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律「梓は一人ぼっちじゃない」

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 18:18:07.88 ID:KCtfuLNj0 [2/28]

あの日、律先輩は私に言ったんだ。
「梓は一人ぼっちじゃない」って――

だから私は、この場所に笑顔で居られる。




6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 18:22:24.91 ID:KCtfuLNj0 [3/28]
今日も軽音部から賑やかな練習の音――否、おしゃべりの声が聞こえる。
今ではすっかりそれに慣れてしまって、最初の方は「練習しましょうよ!」と口うるさく
言っていた私も、部室に入るなりドアの付近に立っていたムギ先輩に「ミルクティーお願いします」
と言って席に座った。

「はーい」

ムギ先輩が嬉しそうに返事をすると、早速ポットから私専用(らしい)のカップに
淹れて持って来てくれた。ありがとうございます、とお礼を言って一口啜ると、
スティックを肩たたき代わりに使っていた律先輩が「あ、そうだ」と思い出した様に
私に言った。



9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 18:28:18.60 ID:KCtfuLNj0
「梓、私たちがいなくなってからのことなんだけど」

それは唐突に。
今まで考えてなかったことを。思い出さないようにしていたことを。
律先輩は少し眉を顰めて、心配そうに私を見て言った。

「へ?」

私は間の抜けた返事をした。そうするしかできなかった。
そうだ、もうすぐ先輩たちは卒業してしまう。
私は気付いた途端、ただの小さな子供みたいに泣き出すわけでもなく、ただ何も
考えられなくなった。
「いなくなる」ことがショックだったわけじゃない。そんなの最初からわかってた
ことなんだから。

だけど。先輩からそんな言葉が飛び出すと、「あぁ、もうすぐなんだな」って。
この部室は、もうすぐ私しかいなくなるんだなって。そう意識せざるを得ない。


12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 18:39:19.40 ID:KCtfuLNj0
「あずにゃん?」

黙り込んだ私に、唯先輩が律先輩と同じく心配そうな顔をして頭を撫でてくれる。
この気持ちのいい感覚ももうすぐ感じれなくなってしまう。
私は先輩たちに迷惑を掛けたくないと思った。
先輩たちを、笑顔で送り出すんだ。

ねえ、私。独りでも、大丈夫だよね?

自分に言い聞かせる。そして私は笑顔を浮かべて言った。
「大丈夫ですよ」って。これでこの話は終わり、と言う様に。
今はちゃんとした話はしたくない。部の存続がどうとか、これからどうするだとか。
そんなことは今はどうでもいい。先輩たちとの“今”を楽しみたかった。
だから私が暗い顔なんてしてちゃいけないんだ。

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 18:44:54.05 ID:KCtfuLNj0
律先輩は何か言いたそうだった。けど私は成り行きを見守っていた澪先輩に
「練習しましょう」と言って立ち上がった。

今はまだ。
終わりを意識したくない。

.

「梓、そこの部分はもう少し長く伸ばした方が良くないか?」
「ねえねえあずにゃん、ここの部分、教えて!」
「梓ちゃん、ケーキ、どれがいい?」

何とでもない日々。いつもの日常。
なのに。
さっきの律先輩の言葉が蘇る。

『梓、私たちがいなくなってからのことなんだけど』




15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 18:49:11.19 ID:KCtfuLNj0
どうしてだろう。
その言葉が頭の片隅でちらつく度、この光景が、ぼやけて見えなくなる。
先輩たちの優しい声に、耳を塞ぎたくなる。

律先輩があんなこと言うから。

と、八つ当たりしたくなる。律先輩や、もちろん他の先輩方だって、私の
ことを心配して言ってくれてるのはわかってるのに。

「梓、どうした?」

突然、律先輩が演奏の手を止めて言った。
私ははっとして周りを見回した。4人の先輩は皆、私を見ていた。
そして今、皆で演奏中だったことを思い出す。私の手は完全に止まっていた。




16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 18:54:50.76 ID:KCtfuLNj0
「あ、すいません」と慌てて謝る。唯先輩が「大丈夫だよ」って笑ってくれた。
ムギ先輩が「もう一回やろう」と言ってくれた。澪先輩が項垂れる私の頭を撫でてくれた。
けど律先輩は違った。

「……今日はもう解散!」

突然の宣言。それには私はおろか、長年一緒にいる澪先輩や、唯先輩たちも
驚いていた。

「何でだよ律?」と澪先輩が私たちを代表して尋ねた。
すると、律先輩は「なんとなく?」と言って目を逸らした。
その逸らした目線が一瞬私を捉えたことに気付いて、私は言った。

「律先輩、ぼーっとしててすいません!今から集中してやりますから!」



24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:54:49.02 ID:KCtfuLNj0
悪い、野暮ってたorz
続ける。


27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:03:36.44 ID:KCtfuLNj0
だから続けてください!って。
けど律先輩は「うーん」と言ったきり、何も言わず探るように私を見ただけだった。

「そうだよりっちゃん、続けようよー」

唯先輩が助け舟を出してくれた。でも律先輩は首を振った。
澪先輩が何でだよ!、ってさっきより強い口調になって詰め寄る。

「何でって……だから何となくだって。このままやってたって楽しくないし」

律先輩は珍しく小さな声で言うと、「じゃ」と言って立ち上がった。スティックを
鞄に仕舞い、部室を出て行く。唯先輩が「どうする?」と言って澪先輩を見た。
ムギ先輩もチャームポイントの眉毛を思い切り下げて困っている。
澪先輩は溜息をつくと、「“部長”である律が言ったんだから、仕方無いか」
と言ってベースをケースに戻し始めた。






28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:10:01.31 ID:KCtfuLNj0
「えぇ!?でも……」
「律の言ってること、一理あるし」

渋る唯先輩に、澪先輩が言った。するとそれを聞いていたムギ先輩が「そうよね」
と頷いた。唯先輩も渋々ながら今日は解散に同意したようでギターを仕舞い始めた。

何?どういうこと?私がいけないの?楽しくないって、私がぼーっとしてたから?

私は混乱して、矢継ぎ早に浮かんでくる質問を先輩方に投げかけようとした。けど
上手く声が出ず、酸欠の金魚の如く口をパクパクさせることしか出来なかった。

「それじゃあ、梓」
「バイバイ、あずにゃん」
「また明日ね。あ、私たちは明日自由登校なんだけど……部室には来るから」

最後にムギ先輩が、申し訳なさそうにそう言い置いて出て行って、この部室は私
一人になった。
私はその場に立ち尽くした。

この光景が、もう少しで訪れる軽音部の未来――






29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:15:14.38 ID:KCtfuLNj0
たった4人、この場所からいなくなっただけでこんなにもこの場所が冷たい空気で
溢れるだなんて。
こんなにも寂しくて、不安な場所になるなんて。

もうすぐ、私は独りになる。

改めてそのことを強く強く感じた。怖かった。先輩たちに縋りついてしまいたい。
今まで一緒に過ごしてきた。その人たちが私の前からいなくなる。そんなの当たり前。
だって、卒業するんだから。卒業は悪いことじゃない。寧ろいいこと。
一生会えなくなるわけでもない。

なのになんで、こんなにも前がぼやけて見えなくなるの――?

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:23:18.85 ID:KCtfuLNj0
突然、ガタリと物音がした。部室のドアが開いた音だった。
開かれたドアの前には憂と純の姿があった。

「梓ちゃん」

憂が呼びかけてきた。私は一度振り向いた顔をすぐに逸らした。泣き顔を見られたく
なかった。急いで涙をぬぐうと「どうしたの」と答えた。
純が言い難そうに答えた。

「律先輩に、頼まれた」
「え?」
「梓が多分泣いてるだろうから行ってやってくれって」

何それ。律先輩は何でそんなことを。
そんな私の思いを察したのか、憂が私の頭を撫でて、そして唯先輩みたいにぎゅっと
私を抱き締めて言った。

「多分……、律さんは梓ちゃんを泣かせてあげたかったんだと思うよ」
「どういうこと?」
「梓ちゃん、一人じゃないと泣けないでしょ?だから」
「……そんな」

そんなわけ。あの大雑把でいい加減な律先輩がそんなこと考えるわけ、ないよ。
ないけど……。
私はぼろぼろと涙を流した。憂が抱き締めてくれた。純が私の頭を少し乱暴に、
けど優しく優しく撫でてくれた。





31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:28:49.72 ID:KCtfuLNj0
泣き止んだ頃には下校時刻になっていて、私は純の後ろに隠れるようにして
帰路についた。目が凄く腫れてるはずだから。

純とは学校の近くの公園で別れた。今日は寄っていくところがあるらしい。
バイバイ、と手を振ると、純があ、そうだと言って私に耳打ちした。

「律先輩からもう一つ伝言、部長があんまり練習熱心だと新入生が入ってくれないぞ、
だって」

何で律先輩はそんなこと言うんだろう。それではまるで、もう部長が律先輩じゃない
みたい。部長は律先輩なのに。



32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:34:48.78 ID:KCtfuLNj0
憂に送られて帰宅すると、携帯に3通のメールが届いていた。
全部、軽音部の先輩からだった。

『あずにゃん、今日帰りに美味しそうなケーキ屋さん見つけたよ!今度一緒に行こうね!』
『梓、今日は先に帰ってごめんな。明日は沢山練習しような』
『明日のケーキは何がいい?梓ちゃんの好きなものを持っていくからね!』

皆いつもどおりで。そして、まだちょっと未来のことを話してくれて。
だからまだ今までどおり、先輩たちは部室に来てくれるんだって思って少し
安心した。
律先輩からのメールはなかった。



33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:40:13.07 ID:KCtfuLNj0
次の日、部室へ行くと全員顔を揃えて私を待っていた。
昨日、メールがなくってもしかして怒ってるんじゃないかとか心配していた律先輩は
いつもどおり「おっす、梓」と挨拶してくれてほっとした。
怒っていたわけじゃないらしい。昨日くらいのことでメールすることもないと
思っていただけなのかも知れない。

やっぱり4人がいる部室は暖かくて心地が良かった。
いつまでもこの時間が続けばいいのに。
なんて、そんなことを少し考えてしまう。無理だってわかってるしそんなこと
望んでるわけないんだけど。望んじゃいけないんだってわかってるけど。

そう思っていると、律先輩が「部長」って言った。
私は自分のことなのに何言ってるんだろう、と律先輩を見ると、律先輩の視線は
はっきりと私のほうを向いていた。

「……は?」



34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:46:32.18 ID:KCtfuLNj0
「だから、部長、だろ梓」
「……えっと」
「今度の部長は事実上絶対に梓になるだろうから、その呼び方に早く慣れてもらおうと
思ってな」

律先輩はへらりと笑うと言った。
何で今そんなことを言うんですか、律先輩。そう思った。
だって、まだ律先輩は卒業してないのに。なのに他の先輩方もにこにこと私を
見ている。

皆昨日からおかしいよ。どうして今、そんな引継ぎ式みたいなことをやろうと
するの?私は先輩たちから学んだんです、“今”の楽しみ方を。
今しかないこの瞬間を精一杯生きる方法を。

なのになんで先輩方は。先の方に目を凝らして、そんなに寂しそうに笑うんですか。



35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:54:19.47 ID:KCtfuLNj0
「嫌、ですよ、そんな呼び方」
「何でだ?部長だぞ?良いじゃん」

律先輩が不思議そうに言った。私は首を振った。いやだ、って小さな子供のように。
だって、哀しいよ、そんなの。
嫌だよ、先輩たちがいなくなる、それを受け入れてないわけじゃない。
けど今は、今は私はまだ、ただの軽音部の“後輩”でいたい。

私はまだ、一人になりたくない。
「部長」になると、私は独りになってしまう。

そんなの嫌だ、嫌だよ。



37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 21:15:12.34 ID:KCtfuLNj0
先輩たちが顔を見合わせた。そして、澪先輩が立ち上がると「練習しよっか」と言った。
この話はこれで終わりだ、って言うように。

とりあえず私は頷いた。
もっと別の言葉を伝えなきゃいけないのはわかってる。けど私はそれを伝えちゃ
いけないのもわかってるから。だから私はただ頷いた。

この日の練習、私はもう部長なんて呼ばれなかった。
それでよかった。
けど先輩たちの表情は曇っていた。



39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 21:22:20.16 ID:KCtfuLNj0
下校時間を知らせるチャイムが鳴った。先輩たちがわらわらと楽器を片付け始める。
そういえば最近、唯先輩や律先輩もちゃんと練習してる。
やっぱりもうすぐ卒業だからかな、と考えると練習で少し明るくなっていた気分がまた沈んだ。

律先輩は最後に部室を出た私を待ち伏せていたらしく、先に階下に行ったらしい
他の先輩たちを気にしながら「梓、ちょっと」と私の腕を引っ張って階段から見えない
場所へ連れて行った。

「何ですか?」
「ちょい時間あるか?」
「はあ」

曖昧に頷くと、律先輩は何も言わずに私の手を掴んだまま走り始めた。

「ちょっと、律先輩!?」

連れて行かれた先は、講堂だった。
最近ここに来る度、私は思い出す。私にとっては二年目の、先輩たちにとっては最後の
学園祭のライブを。

律先輩は空いていた講堂に入ると、ドアを閉めて鍵まで閉めてしまった。


40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 21:26:59.73 ID:KCtfuLNj0
「律先輩、もう下校時間ですよ!?」
「大丈夫だって」

律先輩は辺りをびくびく見回しながらもそう言った。そんなふうに言われても
その言葉を信じられない。
律先輩は一通り周りを見回すと、誰も居ないことを確認して長いすに座った。

「ほら、梓も座れ」

私は仕方なく言われたとおりに律先輩と少し距離を開けて座った。
広い講堂に二人だけ。
何か気まずい。

「では」

先輩は突然、口を開いた。
私は何ですか?と言って律先輩を見た。律先輩の表情はいつものおちゃらけた
表情じゃなくて、たまに見せる真面目な“部長”の顔だった。

「今から部長引継ぎ式を開催する」


41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 21:31:56.36 ID:KCtfuLNj0
私は耳を疑った。先輩、今なんて?部長引継ぎ式って……。

「な、何ですかそれ」
「だからそのまま。梓、さっきから部長嫌って言ってっけど、今日以外こんなこと
やれる日ないし」

律先輩はそう言うと、小さく息を吐いて上を向いた。つられて上を見てみたけどそこには
何もなかった。
私は尋ねた。

「どういうことですか」
「あのな、私たち、明日から部室に暫く来られないんだわ。で、受験終わった後も
クラスの何かとかで顔出せない。卒業式の日とかはゆっくり来れるけど、もうそんときは
『部活』じゃないだろ?」

律先輩の口から卒業式とか、受験とか、そんな言葉が出るたびに私の心は重く重く
沈んでいった。

「……嫌、ですよ」

私は言った。部長になんてなりたくない。ならなくていい。ただ、先輩たちと
一緒にいたい。一緒にいれるなら、もう練習なんてしなくてもいいから。



43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 21:39:40.47 ID:KCtfuLNj0
「部長なんて嫌です、私はなりたくないです、だから律先輩が部長続けてください!」

最後は叫ぶように私は言った。律先輩が吃驚したように私を見た。
それでも構わず、私は続ける。

「部長になっちゃったら……、先輩が私に部を引き継いじゃったら……、私、
独りになっちゃいます……っ、そんなの……、そんなの」

絶対嫌だって。けど最後の言葉は言えなかった。律先輩がその小さな身体で
私を抱き締めたから。

「梓、お前は独りじゃないだろ」
「……え」

律先輩は私に顔を見せないようにしながら言った。





44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 21:56:24.70 ID:KCtfuLNj0
「憂ちゃんや、えっと……誰だっけ、佐々木さん?すすきさん?」
「鈴木、ですか?」
「あー、そうそう、鈴木……、純ちゃん?その子だっているし、トンちゃんだって
いるだろ。さわちゃんもいるし。まあさわちゃんはいてもあれだけど……」

律先輩はそこで一旦言葉を切ると、私を抱き締めたまま突然、歌い始めた。
ふわふわ時間、わたしの恋はホッチキス、ふでペン~ボールペン~、
私たち放課後ティータイムの曲全部を。優しい声で。

最後に翼を下さいを歌い終わると、律先輩は照れ臭そうに笑った。

「この曲は私たちが始めて演奏した曲なんだよな。これも全部、梓に引き継ぐ」
「……先輩」
「梓は私たちの軌跡を憶えていてくれ。それで、新しい軽音部を作ってくれ。
これは部長命令な」
「……はい」
「繋がってるよ、私たち。ずっと繋がってる。放課後ティータイムがある限り、さ。
ま、放課後ティータイムは永遠に不滅だけどな!」

私たちは、繋がってる。
ずっと、ずっと繋がってる――

律先輩の歌声が、律先輩の言葉が、素直に私の心に染みていく。




45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 22:08:59.96 ID:KCtfuLNj0
ぎゅっと律先輩の背中に自分の腕をまわしたとき、律先輩がぽつり、と
言った。

「なあ、梓」
「はい?」
「私、ちゃんと部長出来てたか?」

私は突然問われたものの、いいえ、とすぐに首を振っていた。
記憶にある律先輩は全くといっていいほど部長らしくない部長だった。
だけど、そんな律先輩の周りにはいつも誰かがいた。
それは澪先輩だったり、唯先輩だったり、ムギ先輩だったり。

律先輩は私を離すと、そうだろ、と言って笑った。
てっきり何かされるのかと身構えた私は「はあ」と答えた。

「けどな、こうやって部長続けられたのは澪やムギや、唯、そして梓がいたから。
部長ってのは一人じゃ出来ないんだよ、怖いじゃん。部を支えなきゃいけない、
部を引っ張らなきゃいけないってのに。誰も周りに信じてくれる人いなきゃ、
辛いだけじゃん」

驚いた。律先輩がそんなこと言うなんて。
律先輩はちゃんと、そんなこと考えてたんだ。

「だけど皆は私についてきてくれた。だから最後まで部長でいられた。で、私は今、
梓に部長の引継ぎ式をしてる」

律先輩はそういうと、いつもの笑顔で言った。
「梓は一人ぼっちじゃない。だから私は安心して部長を任せられるんだ」って。


46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 22:19:18.44 ID:KCtfuLNj0
初めて感じた律先輩の暖かな体温が教えてくれた。
初めて聴いた律先輩の優しい歌声が教えてくれた。

私は一人じゃないって。

「私たちは卒業しちゃうけどさ、ずっと仲間だって思ってるから。唯たちもさ、
梓が同じ大学来てまた一緒に音楽やりたいなって言ってるし」

何かあったら私に泣きついてきていいんだぞー!と最後は律先輩らしい冗談を言って
私を笑わせてくれた。
一気に気持ちが晴れた。
やっぱり私にとって律先輩は、最高の部長だった。

もう、私は泣かないって決めた。だって、私は一人じゃないから。
ちゃんと、先輩たちと一緒に奏でた音を、放課後のお茶の香りを、私は憶えてるから。
私と一緒に笑って泣いてくれる親友達がいるから。
そして。4人の先輩たちが、ちゃんと私を憶えていてくれるから。

私は一人じゃない。
だから私は、この場所に笑顔で居られる――

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 22:21:35.26 ID:KCtfuLNj0 [27/28]
終わり。

何か色々変になったがorz
色々本編とか無視しちゃってるけど。愛を込めて書いたつもり。
あずにゃんは一人じゃないよ、卒業は終わりじゃない。
これからも皆仲間だから。

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