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青髪「――あんさんの未来、ちょっと借りまっせ」

512 名前:青髪「――あんさんの未来、ちょっと借りまっせ」[saga] 投稿日:2010/10/13(水) 11:52:26.74 ID:k2ukkUYo [1/21]

おはようございます。
書いたとこまでとりあえず試験的に投下させてください。

・青髪能力ネタです。
・原作ネタバレを多少含みますが、ほんとに多少です。
・科学音痴なので設定に矛盾があっても勘弁。
・基本的に原作依拠ですが、設定展開その他に独自解釈が入ります。
・つまるところ二次創作なのでパラレルとしてお考えください。


513 名前:青髪「――あんさんの未来、ちょっと借りまっせ」[saga] 投稿日:2010/10/13(水) 11:53:47.58 ID:k2ukkUYo [2/21]

――――――

それは何気ない昼下がりとはお世辞にもいえない状況だった。

時間にして数分間。そこで行われたのは、圧倒的な破壊。
周囲約10数メートルに渡って、見渡す限りの瓦礫、そして割れたコンクリート。
光景だけがその『二人』の戦いのすさまじさを物語っていた。


「は、は」


見くびっていたわけではない。油断したわけでも断じてない。
自分はこの『権利』を勝ち取りたかっただけだ。
学園都市のレベル5、その中でもさらに頂点に最も近い位置に座する者の義務として。
この闇から抜け出すため。光をその羽根でつかむため。
まるで天使を模すように羽ばたいていた6枚のそれは、
今や自分自身の血によって醜くゆがめられている。
結局のところ、誰よりも光を渇望していたのは自分だと気づく頃には、一切合財、すべての打ち手が手遅れになっていた。


「ちくしょう。……テメェ、そういうことか!! テメェの役割は――――ッ!?」


まもなくその天使は、もう一人の天使によって、“虐殺”された。


514 名前:青髪「――あんさんの未来、ちょっと借りまっせ」[saga] 投稿日:2010/10/13(水) 11:54:51.35 ID:k2ukkUYo [3/21]

――――――

そして次に気づいたとき、彼は見覚えのない形の空を眺めていた。
周囲をビルが取り囲んでいて、見つめた先の青は四角く縁取られている。
鼻につくのは空気の匂い。
戦いの匂いはまだ奥にこびりついているようだ。

雑踏の喧騒はそう遠くない。
生きている。確かに自分は呼吸をして、このくそったれな世界の空気を吸っている。


(――く、くははは……)


自然と笑えてきた。
あれだけの猛攻を受けて生きているなど、それこそ奇跡以外の何者でもない。
どうやら神さまは最後の最後で自分にとって“都合のいい未来”を用意してくれていたようだ。
どうやってこの場所に移動してこれたかは全くわからないが、何にせよ一命は取り留めている。
体は鉛のように重く、血まみれで寸分たりとも動きそうに無いが、少し休めば動けるくらいには回復しそうである。


(演算は……、だめだ、さすがに頭が回りやがらねえ)


とりあえず移動しようと思ったものの、学園都市の第一位の真価をその身に受けた事実に変わりはない。
態勢を整えるまでに時間はかかりそうだが、これならばもう一度やりなおせる。
…いや、何度でも。
少年は体の内から溢れてくる欲動を抑えきれぬといったように、また笑った。
やはり自分には権利があったのだ。学園都市の『第一候補』になる、権利が。


「都合のええ未来、ねえ」




515 名前:青髪「――あんさんの未来、ちょっと借りまっせ」[saga] 投稿日:2010/10/13(水) 11:55:55.71 ID:k2ukkUYo [4/21]


(――――ッ!?)


あまりにも不意に響いた声だった。演算を怠っていなければ感知くらいはできたはずだ。
それでも体が動かないのだからどうしようもない。
声の主は男、妙に耳につく訛りのようなものが少年の中の懸念を大きくした。


「なんちゅーか、そないなこといわれるとアレやな、ついついしゃべりたくなるっちゅーか」
「……テメェ……一般人じゃねぇな」


視界に入ってきたのは自分とは同年代か、年下に位置しそうな少年だった。
髪の色は青。耳にはピアスをあけていて、笑い目が特徴的である。
手には缶ジュースを握っていて、物腰からして武闘派ではなさそうだが……。


「王様の耳はロバの耳!」
「………?」
「あれ? 知らへん? 有名やん。いったらあかんっちゅーことほど言いたくなるっちゅーアレ」


会話はつなぎつつも、頭の中は別のことでいっぱいだった。
目の前のこの少年は“敵”か否か。“能力者”か否か。
そしてとある品をめぐる一連の事件のうち、何枚を噛んでいるのか。

つまるところ、垣根帝督は焦っていた。
ただでさえ上記のような死闘を繰り広げた後である。これから何が起こっても不思議ではない。
仮に今、目の前の男がどんな台詞を吐いたとしても、自分はそれを事実として受け入れてしまうだろう。



516 名前:青髪「――あんさんの未来、ちょっと借りまっせ」[saga] 投稿日:2010/10/13(水) 11:56:59.49 ID:k2ukkUYo [5/21]


「……バタフライ効果って知っとる?」


青髪の少年はそう言うと、持っていた缶を壁に向かって投げた。
とっさに構えてしまうが、別段何が起こる様子もない。

――、時間を稼がなければ。
普段はおしゃべりだと自負している垣根だったが、切羽つまった状況のやり取りをこなすのは慣れていない。
それでも今はなんとかしてこの状況を切り抜けなければならなかった。

せめて、相手の素性が少しでもわかれば。


「あぁ…。蝶々の羽ばたきによってニューヨークでハリケーンが起こり得る。カオス理論の比喩だな」

「さすが第二位やねー。説明する手間がはぶけてええわぁ」



かかった。

垣根は瞬時に冷静な思考回路を取り戻そうとする。
自分のことを第二位だと知っている以上、眼前のガキは間違いなく今回の件に“噛んでいる”。
暗部関連か、はたまた“上”の手先かはしらないが。


「ま、実際には“起こり得る”だけであって、未来を予測できるって意味とはちゃうねんけど。
 どっかの偉い学者さんが言ったのは“未来は予測不可能”ってことの比喩らしいで?」
「………何者だ、テメェ」


問いかけに少年は答えなかった。芝居がかった仕草で髪を少しかき上げるだけ。




517 名前:青髪「――あんさんの未来、ちょっと借りまっせ」[saga] 投稿日:2010/10/13(水) 11:58:21.73 ID:k2ukkUYo [6/21]


「未来を予報するってのはあれや、“初期値”を設定せなあかんのよ。
 たとえば天気を予測するにしても、大気や温度、人や動物、風の流れ……、
 それはもう何“京”分の1っていうミクロの単位でやで?
 ちょっとした誤差によって未来は無限大に変動してまう、ってな」

「君らの『自分だけの現実』やてそうやろ? 起こりもしないような事象の中から自分が信じた未来を選択し、再現する。
 すなわちそれが、超能力。ある意味ではそれも未来予知になっとるわけやけど」

「……、」


『未元物質』を二つ名とする垣根にとって、それは当たり前のことだった。
シュレディンガーの猫箱理論。
世の中の事象にはそれ自体、いくつもの可能性が存在しており、
それらは観測されることによって結果となりうる。
たとえ99,99999%起こりえないことであったとしても、結果として現れた時点でその可能性は100%現実のものとなる。
その理論はいまやこの学園都市に住む者にとっては常識であり、
当然序列第二位の垣根にとっても、同様だった。


「でももし、“ミクロの単位で原子や電子を観測し、その初期値をつまみ出し、変えることができる”、としたら?」

「観測? 馬鹿なことぬかすな。そもそも原子の存在は確率的にしか把握できねぇ。
 この俺の『未元物質』ですら」


言いかけて、詰まる。
原子? 電子? 初期値を観測して、“つまみ出す”?


「……、そうか……『ピンセット』…!」


刹那、垣根の頭に今回の騒動のキーアイテムが浮かんだ。
正式名称、超微粒物体干渉吸着式マニピュレーター。
通称ピンセット。
それは磁力、光波、電子などを利用して素粒子を掴む(正確には吸い取る)事ができる品であり、
この一品をめぐって学園都市の闇――――暗部間で抗争が繰り広げられていたところだ。


518 名前:青髪「――あんさんの未来、ちょっと借りまっせ」[saga] 投稿日:2010/10/13(水) 11:59:23.49 ID:k2ukkUYo [7/21]


「おほ、理解が早くて助かるわぁ。
 そゆこと、アレはこの僕の能力を模して、“ねーさん”がつくるよう指示したもんらしいで? 
 まぁおもちゃみたいなもんやね」
「……あ?」


ピンセットの存在を知っていただけではなく、あれを“おもちゃ”と言い放つこの男。
“僕の能力”……?
さっきからの演説のようなやり取りといい、ますます不信感は高まる。

その一方で、垣根の体力はそこそこに回復してきていた。
時間はかかるが、もう少しで演算ができるくらいにはなりそうである。




「――触れたものの『初期値』を測定し、選択し得る未来の解を予測、ミクロの単位で改ざんする」



「………っ!?」


空気が、変わった。

いや、雰囲気がどうというものではなく。

思い込みや錯覚でもなく。

たしかに、いや実際に、“目の前の空間の空気”が変容している――!

次には目の前の青髪の男の周囲に三つの小さな竜巻が発生し、
獲物を見つけた虎のように垣根の周りを旋回していた。
見上げた先に立ち尽くす男は、気づけばさきほどまでの笑い眼を見開き、
これ以上ないほど冷たい視線を垣根に向ける。





「――それが僕の能力。
 予知能力(ファービジョン)レベル5…――――。
 
       ――――『天機予報』(バタフライエフェクト)」





519 名前:青髪「――あんさんの未来、ちょっと借りまっせ」[saga] 投稿日:2010/10/13(水) 12:00:17.92 ID:k2ukkUYo [8/21]


「テメェ……『第六位』か…!!」
「あんまし序列は関係ないんやけどね、僕の場合。ほんまは戦闘向けやないし」


垣根は言いながらもなんとか体に命令をくだそうとする。

動け。
1ミリでもいいから動け、と。
悲しいかな、意に反して体は相変わらず動こうとしない。

まだ、時間がたりない。全然足りやしない。

ちくしょう、神さまはどこへ行ったというんだ。
この俺に“都合のいい未来”を用意してくれたんじゃなかったのか。
だからこうして俺はここに……。

思いかけて、はっと気づく。都合のいい未来……?


「あ、気づいたー? そうそう、普通に考えてあんなんやらかされて無事なわけないやん? 
 僕がちょこちょこいじってたに決まってるやろ? アハッ、神さま信じちゃったとか言わんといてよ?」

「……このクソガキ…!」

襲い掛かるのは圧倒的な絶望感。
神がいるのかどうかは知らないが、いるにしても気まぐれすぎる結末だと嘆いた。



520 名前:青髪「――あんさんの未来、ちょっと借りまっせ」[saga] 投稿日:2010/10/13(水) 12:01:17.38 ID:k2ukkUYo [9/21]


「『ラプラスの悪魔』。こっちも知ってるやろ?
 僕の能力は本来、“人に知られちゃいけない”それなんよ」


吹きすさぶ風が青い髪をなびかせていた。
夕日を背にしてこちらを覗くその姿は、まさに悪魔のように見える。


「“僕の能力を知っている人間の意志”が介入した未来はあれや、
 それこそ無限大になってまうから」
「…………」
「ああそれと」


「なんであんさんたちに真っ向から挑まなかったかっちゅーと、やね。
 レベル5を決定する指針のひとつに、『軍隊を相手にできる』って基準があるのは知ってるやろ?
 軍隊でいうなら僕のは『軍師』役やね。ま、一人でも別に勝てへんことはないけど。
 ほら君、『第二位』やし。
 序列が四つも上の相手にガチバトルで勝てるわけないやん」


けらけらと笑う青髪を見て、垣根はふと思った。
なぜこの男はここまで余裕を見せていられるのか。
同じ状況を自分に重ねて考えてみる。

これは、勝利を確信しているときのそれではないのか。


「は、ハハ、くちの……減らない……」
「俺には…ばれちまったぜ……どうすんだ、テメェの能力、ばらしまくって…」




「別にええよ。だって君、もう死ぬもん」
「何?」

521 名前:青髪「――あんさんの未来、ちょっと借りまっせ」[saga] 投稿日:2010/10/13(水) 12:02:32.38 ID:k2ukkUYo [10/21]


「――――ッ!? ぐああああッがッがあああああああああッ!!!!」


まさに嵐のような声だった。
垣根の周りをさまよっていた竜巻が、一斉に襲い掛かってきたのだ。
ひとつひとつには大した威力はない。
いや、合わせたところで普段の垣根ならば一蹴できるほどの威力だろう。

傷口さえ、開いてなければ。


「演算、できへんのやろ? “知っとるよ”。
 それなら別に君の意志がどうでも関係あらへん。
 ……あーそれと僕がさっき投げた缶、あれ一応僕の攻撃。
 “君の傷に向かって竜巻が発生する未来”が起こる可能性がこの空間にあったから。
 実際の確率としては3,000,000,000,000通り中20個くらいしか当てはまらんのやけど」

「テ……メェ……!!!!!!!」

「『風力使い』(エアロシューター)のそれとはちゃうで? 僕のは自然現象やから」


そこまで言ったところで、青髪の少年は見開いた眼を閉じ、
元通りの笑い顔に戻っていた。

おもちゃに興味を失った子供のように、垣根に背を向けて冷たく言い放つ。




「ごめんな。僕もやりたくてやってるわけちゃうねん。

          ――――あんさんの未来、ちょっと借りまっせ」




522 名前:青髪「――あんさんの未来、ちょっと借りまっせ」[saga] 投稿日:2010/10/13(水) 12:03:17.74 ID:k2ukkUYo [11/21]

その後垣根帝督は、学園都市の第六位によって“回収”された。

残されたのはこの都市特有のいつもの空気と、“都合のいい未来”のみ。
青髪は上機嫌に帰り道を闊歩していた。


「はー疲れた。はよ帰ってアニメ見たいなぁ~」
「今週のカナミンは僕得展開すぎやでー♪」
「……の前に」


そう、仕事はまだ残っている。
普段ならば直接こうした表舞台――そもそも暗部の土俵なので厳密な表ではないのだが――に自分が借り出されることは少ない。

それでも、今回の件に関しては直々に呼び出しをされた。
経験からしてこれは、面倒な依頼が舞い込む結果になるに違いない。


(――、なんちゅーか、別に嫌とちゃうねんけどな。単に面倒なだけで)


アニメは録画してあっただろうか、と半ば真剣に心配しつつも、
青髪はその足を学園都市の中枢部へと運んだ。

窓のないビル。そこにたたずむ、この街の支配者の下へと。


523 名前:青髪「――あんさんの未来、ちょっと借りまっせ」[saga] 投稿日:2010/10/13(水) 12:04:38.54 ID:k2ukkUYo [12/21]

――――――


「ねーさんひさしぶり♪」


会うなり青髪は大声で挨拶をした。
その場所の雰囲気とは全く合わない、快活な声である。
声を受け取った相手はぴくりとも表情を変えず、
あいも変わらず巨大なビーカーの中で腕を組み、そこに佇んでいた。


「いつ私がそういった?」

「あはっ、別にえーやん。僕が勝手に呼んでるだけやし。
 なんちゅーか、中性的美形なんて僕得やーん♪ でもそやなぁ。結局あれなんよね、
 性別不明で引っ張っといて予想が外れたりするとファンが暴れだしたりなんだりあるわな。
 うーん、あの手のひきは諸刃の剣っちゅーか……」


ブツブツと趣味趣向を語りだす青髪。

どうにもこうにも普段の彼はこうなのだ。

それこそ落下型ヒロインのみならず、義姉義妹義母義娘双子~中略~ビキニ水着スリングショット水着バカ水着人外幽霊獣耳娘まで、
ありとあらゆるタイプの女性をカバーする正真正銘の変態である。

果てはその能力の有用性をも無視して、担任の先生に怒られたいがために宿題を家に忘れてくるという偉業をも成し遂げた、
性癖についてもかなり疑問符をつけたくなるドMの変態。

もちろん、自身が有する能力の特性からして、それは人にばれては困る類のものなのだが。

ビーカーの中の人物はそんな青髪の語りを無視して、
聖人にも囚人にも見える立ち振る舞いを崩さずに続けた。



524 名前:青髪「――あんさんの未来、ちょっと借りまっせ」[saga] 投稿日:2010/10/13(水) 12:05:44.34 ID:k2ukkUYo [13/21]


「“回収”は退屈だったか?」
「いんや、ちゅーよりだるかった。あんなん僕が出てかなくてもえーやん」


語るに飽きたのか、今度は普通の返事をする。


「ふむ。確かにあれは今回の件のついでのようなものだ。
 ――――また依頼したいことができてな」
「えぇっ!?」


彼が依頼、という単語に過剰に反応するのは、過去に頼まれたことについてろくな思い出がないからだった。


「勘弁してやー。ツリーダイアグラムのときは体中にわけわからん管みたいなの通されて、一ヶ月も監禁やろ? 
 だから言うたやん、あんなんカミやんに壊されたあげく、どーせ面倒なことになるって。
 僕はもう協力せえへんからね?」


樹形図の設計者。通称ツリーダイアグラム。
ラプラスの魔として、学園都市ではかなりメジャーなコンピュータのことである。
正しいデータさえ入力してやれば、完全な未来予測(シミュレーション)が可能であり、
その計算が導き出した答えは「予報」ではなく「予言」であるとさえ言われている。
表向きは天気予報のための装置とされているが、実際の用途は研究の予測演算に使われていて、
その装置のその後をめぐっては、とある抗争の火種になったりもしていた。

このトンデモ装置の元になったのが何を隠そうこの変態男、青髪ピアスの能力なのである。
ピンセットに引き続き、天下のツリーダイアグラムが青髪の雛形だったとは、
それこそ学園都市の七不思議だろうが、金髪にサングラスの多重スパイだろうが、
にわかには予想できない事実であろう。


「――――報酬は渡したはずだが?」
「あかんねん! 一ヶ月も研究室にいたせいで……僕のアニメが!! 妹や姉さんたちが!!」


もっとも、当の本人にとってはどうでもいい様子だった。


525 名前:青髪「――あんさんの未来、ちょっと借りまっせ」[saga] 投稿日:2010/10/13(水) 12:06:40.30 ID:k2ukkUYo [14/21]


「今回は時間を取るような依頼ではない」
「おほ。ほんまかいな。騙すのはなしやでー?」
「ふむ。以前”視て”もらった件の続きだ。『幻想殺し』のその後について」


ぴくり、と肩が反応する。
『幻想殺し』。
青髪の同期で、不幸体質かつフラグメイカーのある少年についてのキーワードだ。


「どうした。観測は続いているだろう?」
「うーん。ま、いつもの感じで適当に絡んでるだけやけど」


その言葉を聞いて、ビーカーの中の人物はすこしだけ笑ったように見えた。
表情に変化がないのは彼の専売特許のようなもので、
こうした表現さえも明確に記し得ているか正直危うい。


「“視る”のはどこまで? ま、いうても短期間しかいじれへんのやけど」
「『戦争』の末路」
「ちょっとまってな」


青髪はそう言うと、いつもの笑い目を見開き、
焦点の定まらない瞳で演算を始める。
彼の場合のそれは癖のようなもので、直接の力とは関係がないのだが、
毎回未来を“視る”ときには決まって行う、ある種のジンクスのようなものだった。

526 名前:青髪「――あんさんの未来、ちょっと借りまっせ」[saga] 投稿日:2010/10/13(水) 12:07:47.14 ID:k2ukkUYo [15/21]


「……、50,000,000,000,000通りくらい視たけど、うん、十中八九、うまくはいきそうやで。
 場合によっては一人や二人、重要な駒が死ぬかもしれへんけど」
「そうか。なら構わん」

「いうてもカミやんの行動パターンを元に最適化したケースやから、100%かどうかはわからんよ?」
「いつものことだろう」


それはそうやけど、と青髪はつまらなさそうに吐いた。


『天機予報』は未来を予知、操作する能力だが、強力なその特性に反して制限が厳しい。

まず初期値を設定する際、対象に触れたことがないと予知も改ざんもできない。
次に、あくまで自然現象に干渉する能力なので可能性が0の事象を再現することはできない。
そして、予知改ざんできる期間にも制限があり、最大で一ヶ月。
それ以降はカオス理論に基づき、未来の可能性を測定することが不可能になってしまうからだ。

また人の心にも干渉することはできない。それは第5位の能力である、『心理掌握』の力だ。
彼女の能力がある意味、“他人の過去を操作する”能力であることからして、
第5位と第6位の自分の能力は対をなしているといえるだろう。

そして何より致命的なのが、対象に自分の能力について知られた場合、
すぐさま未来の可能性は無限大に増幅し、最適な未来を選択することが不可能になってしまうという点だ。
前述の垣根の場合は、相手が動かず、“未来の触れ幅”が最小限に留まっていたから予測できたというだけである。

これを防ぐため、彼の能力は一般的には秘密にされている。



――目の前の、ビーカーの中の人物を除いては。


527 名前:青髪「――あんさんの未来、ちょっと借りまっせ」[saga] 投稿日:2010/10/13(水) 12:09:05.71 ID:k2ukkUYo [16/21]


「………くふ、あはは。ねーさん、びっくりなニュースいっていい? もしかしたら、戦うことになるかもしれへんでー?」

「ふむ。大方予想はつく。相手の特徴は」

「髪はセミロング。見る限り外人やな。右手に何かしらの能力を持った、
 …あー、ねーさんが言うところの『神の右がなんちゃら』とか、それ系ちゃうの?」

「……」

「いうてもねーさんは僕の能力を知ってるわけやから、どうなるかわからんけどね」



(……ま、細かいことは知らんけど)



アレイスターから『魔術』やら、『天使』やら、そういった単語を聞くことは何回かあった。
だけれどそれらは恐らく学園都市で暮らす自分には関係がないことだし、興味もない。
詮索したいと思ったことは今まで一度もなかった。
自分には自分の周りの世界があるだけでいい。

もっといえば、それすらも場合によっては興味の対象外だ。


「――どっかいじれるとこあったらいじっとく?」
「あ、わかってると思うけど、『カミやんの意志』は動かせへんよ?
 この場合僕にできるのは『状況』を作り上げることだけ。舞台で踊るのは役者やからね」

「いや、今回はいい。大して結果は変わらんだろう」

「ふーん」


青髪は思う。
学園都市の1位~7位のうち、自分ほど“ちゃっちぃ”能力もないと。
ミクロの世界の中でしか人を動かせないのだから。


(初期値を観測して、“設定できる”っちゅーのはそれなりにすごいことやと思うんやけどなー)


だからこそ、たまにそんなことを思って愚痴を言いたくなったりもする。


528 名前:青髪「――あんさんの未来、ちょっと借りまっせ」[saga] 投稿日:2010/10/13(水) 12:09:43.62 ID:k2ukkUYo [17/21]


「んで? 仕事は終わり?」
「ふむ。今日のところはそれだけでいい」


あいよ、と一声かけると、青髪はビーカーに背を向けた。
その背中からはおよそ善悪に対する頓着は感じられない。

これから起きることについての不安も。
人の未来を“視る”ということの重大さも。
そして、『戦争』という言葉が持つ重みすらも。


「……まて」
「?」


不意に声をかけられて思わず振り返る。
ビーカーの中の人物は目を閉じて何やら瞑想にふけっているようだった。


「――なぜ理由を聞かない? 
 お前がここに呼ばれること、私がお前を利用していること。怖くは無いのか」

「聞いたら教えてくれるっちゅーの?」


「……、」



「なーんて」



「……」


529 名前:青髪「――あんさんの未来、ちょっと借りまっせ」[saga] 投稿日:2010/10/13(水) 12:11:02.63 ID:k2ukkUYo [18/21]

青髪はやはり芝居がかったそぶりで肩をすくめた。
『天機予報』。その力が持つ重大さは、
彼の気まぐれな性格とのミスマッチによってバランスを保っているようだった。


「あんなねーさん。難しい話はなしにしてくれへん? 
 僕、帰ってアニメ見ないとあかんねん。だいたいそれって重要なことなん?」

「――――少なくとも、この世界が振り回される程度には」

「ごめんやけど、この世界がどうなろうがそんなん興味ないわ。僕はいつもどおり、
 帰ってアニメ見て、毎日小萌せんせーでにやにやできればそれでええねん。
 だってそーやろ? 僕は舞台で踊る役者とはちゃうねんで。
 ねーさんも僕も、あくまで裏方、やろ?」

「……、」


最後にほなな、と付け足し、青髪はビルを後にする。
言葉からは罪悪感も良心の呵責もない。
どこまでも危うい価値観を宿した瞳はその日、それ以上開かれることはなかった。



――――――



「――――ふむ。舞台か」

「そのたとえは興味深い。では今回のスポットライトはお前に当ててやろう」

「たまには役を演じるのもいいものだ」

それだけ言い放つと、笑い声とも罵倒とも取れる声をくつくつと吐いた。

この瞬間、未来は改変する。
予想し得ない意図的な何かがその矛先を誰に向けるか、
おそらくこの時点では誰にも想像しえなかったはずである。


少なくとも、青髪には。


530 名前:青髪「――あんさんの未来、ちょっと借りまっせ」[saga] 投稿日:2010/10/13(水) 12:12:02.58 ID:k2ukkUYo [19/21]
今んとこ以上です。続きは今かいてるます。
現行のほっぽりだしといてこんなんはじめちまった。
青髪原作でも活躍しないかなー

531 名前:青髪「――あんさんの未来、ちょっと借りまっせ」[saga] 投稿日:2010/10/13(水) 12:29:02.05 ID:k2ukkUYo [20/21]
蛇足。
↑の青髪がかみやんに触れて得られるのは「初期値」だけです。
測定はできるけど改ざんはできないっていう設定。苦しいけど勘弁して

Tag : とあるSS総合スレ

コメント

わりといい感じの能力だな…

No title

本編の青ピの登場のしなさは異常

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