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魔王「勇者捕まえた」後半

魔王「勇者捕まえた」前半
続き

136 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 05:23:46.86 ID:xNE88kxH0

魔王「英雄とは一体どういうものだろうか」

勇者「……」

魔王「言うまでもなく、みんなを幸せにする者だろうな。もっと難しく言うこともできるが、極言すれば同じようなものだ」

勇者「……」

魔王「だが、幸せとは何だろう? 人によっては殺すことが極上の幸福という者もあるくらいだからな、定義は難しい」

勇者「……」

魔王「それでも英雄はみんなを幸せにしなくてはならない。そこには犠牲がつきものだ」

勇者「おれはそんなへまはしない」

魔王「犠牲はつきものといったのだ。そこに成功とか失敗はないんだよ」

勇者「そんなこと……」

魔王「あるのだ」

勇者「なぜだんげんできる」

魔王「さてな」


142 名前:絵、多謝[] 投稿日:2010/10/10(日) 05:45:08.53 ID:xNE88kxH0

魔王「それより問題は、犠牲の損失分をどこから出すかだよ」

勇者「……」

魔王「だが、否だ。犠牲はどこからでも出る。内からも外からも。自分からも他人からも」

勇者「……」

魔王「ある英雄も、それを嫌というほど味わったそうだ」

勇者「……」

魔王「その英雄はな、自分の国を変えたかったそうだ。トップに立つ者が愚かでな、いつまでもいつまでも戦をやめんのだ。それだけならばよいが、そのためにいつも民を犠牲にしていた。自分だけは安全なところに隠れてな」

勇者「ひどいやつだ」

魔王「だろう? だから、英雄は激怒した。かの邪智暴虐の王を除かねばならぬと決意した、ってな」


145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 05:49:29.19 ID:xNE88kxH0

勇者「その英雄は勝ったのか?」

魔王「ああ、勝ったよ。数多くの仲間に支えられて、数多くの死人を出して、そして恋人も失って……」

勇者「……」

魔王「確かに民は以前よりは幸せな暮らしを送れるようになった。だがな、分かったろう? 英雄というのは犠牲の上に立つ偽善者となりかねんのだよ」

勇者「おれは、へまは、しない」

魔王「どうかな? まあ、そう思っていれば絶望せずには済むだろう」

勇者「……」


146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 05:50:12.93 ID:xNE88kxH0

勇者「おれは、どうすれば……」

魔王「我輩にも、実のところは分からんよ。だが、お前には力がある。力をもつものは選ばねばならん。進むべき道をな」

勇者「……」

魔王「まあ、聞くところによるとお前んとこの皇帝も酷いやつじゃないか。
   人民を強制的に徴兵し、重い税金を取り立てて、民を抑圧し、年端もいかない子供に得体のしれない訓練を施して単身敵地に送り込んだり」

勇者「……」

魔王「まあ、我輩がどうこう言うことじゃないがな」

勇者「……」

魔王「良く考えろ。お前にはお前の命の何倍もの命がかかってるんだ。お前の正義にしたがって行動しろ。いいな?」ガラガラガラ……

勇者「まて!」

魔王「ん?」

勇者「さっきの……英雄ってだれのことなんだ」

魔王「……。さてな」


 ガラガラガラ……ガシャン



147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 05:50:59.86 ID:xNE88kxH0

<魔王城.廊下>


魔王「……」カツカツ

「また、勇者のところですか魔王様」

魔王「……元帥」

元帥「魔王様はよほどあの勇者の悲鳴がお好きなようだ」

魔王「何が言いたい?」

元帥「いえ、少し悪趣味だなと」


148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 05:51:41.93 ID:xNE88kxH0

魔王「我輩に意見するか?」

元帥「恐れ多い。ただ、私は疑問を持っているだけでございますよ」

魔王「疑問……?」

元帥「そうです。たとえば勇者に情が移ってしまったのではないか……とか」

魔王「……はっ、馬鹿馬鹿しい」

元帥「はっはっは。私もそう思いますよ。いえ、失敬。私は急ぎますのでこれで失礼いたします」


 ツカツカ ツカツカ……


魔王「……」


151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 05:52:49.13 ID:xNE88kxH0

<同時刻.魔王の私室>


 ――バタン!


「魔王様! 魔王様はいらっしゃいませんか!?」

メイド「なんですか騒々しい。ここは魔王様の私室ですよ」

「は! これは申し訳ありません! ですが緊急の用がございまして!」

メイド「緊急? おっしゃいなさい」

「は! それが、国境近くで人間側と戦闘が起きたのですが……」

メイド「が?」

「……わが軍がおされているのです」


152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 05:53:48.38 ID:xNE88kxH0

メイド「なんですって? あり得ないわ。人間の力なんてたかが知れてるはず」

「ですが事実です。魔王様にすぐに連絡を」

メイド「……必要ありません」

「はい?」

メイド「私が出ます」

「な!? で、ですが!」

メイド「これは命令です。即時私が出撃できるよう準備なさい」

「わ、分かりました!」

メイド(魔王様は今、大事なお話の最中。手を煩わせるわけにはいかないわ)

メイド「……行きましょう」


153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 05:54:32.12 ID:xNE88kxH0

     ・
     ・
     ・


 ガチャ――


魔王「ただいま」


 シーン……


魔王「あれ、メイド?」


 ……


魔王「……メイド?」


155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 05:55:32.83 ID:xNE88kxH0

<国境の戦場近く>


『転送魔法、工程終了。誤差なし。御武運をお祈りします』プツ――

メイド「……」

メイド(夜の闇は神経を先鋭化させる――染み渡る遠い音、肌を切り裂く殺気の気配。懐かしいわね、この感じ)

メイド「さて」

メイド(転送位置に問題がなければ戦場はあちら。懸念はさっさと払拭しなくては)


 ダッ――


     ・
     ・
     ・



156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 05:57:02.16 ID:xNE88kxH0

 キン カン――ズバシュ!


「ぎゃああああああ!」

メイド(近い)ダンッ!


 シャッ!


「ぐあッ!」ドス!

メイド(まずは一人)

魔物将軍「メイド殿! いらっしゃってたのですか!?」

メイド「ええ、異常事態とお聞きしております。戦況は?」


157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 06:01:31.11 ID:xNE88kxH0

魔物将軍「五分五分――と言いたいところですが、我々がはるかに圧倒されています」

メイド「……」

魔物将軍「あり得ないとお思いでしょう。しかし、事実です」

メイド「分かりました。私も尽力いたしましょう」

魔物将軍「ありがた――」


 ターン……


メイド「……? なんの音?」


158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 06:02:33.75 ID:xNE88kxH0

 ブシャッ――!


「がッ!」ドサァ

メイド「!?」

魔物将軍「見ましたか?」

メイド「え、ええ。今いきなり魔物の一人が……」

魔物将軍「今回我々が押されている理由です」

メイド「攻撃が見えませんでした……」

魔物将軍「魔法ならば我々魔物がわからないはずがない。これはもっと別の――がはッ!」ズブ!

メイド「将軍!」

「これはこれは驚いた」


160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 06:06:09.22 ID:xNE88kxH0

メイド「……誰?」

「前時代の亡霊ではないか」

メイド「その鎧……あなたは帝国騎士団団長ね?」

騎士団長「御名答」

メイド「国境の小さな戦闘になぜあなたが……」

騎士団長「さて、どうしてだろうな。まあお前が知る必要もない――知ることもできない」

メイド「!」

騎士団長「さらばだ」


 ターン……――――ズブシャッ!


161 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 06:08:56.77 ID:xNE88kxH0

<魔界.???>


「国境でなにやらごたごたが起きているらしい」

中隊長「団長か。あの人もじっとはしていられないたちだからな」

「まったく、こちらとしては忌々しいことだよ」

中隊長「はは、まあそういわないで。あの人だって必死なんだ」

「……。で、人間が一体私に何の用だ」

中隊長「お? 話が通じるお人で良かった。下手したら俺、もう死んでたでしょ」

「そうならないようにいろいろ工夫してきたのだろう?」

中隊長「あ、お気づきでしたか。まあ、殺されないってだけの確信はあったね」

「早く要件を言え」

中隊長「あなたも薄々は分かってるでしょ、俺の言いたいこと」

「……」

中隊長「あなたは上司を不審に思ってるはずだ。そして、こうしたいと思うこともある。違うかな?」


162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 06:10:48.92 ID:xNE88kxH0

「……それで?」

中隊長「あなたには俺の作戦の手引をしてもらいたい」

「……」

中隊長「あなたにも得はあるはずだ。いや、違うかもしれないな。でも、事態を進展させる効果はあるはずだよ」

「ふ……」

中隊長「ん?」

「ふ、ふふ……はは、ははははは!」

中隊長「……」

「いいだろう、お前が何を企んでいるのかは大体想像がつく。そのうえでそれに乗ってやろうじゃないか。勝利の女神が私とお前、どちらに微笑むか、一つ賭けてみよう」

中隊長「交渉、成立っすね」


163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 06:15:35.41 ID:xNE88kxH0

<魔王城.牢屋>


勇者「……」

『お前の正義に従って行動しろ、いいな?』

勇者(おれの、せいぎ……)

勇者「……」

勇者(おれ……おれは……)

勇者「……うん」


165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 06:21:41.73 ID:xNE88kxH0

<翌日.帝国.城.謁見の間>


騎士団長「報告します!」

皇帝「うむ」

騎士団長「総力戦まであと一週間に迫りました! それに先立ちまして喜ばしい報告がございます!」

皇帝「言え」

騎士団長「は! 我らはついに、魔物に対抗しうる手段を獲得いたしました! 昨日の国境の戦闘において、それは証明済みです!」

皇帝「よろしい」

騎士団長「これで我らは勇者という英雄なしに、組織の力で魔界を制圧することが可能です! 報告は以上です!」

皇帝「下がれ」

騎士団長「は! 皇帝陛下に栄光のあらんことを!」


166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 06:23:56.84 ID:xNE88kxH0

<魔王城>


 タッタッタッタッタ――


勇者「魔王、どこだ! でてこい!」

勇者(……おかしい、こんなにさがしまわってもみつからない。魔物もやけにすくないきがする)

勇者「魔王、どこだ!」


168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 06:29:13.44 ID:xNE88kxH0


 タッタッタッタッタ――ザッ!


勇者「みつけたぞ、魔王!」

魔王「……」

勇者「さがしたぞ、いったいどこにいた?」

魔王「……」

勇者「いや、そんなことはどうでもいい。おれは、こんどこそお前を殺すためにここにいる」

魔王「……答えが、出たのか」

勇者「そうだ! おれはきのう、お前にいわれてからかんがえた。おれのせいぎを。そしてきめたんだ」

魔王「……聞こう」

勇者「おれは、お前とじぶんを殺す。そうしてにんげんにへいわをもたらすんだ」

魔王「自害……それが、お前の答えか」

勇者「ああ!」


169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 06:32:22.21 ID:xNE88kxH0

勇者「だから! おれとしょうぶしろ! きのうまでのおれとはちがうぞ!」

魔王「……」

勇者「……こないのか? だったらこっちから――」

魔王「すまん、待ってくれ……」

勇者「……?」

魔王「今は……今は悪いが、そんな気分じゃない」

勇者「なにを言っている。そちらのつごうなんかしったことか。おれはけついした。あとはお前のかくごだけだ」

魔王「分かっている……それでも今は待ってくれ」

勇者「……お前、どうした? ひどいかお、してるぞ?」

魔王「頼む……待ってくれ……」

勇者「……」

魔王「待って、くれ……」


173 名前:猿本当邪魔[] 投稿日:2010/10/10(日) 07:01:35.84 ID:xNE88kxH0

<牢屋>


勇者「……」


 ガラガラガラ……


勇者「!」

魔王「……」

勇者「……」

魔王「……」

勇者「……つったってないで、すわれよ」

魔王「……ああ」トス……


174 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 07:04:58.82 ID:xNE88kxH0

勇者「……で?」

魔王「……ん」

勇者「なにがあった?」

魔王「……メイドが、傷つき、倒れた」

勇者「……!」

魔王「あいつは今、死の淵をさまよってる……」

勇者「なんだと? それは、どういういみだ!」


175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 07:08:37.33 ID:xNE88kxH0

魔王「お前は知らなかったな……あいつは戦メイドなんだよ」

勇者「いくさ……たたかうのか?」

魔王「ああ……強いんだぞ? だが、昨日の国境での戦闘で……」

勇者「こっきょうの……? どれぐらい、ひどいんだ?」

魔王「……」

勇者「……」

魔王「……無数の切り傷、裂傷、打撲。それらの傷による大量出血。おまけにあいつ……」

勇者「なんだ?」

魔王「右腕が、ないんだ……」

勇者「っ……」

魔王「ないんだ……」

勇者「そ……それはどういうことだ!」

魔王「わからん……だが、医者は強烈な一撃によってもぎ取られたのだろう、と……」

勇者「そんな……」


177 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 07:13:36.50 ID:xNE88kxH0

魔王「……っ」

勇者「魔王……」

魔王「すまん……泣かせてくれ」

勇者「……」

魔王「メイドが倒れた今、我輩にはもう、ここしかないのだ……」

勇者「……」

魔王「すまん……」

勇者「……」


178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 07:15:36.28 ID:xNE88kxH0

魔王「……」

勇者「……」

魔王「……」

勇者「……好きなのか?」

魔王「え……?」

勇者「あいつのこと、好きなのか?」

魔王「……好きだよ」

勇者「そうか……」

魔王「……そうだ、我輩はあいつが好きだ。だから我輩はもう、大切な人が痛い思いをするのは嫌だったのに……」

勇者「……? まえにもおなじようなことが?」

魔王「……ああ」

勇者「なにがあったんだ?」

魔王「……。昔の……昔の、話だよ」


180 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 07:17:10.89 ID:xNE88kxH0

<十数年前.魔界>


魔物「みんな、聞いてくれ! ついに今夜、決戦の――革命の時だ! みんなには全力を尽くしてもらいたい!
   必ずやあの暴虐の限りをつくした魔王を打ち倒し、よりよい暮らしを手に入れるんだ!」

「応!」

魔物「みんなには期待している! ここまで一緒にやってきた仲間だ! 一人の犠牲も出すんじゃないぞ!」

「了解!」

魔物「よろしい! では夜まで時間がない! 準備を始めるんだ!」

「はい!」


181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 07:18:39.23 ID:xNE88kxH0

     ・
     ・
     ・


魔物「……」

女魔物「隣、いいかしら?」

魔物「……ああ」

女魔物「ふふ、どうしたの? いつもと違って随分暗いじゃない」

魔物「緊張、してるんだ」

女魔物「無理もないわね。大仕事だし、あんた意外とびびりだし」

魔物「……」

女魔物「なによう、ちょっとは反論しなさいよう」ウリウリ

魔物「……」

女魔物「……調子狂うなあ」


182 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 07:20:27.41 ID:xNE88kxH0

魔物「……なあ」

女魔物「んー?」

魔物「この革命が終わったらさ」

女魔物「うん」

魔物「俺と……」

女魔物「……うん」

魔物「……」

女魔物「……」

魔物「――いや、やっぱり、全部終わってから言うよ」

女魔物「えー! 何それ!」

魔物「いたっ。叩くなって」

女魔物「そこまで言ったなら全部言いなさいよう、気になるじゃない!」

魔物「ごめん」

女魔物「ふん、へたれ!」


184 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 07:22:49.56 ID:xNE88kxH0

魔物「あのさ」

女魔物「……」ツーン

魔物「君には感謝してるよ」

女魔物「……」

魔物「君がいなければ革命なんて起こそうとも思わなかったし、仲間もきっとついてきてくれなかった。何より俺の支えになってくれている。とても助かってるよ」

女魔物「……」

魔物「ありがとう」

女魔物「あたしは……ただあんたの背中を押しただけよ。歩いたのはあんた。
    仲間がついてきたのはあんたを信頼したからだし、あんたじゃなきゃついていこうとは思わなかったはず」

魔物「……」

女魔物「ねえ、好きよ」

魔物「!? え、ちょっと」


185 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 07:24:00.65 ID:xNE88kxH0

女魔物「ふっふー、びっくりした?」

魔物「え、ああ、そりゃもう……」

女魔物「あたしはあんたと違うからね、言えるときに言っとくの」

魔物「……完敗だ」

女魔物「だから、あんたは終わったらちゃんと言いなさいよね! いいわね!」

魔物「ああ、了解」

女魔物「……」

魔物「……」

女魔物「絶対、倒そうね、魔王」

魔物「……ああ」


193 名前:白状大改変無。只、我欲直脱字。我欲即終。反省[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 08:07:27.45 ID:xNE88kxH0

「失礼します。隊長、準備ができました」

魔物「わかった。……君とも長い付き合いだね。ついてきてくれてありがとう」

「私は魔王軍においてあなた様と出会ったときから、ずっとついていくと決めていました。礼には及びません」

魔物「これからもついてきてくれる?」

「ずっとあなたのおそばに参りましょう」

魔物「……ありがとう」

女魔物「……」ツネリ

魔物「いたっ! 何するんだ!」

女魔物「別にぃ」

「ふふ。では――」

魔物「……ああ、戦争だ」


194 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 08:16:30.96 ID:xNE88kxH0

     ・
     ・
     ・


 キン! カン! カィン! ズバシュ! ギャアアアアアアア!


「隊長、最終防衛ライン、突破いたしました」

魔物「分かった。俺が決着をつける」

女魔物「あたしも行くわ!」

魔物「危険だ。待っててくれ」

女魔物「承知の上よ!」

魔物「でも」

女魔物「いいから行くの!」

魔物「ああもうしょうがない! 絶対に怪我するんじゃないぞ!」ダッ!

女魔物「了解!」ダッ!


196 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 08:23:35.52 ID:xNE88kxH0

<魔王城.内部>


 タッタッタッタッタ――バタンッ!!


魔物「魔王、覚悟!」ジャキ!

魔王「……来たか」

魔物「民の苦しみを代弁し、今こそあなたを排斥する!」

女魔物「覚悟するのね!」

魔王「たかだか魔王軍小隊長の分際で、随分と態度がでかくなったものだ」

魔物「態度のでかさではあなたには及びません。民を苦しめておいてよくぞ玉座にふんぞり返っていられるものです」

女魔物「あなたのせいでどれだけ死んだと思っているの!?」

魔王「さて……」

女魔物「この……!」


199 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 08:30:18.32 ID:xNE88kxH0

魔王「では言わせてもらうが、お前たちが我に逆らったために何人死んだ? それこそ数百人という単位ではあるまいに」

魔物「……望んで戦って死んだか、望まずにあなたの暴力の下に死んだか。その間には千尋の溝がありますよ」

魔王「笑止! 死に種類があるものか! お前が言うのはただ自分に都合のいい解釈だ!」

女魔物「黙りなさい! あんたがみんなの死を語るな!」

魔物「あなたの言うこと、その通りかもしれない……」

女魔物「ちょっとあんた!」

魔物「でも――でも、俺はここまで来てしまった。だからもう、後戻りはできない。俺に出来るのは、それでもみんなが笑っていられる、そんな世界を作ることだけだ」

魔王「よかろう、我を殺してみよ。どうせ我の死は決まっているのだ。だが、我を殺した後絶望するがいい。自らの罪の重さにな!」

魔物「行くぞ!」

女魔物「黙らせてやる!」


200 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 08:37:42.00 ID:xNE88kxH0

魔物「はッ!」ビッ!

魔王「ぬるいな、その程度か」ガキン!

魔物「まだまだ!」ジャッ!

魔王「ふっ!」カィン!

女魔物「“業火よ、灰にしてしまえ!”」ゴッ!

魔王「“障壁”」キィン

魔王「そら!」シュバ!

魔物「ぐ!」ガギン!

魔物(強い! ただ隠れているだけの奴じゃなかったのか!)


201 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 08:42:02.86 ID:xNE88kxH0

 カン! カン! カィン! ギィン!


魔物「はああああああああ!」

魔王「ははははははははは!」

女魔物「“大地の奥深く、うなり息まく太古の巨人よ――”」

女魔物(あと少し!)

魔物「喰らえ!」ヒュゴ!

魔王「!」ガキャァン!

魔物(よし、足止め成功!)

魔物「今だ!」

女魔物「“ただちに地を裂き、我らの声に応えよ!”」


 ガゴッッ!!



202 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 08:44:04.63 ID:xNE88kxH0

魔王「ぬ! 地面が!」

魔物「最後だ!」

女魔物「“空に光を! 大地に傷を! 刃には力を!”」

魔物「おおおおおおおおお!」ブン!

魔王「この……!」ジャッ!


 ズドッッ!!!!



203 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 08:46:19.68 ID:xNE88kxH0

魔王「……」

魔物「……」

魔王「……がッ!」ブシャ――

魔物「……」

魔王「がふッ……! ぎッ……!」ガク

魔王「ぐ……」ドサ……

魔物「やっ……た」

女魔物「あたしたちの、勝ちね」

魔王「……」ヒュー ヒュー……

魔物「最後に、いい残すことは?」

魔王「……絶望を」

魔物「?」

魔王「絶望を知れ」


204 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 08:48:56.61 ID:xNE88kxH0

魔王「そこの、女」

女魔物「……?」

魔王「“死ね”」

魔物「!?」


 ピシュン――!


魔物「き、消えた?」

魔王「あの女は今頃、上空数百メートルの位置にいるだろう」

魔物「何!?」

魔王「我の転移魔法だ。今すぐ手を打たなければ地面に激突し、即死だろうな」

魔物「そ、そんな!」

魔王「……さあ、選べ。我を殺すか、それとも女を助けるか」

魔物(今から行けば……! いや、しかしとどめを刺さなければきっと魔王は蘇生する! そうなれば逃げられて、もっと被害は大きくなる!)

魔物「くそ!」


205 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 08:50:55.75 ID:xNE88kxH0

魔王「我はお前に知ってほしいのだ。絶望というものをな。英雄気取りの糞餓鬼が」

魔物「この外道がぁ!」

魔王「さあ、えら――うぶッ!」ドス!

魔物「彼女とは約束したんだ。絶対にお前を倒すって!」

魔王「ふ……そう、か……。では……悲しみの、淵に、沈むが……いい」

魔物「……くそ!」


 ダッ――!



209 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 09:13:31.80 ID:xNE88kxH0

<魔王城.門前>


 タッタッタッタ――ザッ!


魔物「誰かいないか!」

「ここに。どうなさいました?」

魔物「実は、あいつが――」


 ――ザシュッッ!!


魔物「……何の、音だ?」


211 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 09:16:58.23 ID:xNE88kxH0


 ザワ ザワ……


「あ、あれは何だ?」

魔物「……」

「あの塔の先に何かが……刺さっているぞ?」

魔物「……」





女魔物「――――」





魔物「……う」

魔物「うわああああああああああああああああああああああああああ!」


213 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 09:24:41.57 ID:xNE88kxH0

<現在.魔王城.牢屋>


魔王「あいつの死体を下ろすのにはだいぶ手間取った」

勇者「……」

魔王「この城の一番高い尖塔の先に、あいつはいた」

勇者「……」

魔王「いくつもの魔法を試みたんだろうな。あいつの中にはもう、魔力は少しも残ってなかった」

勇者「……」

魔王「苦しんでるような、あっけにとられているような、でも泣いているような。そんな死に顔だった。ああいう顔を、絶望と言うのだろう、な」

勇者「……」

魔王「こうして我輩は英雄になった。いくつもいくつも失ったまま……いくつもいくつも傷を抱えたまま」

勇者「……」

魔王「メイドの奴がいなければ、我輩はとうに折れていただろう。あいつには感謝してもしきれんよ」

勇者「……」


214 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 09:26:00.03 ID:xNE88kxH0

魔王「だから、我輩は、もう誰かが痛い思いをするのは、こりごりなのだ」

勇者「……」

魔王「こりごりだったのに……」

勇者「なくな」

魔王「……」

勇者「なくな……」

魔王「……お前が一番泣きそうな顔をしておいて何を言う」

勇者「……だって」

魔王「ああ、そうだ、知っている。お前はやさしい奴だから。我輩の知るみんなは、誰も彼もやさしいから」

勇者「……」

魔王「……」


217 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 09:29:37.65 ID:xNE88kxH0

魔王「……いかんな。辛気臭い話になった。メイドはまだ死んでおらん。生き残るかも怪しいが、それでもまだ、死んでおらん」

勇者「……ああ」

魔王「だから、我輩らは待とう」

勇者「ああ」

魔王「何か明るい話をしよう。付き合ってくれるか?」

勇者「いいとも。いくらでもつきあおう」

魔王「ありがとう」

勇者「何を話す?」

魔王「くだらないことでいい。その方が気がまぎれる……。お前のパンツ何色?」

勇者「……ふ、はは。死んじゃえ」


218 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 09:33:17.81 ID:xNE88kxH0

     ・
     ・
     ・


魔王「――とまあ、側近は力を尽くしたんだが、メイドには伝わらず『ありがとう、これからも良い友達でいましょう』ってな」

勇者「かわいそうだな」

魔王「はは、まあ、あいつは元気が取り柄だ。くよくよ悩んだりせんのさ。……あー、話すことがなくなったな」

勇者「ん、そうか」

魔王「いや、あと一つだけ」

勇者「なんだ?」


220 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 09:39:42.25 ID:xNE88kxH0

魔王「もし――もしだぞ?――、この戦争が終わったら、何がしたい?」

勇者「……わからない。そんなこと、かんがえてみたこともなかった」

魔王「我輩のしたいことを聞いてくれるか?」

勇者「いいだろう」

魔王「……我輩はなあ――笑わないでくれよ? ……ドラゴンを見てみたい」

勇者「ドラゴンを?」

魔王「ああ、お前も知ってるだろう? あの伝説上の生き物だ」

勇者「いちおうきいたことはある。おおきなとかげのようなすがたをした、とてもつよいいきものだ」

魔王「その通り」


222 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 09:42:31.76 ID:xNE88kxH0

魔王「こんな話を知っているか? ドラゴンは王たる資格を持つものを主人に選ぶのだそうだ」

勇者「しゅじんをえらぶ?」

魔王「そうだ。そして主人を助け、悪をくじくのだ」

勇者「……」

魔王「各地で目撃証言はあるものの、その実在は証明されておらん。証言すべてが作り話だという者もおる」

勇者「……おまえはしんじるのか?」

魔王「ああ、信じるとも。――なにせメイドが、見た、と言い張るのでな」


224 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 09:43:48.46 ID:xNE88kxH0

     ※


メイド『あれは……』


 バサッ バサッ――


     ※


226 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 09:46:11.40 ID:xNE88kxH0

勇者「ほんとうか?」

魔王「ああ、本当だ。あいつが嘘をつくとは我輩は思えん」

勇者「そうか。……そうだな」

魔王「だから、我輩はいつか、メイドと一緒に……」

勇者「……そのときは」

魔王「ん?」

勇者「そのときは、おれもいっしょにつれていってくれないか?」

魔王「……いいだろう。一緒に行こうではないか」ニカッ


230 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 09:58:59.49 ID:xNE88kxH0
魔王「いやーしかし……」

勇者「なんだ?」

魔王「あ、いやな。側近をはじめ、部下の奴らは根はいい奴らなんだが、いかんせん脳筋でな、我輩とは立場が違うんだよ。我輩のことを理解してくれるのはメイドだけだった」

勇者「それで?」

魔王「うん。メイドが倒れた今、我輩は今度こそ孤独になったと思った」

勇者「ちがうのか?」

魔王「分からん」

勇者「……?」

魔王「さーて、我輩は本当に孤立したのかな? どうにもそうは思えんのだ」

勇者「よくはわからないが……よかったな」

魔王「ああ、ありがとう」

勇者「……れいをいうほどか?」

魔王「……ありがとう」

勇者「???」

魔王「……ふふ」

231 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 10:00:19.77 ID:xNE88kxH0

<数日後.魔王の私室>


魔王「うーん……」パチ

魔王「ふわぁ……おい、メイド」

魔王「……メイド?」

魔王「ああ、そうか……何日経ってもあいつがいないのは慣れんな」

魔王(あいつは、今は医者のところだ。まだまだ危険な状態だが、一応、生きてはいてくれてる)

魔王「……生きろよ。我輩のそばにいてくれるんだろうが」

魔王「――そういえば、勇者の処刑日も間近だ。こちらはどうするか」


 ――


魔王「?」


 ――カッ ドゴォォォオ! グラグラ……


魔王「……なんだ!?」


233 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 10:03:39.78 ID:xNE88kxH0

<同時刻.牢屋>


勇者「……」

勇者(……また、ふりだしだ。おれはどうすればいい? あの魔王をほんとうに殺せるのか?)

勇者「……」

勇者(けっしてどうじょうではない。ただ……)

勇者「……むぅ」


 ――カッ ドゴォォォオ! グラグラ……


勇者「……?」


236 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 10:06:37.91 ID:xNE88kxH0

<魔王城.廊下>


 ――ドゴォ! ドゴォ! グラグラ……


魔王「これは……魔法による攻撃か! 魔王城が誰かに攻められている? 一体誰に?」

魔王「……誰かいないか!?」


 シーン……


魔王(? おかしい。誰の気配もないぞ)


 カッ ドゴォォォォ! グラグラ……


魔王「つっ。一体どうなっておるのだ!」


238 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 10:08:28.66 ID:xNE88kxH0

 タッタッタッタ……


魔王(誰か来る……)

「魔王様!」

魔王「……側近か」

側近「魔王様、こちらにいらっしゃいましたか」

魔王「ああ。何が起こっている?」

側近「……」

魔王「どうした? 何を黙っておるのだ」


241 名前:>>237 大層御免、我血迷。今書中、連休中必投下[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 10:11:35.28 ID:xNE88kxH0

側近「……」スッ

魔王「……何のつもりだ。なぜ構える」

側近「魔王様、申し訳ありません」シュッ!

魔王「……ッ」ガキィン!

魔王「どういうことだ! なぜ我輩に拳を向ける!」

側近「私は知ってしまったのです。魔王様、あなたは危険分子だ。心当たりならあるはずです」

魔王「心当たりなど……。っ……!」

側近「やはりですか」


243 名前:>>239 改変少、誠謝罪。只我欲改脱字[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 10:17:51.69 ID:xNE88kxH0
側近「あなたは勇者に関わりすぎた。もう、情が移ってしまったのでしょう?」

魔王「違う……」

側近「私を舐めないでください。あなたの目を見れば分かります」

魔王「……」

側近「……殺します。恨まないでください」シュッ!


 ――スカッ


側近「!?」


 ――ドスッ! ブシュ!


側近「がッ――」

魔王「すまん……」

側近「――」ドサァ……

245 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 10:19:57.46 ID:xNE88kxH0

魔王「一体、なぜ……」

『たとえば勇者に情が移ってしまったのではないか……とか』

魔王「まさか……!」


 ガシャァァァァン! スタ! スタ! スタ!


「……」

魔王「お前たち、なんのつもりだ。我輩は魔王であるぞ」

「シッ――」シャッ!

魔王「くっ……」ヨケ

魔王(こいつらもか!)


 カッ――ドゴオオォォォ! ミシミシ!


魔王「チッ、まずは外だ!」ダッ!

「……」ダッ!

249 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 10:25:50.58 ID:xNE88kxH0
<魔王城.別の廊下>


 ドゴォォォォォオオオオオ!


勇者「なにが、おこってるんだ?」

勇者「……!」


 タッタッタッタ――ザザッ!


「いたぞ、勇者だ」

勇者「……なんだ、お前らは」

「知る必要はない。死んでもらうぞ」


 シュッ――


勇者「ふッ!」ジャッ


 ガキィン!



250 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 10:27:11.40 ID:xNE88kxH0

「な!? 魔物の振るう剣を素手で受け止めただと!?」

勇者「たんれんが――」


 ゴッ――!


「ひっ……」


 ドゴォッ!


「ぎゃあ!」ドサドサドサ!


勇者「――たりねえよ」


255 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 10:30:49.61 ID:xNE88kxH0

<魔王城.城門前広場>


魔王「てッ!」シャッ!

「……っ」バキィ! ドサァ……

魔王「これで全てか」

魔王(……襲いかかってきたのは全員魔物だ。人間側が攻めてきたわけではない。ということは……)

魔王「あまり、考えたくないな」

「魔王!」

魔王「勇者か」

勇者「これは、どういうことだ?」

魔王「我輩が聞きたい。が、想像はつく。きっと我輩のやり方が気に食わない奴がいるのだろう」

魔王「――だろう? 元帥」




元帥「おや、バレてましたか」スッ


258 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 10:32:51.13 ID:xNE88kxH0

魔王「どういうつもりだ?」

元帥「あなたが一番よく御存じのはずだ」

魔王「だろう、な」

勇者「?」

「これはこれは。勇者様が魔王と一緒にいるなんてな」

勇者「! 中隊長!」

中隊長「お前、自分の役割を忘れたわけじゃないよな?」

勇者「……」

元帥「やはり、この人間の言う通りだったか」

中隊長「だろう? 魔王は勇者を殺せない。人間と魔物の全面戦争を避けるために、な。とはいえ、並んで立つほど仲良くなるとは思わなかったが」


259 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 10:35:14.78 ID:xNE88kxH0

元帥「魔王様、見損ないました。あなたには魔界の王としての誇りはないのですか」

魔王「誇り、か。ならば問おう。お前にはそれがあるのか? 人間と手を組んだお前にな」

元帥「ふ……ははは。それはごもっともですな。私もあなたも手を汚してしまったようだ。だが、私には信念がある! 通すべき意地がある!」

魔王「我輩にはないとでも? 笑わせるな!」

中隊長「はーい、ストップストップ。熱くなってるとこ悪いけど、話はそこまでだ。――勇者」

勇者「……!」

中隊長「お前はこちら側だ。戻ってこい」

勇者「……」


261 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 10:38:36.27 ID:xNE88kxH0

中隊長「お前は、魔王に家族と住む場所を根こそぎ奪われ、ここまでやってきたはずだ。魔王を殺したいほど憎んでいるはずだ」

勇者「……」

魔王「……」

中隊長「そうだろう? 違わないよな? だったらこっちに戻ってくるんだ。いままで魔王殺害を完遂できなかったことは水に流そう」


262 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 10:40:33.51 ID:xNE88kxH0

     ※

『魔物だ! 魔物が襲ってきた!』

『あなたは逃げなさい! ここは私たちが守るから!』

『うわああああああ!』

『死にたくない、助けてくれぇ!』

     ※


266 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 10:46:05.55 ID:xNE88kxH0

勇者「……もどるもなにも……おれは魔王についたおぼえはない」

魔王「っ……」

中隊長「それでいい。なら、ここで魔王を殺すんだ。剣ならある。特別に鍛えた名刀だ。魔族の強靭な肌を切り裂き、肉を分け、骨を断つ。これで魔王を殺せ」ポイ


 カラン……


勇者「……」ガシ

魔王「……」

勇者「……」チャキ!


267 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 10:47:20.31 ID:xNE88kxH0

勇者「魔王」

魔王「……なんだ?」

勇者「おれは、おれのせいぎに、したがう」

『おまえとじぶんを殺す。そうしてにんげんにへいわをもたらすんだ』

魔王「……ああ、それでいい」

勇者「じゃあ、な」スッ――

魔王「だが、最後に一つだけ」

勇者「……なんだ?」

魔王「お前が育った村のことだ」

中隊長「……!」

魔王「東の、湖のある村な。あそこは――」

中隊長「やめろ!」

勇者「中隊長……?」

魔王「あそこは、軍事拠点だったんだよ」


268 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 10:48:35.13 ID:xNE88kxH0

勇者「……?」

中隊長「くっ……」

魔王「戦略上重要な拠点だから魔物が襲ったわけだ。……分からないか? 軍事拠点には普通、民間人は入れないんだよ」

勇者「……」

魔王「軍事拠点に、民間人はいない。つまりな、お前は――」






魔王「おそらく騎士団が作り上げた、文字通り最終兵器なのだよ」


272 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 10:51:47.36 ID:xNE88kxH0

勇者「どういう、ことだ?」

魔王「我輩が説明するまでもない。お前はもう、知ってるはずだ。だっておかしいだろう、かつては普通に暮らしていたのに名前がないだなんて」

勇者「……」

魔王「記憶に聞いてみろ」

勇者「……」


『――ろせ!』


勇者「っつ……」


『――殺せ!』


勇者「いたっ!」


『――殺し尽くせ!』


勇者「いたい! やめろ!」

勇者(なんだ……? なんなんだこれは!?)

273 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 10:53:04.08 ID:xNE88kxH0

     ・
     ・
     ・


『――この少年が今度の被検体ですか』

少年『……』

『その通りだ。最高傑作に仕上げてくれ』

『かしこまりました』



『強化措置終了。増強筋力、定着。疑似魔力、定着。第六感、定着』

『――成功です』


276 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 10:59:48.00 ID:xNE88kxH0
『――やれ! 殺せ! お前はまだまだこんなものじゃないだろう!』

少年『……』


 ――ぎゃああああああああああああああ!


『そうだ、それでいい! 殺して殺して殺し尽くせ!』

『お前は正しく我々の希望だ! 最終兵器だ!』

『魔物どもを、なぶり殺しにしろ!』

少年『……』



『お前には名前は必要ない。だが、記憶を与えてやろう。家族と幸せに暮らした、そういう疑似記憶だ』

少年『……』

『そして、魔物を恨め、魔王を憎め。さすれば、お前は真に殺戮機械となるだろう』

少年『……』




少年『……』

279 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 11:01:28.72 ID:xNE88kxH0
勇者「――――あああああああああああああああああああああああ!」

魔王「思い出したか……」

中隊長「チッ、余計なことを」

勇者「ああああああああああ、ああ! うわあ! おれは……おれは!」

魔王「……勇者」

勇者「おれは、おまえたちの道具か!?」ジャキ!

中隊長「……」

元帥「どうするのだ?」

中隊長「……」フゥ……

中隊長「……勇者、俺はさあ、お前の立場に同情してたんだよ。本来ならお前をここで始末しなきゃならなかったんだが、チャンスを与えてやったんだ。それなのに無駄にするのか?」

勇者「ふざけるな! なにがどうじょうだ、なにがチャンスだ! おれはおまえたちのおもちゃじゃないぞ!」

中隊長「戻ってくる気は、ないんだな?」

勇者「ない!」

中隊長「そうか」

280 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 11:03:39.88 ID:xNE88kxH0

中隊長「じゃあ――」スッ


 ターン……


中隊長「死ね」






勇者「……!?」ドブシャ!


283 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 11:07:35.33 ID:xNE88kxH0

魔王「勇者!」

勇者「がッ――!」ドサァ

中隊長「チッ、当たったのは左肩か。心臓を狙わせたんだが……あの下手糞が。いや、紙一重で避けたのか?」

魔王「一体、何をした!?」


 ターン……


魔王「!?」ブチャァ! ドサァ

中隊長「実際味わってみた方が早いでしょ」

魔王「み、右腕がッ! 一体何がッ……」


288 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 11:10:46.50 ID:xNE88kxH0

中隊長「施条銃」

魔王「……?」

中隊長「人間が狙撃の概念を生み出したのはつい最近だよ。知らなくても無理はない」

魔王「狙撃……?」

中隊長「遠ーくから、ズドン! 不意打ちならば防ぐ手段はなく、ゆえに避けられない死だ。人間は、ついに英雄なしで魔物を圧倒できるようになったんだよ。弾数が少なくてもう打ち止めなのが痛いところだけれど」

魔王「……」

中隊長「もう超人はいらない。魔王はいらない。……死んでもらうぞ」


290 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 11:13:39.92 ID:xNE88kxH0
魔王「勇者」

勇者「……」ヒュー ヒュー……

魔王「立つぞ、勇者」

勇者「……」

魔王「いいな、メイドが待ってる。立つんだ」

勇者「……」

勇者「……こな、くそ!」ムクリ

魔王「……」ムクリ

元帥「ほう……」

中隊長「……立つか。苦痛が延びるだけだぞ?」

魔王「悪いな……待ち人がいるんだよ」スッ

勇者「ハァ……ハァ……」

元帥「私は魔王様を」スッ

中隊長「じゃあ俺は勇者だ」スッ

291 名前:>>289 本当御免!欲許遅滞![sage] 投稿日:2010/10/10(日) 11:17:35.96 ID:xNE88kxH0

元帥「魔王様」

魔王「……なんだ?」

元帥「尊敬しておりました……さようなら」バッ

魔王「っ……!」ガキィン!



中隊長「勇者」

勇者「……」

中隊長「短い間だがご苦労だった」シュッ!

勇者「この……!」キャァン!


293 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 11:23:47.94 ID:xNE88kxH0

元帥「魔王様、いい眺めです。右腕が吹き飛んであの召使いとお揃いですね」

魔王「……っ」

元帥「しかし……さすがは魔王様。その怪我でよく私についてこられますよ」シュッ!

魔王「……」キン!

元帥「それほどの力を持ちながら……なぜ人間との敵対を避けたのです?」ブン!

魔王「……」ガキン!

元帥「あなたの力があれば圧勝でしたでしょうに!」ギギギ!

魔王「……誰かが傷つくのは、もう沢山なんだよ!」ギギ!


294 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 11:25:19.76 ID:xNE88kxH0

元帥「……。私の家族は人間に殺されました」

魔王「……」

元帥「あなたが仇をとってくれると思った! なのに!」ジャッ!

魔王「っ……!」ビシ! ガク……

元帥「……あなたは、私の望みをかなえてはくれないのですね」スッ

魔王「……」

元帥「もういいです。私があなたに代わって、人間を根絶やしにいたしましょう」

魔王「人間を駆逐するために人間と手を組む、か」

元帥「……いずれ私にも罰が下るのでしょうね」


295 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 11:28:09.57 ID:xNE88kxH0

中隊長「なあ勇者、俺がなぜ戦うか知っているか?」ビッ!

勇者「……」キン!

中隊長「俺の兄貴は魔物との戦いで死んだのさ」シャッ!

勇者「っ……」ガキン!

中隊長「仇をとろうなんて大層な目的は全くない。だがな、報いてやりたいじゃないか、ええ?」ジャッ!

勇者「がっ……」ズバシュ! ガク……

中隊長「だから、俺の邪魔をするんじゃねえよ」

勇者「……このっ」

中隊長「……いい目だな。兄貴と似てる」


297 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 11:33:23.24 ID:xNE88kxH0

元帥「では」

魔王「……」



中隊長「じゃあ」

勇者「……」



元帥・中隊長「終わりだ」スッ

魔王・勇者「っ……!」








「グオオオオオオオオオオオオオ!」


300 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 11:37:20.55 ID:xNE88kxH0

元帥「なんの音だ?」

中隊長「いや、音というより……鳴き声?」

魔王「これは……」

勇者「!」



 バサッ バサッ バサッ……ドスン!



魔王「……ドラゴン!?」

ドラゴン「キシャアアアアアアアア!」


304 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 11:39:21.73 ID:xNE88kxH0

元帥「……こんなものが現実にいるはずが!」

中隊長「でかい……」

「おおおおおおおおおおおお!」

元帥・中隊長「!」


 ズバシュ!


元帥「うぐ……っ!」ドサ

中隊長「がは……っ!」ドサ

魔王「ゼィ ゼィ……」

勇者「フゥ ハァ……」

魔王「よそ見をするな馬鹿が……」

勇者「おれたちの、かちだ……」


305 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 11:41:59.85 ID:xNE88kxH0

     ・
     ・
     ・

魔王「……」

勇者「……」

ドラゴン「……」

魔王「……敵なのか?」

勇者「いや、てきいはかんじない」

ドラゴン「……」

魔王「ドラゴン……やはり実在したのか」

ドラゴン「……」スッ

勇者「なんだ? ……おれにのれって言ってるのか?」

魔王「ドラゴンは、王たる資格を持つ者を主人に選ぶ……」

勇者「あ……」

魔王「そう言うこと、か?」

勇者「……」

308 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 11:44:08.62 ID:xNE88kxH0

勇者「いきなりすぎてなにがなんだか……」

魔王「だな、我輩も同感だ」

ドラゴン「グルルル」

魔王「だが、早く乗らないと食べられてしまいそうに見える」

勇者「……」

ドラゴン「……」

勇者「お前はおれをどこにつれていくんだ?」


 ――望むまま、どこへでも


勇者「どこへでも……」

魔王「……」


311 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 11:46:01.83 ID:xNE88kxH0

勇者「……おれは、どこへいきたいんだ?」

魔王「……」

勇者「おれはどこへいけるっていうんだ!」

魔王「勇者……」

勇者「おれはかこをうしなった! ぜんぶぜんぶうそだった! おれにはもうなにものこっていない!」

ドラゴン「……」


312 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 11:47:15.31 ID:xNE88kxH0


 ――遠く地平の彼方へ。そなたの切り開く未来の先へ


勇者「みらい? かこをうしなったおれにみらいはない……」


 ――ある。何処からものびる流れの先に


勇者「……」


 ――立て


勇者「……」



 ――……立て



314 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 11:56:02.40 ID:xNE88kxH0

魔王「勇者」

勇者「……」

魔王「お前には、まだ選択肢が残っている。つらく、苦しく、容易ではないが、まだ、道がのびている」

勇者「……知ってる」

魔王「……」

勇者「……お前がやったように、かこがなくともみらいを作る。そんなせんたくしが、のこってる」

魔王「……」

勇者「……だろう、英雄?」

魔王「……そうだ。お前はまだ、死んでいない」


315 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 11:57:27.40 ID:xNE88kxH0

ドラゴン「……」

勇者「……ドラゴン。おれを帝国までつれていってくれ」

魔王「気をつけて行けよ」

勇者「……つぎにあうのは、何年後になるだろうな」

魔王「できるだけ、早い方がいい」

勇者「そうだな。どりょくする」

魔王「待ってる。メイドと一緒に」

勇者「ああ」スッ

ドラゴン「グルルル」バサッ

魔王「! ちょっと待ってくれ!」

勇者「……?」


316 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 11:58:35.34 ID:xNE88kxH0

魔王「お前はこれから、長い長い苦難の道を歩む。それはそれは険しい道だ。いつ死ぬともわからない。失敗するかもしれない」

勇者「……」

魔王「だから、絶対に失敗しないようにおまじないをしよう」

勇者「おまじない……?」

魔王「ああ、≪契約≫だ」バサ

勇者「紙?」

魔王「覚えてないか。契約魔法だよ」

勇者「わすれるものか。でも……」

魔王「ああ、これはただの紙だ。魔力なんて全然込められてない。でも、この契約は、お前を何よりも強く守ってくれるはずだよ」

勇者「……おれには名前が」

魔王「名前なんぞ我輩がつけてやる。人生、始めるのはいつだって『今』だ。違うか?」

勇者「……いいや。うん、ちがわない」


317 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 12:00:29.32 ID:xNE88kxH0

魔王「ごほん、では」

勇者「……」

魔王「――今、この場において、魔王の名により、汝に名前を授ける! その名、幸運の子、神の加護をその身に受けし者! 汝に永遠の栄光があらんことを!」

勇者「……」

魔王「……お前は今日から、『ラック』だ。ダサい名前などと思わないでほしい。我輩が心をこめてつけた名だ」

勇者「ださいものか。お前が心をこめてつけた名だ」

魔王「……よし」

勇者「……うん」


318 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 12:02:26.18 ID:xNE88kxH0
魔王「契約書は我輩が預かる。また数年後、見に来い。絶対だ」

勇者「ああ、ぜったいだ」

魔王「では存分に活躍して来い。新しき英雄」

勇者「分かった。古き英雄」

ドラゴン「グオオオオオオオオオ!」バサッ!


 バサ! バサ! バサ!


魔王「さらばだ!」

勇者「またな!」


 ――ヒュゴッ!


魔王「……」


 ――


魔王「……元気でな」

320 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 12:03:07.54 ID:xNE88kxH0


     ・
     ・
     ・



322 名前:>>319 極小手直、欲許[] 投稿日:2010/10/10(日) 12:05:37.13 ID:xNE88kxH0

◆◇◆◇◆


かつて、魔王と皇帝により、世界が二つに分かれた時代があった
激しくぶつかり多くの命を散らしていった

だが、時代は変わる
人は変わる
ドラゴンの背に乗った少年がそれを変える

皇帝の圧政に苦しむ人々を励まし、元気づけ、少年は少しずつその輪を広げていく
そしてできた大きな流れが、時代の枷を破壊した

十数年後
新皇帝と魔王が、和平の契約を交わす

人々の思いが、その約束に魔法をかける
未来永劫、破られぬように
未来永劫、忘れられぬように


◆◇◆◇◆


323 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 12:06:37.39 ID:xNE88kxH0

     ・
     ・
     ・


「おーい、お前、何をしてるんだ?」

「あらあなた。これはお客様を招く準備ですよ」

「客人? 今日は特にそんな予定はないはずだが」

「ふふ、今日はあの子が来る気がするんです」

「……なるほど。お前の勘は外れないからな」

「あらあら、外れるときは外れますよ」

「ん……?」


 ――バサッ バサッ……


「……来ましたね」

「ああ、来たな」


324 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 12:09:40.86 ID:xNE88kxH0


 ――バサッ ドス


「我、幸運の子、神の加護を身に受けし者! 腕の再生治療の件で魔王ご夫妻に会いに来た!」






魔王「ふふ、おかえり、ラック」

皇帝「ああ、ただいま。……待たせたな」


325 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 12:10:48.66 ID:xNE88kxH0





 title:魔王「勇者捕まえた」


      ~END~






327 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 12:11:55.21 ID:xNE88kxH0
終了
支援多謝
再見ノシ

コメント

やばい!超壮大!傑作!

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