……」

私は部室の扉を開けた瞬間、
座り込み頭を抱えた。

赤い記憶が私を染めていく。
口の中で、腐ったような味が蘇る。

律の血に塗れた髪が、唯の内臓が、ムギの体液が、梓の骨が、
私の中で溶けている。
そう思うと、堪らない吐き気を催した。

57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/27(土) 00:42:28.96 ID:WBlv+owW0
私は部室の入口にへたり込んだまま、
胃の中にあるもの全部を吐き出した。

白い欠片が、
得体の知れない何かが、
私の唾液に混じっていた。

それを見て、私は更に吐いた。
もう胃液しか残ってないのに、私は吐き続けた。

 全員を殺してしまった後、私は我を取り戻した。
 自分のしたことが突然、怖くなった。
 誰もいなくなってしまった部室に一人、私はいた。

もうだめだ。
私は人を殺してしまった。それも何人も。
私はもう。

いっそ、死んでしまえればいいのに。


58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/27(土) 00:44:50.07 ID:WBlv+owW0
澪「……」ビクッ

ふいに視線を感じた。
私の身体を射るような視線を。

私は口の端についたままの唾液なのか胃液なのかもわからないものも拭わずに、
顔を上げた。

澪「ごめん、なさい……っ」

私は喘ぐように言った。
幾つもの視線は、私を無言で責めていた。

無言でずっと、責め続けていた。


59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/27(土) 00:46:54.56 ID:WBlv+owW0
私はふらふらした足取りで立ち上がると、
部室の真ん中に立った。

唯の抜け殻があったはずのそこに、
大きすぎるナイフが深く深く刺さっていた。

私はそれを手にすると、
部室の扉を固く固く閉ざした。

澪「みんな、私たち、ずっと一緒なんだよな……?」

返事は返ってこなかった。
その代わり、無言の視線が私を勇気付けた。

私はナイフを大きく振りかざした。

61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/27(土) 00:49:03.40 ID:WBlv+owW0
―――――

私は一人、部室に座っていた。
すぐに皆が来てくれた。

私は皆のために、とびっきりのお菓子を用意していた。
皆はそれを、とても美味しそうに食べてくれた。

私は立ち上がると、窓の傍に寄った。
閉まっていたカーテンを開ける。




窓の外では、誰かが私を見ていた。




終わり。


62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/27(土) 00:49:51.33 ID:WBlv+owW0
以上です。
見てくださった方、ありがとうございました。

コメント

感想

怖エエエエエー!
まさかのヤンデレ澪の自殺オチとは・・・・・。

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