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翠星石「好きな人からいじめられるですぅ」

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 14:07:09.75 ID:XPV6580R0 [1/89]
「ひぎっ! 痛いですぅぅ! いやぁぁぁぁぁぁっ!」

 謎の液体のおかげか俺と翠星石はすんなりと繋がった。

「こんなやつに翠星石の初めてがぁ……」

 涙を流す翠星石に興奮した俺は、腰を動かし始めた。

 そうしていると翠星石は何も言わなくなった……。

 無理やり翠星石を犯す快感は今までに体験したどんなものよりも甘美だ。

 どうして俺はこんなことをしているんだろう?

 大好きだったのに……。

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 14:10:28.35 ID:XPV6580R0
「人形を虐待するだけの簡単なお仕事?」

 大学入学のために上京して、1人暮らしを始めた俺はバイトをするために部屋で雑誌を漁ってい
た。

「なんだこれ?」

 バイト雑誌の隅に小さく載っていたその文面に俺は興味を惹かれた。

 怪しさ爆発だ。新手の詐欺かもしれない。そうじゃなかったとしても完全にアンダーグラウンド
だろう。日給1万円というのも怪しい。

 しかし、興味を惹かれるのは確かだ。気になる……よし。

 携帯を取り出して応募メールを作成する。

「名前、桜田マコトっと」

 興味本位に負けて送信ボタンを押した。

 もし詐欺だったとしても相手からお金を少しでも要求されたら連絡を断てばいいだけだろう。

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 14:14:05.52 ID:XPV6580R0
 数日たって、メールが返信されてきた。



 件名 RE:応募

 ご応募まことにありがとうございます。

 このあと適性検査を受けてもらい、それに合格すれば採用

 という形にさせていただきす。

 適性検査を受ける場合はこのメールをそのまま返信してください。



「適性検査?」

 何をテストされるのか分からないが、とりあえず返信してみる。

 すると、すぐにメールが返ってきた。



 件名 RE:RE:RE:応募

 まきますか まきませんか

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 14:17:20.50 ID:XPV6580R0
 まきます……普通はそう返すべきだろう。

 バイトの面接で出来ないなんて言うものじゃない。

 だから、まきますと打って返そうとした。

「うっう……」

 しかし、送信ボタンが押せない……。押そうとすると吐き気がする。

 嫌な予感というわけじゃないが、そんな感じの不安が心を横切る。

 まきません……そう打ち直してみる。

 すると不思議なことにそれが無くなった……。

 そして、そのまま送信ボタン押した。

「はぁ、やっちまったかもな」

 後悔先に立たず、落ちたところで害はないけどな。

 多少落ち込んでいると、メールが返ってきた。

 新着メールを開いて確認する。

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 14:20:53.16 ID:XPV6580R0
 件名 RE:RE:RE:RE:RE:応募

 合格です。

 詳細は後日連絡します。



 どうやら、適性検査とやらに合格したようだ。

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 14:22:28.00 ID:XPV6580R0
 桜が咲き乱れる今日この頃、春休みを満喫している俺に1通のメールが届いた。


 件名 詳細

 やってもらう仕事は簡単です。

 こちらから人形を1体送りますので、それを虐待していただきます。

 虐待内容の指示はこちらがしますので、それに沿って行ってください。

 虐待指示がない日でも虐待していただいて構いません。

 そして虐待する所をカメラで撮影してもらい、それをネットで流します。

 PCとカメラもこちらから送ります。PCは設定済みですので、虐待する前にプリケーションを起動
してもらうだけで結構です。カメラも所定の位置を指示しますので、そこに取り付けてもらうだけ
となります。

 カメラはPCのアプリケーションを起動した時のみ撮影を開始しますので、普段の生活を脅かすこ
とはありません。



「なげぇ、3行にしろよ」

 疲れてきたので読むのを中断する。

「ははぁん、このPCやカメラ代を請求されるんだな、この先にはそういうことを書いてあるはず」

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 14:25:06.13 ID:XPV6580R0
 人形を虐待してもらい、成功報酬として1回1万円の給料となります。

 また、1週間ほど試用期間とし、人形と生活をともにしていただきます。

 その期間は日給5000円となりますので、あしからず。

 そして試用期間中に簡単なテストをしてもらい、それに合格されますと試用期間が終了します。

 不合格の場合は残念ながら契約の解除となります。

 数日で必要なものを送りますので、住所を書いて返信してください。


「書いてないなぁ……住所晒すのは怖いけど、まあいいか」

 俺は住所を打ち、メールを返信した。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 14:28:46.31 ID:XPV6580R0
 数日経つと夜にダンボールが3つほど届けられた。

「これが仕事道具か……人形ってどんなのだろ?」

 1つ目のダンボールを開けてみる、中にはPCとサングラスが入っていた。

 デスクトップ型のPCでいかにも場所を取りそうな感じである。

 サングラスはカメラで撮影している時に顔を隠す用だろうか?

「なんで、ノートじゃないんだよ……」

 2つ目のダンボールを開けてみる、中にはカメラが何台か入っていた。

 高そうなカメラで、個人で使うようなものではない。

「壊したら修理しなきゃいけないのか? 絶対払えない……」

 3つ目のダンボールを開けてみる、中には鞄が入っていた。

 古そうな鞄で、こういうのもビンテージと言うのだろうか?

「この中に人形が?」

 ダンボールから鞄を取り出し、開けてみる。

「これが、人形……」

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 14:31:27.97 ID:XPV6580R0
 緑色の綺麗な服を着た人形が入っていた。

 オランダやベルギーの民族衣装のようなロングスカートのエプロンドレスで、白い三角巾のよう
なヘッドドレスを被っていた。

 茶色の長い髪の毛が特徴的で、床に届く程の茶色のロングヘアが後ろで二つに分かれてロールし
ている。触ってみると本物のようにサラサラしていた。

 目を閉じているが、顔もまるで生きているかのように精巧に作られている。

 とりあえず体をあちこち触ってみた。

「やわらけぇ」

 目を強引に開けようとするが、開かない。

 すると、鞄の中にあるゼンマイが目に入った。

 人形の背中にゼンマイを差し込む穴があり、誰かがそこに入れろと催促してるように思えた。

「指示とか受けてないけど、別にいいよな……」

 ゆっくりとゼンマイを穴に差し込み、回してみる。

 すると、人形が突然キリキリと音を鳴らしながら動き始めた!

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 14:34:12.65 ID:XPV6580R0
「な、なんだこれ!」

 怖くなった俺は、人形から手を離して仰け反った。

 人形の目がゆっくりと開かれる。目の色が左右で違っていて、どちらも宝石のように美しい。

 右目がルビー色で左目がエメラルド色だ。

「ふぁあ、よく寝たですぅ」

 人形って欠伸をするんだ……って違う!

「人形が、しゃ、しゃべった!」

「人形がしゃべらないなんて誰が決めたんですか!」

 人形がいきなり怒りだした。

「な、なんだこれ? ドッキリか!?」

 状況がまったく飲み込めない。人形がしゃべってる? ゼンマイを巻いたせいか?

 すると、携帯がメールの着信音が鳴らし始めた。

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 14:37:09.26 ID:XPV6580R0
 メールを確認すると、そこには、



 件名 人形

 人形が届いたら、まずゼンマイを巻いてください。

 人形が動き出します。

 その人形はローゼンメイデンという生きた人形です。

 指示があるまで、ともに生活を送ってください。



 生きている人形……。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 14:40:07.32 ID:XPV6580R0
「というかおめぇは誰ですか? ここはいったい?」

 人形がキョロキョロしながら部屋を見渡す。

「お、俺は桜田マコト。おまえこそ誰だよ?」

「翠星石は誇り高きローゼンメイデンの第3ドールですぅ」

「第3ドール? 他にもおまえみたいな人形がいるのか?」

 そう質問すると翠星石は急に頭を押さえ始めた。

「うっう、全然おぼえてないですぅ、翠星石に姉妹や兄弟がいたのか……」

「おい、大丈夫か?」

 苦しみだした翠星石を持ち上げて、鞄の中で寝かせようとすると、

「な、何するんですか!? 翠星石に触るなですぅ!」

「こら暴れるな! 苦しそうだから鞄に寝かせるだけだよ」

 そう言ってバタバタと暴れる翠星石を鞄の中に入れた。

「あ、ありがとうですぅ」

 翠星石は顔をほんのり赤くしてうつむいた。

 人形でも顔が赤くなるんだなぁ……。

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 14:43:06.53 ID:XPV6580R0
「ここはどこですか? どうして翠星石はこんな所にいるんですか?」

 鞄の中で寝転がっている翠星石がそうたずねてきた。

「ここは俺の家だけど……。あっいや、いきなり送られてきたんだよ、俺も良くわからない」

 さすがに本当のことを言うわけにはいかないからなぁ……。俺は適当に嘘を付いて答えた。

「そうですか……。翠星石は今までのことをほとんど忘れてしまったようですぅ」

 悲しそうに答える翠星石に胸を痛めた。

「これからどうするんだ?」

「できれば……ここに置いてほしいですぅ」

 翠星石が上目遣いでこちらを見ながら言った。

 か、かわいい……。

「べ、別にいいけど……」

「ありがとうですぅ。今日から記憶が戻るまでよろしくたのむですぅ」

「あ、あぁ」

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 14:44:40.97 ID:XPV6580R0
「それならもうおそいから翠星石は寝るですぅ」

 そう言うと翠星石は鞄をしめた。

 さっきまで寝てったのに、もう寝るのか……。

「おやすみですぅ」

「おやすみ」

 俺は鞄の中から聴こえた声に返事をした。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 14:47:14.68 ID:XPV6580R0
 親に家賃を出してもらっている家は、古いアパートの1室で玄関を出れば庭があり、すぐ道路に
出られる。

 部屋は1Kで、入ると奥には8畳の洋室があり、右にはキッチン、左にドアがあり、中はユニッ
トバスになっている。



「まったく、人間、早く起きるですぅ!」

 誰だ? 誰かが俺を揺さぶってる……。

「うお! す、翠星石か……」

 目を開けて飛び起きると昨日届いた人形、翠星石がいた。

「こんな時間まで寝ているなんて、おめぇはダメ人間ですね」

 時計を見ると針は14時を指していた。

「別にまだ学校が始まっていないからいいんだよ」

「そうですか、よく解らないですが、おめぇがいいならいいですぅ」

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 14:51:37.79 ID:XPV6580R0
 すると、甘い香りが鼻を通った。

「あれ? いい匂い、何これ?」

「スコーンですぅ、翠星石が作っているんですよ」

「へぇ、スコーンかありがとな」

「べ、別におめぇのために作ったわけじゃないですぅ! 翠星石が食べたいから作ったんですよ」

「そ、そうか……」

「まあ、おめぇがどうしても食べたいなら、あげない訳じゃないですけど……」

 翠星石が顔を赤らめながら顔を背けて言った。

 か、かわいい……。

「俺も食べたいなぁ、お願い」

 ちょっとわざとらしくお願いしてみる。

「しゃぁねぇですね、おめぇにもあげるですぅ」

「ありがとう」

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 14:55:12.11 ID:XPV6580R0
「ただその前に、この家には茶葉もないんですか!?」

 翠星石が一転して怒りながら言った。

 この家にお茶なんて洒落たものがあるはずなんてない。

 スコーンの材料があったのも不思議なくらいだ。

「1人暮らしだからねぇ、そんなものはない!」

「今すぐ買ってくるですぅ! スコーンに紅茶は付き物なんですよ!」

「はいはい、分かったよ」

 翠星石に急かされて、茶葉を買いに行くことになった。

 お金あるかな……?

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 14:59:06.74 ID:XPV6580R0
 茶葉を買ってきた。

「翠星石は入れられないですぅ、おめぇが入れるですよ」

 俺も入れたことないんだが……。仕方ないからネットで入れ方をさがして、見よう見真似で入れ
てみる。うへっ、なんだこれめんどくせぇ、95℃とか計るのかよこれ……。

 ふう……まさに悪戦苦闘だな、なんとか入れられたけど。

「ほらよ、入れたぞ」

 テーブルの上には翠星石の焼いたスコーンがあった。

 俺は紅茶を並べ始める。テーブルの向こう側には翠星石がちょこんと座っていた。

 翠星石の前に紅茶を置くと、

「ありがとうですぅ」

 とお礼を言いながら翠星石が会釈をした。

「言っておくけど初めて入れたからな、たぶん美味しくないぞ」

「人間が翠星石のためにお茶を一生懸命入れている所を見てたですぅ、そんなものが美味しくない
わけないですよ」

 翠星石の色違いの目がこちらを見つめる。

 か、かわいい。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 15:02:49.87 ID:XPV6580R0
 翠星石はカップに口をつけてお茶を飲み始めた。

 味の感想をぐっと待つ……。

「まっ初めてにしては上出来じゃねぇですか」

 翠星石が目を閉じて恥ずかしそうに顔を背けながら言った。

「ありがとう」

「次は翠星石のスコーンを食べるですぅ」

「あ、ああ」

 俺は皿に乗っているスコーンを1個とるとそれを口に持って行った。

 口の中に甘い味が広がる。そういえば起きてから何も食べていない。それも手伝ってか、

「美味い! すごく美味しいよ翠星石!」

 こういう少し、はしゃいだ感想が出た。

「ありがとうですぅ、そんなに喜んでもらえると翠星石もうれしいですぅ」

 スコーンと紅茶、俺と翠星石はそれを食べながらおしゃべりをした。

 とても楽しい時間を過ごした。

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 15:07:04.80 ID:XPV6580R0
 それからも俺と翠星石はいつも2人でいた。

 俺は外に出るのを極力最小限にして、翠星石といつも遊んでいた。

 トランプやテレビゲームを翠星石に教えて、2人でした。

 翠星石は負けるとコントローラーを投げた。

「まったく、なんですかこのゲームはまったく! もう1回するですぅ!」

 怒る翠星石が微笑ましくて、ちょっと意地悪く見守る。

 楽しい日々を過ごした。

 いつの間にか俺は翠星石を好きになっていた……。

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 15:11:07.75 ID:XPV6580R0
 明日から学校か……。

 そんな日々も終わり告げる、大学に行く時がきたのだ。

 夜、翠星石がテレビを見ているところを呼び出す。

「翠星石ちょっといいか」

「なんですか人間?」

「明日からのことなんだけどな、俺は学校という所に行かなくてはならない」

「そうですか……何時ぐらいまでですか?」

「明日は入学式だけだろうから早く帰ってくるけど、明後日からは夕方ぐらいになる」

「翠星石はその間1人ぼっちってことですか?」

「まあ、そういうことになるな、ごはんとかは大丈夫か?」

「そんなことはどうでもいいですぅ! 翠星石は1人ぼっちなんて嫌ですよ! 翠星石も学校とや
らに付いて行くですぅ!」

 不安そうに怒る翠星石を見て胸を痛めた。

「ごめんな、それはできない、翠星石が危険な目にあうかもしれないからな」

「……分かりましたですぅ、大人しく留守番してるですぅ」

 俺の真剣な目に観念したのか、しぶしぶ翠星石は受け入れた。

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 15:15:06.99 ID:XPV6580R0
「極力早く戻ってくるようにするから、それで我慢してくれ」

「絶対ですよ! 翠星石を一刻も早く寂しさから解放するんですよ!」

「あぁ、約束する」

 俺はすっと小指を立てて出した。

「なんですかそれは?」

「知らないのか? 約束のおまじないだよ、ほら小指をだして」

 翠星石の小指と俺の小指を絡めさせた。

「指きりげんまん嘘ついたら針千本飲ます」

「なんだか物騒な歌詞ですね」

「そうだな」

 小指と小指を絡めあい、俺と翠星石は微笑み合った。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 15:19:09.69 ID:XPV6580R0
「やばい、ちょっと遅れちまった」

 始業式が終わって、即帰ろうと思ったが、サークルだなんだと捕まってしまい、なかなか下校で
きなかった。

 走りながら時間を確認すると、夕方を軽く超えていた。

「翠星石、怒ってなきゃいいけど」

 家になんとか付いたころには、辺りはもう真っ暗だった。

「あれ? ただいまぁ、翠星石いるか?」

 ドアを開けて部屋の中に入ると、電気が点いていなかった。

「おいおい、嘘だろ」

 もしかして翠星石の奴、俺を捜して外に出たとか?

 おもむろに電気を点けると、部屋の隅でうつ伏せに倒れている翠星石を見付けた。

「翠星石!」

 翠星石のもとに慌てて駆けつける。

 目は見てみると、綺麗なオッドアイだった目が少し濁っていた。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 15:23:07.26 ID:XPV6580R0
「翠星石! 翠星石!」

 何度呼びかけても返事がない!

 体を揺すっても反応がない!

 まるで死んでいるように……。

「嫌だ! 翠星石、起きてくれ!」

 翠星石の体を強く抱きしめる、温もりを与えるために。

 そうだ! メールだ!

 俺は携帯を取り出すと、雇い主にメールを送った。



 件名:緊急

 翠星石が動かなくなった。

 対処方法を教えてください。

 お願いします。

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 15:26:08.14 ID:XPV6580R0
「早く、早くしろ!」

 携帯を見つめてイライラしていると、ふと翠星石の鞄が目に入った。

 もしかしたら翠星石を鞄の中に入れてやれば、また起きるかもしれない!

 翠星石を抱き上げて急いで鞄の所に行く。

 鞄を開けて翠星石を押し込めようとすると、あのゼンマイを見付けた。

「こっちが本命か!」

 ゼンマイを翠星石の背中に付いている穴に差し込んで回した。

 何度も、何度も!

 すると翠星石がキリキリと動きだした。

「ふぁ、よく寝たですぅ」

「翠星石!」

 翠星石がまた動き出した。そのことが嬉しくて、思わず翠星石に抱きついてしまった。

「人間、もうまったく遅いですよ、早く気付いてほしかったですぅ」

「ごめんな、ごめんな……」

 濁っていたオッドアイが、また輝きを取り戻してこちらを見つめる。

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 15:31:04.27 ID:XPV6580R0
「でも、翠星石をあれだけ心配してくれたことは嬉しかったですぅ」

「当たり前だろ、愛してるよ翠星石……」

 嬉し涙が溢れてくる。

 その涙を拭いてくれるために手を伸ばす翠星石……。

「ありがとうマコト……マコトの想いと翠星石の想いは同じですぅ、それが今の翠星石の宝物。翠
星石は誇り高いローゼンメイデンの第三ドール、そして幸せなあなたのお人形……」

「俺も幸せだよ……」

 この時間が一生続けばいいと思った。

 その時、空気の読めない携帯がメールの着信を告げた。

「もしかして、さっきのメールの返信か? 遅すぎるだろ」

 翠星石を座らせてから、メールを読む。

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 15:35:15.52 ID:XPV6580R0
 件名:テスト

 試用期間が終わりましたので、本契約のために簡単なテストを受けてもらいます。

 テストの内容は簡単です。

 カメラをセットして翠星石を虐待するところを撮影してください。

 万が一できない場合は後日、翠星石を回収させてもらいます。そして契約を解除します。

 翠星石との生活は楽しめましたか?

 もし楽しめたのであれば、翠星石があなたを好きになるように、プログラムしたかいがあったと
いうものです。

 それでは良い返事を待っています。

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 15:39:14.40 ID:XPV6580R0
「…………はっはっは、なんだよこれ? ありえない、虐待もそうだけどプログラムって、翠星石
が俺のことを愛してるのは嘘だってのかよ……」

 翠星石がこちらを見ているのに気付く、どこか恥ずかしそうだ。

 こういうかわいい仕草も全部プログラムなのか……?

「どうしたんですか? 顔が真っ青ですよ」

「だ、大丈夫だよ」

 翠星石が俺を心配してくれる、でも、これもプログラムなんだよな……。

 ダメだ、もう何もかもが嘘に見えてくる!

 そうだ、虐待どうしよう……。

 もし実行しなかったら、翠星石が回収される。

 そんなのは絶対に嫌だ! 翠星石のいない生活なんて考えられない!

 でも虐待なんて、できるわけないだろ! 俺は翠星石を愛しているんだぞ……。

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 15:43:09.72 ID:XPV6580R0
 心配そうに見つめる翠星石を横目に時間が過ぎていく。

 翠星石は回収された後、どうなるんだ? プログラムされているなら、俺との生活も記憶から消
されるに違いない。そして翠星石は誰かを好きになって、そいつに虐待される……。

 そんなことになるなら、俺がしたほうがいいんじゃないか?

 そうすればまだ翠星石と一緒に暮らせる……。

 そうだ、これは翠星石のためでもあるんだ。

 他の奴に虐待なんてされたら、壊れてしまうかもしれない。

 でも俺ならそこまではしない、なぜなら俺は翠星石を愛しているからだ。

 ダンボールの中にしまってあったカメラとPCをセットする。

「な、何をしてるんですか?」

 翠星石が不安そうに聞いてくるのを無視して作業を続ける。

 パソコンを立ち上げて、ソフトを起動する。

 そして顔を隠すためにサングラスを掛けた。

 準備は整った。

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 15:47:09.90 ID:XPV6580R0
「ごめんな翠星石、これはお前ためなんだよ」

 嫌な汗が身体中を支配する、翠星石の前に震えながら立つ。

「何のことですか? ちょっと変ですよ?」

 意味がまったく分かっていないのだろう、でも少し俺に恐怖を感じていることが分かった。

 そんな目で見ないでくれ、翠星石!

「ああああああああっ!」

 座っている翠星石に向かって右拳を振り下ろす!

 なんの抵抗もなく、拳は翠星石の顔面をとらえた!

「デブゥ……!」

 翠星石は何かを言いかけたのだろう、しかし拳に阻まれて意味不明な奇声をあげた。

「はぁ……はぁ……」

 1発殴っただけで、体がどっと疲れた。

 立ち尽くしている翠星石が、こちらを不安そうに見ている。

 何が起こったのか解らないのだろう、殴られた箇所を左手で触りながら呆然としている。

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 15:51:11.29 ID:XPV6580R0
「やらなきゃ……もっと、やらなきゃ……」

「何で殴ったんですか? 翠星石は何か悪いことをしましたか?」

 震えながら翠星石が疑問をぶつけてくる。

 言えない、言えるわけがない。

「黙れっ!」

 また右拳を振り下ろす!

 しかし、今度は翠星石が腕でガードしてきた!

 拳は顔面に届かず、腕に阻まれる。

 だが拳の勢いに押されて、ガードが下がった。

 すかさず俺は左拳を振り下ろした!

 虚を突かれた翠星石は何もすることが出来ず、拳は顔面に直撃した!

「ぎゃぁっ!」

 翠星石は仰向けに倒れて、ピクピクと動いている。

「うっうっう」

 よく見ると翠星石は泣いていた。

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 15:55:07.54 ID:XPV6580R0
 人形でも涙が出るんだなぁ、そんな感想が1番最初に思い浮かんだ。

「翠星石に何か悪い所があったのなら謝るですぅ、お願いだから殴らないで……」

 泣きながら懇願してくる翠星石に心が震える。

「翠星石は何も悪くないんだよ、悪いのは俺だ……ああああああっ!」

 翠星石の綺麗な髪の毛を掴む!

 そのまま頭の上まで持ち上げた!

「痛っ、やめるですぅ! 早く下しやがれですぅ!」

 逃げようと暴れる翠星石、必死なのだろう、口調も最初の頃のように戻っている。

 俺は翠星石の言葉を聞き流し、壁に向かって全力で翠星石を投げつけた!

 顔面から思いきり壁にぶつかった翠星石は、ずるずると壁に沿って堕ちていった。

 その勢いのまま、うつ伏せに倒れている翠星石のもとに走り、頭を足で思いきり踏みつけた。

「ゲブッ!」

 何度も! 何度も踏みつける!

「ああっ! ああっ! ああっ! ああっ!」

 そうしていると体中が汗でべっとりしてきた。

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 16:00:41.21 ID:XPV6580R0
 動かない翠星石を見ながら立ち尽くす。

「翠星石?」

 呼びかけると、翠星石が顔をあげてこちらを見てくる。

 その表情には憎悪が混じっていた。

「翠星石を愛してると言ったのは嘘だったんですね……。信じていたのに、マコトのこと信じてい
たのに……」

「う、嘘じゃない、俺は翠星石を……」

「嘘です! 愛している人間が、こんなことするわけないです! おめぇなんて大嫌いですぅ!」

 ……。

 …………。

 ………………。

 ……………………。

 …………………………あっ?

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 16:04:21.01 ID:XPV6580R0
 翠星石の体を左手で抑えつけて、何度も何度も右手で顔を殴る!

 ごめんなさい、ごめんなさいと聴こえたが、それを無視して殴る!

 何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も殴る!

「誰のためにやっていると思っているんだ! それを大嫌いだと! ふざけるなぁ!」

 翠星石の体を両手で頭の上まで持ち上げる。

 さっきのように翠星石が何か言うこともなく、床に叩き落とした!

 すると、翠星石の体が弾け飛んだっ!

 首がもげ、腕が胴体から外れ、バラバラになってしまった!

「やっちまった……はぁっはぁっ……」

 翠星石はピクリとも動かない。返事がない、ただのジャンクのようだ。

「壊しちまった……。俺はバカか! くそっ!」

 膝を着いて床をドン! と叩く。

 でも、これで良かったのかもしれない、壊れてしまえばもう悩むことはない。このまま翠星石の
ことは忘れよう。時が解決してくれるはずだ。

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 16:08:19.73 ID:XPV6580R0
「翠星石、ごめんな」

 そうつぶやいた瞬間、携帯がメールの受信を伝えてきた。

 おもむろに携帯を開いて、メールを見る。



 件名:合否

 今回の虐待、みごとでした。

 こちらとしては本契約を結ばせていただきたいと考えています。

 契約を結ぶ意思がありましたら、返信してください。

 もし契約しない場合は翠星石を回収させていただきます。


 契約した場合は、翠星石の体を直して、記憶も虐待前のものに戻します。



「翠星石が直る! 虐待の記憶も消える……」

 いったい、どういう仕組なのか分からないが、目の前でバラバラになっている翠星石を見ている
と、メールを返信せざるをえなかった。

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 16:12:13.86 ID:XPV6580R0
 メールを返信すると、すぐにメールが返ってきた。



 件名:本契約

 本契約ありがとうございます。

 お金のほうは指定の銀行口座に振り込んでおきます。

 それでは翠星石を鞄の中に入れてください。

 千切れた腕も一緒にお願いします。

 そうすれば、翠星石は直ります。



 俺は急いで翠星石を鞄に入れた。

 しかし、鞄から翠星石が出てくる気配はない。

 やはり1日ぐらい待たなければいけないのだろうか?

 仕方ないので、風呂に入って寝ることにした。

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 16:16:06.91 ID:XPV6580R0
 夢の中で翠星石を虐待する自分を客観的に見る。

 やめろ! やめろよ! 翠星石に何をするんだ!

 やめてくれ……。やめてくれよ……。

「人間……起きる……ですぅ」

 闇の中から翠星石の声が聴こえる……。


「人間、はやく起きるですぅ!」

 はっと悪夢から覚めると天使がいた。

「はぁっ……はぁっ……翠星石……直ったんだな、良かった」

 嬉しさで涙が出そうになるのを堪える。

「うなされてましたよ、だいじょうぶで……」

 言い終わる前に俺は翠星石を抱きしめた。

 空間が切り取られ、時が止まったかのような感覚になる。

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 16:20:54.34 ID:XPV6580R0
「に、人間!」

「翠星石、翠星石!」

「もう、仕方ないですね、人間は甘えん坊さんですぅ」

 翠星石は俺の背中に手を回した。

 抱きしめていたから翠星石の顔は見えなかったが、きっと優しい顔をしていたんだろう。

 俺と翠星石は抱きしめ合った。

 これが地獄の始まりとも知らずに……。

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 17:31:07.70 ID:XPV6580R0
 桜がまだまだ散っていないある日の出来事。

「離しやがれですぅ!」

 ジタバタと暴れる翠星石を縄で縛って動けないようにした。

 そして翠星石を抱えて、お風呂場に行く。

 今日のバイトを始めるためだ。

「この縄をほどくですよ! いったいどうしたんですか!?」

 怒っている翠星石を無視して、作業に取り掛かる。

「悪ふざけはやめるですぅ! まったく、ホント人間は子供ですね」

 水道の蛇口にホースをつけて、翠星石のところまでホースの先端を持ってくる。

「何をしているんですか? 新しい遊びですか?」

 うつ伏せに倒れている翠星石の髪を掴んで起こす。

「痛っ、髪を引っ張るなですぅ! もっと優しく扱うですよ」

 準備は完了した。

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 17:35:10.33 ID:XPV6580R0
 まったくこちらを疑っていない翠星石。

 まだ、俺の冗談だと思っているんだろうな……。

「ごめんな、翠星石」

「へっ?」

 右拳を握り、翠星石のお腹をおもいきりアッパーぎみに殴る!

「がはっ!」

 翠星石の体がくの字に曲がり、目と口が大きく開かれる!

 その瞬間を見逃さず、翠星石の口にホースを無理やりねじ込んだ!

 ホースは喉の奥までたっしたようだ。

「ゴホッ」

 翠星石が苦しそうに咳き込むのを無視して、水道の蛇口をひねる。

 すると水がホースをつたって、翠星石の口へと流れて行った。

 自分が虐待されていることをやっと悟ったのだろう、こちらを睨みつけて、なんとか逃げ出そう
とバタバタ体を動かす。

 しかし縄で縛られているため、思い通りに体を動かせないようで抵抗が弱い。

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 17:39:22.29 ID:XPV6580R0
 左手で翠星石を押さえつけて、右手でホースを固定する。

 水はどんどん翠星石の中に入っていった。

 苦しいのだろう、水は翠星石の口や鼻から溢れ出し、目からは涙が流れている。

 さっきまで睨んでいた翠星石だったが、逃げられないとふんで、こちらを助けてくださいという
目で見ている、悲しい目だ。

「そんな目で見るな!」

 俺は大声をだして、翠星石を睨みつけた!

 翠星石が怯えて、目をそらす。

 そんなことをしている時も水は流れる、すると翠星石の穴という穴から水が漏れ出してきた。

 目、口、鼻、耳、水の流れは止められない。

 翠星石はぐったりして、まったく動かなくなってしまった。

 溺死した翠星石をそっと鞄の中に入れる。

 ゲームでもするかな……。

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 17:43:12.76 ID:XPV6580R0
 ゲームが中盤に差し掛かっていると、鞄がゴソゴソと動き始めた。

「ふぁー、よく寝たですぅ」

 翠星石が大きなあくびをして鞄から出てきた。

「翠星石おはよう、今日もきれいだね」

「な、何を言っているんですか! まったく、もう」

 顔を真赤にして、照れくさそうに翠星石は顔を隠した。

「はっは、本当のことだから仕方ないだろ」

「人間は本当に口がうまいですね」

 喜んいるのが手にとるように分かる笑顔だ。

 かわいい、俺の翠星石。

 虐待の記憶が消えて、何も覚えていない哀れな翠星石。

 愛しているよ翠星石。

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 17:47:11.87 ID:XPV6580R0
「翠星石、明日お花見に行こうか」

 学校が休みの日、俺は翠星石をお花見に誘った。

「お花見ってなんですか?」

「なんだ、お花見を知らないのか、お花見っていうのは桜を見ながら飯を食べたりすることだ」

「外に出かけるんですか?」

 翠星石は少し嬉しそうにしている。こっちに来てから、部屋を1歩も出ていないからだろう。

 しかし、ちょっと不安そうにしていることも感じ取れた。

「大丈夫だよ、もし何かあっても俺が守ってやるから」

「べ、別に翠星石は怖くないですよ! 守ってくれなくても大丈夫ですぅ」

 ちょっと驚いて強がる翠星石。

「じゃ、明日はお花見だな」

「ですぅ」

 翠星石は笑顔でそう答えた。

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 17:51:36.21 ID:XPV6580R0
 桜の木の下にビニールシートを敷いて、そこに座る。

 周りには多くの花見客がいた。

 だが、たまたまなのか、必然なのか、いい位置が開いていた。

 コンビニで買った弁当とジュースを取り出して並べる。

「桜きれいですぅ」

 翠星石が桜に見惚れている。

「そうだな……」

「ん? 人間、元気ないですよ、どうしたんですか?」

「いや、なんでもないよ、ご飯食べようか」

「そうですね」

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 17:55:07.74 ID:XPV6580R0
 俺と翠星石は弁当を食べ始めた。

「おえぇ!」

 翠星石がジュースを口に含んだ瞬間、それを吐いた。

「おい、何やってるんだよ!」

「こ、このジュース変な味がするですぅ!」

「そんなわけないだろ、さっきコンビニで買ったばかりなんだから」

「あ、頭がクラクラしてきたですぅ」

 顔が真赤になり、頭を両手で押さえ始める翠星石。

 ごめんな……。

 翠星石はそのまま倒れて、動かなくなった。

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 17:59:09.50 ID:XPV6580R0
 携帯を見て、指示を確認しながら翠星石を縄で縛る。

 縄の先端を木の枝に引っ掛けて、翠星石を吊るした。

 木に「ストレス解消にひと殴りどうぞ」と書かれた看板を貼り付けて、俺はその場を離れた。

 木陰に隠れた俺はバックからカメラを取り出し、翠星石にピントを合わせる。

 翠星石はいまだにぐったりとして目を覚まさない。

 自分が今どういう状況かも知らず、のんきに寝ている。

 すると、いかにも酔っ払ってますよといった感じのおっさんが歩いてきた。

 翠星石を見つめて不思議そうにしている。

 看板を見付けたおっさんは、その場で悩み始めた。

 結論が出たのか、おっさんは大きく振りかぶって翠星石の顔面を殴った。

「ゲブッ!」

 翠星石は殴られた方向に飛び、振り子の原理で戻ってくる。

「なにごとですか!?」

 殴られてやっと起きた翠星石は、今の状況が理解できずに混乱しているようだ。

 おっさんは、まだ振動している翠星石を無視して、その場を立ち去った。

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 18:03:11.31 ID:XPV6580R0
「うううっ! 動けないですぅ!」

 翠星石はその場から逃げるために、縄をほどこうとする。

 しかし、固く縛っているので逃げられない。

 自力救済をあきらめた翠星石は、

「マコト! マコト! どこに行ったんですか?」

 俺の名前を呼び始めた。

 そうこうしていると、何人かの酔っ払った若者がやってきた。

「おい、なんだこれ? ストレス解消にひと殴り?」

「どうした、どうした?」

 若者は10人ほどいて、いかにも頭が悪そうな連中だ。

「人形? 何これフリフリだぜ」

「女の子の人形じゃん、女の子殴るとか興奮しちゃう」

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 18:07:15.70 ID:XPV6580R0
 集団になると気が大きくなるのが人間だ。さらに酒も入っているようで、テンションも上がって
いる。

 そういう奴らに、

「人間ども、あっち行けですぅ! 翠星石に関わるなですぅ!」

 なんてことを言ったら、逆効果になることは必然だろう。

「ああ? なんだこいつ、うぜぇ」

「人形の分際で人間様に何を言っちゃってるんですか!?」

 人形がしゃべっていることは、酔っ払っているから不思議に思わないのだろう。

 いや、思えよ。

「おめぇら息が臭ぇですぅ、寄るなですぅ」

 そう翠星石が言った瞬間、1人の男が怒りだした。

「うぜぇんだよクズが!」

 ボクシングスタイルから右ストレートを繰り出すと、翠星石が避けられるはずもなく、顔面に拳
が突き刺さった。

「デブゥ!」

 また翠星石が殴られた方向に飛んだ、そして戻ってくる。

79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 18:11:08.66 ID:XPV6580R0
「みんなやっちまおうぜ!」

「おう!」

 翠星石を中心に輪になった若者たちは、まるでバレーでもするかのように翠星石を殴り飛ばし、
飛んだ方向にいる人間がまた殴り飛ばす。

「おら!」

「ぐべっ!」

「死ね!」

「がはっ!」

「はっはっは!」

「ゴホッ!」

 ストレートだけでなく、フックやアッパーを入れて軌道を修正し、全員が殴れるようにしている
みたいだ。

 狂気が場を支配し、無垢な翠星石はそれに飲まれて、何もすることが出来ない。

 俺のカメラを握る手が汗ばんでいることに気付いた……。

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 18:15:46.08 ID:XPV6580R0
 殴り疲れたのか、はたまた飽きたのか、殴るのをやめた若者たちは、翠星石のことをニヤニヤと
見ていた。

 翠星石はというと全身を殴られ、ぐったりとして生気がない。

 服は土がつき、ボロボロで汚い、あの美しい翠星石はいなくなってしまった。

「もう……やめるですぅ……。お願いだからっ……やめてほしいですぅ……」

 完全に屈服したのだろう、小さな声で翠星石はそうつぶやいた。

 若者たちはそれでも満足しないのか、何かを話しあっている。

「マ……コト……マコト……助けてっ……助け……てっ」

 翠星石がまた俺に助けを求める。

 この事態を作り出したのが俺とも知らずに……。

 若者たちは次の行動に出る。

「やめねぇよ、おまえが悪いんだ」

 若者の1人が、木に吊るされている縄を持つと、翠星石の頭の上からビールを掛け始めた。

「ぎゃあああ! な、なんですかこれ!?」

83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 18:19:07.44 ID:XPV6580R0
 酒をかけられてビショビショになった翠星石に、さらなる追い打ちを掛ける。

 若者たちがいっせいにツバを翠星石にかけはじめたのだ。

「ひぃっ! 汚いからやめるですぅ! おえぇ! く、臭いっ!」

 1人の若者のツバが翠星石の鼻に当たって、もろに臭いをかいでしまったようだ。

 ツバをかけるなんて子供かよ。

「おらおら、どけ!」

 ツバを吐くのを避けて、1人の若者がズボンのファスナーを下ろす。

 そこから取り出したナニを翠星石に向ける。

「そ、そんな汚いもの見せるなですぅ!」

「くらえっ! クズミドリ!」

 若者の小便が翠星石の顔に直撃した。

「ぎゃあああああっ!」

 お酒を飲んで黄色くなった小便は、翠星石の顔をつたって、体の方にも侵食していく。

 ずいぶん飲んだのか、なかなか途切れる気配がない。

85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 18:23:07.91 ID:XPV6580R0
 まわりは、小便を顔にかけられる翠星石を見て大爆笑している。

 その輪の中にポツンといる翠星石は、何もかもに絶望した目をしていた。

 小便が終わると、若者たちは翠星石の口にゴミを入れて、去っていった。

 口にゴミを突っ込まれて、木に縄で吊るされながら涙を流している翠星石は、醜いとしか表現で
きなかった。

 俺はカメラをしまって、木陰から出る。

 翠星石に近付きながら歩いて行くと、こちらに気付いたようで、俺を少し睨みながらゴミを吐き
出した。

「マコト、どこに行っていたんですか? 翠星石は、人間にいじめられてたんですよ。助けてくれ
るって言ったじゃないですか! あれは嘘だったんですか!?」

「いじめるって、どんなふうにされたんだ?」

 俺は白々しくそう答えた。

88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 18:27:37.00 ID:XPV6580R0
「どんなふうって、人間が翠星石を殴ったんですぅ、翠星石は何も悪くないのに!」

「殴った? こういうふうにか?」

「へっ?」

 若者たちに翠星石がいじめられているのを見ていた時、相当のストレスが溜まっていた。

 それを解消すべく、拳に全てのストレスを乗せて、翠星石をおもいきり殴りつけた!

「デブゥ!」

 翠星石は殴られた方向に吹っ飛び、後ろにあった木に頭をぶつけた。

 翠星石の目から光が消えて、そのまま動かなくなってしまった。

 俺は翠星石を縛っている縄をといて、それを鞄に入れた。

 帰るか……。

90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 18:31:17.18 ID:XPV6580R0
 花見が終わってからも、翠星石への虐待は毎日のように続く。

 そのたびに翠星石を鞄に入れて、壊れた箇所を直し、記憶を改ざんする。

 そして、金も貯まってきた。

「こんなに金があるなんて……」

 夏休み前のある日、バイト代のことをすっかり忘れていた俺は、久々に銀行へ行ってみた。

 残高を確認すると、今まで見たことの無いような金額が表示されていた。

「翠星石に何か買ってやるか……」

 せめてのもの罪滅ぼしと言えば聞こえはいいが、ただの自己満足だ。

 適当な金額を引き出して銀行をあとにする。

91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 18:35:07.10 ID:XPV6580R0
 家に帰ると、翠星石がトコトコと走ってやってきた。

「お帰りですぅ」

「ただいま」

 俺はテーブルの上に、買ってきたケーキと料理を置いた。

「これは何ですか?」

 翠星石が期待した目をしながら聞いてくる。

「ケーキだよ。あと、オードブルだ」

「ケーキ! 何かいいことでもあったのですか?」

「そういうわけじゃないよ。ちょっとお金が入ったんだ」

「そうですか、ケーキが食べられるなら何でもいいですぅ」

 喜んでいる翠星石の声に心を痛めながら、俺は食事の用意をした。

94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 18:39:08.34 ID:XPV6580R0
 料理を食べたあと、俺と翠星石はお待ちかねのケーキタイムに突入した。

「はい、翠星石のケーキだよ」

「美味しそうですぅ」

 いつにも増して、綺麗な目をした翠星石にケーキをわたす。

 翠星石はフォークでケーキを小さく切り取り、それを口に含むと幸せそうな顔をした。

「なあ翠星石、おまえにプレゼントがあるんだ」

「プレゼント?」

「はい、携帯電話だ」

「それは人間がよく使っている、遠くの人間とも話せる機械じゃねぇですか」

「そうだ、これで俺が学校とかに行ってても話せるだろ」

 翠星石に携帯電話をわたす。

 翠星石は使い方が分からないようで、携帯電話を不思議そうに見ている。

「電話が掛かってきたら、このボタンを押すんだ」

 翠星石に携帯電話の使い方を教える。

95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 18:43:06.95 ID:XPV6580R0
「分かったか?」

「それぐらい言われなくても知ってたですぅ!」

「はっは、そうか、それじゃあ今から実際にかけてみるから」

 俺は翠星石から少し離れて、自分の携帯電話から、あらかじめ登録しておいた翠星石の番号を押
した。

 翠星石の携帯電話から着信音が鳴る。

「こ、ここを押せばいいんですよね」

 翠星石がぎこちなく通話ボタンを押した。

「翠星石、聴こえるか?」

「き、聴こえるですぅ」

 俺は携帯電話を切ると翠星石に近付いた。

「よし、次は翠星石からかけてみよう、ここを押してからこれを押せばいいんだ」

 翠星石は俺の話しをしっかりと聞いてから、

「だから言われなくても分かってるですぅ、本当に人間は心配症ですね」

 その言葉を聞いて俺は翠星石からまた少し離れた。

97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 18:47:19.71 ID:XPV6580R0
 翠星石が携帯電話を両手で持って、焦りながらそれを操作している。

 すると俺の携帯電話に、翠星石の電話番号から着信がきた。

「翠星石ですぅ、聴こえますか?」

「ああ、聴こえるよ」

「翠星石も聴こえるですぅ」

「もしさ、家にいて寂しくなったら、掛けてきてもいいからな」

「べ、別に翠星石は寂しくなんかないですぅ!」

「まえに寂しいって言っていたじゃないかよ」

「まあ、でもこれはありがたくもらっておくですぅ」

98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 18:50:07.39 ID:XPV6580R0
「……翠星石、愛しているよ」

「な、何を言って! に、人間は恥ずかしいやつですね、いきなり何ですか!?」

 携帯電話から動揺した声が聴こえてくる。

「突然言いたくなったんだ」

「まったく、人間は仕方の無い奴ですね」

「じゃあ、通話を切るな」

「分かったですぅ」

「…………」

「…………」

「…………」

「は、早くきるですよ!」

「はっはっは、ちょっとやってみたかったんだよ」

 俺は携帯電話を切って、翠星石の所に向かう。

 そこには顔を真赤にした翠星石がいた。

99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 18:55:12.58 ID:XPV6580R0
 夏休みが始まる3日前、俺はふと今まであえて見なかった、翠星石が俺に虐待されている動画を
流しているサイトを見てみた。

 サイトは有料会員制で、俺は事前に発行されていたIDでサイトにログインした。

 動画は人気ランキングみたいなものがあり、花見の時にボコボコにしたのが人気のようだ。

 他にも虐待されている人形があるようで、真紅や金糸雀と書かれていた。

 そうこうしていると、メールが届いた。


 件名:夏休み

 夏休みが始まってからの10日間は特別企画として、虐待された記憶を消さないことにします。

 10日の間だけ、翠星石は虐待された記憶を持ち続けます。

 もちろん10日を過ぎれば、記憶から消去しますが。

 よろしくお願いします。


 前に夏休みの期間を聞いてきたのは、こういう事だったのか……。

 翠星石と楽しい夏休みを過ごそうと思っていた俺に、早くも暗雲が立ち込めてきた。

「どうすっかなぁ」

 翠星石にとって、奈落の夏休みが始まろうとしている。

100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 19:00:13.86 ID:XPV6580R0
 夏休み1日目

「人間、誰か来ましたですよ」

 朝、翠星石がテレビを見ている俺に話しかけてきた。

「ああ、行くよ」

 俺は翠星石を横目に玄関に向かった。

 玄関には宅配のオヤジがいて、大きいダンボールに詰まった荷物を受け取った。

 荷物を抱えて部屋に戻ると、翠星石が何事かと寄ってきた。

「何ですかそれは?」

「ローゼンメイデン第6ドール雛苺だよ」

 そう言いながら、ダンボールから鞄を取り出した。

「ヒナイチゴ? うっう、何か思い出しそうですぅ」

 翠星石が両手で頭を抱えながら、苦しそうにしている。

「大丈夫か?」

「だ、大丈夫ですぅ、心配無用ですぅ」

 無理をしていると丸わかりの表情で強がる翠星石。

103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 19:05:39.31 ID:XPV6580R0
「そこで休んでろよ」

 俺は翠星石を無理やり座らせた。

「うぅ、面目ないですぅ」

 休んでいる翠星石を置いて、俺は作業に戻る。

 鞄を開けてみると、そこには桃色を基調としたベビードールのように活動的な服装で、頭に大き
な桃色のリボンを付けている人形が眠っていた。

 髪型は金髪で内巻きの縦ロールだ。

 俺は鞄の中にあったゼンマイを、雛苺の背中についている穴に差し込んで回した。

 すると雛苺のまぶたが開き、黄緑の色をした瞳と目が合った。

「うゆ? ここはどこなの?」

 雛苺は顔を少し斜めに傾けて言った。

「ここは君の家だよ、今日からここに住むんだ」

 俺は雛苺に顔を近付けてそう言った。

104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 19:10:16.04 ID:XPV6580R0
「ヒナ、何もおぼえてないの……」

「俺の名前はマコトだ。よろしく」

 そう言って、戸惑っている雛苺の手を取り握手をした。

「よ、よろしくなの」

 雛苺は少し怯えていたが、特に問題はない。

 すぐ馴染むように、プログラムされているだろう。

 この人形も虐待のための道具だ。

「人間、それがヒナイチゴですか?」

 座っている翠星石が、雛苺を指差して言った。

「ああ、翠星石の妹にあたるらしい」

「翠星石の妹……うぅ、やぱっり思い出せないですぅ」

 しょんぼりしながら翠星石は下を向いた。

105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 19:15:27.69 ID:XPV6580R0
「スイセイセキ? ヒナのお姉さんなの?」

 雛苺は翠星石に話しかけた。

「そうみたいですぅ、雛苺? ですか。翠星石を姉として慕うんですよ」

 翠星石は胸を張って、高飛車に宣言をした。

「分かったの、翠星石? はお姉さんなの!」

 翠星石と雛苺は笑顔を見せていた。

「おぉい、晩飯ができたぞ」

 そう言うと、翠星石と雛苺は顔を見合わせてこっちに寄ってきた。

106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 19:20:08.93 ID:XPV6580R0
 夏休み2日目


 翠星石と雛苺が話しているのを横目に、テレビを見ていた。

「翠星石はこの家の先輩で姉でもあるですぅ、ちゃんと敬うですよ」

「はいなのぉ!」

 威張っている翠星石と無邪気に答える雛苺。

「おかずも1品よこすですよ」

「それはいやなのぉ!」

「いいからよこすです!」

「絶対いやなの!」

「おめぇ、さっき翠星石を敬うと言ったじゃないですか!」

「うゆ、翠星石いじわるなの……」

「もういいですぅ! 今日からおまえはチビ苺ですぅ!」

「ヒナ、チビじゃないもん!」

「うううぅ!」

 と二人が睨み合っていると、ピンポーンとチャイムが鳴った。

107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 19:25:08.21 ID:XPV6580R0
 俺は喧嘩している二人をおいて、玄関に向かった。

 宅配業者から荷物を受け取って、部屋に戻る。

「まったく、チビ苺は翠星石の妹とは思えないほどだめですぅ」

 どうやら、まだ喧嘩がつづいているようだ。

「雛苺、転居祝いだ、これ食べな」

 さっきの荷物から中身を取り出して、雛苺の前に置いた。

「うゆ? これは何なの?」

「美味しいぜ、ほれガブッと」

 雛苺は恐る恐る、それに口を付けた。

「うにゅ~、美味しいの!」

 雛苺の顔がパっと笑顔になった。

109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 19:28:48.67 ID:XPV6580R0
「それは苺大福って言うんだ」

「うにゅ~ってなるから、うにゅ~なのぉ」

 と嬉しそうに、うにゅ~こと苺大福を頬張る雛苺、それを見ていた翠星石が怒りだした。

「人間! チビ苺ばっかりずるいですぅ! 翠星石の分はないんですか!?」

「ごめん、翠星石の分はないんだ」

「使えない人間ですぅ! チビ苺、それをちょっとよこすですぅ!」

「いやなの! これはヒナのなの!」

 雛苺の服の袖を強引に引っ張り、うにゅ~こと苺大福を奪い取ろうとする翠星石だったが、

「翠星石! これは雛苺のために買ってやったんだ! お前のじゃない!」

 と俺が怒鳴ると、雛苺から離れてそっぽを向いた。

「そ、そんなに怒ることないじゃねえですか……」

「翠星石、明日ケーキを買ってやるから、機嫌を直せ」

「うっう、絶対ですよ!」

 翠星石が目に涙をためながら言った。

111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 19:31:09.32 ID:XPV6580R0
 夏休み3日目


 ケーキを買って、スーパーを出ると、翠星石から電話が掛かってきた。

「もしもし、翠星石ですぅ、ケーキを買えましたか?」

「うん、もうすぐ帰るよ」

「早く帰ってくるですぅ、待ってるですよ」

 すると、電話の向こう側から雛苺の声がしてきた。

「うゆ? これは何なの?」

「これは携帯電話と言って、遠くの人間とも話せる機械ですぅ、翠星石と人間の絆ですぅ」

「すごいのぉ! ヒナも貸してほしいのぉ!」

「ダメですぅ! これは翠星石専用ですぅ」

「ヒナもほしいの!」

「わがままなチビ苺ですね! それじゃ人間、気をつけて帰ってくるんですよ」

「うん」

 そう返事を返すと電話が切れた。

112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 19:32:51.83 ID:XPV6580R0
 ケーキを買って家に帰ると、翠星石と雛苺が玄関で出迎えてくれた。

「お帰りですぅ」

「お帰りなさいなの!」

「ただいま」

 やっぱり、帰ったら誰かがいるっていうのは、何かいいなぁ。

「人間、ケーキは翠星石の分だけ、買ってきたんですよね!?」

「違うの! ヒナの分も買ってきてるのよ!」

 翠星石と雛苺が噛み付きそうな勢いでこちらを見る。

「雛苺の分もちゃんと買ってきてるよ」

 そう笑顔で言ってやった。

「やっぱりそうなの! マコト大好き!」

 雛苺は俺の足にまとわりついてきた。

「昨日はチビ苺の分だけだったじゃないですか! 不公平ですぅ!」

 翠星石は地団駄を踏みながら、不満そうに怒りだした!

113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 19:33:21.76 ID:XPV6580R0
ごはん食べてきます。
再開はちょっと遅れます。

118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 20:56:49.56 ID:XPV6580R0
「昨日のは雛苺の転居祝いだったからな、仕方ないだろ。そんなこと言ってると翠星石にはケーキ
やらないぞ!」

「うっ、仕方ねぇですぅ、チビ苺にもちょっとは分けてやるですぅ」

 翠星石はそう強がりながら胸を張った。

 俺は、足にまとわりついている雛苺に手を伸ばして、抱っこをした。

「うゆ、高いのぉ!」

「なっ!」

 嬉しそうにはしゃぐ雛苺と驚く翠星石。

「じゃ、行こうか翠星石」

 俺は翠星石を見下ろしながら、そう即した。

「そ、そうですね、早く行くですぅ」

 雛苺を見上げて寂しそうに答える翠星石。

「うゆ?」

 何も分かってない雛苺を抱えて歩き始めた。

「あっ……」

 翠星石は一瞬立ち止まり、俺の後ろをとぼとぼと歩き始めた。

121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 21:01:23.03 ID:XPV6580R0
「おやつっ、いちごっ、いただきまーすなのー」

 いちごの乗ったケーキを前に、喜ぶ雛苺と少し落ち込んでいる翠星石。

 俺は雛苺と翠星石を横目に見ながら、少し離れてテレビを見ている。

「チビ苺、あれは何ですか?」

 翠星石が玄関のほうを指差して、雛苺にそこを見るように即す。

「うゆ? 何かあるの?」

 雛苺は玄関の方を向いて、不思議そうにしている。

 すると、その瞬間に翠星石が雛苺のケーキに乗っている苺をフォークで刺し、それを口まで持っ
て行った。

「気のせいだったようですぅ、気にするなですぅ」

 翠星石が何事も無かったかのように振舞った。

122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 21:05:08.34 ID:XPV6580R0
「気のせいなら、いいの~」

 雛苺がお楽しみのケーキを食べようと、それを見た瞬間!

「びゃあぁあぁあぁあ!」

 大泣きする雛苺と口笛を吹いている翠星石。

「どうした? 雛苺」

 俺はテレビを見るのをやめて、雛苺と翠星石のところに向かった。

「ぼゃっ……ヒナ……いちごがっ……ばっ」

 雛苺は目に涙を貯めて、もはや何を言ってるか分からない。

「雛苺ったらヒドイですぅ」

 すると、わざとらしい翠星石の声が聴こえてきた。

123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 21:09:07.86 ID:XPV6580R0
「自分の苺を食べちゃったからって、翠星石の苺をよこせと暴れるですぅ」

「雛苺、そうなのか?」

「ちゃ……あぅ~~~」

「そんなに言うなら、この意地汚い餓鬼に苺をくれてやるですぅ~」

 翠星石は泣きながらフォークで苺を刺し、雛苺に差し出した。

「そら持ってけですぅ」

 雛苺が何かを訴えるようにこちらを見ている。

 それを見て、一瞬翠星石がニヤリとした。

 そろそろいいかな……。

124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 21:13:21.34 ID:XPV6580R0
「いい加減にしろ! 翠星石っ!」

 翠星石がびくっとなって、空気がピリピリし始めた。

「俺はずっと見ていたんだ、お前が雛苺の苺を盗むところを!」

「な、何を言ってるんですか!? 翠星石はそんなことしてないですぅ……あっ!」

 俺は翠星石から苺の刺さったフォークを取り上げて、雛苺のケーキの上に苺を置いてあげた。

「あ、ありがとうなの……」

 雛苺がちょっと怖がりながらお礼を言った。

「ああっ、翠星石の苺がぁ……」

「おまえのじゃない! 雛苺に謝れ翠星石!」

「翠星石は何もしてないですぅ! 何故謝らなきゃダメなんですか!?」

「まだ言うか! 翠星石!」

 俺はそう言って、翠星石のケーキを取り上げた。

「す、翠星石のケーキを返すですぅ!」

 翠星石がこちらを睨みながら言った。

125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 21:17:13.80 ID:XPV6580R0
「謝るまで返さないぞ! 謝れ!」

 俺も睨み返すと、翠星石は目を伏せた。

「うっう、チビ苺、すまんですぅ……おめぇの苺を取ったのは翠星石ですぅ」

 そう言ったのを聞いて、俺は皿からケーキを鷲掴みし、翠星石のケーキを一気に貪り食べた。

「あぁあぁあ! 翠星石のケーキ!」

 翠星石は驚き、あたふたする。

「行くぞ! 雛苺!」

 俺は雛苺を抱えると玄関に向かった。

「うゆっ! ヒナ、ケーキ食べてないのっ」

「外で買ってやるから、我慢しろ」

 靴を履いて玄関から出ようとすると、

「なんでケーキを食べたんですか!? 翠星石はちゃんと謝ったのに!」

「反省しろ!」

 ガシャン! と強く扉を閉めた。

126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 21:21:22.23 ID:XPV6580R0
 翠星石は困っていた。

 マコトが出て行って、ケーキが無くなり、お腹が空いたのだ。

「たしかに翠星石も悪かったですが、元凶は翠星石を敬わないチビ苺ですぅ」

 悪態をつきながら椅子に座っていると、ぐーとお腹が鳴った。

「うっう、人間も人間ですよ、チビ苺が現れてからというもの、翠星石をないがしろにしている気
がするですぅ」

 すると翠星石の目に、雛苺が残していったケーキが飛び込んできた。

 それと同時に携帯電話も目に入る、人間との絆……。

「け、ケーキ……ダメですぅ、人間に反省しろと言われているのに、こんなのを食べたら……」

 しかし、時間が経つにつれて、翠星石の決心は揺らぐ。

「人間とチビ苺、なかなか帰ってこないですぅ、もう2時間は経ってるですよ」

 朝から何も食べていない翠星石のお腹は、もう我慢の限界を突破していた。

 それでも翠星石はマコトとの約束を守るために、懸命にがまんする。

127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 21:25:32.71 ID:XPV6580R0
「早く帰ってくるですぅ……」

 ぐー、翠星石のお腹が食事をよこせと催促する。

 翠星石はテーブルに突っ伏して動かない。

「もう限界ですぅ! こんなに翠星石を待たせる人間が悪いんですぅ!」

 時間が経って、普通に見たら美味しくなさそうなケーキだが、空腹の翠星石には砂漠で見つけた
オアシスのように見えた。

 フォークを苺に突き刺して、それを口に運ぶ。

 すると、全身がそれを欲しがっていたかのような感覚に陥り、罪悪感を感じることなく、ケーキ
を貪り食った。

 一瞬にして、皿の上にあったはずのケーキは消え去ったのであった。

「翠星石、ただいま」

128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 21:29:25.11 ID:XPV6580R0
 俺が家に帰ると、翠星石はビクビクしていた。

「ただいまなの~」

 雛苺は俺に抱えられたまま、手を上げて言った。

 テーブルのところに行って、翠星石に話しかける。

「どうした? 翠星石」

「す、すまんですぅ、翠星石は朝から何も食べていなかったから……」

 そう言うと、翠星石は何も乗っていない皿を見た。

「…………」

 俺は、あえて何も言わなかった。

 翠星石を見下した目で見つめるだけだ。

129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 21:33:13.59 ID:XPV6580R0
「チビ苺のケーキを食べてしまったですぅ……」

「あっそ」

 俺は翠星石を一瞥し、雛苺を連れてテレビの前に座った。

「よぉし雛苺、テレビ見ようか」

「見るのぉ~」

 翠星石が悲しい目をしながら、こちらを羨ましそうに見ているのが分かる。

 しかし、俺はそれに構うことなく雛苺と遊んだ。

131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 21:37:13.58 ID:XPV6580R0
 夏休み4日目


 朝食の時間、パンと目玉焼きを作って、テーブルに持っていく。

 雛苺が座っている所に、それが乗っている皿を置く。

「ありがとうなのぉ」

 もう1皿を自分の前に置いた後、床に腰を掛けた。

「人間! 翠星石の分がないですよ!」

「あぁ、忘れてた」

 そう言って、俺は鯖の缶詰を翠星石の前に置いた。

「いただきますなのぉ」

「いただきます」

 雛苺と俺が食べ始めようとした瞬間、

「こ、これはなんですか!?」

 翠星石が身を乗り出して怒り始めた。

「…………」

 しかし、俺はそれを無視する。

132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 21:42:15.03 ID:XPV6580R0
「んー! 開かないですぅ」

 翠星石は缶詰を開けようとするが、缶切りがないので開かない。

 そして、この家にそんなものはない。

「冗談はこれくらいにして、早く翠星石の分を出すですぅ」

「…………」

「昨日のことをまだ怒っているんですか? 根に持ちすぎですよ!」

「…………」

「無視するなですぅ! 昨日のことなら謝るですぅ!」

「…………」

「人間……頼むですぅ、返事をしてほしいですぅ……」

「……翠星石」

 そう声をかけた瞬間、翠星石の顔がパッと明るくなった。

134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 21:43:36.95 ID:XPV6580R0
「な、なんですか!?」

「うるさい、静かにしろ」

「……すまんですぅ」

 翠星石はまるでオセロのように、明るい表情が消えて暗くなった。

135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 21:47:20.10 ID:XPV6580R0
 翠星石は考えていた。たしかに、今回したことは翠星石が悪い。

 でも、チビ苺ばかりかまう人間にも非はあると。

 人間とチビ苺は、買い物に行くと言って出かけた。

 何も食べていない翠星石は、自然と冷蔵庫の前に立っていた。

「お腹が空いたですぅ、でも……」

 冷蔵庫を漁れば食べ物はあるだろう、でも、ここで食べてしまったら昨日の二の舞だ。

「良いことを思いついたですぅ!」

 翠星石は冷蔵庫の中から材料を取り出し、料理をし始めた。


 お腹の空き具合と比例して、時間が進む。

 しかし、マコトは帰ってこない。

「……出来たですぅ」

 そう言った翠星石の手元には、お皿に乗ったスコーンがあった。

「これを食べれば、人間もきっと許してくれるはずですぅ」

 翠星石は淡い希望を抱いて、マコトの帰りを待った。

137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 21:51:27.13 ID:XPV6580R0
「ただいま」

「ただいまなのぉ」

 買い物から帰ってくると、部屋は甘い香りが充満していた。

「……おかえりですぅ」

 翠星石がお皿を持って、玄関にやってきた。

「スコーンを焼いたですぅ、これを食べて機嫌を直すですぅ!」

 不安を隠して、明るく接しようとする翠星石。

 しかし、その想いは届かない。

 俺は翠星石の持っている皿に手を伸ばして、それをなぎ払った

「あぁっ!」

 翠星石の手からこぼれ落ちる皿とスコーン。皿とスコーンは地面に落ちた。

138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 21:55:31.48 ID:XPV6580R0
「何をするんですか!」

「行くぞ雛苺」

「……うん」

 怒る翠星石を無視して歩き出す。

 すると足の下で「グシャッ」という音がした。スコーンを踏み潰した音だ。

「いやぁっ! うっうう……人間に喜んでもらおうと……一生懸命……作ったのに……仲直り出来
ると……思ったのに……こんな……粉々になって……」

 翠星石は泣きながらスコーンを拾っている。

 それを一瞥して、テレビを見始めた。

139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 21:58:14.54 ID:XPV6580R0
 それからも俺は翠星石を無視し続けた。

 夜になっても食事は缶詰しかあたえず、自分と雛苺の分しか作らなかった。

「じゃあ、そろそろ寝るか、おやすみ雛苺」

「おやすみなのぉ」

 そう言って雛苺はカバンの中に入っていった。

「お腹が空いたですぅ」

 そう言って翠星石もカバンの中に入っていった。

165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 00:46:19.77 ID:p7Ku6tbO0 [2/57]
 夏休み5日目

 この日も翠星石に食事をあたえなかった。

 俺と雛苺を羨ましそうに眺めながら、暗い顔をしている。

 そんな翠星石を見ていると無性に腹がたった。

166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 00:49:20.55 ID:p7Ku6tbO0 [3/57]
 夏休み7日目

 6日目と今日も食事あたえずに放置していると、翠星石は床でうつ伏せに倒れていた。

「雛苺、掃除の時間だ、ゴミ袋もってきてくれ」

「はいなのぉ」

 雛苺はバタバタと台所に駆けて行った。

「おい翠星石、掃除の邪魔だ、どけ」

「…………」

 しかし、返事はない、相当空腹なんだろう。

 俺が翠星石の首根っこを摘みあげると、ようやく話しだした。

「は、離すですぅ……」

 弱々しい声だ。

 俺はその要望に応えるためるに、翠星石を後ろ向きに放り投げた。

「ぎゃっ!」

 翠星石の小さな悲鳴と床に落ちる音が聴こえた。

169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 00:55:12.63 ID:p7Ku6tbO0 [4/57]
「うっう、もうじゅうぶんじゃないですか?」

 背中の方から、翠星石の涙声が耳に届く。

 俺は振り返って翠星石を見た。

 涙と鼻水を垂らす醜い顔をしていた。

「雛苺の苺を食べたこと、それにケーキを勝手に食べたこと、反省しています、申し訳なかったで
す。だから、もう翠星石に冷たくするのはやめてください」

 翠星石は語尾にいつもの口癖を付けず、精一杯の敬語を使いながら頭を下げた。

 誇り高く気高いローゼンメイデンにとって、屈辱以外の何でもないだろう。

「……翠星石」

 俺は翠星石の目を見つめた。

「……人間」

 翠星石も見つめ返す。

「汚ねぇ面を見せてんじゃねぇよ!」

「!?」

 俺がそう暴言を吐くと翠星石は表情を崩した。

172 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 01:00:16.41 ID:p7Ku6tbO0 [5/57]
 俺はすぐさま、その顔に向かって足を蹴り出した!

「ぶぎゃっ!」

 虚を突かれた翠星石はどうすることもできず、俺の足が顔面に突き刺ささると、蹴られた勢いで
仰向けに倒れた!

 翠星石を上から見下ろすと、涙が出続けている。目を合わせると睨み返された。

「いいか、翠星石! お前は卑しい人形だ! これから俺がおまえを矯正してやる! その性悪な心をな! 覚悟しろ、クソミドリ!」

 俺はそう宣言すると足を上げて、翠星石のお腹に向かって振り下ろした!

「ガハッ!」

 翠星石のお腹に足が直撃する! 体がくの字に曲がり、口が大きく開くと唾液が飛んだ。

「マコト、ゴミ袋を持ってきたの」

 雛苺が台所からゴミ袋を持ってきてくれた。

「雛苺、ありがとう」

 俺はゴミ袋を受け取って、雛苺に微笑みながら頭を撫でてあげた。

173 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 01:05:12.28 ID:p7Ku6tbO0 [6/57]
「ヒナ、ほめられたのぉ、うれしいのぉ」

 照れくさそうに微笑んでいる雛苺と悲しそうに泣いている翠星石。

 二人を見比べて、翠星石のほうを向いた。

 翠星石の胸ぐらに手を伸ばして掴み上げる。

「……ですぅ」

 消え入りそうな声が聴こえる。俺はそれを無視して、ゴミ袋の中に翠星石を放り込んだ。

「掃除の時間終わり」

 ゴミ袋を縛って部屋の隅にそれを置いた。

174 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 01:07:08.53 ID:p7Ku6tbO0 [7/57]
というわけで、寝ます。
少なくて、すいません。
明日の朝か昼に再開できればと思います。

201 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 14:32:00.55 ID:p7Ku6tbO0 [8/57]
 夏休み8日目


 朝起きると翠星石がゴミ袋から出て、床に倒れていた。

「おいゴミ、誰が出ていいって言ったよ」

「……ですぅ」

 こちらを悲しい表情で見てくるのを無視して、ゴミ袋に再び翠星石を入れた。

 そして掃除機を持ってくると、その中にあるゴミをゴミ袋に流し込んだ。

「ごっほごっほ」

 翠星石が咳き込んだ。流し込まれたゴミは埃や髪の毛など、いろいろな物が入っていた。

「……臭いですぅ」

 相変わらず弱々しい声だ。その声を聴くだけで腹が立つ。

 さらに台所から、生ごみが入っている袋を持ってくると、それも翠星石の入っているゴミ袋に放
り込んだ

 魚の骨や腐った肉などを放り込まれて、てっきり臭いとか、汚いとか、文句を言うのかと思った
が、翠星石は黙って何も言わなかった。

「その臭い中にしばらくいろ!」

 翠星石と大量のゴミが入っているゴミ袋の入り口を縛って、部屋の隅に置いた。

202 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 14:35:11.07 ID:p7Ku6tbO0 [9/57]
 あれから数時間が経過した。

 翠星石の入っているゴミ袋を開けると、嫌な温かさが伴なった気分が悪くなる臭いがしてきた。

 中を覗き込むと、埃を被った翠星石と紙くずや髪の毛などが入っている。

 しかし、おかしいことに、さっき入れたはずの生ごみがほとんどないのだ。

 翠星石は目を開けてこちらを見ている。だが、今までのような怒りや悲しみの表情ではなく、何
かを隠しいるような感じだ。よく見ると、歯を食いしばって、唇を強く閉じているように見える。

「翠星石、何を隠している?」

 そう、声を強ばらせながら言ったが、翠星石は首を振るだけで何も答えない。

「!?」

 俺は発見してしまった! 翠星石の口元に肉のカスが付着しているのを……。

「まさか翠星石、おまえ……!」

「翠星石は何もしていないですぅ!」

 そう言った瞬間、翠星石の口から公害なみの悪臭が漂ってきた!

「臭っ!」

 俺は思わず顔を逸らした!

204 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 14:40:41.11 ID:p7Ku6tbO0 [10/57]
「……おまえ、生ゴミを食ったのか!?」

 翠星石は目を大きく見開き、観念したのか、そのまま頷いた。

「仕方ないじゃねぇですか……。おめぇが食べさせないからですぅ! あのままじゃ、翠星石は死
んでしまうところだったんですよ!」

 目に涙をためて叫ぶ翠星石……。そして、やっぱり息は臭かった。

「生ゴミは美味しかったか?」

 俺は暗く呟いた。

「美味しいわけねえじゃないですか! 翠星石も生きるのに必死なんですぅ!」

 そう言った翠星石の顔は涙と鼻水とヨダレで、見るも無残なものになっていた。

「このクソミドリがぁあああああああっ!」

 絶叫が部屋中をこだました!

 頭を掴み上げて、翠星石をゴミ袋から引っ張り出し、頭を持ったまま床に顔面から叩きつけた!

「ぐべっぁあああ!」

 翠星石は汚い叫び声をあげて、ぴくぴくしているものの、そのまま動かなくなってしまった。

 頭から手を離し、翠星石を見下ろす。

「翠星石、翠星石を汚した罪、償ってもらうぞ!」

207 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 14:45:22.42 ID:p7Ku6tbO0 [11/57]
 夏休み9日目


「翠星石、起きろ!」

 翠星石が動かなくなってから、1日が経過した。

 その間に、翠星石の腕を縄で後ろ手に縛り、太ももと足を縛って、部屋の片隅で正座の格好をさ
せた。

 しかし、そういうことをしてもまったく目覚めない翠星石に、業を煮やした俺は大声を出した。

「こらっ! 起きろっ!」

 それでも翠星石は起きない。目を瞑って無視を決め込んでいる。

 仕方ないので、虐待を実行するしかない。

 吸血鬼の胸に突き刺さっていそうな杭を2本と木のトンカチを手に持ち、翠星石の後ろに座る。

 杭の先端を翠星石の右足裏に向けてセットし、勢い良くトンカチで杭の上を叩いた!

 すると杭は、翠星石の足裏に突き刺さりめり込んでいった!

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 目と口を大きく広げ、醜い顔をした翠星石が叫びながら目覚めた!

208 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 14:50:19.70 ID:p7Ku6tbO0 [12/57]
「やっと起きたか、クソミドリ!」

 完全に翠星石と目が合った、1日ぶりの再開だ。

「に、にん……ぎっな、ずいぜいぜひの足がぁぁぁぁぁぁ!」

 翠星石の顔は苦痛に歪み、その醜さは、愛でるものとしての機能をまったく果たしていない。

「足裏に杭を打ち込んであげたよ、これは1番痛い拷問の1つらしい」

 俺は笑顔でそう言うと、足に刺さっていない方の杭とトンカチを翠星石に見せた。

「死んじばえでずぅ! おばえなんが大嫌いでずぅ! びゃぁぁぁぎゃぁぁぁぁ!」

 ついに本性が出た! 暴言を吐き、奇声をあげる翠星石を見て自然とそう思った。

 今までは何とか許してもらおうと媚を売っていたが、悟ったのだろう、もう許されることがない
ことを……。

「ちゃんとしゃべろよ、性悪人形!」

 そう言って、翠星石の後ろに立つ。

211 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 14:55:17.63 ID:p7Ku6tbO0 [13/57]
「何ずる気でずが!? ばやくずいぜいぜきを離しやがれですぅ!」

 翠星石は縄を解こうと体を動かすが、縄はビクともしない。

「右足だけだと寂しいだろ? 左足にも杭を打ってやるよ」

「やめろでずぅ! 人間ごときがごの翠星石に、こんなことをじていいと思っているのでずか!」

「お前はもう翠星石じゃない、ゴミだ! 翠星石の皮を被ったゴミだ!」

 杭の先端を翠星石の左足裏に向けてセットする。

「ゴミじゃな、ひいいいっ! また翠星石の足を! お願いでずぅ! またざれだら翠星石は死ん
じまうですぅ!」

「死なねぇよ、これは拷問なんだからな、死なないようにできているんだ」

「だんでもじまずぅ! 翠星石はゴミですぅ! だがらそれだけはかんべ……」

 言い終わる前に、勢い良くトンカチで杭の上を叩いた!

「びやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 杭が翠星石の足裏に刺さった瞬間、汚い悲鳴が部屋に広がった。

214 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 15:00:12.55 ID:p7Ku6tbO0 [14/57]
 夏休み10日目


 俺は翠星石が好きなんじゃないのか?

 愛しているのに、翠星石を虐待することが快感になっきている。

 翠星石を救うために虐待をしていたのに、俺は壊れたのか?

 翠星石を見ると、腹が立って壊したくなる。

 殺したい、殺したい、殺したい、殺したい、殺したい、殺したい、殺したい、殺したい。

 翠星石殺す! 翠星石殺す! 翠星石殺す! 翠星石殺す! 翠星石殺す! 翠星石殺す!

「ぶっ殺してやる」

 そう言って、俺は起きた。

 翠星石殺すために!

215 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 15:05:12.77 ID:p7Ku6tbO0 [15/57]
 朝起きると、翠星石がいなくなっていた……。

 昨日翠星石を縛っていた、2本の縄が虚しく放置されている。

「翠星石め逃げやがったな!」

 もう俺には憎悪しか残ってない、顔にしわを寄せて玄関に向かった。

 玄関のドアの鍵は掛かっておらず、翠星石は外に行ったようだ。

 すぐに追いかけようと、ドアノブに手を掛けた瞬間、翠星石の笑顔が脳裏を駆け巡った。

「……翠星石」

 そうつぶやくと、足が崩れ落ちて床に手を付けた。

「このまま翠星石を逃がしたほうが、あいつは幸せなんじゃないのか?」

 昨日、翠星石の足はジャンクになった。

 杭を打ち付けられた足は、使い物にならなくなっているはずだ。

 まともに立てない状態の中で縄から抜けだして、這いつくばって外の光を目指したんだろう、俺
から逃げたい一心で……。

「がんばったんだな、翠星石」

 自然と目に涙が溢れてきた。

216 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 15:10:10.74 ID:p7Ku6tbO0 [16/57]
「最近、翠星石の笑顔見ていないなぁ……」

 あいつが悪いんだ、穢れる行動ばかりするから!

 俺のもう1つの心が叫びだした。

「愛してるって、大好きだって言ってくれたのに……」

 それはプログラムだ、本当は俺のことなんて何とも思っていない!

「そうだ、あれはプログラムなんだ……」

 翠星石は虐待されるために作られた人形だ。

「翠星石は虐待されたがっている……」

 翠星石は何故傲慢なのか?

「人間を苛立たせるため」

 翠星石は何故ですぅですぅと、うるさいのか?

「人間を苛立たせるため」

 翠星石は何故卑しいのか?

「人間を苛立たせるため」

218 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 15:15:14.47 ID:p7Ku6tbO0 [17/57]
 考えても見ろ、何故愛玩道具たる人形があれほどまでに性悪なのか?

 翠星石は虐待されるために作られたからだ。

 人形愛の本質は虐待にこそある。

 翠星石を作った人形師は、それを伝えたかったのだ。

 自分に正直になれ、翠星石を虐待することに快感を覚えているんだろ?

 それは恥ずかしいことでも、おかしいことでもない、ごく自然なことなんだ。

 殺れ! 追いかけろ!

「翠星石殺す」

 俺は立ち上げって、勢い良くドアを開けた。

219 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 15:20:44.33 ID:p7Ku6tbO0 [18/57]
 外に出ると、見える範囲に翠星石がいた。

 地面に体を付けて、懸命に這って逃げようとしている。

 どうやら、部屋を出てからそんなに経っていなかったようだ。

 1歩1歩、翠星石に近づいていく。

 翠星石は必死に逃げているので、こっちには気付いていない。

 真後ろに立って、翠星石をよく見てみると、綺麗だったドレスと髪の毛は土で汚れいて、ドレス
にいたってはところどころ破けている。

「翠星石……」

 自分でも驚くぐらいの低い声が出た。

 翠星石がゆっくりと首をこちらに回して、目が合った。

「……人間っ!」

 翠星石の顔は恐怖で引きつっている。

220 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 15:25:11.03 ID:p7Ku6tbO0 [19/57]
 俺は何も言わず、翠星石の首根っこを掴んで持ち上げた。

「離しやがれですぅ! 翠星石は、もうおまえみたいな奴と暮らしたくないですぅ!」

 翠星石は体を激しく動かして抵抗した。

 しかし、暴れる翠星石に力はなく、容易に連れて帰ることができそうだ。

「何か言いやがれですぅ! このクズ人間!」

 悪態をつく翠星石を一瞥して、家路を急ぐ。

 すると、暴れる翠星石の服の隙間から何かが落ちた。

「あっ」

 翠星石がその落としたものに手を伸ばして、空中でキャッチする。

 そこにあったのは、携帯電話だった。

221 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 15:30:10.51 ID:p7Ku6tbO0 [20/57]
「携帯……」

 翠星石が雛苺に言ったことが蘇る、「翠星石と人間の絆ですぅ」わざわざ持って出たのか……。

 翠星石は一刻も早く逃げたかったはずだ、見つかれば終わり、次に逃げられる可能性はぐんと低
くなる。自分に、より厳しい制裁が科せられることも考えただろう。さらに足は不自由で、満足に
移動もできない、そんな中で翠星石は、わざわざ携帯を取りに行ってから逃げたのだ……。

「人間は今おかしくなっているんですぅ、前みたいに優しい人間に戻ったら、連絡するつもりだっ
たんですぅ」

 顔を合わせると、翠星石は目に涙を浮かべている。悲し表情だが、その中に希望も隠れていた。

 しかし、それは俺の心に届かない。

 翠星石から顔を逸らして、ただ黙々と歩いて帰った。

224 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 15:35:37.72 ID:p7Ku6tbO0 [21/57]
 暴れる翠星石をなんとか封じ込めて、玄関のドアを開ける。

 鍵を閉めたあと、奥に向かって思い切り翠星石を投げつけた!

「ぐわぁっ!」

 壁には届かなかったものの、翠星石の体を床に叩きつけられた!

「ひ、酷いですぅ……」

 翠星石の言葉を無視して、チェーンロックを掛ける、また逃げられないためだ。

 玄関に置いてあったバットを握って、翠星石に迫る。

「人間! やめるですぅ! そんなもので叩かれたら、翠星石は死んでしまうですぅ!」

 恐怖を抱きながら、翠星石は手を使って後退りする。

 俺は1歩1歩、翠星石に近づいていく。すると途中で足に何かが当たった。

「あぁっ! 翠星石の携帯電話が!」

 翠星石の驚く声を聞いて、足元を見てみると携帯電話があった。

225 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 15:40:13.11 ID:p7Ku6tbO0 [22/57]
「こんなものを大事に持っているとはな」

 1歩足を引いて、バットを上に振りかぶる。

「何をする気ですか? それは人間と翠星石の絆ですよ?」

 翠星石は信じられないといった表情で、こちらを見つめる。

 それを無視して、バットを携帯電話に叩きつけた!

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 翠星石の悲鳴とともに、携帯電話の部品がはじけ飛ぶ!

 俺は狂ったように、携帯電話に向かって、何度も何度もバットを叩きつけた。

「いやぁ……いやぁ……いやぁ……いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 粉々になった携帯電話を見て、翠星石は頭を抱えこみながら叫んだ。

「翠星石と人間の絆が……。翠星石の宝物がぁ……」

 壊れたようにガタガタと震える翠星石……。

「絆? おまえとの絆なんて最初からねぇよ!」

 翠星石のすぐ前でバットを構え、仁王立ちする。

 もし自分の顔を鏡で見たら、凶悪犯のような顔をしているはずだ。

226 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 15:45:09.20 ID:p7Ku6tbO0 [23/57]
「翠星石は最初から騙されていたんですね……。人間なんて、やっぱり大嫌いですぅ!」

「俺もおまえが嫌いだぁ!」

 叫ぶと同時に大きく振りかぶって、醜い翠星石の顔にバットを叩きつけた!

 しかし、翠星石がとっさに両腕を出して防がれる!

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 だが、バットは翠星石の腕を砕くのに、じゅうぶんな威力があった。

 両手首の先が無残にも砕け散り、それを見た翠星石は狂ったように叫んでいる。

「うわぁぁぁぁ! ぎゃぁぁ! あばばばばば! いやぁぁぁぁぁぁぁ!」

「はっはっはっは、いいざまだなぁ翠星石!」

 両手と両足を砕かれた翠星石を見て、笑いがこみ上げてきた。

「何を笑っているんですか!? 翠星石はジャンクになってしまったんですよ!」

「おまえなんて元からジャンクだろうが!」

「おまえのせいですぅ! 責任取りやがれですぅ!」

「責任取ってやるよ! もっと汚してやる!」

 バット捨てて、隠し持っていたナイフを手に取る。

228 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 15:50:21.27 ID:p7Ku6tbO0 [24/57]
「ひいっ!」

 ナイフに驚いた翠星石が、小さい悲鳴をあげる。

 俺は翠星石のドレスに手を掛けると、いっきに引きちぎった。

「お父様に作ってもらったドレスがぁ!」

 ボロボロになったドレスの隙間から、翠星石の淡い肌が見え隠れする。

「翠星石に何をする気ですか!?」

 俺は翠星石を無視して、ズボンとパンツを脱いだ。

 翠星石を虐待することに興奮していた俺のペニスは、当たり前のようにいきり勃っていた。

「ぎゃぁ! そんな汚いものを見せるなですぅ!」

「責任とってやるって言っただろ!」

 そう言って、翠星石に覆いかぶさる。

229 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 15:55:09.83 ID:p7Ku6tbO0 [25/57]
「そんな責任の取り方なんて、望んでないですぅ!」

「知るか!」

 ナイフで翠星石の左目を斬りつける!

「ぎゃぁぁぁぁぁぁ! 翠星石の目がぁぁぁぁぁぁぁ!」

 翠星石は悲鳴をあげながら、両手首で目を確かめようとしている。

 その隙に俺は翠星石の脚を強引に開かせた。

「左目が見えないですぅ! おかしい!おかしい! おかしいですぅ!」

 下着をナイフで切り裂くと、中に何も無い平らな肌が見えた。

 さすがの生きている人形も、生殖機能は付いていないようだ。

「ひぃぃぃ! 人間! 何をしているんですか!」

 翠星石はこちらに気付いて、顔を少し赤らめながら叫んだ!

 こんなことをされて興奮するのか淫乱人形。

232 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 16:00:13.67 ID:p7Ku6tbO0 [26/57]
 穴がないなら作ればいい……。

 俺は翠星石の股間をナイフで斬りつけた!

「いぎっ!」

 ナイフを抜くと立派な縦筋ができていた。

 人形なので血は出ないが、代わりに透明なドロッとした液体が出てきた。

 俺は息を荒げ、黙ったまま翠星石の割れ目にガチガチになったペニスを一気に奥まで挿入した。

「ひぎっ! 痛いですぅぅ! いやぁぁぁぁぁぁっ!」

 謎の液体のおかげか、俺と翠星石はすんなりと繋がった。

「こんなやつに翠星石の初めてがぁ……」

 涙を流す翠星石に興奮した俺は、腰を動かし始めた。

 そうしていると翠星石は何も言わなくなった……。

 翠星石の目に光はなく、口もだらしなく開いたまま動かない。

233 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 16:05:16.69 ID:p7Ku6tbO0 [27/57]
 そんな状況でも、ピストン運動を繰り返していると快感は押し寄せる。

「いくぞ! 翠星石!」

 何も反応がない翠星石の中で、俺は果てた。

 俺の精液が翠星石の中を満たしていく。

 それでも翠星石に反応はない、魂が抜けてしまったように動かない。

 ペニスを抜いて、翠星石を改めて見てみた。

 髪の毛は土で汚れ、ドレスはボロボロ、左目は切り取られて、両手両足は砕かれている。股間は
白濁まみれで、どう見ても変態御用達のダッチワイフにしか見えなかった。

248 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 20:01:12.23 ID:p7Ku6tbO0 [30/57]
 ズボンを履いて、しばらく休憩していると、翠星石が上体を起こしてこちらを見た。

「許さなですぅ……絶対に……絶対に許さないですぅ!」

 映画に出てくる呪いの人形のような形相で、恨み言をつぶやく翠星石……。

「はっはっはっは」

「何を笑っているんですか!? 翠星石は本気ですよ……」

「いいことを教えてやるよ、おまえは何度も記憶を消されているんだ」

「な、何のことですか?」

「翠星石、おまえは雛苺が来てから虐待が始まったと思っているかもしれないが、本当はもっと前
から俺に虐待されているんだ」

「意味が分からないですぅ、翠星石はずっと幸せにお前と暮らしていたはずですぅ」

249 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 20:11:16.21 ID:p7Ku6tbO0 [31/57]
「それは偽りの記憶だ」

 そう言って、翠星石の鞄を持って立ち上がる。

「嘘ですぅ! また何かする気ですか? 翠星石は絶対におまえを殺してやるですぅ!」

「翠星石、おまえは俺を殺せない、なぜならこの鞄に入ったら記憶が消えるからだ」

 1歩1歩、翠星石に近付いていく。

「来るなですぅ! そんなの絶対に信じないですぅ!」

「おやすみの時間だよ、翠星石っ!」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

250 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 20:20:48.48 ID:p7Ku6tbO0 [32/57]
「早く起きるですぅ、人間」

 まどろみの中で翠星石の声が聞こえる。

「あっああ、翠星石、おはよう」

 目が覚めると、翠星石の顔が目の前にあった。

「おはようですぅ、まったく人間はお寝坊さんですねぇ」

「起こしてくれてありがとう」

 そう言って翠星石の頭をなでる。

「くすぐったいですぅ、こんなことされても、ちっとも嬉しくないですよ!」

「そうか、ごめんな」

 翠星石の頭から手を離す。

「あっ……もうちょっとぐらいなら、続けてもいいですよ?」

 頬を赤らめながら、そう言う翠星石の頭を再度なで始めた。

252 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 20:31:08.45 ID:p7Ku6tbO0 [33/57]
 夏休みが終わり、秋が過ぎ、雪が降る季節。

 世間ではクリスマスイブと言われている日。

 街にはカップルが溢れて、毎年寂しい思いをする日だが、今年は違う。

「お帰りですぅ、早かったですねぇ」

 クリスマスケーキを買って家に帰ると、翠星石が迎えてくれた。

 夏休みから今日まで、翠星石は悍ましい虐待を俺から受け続けた。

 しかし、その度に記憶を消されて全てを忘れている。

 絶対に殺すと言った相手とクリスマスイブを過ごすのは、どんな気持ちなんだろうか?

「美味しいですぅ」

 翠星石がケーキをほうばりながら笑う。

 翠星石と談笑しながら食事をして、そのあとケーキを食べている。

253 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 20:40:02.40 ID:p7Ku6tbO0 [34/57]
「人間? 聞いていますか?」

 翠星石の話しをほとんど聞いていなかった。

 俺の心はもう荒みきっていたのだ。

 こんな日に、翠星石と一緒に過ごす資格があるのだろうか?

 翠星石の笑顔を見るたびに、俺に犯されて見るも無残な姿を思い出す。

「人間? 疲れているのですか?」

 こうやって、翠星石に心配される資格もないだろう。

 もう、翠星石との生活に疲れた……。

 バイトなんだよ、大学生のバイトなんて、だるかったらやめればいい。

 もう、いいよな……。

256 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 20:49:46.89 ID:p7Ku6tbO0 [35/57]
「人間、翠星石からプレゼントがあるですぅ」

 ケーキを食べ終わったあたりで、翠星石がそう切り出してきた。

 頬が赤く染まっていて、照れているのが分かる。

「プレゼント? 何をくれるの?」

 俺がそう言うと、翠星石は手紙を差し出してきた。

「て、手紙ですぅ……」

 翠星石から手紙を受け取る。

「読んでいいかな?」

 翠星石の頷きを確認して、手紙を読み始めた。


 マコトへ
 だいすきです
 これからもよろしくおねがいします


 けして、うまいとは言えない字。そもそも翠星石は日本語なんて書けないはずだ。

 何度も書き直したあとが見える。俺が学校に行っている間に、勉強したんだろうなぁ。

258 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 21:00:47.31 ID:p7Ku6tbO0 [36/57]
「翠星石……」

 自然と涙があふれてきた。

 全てのことを悔いた。翠星石の気持ちが偽物と決めつけて、勝手に被害者面していた。

 翠星石はこんなにも純粋ないのに……。

 プログラムなんて関係ない! 翠星石は生きているんだ!

「大丈夫ですか?」

 翠星石の心配する声。

「ありがとう……ありがとう……そして、ごめん……」

 涙が止まらない……足が崩れ落ちて、膝をつく。

「謝られることなんて、ないですよ? それよりも人間、本当に大丈夫なんですか?」

 そう言って翠星石は近付いて来た。

 俺は思わず翠星石に抱きついた……。

261 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 21:10:52.94 ID:p7Ku6tbO0 [37/57]
「に、人間!?」

「一緒にいよう、ずっとずっと」

 強く、強く抱きしめる。

 翠星石に俺の想いが伝わるように……。

「翠星石もずっと人間といたいですぅ」

 そう言って、翠星石は目を閉じた。

 胸が熱くなる。早くなる心臓の音。

 顔近付けようとした瞬間、翠星石のあの姿がフラッシュバックする。

 ボロボロの翠星石、俺が犯した罪……。

 俺はなんてことをしてしまったんだ!

 それでも俺は!

 翠星石の唇と俺の唇が重なりあった。

 守るんだ! 俺が翠星石を! 全てを抱きしめて!

263 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 21:20:39.97 ID:p7Ku6tbO0 [38/57]
 nのフィールドにある、暗い部屋の中には安楽椅子がある。

 その椅子にメガネを掛けた青年が、台に置いた水晶玉を見ていた。

 青年は肘をつきながら、微笑を浮かべている。

「フィナーレは盛大に!」

 そう言って青年が目を瞑ると、部屋が輝き踊りだした。

 人形はダンスを始め、照明は光を回し、音楽が旋律を奏でた。

 水晶玉の中には、翠星石と少年が口付けを交わしているところが映されていた。

264 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 21:33:44.88 ID:p7Ku6tbO0 [39/57]
 キスをした翌日の早朝、俺と翠星石は簡単な荷造りをしていた。

 翠星石を連れて逃げる。

 この部屋は翠星石の持ち主に知られている。このままここにいたら、連れ返されるだろう。

 これは泥棒と言われる行為になるのかもしれないが、そんなことは関係ない。

 翠星石を幸せにする、それだけのために全てを捨てる覚悟だ。

 ほどなくしたら親に謝って学校を辞めよう。そして働くんだ、翠星石と俺の未来の為に……。

「いくぞ翠星石」

 最小限の荷物を持って、玄関をに立つ。

「ちょっと待つですぅ、翠星石はまだ荷造りが終わっていないんですよ」

「じゃあ、ちょっと外に出てるな、用意できたら呼んでくれ」

「分かったですぅ、ほんとうにもう、いきなり引越しって人間も勝手ですねぇ」

 翠星石はいろいろと鞄に詰め込みながら、あれでもないこれでもないと唸っている。

265 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 21:40:00.58 ID:p7Ku6tbO0 [40/57]
 新鮮な空気を吸いたいので、外に出てみると、まだ薄暗かった。

 空を見ると曇っていて、旅立ちの日にはむいていない。

 何となく道路のほうに歩いて行くと、1体の人形が立っていた。

「やっと見つけました」

 そう言って、人形はこちらに近付いてくる。

 その人形はシルクハットを被っていて、袖口が長く白いブラウス、青いケープとニッカーボッカ
風の半ズボンを着用している。

 髪は赤毛に近い焦げ茶色で、前下がりのボブをベースにしたショートカット。

 瞳の色は翠星石同様オッドアイで、右目がエメラルド色、左目がルビー色だ。

 俺はこの人形を一目で、ローゼンメイデンだと見抜いた。

「おまえは……?」

 正体不明の人形に緊張しながら問いかける。

266 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 21:45:11.00 ID:p7Ku6tbO0 [41/57]
「僕は蒼星石。ローゼンメイデンの第4ドールにして、翠星石の双子の妹」

 そう言って、蒼星石は俺を睨みつけた。

「妹……翠星石に会いに来たのか?」

 雰囲気からして友好的ではない、この人形がいったい何のために来たのか、解らないほど鈍感で
はないつもりだ。

「会いに来たんじゃない、取り返しに来たんだ!」

 蒼星石がそう言った瞬間、大きな鋏が蒼星石の手元に現れた。

 やっぱり、あいつらの刺客か? 早過ぎる、見張られていたのか?

「翠星石はどこにいる? 監禁しているのは分かっているんだ!」

 蒼星石は、大きな鋏の刃をこちらに向けて脅迫する。

「監禁なんてしていない! 何のことだ?」

「君は翠星石を虐待して、それをネットで公開している。監禁されていると考えるのが普通じゃな
いか?」

 蒼星石のオッドアイが俺を見透かす。

 そうだ俺は確かに翠星石を虐待していた……。

267 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 21:50:22.45 ID:p7Ku6tbO0 [42/57]
 一瞬動揺が走る、それを見た蒼星石は、確信を得たとばかりに唇を斜めにした。

「1年前、翠星石と他の姉妹、そしてそのミーディアムが忽然と消えた。水銀燈の仕業かと思った
けど、探ってみると違っていた。手掛かりがないまま1年が過ぎようとした時、藁にもすがる思い
で、僕のミーディムと一緒にインターネットを頼った。そして見つけたんだ、翠星石達が虐待され
ている動画を……」

 ミーディアム、水銀燈と聞いたことのない言葉もあったが、この人形があいつらの手先でないこ
とは分かった。

「待て、話せば分かる、話せば……」

「聞く耳持たない!」

 そう言って、蒼星石は鋏の刃突き立てて襲ってきた!

 大丈夫だ、翠星石も何度か襲ってきたが、スピードは遅く、捕らえることが出来た。

「え!? うぐっ!?」

 何が起きたか解らなかった……。

 1つ解るのは、俺の胸に鋏の刃が刺さっていることだ……。

 体から力が抜ける、立っていれなくなり、膝をついた……。

 そうすると蒼星石は、鋏の刃を俺の体から抜いた……。

 手の平を胸に当てて、もう1度手を見ると残酷なほど真っ赤で、これが現実であることを語って
いる。

269 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 21:55:19.22 ID:p7Ku6tbO0 [43/57]
 赤いものが、止めどなく流れていくことに恐怖を覚えた。

 すると蒼星石が、また鋏の刃を突き立ててきた。

「や、やめ……」

 せめてもの命乞いをしようとした瞬間、

「そう言った翠星石を、君は見逃したのか?」

「翠星石!」

 翠星石への虐待が、走馬灯のように駆け巡る。

270 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 22:00:11.03 ID:p7Ku6tbO0 [44/57]
 俺は償えないのか? ここで死ぬのか?

 いやだぁ!

 蒼星石が刃を斜めに振るうと、俺は動くことも出来ずに、首を切り裂かれた!

 血が出ないように、首を咄嗟に押さえてみようとしたけれども意味が無い!

 血潮が舞った!

 それが最後の光景。

 目の前が暗くなると初めて痛みを感じた。

 翠星石は、こんな痛みを毎回受けていたのか……。

 俺はやっぱり最低だ……。

 でも、最後に言いたかったなぁ、翠星石……愛しているよ……。

272 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 22:06:01.77 ID:p7Ku6tbO0 [45/57]
「はっはっはっはっは」

 nのフィールドから水晶玉を通して、一連の動きを見ていた男は高笑いをし始めた。

「惨めな男だ」

 そう言って、彼は紅茶を1口飲んだ。

 そうしてる間にも水晶玉の中は動き出す。

273 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 22:10:10.73 ID:p7Ku6tbO0 [46/57]
「人間騒がしいですよ、何をや……」

 翠星石が息を飲む、好きな人が血まみれになって倒れているという光景を見たからだ。

 翠星石はふらふらになりながら、好きな人に近付いて行った。

「人間、人間、何をやっているんですか? 翠星石を驚かそうたって、そうはいきませんよ」

 翠星石は、好きな人の頭を軽く叩いたり揺さぶったりする。

 しかし、好きな人は答えてくれない。

「起きるですぅ! 翠星石とずっと……一緒にいてくれるって……言ったじゃないですか!」

 とうとう翠星石は泣き出した。耐えることの出来ない感情の波に押されて。

「死んじゃ……死んじゃ嫌ですぅ!」

 翠星石の叫びが虚しく響いた。

274 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 22:15:23.41 ID:p7Ku6tbO0 [47/57]
「翠星石、迎えに来たよ」

 空気を読まずに蒼星石が話しかけた。

「誰ですか? はっ!?」

 翠星石は蒼星石の持つ鋏を見て驚いた。

「何を言っているんだい? 僕は……」

「おめえがやったんですか!?」

 蒼星石が名乗る前に翠星石が激怒した!

「そうだよ、翠星石を助けに来たんだ」

 蒼星石は手を広げて、翠星石に1歩近付く。

「寄るなですぅ!」

「えっ!?」

 翠星石にまくし立てられて、蒼星石は立ち止まった。

276 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 22:20:39.48 ID:p7Ku6tbO0 [48/57]
「よくも人間を……絶対に許さないですぅ!」

 そう言った途端、翠星石の手に如雨露が出現した。

「な、なんですか? これは?」

 驚く翠星石だったが、手に現れたものは、不思議と懐かしい感じがした。

「翠星石、君は勘違いをしている!」

「聞く耳持たないですぅ!」

 翠星石は蒼星石のもとへ走っていく。

「翠星石!」

 翠星石が蒼星石に体当たりをしようとしたが、簡単に避けられる。

 しかし、すぐに翠星石は蒼星石のほうを向いて睨みつけた。

277 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 22:25:08.60 ID:p7Ku6tbO0 [49/57]
「仕方ない、力ずくでも連れて帰る!」

 蒼星石は鋏の刃を翠星石に向けた。

 蒼星石が鋏を振るうと翠星石が如雨露で受け止める。

 それが何度か繰り返され、蒼星石が圧倒的に攻めている。

 苦戦する翠星石は顔を歪めながら、必死に蒼星石の攻撃を受け止めていた。

「翠星石の動きがあきらかに鈍い? 僕のことも忘れてるし何か変だ……」

 蒼星石がそう考えていると、如雨露が顔の横を通る。

「隙だらけですよ」

 間一髪避けれたが、もし当たっていたら、ただでは済まなかっただろう。

 蒼星石と翠星石は、間合いを取り睨み合う。

「虐待された人間を殺されて怒っているのも、力があるのに虐待されていたのも、何者かに改造さ
れたに違いない」

 蒼星石はさっき殺した人間を睨みつける。

「最低な人間だ」

278 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 22:30:08.83 ID:p7Ku6tbO0 [50/57]
「蒼星石、なかなか鋭いじゃないか、しかし犯人を間違えているけどね」

 蒼星石と翠星石から遠く離れた場所にいる男は、拍手をしながら水晶玉を見ていた。

「仲の良かった姉妹の殺し合い、なんと悲しく美しいことか!」

 彼は思わず立ち上がり、蒼星石と翠星石を祝福する。

「だが、この劇も終わりだ! 悲しみとともに! 翠星石だけが改造されていると考えた、君の負
けだ蒼星石……」

279 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 22:35:21.41 ID:p7Ku6tbO0 [51/57]
 翠星石は蒼星石との戦いで疲労していた。

 綺麗な緑色だった服は所々破れ、埃や土も付いている。

 肩で息をしている翠星石だが、目の輝きは失っていなかった。

「絶対、絶対に人間の仇を取るですぅ……」

「決着を付けるよ、翠星石!」

 蒼星石は翠星石に向かって飛んだ!

 しかし、その瞬間、力が抜ける!

「なっ!」

「今ですぅ!」

 翠星石が如雨露を振るうと、鋏が蒼星石の手から吹き飛ぶ!

 そのまま体当たりをして、蒼星石も吹っ飛んだ!

「ぐはっ!」

 空中で立て直そうとしたが、動かない!

 蒼星石の体が激しく地面に打ち付けられた!

281 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 22:40:09.06 ID:p7Ku6tbO0 [52/57]
「体が痺れて動けない……」

 地面に打ち付けられたというのもあるだろうが、普通はここまでならない。

 翠星石は鋏を拾うと、蒼星石の元へ近付いて行った。

「翠星石、やめてくれ……」

「そう言った人間を、おまえは見逃したのですか!?」

「なっ!」

 翠星石は鋏の刃を振り下ろした!

 その瞬間、蒼星石の体からローザミスティカが飛び出した!

 鋏の刃はローザミスティカごと、蒼星石の胸に突き刺ささる!

「人間、仇は取ったですぅ……」

 翠星石は曇り空を見上げて言った。

282 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 22:45:08.19 ID:p7Ku6tbO0 [53/57]
 水晶玉には、血だらけの人間と胸に大きな鋏が突き刺さった人形、そして天涯孤独となった人形
が映し出されていた。

「全ての舞台は整った! さあ、完結の時だ!」

 黒幕が大きく右腕を広げる!

「翠星石の記憶よ……戻れ!」

283 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 22:50:08.51 ID:p7Ku6tbO0 [54/57]
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ! 翠星石の頭に何かが入ってくるですぅ!」

 翠星石は頭を抱えながら苦しみ出した!

 体を地面に打ち付けて転がりだす!

「痛いっ! 痛いですぅ!」

 あまりの痛さに、どうすればいいか分からない翠星石は、暴れたり叫ぶことしか出来なかった。

 やがて痛みが消えたころには、全ての記憶が戻っていた。

 雨がポツポツと降りだしてきた。

 雨の中、翠星石は地面に膝を付いて放心状態になっている。

「蒼星石! 蒼星石!」

 我に戻った翠星石は、蒼星石の体に寄り添い、狂ったように大声を上げる。

「いやぁぁぁぁぁぁ! 蒼星石を殺してしまったですぅ! あんな、最低の人間の仇を取るために
いいいいいいっ!」

 翠星石は頭を激しく掻きむしりながら、さっきまで好きだった人間を一瞥した。

285 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 22:55:18.29 ID:p7Ku6tbO0 [55/57]
「翠星石と蒼星石は仲の良い姉妹ですぅ!」

 記憶が蘇った翠星石の頭に、蒼星石と遊んだ頃の思い出が映し出される。

 手をつないで遊んだ公園。

 一緒に美味しいお茶を飲んだ時間。

 のりの作った、はなまるハンバーグ。

「でもぉぉぉぉ! そんな妹を翠星石がこの手で殺した! いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 その時、糸が切れたように翠星石は動かなくなった。

 膝をついて真正面を向いている。

 目は濁り、光がない。

 しかし、口だけは動いていた。

 小さく何かを呟いている。

「ジュン……ジュン……ジュン……」

 希望の名前、翠星石は最後のそれに縋りついた……。


「なーあーにー?」

 nのフィールドにいる男はそう言って笑った……。

286 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 22:57:22.97 ID:p7Ku6tbO0 [56/57]
 二人の少年が広告を見ながら談笑している。

「なんだこれ? 人形を虐待するだけの簡単な仕事だってよ」

「怪しすぎるだろ」

「電話してみるか?」

「やめとけって」

「日給1万円かぁ……」

「絶対詐欺だって」

「だよな……」

 そう言って少年たちはその広告を捨てた。


 人形を虐待する仕事、やってみますか?


 完

288 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 23:00:09.42 ID:p7Ku6tbO0 [57/57]
 あとがき

 俺は翠星石のことが好きなのか?
 正直、よく解らないんです。最初は好きだったけど、
 ふとしたきっかけで、翠星石虐待に目覚め、俺も翠星石をボロボロにしたい
 と思って、この作品を書きました。
 でも、愛でたいと思う心もあります。

 キャラ全レスとSSを絡めるとどうなるんだろうと考えて、実行しましたが、
 何もならなかったですねwwwwwww

 この作品での心残りは、翠星石の性悪な部分をあまり書けなかったことですね。
 1番虐待されて嫌な相手はと考えたら、
 デレデレになるぐらい好きな人じゃないかなと思ったので、
 こういう設定になったんですが、
 そうなると翠星石の性悪な部分が減るんですよね。
 だから雛苺を出したんですが、途中から雛苺はどこに行ったでしょうね?wwww
 それと雛苺から翠星石が苺を奪う場面は、奪うものは違いますが、原作にもあります。
 あの場面は個人的に許せなかったので、制裁を加えるために書きました。

 次に翠星石の虐待物を書くとしたら、主人公への性悪行為を中心にして、
 そこから虐待に発展する物を書きたいです。

 駄文をお読みいただき、ありがとうございました。

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