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唯「サイレンが鳴ってる・・・」3

321 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/16(土) 19:16:28.00 ID:wMSAAF0rO [78/109]
私がその事を知り、愕然としたのはちょっと前のこと。
塾が終わり、桜ヶ丘行き、帰りのバスに乗り込みうとうとしていた私は突然の急ブレーキという派手な起こし方により強制的に意識を覚醒させられた。
桜ヶ丘への通行が全面封鎖───

不可解、としか言いようがない。

桜ヶ丘一帯にだけ強烈な地震が襲いかかるという現象。隣町の私が揺れさえ感じなかったのだからこれはもう珍事なんて言葉じゃ済まされないだろう。

更に不可解なのは桜ヶ丘の住人は一人を除き全て……消息不明と言うことだ。
当然、桜ヶ丘に住んでいた私の幼なじみ……平沢唯もその例外ではない。

326 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/16(土) 19:30:28.48 ID:wMSAAF0rO [79/109]
隣町 避難所
PM18:14:32

真鍋和

────────────
和「……唯」

国が一時的に用意した避難所で昨日は一日を過ごした。すぐにでも唯達を探しに行きたかったけれど街は封鎖されている為入れない。

和「……」

テレビに目を向けると、恐らくどのチャンネルでもやっているだろう桜ヶ丘についてのニュース。桜ヶ丘怪奇現象なんて面白半分のタイトルをつけられた特集番組が視聴率を集めてると思うと無性に腹がたった。

少女「和お姉ちゃん……」

和「ん? どうかしたの?」

328 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/16(土) 19:44:16.09 ID:wMSAAF0rO [80/109]
少女「私達……お家に帰れるのかな?」

和「大丈夫よ。きっとすぐ帰れるから。心配しないで」

そう言って頭を優しく撫でると不安がっていた顔がゆっくりと笑顔に変わって行く。

少女「うんっ!」

そのまま私の膝にちょこんと座ると安心しきった猫の様に一緒にテレビを見始める。
私はすぐさまテレビの番組を楽しそうな童話の話に変えるとその女の子は嬉しそうにテレビを見始めた。

和「……」

私にもこれくらいの妹がいた。弟も……、勿論両親も。
今じゃ消息不明なんて言う勝手のいい言葉に握り潰され、生きてるのか死んでいるのかさえわからない。
そして、この子の両親も……。

329 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/16(土) 19:54:25.75 ID:wMSAAF0rO [81/109]
そもそも地震が起きて消息不明とはどういうことなのだろう。
死体さえ発見されないと言うのはどう考えたっておかしい。世論では集団失踪やら桜ヶ丘地盤沈下等々勝手に盛り上がっているがこれはどう考えたって現実から逸脱している。
何かが起きているのだ、あの街で。

和「……」

ただ、どうすればいいのか……。街に行ったところで私みたいな学生は門前払いだろう。
もし上手く入り込めたとしても、国が何百人体制で探しているのに見つからない人達を私が見つけられるとは思わない。

和「八方塞がりね……」

少女「はっぽ~ふさがり? ってなぁに和お姉ちゃん」

和「どこに行っても出口が見つからないな~って意味よ」

少女「怖いね……」

和「そうね…」

330 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/16(土) 20:00:27.82 ID:wMSAAF0rO [82/109]
和「でもほら、あの仔猫はちゃんとお母さんのところへ帰れたでしょ?」

テレビを指さすと丁度母猫と仔猫が仲良く抱き合っているシーンで、少女も安心したのか「良かったね!」と笑顔を取り戻した。

和「そう……出口のない迷路なんてない」

ここでこのまま何もせず、ただ時が過ぎるのを待つなんて出来ない。
どう動いていいかはわからない……けど、必ず唯達や家族を見つけ出してみせる。

339 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/16(土) 20:38:41.51 ID:wMSAAF0rO [84/109]
隣町 図書館
第二日
AM9:00:00

真鍋和

───────────
次の日から私は唯達を助ける為に動き出した。世論のように現実的に捉えても埒が明かないと思い別の観点から物事を見ることにしてみる。
過去に同じ象例がなかったか調べ、その事件との関連性がないかを調べてみる。

少しでも関わりがありそうなものはファイリングし、コピー、ないしは書き写す。

それを何時間も行った結果たどり着いたのが……。

和「羽生蛇村土石流災害……?」

341 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/16(土) 20:49:06.54 ID:wMSAAF0rO [85/109]
和「今から27年前…か」

村全体が土石流災害に合い…死体も出てこなかったと言う点では今の桜ヶ丘で起きている事と合致する…。

和「当時はこれを自然災害として処理…ね」

多分このまま行けば桜ヶ丘の件もこうやって風化していくのだろう。

和「実際に行って確かめた方が早いかしら」

いや、その前に桜ヶ丘にも足を運びたいわね。何か見落としてることがあるかもしれない……。

和「……」

344 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/16(土) 20:55:04.39 ID:wMSAAF0rO [86/109]
和「羽生蛇村へ行きましょう。何かわかるかもしれない」

善は急げと云う言葉に従い荷物をまとめると、私はすぐさま羽生蛇へと向かった。

349 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/16(土) 20:59:59.28 ID:wMSAAF0rO [87/109]
──羽生蛇村跡地

和「地図だとこの辺りだけど……」

思ったより近く夕方になる前につけた。

和「立ち入り禁止……か」

村全体を襲った土石流災害なんて……ちょっと出来すぎてるわよね。
中に入ろうかとも思ったけれど、入口は土に埋もれて入って行けそうもなく……仕方なく引き返すことにした。

和「無駄足だったかしら……」

とりあえず現場を見れただけでよしとしておこう。

351 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/16(土) 21:07:57.59 ID:wMSAAF0rO [88/109]
──

それからも色々調べてみたけれど……結局有力な情報は得られなかった。

それから時間はあっという間に過ぎて行き……桜ヶ丘の立ち入り禁止が解かれたのは、事件発生から1ヶ月後のことだった。
とは言ってもまだ住めると言うレベルにはほど遠く、ただの一時的な帰宅が許されただけだ。


和「地震があったにしてはあんまり変わってないな……」

1ヶ月振りに見た自分の家。勿論……誰もいなかった。

354 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/16(土) 21:17:16.76 ID:wMSAAF0rO [89/109]
唯の家にも行ってみた。本当は盗難防止の為に自分以外の家には入ってはいけないのだけれど……見つかっても幼なじみだと言えば疑われはしないだろう。
やっぱり二人はいなかった。写真やアルバムなどを見つけ出してはどうしてこんなことになったのかと悲痛に嘆くしかなかった。

階段を上がり、右の部屋に入る。

和「唯の部屋……懐かしいわね」

部屋の片隅に置かれてあるギターの埃をはらうと大事にギターケースの中に収納する。

和「全く……世話が焼けるわね……ほんと」

あんなに……大切にしていたギターを置いて……どこに行ったのよ……唯。

356 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/16(土) 21:24:45.06 ID:wMSAAF0rO [90/109]
和「このまま置いといたら唯が帰って来る前にボロボロになっちゃうわね……」

ギターケースを肩に背負う。

和「これは私がちゃんと預かっておくから。ちゃんと取りに来るのよ、唯」

そう言い残し私は平沢家を出た。

──

その後も澪の家や律の家何かに言ってみたけれど……やっぱり誰にも会うことは出来なかった。ムギの家は交通機関がストップしてる中では時間的に行けそうにない為断念することにした。

和「そろそろ帰ろうかしら……時間もないし」

生徒会の人達と良く行った大手スーパーを横切り、交番を通った時だった。

ジリリリ……ジリリリ……

和「えっ……」

電話が……鳴ってる

363 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/16(土) 21:33:42.68 ID:wMSAAF0rO [91/109]
まだ復旧してない筈の電話が何故か鳴っている。まるで私が通るのを見越していたかのように。

和「……」

交番に中に入るとその音の主、今の時代で型遅れな黒電話の受話器を……ゆっくりと耳元へ持って行く。

もしもし、なんて流暢な返しも忘れ……ただあっちが喋るのを待った。

「悪いな、射殺される前に撲殺したよ」

いきなりそんな物騒な言葉を吐き捨てる相手、しかし私はその声の主を知っていた。

和「もしもし!? その声もしかして律!?」

律「えっ……もしかしてその声……」

あっちも同様に驚いたのかさっきと声色が変わる。

366 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/16(土) 21:43:19.86 ID:wMSAAF0rO [92/109]
「ちっ……追ってきたか!」

パァンッ──

何?! あの音……銃声?

「ッ! 銃持ってるやつもいんのかよ! やっぱりあの魚潰しとくんだったな…」

和「もしもし!? どうなってるの!? 無事なの!?」

銃と云う単語に一気に不安感が高まる。

「悪い、話してる場合じゃないみたいだ」

和「律!!!」

「じゃあな、和」

そう言い残し、電話は切れてしまった。

和「律……」

かけ直すことも出来ず、またかかって来る可能性もあの様子だと薄いだろう。

和「でも……」

これで確信出来た。

律達は消えてなんかいない。生きている……どこかで。

371 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/16(土) 21:50:12.14 ID:wMSAAF0rO [93/109]
それから避難所に帰宅し、物事を整理する。

和「律達が生きてるとして……どこにいるのかしら」

ヒントは律が撲殺なんて仄めかす程の治安……銃がどうこうと言うのと掛け合わせると益々危険な場所に身を置いているのがわかる。

和「あ~もうっ! なんでどこにいるのかぐらい言ってくれないのよ! 全く律はいつもいつも……」

三年間全ての書類を忘れに忘れただけのことはある。

和「変わってないわね…ほんと」

律が生きていると言うことは唯や憂、私の両親に弟や妹、他のみんなも生きている可能性は高いだろう。
希望は見えてきた。後はみんながどこへ行ったのか…と言うことだけだ。

377 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/16(土) 21:57:28.36 ID:wMSAAF0rO [94/109]
次の日、私はまた桜ヶ丘に一時帰宅をした。数少ない生存者だからか二度目の帰宅に対してあれこれ言われることもなかった。
今日は昨日行けなかったムギの家に行ってみる。

和「大きいわね……」

唯から合宿した別荘のことやチェーン店を展開しているなどムギの話は聞いていたけれど……まさかこんなにもお嬢様だとはさすがに思わなかった。

和「門から玄関までがこんなに長い家初めて見るわね……」

ようやくたどり着いた入口の扉を開け、中に入る。

383 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/16(土) 22:05:55.58 ID:wMSAAF0rO [95/109]
解放感あふれるエントランスに圧倒されながらも一部屋一部屋回ってみる。

和「あんまりいい趣味じゃないわね……他人の家にづかづか上がり込んで物色なんて」

いくら手がかりを掴むためとはいえさすがに気が退ける。
最後にここを見たら帰ろうと、扉を開けてみた時だった。

和「本……それも凄い数ね」

ムギのお父様かお母様か、それともムギ自身が勉強家だったのか。その本の数は並みの図書館なら凌ぐほどだった。

和「……」

その中の、たった一冊に目が行く。
それを手に取ると、タイトルを読み上げてみる。

和「羽生蛇村異聞……」

390 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/16(土) 22:19:57.78 ID:wMSAAF0rO [96/109]
内容は、異界に取り込まれた人達が色々な思惑を抱いて繰り広げられる群像劇のようなものだった。
多分羽生蛇村の事件をネタに書いたフィクションだろうけど……何故か無視出来なかった。

和「異界……まさか……そんなわけ……」

もしも、律達もこれと同じような状況にあるとしたら?

和「……非科学的過ぎるわ」

それでも、律からの電話はもうこの可能性しかないと告げてくれた。

和「…………」

パタン。

和「ムギ、ちょっとこれ借りて行くわね」

やっと、やっと繋がった。それは紙よりも薄い可能性だけれど…………もう、これしか考えられない。

唯達は何らかの影響で異界に取り込まれたのだ……。

397 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/16(土) 22:28:16.41 ID:wMSAAF0rO [97/109]
──避難所

和「これでよし……」

準備は整った。後はもう信じるしかない。
自分がたどり着いたこの結論に。

少女「和お姉ちゃん……またどこか行くの?」

和「……ごめんね。お姉ちゃん大切なお友達を助けに行かなきゃいけないの。だからまた今度遊ぼうね」

優しく撫でる、けれど不安な色は消えていない。多分この子も何となくわかっているのかもしれない。私が今からどれだけ危険なことをするのかを。

和「大丈夫。お姉ちゃんは生徒会長なんだから」

少女「生徒会長……?」

和「そう。みんなを守る力が備わってるの。だから心配しないで」

少女「……うん」

400 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/16(土) 22:32:58.28 ID:wMSAAF0rO [98/109]
ゆっくりと立ち上がり、少女に背を向ける。

和「じゃあ……」

ほんとに何でもないことのように。まるでちょっと散歩に行くような気軽さでこう告げる。

和「じゃあ、私羽生蛇村に行くね」

少女「??」

今はわからないだろう。でももしいつか……覚えていてくれたら。
こんな変なお姉ちゃんが居たなって思い出してね。

それが、私達が確かにここに居た証になるから。

408 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/16(土) 22:46:54.20 ID:wMSAAF0rO [99/109]
羽生蛇村 入り口付近
PM23:54:49

真鍋和

───────────

ギリギリの終電に飛び乗った甲斐あって何とか今日中にたどり着けそうだ。繋がる可能性が一番高そうなのは異聞にあったサイレンが鳴る時間帯。6時12時18時0時だろう。
元々万に一つに賭けた可能性だが少しでも上げておきたい。

和「ギターって結構重いのね…」

背中に背負った唯のギターのせいでだいぶ体力を消耗させられた。唯にあったらいっぱい文句を言ってやろう。

真っ暗闇の静寂の中、私の足音だけが周りを支配する。風に揺れる葉の音はまるで私を拒むかのように叫びをあげている。

412 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/16(土) 22:55:10.73 ID:wMSAAF0rO [100/109]
ようやく入り口にたどり着こうと言うところで、不気味に浮かび上がる人型のシルエットを眼孔が捉えた。

和「誰か……いる」

私が言えた義理じゃないがこんな時間にこんな山奥にいる人など正気の沙汰ではないだろう。
私は警戒心を強め、ゆっくりと近づき……、声をかけた。

和「あ、あの…」

「和先輩……こっちにいたんですね。良かった」

和「あなたは確か……」

純「梓と憂の同級生の鈴木純です。ここにいるってことは先輩も皆さんを助けに来たんですね…」

和「こっちとかあっちとか…詳しく説明してくれるかしら? 鈴木さん」

純「純でいいですよ。ただ時間がないですから、詳しい話はあっちでしましょう」

416 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/16(土) 23:02:46.28 ID:wMSAAF0rO [101/109]
和「あっちって…」

純「簡単に言えば異界……ですか」

和「それじゃやっぱり唯達は!!!」

純「先輩、時間がありません。この柵を登ってください」

そう言うと純は簡易的に置かれたであろう鉄の柵をよじ登った。幸い高さは全くなく、ただここから先は立ち入り禁止という目印だけに置かれたのだろう。私も後に続き鉄の柵を登り、上に立つ。

純「先に言っておきます。行きはよいよい帰りは怖いです」

和「?」

純「一度入ったら最後、抜けるのは奇跡でも起きない限り不可能ってことです。その覚悟は先輩にありますか?」

和「……あなたにはあるの?」

419 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/16(土) 23:09:06.40 ID:wMSAAF0rO [102/109]
純「質問を質問で返さないでよ~」

和「そうね、ごめんなさい」

純「って梓によく言われました」

和「……そう」

純「わたしにはあります。その覚悟。絶対に助け出してみせる……梓が私を助け出してくれたみたいに」

和「……じゃあ行きましょうか」

純「聞かないんですか?」

和「詳しくはあっちで……でしょう?」

覚悟なんてとっくに出来ている。あの日みんなを失った日から……!

純「……はいっ!」

腕時計に目を落とす純。

純「00:00:00になったと同時に飛び込んでください! いいですか?」

和「わかったわ!」

422 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/16(土) 23:14:00.25 ID:wMSAAF0rO [103/109]
5.4.3.2.1...

00:00:00時になったと同時に柵の上から飛び出した。

唯、みんな……待っててね。

今迎えに行くから。

その瞬間世界は暗転し、耳をツン裂くようなサイレンの音が体を駆け巡った。


ウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ──────

428 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/16(土) 23:18:36.89 ID:wMSAAF0rO [104/109]
??? ???
第三日
AM00:00:01

平沢憂

────────────

和ちゃん…来てくれたんだ。和ちゃんならきっと来てくれると思ってた。
お姉ちゃんを……助けてあげて。

お願い……

私に出来るのはもう……ここまでみたいだから……。

430 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/16(土) 23:30:26.38 ID:wMSAAF0rO [105/109]
羽生蛇村
第三日
AM00:15:15

山中さわ子

────────────

さわ子「ここは……羽生蛇村!?」

気づけばいつの間にかアスファルトは土に、ビルや家は木や森に変わっていた。

さわ子「ついにここまで来た……ここまで来たんだわ!」

逸る気持ちを抑え、冷静に分析する。

さわ子「宇理炎がない状態じゃ死に損ね……。先回りしてどちらかが持って来てくれるのを待つとしましょう」

そう言い、屍人の巣を目指す。

さわ子「頑張ってね、唯ちゃん。みんな」

それが最後の教師である山中さわ子の言葉だった。

434 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/16(土) 23:38:17.27 ID:wMSAAF0rO [106/109]
羽生蛇村
第三日
AM00:30:00

斎藤

終了条件1 琴吹紬を探し出す

────────────

斎藤「全く……たらい回しとはこのことか」

ま~た戻って来ちまった。まあ慣れ親しんだ土の道が俺には合ってるがな。

斎藤「紬……いるのか」

ドス黒い雲に覆われている空を見上げる。本来なら全く光など入らないであろうはずなのに、不自然に四つぽっかりと穴が開いている。

斎藤「あの時と同じか……急ごう」

436 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/16(土) 23:43:18.95 ID:wMSAAF0rO [107/109]
斎藤「探すっつってもどこをどう探せばいいのやら」

薄暗い田んぼ畑をただ闇雲に走り回ってみたが、人っ子一人いやしねぇ。
いると言えば……。

「ウヒャヘハッホ~イ」

斎藤「化け物ばかりか」

猟銃を構え、躊躇いなく頭を吹き飛ばす。

斎藤「死にたくても死ねないか」

懐に入っているこいつを使えば楽にしてやれるんだろうが……。

斎藤「悪いな。まだ使うわけにはいかないんでね」

そうしてまた当てのない探し物を捜し始めた。

438 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/16(土) 23:48:18.09 ID:wMSAAF0rO [108/109]
──

真っ暗だった。どうしてここにいるかもわからない。どうして生きているのかもわからない。どうして私がりっちゃんを……。

記憶にこびりついた焦げを振り払ってみるが一向に消える気配はない。

もう嫌だ……帰りたい……。みんながいたあの世界に……。希望が溢れていたあの世界に…。

絶望したくない…。

これ以上私を苦しめないで…。

紬「お願い……誰か助けて……」


「何やってるんだよ、お嬢」

紬「その声は……」

斎藤「よっ、やっと見つけた」

紬「斎藤……っ!!!」

445 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/16(土) 23:55:58.69 ID:wMSAAF0rO [109/109]
紬「来ないでっ!!! まだ殺し足りないの!? あなたって人は!!!」

斎藤「なにいってんだよお嬢。帰ろうぜ、屋敷に」

斎藤から差しのべられた手を紬は容赦なくはらい飛ばす。

斎藤「なっ……」

紬「この化け物!!! なんで……なんで守ってくれなかったの……。そしたらこんな結末にはならなかったのかもしれないのに……」

泣きながら項垂れる紬に対して、斎藤はただ黙って隣に座り込んだ。

紬「……」

斎藤「お前が落ち着くまで隣にいるから。なんかあったら言え」

紬「えっ……」

ぶっきらぼうだがいつもの彼とは全く違ったやり方に紬は目を丸くした。

447 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 00:00:41.76 ID:QaUct9MlO [1/117]
紬「あなた……ほんとに斎藤なの?」

斎藤「ああ、多分な」

紬「でも……全く雰囲気が…」

斎藤「何言ってんだよ、紬」

紬「!!」

この一言で確信する。あの人に無関心な男が人を馴れなれしく呼び捨てしてくるわけがない。だったら……これは誰?

紬「あっ……ああ……」

頭の中に入ってくる記憶の欠片。何で今まで忘れていたんだろう……そうだ……私は、私達は……ここへ来たことがある。

448 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 00:06:27.33 ID:QaUct9MlO [2/117]
でも……それでも、私は彼女じゃない。それだけは確か。

紬「ごめんなさい……斎藤。あなたの言っている琴吹紬と……私は違うの」

斎藤「は? 何言ってんだよお嬢。冗談も大概に……」

バァンッ───

斎藤「伏せろ!!!」

紬「きゃっ」

斎藤が紬を守るように覆い被さる。

斎藤「ちっ! どっからだ!」

暗闇の向こう側から放たれた弾丸、その持ち主を探すように目を見開く。

斎藤「あんたはここにいろ、いいな」

紬「待って!! 斎藤っ!!!」


終了条件2 斎藤を倒す

455 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 00:13:19.31 ID:QaUct9MlO [3/117]
とりあえず紬に流れ弾が当たらないようにその場を走って離れる。

斎藤「オラオラこっちだ!」

後は陽動に猟銃をぶっぱなしておけば……

バァン──

斎藤「っとおっ」

ノックが返ってくるわけよ。にしても究極的に視界が悪い……。敵の位置もわかんねぇし……。

斎藤「さてどうすっかな」

思案にふけこもうとすると、

バァン──
バァンッ───

耳元を鉄の塊が通過する。

斎藤「やろう見えてやがるな……」

どんなテクを使ってるのかは知らないがどうやらこっちの位置はバレバレのようだ。

462 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 00:19:16.09 ID:QaUct9MlO [4/117]
自分だけ目を瞑ったまま喧嘩をするようなもんか……。

斎藤「おもしれぇ」

468 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 00:26:04.40 ID:QaUct9MlO [5/117]
斎藤「さすがに相手が見えないんじゃ突っ込むのは分が悪いか……」

しゃあねぇ、弾幕張ってチマチマ進むか。

物陰に隠れては撃ち、そしてまた安全マージンを確保するのをひたすら繰り返す。

斎藤「……」イライライライラ

斎藤「……追ってもあっちが離れてるからいつまで経っても追い付けねぇな……」

しゃなあない。

473 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 00:35:13.90 ID:QaUct9MlO [6/117]
斎藤「大和魂見せてやるよ!!!」

一気に物陰から隠れると畳み掛ける。
多分その先にいると思われる敵目掛けて全力疾走する。

バァンッ──
バァンッ───

斎藤「っと!!!」

ギリギリをかすれて行く銃弾。

斎藤「今お前怖いだろ!!!! 銃に向かってくる人間なんてそうそういねぇもんな!!!」

そう叫んでやる。あっちにわかるかどうかは不明だが狂人は常人を行動だけで喰らう。
その異質な動きが相手を震わせる、ありえないと。

斎藤「捉えた……!!!」

闇の中に浮かぶ人型をついに眼中に捕らえる。

478 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 00:44:27.31 ID:QaUct9MlO [7/117]
斎藤「っ……と」

二人同時に構える──

斎藤は走りながら──

もう一人は止まりながら──

一発目、互いに当たらず。

二発目、相手の攻撃はほぼ直撃コースだったが斎藤の天性の勘で撃たれる僅か0.コンマ何秒に首を振り、それを回避。
斎藤も避けるのに必死だった為に二発目を外してしまう。
決着はリロードの早さによって決まることとなった。

もう一人の斎藤のリロードの早さは律のお墨付きで、人間の速度ではないとまで言われていた。
この勝負どう考えてももう一人の斎藤が勝つ、筈だった。

481 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 00:49:59.57 ID:QaUct9MlO [8/117]
カチャ──

弾倉を開き、そこに、

斎藤「ぺっ」

さっき口にくわえさせた弾を寸分の狂いなく吐き捨てる。

斎藤が構えた頃にようやく弾を込め終えたと云った感じで顔を上げると、斎藤と視線がぶつかる。

斎藤「おせーよ」



バァンッ────



終了条件2 達成

490 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 00:57:15.06 ID:QaUct9MlO [10/117]
──

紬「……」

斎藤「よっ」

紬「その調子だと勝ったのはあなたの方だったみたいね…羽生蛇村の斎藤さん」

斎藤「勝ち名乗りありがとよ、桜ヶ丘の琴吹紬」

紬「……わかったの?」

斎藤「あぁ。あいつとあんたを見てな。そしてどうして俺があっちに飛ばされりこっちに戻ったりしたのかも大体な」

紬「……多分繋がったのね異界同士が」

斎藤「俺にはよくわからんがそういうことみたいだな」

紬「……あなたの探している琴吹紬は……多分もう……」

斎藤「言うなよ。泣いちまうだろ……」

紬「ごめんなさい……」

493 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 01:05:57.37 ID:QaUct9MlO [11/117]
斎藤「いけよ、やることがあんだろう。もう一回、次こそは繰り返すなよ……紬お嬢様」

紬「もう助けてくれないの?」

斎藤「二度は助けない主義なんでね、紬以外」

紬「そう。うん……それじゃ行ってくるわね…斎藤」

斎藤「ああ。倅が迷惑かけたな」

闇の中へ消えていく紬をただ黙って見送る斎藤。

斎藤「やることなくなっちまったな」

ドサリとその場に寝転び、星空も見えない夜空を眺める。

斎藤「さようなら、お嬢様」

っと、後一つだけ役割があったな。それまで寝てるとしますか。そうして目を閉じた、何も見えない暗闇が即座に広がった。

513 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 01:49:53.07 ID:QaUct9MlO [13/117]
羽生蛇村
第三日
AM1:00:00

田井中律

終了条件1 屍人の巣への到着

────────────

体にまとわりつくような雨だ。
また……わたしはここにいる。

律「…………冷たい」

もしかしたらまた繰り返すかもしれない。それでも行かなきゃ……。

律「みんなが待ってる」

地面から跳ね起き、向かうべき場所に向かって走り出す。

──【フッシフッシフッシ】──

──【ユンケーーーーーーーール】──

──【ギョギョギョギョギョ】──

視界ジャックを済ませ、いつの間にか持っていた金属バットを握る。

律「もうちょっとだけ付き合ってくれよな」

517 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 01:56:33.77 ID:QaUct9MlO [14/117]
廃虚の外周を彷徨いているブレインを潰す為に罠を打つ。

律「あの時みたいに逃げられても厄介だからな」

こんなもんでいいか。さて……。
視界ジャックをしながらゆっくりと後ろから近づく。

「ギョ?」

律「ハロー」

「ギョギョギョギョギョ!!!!!」

律「逃がすかああああああああっ!!!!」

追いかけっこ開始。
魚頭は家の周りを回るように逃げ始めた。
その後を追う律。

「ギョギョギョギョギョ」

もうまもなく律がいたところまで来て、一周目のラップタイムが表示されようかと言う時だった。

520 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 02:06:08.03 ID:QaUct9MlO [15/117]
「ギョーーーー」ズコー

律「引っかかったな!!! 足元を見ないからこうなるんだよ!!」

律はただ帯を紐代わりにしてそこらへんにあった鉄の棒と床下が見えるようになっている場所にある金網のようなものを結びつけ、
鉄の棒を紐がピンと張るまで引っ張り、そして地面に差し込んでいた。
その紐に引っかかり魚頭は激しく転倒したというわけだ!

律「うらー観念しろ魚頭!」

524 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 02:13:42.43 ID:QaUct9MlO [17/117]
「ギョ…………」

観念したのか身を固めるようにして死を待つ魚頭。

律「全部終わったら……楽にしてやるから」

わたしは知っている。こいつらが見てる風景はあの光る世界だってことを。そして多分私達はあっちから見たら化け物だろうってことも。屍人も私達も多分一緒なんだ。

それでも、行かなきゃ。

ぐちゃっ……ゴスッ…………べちゃっ…………。

律「これでここら一帯の屍人はくたばったはず」

澪達も来やすくなるだろう。

律「先に行ってるよ……」

次こそこの世界を終わらせる為に。

529 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 02:20:12.55 ID:QaUct9MlO [18/117]
羽生蛇村
第三日
AM1:30:00

秋山澪

終了条件1 屍人の巣への到着
────────────

澪「暗いよ~……怖いよ~……冷たいよ~……」

行かなきゃいけないのはわかってるよ…。けど怖いものは怖いんだ!

ガサガサ

澪「ひっ」

澪「……なんだ風か…」

昔からこれだけは治らないんだよな…。何でだろ…。

澪「暗いよ~……怖いよ~……」

こんな調子じゃいつ着けるか……。

澪「……そうだ! こんな時は詞を声に出しながら進もう!」

澪「…………」

澪「…………よし!」

533 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 02:29:19.98 ID:QaUct9MlO [20/117]
澪「雨、風、暗闇」

澪「一緒に見るとちょっと怖いけど、別々に思えばパーティータイム」

澪「雨が私の心を叩いて刻んでくれるよハニービート」

澪「風がビュービュー後ろから吹き付ける。恥ずかしがり屋の私を舞台の表に押し出してくれようとするハリケーンラヴ」

澪「暗闇さんが私を目立たせてくれるためにライトダウン……」

澪「さあ、今日は私ためだけのパーティータイム」

澪「…………」

澪「詞と言うかポエムかな……これ」

気づけば後もう少しでゴールだ。後ちょっとだけ頑張ろう。

538 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 02:37:31.02 ID:QaUct9MlO [21/117]
羽生蛇村
第三日
AM1:45:00

琴吹 紬

終了条件1 屍人の巣への到着

────────────

紬「雨まで降ってくるなんて……」

どんどん絶望の色が濃くなっている気がする。心なしか空に穿たれた四つの光も次第に弱くなってきてるように見える。

紬「間に合うのかしら……私達」

そして……

紬「今度こそ堕辰子を倒す」

もう何年前か忘れたけれど、必ず……。

歩き出して数十分、ようやく屍人の巣へ到着した。
どうやら私が最後だったみたい。

542 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 02:44:30.86 ID:QaUct9MlO [22/117]
律「遅いぞ二人とも。待ちくたびれたよ。あの魚頭復活が遅いから良かったものの」

澪「」

紬「りっちゃん駄目よ。澪ちゃんが気絶するようなこと言っちゃ」

律「いい加減慣れろよ~」

澪「慣れるか!!!」ポカッ

律「っ~! 怪力澪屍人が出たぞ~」

澪「誰か怪力屍人だ!!!」

律「ムギ~助けて~っ!」

紬「……」

律「ムギ?」

澪「どうしたんだよムギ」

紬「ごめんなさい……ほんとぉに……ごめんなさい……りっちゃん…………」

律「……」

澪「……」

全員いくつか思い当たる節があるのだろう。重苦しい沈黙が流れる。

546 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 02:52:12.02 ID:QaUct9MlO [23/117]
律「長かったよなぁ」

律がポツりと呟く、

澪「あぁ、長かった」

紬「……」

律「最初にここへ来たときはまさかこんなことになるなんて思わなかったよな」

澪「あぁ……」

紬「でも……それは……」

律「そう。私達じゃない。前ここへ来たのは27年前の私達」

澪「律が村を探検しようって言い出して巻き込まれたんだよな」

律「唯とムギだってノリノリだったろ! わたし一人だけのせいじゃないしっ!」

澪「まあ止めなかった私にも責任はあるしな」

紬「…………」

律「ここまで来たのは、みんなの選択なんだ。ムギ」

澪「そう。間違ったからって決して戻れない。私達が選んだんだ。その責任はみんなにある。だからムギ一人が悪いんじゃない」

548 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 02:58:12.13 ID:QaUct9MlO [24/117]
律「だからみんなでまたやり直そう」

澪「次が絶望でも……その次はどうかわからないしな」

紬「みんな……」

澪「行こう、ムギ。唯が待ってる」

律「行こうぜ! ムギ! 唯のところに!」

紬「うん……うんっ……」

どうあがいても絶望だとしても、みんなと一緒なら……きっと。


終了条件1 達成

549 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 03:05:56.79 ID:QaUct9MlO [25/117]
羽生蛇村
第三日
AM00:00:01

真鍋 和
鈴木 純

────────────

純「っと」

和「……ここが羽生蛇村」

純「はい。多分今はみんなもここにいると思います。全ての元凶を絶つために……」

和「もしかして異聞に書いていた宇宙人みたいなやつのことかしら?」

純「堕辰子ですよ先輩」

和「ある日宇宙人が降ってきて……なんて信じろって方が無茶よね」

純「どこの三文SFだよって話ですよね」

和「そんなことより話してもらうわよ。洗いざらいね」

純「……まだそれぐらいの時間はあるかな。わかりました。話します」

純「わたしは梓が大好きなんです」

555 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 03:11:23.37 ID:QaUct9MlO [26/117]
和「……」

純「……」

和「真面目に答えなさい」

純「大真面目ですよ!!!」

和「はあ……。じゃあそうなった理由を話して。詳しくね」

純「はい。実は私も異界に巻き込まれてたんです」

和「桜ヶ丘で起きたやつのこと?」

純「はい。そこで梓と会って私達は最後まで足掻きに足掻きました……」

和「それで?」

純「愛が芽生えたのです!」

和「怒るわよ」

純「ごめんなさいごめんなさい」

559 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 03:22:19.64 ID:QaUct9MlO [28/117]
純「梓が助けてくれたんです。最後に」

和「梓が?」

純「私はどうなってもいいから純だけは生きてって……そう聞こえました」

和「……」

純「それで気づいたら私は普通の桜ヶ丘の街に一人で佇んでた……って感じです。わたしにもよくわかんないんですけどね」

和「そう……ニュースでやってた一人だけの生存者ってあなたのことだったのね」

純「はい…。療養とかマスコミ対策だとかで表面はいいフリしてたけどそりゃあ酷いことされましたよ。まるでマウスですねマウス」

あはは、と健気に笑う彼女…その奥に一体どれだけ辛い思いをしたのだろうか。私何かには想像出来ないだろう…。

562 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 03:31:16.96 ID:QaUct9MlO [29/117]
純「だから次は……わたしが梓を助けに来たんです」

和「でも……せっかく梓が助けてくれたのに、良かったの? まあ今更だけど」

純「梓と一緒に助からないと意味がないんです。約1ヶ月……あっちで過ごした日々はこっちで梓と過ごした数時間より何倍も何倍も何倍も苦しくてつまらなくて……!」

純「いっそのこと死んでやろうとも思ったけど……梓にもらった命だからぁ……」

和「それで異聞を思い出してあそこに来たってわけね。大体わかったわ」

モップみたいなごわごわな頭を優しく撫でる。これはこれで心地いいかも。

純「和先輩って優しいんですね…。もっと生徒会生徒会してると思ってました」

和「何よ生徒会生徒会って」

570 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 03:45:05.94 ID:QaUct9MlO [31/117]
純「私、生徒会室行くから邪魔しないでね、みたいな?」

和「ふふ、なによそれ。そんなに好きじゃないわよ生徒会室。寧ろいつだって唯達と話してたかったわ」

純「話せば良かったじゃないですか!」

和「それじゃ周りに示しがつかないでしょ? だから敢えて私、生徒会室行くねって行って自らに鞭を打ってたのよ。ちゃんとしろって」

純「生徒会長って大変なんですね…」

和「楽しいこともあるけどね」

純「それじゃ~それはまたの機会に聞かせてください」

和「…行くの?」

純「はい。梓がどこへいるかわからないし。視界ジャックも使えないから骨が折れそうだな~」

577 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 03:52:08.26 ID:QaUct9MlO [32/117]
和「視界ジャック…?」

純「多分先輩も使えないと思いますから気にしなくていいですよ」

和「ああ、この目を閉じたら相手の視界が見えるやつかしら?」

純「嘘っ!? なんで!?」

和「?」

純「和先輩どこか怪我とかしたりしてないですよね…?」

和「してない…みたいだけど」

純「生徒会長恐るべしっ……」

和「?」

純「私も一応出来損ないだけど八尾の血筋なんだけどな…」

和「さっきから一人で納得しないでよ。異聞にまだ全部目を通してないんだから」

純「き、気にしないでください」

和「はあ…。まあいいわ」

584 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 04:05:32.89 ID:QaUct9MlO [33/117]
純「それじゃあ今度こそそろそろいきますね」

和「私も唯のところへ行くわ。どこにいるかわからないけどね」

純「多分屍人の巣の中枢だと思います。行ってあげてください。そこにきっと憂もいます…」

その屍人の巣って言うのが既にわからないんだけどね…これ以上引き留めたら悪いわね。

和「わかったわ」

純「わたしも梓を助けたらすぐそっちに行きますから! また会いましょう和先輩!」

和「ええ、必ず」

走り去る純を見送り、屍人の巣へ目指し歩き出す。

和「待っててね、唯」

和「……こっちであってるのかしら」

596 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 04:16:06.00 ID:QaUct9MlO [34/117]
羽生蛇村 屍人の巣 中枢
第三日
AM3:00:00

平沢唯

────────────

……また、ここか。
もうどこが本当の世界で、どこが戻るべき場所なのかさえ忘れてしまった。

唯「どんなに悲しくても涙も出ない…」

私はまた起きて、この宇理炎と共に屍人を狩り続けるのだろう。

唯「死にたくても死ねない。帰りたくても帰れない。誰も…いない」

絶望。

まさにその二文字が相応しい。

唯「……堕辰子倒せば終わる……」

でも、それは二重の意味で出来なかった。
一つは今のままじゃ勝ても負けれもしないってこと。
一つは堕辰子を殺せば……。
その分身である憂が消えてしまうってこと…。

唯「憂、いるんでしょ? 出てきなよ」

600 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 04:24:46.82 ID:QaUct9MlO [35/117]
憂「やっぱり気づいてたんだね……」

唯「ここへ来て二つの記憶が一つになった今、全部わかったんだ」

憂「……」

唯「答え合わせをしようか、憂」

唯「…現代時間で言えば27年前、私達は羽生蛇村の人間だった。私達4人は肝試しに出かけたところで異界に呑み込まれる。ここまで合ってる?」

憂「うん……」

唯「そして私達はここまで何とかたどり着いた……宇理炎を手にして」

唯の左手の青白い炎が輝く。

唯「四人で堕辰子に挑んだ……けど…私達は敗北した」

憂「……」

唯「一回打てば命を失う宇理炎を3回分、当てても敵わなかった……りっちゃん、澪ちゃん、ムギちゃんがいなくなり……怖くなった私は堕辰子に祈った。やり直させてくださいと……」

601 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 04:30:23.44 ID:QaUct9MlO [36/117]
唯「そうしてやり直した世界が……あの世界なんだね」

憂「うん……。私はそれを管理するために堕辰子から産まれた分身…」

唯「妹って役割で入り込んで来たんだ。通りで憂に話しかけられるだけで心が安らぐと思った…。脱け殻のみんなを見る度に違うと思った……! そんな造られた世界を本当の世界だとずっと思ってた!!!」

憂「お姉ちゃん……」

唯「……答え合わせを続けよう、憂」

憂「…………お姉ちゃんがそれを望むなら」

603 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 04:38:08.18 ID:QaUct9MlO [37/117]
唯「今私が不死身なのは憂のせい?」

憂「せい……だなんて言わないで欲しい」

唯「……じゃあ言い方を変えるよ。憂のおかげ?」

憂「うん……。部室で屍人化しそうなお姉ちゃんの血を抜き取って……私の血を…」

唯「私は他の三人と違って生身だったってわけだ」

憂「……うん。律さんや澪さん、紬さんは宇理炎で体を焼かれてしまったから……どうしようも出来なくて……」

唯「違和感を与えないように脱け殻を設置したってわけだ……」

憂「……」

唯「それで? いつまで続けるつもりなの? こんな終わらない世界をいつまであなたは繰り返すつもりなの?」

憂「私は……ただ……お姉ちゃんに生きて欲しかっただけなの」

605 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 04:47:03.42 ID:QaUct9MlO [38/117]
唯「私だってそうだよ……! ただみんなと普通に暮らしたかった! 憂とだって……」

憂「でも……もう知っちゃったよ? お姉ちゃんは全て……それでも……また……やり直したい?」

唯「……私は……」


「おいおい、聞いてたら勝手に人を脱け殻だの何だの……言いたい放題だな、唯」

「いつからそんな口達者になったんだ? 唯」

「唯ちゃんはそんな辛そうな顔して周りに心配かけたりしない子でしょ~」


唯「みんな……」

憂「……」

律「よっ、久しぶり。唯も憂ちゃんも」

澪「それにしてもここ不気味だよな……」ガクブル

紬「じゃあとりあえずお茶にしましょうか!」

律「ムギー。さすがにそれは無理があるぞー」

609 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 04:59:56.52 ID:QaUct9MlO [39/117]
唯「……」


澪「唯。私達のことが偽物だとか本物だとか……そんなことは大したことじゃないだろう?」

唯「澪ちゃん……」

律「澪の言う通りだぜ。それともなんだ!? 偽物だからってじゃあもう遊ぶのやーめたか?! そんなのわたしは寂しいぞ唯っ!」

紬「どこの世界だろうと、私達が友達っていう事実は変わらないわ。だからこうしてまた私達はここにいる」


唯「……でも……」

「全く……視界ジャックがなかったら死んでたわよほんとにもう」

唯「!?」

和「唯が勝手に否定するのは構わないけど、私の記憶にはちゃんと幼なじみの唯がいるんだから。それまで奪わないでよね」

唯「和ちゃん……!?」

610 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 05:07:23.15 ID:QaUct9MlO [40/117]
なんかよくわからなくなってきたので歯を磨こう

612 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 05:12:02.32 ID:QaUct9MlO [41/117]
和「私は何がどうなってるのかとか全くわからないけどね……。ただ唯やみんなが心配だからここまで来たの。それ以上もそれ以下もないわ!」

唯「……」

憂「ありがとう、和ちゃん。来てくれて」

和「憂。無事で良かったわ。なんだかよくわかんないけど喧嘩は駄目よ?」

憂「うんっ」

唯「……じゃあ今までのこと全部忘れて……また繰り返せって言うの? もうやだよ……わたしには……」


───────────

616 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 05:24:29.82 ID:QaUct9MlO [42/117]
羽生蛇村
第三日
AM1:00:00

鈴木 純

終了条件1 梓に自分の血を飲ませる

──────────
純「あ~ずさ~」

純「あずさ~」

純「梓二号~」

純「あずにゃ~ん」

純「駄目か」

一時間色々な呼び名で叫んでみるも反応なし、か。

純「半屍人は生前の記憶に反応するらしいけど……もう屍人になっちゃったかな……梓」

純「ううん諦めたら終わりだよっ! ここで取り出したりはわたし愛用のベース!」

純「これを楽しそうに引けば梓も寄って来るかもしれない!」

純「~♪」ベンベンベベン

純「……アンプないから寂しい」

620 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 05:34:23.35 ID:QaUct9MlO [43/117]
バサバサバサ……

純「はあ……」ベンベンベベン~♪

バサバサバサ……

純「梓~」ベベンベベン♪

「シャアアアアアア」

純「うわっ!」

上から急に何かに掴み上げられ、わたしの体は宙へ浮いた。

純「な、なにっ! 屍人!?」

羽根梓屍人「シャアアアアアア……」

威嚇する猫のような声を出しながらわたしをどこかへ連れていこうとする屍人。

純「ってよく見たら梓じゃん!!! わたし! ほら! 純だよ!?」

羽根梓屍人「」バサバサバサ

純「聞いてないしっ! クソ~こうなったら!」

628 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 05:46:21.39 ID:QaUct9MlO [45/117]
純「とりゃっ!!!」

羽根梓屍人「ンン!?」

純「ほら噛みなっ! そして純度100%の血を飲むんだよ!」

羽根梓屍人「ンン……ンンッ!」

純「っつ……そう……それでいいよ…。わたしは屍人にもならない体らしいから心配しないで」

羽根梓屍人「ンン……ンン……」

純「ありがとう、梓。わたしのことをあんなに思ってくれて。それがきっと神様に届いたからわたしはここを出れたんだよ」

羽根梓屍人「んん……ん……」

純「でもね……やっぱり駄目だった。梓がいなきゃ生きててもつまんなかった。だから今度はわたしが神様に願うよ」

神様、いるのならどうか梓を元の姿に戻してあげてください……!

純「届いて……っ」

633 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 05:55:07.93 ID:QaUct9MlO [46/117]
ゆっくりと失速して行く二人。やがて木にぶつかると、長い遊飛行は終わりを告げた。

梓「……」

純「あ、梓……元に」

梓「殺す気か!」

ペシーン

純「あいたっ! ここは感動の再会の場面でしょうが! それを平手打ちってあんたね!」

梓「うるさいうるさいっ! せっかく出られたのに戻って来たりして! 私のことなんてほっとけば良かったのに!」

純「それが出来なかったから今ここにいるんだよ、梓」

梓「……う、…うん…」

純「奥さん見ました? これが噂のツンデレ」

梓「デレてないから」

純「相変わらず厳しいな~梓は」

639 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 06:04:31.81 ID:QaUct9MlO [48/117]
梓「純……ありがと」

純「ん」

学校の中みたいなやりとりをした後、二人は光を遮る為に造られた屍人の巣に目を向ける。

純「行こう、梓。先輩達の助けになりにさ」

梓「うん。みんなで帰ろう。私達の場所に」


終了条件達成

665 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 13:13:56.70 ID:QaUct9MlO [52/117]
────────────

先程和達が来た道からまた二人の人影が現れる。

梓「唯先輩は楽しくなかったんですか? みんなで過ごした日々が」

唯「あずにゃん…」

嘗て誰よりも可愛がっていた後輩の登場に複雑な笑みを浮かべる唯。

純「間に合った~…。おいてけぼり食らわなくて良かったぁ…」

ヘナヘナとその場に崩れ落ち、これで一安心とばかりに安堵の表情を浮かべる純。

和「良かったわね、純」

元気そうな梓を見て、和がそう告げた。

純「はい。和先輩も無事で何よりです」

667 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 13:16:26.58 ID:QaUct9MlO [53/117]
唯「楽しかった…。毎日がいつもキラキラ輝いてて…」

それに同調するように律も続ける。

律「だから私達はこの異界に落ちても…何回絶望しても、戻ろうとした」

ゆっくりと律の隣まで歩いて来た澪も、

澪「軽音部で過ごした三年間は私の宝物だよ」

後ろから律と澪に飛びついた紬も、

紬「それにまだ最後の学園祭も残ってるわよ唯ちゃん」

その後ろから来た和、純、梓もその列に加わる。

和「私は唯に笑っていて欲しいの。軽音部にいた時の唯みたいに」

梓「帰って練習しましょう。学園祭に向けて」

668 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 13:17:27.35 ID:QaUct9MlO [54/117]
純「わ、私も軽音部入りますから!」

授業参観で親御さんが見てる中、真っ先に手を挙げる子のような挙手を見せる。

「だから……」

全員の言葉だった。

「一緒に帰ろう」

唯「んっ……そうだよね……」

この世界に来た私達がどうして諦めなかったのか。それは帰る場所がわかっていたからだ。それは羽生蛇村じゃない、桜ヶ丘高校、そして軽音部……。

それが本当に堕辰子が造り出したものだとしても、ううん、もしそうなら逆に感謝しなきゃ。あんな楽しい世界をありがとうって。

だから……

669 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 13:18:19.07 ID:QaUct9MlO [55/117]
唯「憂、帰ろう。私達の場所に」

手を伸ばす。

憂「私も……いてもいいの? みんなと一緒に……? 私……堕辰子だよ…? 人間じゃないんだよ……?」

声を震わせながら問う憂に、優しくこう告げた。

唯「憂はわたしの妹だよっ! たった一人の大切な妹」

憂「お姉ちゃん……って……呼んでもいいの?」

唯「当たり前でしょっ」フンスッ!

憂「う……うっ……ありがとう……」

両手で目頭を抑え泣く憂。

憂「お姉ちゃ……」

憂「ア」

憂の体が激しく震える。

唯「憂……?」

憂「アア……逃げて……お姉ちゃん…」

憂「クル…………堕辰子が」

672 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 13:27:37.60 ID:QaUct9MlO [56/117]
憂の後ろに出来た暗闇から何かが出てくる。それは本当に生物なのかもわからない奇怪な姿をしていた。

背中に木の枝のような羽根を持ち

下腹部は蜂の様に膨れ

その上から人が伸びている。

しかし人のような顔ではなく、尖っており、狐のようだった。


唯「これが……堕辰子」

何もない一面の野原。その上に広がる暗闇の中、堕辰子は降臨した。

堕辰子「人間ノ真似ヲサセ過ギタヨウダナ。余計ナ事ヲ。所詮お前ハ私カラ産マレタ分身デシカ過ギナイト言ウノニ」

憂「アア……アア……ダメ……消さないで……」

堕辰子「私ノ血肉ニ還リナサイ」

憂「アアアアアアアアア……あああああああああああっ!」

唯「憂っ!!!」

675 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 13:37:25.17 ID:QaUct9MlO [57/117]
憂「お姉……ちゃん…」

唯「憂いいいいいっ!!!」

伸ばした手は虚しく空を切り、さっきまで憂がいた場所にはもう何もない。

唯「憂……」

堕辰子「又性懲リモナクソレデ私ヲ焼クカ? 結果ハ見エテイルダロウ」

唯「憂を返して……!」

宇理炎を突き出し、堕辰子にそう要求する。返さないのなら……!

堕辰子「無駄ナ事ヲ。モウ次ハ無イ。お前ノ仲間達ノ様ニインフェルノニ閉ジ込メテヤロウ」

唯「次こそみんなで一緒に帰るんだ!!! 憂も一緒に!!!」

その言葉がきっかけとなり、後ろのみんなもそれぞれの武器を構える。

680 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 13:45:25.24 ID:QaUct9MlO [58/117]
堕辰子とにらみ合う。どっちから仕掛けるか、その均衡がまだ場を支配していた。
しかし、その均衡を崩したのは思わぬ人だった。

「あんたは神なんかじゃないわっ! ただの薄汚い虫よ!!! 消え去りなさい!!!」

その声の持ち主が投げたものが破裂する。それはこの暗闇を一瞬だけだが光に変え、辺りを包み込んだ。

堕辰子「オオオオオオ体ガ焼ウウウウウウ」

次に見た光景は堕辰子から白い煙が挙がり、苦しんでいる様子だった。

唯「あっ……!」

左手に持っていた宇理炎の感触がなくなる。

さわ子「悪いわね、唯ちゃん。この役目だけは譲れないわ」

ポン、ポン、と右手で宇理炎を宙に上げたりキャッチしたりを繰り返しながらさわ子が告げた。

683 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 13:53:59.23 ID:QaUct9MlO [59/117]
唯「さわちゃん……どうしてここに」

さわ子「どうして? 面白いこと言うわね唯ちゃん。こうなった全ての元凶は私とも言えるのよ」

唯「どういうこと……?」

和「やっぱりそうなのね…。でなきゃ桜ヶ丘が異界に飲み込まれたりしないもの…」

純「分家になった八尾の血筋でも探し当てて儀式を行なったんですか…!」

さわ子「その通りよ。当然そんな薄い血じゃ儀式は失敗するのはわかってたけどね。ただ異界が発生すれば堕辰子も出てくる…そう踏んだのよ。そしてそれは見事に当たった」

純「一体何のために!?」

さわ子「何のために? 全てのためよ!!! 私と云う存在理由が堕辰子を許せないの!!! 27年前のあの日、村を消し去ったその時から私の復讐は始まってた! まだ赤子ながらに覚えてるわ!!! あの忌まわしきサイレンの音を!!!」

686 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 14:03:00.35 ID:QaUct9MlO [60/117]
そうか……あの時最後まで生き残ったのはさわちゃんだけだったのか…。

さわ子「だからいくら唯ちゃん達がこいつを許せないとしてもこの役目だけは譲れない!!! さあ宇理炎!!! こいつを焼き殺しなさいっ!!!」

宇理炎が青白く発光し始める。

唯「さわちゃんダメッ!!!!」

制止の言葉も虚しく堕辰子が青い炎に包まれる。

堕辰子「ウオオオオオオオオオオオオオ」

苦しむ堕辰子、だが、

さわ子「消えない…どうして……」

逆にさわ子の体に青白い火がつき、存在を燃やして行く。

唯「宇理炎だけじゃあいつは倒せないんだよ……さわちゃん……」

さわ子「そんな……それじゃあ私がしてきたことって……いった」

いったい、の最後の文字を言うことも出来ず燃やし尽くされたさわ子をただどうすることも出来ず見ているしかなかった。

695 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 14:13:37.46 ID:QaUct9MlO [61/117]
堕辰子「人間ト云ウノハバカナ生キ物ダナ。自分ノ存在ヲ消シテマデ物事ヲ成ソウトスルトハ」

炎が収まった堕辰子がそう言う。

律「あんたにはずっとわからないよ。さわちゃんの気持ちも、私達の気持ちも」

澪「もし私がさわ子先生の立場なら……もしかしたら同じ過ちを犯していたかもしれない」

紬「確かに桜ヶ丘を異界に飲み込ませたのはさわ子先生のせいかもしれないけど……元を正せば全てがあなたに繋がるわ!」

堕辰子「器風情ガ。私ノ分身ガ創リアゲナケレバ存在サエ出来無カッタト云ウニ」

律「関係ないねそんなこと。わたしはわたしの意思で生きてんだから。それに良かったよ、私達を造ったのがお前じゃなくて憂ちゃんで」

698 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 14:26:29.34 ID:QaUct9MlO [63/117]
堕辰子「同ジ事。憂ハ私デアリオ前達ノ言ウ堕辰子デモアル」

梓「あなたみたいなのと憂を一緒にしないで!」

純「そうだよっ! 憂は料理も得意で掃除も得意で勉強も出来るんだから! あんたなんかよりよっぽど凄いよっ!」

梓「そういう意味じゃないんだけど……」

堕辰子「……」

和「憂は返してもらうわよ。私の可愛い妹でもあるんだから」

唯「憂はわたしの妹だよ和ちゃんっ!」

和「私のでもあるってことよ」

堕辰子「ナラ私ノ存在ヲ消スカ、人間ヨ」

唯「あなたから憂を引っ張りだした後、ね!」

堕辰子「ナラバコノ先、インフェルノデ待ツ。今度コソオ前達ヲ消シ、二度ト我ノ前二現レヌ様二シテヤロウ」

そう言い残すと黒い空間の歪みを残したまま堕辰子はどこかへ消えていく。多分、いんふぇるのへ向かったのだろう。

701 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 14:37:37.87 ID:QaUct9MlO [64/117]
唯「みんな、この先は一つの光も届かない世界……多分堕辰子を倒すまで出られない。覚悟はいい?」

律「ここまで来たら後は行くだけだ。今更後戻りなんてしないよ」

澪「ああ。終わらそう、この絶望を」

紬「堕辰子が来てから始まり…変わってしまったこの世界を元に戻しましょう」

純「でも憂は助けないとね!」

和「ええ、勿論」

梓「どうやって助けるんですか?」

純「わたしが梓を助けたみたいに純度100%の血を堕辰子に…!」

梓「多分無理だと思うよ…。そもそも口とかなかったような」

純「!? じゃあ一体どうやって喋っていたのか…謎だ」

うん、みんな大丈夫そう。これならきっと帰れるよ。また、あそこに。いつかきっと。

唯「じゃあいこう! いんふぇるのへ!」

703 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 14:51:09.58 ID:QaUct9MlO [65/117]
いんふぇるの
第三日
AM3:33:33

平沢唯

終了条件1 U&Iを歌い憂を取り戻す

終了条件2 堕辰子を倒す

────────────

ついた先はまるで幻想のような世界だった。
上下に赤、黄、白の花のような模様が蠢き、万華鏡を覗いてるかのような気分になる。

唯「さわちゃん……」

さわ子の魂も宿った宇理炎を手に抱き、虚空に浮かんでいる堕辰子を視界に捉える。

これが最後の戦いだろう……後にも先にも。

唯「みんな……行くよ!!!」

709 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 15:00:14.04 ID:QaUct9MlO [67/117]
唯「りっちゃん、これを! 私には宇理炎があるから!」

律「おうよっ!」

魔剣とも恐れられた最強の武器の一つ、ヒカキボルグ。その流用さは武器だけに留まらず、灼熱をつついたりと云う荒業とて可能とする伝説の武器。

それが今、律の手に宿る!!!

律「よっしゃあっ!!!」

715 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 15:06:03.48 ID:QaUct9MlO [69/117]
澪「よし、私は自分の書いた詞で……」

律「澪……やめとけ」

澪「律がそういうなら……」

瞳を閉じ、念じる。

澪「こい……!」

その手に収まったのはエクスカリバール。カリバーンの原点とも言われるその武器の威力は深く刺さり込んだ釘さえも引き抜くっ……!

澪「よし、いくぞ!」


723 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 15:11:54.39 ID:QaUct9MlO [72/117]
紬「気づいたらこんなものが……」

ネイルハンマー、怪力のものにしか扱えないと言われる重槌。
このメンバーでは唯一彼女にしか扱えないであろう代物。

その一撃は本当に岩さえ砕くっ……!

紬「いくわよ!」

730 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 15:17:42.01 ID:QaUct9MlO [74/117]
和「来なさい……」

その手に来れりはエクスカリバット。木製バットに釘が無造作に打ち付けられており、持つと思わず……クソすぎだろ!!! と言いたくなるような代物。

和「…………」

言いたくなるような代物。

和「……言わないわよ」

736 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 15:27:40.70 ID:QaUct9MlO [77/117]
梓「よーし私も!」

梓「えいっ!」

猫耳カチューシャ

梓「…………」ポイッ

梓「もう一回!!! えいっ!」

猫耳カチューシャ

梓「…………」

純「……どんまい」


純の装備を選択!

1 モップ
2 モップ
3 モッ(ry


純「モップしか出ないようっ~!」

仕方なくモップを担ぐ純。髪の毛と御揃いで実に凛々しい。

ここに、また一人モッパーが生まれた!

739 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 15:31:05.88 ID:QaUct9MlO [78/117]
唯「みんな!!! 堕辰子には宇理炎か宇理炎を纏った攻撃しか効かないから! 下がってて!」フンスッ!

律「えっ」
澪「えっ」
紬「えっ」
和「えっ」
梓「えっ」
純「えっ」

唯「ん?」

一同の心の声が聞こえるようだ。先に言えよ、と。

744 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 15:41:54.36 ID:QaUct9MlO [79/117]
堕辰子「……来ナイノナラ此方カラ行クゾ」
その瞬間、堕辰子が消える。
この攻撃パターンは前と同じ……通じないよ!

静かに瞳を閉じると、

唯「視界ジャック!!!」

──【】──

私の後ろ姿が映し出される。

唯「後ろっ!!!」

何もない場所に宇理炎を翳す。すると消えていた筈の堕辰子が一気に青白い炎に巻き込まれる。

律「とりゃあああああああっ!」

その炎が残っている内に律がヒカキボルグで切り裂くと、斬撃が生まれ更に堕辰子に追撃をかけた。

堕辰子「ウオオオオオオオ」

そしてまた消える堕辰子。

律「ちっ、一回でダメになるか。もう使えないな……」

唯「りっちゃん!」

律「宇理炎を纏ってればいいんだろ? ならさっきみたいにやればいい。私達にも手伝わせろよ、唯」

745 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 15:48:33.17 ID:QaUct9MlO [80/117]
澪「唯!!! 左だ!!!」

その声に反応してすぐさま宇理炎を翳す。

堕辰子「ノオオオオオッ」

紬「とやーーっ!」
澪「やあああっ!!!」

律と同じように炎が残っている内に二人同時の斬撃。

堕辰子「グウウウウウウ」

そしてまた堕辰子は消える。

澪「唯だけに背負わさしたりしないよ」

紬「みんなで戦いましょ♪」

唯「みんな……」

律「梓達もあっちで応援してくれてるしな」
──応援班
梓「フレーフレー唯先輩っ」

梓は猫耳カチューシャをつけながら、

純「頑張れ頑張れ唯先輩っ!」

純はモップをやんやと上げ下げしながらの応援だ。

748 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 15:54:54.83 ID:QaUct9MlO [81/117]
和「唯! 上よ!」

唯「うんっ!!!」

上に宇理炎を翳し、堕辰子を炙り出す。

堕辰子「オオオオオオッ!!!! 何故ダ……何故ワカルウウウウウウ」

和「視界ジャックはね、あなたを倒すために用意された必然なのよ!!! はあああああっ!!!」

和のエクスカリバットが天空を裂く。

堕辰子「ウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ」

サイレンにも似た叫び声をあげる堕辰子。もう消えることも出来ずただ蠢いている。

和「唯! 憂を!!!」

唯「うんっ!」

憂、憂のこと思って考えた歌だよ。
受け取って……。

753 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 16:05:00.64 ID:QaUct9MlO [82/117]
「キミがいないと何もできないよ
キミのごはんが食べたいよ
もしキミが帰ってきたらとびっきりの笑顔で抱きつくよ」

堕辰子「……」

「キミがいないと謝れないよ
キミの声が聞きたいよ
キミの笑顔が見れれば それだけでいいんだよ」

堕辰子「ヤメロオオオオオ」

「キミがそばにいるだけでいつも勇気もらってた
いつまででも一緒にいたい
この気持ちも伝えたいよ

晴れの日にも 雨の日も
キミはそばにいてくれた
目を閉じれば キミの笑顔 輝いてるっ!」

堕辰子「アアアアアアアアアアアアアアアア」


憂「お姉ちゃんああああああああああああああああんっ!!!」

756 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 16:10:32.32 ID:QaUct9MlO [83/117]
そこにもう実体はないけれど、間違いなく憂はわたしの目の前にいる。

唯「憂……戻ってこれたんだね」

憂「お姉ちゃんの中にある私の血が私をお姉ちゃんに宿らせたの」

唯「そうなんだ…。憂……聞いてくれた?」

憂「聴こえたよ……! お姉ちゃんの歌!」

唯「憂。大好きだよ」

憂「うんっ……わたしも……わたしもっ!」

姿形はないけれど、私達はこの時確かに抱き合っていた。

終了条件1 達成

759 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 16:16:44.56 ID:QaUct9MlO [84/117]
「ってぇ!!! なんだここ!!?」

後ろの方から聞こえる声にみんなが振り向いた。

紬「斎藤……どうして」

斎藤「よっ。最後にやり残したことがあってな。ほれ」

斎藤は懐から何かを取り出すと紬に向かって放り投げた。

紬「これは……宇理炎!」

唯「なんで二つもあるの!?」

斎藤「俺に聞くなよ。こっちはわかんないことばっかりなんだ。ただ必要かと思ってね」

紬「唯ちゃん、これ」

唯「うん……」

紬から宇理炎を受け取る。すると左右の宇理炎が中心で合わさり、太陽のような形となって赤々と燃えている。

761 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 16:20:31.18 ID:QaUct9MlO [85/117]
それを手に取り、空に翳す。

宇理炎が二つ重なり、新たに生まれ変わった。

その名も、

唯「憂炎!!!!!!!!!!!!!!!!」

太陽のような眩しい様が、笑った時の憂と一緒だから。

767 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 16:26:51.27 ID:QaUct9MlO [86/117]
和「唯、これもっ!」

和が唯にギターケースを渡す。

唯「ギー太ぁ! お帰りぃ~むちゅう~」

和「なに行ってるのよ。ギー太の方から迎えに来たんじゃない」

唯「そうでした」エヘヘ

唯「ギー太持って来てくれてありがとね、和ちゃん」

和「次から忘れないようにね」

眼鏡越しにウインクする和に笑顔で応え、ギターケースからギー太を出す。

唯「今こそ宿れ……四つの光!!!」

その瞬間、どこかから飛んできた四つの光がギー太に降り注ぐ。それは白いオーラのようになってギー太を纏った。

唯「行くよ!!! 焔薙ー太!!!」

左手に憂炎、右手に焔薙ー太。

もう、何が来ても負ける気がしないっ!!!

774 名前:※本人は至って真面目です[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 16:34:05.16 ID:QaUct9MlO [87/117]
堕辰子「私ガ負ケル……?」

唯「あなたこそが元々ここに来るべき存在じゃなかった!!!! 還れ!!!」

憂炎を翳し、焼き尽くす。

堕辰子「ウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ」

これが私達が聴く最後のサイレンになるだろう。

唯「いっけえええええぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!!」

焔薙ー太を振りかぶり、憂炎を纏って堕辰子を切り裂く────

堕辰子「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」

その声もやがて聞こえなくなり、堕辰子はその存在を消滅させた。

終了条件2 達成

780 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 16:40:49.09 ID:QaUct9MlO [88/117]
ピキ、ピキ、

冬の水溜まりに張った氷が割れるような音が響く。

唯「空間が…」

その空間を作っていた主がいなくなった為、維持できなくなっているのだろう。

唯「憂! このままどこかに飛ばされても……消えたりしないよね!?」

憂「……」

憂は答えない。

唯「憂っ!!!」

憂「多分……消えちゃうと思う。私が今こうやって存在出来ているのはこの空間のおかげだから……」

律「そんな……」

澪「憂ちゃん…」

憂「でもね。私はいつだってお姉ちゃんと一緒にいるよ。いつだってそばにいるよ。いつだって、笑いかけてるから」

唯「憂……」

ピキ、ピキ、ピキキ

783 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 16:46:40.79 ID:QaUct9MlO [89/117]
梓「憂……」

憂「ごめんね梓ちゃん。軽音部……入ってあげられなくて」

梓「ううん。大丈夫。純と一緒になんとかやってくから」

純「うん。梓の面倒は私に任せて!」

梓「逆でしょ!」

憂「うふふ」

梓「ありがとね、純を助けてくれて」

憂「えっ……」

梓「あの時純を外に出してくれたの憂だよね」

憂「……うん」

純「ってことは梓を治してくれたのも憂ってわけだ。 ありがとう、憂」

梓「私たちのこと……唯先輩の中から見守っててね」

憂「うん……っ!」

ピキ、ピキ、ビキ────

784 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 16:52:51.78 ID:QaUct9MlO [90/117]
憂「こうして喋れるのも後少しか……残念」

唯「憂……」

憂「お姉ちゃんともっと色々なことしたかったな……」


斎藤「なら、すりゃあいい」

憂「えっ……」

斎藤は自分の心臓を親指でつつきながら言う。

斎藤「俺の命を使え。大丈夫だ。赤い水は入ってない。かすり傷一つないからな」

憂「でも……! そんなことしたらあなたが!!!」

斎藤「俺はいいんだ。もう帰る場所なんてない」

紬「斎藤……」


斎藤「さすがに飽きた……」

斎藤「この命も、紬もそうなった方が喜ぶだろうしな」

788 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 16:56:17.96 ID:QaUct9MlO [91/117]
斎藤「終わらせて……いや、使ってやってくれ」

憂「でも……」

斎藤「迷ってる時間はないぞ!!! そんな荒業出来んのもこの中だけだろう!!! 早くやれっ!!!」

憂「っ……!」




次の瞬間ガラスが割れるような音がし、この世界は終焉を迎えた。

792 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 17:01:03.78 ID:QaUct9MlO [92/117]
??? ???
???

平沢唯

───────────

真っ白な世界でわたしは、確かに感じ取っていた。
三人の存在を。

唯「ごめんね、待たせて」

───気づくのがおせーよ。全く唯はいっつもそうなんだから

唯「りっちゃん…」

───まあまあ。唯も色々大変だったんだ。許してあげよう。

唯「澪ちゃん…」


───斎藤の命、大事にしてって憂ちゃんに言っといてね。唯ちゃん。

唯「ムギちゃん……」

───私達を、よろしく

最後にそう聴こえた後、わたしの意識はそこから遠ざかった。

798 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 17:08:40.84 ID:QaUct9MlO [93/117]
??? ???
???

平沢唯一同

───────────
唯「ん…あれ? ここは……」

見慣れぬ防波堤、そして広がる海。

律「んあ……はっ!!! 桜ヶ丘か!?」

次々とみんな起き出し、辺りを確認する。

澪「みたことない場所だな……」

紬「ええ。どこかの島みたい」

梓「あっ! 憂は!?」

憂「いるよ、梓ちゃん」

梓「憂~っ!」
純「無事だったんだね!」
憂「うん。斎藤さんがわたしに命をくれたの…」

唯「大事にしてねって、ムギちゃんから」
憂「……うん」
紬「?」

801 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 17:14:08.63 ID:QaUct9MlO [94/117]
唯「それにしてもここどこだろ~」

律「澪~わかるか?」

澪「全然…」

紬「どこかの資料で見たことがあるんだけど…どこだったかしら」

唯「物知り和ちゃんならきっと!」

和「私も見たことないわね。ごめんなさい」

律「駄目か…」

唯「憂~、ワープとか……」

憂「出来ないよぉ。もう普通の人間なんだから」

唯「じゃあせめてタケコ○ター」

憂「出ないよっ!」

唯「だよね……」

純「まあ帰ることはとりあえず置いといて、泳ぎますかっ!!!」

唯「賛成っ!!!」

811 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 17:20:12.99 ID:QaUct9MlO [95/117]
この先にまたどんな絶望が待っていようと、みんなとならきっと乗り越えられる。

どうあがいても絶望な世界なら、それに対抗しうる希望をぶつけてやればいい。

それでももし、また失敗したら……。

それでも何回も何回でも私達はやり直すだろう。


あの頃や、今を思い出して。


おしまい

814 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 17:21:45.22 ID:QaUct9MlO [96/117]
終わった……終われた

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これは面白い

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