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妹「兄さんとわたし」

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 22:05:30.68 ID:UYvOdlUt0 [1/33]
男「そういえば今日は何の日だっけ」

妹「父さんと母さんが死んだ日」

男「あー……そうだった」

妹「いつからこうやって二人で暮らしてる?」

男「もうかれこれ十年前か」

妹「私が五歳で、兄さんが八歳」

男「あの頃は何も分かってなかったよな」

男「人の悪意に無意味に怯えたり、誰も信じれなくなったり」

妹「でも、私には兄さんがいたから」

男「そんなもんか? 頼りにない兄だったと思うけど」

妹「ううん、私にとってはいつも自慢の兄さんだったよ」

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 22:09:32.47 ID:UYvOdlUt0
妹「そういえば、近所の弓ちゃん」

男「ああ、お前の幼馴染のことだったな」

妹「昨日見たら、首のところに痣作ってた」

男「……何だって?」

妹「聞いてみたら、辛そうに笑ってただけ」

男「誰かの助けがいるんじゃないのか」

妹「んー……人のお家のことだから私は判断出来ない」

男「俺は、なんとかすべきだと思うけどな」

妹「両親はもうすぐで離婚するらしいし、多分、大丈夫だよ」

男「母方につくのか」

妹「……多分」

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 22:12:53.33 ID:UYvOdlUt0
男「アル中の父親か……どうしようもないな」

妹「私達の親よりはマシだと思うけど」

男「でも、虐待してるんだぞ?」

妹「そうだけど、私ならそれでもいいなあ」

男「生きてるだけマシってか?」

妹「うん、いるだけいいじゃん」

男「……んー、まあ、そうかもしれないけどさ……」

妹「ちょっと暗い話になっちゃったね、何か新しい話してよ」

男「新しい話?」

妹「うん、学校で何があったとか、そういうの」

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 22:16:16.35 ID:UYvOdlUt0
男「特に面白い話もないしなあ」

妹「誰かに告白されたりしてるんじゃないの?」

男「はは、そんなに余裕あるように見えるか?」

妹「時たま見せる幼さがギャップ受け」

男「何だそれ、初めて聞くぞ」

妹「ほら兄さん、昨日だって、寝言で呟いてるじゃん」

男「いや、俺は知らん……」

妹「えーっ、結構な回数で喋ってるのになあ」

男「俺はそれでなんて言ってるんだ?」

妹「んー……内緒」

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 22:19:24.80 ID:UYvOdlUt0
男「……腹が減ったぞー」

妹「ちょっと待って、もう少しで出来るから」

男「あと何分?」

妹「十分ぐらい」

男「なら、プラス十分はみないとな」

妹「ひどいなー、出来るだけ早く作るからー」

男「気長に待ってるよ……あー腹減った」

妹「その付け加えるようにプレッシャーかけるの止めてよねっ」

男「はいはい、ごめんね」

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 22:22:53.10 ID:UYvOdlUt0
妹「じゃーん、完成だぁー」

男「十分どころか、もう三十分だよ……」

妹「いいのっ、その分だけクオリティ高いんだからっ」

男「ほんとかー? とりあえず、早くお前も席につけ」

妹「うん、麦茶もって今から行くよっ」

男「早く早く」

妹「ふふっ、兄さん、子供みたい」

男「よし、これで家族全員揃ったな」

妹「二人だけ、だけどね」

男「手を合わせて……いただきますっ」

妹「いただきまーす」

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 22:29:13.18 ID:UYvOdlUt0
男「あっ、そうだ明日のことだけど」

妹「ん、どうかした?」

男「しかし、この鯖煮うまいな」

妹「それはしっかりと味付けしたからね」

男「兄貴としては、妹が料理がうまくなるのは大歓迎だな」

妹「いつかは他人に取られるかもしれないのに?」

男「……そういうのは止めろよ」

妹「ふふっ、ちょっと意地悪したかっただけー」

男「ドキってくんだろ……ドキって」

妹「もうー、ごめんってばぁー」

男「味方から機関銃ぶっ放された気分だ」

妹「……そこまで?」

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 22:34:02.06 ID:UYvOdlUt0
妹「それで、『明日のこと』って何なの?」

男「……うっかり忘れてた」

妹「しっかりしてよね」

男「明日さ、この近所で花火やるんだって」

妹「それって……個人が?」

男「違う違う、祭りだよ」

妹「えー、それ私、初めて聞くよ?」

男「あれ? 明日じゃなかったっけ?」

妹「もしかして兄さんが言ってるの、来週の祭りじゃない?」

男「どんなやつだ?」

妹「この辺の町内会の人たちが、ばか騒ぎするやつ」

男「それそれっ、神社の境内借りる祭りだっ」

妹「気が早過ぎるよ、来週の話だよ……」

男「そうだったか……早とちりしちまった」

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 22:36:30.21 ID:UYvOdlUt0
男「仕切り直して、来週の祭り、一緒に行こうぜ」

妹「うん、了解」

男「体調は大丈夫そうか?」

妹「来週のことだから分かんないけど、多分」

男「ふむ……」

妹「もう、心配性なんだからっ。私は大丈夫だよ」

男「それならいいけど、無理はすんなよ」

妹「うん、分かってる」

男「ならいい」

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 22:42:57.22 ID:UYvOdlUt0
男「ただいまー」

妹「あっ、兄さん、お帰りなさい」

妹「今日はこの後、予定ある?」

男「八時からコンビニのバイトが入ってるな」

妹「そう……ならゆっくりは出来ないね」

男「いや、十分出来ると思うぞ」

妹「うん、でも……」

男「とにかく、夕飯を食べながら話でもしよう」

妹「……うんっ」

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 22:46:49.56 ID:UYvOdlUt0
男「それでな、影山のやつ二階の窓から飛ぼうとしたんだ」

妹「えー……それ危ないじゃん」

男「だから皆が必死に止めにかかったんだけどさ」

妹「大丈夫だったの?」

男「実はそいつ、初めから飛ぶ気なんてさらさら無かったんだよ」

男「『飛び降りるぞー』って人を集めて……」

男「足かけた状態で、担任がくるの待ってんの」

妹「……ああ、うん」

男「なんか腹立つだろ。確かに虐めは悪いと思うけどさ」

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 22:49:24.26 ID:UYvOdlUt0
妹「でも影山さんなりに、助けてって言うアピールだったんじゃないの?」

男「それでも命をお粗末にしようって考え方が許せないな」

妹「……兄さん」

男「だから、俺。アイツの背中を押してやったんだよ」

妹「ちょ、ちょっとっ」

男「そしたらアイツなんて言ったと思う?」

男「『や、やめてっー』だって」

男「死ぬ気だったんじゃないのかよって、話だ」

妹「……兄さん、それはやりすぎだと思う」

男「分かってるよ……後で、職員会議だったからな」

妹「本当に反省してる? これから絶対そんなことしちゃ駄目だからねっ」

男「……悪かったよ」

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 22:53:07.36 ID:UYvOdlUt0
男「なあ妹……そろそろ機嫌直してくれよ……」

妹「別に怒ってないもん」

男「怒ってるだろ……こっちをまともに向かないし」

妹「怒ってないって言ってるじゃん、うるさいなあっ」

男「悪かった……ごめんって」

妹「…………」

妹「兄さんは……なんで私が腹を立ててると思う?」

男「それは……」

妹「正直、影山さんがどうなろうと私は知ったこっちゃない」

妹「死んでもらっても、自殺しても、別にどうでもいい」

男「……妹」

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 22:55:33.47 ID:UYvOdlUt0
妹「でも兄さんがやったことになったら……私……」

男「……ごめん……」

妹「もう、怒ってないっていってるもんっ」

男「それでも……ごめんな。軽卒だったよ……」

妹「…………」

妹「……もういいよ、分かったから」

男「……よし、気を取り直してゲームでもしようっ」

妹「大富豪がいい」

男「またそれかよ……二人だとつまんねーよ……」

妹「むっ」

男「……分かった……んじゃ、二人大富豪な……」

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 22:58:36.91 ID:UYvOdlUt0
男「うぉー凄い活気だな……」

妹「日頃の鬱憤を発散させる意味での祭りだからね」

男「町内会レベルで花火なんて普通ないからな……」

妹「ほら兄さん、あっちに行こっ」

男「おいおい、初めにはしゃぎ過ぎると後でもたないぞっ」

妹「もうっ、すぐに子供扱いするんだからっ」

男「ははっ……って、うおっ引っ張るなっ」

妹「早くぅー」

男「うわぁー分かったからっ、一旦、離してっ」

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 23:01:10.55 ID:UYvOdlUt0
男「何だ? さっきから見てるばっかりだな」

妹「んー、それが楽しんだよ」

男「いいんだぞ、何か買っても」

妹「別にお腹好いてないし、いいよ」

男「そんなんでいいのか……」

妹「兄さんとデートしてるだけ楽しいから、ねっ」

男「……まあ、ならいいけど」

妹「ふふっ、照れちゃって」

男「うるさいっ、大人の男をからかうなっ」

妹「本当に、大人かな~っ?」

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 23:02:57.76 ID:UYvOdlUt0
妹「あれ……あそこにいるの……」

男「ん? 誰か見つけたか?」

妹「ほらあそこ……弓ちゃんだ……」

男「あーほんとだ」

妹「ねっ、兄さん、挨拶してこようよ」

男「俺はいいよ」

妹「ほら、恥ずかしがってないで、一緒に行くっ」

男「分かったからっ、一人で行けるからっ」

妹「手は離しませーん」

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 23:07:30.30 ID:UYvOdlUt0
妹「弓ちゃん、こんばんわー」

男「……ういっす」

弓「あっ……どうも」

妹「ん? 今日はもしかして一人で来たの?」

男「連れがいるなら遠慮するよ?」

弓「あっいえ、今日は一人で来たんです……」

妹「……そう、なんだ……」

男「…………」

弓「ちょっと、楽しい気分になれればいいかなって……」

妹「弓ちゃん……」

男「まだ、家庭内はうまくいってないか」

妹「兄さんっ、そういうのは……」

弓「はい、もうすぐで離婚すると思います……母はそうしたいって」

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 23:11:12.49 ID:UYvOdlUt0
男「まあ何かあったら、すぐに呼んでくれれば良い」

妹「そうだよっ、近くなんだから遠慮しないでっ」

弓「……すみません……」

男「……無理かもしれないけど、元気出しな」

弓「はい……出来るだけ、頑張ります」

妹「……ねぇ兄さん、この後は弓ちゃんと一緒に行動しようよ」

男「そうだな……弓ちゃん、これから時間は空いてるか?」

弓「えっ……は、はい」

男「だったら、一緒に見て回ろう」

弓「い、いいんですか?」

妹「全然オッケーだよっ! ねっ、兄さん」

男「勿論、構わない。いや、是非頼む」

弓「あ、ありがとうございます……」

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 23:14:49.14 ID:UYvOdlUt0
妹「……弓ちゃん、元気無かったね」

男「ああ、相当参ってるみたいだ」

妹「…………」

男「彼女が助けを求めない限り、何も出来ないからな」

妹「なんか悔しいね」

男「……俺達に出来ることは、明るく彼女に話しかけることだけだろう」

妹「うん」

男「明日も早い。もう寝ような」

妹「……兄さん」

男「ん?」

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 23:17:59.09 ID:UYvOdlUt0
妹「……私、重荷じゃないかな?」

男「……はっ? 何だ急に?」

妹「私、知ってるんだ」

妹「兄さんは何でも出来る、とっても凄い人なんだって」

男「おいおい、おだてても……」

妹「いいの、聞いて」

男「……妹……」

妹「小さい頃から私の自慢で……今では、だいだいだーい自慢の兄でっ」

男「…………」

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 23:20:44.64 ID:UYvOdlUt0
妹「兄さんは、もっと大きく羽ばたける」

男「…………」

妹「大空を自由に……どこまで、飛んでいけるんだっ」

男「……そんなことないさ」

妹「ううん、私は知ってるもん」

妹「兄さんと小さい頃から一緒にいて、ずっといて」

妹「両親が心中計ったときだって、兄さんは私のためにずっと堪えてくれた」

妹「私のために必死に頑張ってくれた」

男「…………」

妹「泣きたくて、時には苦しくて……でも、それでもって」

妹「だから、兄さん、本当にありがとう」

男「……妹……」

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 23:24:28.97 ID:UYvOdlUt0
妹「でもね、今の私は、兄さんの重荷」

妹「大きく羽ばたこうとして兄さんを、地面につなぎ止めてるの」

妹「だから、もう、いいんだ」

男「…………」

妹「自分がやらなきゃって時は、私のことは気にしないで」

妹「それが私のお願い」

妹「ははっ、ちょっと真面目すぎたかもね」

男「…………」

男「……分かった」

男「しっかりしないとな、今以上にな」

妹「…………」

男「隣でしっかり見てろよ……俺がどこまで行けるのかをな」

妹「うん、期待してる」

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 23:29:28.18 ID:UYvOdlUt0
男「今日は日曜日か」

妹「久しぶりに一日中ゆっくり出来るね」

男「こういう日は、ぐっすり昼寝でもしてるのが幸せだ」

妹「うあぁー、もう、だらけてる」

男「いいんだよ……メリハリが大事なんだから」

妹「兄さんは、いつもオフ状態なんじゃないのー?」

男「やるときはやってる……」

妹「あんまり見れないなーもう、寝ないのっ」

男「うぅー……頼む……寝かせてくれー」

妹「もう……ホント」

男「…………」

妹「……子供なんだから……ふふっ」

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 23:32:43.49 ID:UYvOdlUt0
男「…………」

妹「……もう寝たかな……?」

妹「…………」

妹「……兄さん……」

妹「…………」

妹「……知ってる? 寝言の話」

妹「あれはね、兄さん……」

妹「……兄さんは、いつも夜……一人で泣いてるんだ……」

妹「眠りながら涙を流して、嗚咽を漏らしてるんだ……」

妹「……辛いんだと思う……苦しんだと思う……」


33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 23:35:24.34 ID:UYvOdlUt0
妹「……でも、本当は……」

妹「寂しいんだよ……私、分かってる……」

妹「寂しくて、寂しくて……仕方がないんだよね……」

妹「ごめんね……兄さん……本当にごめん……」

妹「……でも」

妹「私は……兄さんの重荷……」

妹「もう……大丈夫……」

妹「…………」

妹「……ふふ……良い寝顔……」

妹「……兄さん……」

妹「私ね……兄さんのことが……」


──本当に、大好きだよ

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 23:37:49.53 ID:UYvOdlUt0
……バンバンッ。

……バンバンッ。

男「……何だ……」

バンバンッ。
バンバンッ。

男「……おいおい、誰だ……」

男「くそっ……久しぶりに良い夢見て眠ってたのに……」

バンバンッバンバンッ。
バンバンッバンバンッ。

男「分かったよ……今、行くっ……」

男「…………」

男「あれ……妹はどこだ?」

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 23:40:45.49 ID:UYvOdlUt0
ガチャ。

弓「男さんっ! 助けて下さいっ!」

男「ゆ、弓ちゃん……?」

弓「お父さんが……お父さんが……っ」

男「ちょっと待って、一旦、落ち着こうね……」

弓「早くしないと……早くしないとお母さんが……」

男「…………」

男「分かった、急ごう」

弓「男さんっ?」

男「どこに行けばいい? 弓ちゃんの家か?」

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 23:43:50.21 ID:UYvOdlUt0
たったったったっ。

弓「お母さんが今日こそは離婚するって」

弓「それで、お父さんに離婚届を見せて話をしてたら……」

男「……どうなった」

弓「急にお父さんが激昂して……私、それで怖くなって……」

弓「逃げて来ちゃったけど……誰に助けを呼んでいいか分からなくて……」

弓「……男さんしか、頼る人がいなくて……うぅ……」

男「いい判断だよ、よく頑張った」

弓「ううぅ……ひっく……ぐす……」

男「よし、後少しだ。頑張ろうっ」

弓「は、はいっ……」

たったったったっ。


39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 23:54:53.84 ID:UYvOdlUt0
ピーピーピー……。

男「よし着いたぞ」

弓「……はぁーはぁ……」

男「……よく頑張ったな。でも、弓ちゃんは、ここで待ってろ」

弓「えっ……」

男「俺だけが中に入るから。なっ?」

弓「……男さん……」

男「いいから任せろ、お父さんを止めてくるから」

弓「……ッ……お、お願いしますっ……」

男「うんっ」

ピーピーピーピーピーピー。

男(……しかし、警察の車がさっきから多いな……)

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 23:56:37.95 ID:UYvOdlUt0
ガチャ。

男(……奥で言い合っている声が聞こえるぞ……)

男「…………」

?「や、やめて……それ以上……」

?「ああああああっ」

男「……くそっ……最悪な状況かもしれない……」

男「…………」

男「よし……覚悟を決めろ……」

男「……行くぞ……」

ガチャっ!!

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 23:59:03.60 ID:UYvOdlUt0
母親「だ、誰っ!?」

男「大丈夫ですかっ!」

男「……えっ?」

男「な、なんだこれ……」

男(部屋中のものが壊れてる……どれだけ暴れたんだ……)

母親「お、お願い、助けてっ!」

父親「うおおおおおおおおおおおおおおっ!」

男「あ、危ないっ!」

バンッ。

父親「くうっ……」

母親「はぁはぁはぁ……」

男「今ですっ、こっちにっ!」

母親「は、はいっ」

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 00:01:34.35 ID:Bpww7cOc0
男「俺の後ろに隠れてて下さい」

母親「す、すみません……助かりました……」

男「一体、何があったんですか?」

母親「……そ、それが……」

父親「……うぅ……ううう」

男「……え?」

男「……どうなってんだ……?」

父親「くっ……おおっ……おおおおお」

母親「夫が……き、急に……暴れ出して……」

男「……傷は大丈夫ですか」

母親「は、はい……かすり傷です……」

男「とりあえず、包丁は俺が預かっておきます」

母親「……はい……」

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 00:05:22.92 ID:e5kCZWsF0 [1/41]
男「申し訳ありませんが……」

父親「ごほっ……ほおお……おほおっ……あああっ」

男「どう見ても夫さんは正常とは思えません」

母親「……そ、そうなんです……」

男「アルコール中毒だとは知っていましたが、これはちょっと違いますね」

母親「あ、あの……あなたは……」

男「弓さんの知り合いの者です」

母親「ああ、弓は……弓は大丈夫なんですかっ……」

男「家の外で待ってます。後で、再会しましょう」

母親「うぅ……あ、ありがとう……」

男「安心するのは、まだ早いですよ。とりあえず……」

父親「がああああああああああああああああっ!!」

男「夫さんを何とかしないと……」

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 00:08:36.95 ID:e5kCZWsF0 [2/41]
父親「……ぅ……ふぅ……」

男「そろそろ落ち着きましょうよ、お父さん」

父親「……ああぅ……ゆ、……」

男「……駄目だ……言葉が通じない……」

男「とにかく夫さんがあそこからどけば、リビングから出れますね」

母親「は、はい……」

男「俺が引きつけます。その隙に逃げて下さい」

母親「……えっ……あ、あなたは……」

男「先に行って待ってて下さい……俺は、夫さんをなんとかします」

母親「で、でも……」

男「行きますよっ! 一瞬が勝負ですっ!」

母親「は、はいっ」

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 00:12:27.59 ID:e5kCZWsF0 [3/41]
バンッ。

父親「うぅ!?」

男「今ですっ! 早くっ!」

母親「……ッ」

たたたたたた。

父親「っ!!」

男「お前の相手は俺だよっ! おらっ!」

ダンっ!

父親「くっ……ああ」

……ガチャン。

男「……何とか、間に合ったな……」

父親「……うぅ……おおあ」

男「ここからはあんたと俺だけだよ」

男「この先は……絶対通させねえ」

父親「あああああああああああああッ!!」

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 00:15:52.85 ID:e5kCZWsF0 [4/41]
男「離婚がそんなに嫌か?」

父親「………うぅ……」

男「娘を傷つけて……ここまでやって……」

男「はっきり言って、あんたは終わってるよ」

父親「……ぐる……ががああ」

男「……ははっ……これじゃあ、獣と一緒だ」

男「言葉は通じないし……一体、あんたどうしちまったんだ?」

父親「がががががががあああっ!!」

ダダダダダッ。

男「……ッ」

バンッ。

父親「……ぅ……」

男「だから言ってんだろ、ここは通さねぇって」

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 00:19:09.63 ID:e5kCZWsF0 [5/41]
男「……はぁ……はぁ……」

男(どれくらい経ったんだろう……)

父親「……があ……あああ」

男(これじゃあ埒があかねぇ……)

男(何とかアイツを動かねえようにしねえと……)

男「…………」

ダダダダ……。

男「ん?」

ダダダダダダダダッ。

男「何だ……この音は……」

男「……これは……足音?」

ガチャンッ!

?「動くなっ!!」

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 00:23:18.08 ID:e5kCZWsF0 [6/41]
男「……な、なんで……軍人……?」

軍人「いいから動くな」

男「ちょ、ちょっと待てくれ……」

男(こいつ……拳銃を持ってやがる……)

父親「……がああ、ああああっ……」

男「……本当に獣じみてきたな……涎を垂れ流してる……」

軍人「……進行三か。早く始末しないとまずいな」

男(進行三……って、始末?)

男「待てっ! 始末って何だよっ!」

軍人「動くなと言っているのが分からんのかっ!」

ダンッ。

男「くっ……」

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 00:25:43.27 ID:e5kCZWsF0 [7/41]
父親「がああああああああああああッ!!!」

軍人「一発でしとめてやる」

男「……ま、まって」

男(くそ……足で押さえつけられて動けない……)

父親「ああああああああああああああああああっ!!」

軍人「死ね、怪物」

バンバンッ!!

父親「……くはあっ……」

父親「ごほっ……こほっ……」

バタン……。

男「……う、嘘だろ……」

男「こ、殺したのか……?」

ピピッ……。

軍人「こちら制圧完了しました」

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 00:28:26.17 ID:e5kCZWsF0 [8/41]
軍人「立て」

男「こ、この人殺しがっ!」

軍人「…………」

男「殺す必要は無かっただろっ! せめて病院に連れてけよっ!」

軍人「……無知であることはいいことだな」

男「な、なんだとっ!」

軍人「手遅れだよ、ほれ、死体を見てみろ」

男「……は?」

男「…………」

男「……え?」

男(……何だこれ……目ん玉が……飛び出して……)

男「……ぐうっ」

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 00:30:19.09 ID:e5kCZWsF0 [9/41]
ビチャ……。

男「はぁ……はぁ……はぁ……」

軍人「吐いたか、まあ、それが普通の反応だな」

男「どういうことだ……説明……しろ……」

軍人「…………」

軍人「……この家の妻と娘を連れてこい」

男「お、おいっ!」

軍人「いいから、黙ってろ」

ガチャ。

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 00:32:30.84 ID:e5kCZWsF0 [10/41]
男「奥さん……弓ちゃん……」

母親「えっ……ど、どういうこと……?」

弓「……男さん……?」

男「…………」

母親「しゅ、主人は……?」

男「……ッ」

軍人「…………」

母親「……う、嘘……嘘でしょ……」

母親「ああ……あああああ」

母親「そ、そんなああああ」

母親「ああああああああああああっ」

男「…………」

弓「……お父さん……」

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 00:34:51.43 ID:e5kCZWsF0 [11/41]
母親「どうして……どうして……」

母親「こんなことに……ああ……うあああ……」

弓「……うぅ……」

チャカ……。

軍人「…………」

男「……おい」

軍人「…………」

男「あんた……ふざけてんのか?」

軍人「…………」

男「何か言ったらどうだ? なあ、おい!」

軍人「…………」

男「なんで……」

男「──二人に銃口を向けてんだよっ!!」

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 00:37:01.12 ID:e5kCZWsF0 [12/41]
母親「……へ?」

弓「……?」

バンッ!!

男「なっ……」

母親「……か……」

バタン……。

弓「えっ……? お、お母さんっ?」

男「……そ、そんな……」

軍人「全て制圧しろとの指示を受けている」

男「……き、貴様……」

軍人「ここにいるお前らは、全員制圧対象だ」

男「くっ」

タタタタタッ。

軍人「なっ……」

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 00:39:04.15 ID:e5kCZWsF0 [13/41]
弓「……ッ」

男「弓ちゃん、我慢してくれっ!」

軍人「逃がすかっ!」

男「……くっ……」

ガシャーンッ!

軍人「………アイツ……」

軍人「……ガラスを破って、退路を作ったか……」

ピピッ。

軍人「二名を逃がした……応援をよこしてくれ」

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 00:42:05.50 ID:e5kCZWsF0 [14/41]
たたたたたっ。

弓「おかあさん……おかあさん……」

男「頼むっ! 弓ちゃん、今だけは頑張るんだっ!」

弓「うぅ……ッ」

男「逃げないと……早くしないとあいつらがやってくるっ」

弓「うぅ……死んじゃったよ……男さん……」

男「……辛いと思う……でも、今は我慢するんだ……」

弓「……ぅ……ああ」

男「……スピードを上げるよっ、ついて来てっ!」

男(さて……どこに行くか……隠れるとこ……隠れられる場所……)

たたたたたっ。

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 00:44:51.18 ID:e5kCZWsF0 [15/41]
──神社

男「よし……ここでひとまず休憩しよう……」

弓「…………」

男「弓ちゃん……」

弓「お、男さん……ねぇ、男さん……?」

男「うん……どうした?」

弓「私、夢を見てるんだよね……? 今、夢の中なんだよねっ?」

男「…………」

弓「お父さんも死んじゃって……お母さんも死んじゃって……」

弓「で、でも、これっ、夢の中だからっ! 夢の中だから大丈夫だよねっ!?」

男「…………」

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 00:48:17.06 ID:e5kCZWsF0 [16/41]
弓「……そ、それなのに……おかしいんだ……」

男「…………」

弓「イタいの……イタいんだ……」

弓「……ほっぺた掴むと……痛い……いたいんだよぉ……」

弓「……嘘だよ……嘘だ……」

弓「夢の中だよって……お願いだからっ……男さんっ……」

男「…………」

弓「……嫌だ……嫌だよ……」

弓「私……一人に……一人ぼっちだよ……」

弓「………あああ……ああああああ」

男「……ッ」

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 00:50:17.15 ID:e5kCZWsF0 [17/41]
ギュッ……。

弓「……えっ?」

男「一人じゃない……一人じゃないから」

弓「お、男さん……」

男「俺がいる……だから、お前は一人じゃない……」

弓「……うぅ……」

男「ずっと側にいるから……守ってやるから」

弓「うああ……あぁっ」

男「だから……だから、今は安心して……」

弓「ああああっ……ああっ」

男「……泣いていいんだ」

弓「あああああああああああああっ!!」

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 01:43:13.63 ID:e5kCZWsF0 [18/41]
こりゃ落ちるな

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/09/30(木) 01:53:43.52 ID:e5kCZWsF0 [19/41]
>>67
ちいっすサーセンww

76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 05:27:14.08 ID:e5kCZWsF0 [20/41]
男「……どうだ、落ち着いたか?」

弓「……はい……何とか……」

男「…………」

男(……妹が心配だ……)

弓「……男さん?」

男「弓ちゃん……君には申し訳ないけど」

男「ここで俺の帰りを待っててくれ……」

弓「──嫌ですっ!」

男「……ッ」

弓「離れたくないですっ! もう一人は嫌っ」

男「……弓ちゃん……」

78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 05:29:17.93 ID:e5kCZWsF0 [21/41]
弓「男さんは言いました……ずっと側にいるって、守ってくるって」

男「ああ、そうだったな……」

弓「……お願いします……私を、側にいさせて下さい……」

男「…………」

男「弓ちゃん、今から、俺の家に行こうと思う」

弓「……えっ?」

男「ほら、妹が帰ってるかもしれないし」

男「こんな状況だと、兄としては心配なんだ」

弓「……妹さん?」

男「ん?」

79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 05:32:03.13 ID:e5kCZWsF0 [22/41]
弓「……男さんって、妹がいたんですか?」

男「……何言って……」

弓「だって、私、一人暮らしの人だって思ってて……」

男「いや、ちょっと待ってっ」

男(何を言ってるんだ……? 俺をからかってるのか?)

男「弓ちゃんだって、知ってるはずだろ」

弓「……え? 私、知りませんよ……」

男「俺の妹は、君の幼馴染じゃないか?」

弓「……幼馴染? 私に、そんな人はいないですけど……」

男「……は、ははっ、う、嘘は駄目だよ」

80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 05:34:47.02 ID:e5kCZWsF0 [23/41]
男「こんな状況だから、ちょっとからかってやろうと思ってるんだろ?」

弓「……そんなつもりは全くないです」

男「…………」

弓「私は、男さんの妹の方とは一度もお会いしたことがありません」

男「……う、嘘だ……」

弓「男さん……?」

男「そ、そんなことあるわけないじゃないかっ!」

弓「ひっ……」

男「この前だって、一緒に祭りの時に会ってるはずだっ!」

弓「……そ、そんな」

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 05:37:43.15 ID:e5kCZWsF0 [24/41]
男「ほら、俺の隣にいた子だよっ! 覚えてるだろっ!?」

弓「……お、男さんは、一人でしたよ……?」

男「嘘をつくなっ!」

弓「嘘なんてついてませんっ!」

男「話しかけてきた子だよっ! 俺達の会話にきちんと……」

弓「……男さん……?」

男「そうだよ……きちんと、いたはずじゃないか……」

弓「一体……どうしちゃったんですか……?」

男「今日だって、一緒に喋った……いつも側にいたんだ……」

男「ずっと、あの日から、片時も離れたことはなくて……」

男「身体は他の人より弱いけど、とってもいい子で……」

男「……いないはずが……そんなわけが……」

82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 05:43:09.96 ID:e5kCZWsF0 [25/41]
弓「……男さん……」

男「俺には一人妹がいるはずなんだ……」

男「両親が死んで、それからずっと一緒に生きてきた妹が……」

男「弓ちゃん……頼むから、ホントのことを言ってくれ」

弓「…………」

男「この前の祭りの時、君は会ってるよね……?」

弓「…………」

弓「……す、すみません……」

男「……ッ」

男(嘘だ……そんなことあるわけがないじゃないか……)

男(だって……あの時、一緒に……)

男(思い出せ、思い出すんだ……)

83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 05:45:39.70 ID:e5kCZWsF0 [26/41]
妹『あれ……あそこにいるの……』

男『ん? 誰か見つけたか?』

妹『ほらあそこ……弓ちゃんだ……』

男『あーほんとだ』

妹『ねっ、兄さん、挨拶してこようよ』

男『俺はいいよ』

妹『ほら、恥ずかしがってないで、一緒に行くっ』

男『分かったからっ、一人で行けるからっ』

妹『手は離しませーん』

妹『弓ちゃん、こんばんわー』

男『……ういっす』

弓『あっ……どうも』

84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 05:48:49.95 ID:e5kCZWsF0 [27/41]
男「やっぱり、いる……俺の記憶では……きちんと」

男「よく、思い出してくれ‥‥頼む……」

弓「…………」

弓「……何がどうなってるか分かりませんけど……」

弓「確かにあの時、男さんは一人でしたよ?」

男「違う……違うだろ……隣に……」

弓「私が一人で歩いてるところを、声をかけてくれたんです」

男「いや……だから、その時……」

弓「それで色々話して、その後、誘って頂いて……」

男「……ああ……」

弓「男さん……あなたも、覚えてるでしょ?」

男「…………」

85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 05:50:43.75 ID:e5kCZWsF0 [28/41]
男『……ういっす』

弓『あっ……どうも』

男『連れがいるなら遠慮するよ?』

弓『あっいえ、今日は一人で来たんです……』

男『…………』

弓『ちょっと、楽しい気分になれればいいかなって……』

男『まだ、家庭内はうまくいってないか』

弓『はい、もうすぐで離婚すると思います……母はそうしたいって』

86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 05:52:03.19 ID:e5kCZWsF0 [29/41]
男『まあ何かあったら、すぐに呼んでくれれば良い』

弓『……すみません……』

男『……無理かもしれないけど、元気出しな』

弓『はい……出来るだけ、頑張ります』

男『そうだな……弓ちゃん、これから時間は空いてるか?』

弓『えっ……は、はい』

男『だったら、一緒に見て回ろう』

弓『い、いいんですか?』

男『勿論、構わない。いや、是非頼む』

弓『あ、ありがとうございます……』

87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 05:53:29.91 ID:e5kCZWsF0 [30/41]
男「……は、はは……」

男「……いない……どこにもいない……」

弓「…………」

男「……そんな、馬鹿な……」

男「嘘だ……嘘だと言ってくれよ……」

男「ああ……あああ……」

男「うわああ……ああああああっ」

男「………ッ」

たたたたたっ……。

弓「お、男さんっ!?」

88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 05:56:29.14 ID:e5kCZWsF0 [31/41]
たたたたたっ。

男(俺の隣にいた……)

男(優しくて、いつも俺を励ましてくれて……)

男(最近、みるみる料理が上手くなって……)

男(……あの家に……あいつはいるっ……)

男(どんなときだって、俺の帰りを待っててくれたじゃないかっ)

男(だから、今日も……笑顔で俺を迎えてくれるはずなんだっ……)

男「……はぁ……はぁ……」

男「……着いた」

男(……妹……俺の、大事な……人……)

ガチャ……。

男「…………」

89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 05:59:51.22 ID:e5kCZWsF0 [32/41]
弓「‥‥はぁ……はぁ……」

弓「やっと着いた……」

弓「男さん……もう、入ってるのかな……」

弓「……鍵、かかってないよね……?」

……ガチャ。

弓「……お邪魔します……」

弓「男さん……? どこ?」

トコトコトコ……。

弓「……えっ」

弓「……何これ……」

弓「……ここに……男さんは住んでたの……?」

弓「…………」

弓「……こんな……」

弓「物が……殆どない殺風景な部屋……」

90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 06:02:01.74 ID:e5kCZWsF0 [33/41]
弓「……男さん……?」

男「…………」

弓「どうしちゃったんですか……?」

男「……は、はは……」

弓「……この部屋……」

男「……そうだ、そうだよ……」

弓「えっ?」

男「俺は、こんな部屋で一人暮らしてたんだ……」

弓「男さん……?」

男「……いない」

男「初めから……いなかったんだ……」

男「……だって」

──アイツは……十年前に死んでるんだから

91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 06:07:09.82 ID:e5kCZWsF0 [34/41]
警察『……残念だよ』

男『…………』

警察『君はまだこんなに幼いのにね……』

男『ねぇ……父さんは? 母さんは?』

警察『……そこにいるよ』

男『これが、父さんだっていうの? 母さんだって?』

警察『…………』

92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 06:08:02.97 ID:e5kCZWsF0 [35/41]
男『お巡りさん、嘘つきだよ……こんな冷たい身体じゃなかった……』

男『もっと、二人とも温かくて……』

警察『……死んでしまったんだよ』

男『……い、妹も……?』

警察『…………』

男『この横になってるのが……僕の妹……?』

警察『…………』

男『そ、そんな……嘘だよ……間違ってるよ……』

男『なんで……なんで僕だけ……』

警察『……っ』

男『──僕だけ、生きてるんだよぉぉっ!!』

93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 06:13:00.52 ID:e5kCZWsF0 [36/41]
男「……一家心中だったんだ」

弓「え……?」

男「父親の借金が膨らんでね、もう返せないところまで来てた」

男「毎日、取り立ての男たちに怯えて……そんな日々だった……」

弓「……そ、そんな……」

男「だから、両親は死ぬことを選んだ」

男「家族全員で、冬の海に身体を投げようって……」

男「まだ訳もわからない妹の手を握って……でも、俺はきちんと理解してた」

男「冷たい水に身体が投げ出された時、こうやって死ぬんだって」

男「そう覚悟して……でも、最後に見てしまったのが」

男「……まだ泳げない妹の……苦しむ横顔だった……」

弓「…………」

男「気が付いたら、病院のベットだ。馬鹿みたいに俺だけが生き残った」

95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 06:17:11.58 ID:e5kCZWsF0 [37/41]
男「……は、ははっ、滑稽だよな……」

男「寂しさに負けて……妹の虚像を作り出してたなんて……」

弓「…………」

男「分からない……もう、俺には分からない……」

男「確かに、俺の頭には……アイツがいたんだ……」

男「でも実際は、妹はとっくに死んでいて……」

男「何が正しくて間違ってるのか……もう、俺には判断できない……」

弓「……男さん」

男「ごめん……悪いけど、俺は付き合えそうもない……」

弓「そんなこと言わないで下さい……」

男「……生きる意味を、失ったんだ……」

男「これ以上無駄に生きて……意味が見つかるなんて思えない……」

96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 06:19:36.86 ID:e5kCZWsF0 [38/41]
弓「……うぅ……でも私、男さんしか頼る人がいないです……」

男「……ごめん、本当にごめんな」

弓「……ああ……そんな……」

男「…………」

弓「…………」

弓「わ、わかりました……」

男「……っ」

弓「……私、これで失礼しますね……」

トコトコトコ……。

弓「……男さん、ありがとう」

弓「そして……さよなら、です……」

ガチャ……。

男「…………」

97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 06:28:33.32 ID:e5kCZWsF0 [39/41]
数年後、男は旅に出た。
それが伝説の始まりであることを
今は誰も知らない。



-完-

103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 07:55:46.75 ID:e5kCZWsF0 [40/41]
【いらない解説】
話に出てくる妹は男が作り出した想像の人物
本当の妹は十年前に両親とともに死亡
始めのくだりは、全て男の想像の世界

弓の父親が異常になったのは、とある事情による
後半の展開のために用意しておいたんだけど、
ちょっとまとめられる気配がなかったので、打ち切りエンドにした

ここまで読んでくれてありがとねっ!
保守、支援してくれた人、みんな大好きっ!
ヤッフーっ!!

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