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唯「国家社会主義!」

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 22:03:55.45 ID:OIvzO94V0
琴吹家系列の音楽店

梓「ムギ先輩、ホントにいいんですか?
  ここにある品が全部9割引きなんて?」

紬「お年玉セールっていうんでしょう?
  世間では年始によくあることって聞いたわよ。」

律「9割引でも手が出せねえ…」

澪「それはお前の無駄遣いの結果だ!」

唯「…」

律たちが騒ぐそば。
唯は店内をぐる、と見回す。

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 22:12:07.23 ID:OIvzO94V0
梓「なんか…すごく悪いような…」

紬「いいのよ、いいの。さあ、お買い物を楽しみましょう♪」

2010年が明けて数日後、
桜高軽音部員たちは琴吹グループ系列の音楽店にいる。

澪「ムギ、ほんとにいいのか?」

紬「ぜんぜん~!
  世間がまだまだ不景気なんだから、
  こんなことをしても問題ないわよ♪」

琴吹グループは今年度も黒字経営らしい。

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 22:18:58.56 ID:OIvzO94V0
律「っていってもよー、10万円のヤツも九割引きで一万ちょいだろ? 
  どうせだったらもっと安くしてくれよぉ…」

紬「そう?だったら…」

澪「ムギ、コイツの与太話は無視してくれ…」

梓「わ、わたしも今は特に足りないものはないんで…
  メンテナンスの用具を見せてもらいます。」

唯(うーむ…)

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 22:26:01.82 ID:OIvzO94V0
かくいう唯はギー太さえいれば満足という口だ。
とくに欲しいものはない。

紬「ぜんぜん気にしないで♪
  澪ちゃんも…二台目のベースとかどう??」

澪「え…え!?」

唯(私はギー太一筋だけどね~)

と、思いつつ、唯は店の方々へ視線を向ける。

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 22:29:07.49 ID:OIvzO94V0
唯「あ…!」

"モノ"との出会いというのは不思議なもの。

紬「唯ちゃん、どうしたの?」

唯「あれ…」

梓「"ピック特集"??ですか?」

唯の指すほうには、たくさんの光沢美しい、ピック達。

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 22:37:04.60 ID:OIvzO94V0
唯「あれ…いいなあ…」

そのうちの一つが唯の目に留まる。
はっきり言えば、若者向けとは言えぬ、鼈甲(べっこう)細工の。

梓「でもそれだけ値段書いてないですよ?
  かなり高いんじゃ…」

その中の一品。

律「ふむふむ…『ドイツの著名ギタリスト、ラウバウ氏所有の…』」

律が紹介文を読み上げる。

店員「あ…あの…」

横から店員の一声。

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 22:45:38.69 ID:OIvzO94V0
店員「紬お嬢様、
   その品はちょっとお売りできないんです…」

常日頃、桜高軽音部員達の我侭につき合わされている店員Aも
さすがの困り顔。

紬「いわゆる"展示品"かしら??」

店員「その通りです…」

澪「"A・ラウバル"。
  著名って言う割には聞いたことないなぁ…。」

店員「お嬢様のお父様、琴吹会長の御縁ある方の品らしいんです。」

紬「お父さんの??」

店員「はい…」

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 22:50:31.15 ID:OIvzO94V0
紬「ヨーロッパの洋楽関係で??聞いたことがないわね…」

紬が思案顔になる。

唯「…」

その間も、唯はひたすらそのピックに視線を向ける。
…というかぶつける。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 22:53:12.58 ID:OIvzO94V0
澪「唯、そんなまじまじと見つめてもさ…」

唯「…」

澪「非売品なんだから…」

唯「…」

澪「唯…」

唯「…」

梓(梃子でも動かない感じですね…)

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 22:57:16.48 ID:OIvzO94V0
唯「…」

唯はまわりの声が聞こえていないようだ。

紬「唯ちゃん??」

唯「…」

梓「先輩!非売品ていうのは売ってもらえない品物なんですからね!?
  そんな物欲しそうにしたって…」

物欲しそう??
いや、唯の方が魅入られたような。

紬「…」

携帯電話を取り出し、どこぞへ電話をかける紬。

律「あ、もしかして…」

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 23:03:58.83 ID:OIvzO94V0
紬「もしもし…お父さん??今、大丈夫ですか…??」

律(こりゃムギの"スイッチ"が入っちゃったか…)

紬「実はね…」

紬「そう、そうなの…」

紬「私のお友達がね…」

気に入った品から離れぬ唯。
その横には彼女のために父親へ電話をかける、筋金入りのレズっ娘。

紬「うん…」

紬「…」

紬「え??いいの!?」

澪「?」

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 23:05:36.18 ID:OIvzO94V0
紬「店員さん、父が…」

そういうと、自分の携帯電話を店員Aに差し出す紬。

店員「え!?まじっすか!?」

そして…

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 23:10:55.12 ID:OIvzO94V0
律「よかったなぁー唯よぉ!」

唯「うん!!」

唯はこぼれんばかりの輝く視線を、小さなピックへと向ける。
額より上に両手で掲げ、大事そうに護持している。

梓「でも"レンタル"なんですよね??」

口を挟む梓。

梓「それも"無期限の"。」

澪「確かにおかしな話ではあるな…」

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 23:16:44.52 ID:OIvzO94V0
紬「私にもよくわからないわ。
  お父さんに詳しく事情を話したらね…」

律「ムギのお父さんに無理言えばさ、
  超有名どころのアーティストの品も貸してもらえるかも!?」

澪「確かにありえるな…」

澪が律に同調する。

唯「…」

梓「…?」

その一方、梓はピックに魅入られたままの唯を見、
なにかを、覚える。
何かを。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 23:22:02.75 ID:OIvzO94V0
唯「あなたは…誰?」

「…」

そして、その日の夜。
これは唯の夢の中。

目前には"よくわからないもの"が一体。
縦に170センチほどの大きさ。

「…」

黒く煤け、大きな丸太のよう。
そして、唯の鼻に酷く臭う。
嗅いだことのない臭い。
強い吐き気がこみ上げるほどの…

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 23:30:07.08 ID:OIvzO94V0
唯「…」

しかし、唯の鼻へ通ずる臭いは
嫌悪感ではなく、強い悲哀を彼女に生む。

「きみは…しんめいか…」

"よくわからないもの"からの声。

「しんめいに愛さるる…おとめか…」


26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 23:33:46.67 ID:OIvzO94V0
"よくわからないもの"を見ることが苦しい。
しかし、見ずにはいられぬ。

唯「しん…めい??」

「神明…」

「"あいんへると"…もしくは…"あるつぇんごっと"…」

「わたしは…」

「ついに…

「"ヴァルハル"に…来たるか…」

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 23:42:21.61 ID:OIvzO94V0
唯「よく、わかんない。」

唯の片手にはあのピック。

「ちがうのか??みえぬ…」

「わたしには、みえぬのだ…」

黒い、焦げた丸太、"よくわからないもの"が"目"を開く。
刹那のこと。
その"瞳"は海のような青。ひどく澄んだ、透明な青。
"よくわからないもの"は、唯を見ることができず、
その視線は唯の体躯を漂う。

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 23:49:47.51 ID:OIvzO94V0
「焦熱、そして、凍えより…」

「放たれたとおもえば…」

唯は思い出す。
床に就く前、さんざんにギー太を可愛がった。
ムギから借りたあのピックで。

「とはゆえ…」

「なつかしい香りがする。君から…」

「それは、"レオ"に与たゆたはずだが…」

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 23:53:02.43 ID:OIvzO94V0
唯「れお??」

「"はらから"の子だ…我が甥…」

唯「はらから??」

「わたしの姉…」

「いや…」

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 23:57:32.17 ID:OIvzO94V0
「君からも…きみの身体からも、懐かしい匂いがする…」

「若きころ…青いころ…」

そう言うと、液体のようなもの、を流す、"よくわからないもの"。
涙、だろうか?

唯「あなたは人間なの?」

「そうだ。」

「…」

「いや…」

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 00:03:46.88 ID:CCRwLSWN0
「そうだった。」

「人間だったのだ…」

「そうだ!」

"よくわからないもの"は続ける。

「そうだった!」

「きみのこと、クビツェクとよくはなしたなぁ…」

唯「クビツェク…って??」

「少ない、友のひとりだ…」

「公園のベンチに座り…その少し先にいた、美しい君のことを…」

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 00:11:23.16 ID:CCRwLSWN0
「雑然としていたが、あのころの"ヴィーン"も、」

「また美しく…」

「さらに君もまた美しかった…」

「きみのことは絵にできなかったが…」

「むしろきみを題として、歌劇を描きたかった…」

唯「よく、わかんないよ…」

唯「ヴィーンって何?クビツェクってだれ?」

唯「あなたは、」

唯「誰?」

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 00:17:15.65 ID:CCRwLSWN0
「わたしの名??」

「…」

「そうだ。わたしはついぞ、」

「きみにわたしの名を名乗ることもしなかった…」

「そうだ、」

「そうだった…」

そういうと、"よくわからないもの"は、視線をはるか上に移す。

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 00:22:49.90 ID:CCRwLSWN0
「そうだ…」

「そうだ!!」

「我らが国はどうなったのだ!?」

再び"よくわからないもの"は唯に視線を…
獲物狩るような目を向ける。

唯「っ!!」

先ほどまでの、恋焦がれる相手を思うような目と、なんと違った…
飢えた鷲のごと…

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 00:27:41.54 ID:CCRwLSWN0
唯「わがくに!?」

唯「意味わかんないよ!?」

「ちがう!!」

「"我ら"が国だっ!!」

唯「うっ…ぅ…」

唯ははじめて恐怖を感じる。
そして、漏れ出る嗚咽。

「!?」

「す、まない…」

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 00:34:31.70 ID:CCRwLSWN0
唯「くにって…」

唯「ここは、日本…だよ…」

「ヤパン…?」

「…」

「ことばの混濁がある…」

「…」

「どういうことだ…」

唯「ヒック…」

「これは…」

「きみの、ゆめ??」

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 00:50:06.39 ID:CCRwLSWN0
唯「ヒック…」

「…」

「もしや…」

「…」

「いや…そうか…」

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 01:16:33.68 ID:CCRwLSWN0
「そう…だったの…か…」

「…」

「Ihr antwortete drauf die kluge Penelopeia,
 Aus der süßen Betäubung im stillen Tore der Träume
(夢の間際、心地よくまどろむペネロペーは答ゆる…)」

"よくわからないもの"が何か唱えると、唯の意識に突然、白色が現れ―
そして、唯は目を覚ました。

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 01:21:46.25 ID:CCRwLSWN0
眠りから覚めれば、自分の部屋だ。
そうだ、眠り、から醒めたのだ。

さきほどまでのあれ、は夢?
けれど…

唯のすぐ横、ベッドの脇に気配を感じ唯は顔を向ける。

唯の瞳と交差する、澄んだ青い瞳。
唯のそばには、一人の男性が佇んでいた。

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 01:30:56.73 ID:CCRwLSWN0
青い目をもつ、彫の深い男だった。
20代前半の、痩せた男。白人だとわかる。
頭髪は左半分に偏った、短めのツーブロック、
背の丈は唯より小頭一つほど高く、ひょろり、としている。
その男の青い目が、唯を見下ろしている。

唯「え…」

「…」

「きみは、夢から醒めたのだ。」

「そして…」

「わたしも。」

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 01:37:58.34 ID:CCRwLSWN0
上着は背広のような、しかしよれよれで、摩れている。
ズボンは、踝ほどまでで、いわゆる、『つんつるてん』
お世辞にも、いや正直に言ってもあまり綺麗な格好ではない。

唯「お兄さん…」

唯「なんで光ってるの??」

唯の次の一声はそれであった。
唯の側に立つ男は、薄く暗く、ほんのりと、青白く蛍光しているのだ。

「人の輝きは、魂に由来するから、」

「かもしれないね。」

男は答える。
優しく、答える。

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 01:40:37.91 ID:CCRwLSWN0
唯「あはは、まだわたし寝てるんだね…」

「いや、君は間違いなく、覚醒しているよ。」

唯「…」

唯「夢じゃないの??」

「ああ。」

唯「…」

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 01:47:12.34 ID:CCRwLSWN0
唯「…」

唯「も、ももも、もしか…して、お、おばけっ!?」

「おばけ??」

「確かにね。魂が肉体から離れれば…」

「その存在はすなわち人外だろうね。」

そういうと、その青年は微笑む。
はにかんだ微笑だが…
強く、惹きつけられる。

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 01:54:17.83 ID:CCRwLSWN0
唯「だ、誰なの…」

唯「おばけの…お兄さん…」

唯は震えながら発する。

「すまない、初対面の女性に対して名乗らずにいるとは…」

「わたしは、アドルフ。」

アドルフ「アドルフ・ヒットラー、と言います、お嬢さん。」

"ッ"の部分を小気味よく発音し、青年は唯にこたえる。

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 01:58:54.26 ID:CCRwLSWN0
唯「あどるふひとらー??外国人??」

アドルフ「そう、ドイツ人、だよ。」

青年はそう答える。

唯「…」

唯「が、がいじんのおば…け…」

唯は再び震えを覚える。

アドルフ「怖がらせてしまって、いるね…」

青年の表情から笑みが消え、そのはにかみは一層痛々しさを帯びる。

唯「あ…」

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 02:05:58.51 ID:CCRwLSWN0
唯はすぐに悟る。
この青年の表情は、澪が度々その面に映す…

唯「あ、ご、ごめんない…おばけのお兄さんにおばけなんて言って…」

アドルフ「こちらこそ…すまない。どうやら今の私は…」

アドルフ「君の認識どおり、人外の存在らしいから…」

唯「…」

唯は青年に憐憫を覚える。
この青年は、表面上は、はきはきしているとはいえ、
澪並の人見知りだと理解する。

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 02:11:52.08 ID:CCRwLSWN0
唯「あやまらなくちゃいけないのは私のほうだよ。」

憐憫を覚えると、唯の心から恐怖が消えていく。

唯「え、と、あどるふさん?」

アドルフ「呼び捨てで構わない。
     アドルフでも、ヒットラー、でも。」

青年は答える。
表情に笑みが戻りつつある。

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 02:17:43.49 ID:CCRwLSWN0
唯「アドルフ…」

唯「なんか照れるね…」

唯も可愛らしくはにかみつつ、微笑む。

唯「気にせずに。」

青年も微笑む。

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 02:21:02.78 ID:CCRwLSWN0
唯「アドルフはどうして私の部屋にいるの?」

当然の質問だ。
側にいるのが生身の人間なら、間違いなく変質者扱いだろう。

アドルフ「私にもよくわからない。」

アドルフ「ただ…」

アドルフ「どうやら、君がもっていた"小撥"と関係があるらしい。」

唯「こばち(小撥)??」

アドルフ「君が昨晩ギターを奏でるのに使った、鼈甲製の。」

唯「あ、ムギちゃんのお父さんに借りたピック…」

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 02:28:40.24 ID:CCRwLSWN0
アドルフ「その小撥は、私が、甥のレオに与えた小細工物の"一部"だ。」

唯「へ、そうなんだ。じゃあ、このピックは元々アドルフの物なんだね。」

唯からはすっかり、怖れ、が消え、
持ち前の人懐こさ、と好奇心が頭をもたげつつある。

アドルフ「もともとは、義母の髪飾りだったはずだが…」

唯「義母…」

アドルフ「ああ。父の前妻のことだ。私の母は後添えでね。
     甥の母、姉のアンゲラとは腹違いになる。」

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 02:34:45.05 ID:CCRwLSWN0
唯「ふ、ふくざつな家庭じじょうだね…」

アドルフ「気にしなくてかまわないよ。」

アドルフはそう言う。

アドルフ「ああ!」

アドルフ「忘れていた!まったく私としたことが…」

アドルフの表情に再び、はにかみ、が浮かぶ

唯「?」

アドルフ「君の名前を聞くことを…」

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 02:39:47.82 ID:CCRwLSWN0
唯「わたし?」

唯「私は、ゆい。ひらさわ ゆい だよ。」

アドルフ「日本人はシナ人と同じく姓、名前、の順だから…」

アドルフ「平沢お嬢さん、ですね?まったく私としたことがすいませんでした…」

唯「?」

唯「わたしも、呼び捨てで、"ゆい"でいいよ?」

アドルフ「え!?いいの、かい?」

唯「うん♪」

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 02:46:07.90 ID:CCRwLSWN0
アドルフ「身内と妻以外を、名前で呼ぶのにはなれないものでね。」

唯「妻!?結婚してるの!?」

アドルフ「ああ。私が…」

アドルフの表情が強く歪む。

アドルフ「私の生を終える直前に、結婚式を挙げたんだ。」

そう答えるアドルフ。

唯「…」

唯は、彼の表情を読んで、それ以上聞こうとはしなかった。

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 02:50:35.31 ID:CCRwLSWN0
唯「ご、ごめんなさい…」

アドルフ「気にしないでいい。」

アドルフは、そう答える。
無理やりに、はにかみ微笑んで。

唯「と、とにかく…」

唯は話題を戻す。

唯「なら、このピックはアドルフに返した方がいいかな…」

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 02:59:49.62 ID:CCRwLSWN0
アドルフの表情は、再びにこやかなものに戻っている。
けれど、それは、笑みを装った、唯を安心させるためのものだが。
これから先、アドルフが表情を崩すことはほとんど無くなる。

アドルフ「気にしなくていい。
     君が今までどおり使ってくれたまえ。」

唯「いいの?」

アドルフ「ああ。」

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 03:03:28.50 ID:CCRwLSWN0
唯「ありがとう♪」

唯は微笑む。

アドルフ「ところで、私も死人なのでね…」

アドルフ「ここが日本だということはわかったが…」

アドルフ「ベルリンが落ちてから、どのくらい時間が経っているんだろうか?」

唯「べるりん、て何?」

アドルフ「…」

アドルフの質問も悪いが、彼は現代日本の、
平均的女子高生の教養について全く知らない。

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 03:09:19.68 ID:CCRwLSWN0
アドルフ「ドイツ国の首都なんだが…」

唯「あ、そ、そうなんだ!?
  私、東京とアメリカのニューヨークしか知らないから…(汗)」

アドルフ「…」

アドルフ「…なら確か、日本は皇帝陛下臨御のもと、その皇紀2600年を祝…」

アドルフはそう言いかけてやめる。

アドルフ「現在は西暦何年だろうか?」

一番的確な質問だ。

76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 03:17:13.06 ID:CCRwLSWN0
唯「えっと…」

唯「えとね…」

側においてあった携帯を手に取り、なにやら始める唯。

アドルフ「…」

ちなみに、アドルフは天然女性が苦手ではない。
自身の妻がそうであったように、その手の女性に対してはかなり寛容なほうだ。

78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 03:22:19.69 ID:CCRwLSWN0
アドルフ「その、機械、はなんだい?」

唯「え?携帯電話だよ?」

アドルフ「けいたいでんわ??」

アドルフは、数秒思案する。
が、技術発展、という概念とともに思考をやめる。

唯「あ、今は2010年だって!!」

アドルフ「!!」

79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 03:30:42.44 ID:CCRwLSWN0
アドルフ「…」

アドルフ「65年…!!」

彼はそう口にする。

唯(ってことは、アドルフは60年前に死んでるんだ…)

アドルフ「ああ…」

アドルフ「ああっ!!」

アドルフは強く、強く悲痛な表情を帯び、ベッドの横にしゃがみ込む。

80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 03:37:25.64 ID:CCRwLSWN0
数十秒後。

アドルフ「…」

アドルフ「ゆい。」

アドルフは唯に青い瞳を向け、問う。

アドルフ「今のドイツは…どうなっている…

アドルフ「…のだろうか?」

悲痛な表情のアドルフ。

唯「え、えと…」

82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 03:47:07.28 ID:CCRwLSWN0
唯は答えることができない。
アドルフに気兼ねして、というよりも、
その知識材料が"ビール"と"ソーセージ"と、両親が現在滞在してる場所
ということぐらいしかない。

唯「あ!」

両親が少し前に送って来た土産を思い出す。

唯「たしか東西ドイツ統一記念20周年がうんたらかんたら…」

唯にしては珍しい。

アドルフ「東西ドイツ統一記念20周年!?」

アドルフ「どういうことだ…」

84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 03:55:06.83 ID:CCRwLSWN0
アドルフ「…」

アドルフ「ゆい、君は見たところ学生のようだが。」

唯「うん!高校3年生になったばっか!」

アドルフ「歴史、は学校でならっているだろうか?」

唯「うん!世界史取ってるよ!」

アドルフ「…」

早速アドルフは、自分のことよりも唯のほうを心配する。

85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 04:01:07.03 ID:CCRwLSWN0
アドルフ「教材があれば見せてもらいたいのだが…」

唯「教科書なら多分バックに入ってると思うんだけど…
  ちょっと待って…」

アドルフ「…」

唯「あ、あった!」

アドルフ「!!」

87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 04:08:28.34 ID:CCRwLSWN0
アドルフ「すまないが早速読ませてもらっていいだろうか!?」

唯「もちろん!」

アドルフ「早速…」

アドルフ「…」

アドルフ「く…」

アドルフ「どうやら私は…物体に触れることができないようだ…。
     ページを開いて、もらえないだろうか?」

唯「おーけー!!」

88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 04:15:09.45 ID:CCRwLSWN0
それから、アドルフは第二次大戦後から現在までの、
中道的な教科書の内容にそった、歴史の歩みを知り…

アドルフ「…」

唯「あ、あどるふ?」

アドルフ「やはりアメリカが…
     マルクスなどかわいいものじゃないか…」

アドルフ「…」

唯は、アドルフが生前、何者だったのかに気が付いていない。
先ほど彼と一緒に眺めた、教科書の記述や写真には
山ほどの情報がアドルフについて記されていたのに。

90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 04:26:22.28 ID:CCRwLSWN0
アドルフ「いや、覚悟はしていたことだ…」

アドルフ「けれどしかし、私のことをさも悪魔のように…」

アドルフ「いや、堕天使…」

アドルフは独りごつ。

アドルフ「何より…イサァクの種どもは再び蔓延り…あろうことか国家まで…」
     
アドルフ「忌まわしい…げに忌まわしい!!」

アドルフ「汚らわしい種族汚染者どもめ!!」

唯「ビクッ…」

91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 04:33:13.29 ID:CCRwLSWN0
アドルフ「やはり、私の歴史観は全く正しかった!!」

アドルフ「しかし…」

アドルフ「今、私の意識が目覚めていること…
     神は私を罰されているということか…」

アドルフ「ドイツを救えなかった、この私を…」

アドルフ「…」

アドルフ「いや…」

92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 04:38:51.62 ID:CCRwLSWN0
アドルフ「いや違う!」

アドルフは、唯のベッドに腰掛ける。

アドルフ「今、この私の意識が再び蘇ったということは…」

そう言うと、アドルフは右手で、ポン、と一度右ひざを打った。
霊体?のはずの彼から、小気味良い音がする。

93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 04:46:15.72 ID:CCRwLSWN0
アドルフ「…」

アドルフ「神よ。」

アドルフ「感謝します。」

そう言い終えると、アドルフは潤んだような目で、虚空を見つめる。
押し黙ったまま。

唯は少し混乱していた。芽生えた恐怖を再び、ほんの少しだが、覚えつつ。
これが先ほどまでの、内向的だが、しかし、人の良さそうに見えた青年のそれだろうか?
そして何より唯は、このような顔をする人間を、面とむかっても、テレビでも、目にしたことは無い。
あどけない少年の眼差しを持ちながら、老獪さを隠そうともしない、表情の男を。

94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 04:48:25.57 ID:CCRwLSWN0
ごめんなさい、すこし寝ます
すいません

104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 10:09:53.72 ID:CCRwLSWN0
すみません、再開します。

107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 10:15:35.84 ID:CCRwLSWN0
明けて翌朝。

唯「うーんんんん…」

唯「むにゃむにゃ…」

眠っている唯。
そして、ガチャ、と唯の部屋のドアが開く。

憂「あねーちゃんーーん!朝だよぉ!」

憂が姉を起こしに来る。

唯「あと、ごふん…」

憂「おねーちゃんっ!!」

108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 10:22:12.11 ID:CCRwLSWN0
憂「遅刻しちゃうよ!早くゴハン食べよ!」

唯「わかったよぉー」

ムクリ、と起き上がる唯。

起き上がった唯の、その視線の先には、
青白く輝く人型。

唯「!!」

109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 10:28:36.56 ID:CCRwLSWN0
唯「ヒッおば…」

と言いかけて昨夜のやり取りを思い出す。

アドルフ『おはよう、ゆい。』

アドルフは唯の机の前の椅子に腰掛けていた。
やさしく唯に微笑みかけ、言葉をかける。

アドルフ『もちろんこれは、夢ではないよ。』




※以降のアドルフの台詞には二重括弧を使います。

110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 10:36:01.08 ID:CCRwLSWN0
唯「あっ、やっぱりそうなんだ…」

憂「どうしたの??」

憂が首をかしげる。

唯「あっ!」

唯「この人はアドルフって言うんだけどね…」

憂「?」

111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 10:41:41.76 ID:CCRwLSWN0
アドルフ『ゆい、やめておきなさい。』

アドルフ『どうやら妹さんには、私の姿は見えていないようだよ。』

アドルフが諭す。

唯「そうなんだ…」

憂「??」

憂は格別気にしない。
唯が寝ぼけて変なことを口にするのはいつものこと。

112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 10:46:36.49 ID:CCRwLSWN0
朝食をとる唯と憂。
アドルフは唯の隣の椅子に腰掛け、平沢邸の内部を見回している。

唯「もぐもぐ…」

アドルフ『…』

唯「…」

唯(すごく変な感じ…)

113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 10:55:26.57 ID:CCRwLSWN0
現在のシチュエーション、
平沢姉妹とその横に座る白人男性の幽霊。
確かにシュールである。

憂「ちゃんと牛乳も飲むんだよ!」

唯「うん!」

アドルフは微笑みながら、二人のやりとりを見守る。

116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 11:01:07.02 ID:CCRwLSWN0
そして登校。
仲良く並んで歩く平沢姉妹。
一歩下がってその後を、アドルフがついて行く。

唯は時折、ちらちら、と、アドルフに視線を送る。

唯「…」

憂「どうしたの?おねーちゃん??」

唯「ううん!な、なんでもないよっ!」

118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 11:08:13.83 ID:CCRwLSWN0
アドルフが声をかける。

アドルフ『ゆい、黙って聞いてくれたまえ。』

唯「…」

アドルフ『どうやら私は、その鼈甲の小撥と離れてはいられないようなのだ。』

唯「!」

唯(地縛霊ってやつだね…)

ちなみに、ある場所や建築物に縛られているのが地縛霊である。
その理論でいけばアドルフは地縛霊でない。

121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 11:15:36.33 ID:CCRwLSWN0
律「うーっす、ゆいー、ういちゃん」

澪「おはよう。」

唯「おはよう!りっちゃん、みおちゃん!」

憂「お早うございます!」

律や澪と行き会う。

122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 11:20:36.02 ID:CCRwLSWN0
校門近く。
桜高の生徒が多く歩いている。

アドルフの表情は、無表情のそれに近くなっていた。
彼は、あまりアジア人種のことを好いていない。
というか、はっきりいえば嫌悪の対象である。

唯に対してだけは、まったく違うようだが。

123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 11:28:34.67 ID:CCRwLSWN0
そして、場所は音楽室。
授業がはじまる。

さわ子「はーい、さっき配った譜面に注目。」

アドルフは唯の座席の隣に立ち、
音楽の教科書と、先ほど配られた譜面に目を向ける。

アドルフ『おお!これは…』

唯(そういえばアドルフって、ドイツ人だよね?
  でも、日本語は読めるみたい…)

生前の彼は、ラテン語すら満足に読めず、
ドイツ語以外の言語はまったく解さなかったはず。
ところが今は、日本語を読み取ることができるらしい。

125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 11:39:38.83 ID:CCRwLSWN0
さわ子「とりあえず私が伴奏つきで歌います。
    一回目だから、感覚をつかむ程度に聞いてね。」

軽快なピアノの調べがはじまる。
そして歌い始めるさわ子。

さわ子「はるかに はてなく ♪」

アドルフ『!』

126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 11:44:06.53 ID:CCRwLSWN0
さわ子「ドナウの水は ♪」

アドルフ『!!!』

ヨーハン・シュトラウスの『美しく青きドナウ』である。

ハードメタルビッチの彼女も、もちろん音楽教師。
一応、というか、かなりマジで上手い。
対して、うっとりするような表情のアドルフ。
さわ子の歌にすっかり聞き入っている。

アドルフ『…』

唯(…)

こうして、唯の一日が進んでいく。

127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 11:55:55.02 ID:CCRwLSWN0
けれど音楽の授業以外ではむしろ、
アドルフは終始むっつりとした表情を浮かべていた。
アジア人への嫌悪に加え、桜高は女子高である。
生来の恥ずかしがり屋であるアドルフにとっては酷な環境だ。

そして、現代日本人の挙動を観察し、アドルフは強く思う。

アドルフ(…)

アドルフ(野生への回帰…野蛮なる文明…)

128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 12:01:44.89 ID:CCRwLSWN0
アドルフ(日本人はアーリヤ人に劣らず、
     高い規律と徳性、品格をもっていたはず…)

アドルフ(…)

アドルフ(なんという退廃!!)

アドルフ(これは、もしや…)

アドルフ(わが祖国も…)

132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 12:12:12.06 ID:CCRwLSWN0
そして、放課後の音楽室。

唯「みんなおはよー!」

音楽室に入る、唯とアドルフ。

澪「唯っ!大遅刻だぞ!」

梓「ほんとにもう!!」

唯「ごめんね~」

アドルフ(姦しい…)

律「やっと来…」

律「…」

133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 12:18:30.06 ID:CCRwLSWN0
律「!?」

律が目を剥く。

律「お、おまえが持ってるその大量の本は…」

唯「えへへ…図書室行ってたんだ。」

アドルフの頼みで、唯は図書室から借りられるだけの本を借りてきたのだ。
現代史や現代政治、現代の経済事情etcについての。

律「ど、どうしちゃったんだよ…」

梓「せん…ぱい…」

律と梓がひどく心配そうな表情で唯を見る。

136 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 12:24:16.91 ID:CCRwLSWN0
律「おまえが自分から…活字を読もうとするなんて…
  やっぱり…」

紬「ゆいちゃん!なんで相談してくれなかったの!!
  私たちお友達でしょう!?」

澪「いや、唯もこう見えてナイーブなところがあるから…」

唯「え…え!?」

アドルフ『?』

唯が精神的にどうにかなってしまったのでは!?
ということで、暗黙のうちに全員が一致している。

137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 12:33:43.28 ID:CCRwLSWN0
唯「えっと…」

律「なあ唯!こころあけっ広げにして、お前の思うところを語ってくれよ!
  我慢するなよっ!!」

梓「もっと抱きついて来ていいですからっ!
  スキンシップをはかりましょうよっ!」

唯「あ、あのね…」

唯「この本、私が読むわけじゃないというか…」

律「!!」

梓「…もしかして憂のかわりに、とか?」

138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 12:38:41.63 ID:CCRwLSWN0
唯「そ、そうだよ!憂に頼まれてね!」

結局、梓に調子を合わせる唯。

律「…」

律「なあーんだ…。たく…」

律が白けた様な顔をする。

澪「唯、心配させるなよ…」

アドルフ(もしや、ゆいは、あたまが酷くよ…)

アドルフはそう思い至ろうとするが、結局やめた。
えてして多くの女性とはそういうもの、と自分に言い聞かせて。

139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 12:46:07.61 ID:CCRwLSWN0
律「あー白けた白けた。」

梓「もう、ほんとに…」

紬「唯ちゃんにもお茶入れるね♪」

唯「うん、お願い!」

そう紬に答えると、唯は自分の"指定椅子"に座る。

141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 12:51:20.89 ID:CCRwLSWN0
アドルフ『この子たちは、音楽室に遊びに来ているのか…?』

アドルフの、あきれたような声。

唯「あは、あははは…」

アドルフの素直な感想に、唯は反論できない。

アドルフは音楽室に来る途中、唯から、
彼女の素性や、この桜高について簡単に説明を受けていた。

アドルフ『けいおんがくぶ??』

アドルフ『いったい、どのような音楽を…』

143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 12:58:21.88 ID:CCRwLSWN0
紬「はい、どうぞ♪」

紬はコースターに乗ったティーカップを唯の前に置く。

唯「ムギちゃん、ありがと♪」

紬「あ、そうだわ!唯ちゃん!」

唯「?」

紬「きのう唯ちゃんに貸してあげたあのピック!
  あの元の持ち主について、お父さんから色々聞いてきたの!」

唯「!!」

アドルフ『!』

144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 13:04:57.27 ID:CCRwLSWN0
律「へー、そりゃまた。」

律がさも興味なさそうに、そう言う。

紬「あの持ち主のラウバルさんて方は、故人だったんだけどね、
  そこそこ有名なドイツのギタリストで…」

澪「持ち主は亡くなられてたのか…」

アドルフ『…』

145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 13:14:22.19 ID:CCRwLSWN0
紬「それでね、彼の家族、というか親戚がかなりの有名人だったの!」

唯「え、どういう…こと??」

紬「彼はね、ラウバルさんはね…」

紬は一息ついて、さらに語りはじめる。

紬「あのアドルフ・ヒトラーのね…」

紬「ヒトラーの…お姉さんの子孫に当たるらしいの!」

唯「!」

アドルフ『!!』

146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 13:17:17.25 ID:CCRwLSWN0
律「まぢかよ!?すげーなそりゃぁ…」

紬「お父さんがドイツの音楽会社の方からね、数枚あるうちの一つを…」

唯「アドルフって…有名人なの??」

きょとん、とした顔で、唯が質問する。

梓「え゛…」

147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 13:22:13.51 ID:CCRwLSWN0
澪「ま、さか、アドルフ・ヒトラーを知らないとか…ないよな?」

唯「?」

律「うちの馬鹿聡ですら知ってるぞ…ってか…」

律「…」

律「はいる!!ひっとらーー!!」

149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 13:32:15.70 ID:CCRwLSWN0
律は突然そう叫ぶと、右手を前方斜め前に差しかざす。

アドルフ『…』

アドルフは気にも留めない。
彼は、自分とNSDAPを揶揄して、いわゆるナチス式敬礼を真似る"戯れ"が
旧連合国で流行っていたことを知っている。
かの国々で、自分が嘲笑の対象であったことも、勿論知っている。

律「…ってぐらいは聞いたことあるだろ??」

唯「あ、そういえば…」

唯の中で昔、聞いたことがあるような、
そんな、おぼろげな記憶が浮かび上がってくる。

151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 13:39:07.36 ID:CCRwLSWN0
澪「第二次世界大戦を引き起こしたドイツの独裁者で、
  ユダヤ人を何百万人も虐殺した人間だぞ。」

アドルフ『…』

唯「え…」

唯の頭の中に、混乱が生まれはじめる。

152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 13:40:23.15 ID:CCRwLSWN0
>>150
ごめん、解説は一番最後に…

153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 13:45:04.07 ID:CCRwLSWN0
梓「アンネの日記読んで、私何度も泣いちゃいましたよ…」

梓は哀しい目になり、そう言う。

唯「え…どういう…」

唯「どういうこと??」

そう言うと唯は隣に立つアドルフへ視線を向ける。
彼の顔を仰ぎ見るように。

154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 13:53:28.92 ID:CCRwLSWN0
アドルフの視線と、唯の視線が交差する。
澄んだ青い瞳。澱みがまったく含まれぬ、混じり気の無い。

唯の魂が揺れる。静かに、波立つように。

アドルフ『ゆい。私はかつて―』

アドルフは語り始める。

アドルフ『ドイツ国の大統領兼首相だった。』

アドルフ『いや、それ以前に…』

アドルフ『一人の政治家だった。』

157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 14:00:45.34 ID:CCRwLSWN0
アドルフ『そして、死よりも忌むべき不名誉と絶望の中から、
     ドイツを再び蘇らせた。』

アドルフ『私の生涯は闘いだった。』

アドルフ『すべては、神の御旨のもと、われ等が祖国のため―
     私は闘った。』

唯「戦争を起こして…」

唯は問う。

159 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 14:09:47.12 ID:CCRwLSWN0
唯「たくさんの人を殺したの?」

目の前の男から視線をそらさずに。
まっすぐに、見つめて。

律「そうだぞ、ってなんであさっての方向に言ってんだよ…」

唯の問いは、友人たちに向けたものではない。

アドルフ『確かに私は戦争を始めた。しかし、私は戦争が好きなわけではない
     戦争は必要悪であることは確かだが、人間はやはり平和のうちに普段を生きるべきだ。
     しかし…』

アドルフ『しかしだ!』

162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 14:17:57.89 ID:CCRwLSWN0
アドルフ『我々を彼らは、悪魔だ、戦争狂だと言う!』

アドルフ『そんな者たちこそ、私から言わせれば憂鬱症で草臥(くたび)れただけの、
     相手にすることすら躊躇われる馬鹿者たちだ!』

アドルフ『そのような者達は、生の本質から目を背け…日々を生きているに過ぎない。』

アドルフ『彼らは歴史と世界の歩みを、まったく理解しようともしないし、
     また、できない。』

この男は何のために、唯に、いったい何を語っているのだろうか?
抽象的な論旨だが…
これは、弁明なのだろうか?それとも、自分の矜持を誇っているだけなのだろうか?

167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 14:30:21.89 ID:CCRwLSWN0
アドルフ『ゆい。確かに好き好んで戦争をはじめる人間もいる。』

アドルフ『けれど、そのような者たちの末路などは、そら寒く悲惨なだけだ。』

アドルフ『私は、祖国の人々のために闘いを選んだ。
     そうせざろう得なかったのだ。しかし、それから逃れようとすれば…
     同じく、悲惨な結末が待っているだけだろう。』

唯「…」

この男の言葉は、何かを帯びている。
声音に宿っているのか、その精神のうちから湧き上がってくるのか。
その澄んだ青い瞳に潜んでいるのか?

その身振り手振りは大仰にもなり、祈りを捧げるような、
小さくまとまった"かたち"にもなる。

169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 14:40:14.94 ID:CCRwLSWN0
男の言っていることを、正直、唯は理解できていない。
けれど、一つだけ、解り出した、というか、ふと思い浮かんだことがある。

唯(アドルフにも、きっと…)

唯(きっと、じじょー(事情)があるんだ…)

唯「わかった。うん。」

唯「わかったよ。」

171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 14:48:58.36 ID:CCRwLSWN0
梓「本当ですか??あやしいなぁ…」

アドルフ『そうか…』

澪「まあ、唯のことだから…」

アドルフ『ゆいが理解してくれたのなら、私もうれしいよ。』

優しく微笑むアドルフ。

唯「うん!」

唯(そうだ、そうだよ。)

唯(こんなに純粋で優しいアドルフが…)

175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 14:54:31.56 ID:CCRwLSWN0
そのときである。突然に、部室の扉が開く。

さわ子「おはろー!」

さわ子が来たようだ。

アドルフ『!』

さわ子「ムギちゃん、お茶ー。砂糖はいつもの倍ね。」

そう言うと、律の隣に腰掛けるさわ子。

179 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 15:02:44.80 ID:CCRwLSWN0
背もたれに大きく体重を預け、大股を開いて両足を無造作に放り出す。

さわ子「あー職員会議まじダルかった…」

首元からブラウスの中にに手を入れ、ぽりぽり、と脇を掻くさわ子。

アドルフ『…』

アドルフは目を疑っていた。

181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 15:12:58.37 ID:CCRwLSWN0
これが今朝、『美しくあおきドナウ』を優雅に歌い上げた、
あの女性だろうか?
奥ゆかしい"清純"な女性だった、はず。

さわ子「でさぁ、その間中ずっとね、」

さわ子「体育の○○先生が、チラチラいやらしい視線むけてくんの。」

澪「うわぁ…」

律「マジで!?付き合っちゃえよ!」

さわ子「冗談!あんな筋肉ダルマこっちから願い下げ、
    というか正直キモいだけ。ほんとまじウザいわ。」

アドルフ『これは、酷い…』

唯「あははは…」

182 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 15:19:53.19 ID:CCRwLSWN0
さわ子「ん?そのピック…」

唯「あ…」

テーブルの上においてあったピックを拾い上げるさわ子。

さわ子「鼈甲製じゃないの?」

さわ子「高校生の分際でこんな物百億年早いわよ。」

183 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 15:28:13.83 ID:CCRwLSWN0
澪「アドルフ・ヒトラーの親戚のギタリストの形見、
  みたいなものらしいんですけど…」

さわ子「ホントに!?」

突然、さわ子の目がきらきら輝きはじめる。

律「さわちゃんどったの?」

さわ子「大学生のころね、ナチスの服装真似てライブやってた時があったのよ!」

澪「親衛隊の黒い制服、とかでですか…?」

さわ子「そうそう!あたしはヴァッフェンSSの将校服だったわぁ…」

184 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 15:36:18.95 ID:CCRwLSWN0
ヴァッフェンSSとは簡単に言えば、
ナチス党は親衛隊の、純軍事部門である。

梓「うわぁ…」

露骨に嫌悪感を示す梓。

アドルフ『…』

アドルフも梓に同じく。

さわ子「総統の『わが闘争』を入場券代わりにしたりとか…
    色々やったわねぇ…」

さわ子は昔の"杵柄"に思いを馳せているようだ。

187 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 15:44:22.12 ID:CCRwLSWN0
さわ子「で、どっちの子孫?ウィリアムパトリック??アンゲラ・ラウバル??」

紬「ラウバルさんて方の物らしいんですけど…あ、紅茶どうぞ♪」

紬が紅茶を運んでくる。

さわ子「サンキュー♪」

さわ子「へー、じゃあ総統のお姉さんの孫かひ孫か…」

律「ヒトラーって兄弟がたくさんいたの??はじめて知った。」

さわ子「総統自身は上から三番目だっけ。
    小さいころに死んじゃった兄弟もいたらしいけど…」

さわ子「上の二人、兄のアロイスと姉のアンゲラと総統は、
    腹違い、お母さんが違うの。」

188 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 15:55:30.71 ID:CCRwLSWN0
さわ子「ウィリアムパトリックは、アロイスの息子よ。」

さわ子「で、あとはお母さんが同じな妹、パウラ・ヒトラー。
    成人できたのは総統をあわせてこの4人よ。」

さわ子「アンゲラには息子一人と娘が一人いて、
    息子のレオには子孫がいるわ。」

さわ子「アロイスの息子がウィリアム・パトリックとハンツ。
    名前見てわかるように、
    ウィリアム・パトリックの方のお母さんがイギリス人で、
    アメリカに移住したんだけど…」

193 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 16:01:39.12 ID:CCRwLSWN0
さわ子「ウィリアム・パトリックにも三人、男の子供がいて
    現在もその三人は生きてると思ったけど…」

律「よく知ってるな…」

さわ子「結構調べたもの!」

アドルフ『ああ…!』

アドルフは憐憫の表情を浮かべている。

アドルフ『なんと、なんと可哀相な娘だ…このような娘が、美しい歌をうたい、
     そして、教育者であるなど…』

197 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 16:16:03.70 ID:CCRwLSWN0
アドルフ『日本人に深い同情を覚えるよ…』

唯「あは、あはは…」

唯はもう笑うしかない。

さわ子「…」

さわ子「ねぇ、ゆ、い、ちゃん??」

猫なで声を上げるさわ子。

唯「な、なにっ!?」ゾクッ

198 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 16:21:37.61 ID:CCRwLSWN0
さわ子「そのピック、私に、ちょーだい?」

唯におねだりする、さわ子。

アドルフ『ブルッ…』

アドルフは怯えを見せる。

さわ子「ねぇ…」

唯の隣に来ると、艶かしく彼女を抱擁する。

199 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 16:23:17.99 ID:CCRwLSWN0
すいません、少し休憩します

207 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 18:15:22.00 ID:CCRwLSWN0
すいません、再開します。

209 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 18:16:09.27 ID:CCRwLSWN0
紬「あらあらあらあら…/////」

紬が"わきわき"し始める。

澪「先生、そのピック、唯のじゃないですよ?」

さわ子「あら?じゃあもしかしてムギちゃんの?」

澪「半分正解、というか、琴吹家系列の店から
  レンタルしてもらったものなんです。」

さわ子「あらぁ…」

210 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 18:22:00.47 ID:CCRwLSWN0
さわ子は紬に擦り寄る。

さわ子「む、ぎ、ちゃぁぁん…」

紬「あ、せん、せぇ、あ…だめぇ…」

紬「みんなが、みて…あ…/////」

さわ子のしていることはあまりにも卑猥なため、
言葉にすることすら躊躇われる。

アドルフ『なんたる淫売…!!』

211 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 18:31:41.49 ID:CCRwLSWN0
唯「さわちゃん、ごめんね…」

唯「そのピックでね、私がギー太と遊んであげたいんだ。」

さわ子「えー…」

唯「こればっかは、譲れないもん!」

唯のまなざし。

アドルフ『!!』

アドルフ(この…意思を湛えた眼差し。真っ直ぐな意思の…)

アドルフ(ヴァルハルの乙女たちも、斯くあるのだろうか?)

214 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 18:40:11.00 ID:CCRwLSWN0
澪「ちょっと待て。」

唯「え?」

さわ子「なに?」

澪「偉そうにそう言うお前は、」

澪「今ものんきにお茶してるだろう…」

唯「あ…」

215 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 18:47:10.54 ID:CCRwLSWN0
澪「練習。」

梓「そうですよっ!」

唯「う、うん…」

アドルフ『…』

そして、各々の楽器を取り練習を始める。

218 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 19:02:28.42 ID:CCRwLSWN0
唯「1秒あれば それで十分 ♪」

澪「♪~」

律「セイセイ!!」

アドルフ『これは…』

唯「ずるいくらい男前 ボ~っと眺めていたら ♪」

梓「♪~♪~」

アドルフ『なんと…』

221 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 19:08:01.28 ID:CCRwLSWN0
唯「Let's try! 無口すぎるキミ ♪」

紬「♪」

アドルフ『…』

唯「誰にも止められない ♪」

アドルフ『酷い…』


アドルフ『なんと、愚かしい…』

222 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 19:16:34.52 ID:CCRwLSWN0
アドルフ『野蛮人の、原始音楽のようだ…』

そして、演奏が終わる。

唯「よし!」

梓「なかなか良かったです♪」

律「あー疲れた疲れた…」

アドルフ『…』

唯(あ、アドルフ…)

唯(ぼーってしてるね…聞きほれちゃったってやつ!?)

見当違いどころではない。

225 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 19:24:28.89 ID:CCRwLSWN0
唯達の演奏する音楽より推論して、アドルフはいくつかの帰結を得ていた。

アドルフ(おそらく、この少女たちの趣向が、この時代の日本において極めて特殊、
     ということはあるまい。)

アドルフ(わが国をはじめとする文明国も、おそらくは同様に…)

アドルフ(大衆音楽は、俗っぽく、単純愚鈍で、とても聞いていられたものではない。
     しかし、煤けた香りの中にすら、『歌』があったはずだ…)

アドルフ(だのに、これは…それどころの話ではなく…)

アドルフ(アンゲラの子孫もこのような?)

アドルフ(可哀相なアンゲラ!!)

アドルフ(…)

アドルフ(ああ…恐れていたことが…)

228 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 19:32:39.75 ID:CCRwLSWN0
アドルフ(大衆の台頭が一層…)

アドルフ(マルクシズムめが死に体だと喜んでみれば…)

アドルフ(シュイペングラー氏が生きていたならば、なんと書くだろうか…?)

アドルフ(おそらくその"弊害"は多岐に渡り、とてつもないほど人々の魂を汚していることだろう。)

アドルフ(…)

アドルフ(しかし、この娘は…)

唯を見やるアドルフ。

229 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 19:38:20.65 ID:CCRwLSWN0
×シュイペングラー氏
○シュペングラー氏

231 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 19:40:55.12 ID:CCRwLSWN0
アドルフは生前、多くの女性著名人たちと知的好誼を結んだ。
そしてアドルフは、唯に対し、それらの女性と同等の評価を覚え、
姪っ子にでも抱くかのような愛着を感じつつある。
唯は年若く、そして、アジア人であるのに。

唯から、決然とした、輝ける、直感へと通ずる才能を覚えるのだ。
夢遊病者の確信、と自ら評するごとく、アドルフは直感を高く扱う。

アドルフはまさに、ショーペンハウアーの行き過ぎた"弟子"であった。

そして、今、アドルフは、己が霊体として存在していることにより、
神の存在とその命令をはっきりと確信している。
彼自身の中で。

233 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 19:48:36.59 ID:CCRwLSWN0
そして、人間の復活、キリスト教的な、である、
それも十分にありえる、と考える。
つまり自分が肉体を得て再び…

いやむしろ、再び…肉体を得る必要などあるのだろうか?
肉体が終始、精神に付きまとうなど、不便なだけでは?

アドルフ『そうだ…』

唯「??」

アドルフは、まず、唯を"教育"することに決める。
彼は生前、多くの人々を"教育"し、正道へ導いてやった、との強い矜持を持っている。

アドルフ『そうしよう。』

かつて死を選んだ男は、三度(みたび)、蘇るのか?

235 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 19:59:56.56 ID:CCRwLSWN0
そして時間は進み、その日の夕食時の平沢家。

唯「おひしいよ、ういぃ~♪」

憂「ありがと!おかわりもあるからね♪」

唯「うん♪」

今日の献立は、ハンバーグシチュー、シーフードサラダ、野菜のお浸し、
里芋の煮っ転がし、茄子の浅漬け、味噌汁、ご飯。

アドルフ『うん。確かに美味しそうだ…』

アドルフは素直に感心する。

242 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 20:10:09.86 ID:CCRwLSWN0
唯「うん♪憂は自慢の妹だよ!」

憂「お、おねーちゃんってば////」

憂に向けられた言葉ではない。

アドルフと同時代の人間は、平沢姉妹よりも、もっと年若いころから
様々な労働に従事している人間が多々いた。
しかし、それを勘案してすら、憂の家事スキルには目を見張るものがある。

243 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 20:16:44.64 ID:CCRwLSWN0
アドルフ『そして…』

アドルフ『家族の仲が良い、ということは大変に重要なことだよ。』

唯は、部室で、練習の後に、さわ子から聞いた話を思い出す。

さわ子『総統は兄のアロイスと、その息子ウィリアム・パトリックとは
    相当仲が悪かったらしいわ。』

さわ子『まあ、マスコミに要らぬネタを提供されたり、
    生活費を要求されたりしたら、そりゃねえ…』

245 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 20:32:36.52 ID:CCRwLSWN0
さわ子『晩年には、一説ではだけど、姉のアンゲラとも仲違いしたそうよ。』

アドルフは、自身の家族のことについて、
その後も唯に話してはいない。

唯「わたしは、すっごく幸せなんだな…」

憂「も、もうおねーちゃん////」

憂は照れ隠しにテレビのリモコンを手に取る。

テレビ『早いうちに政府の考え方をまとめていくことは大事だ。
    その中で当然、沖縄、米国の皆さんに…』

鳩山来留夫にそっくりな男が報道陣に囲まれている。

248 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 20:41:23.02 ID:CCRwLSWN0
アドルフ『この冴えない男性は誰だい??』

アドルフはテレビの中の鳩山来留夫似の男を指差す。

唯「あ、はとぽっぽしゅしょう??」

憂「駄目だよおねーちゃん、鳩山総理大臣のことそんな風に言っちゃ。」

アドルフ『そうか、この男が今の日本の首相なのか…』

250 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 20:47:51.37 ID:CCRwLSWN0
アドルフ『本当に冴えないね…』

唯「でも、東大でてるんだっけ??」

アドルフ『東大??東京帝国大学のことかな?』

唯「わかんない、でも日本で一番頭の良い大学。」

アドルフ『おそらくは、東京帝国大学のことか。』

憂「??」

憂には当然、唯がアドルフに発した言葉は、独り言だと捕らえられる。

251 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 20:54:09.87 ID:CCRwLSWN0
憂「弟さんも東大出てて大臣だったし、お祖父さんの鳩山一郎さんも総理大臣だからね。
  すっごいエリートさんなんだよ?」

アドルフ『ふむ…鳩山一郎…聞いたことが無いような有るような…』

唯「ほおぉぉ…そいつはすごいねえ…」

実際、唯にはかなりどうでも良い話だ。

アドルフ『アメリカとの同盟絡みの話題か…』

253 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 21:04:49.30 ID:CCRwLSWN0
アドルフ『敗者に対しては十分気前の良い処遇だ。』

アドルフ『カルタゴのように、破壊され塩撒かれなかっただけマシ、
     というものだ。』

アドルフ『しかし、ベルリン、いやドイツ中が、灰塵寸前までに至った…』

アドルフ『日本も我がドイツも、経済的には、
     再起以上のことをやってのけたそうだが…』

天井の照明に視線を移し、沈痛な表情を浮かべるアドルフ。

254 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 21:16:03.99 ID:CCRwLSWN0
唯「…」

唯「あ、うい、ごちそうさま。」

憂「おねーちゃん、もういいの?」

唯「うん!」

そう憂に答えると、唯は自分の部屋へ戻る。

唯(アドルフのこと、元気付けてあげないと!)

257 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 21:23:59.57 ID:CCRwLSWN0
唯の部屋。

唯「さ、アドルフ!」

唯「借りてきた本を読もう♪」

アドルフ『すまない、ゆい。』

申し訳なさそうな表情を浮かべるアドルフ。

唯「いいからいいから~♪」

259 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 21:34:10.37 ID:CCRwLSWN0
唯「どれから読む?」

アドルフ『ふむ…』

アドルフ『これにしよう。』

アドルフが指差したのは『世界経済入門』という名前の新書。

アドルフ『短時間で現在の世界経済のあらましが掴めそうだ。』

唯「おっけー♪」

唯はその新書を手に取る。

260 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 21:39:33.55 ID:CCRwLSWN0
すぐに序文を読み終えるアドルフ。

唯「読むの早いね…」

アドルフ『そうかな?』

唯「じゃあ、次のページに…」

アドルフ『すまない、ゆい。中を飛ばして、"おわりに"の部分を開いてもらえないだろうか?』

唯「え?いいけど…」

262 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 21:44:44.34 ID:CCRwLSWN0
アドルフは"おわりに"の部分も読み終える。

アドルフ『では、第一章を開いてほしい。』

唯「うん。」

それから再び、アドルフは読書に没入する。

唯「…」

265 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 21:53:04.31 ID:CCRwLSWN0
唯「…」

アドルフの読書法は、簡潔に言えば、
必要な情報と不必要な情報を特に峻別するもの。
多かれ少なかれ誰しもがやっていることだが、
これをアドルフは徹底して行う。
そして、早い。

唯(うわ、もう読み終わりそうだよ…)

30分もしないうちに、"おわりに"の部分に近づいてしまう。

268 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 22:09:43.60 ID:CCRwLSWN0
そして二冊目、三冊目と進み…
唯の入浴時間をはさんで、日が変わるころには最後の五冊目に入る。

唯「ふう。最後の本だね。」

唯は疲れている様子。

アドルフ『すまない、ゆい。負担をかけてしまっているようだ…』

唯「ううん、いいのいいの!私も勉強になってるし!」

大嘘である。唯はもう、一冊目の本の名前すら忘れてしまっている。

269 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 22:16:13.73 ID:CCRwLSWN0
アドルフ『いや、正直、読み過ぎたよ。久しぶりだったからね…』

唯「あ、そっか…」

唯はアドルフが死人だったことを思い出す。

アドルフ『しかし、本当に…』

アドルフ『本当に世界は変わってしまった。』

271 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 22:23:25.57 ID:CCRwLSWN0
アドルフ『核分裂兵器のもとの均衡、ヨーロッパ連合、新興国の台頭、ソビエト連邦の崩壊。』

アドルフ『大衆文化の極致化、そして…諸技術のさらなる発展、産業革命期の比ではなく…』

アドルフ『電算機など特に…』

アドルフ『…』

アドルフ『そして一層、混迷した時代だ。』

唯「…」

273 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 22:30:53.32 ID:CCRwLSWN0
アドルフ『ドイツからは精神的支柱がすっかり取り払われてしまったようだ。』

アドルフ『美徳も誇りも…大切なものがことごとく…』

アドルフ『…』

アドルフ『これではまるで…』

アドルフ『これではまるで豚小屋ではないかっっ!!!』

唯「ビクッ…」

突然大声を張り上げたアドルフ。
唯は驚いて、ぎょっ、とした顔になる。

274 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 22:39:54.40 ID:CCRwLSWN0
アドルフ『す、すまない…ゆい…』

唯「ううん、大丈夫だよ!」

アドルフ『すまない…』

申し訳なさそうなアドルフの表情。
唯の心に、アドルフへの、庇護心のような物が芽生え始める。

アドルフ『ぐじぐじ、と悩むのはもう止めよう。
     それは…男のすることではない。』

アドルフはそう、独りごつ。

アドルフ『大切なのは、進むこと。前線の只中で勇敢に闘うこと。』

277 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 22:46:06.77 ID:CCRwLSWN0
>>275
失礼。
第一次大戦開戦時ぐらいのころのヒトラーをイメージしてる
だから25歳くらい

281 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 22:50:27.38 ID:CCRwLSWN0
アドルフはそう言うと、天井を、虚空をその青い瞳で見つめる。
決心に至ったときのような目。

アドルフ『さて…』

アドルフ『もう良い時間だろう、ゆい。』

アドルフ『夢見の時間だよ。』

優しく、幼児を嗜めるかのように、微笑を浮かべつつ、
唯にそう促す。

283 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 22:56:26.71 ID:CCRwLSWN0
唯「あ、うん…」

アドルフ『?』

アドルフ『どうしたんだい??』

アドルフは、唯が何かを抑えていることに気付く。

唯「アドルフに聞きたいことがあってね…」

アドルフ『言ってみなさい。』

唯「アドルフのね、家族のこと。」

アドルフ『…』

286 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 23:04:04.67 ID:CCRwLSWN0
唯「今日、さわちゃん先生が言っていたこと。」

唯「アドルフは、今の世界のことを知りたがっているけど、」

唯「じゃあ、アドルフの家族が、アドルフが死んだ後に、
  どうなったかについては知りたくないの?」

アドルフ『!』

目を見開くアドルフ。
そしてほんの少し、哀しそうな顔をしたあと、
アドルフは答える。

アドルフ『大いに気になるよ。しかし、少なくとも…』

アドルフ『私の姉と妹、甥のレオは、生きてはいないだろう。』

291 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 23:13:05.99 ID:CCRwLSWN0
アドルフ『…』

そういい終えると、口を結ぶアドルフ。

唯「さわちゃん先生が調べれたんだからさ、どっかの本にきっと載ってるよ!」

唯「学校の図書室か、学校の図書室になかったら、市の図書館に行って、調べよう?」

アドルフ『…』

唯「ね?」

アドルフ『ああ。』

アドルフ『しらべ、よう…』

唯の"思い"は、アドルフの心を強く打つ。

292 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 23:19:21.46 ID:CCRwLSWN0
唯「それとね、アドルフ。」

アドルフ『なんだい?』

唯「アドルフの家族のこと、おしえてもらっても、いい、かな?」

唯「イヤじゃなかったら、だけど…」

アドルフ『…』

アドルフは目を閉じ、数十秒、何事かに思いを向ける。

アドルフ『うん、いいよ。』

アドルフ『寝物語に、話してあげよう。』

アドルフ『私の両親ときょうだいたちのことを…』

295 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 23:34:18.90 ID:CCRwLSWN0
アドルフ『私の父、アロイスはね、私生児だったんだ。』

唯「しせいじって??」

アドルフ『正当な婚姻のもとに生まれた子供ではないということだよ。
     一言で言えば、父親がだれかわからない、ということ。』

唯「そうなんだ…」

アドルフ『父は13歳のころに、家を出た。』

アドルフ『そして、その強い向上心のもと、オーストリア二重帝国の
     正税関士にまでなった。』

アドルフ『父は満足に学校へ通ってすらいなかった。
     そのような経歴の人間が正税関士となるというのは異例中の異例、大出世だ。』

296 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 23:42:47.84 ID:CCRwLSWN0
唯(なんだろう…)

唯(そんなすごいお父さんの話してるのに…)

唯(アドルフ、すごくそっけない。)

アドルフ『父の性格は簡潔にまとめれば、傲慢、非強調的、偏執的なほどに頑固。
     それに加えて大酒飲み。』

アドルフ『父を世に押し上げたはずの精神的徳性は、逆に、
     人間としての魅力という観点からすれば、即失格、ということになる。』

アドルフ『わたしも母も兄も、父からひどく殴られたものだ。』

唯「あ…」

298 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 23:54:52.38 ID:CCRwLSWN0
アドルフ『そんな父も行きつけ飲み屋で、ぽっくりと逝ってしまったよ。
     胸膜からの出血が死因だったらしい。』

アドルフ『酒好きの彼からすれば、最高の幕引きかもしれないが…』

アドルフは、まるで、知らない他人のことを話すかのように、
父親について語る。

アドルフ『そして、私の母クララ。』

アドルフ『私の母は、父の姪だった。』

唯「え゛…」

アドルフ「もちろん"義理"のだよ。しかし、血縁関係はあってね、
     父の従兄妹ぐらいに相当するだろうか。」

唯「それはまた…」

299 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 23:59:18.67 ID:CCRwLSWN0
アドルフ『母は献身的な性格で、心やさしい女性だった。
     そして、熱心なカトリックだった。ゆいにはキリスト教徒、といったほうがいいかな?』

唯「ほうほう…」

アドルフ『けれど言い換えれば、卑屈、とも言える。』

アドルフ『母は、暴君のごとき父の、まったくの言いなりだった。』

アドルフ『けれどね、女性の身は弱いものだから…』

アドルフは寂しそうな顔をしている。

300 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 00:06:32.80 ID:Bo6NrwuS0
アドルフ『そんな母も、父が死んで数年後、癌で逝ってしまった。』

唯「!!」

アドルフの表情は、ひどく痛々しいものになる。

アドルフ『クリスマス間近のある日のことだ。』

アドルフ『癌の痛みに苦しむ母、そして、ついに逝ってしまった母。
     かたや、きらびやかクリスマスの装飾と楽しげな歌…』

アドルフ『私はクリスマス・ソングを聞くと、
     死んでしまいたくなるほどに、気が滅入ってしまう。』

唯「アドルフは…お母さんのことが、大好き…だったんだね…?」

唯は涙を浮かべている。

アドルフ『…』

アドルフは何も言わずに、瞳を閉じる。

304 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 00:21:38.06 ID:Bo6NrwuS0
アドルフ『そして、わたしの兄弟たち。』

アドルフは目を再び開けると、話を続ける。

アドルフ『あの音楽教師が言っていたように、私には腹違いの姉と兄、
     早くに死んでしまった同母の兄と姉、そして弟と妹がいた。』

アドルフ『兄の名はアロイス、彼も父と同じ名前だった。
     兄は粗暴な性格でね。父からの暴力のうっぷんを、
     常に私にぶつけていたよ。』

唯「…」

アドルフ『しかし、兄も父からの暴力と私の母、つまり兄からすれば義母との不仲のために
     14歳のころに家を出た。』

308 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 00:32:24.26 ID:Bo6NrwuS0
アドルフ『そのあとは、職を転々とし、イギリスに渡り、そこでイギリス人女性と結婚した。』

アドルフ『さらに兄は、ドイツに舞い戻って、
     義姉と離婚しないうちに、別の女性と結婚さえした。』

唯「ひどいね!それって…」

アドルフ『ああ。重婚というやつだ。我が兄ながら、まったくなさけない…』

アドルフ『とにかく、兄について語ることは特にあるまい。
     私と兄は互いに嫌いあっていたということ。
     それだけだ。』

310 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 00:41:55.75 ID:Bo6NrwuS0
アドルフ『姉の名はアンゲラ。』

アドルフ『彼女は兄と違って、私の母の言うことを良く聞いた。』

アドルフ『とても家庭的な女性だったよ。私のことも、とても愛してくれた。』

アドルフ『だが、少々意固地というか気の強い所があってね…』

アドルフ『彼女の再婚問題で、たしかに一時疎遠になった。結局は仲直りしたけれど。』

唯「よかった…!」

アドルフ『けれど、私からすれば、大切な姉だよ。』

唯「うんうん、仲が良いのが一番だよ!」

アドルフ『はは!まったくその通りだね。』

312 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 00:54:34.59 ID:Bo6NrwuS0
アドルフ『弟の名はエドムント。』

アドルフ『彼は、私が10歳のころ、5歳という幼さで死んでしまった。』

唯「そう、なん…だ…」

アドルフ『はしか、だった。』

アドルフ『可愛い盛りだったのに。弟を失った悲しみで、
     私はひどく打ちのめされたよ。』

唯「…」

313 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 01:04:28.07 ID:Bo6NrwuS0
アドルフ『そして、妹の名はパウラ。』

アドルフ『彼女はおとなしい、控えめな女性だった。』

アドルフ『私の運動のために、彼女は度々とばっちりを受けてね。
アンシュルッスの前までは、オーストリア政府から監視されていたはずだ。』

アンシュルッスとは、ナチス時代のドイツとオーストリアの合邦化(統一のようなもの)のことである。

アドルフ『そして、私が死んだときには、結婚もせずに、もちろん子供もいなかった。
     まったくすまないことをしたものだ…』

314 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 01:08:38.99 ID:Bo6NrwuS0
アドルフ『それに、口にこそださなかったが、
     私が政治家を続けることに対して良い印象を持っていなかったようだ。』

唯「どうして??」

アドルフ『私の身を心配したのだろうね。
     パウラは本当に心の細やかな子だ。』
    
アドルフ『政治家は命を危険にさらさねばならぬこともあるし、激務でもある。
     身体に良いはずがない。』

唯「優しい妹さんだね…」

アドルフ『きみの自慢の妹、憂君のようにね。』

唯「えへへ////」

315 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 01:13:08.95 ID:Bo6NrwuS0
アドルフ『そして、きょうだいの子供たち、私の甥と姪…』

アドルフ『いや、これは今度にしよう。』

唯「えー…」

アドルフ『もう一時間以上も話し込んでしまった。
     もうかなり遅い時間だ。』

アドルフ『さあ、ゆい。眠りにつきなさい。』

唯「うん、わかったよ…」

そして、その日もまた過ぎていく。

316 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 01:15:23.75 ID:Bo6NrwuS0
ごめんなさい、私も唯と同じくすこし眠ります、
すいません



347 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 11:58:47.85 ID:Bo6NrwuS0
すいません、再開します。

350 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 12:04:10.88 ID:Bo6NrwuS0
こうして、アドルフが唯に"憑い"てから数週間が経過した。
そして、それに伴って、アドルフの"教育"も巧妙、唯にあわせたかたちをとって進んでいった。
これは、教養や知識といったもののみではなく、芸術に対する志向の、
アドルフ流の陶冶、という側面も持っていた。

唯は、あれで飲み込みが早く、応用も利く。
ようは、良き教師がいればよい。


しかし…

351 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 12:09:59.09 ID:Bo6NrwuS0
桜高は二年生の、梓と憂の教室。
時は放課後。

和「ちょっと、失礼するわね。」

生徒A「!!」

生徒A「せ、生徒会長さん!?」

和「ごきげんよう。平沢憂さんはいるかしら?」

生徒A「あ、はい、窓際奥で、梓ちゃんや純ちゃんと話してますけど…」

和「ありがとう。」

そういうと和は、憂たちのところへ近づく。

352 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 12:16:06.33 ID:Bo6NrwuS0
梓「あ、憂!和先輩がいらしたよ!」

憂「和さん、すいません…」

和「相談があるって、あんたから聞いて…」

和「やっぱり、というか確実に唯のことよね?」

憂「はい…」

和「場所変える?」

憂「できれば…あと、梓ちゃんもいっしょに…、いいかな?」

梓「うん、もちろんだよ!」

353 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 12:21:37.88 ID:Bo6NrwuS0
生徒室となりの、空き教室。

和「で、唯がどうかしたの?」

憂「…」

和「憂?」

梓「…」

純「…」

梓(なんか純まで、さりげなく混ざってるし…)

354 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 12:26:11.22 ID:Bo6NrwuS0
憂「おねーちゃんが…」

憂「おねーちゃんがおかしくなっちゃったみたいなんです…」

和「唯がおかしくなった??」

和「まあ、あの子が変なのは小さいころから、何時ものことだけど…」

和「具体的には、どんな風に??」

357 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 12:32:14.16 ID:Bo6NrwuS0
憂「誰もいないはず空間とおしゃべりをするようになっちゃったんです。
  それも長い時間…」

和「独り言じゃないの?」

憂「最初に気付いたときは、私もそう思いました。
  夜遅くまで誰かと喋ってるようだったらから…」

憂「で、のぞき穴からそっと覗いたんです。」

梓「の、のぞきあなって…なに?」

和「あずさ、人間には知らなくていいこともあるのよ…」

梓「は、はい…」

361 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 12:39:40.09 ID:Bo6NrwuS0
憂「でも、お姉ちゃん、ケータイも子機も持っていませんでした。」

憂「気付いた日から、それが延々と、毎日続いているんです…」

憂「だから…」

憂「おねーちゃん、やっぱり頭がおかしくなっちゃ…て…」ヒック

和「それはちょっと…どころじゃなくて、かなり心配だわ。」

362 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 12:46:00.49 ID:Bo6NrwuS0
和「とるべき最善の措置は…」

和「担任のさわ子や養護教諭の先生と協力して、
  うちの学校のかかり付け医の先生ともね。
  小父さんと小母さんにも帰国してもらわないと…」

純「…」

純「それ、多分、憑かれてますよ?」

憂「!!」

梓「やっぱりそうなのかなぁ…私や澪先輩が練習を急かすから、
  唯先輩疲れちゃって…」

純「梓、字が違うから。疲労の"疲れ"じゃなくて、霊にとり憑かれるの、"憑かれ"。」

366 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 12:54:28.69 ID:Bo6NrwuS0
梓「…」

和「…」

梓「和先輩、すいません。この娘、すぐに追い払いますんで…」

憂「そういえば、純ちゃんのお祖母ちゃんって…」

純「北津軽は川倉のイタコよ。」

和「…」

梓「…」

368 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 13:00:29.78 ID:Bo6NrwuS0
憂「その変な髪形も、たしかイタコの伝統なんだよね?」

純「これはファッションなの!可愛いでしょっ!!」

梓(それはちょっと…)

和(ないわね。)

純「憂、前に言ったわよね?」

憂「?」

純「憂の家の隣にある社。」

憂「!!」

370 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 13:07:24.67 ID:Bo6NrwuS0
純「あの社。"名も無い神明"を祭っているみたいだけど…」

和「あの社が??はじめて聞いたわ。
  というか、"名も無い神明"って?」

純「日本は八百万の神の国で、しかも仏教も一緒、だから、たくさんのホトケサマもいます。」

純「でも、アマテラスオオミノカミや阿弥陀如来のような大格の方々は、ほんの一部。」

純「その他ほとんどの方々は、名前すら知られていないか、
  忘れさられてしまったんです。」

純「あの社にもそのような"名も無い神明"が祭られています。」

和「そうなの…」

梓(憂の家に遊びにいくのが怖くなりそう…)

371 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 13:14:34.88 ID:Bo6NrwuS0
純「ほとんど"勢力"らしい"勢力"もない神明なんですが…
  ただ。」

和「ただ??」

純「たとえなんですけど、高圧電線の下にいる家庭には
  癌系の病気が起きやすいっていいますよね?」

和「ええ。」

純「その高圧電線を、平沢家隣の社、と読み替えてください。」

372 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 13:22:52.50 ID:Bo6NrwuS0
和「つまり、あの社からよくわからないエネルギーのようなものがでて、
  唯によくわからない影響を与えた、ってこと?」

純「はい、その通りです。あの社の神明からは、"他化自在天"や"アメノウズメ"、
  と同じ匂いがします。」

純「これらの神明に共通する勢力は"魅入る"。
  つまり、人外の存在を惹きつけるということです。
  その勢力が唯先輩に、多分ですけど、宿ってしまった。」

純「だから、中学のころに憂に忠告して、
  "勢力払い"のコツをいくつか教えたはずなんですが…」

憂「ごめんね純ちゃん、その時、話半分以下で聞いてた…」

純「…」

373 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 13:31:35.95 ID:Bo6NrwuS0
和「鈴木さん、ごめんなさい。正直に言えば、その話信じられないわ。」

純「仕方ないですよ、慣れてますし。」

和「まあ、とにかく…」

和「梓、これから部活行くんでしょう?私もついていくわ。」

梓「はい。憂も行こう?」

憂「うん…」

純「私もついてくよ。」

梓「はいはい…」

374 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 13:39:32.36 ID:Bo6NrwuS0
一方、軽音部部室。

律「梓がまだ来てないなんてめずらしいな。」

澪「そのうち来るよ。お前たちとは違うし。」

律「なぬー!?」

紬「はい、唯ちゃん。頼まれていたCDよ。」

唯「ありがとムギちゃん♪」

アドルフ『ふむ…』

CDに視線を送るアドルフ。

376 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 13:58:19.63 ID:Bo6NrwuS0
律「なに?そのCD。」

唯「ムギちゃんから借りるんだ♪」

澪「『ショパン選集』?クラシックか。」

律「クラシックぅ!?あ、それも憂ちゃんに頼まれたんだろ?」

唯「わたし用だよ♪」

律「…」

380 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 14:08:57.19 ID:Bo6NrwuS0
唯にショパンを勧めたのはもちろんアドルフだ。

唯「あ、今から聞いてみようか?」

澪「たまにはクラシックもいいかもな。」

紬「じゃ、プレーヤーにセットするわね?」

アドルフ『♪』

384 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 14:25:17.73 ID:Bo6NrwuS0
やべ、、
>>376>>378 ショパンじゃねーや、ブルックナーだ。
すいません

386 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 14:33:09.94 ID:Bo6NrwuS0
アドルフ『とりあえず、交響曲第4番を聞いてみようか?』

唯「ムギちゃん!"こーきょーきょくよんばん"選曲おねがーい!」

紬「わかったわー♪」

律「唯がクラシックの曲名を覚えているだと…」

ワグナーに入る前に、
まずはブルックナーの明るい軽快な曲で、
唯の興味を引こうとするアドルフ。

388 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 14:37:38.29 ID:Bo6NrwuS0
紬「ポチッと♪」

澪「ふむ…」

唯「おお…」

― 三分後 ―

唯「ぐぅ…ぐぅ…zz」

律「スピースピーzzzz」

澪「こいつら…」

アドルフ『なんと呆れた…』

右手で額を覆い、首を軽く左右に振るアドルフ。

392 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 14:46:21.66 ID:Bo6NrwuS0
アドルフ『まあいい。あせらずとも。』

アドルフ『聞けば琴吹君は大量に音源をもっているとか?』

アドルフ『ゆいに頼んで借りてもらおう。』

アドルフ『さすがは部室に音楽室を使っているだけあって良い音だ。
     このコンパクトディスク、というのも。』

アドルフ『だができればホールで生を聞きたいものだ。』

アドルフはブルックナーに聞き入りつつ、ぶつぶつ何かを言っている。
両手を後ろにくんで、時計回りにゆっくりと部室の中を歩き回りながら。

394 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 14:51:52.93 ID:Bo6NrwuS0
アドルフ『やはり音楽が無ければ、人生は色あせたものになってしまう。』

アドルフ『ただし良い趣味を追求すれば、の話だが。』

アドルフ『ゆいのことも、あの五月蝿いだけの屑音楽から卒業させてやらねばな…』

ガラッ

部室のドアが開く。

澪「あ、和?」

和「お邪魔するわね。」

398 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 15:02:01.19 ID:Bo6NrwuS0
梓「お早うございます…」

憂「失礼します。」

澪「梓も一緒だったのか。憂ちゃんもいらっしゃい。」

憂「お邪魔します。」

純「あの、私も入っていい?憂が通せんぼしてるんだけど…」

399 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 15:08:22.35 ID:Bo6NrwuS0
憂「あ、ごめんね純ちゃん。」

純「しつれ…」

アドルフ『共産中国はうまく使えそうだ。ロシアは、もう駄目だな。
     主権民主主義など馬鹿なスラブ人には不相応…』

純「!!!」








純「いた。若い外人が一人。」

和「!」

憂梓「「!!」」

403 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 15:15:07.57 ID:Bo6NrwuS0
純「こっちには気付いてないようです。」

純「私も知らん振りを装いながら観察するので、
  生徒会長さんたちも自然に。」

和「わかったわ。」

憂「うん。」

梓(純、胡散臭いよ、純…)

澪「あ、たしか…鈴木さん??
  いったいどうしたんだ?」

和「な、なんでもないわよっ。」

406 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 15:22:10.95 ID:Bo6NrwuS0
梓「あ、クラシック聞いてたんですか?」

澪「そうなんだけど、こいつらは寝ちゃったよ…」

唯「zzz…」

律「スーフー…zzz」

梓「…」

407 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 15:27:02.95 ID:Bo6NrwuS0
紬「今、お茶入れるわね。」

和「ありがとう、紬。」

純「…」

アドルフ『しかし、一番の問題はいかにドイツを…
     ゆいと切り離された場合、もしかしたら私の意識も…』

純("烏賊にどどいつを"…"ゆい"…"イサキも"…??
  ジャミングがひどくて、上手く聞き取れない…)

414 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 15:33:10.43 ID:Bo6NrwuS0
純「…」

梓「ムギ先輩のCDですか?」

紬「ええ。唯ちゃんに頼まれの。」

梓「唯先輩がクラシックですか…?」

澪「良いインスピレーションにはなるとは思うんだが。
  まあ、起きて聞いていればだけどな…」

梓「この二人のことですしね。」

415 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 15:39:57.62 ID:Bo6NrwuS0
アドルフ『とにかくしばらくは、このまま、ゆいの教育に…』

アドルフは和たちが入ってきても、まったく気にする素振りをみせない。
他人が自分を見ることができない、という状況にすっかり慣れきっているのだ。

純「…」

純(この人の顔どっかで見たことあるような…)

純(でも、問題はそこじゃない。
  この外人の霊から、とてつもないほどのプレッシャーを感じる…)

417 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 15:45:21.47 ID:Bo6NrwuS0
純(それに…)

そして、再び生徒会室。
和と憂、そして純。

純「背は170ちょっと、かなり痩せてて、20代ぐらい、面長の、
  目はすごく綺麗なブルーです。」

和「白人?」

純「はい。」

純「髪は七三わけのツーブロックで、
  よれよれの疲れたスーツを着てました。」

418 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 15:56:17.88 ID:Bo6NrwuS0
和「そこまでわかるの??」

純「はい。けど、音声はうまく聞き取れませんでした…」

和「音声って…」

和「それに白人の…男性でいいのよね?」

純「はい。」

和「なんでそんなのが…」

和「…」

和「ごめんなさい、鈴木さん。やっぱり、あなたの話は…
  はっきりいえばね、私は、そういうの全く信じない性質なの。」

421 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 16:04:35.85 ID:Bo6NrwuS0
純「…」

純「憂、唯先輩とあの外人の霊はどんな話をしてた?」

和(スルーされたかしら…)

憂「たぶん、芸術とか、歴史とか、政治とかの話。
  おねーちゃんが普段絶対しないような…」

純「他には?」

憂「『アドルフ』って単語、多分人の名前だよね、それをよく口にしてた…」

和「!!!」

422 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 16:11:54.69 ID:Bo6NrwuS0
和「ちょ、ちょっと、ちょっと待ってよ…」

和「その名前…それと、唯が何週間か前に自慢してた鼈甲製の…」

憂「あっ!!」

和の額から、汗が少しにじり出てくる。

和「教科書、いえ、図書室のほうが…」

和「ちょっと出るけど、五分ぐらいで戻ってくるわ!」

426 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 16:22:45.74 ID:Bo6NrwuS0
そして五分もかからないうちに、再び戻ってくる和。
大きく息を切らせている。
手には一冊のカラー表紙の本、というかムック。

和「ハァ…ハァ…生徒会長なのに、廊下を…ダッシュしちゃったわ…」

和「えっと…えと…あ、ここ!」

和はその本を開き、あるページを純と梓に示す。

428 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 16:31:36.39 ID:Bo6NrwuS0
何人かの若い白人兵士が並んで写っている白黒写真。
そのうちの一人を指差す和。

和「もしかして、この男!?」

純「えと、うーん…この人のような…
  私、トム・ハンクスと、カツラつけたブルースウィリスも見分けられないんです…」

和「た、たしかに他の人種の顔を区別するのは難しいけど…」

憂「和さん、この人って…」

430 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 16:41:10.32 ID:Bo6NrwuS0
和「そうよ…!」

和は本を閉じると、その表紙を二人に見せる。
40代の白人男性の白黒写真が表紙を飾っていた。
びちっと綺麗に固めた髪は1:9ぐらいの左分け。
鼻のすぐ下にある、いわゆる"チョビ髭"
表情は硬い、というよりは断固としたもの。

和「ドイツ国総統、アドルフ・ヒトラー。」

憂「え…」

純「生徒会長、この人のほかの写真は!?もっと見れば表情とかで…」

和「本の中にたくさんあるわよ…」

431 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 16:47:18.37 ID:Bo6NrwuS0
純「あ、この写真のこの表情…」

和「ヒトラーが何かに思いを馳せている際の写真ね…」

純「年かさは一回り以上違いますけど…
  この何かに酔ったみたいな顔…」

純「あの外人の霊とそっくりです!」

和「…」

433 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 16:55:06.83 ID:Bo6NrwuS0
和「信じたくはないけれど…」

憂「あのピックが原因で!?」

純「ピックって?」

憂「えっとね…」

憂は純に事情を話す。

純「ヒトラーの親戚の遺品…」

434 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 16:55:48.81 ID:Bo6NrwuS0
すいません、ちょっと出かけます

451 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 19:29:05.28 ID:Bo6NrwuS0
すみません、再開します。

452 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 19:34:04.20 ID:Bo6NrwuS0
和「とにかく、もし本当にヒトラーが唯に憑いてるのなら、
  唯と彼の会話の内容を確かめて、情報を集めないと…」

和(それに結局のところ、唯の精神疾患の可能性も高いし…)

憂「じゃあ、私の部屋の覗き穴からお姉ちゃんを…」

純(そんなもの作ってたの、憂…)

和「いえ、もっと確実な方法よ。
  軽音部員たちにも協力してもらわないね、特に紬。」

454 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 19:40:21.50 ID:Bo6NrwuS0
そして、その三日後の夜。
その日は金曜日で、当然休日の直前。

唯「ごちそうさま!」

憂「おそまつでした♪」

何時もどおりの平沢家のダイニング。
平沢姉妹と霊が一体。

アドルフ『さて、ゆい。今日も読書をしよう。』

唯「よーし!」

455 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 19:46:02.21 ID:Bo6NrwuS0
憂「おねーちゃんは部屋に戻るの?」

唯「うん♪」

唯はここのところ、食事が終わるとすぐに自室に戻ってしまう。

憂「じゃあ、お風呂ができたら呼ぶね?」

唯「ほーい!」

憂「…」

憂(よし、行ったね…)

456 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 19:50:13.65 ID:Bo6NrwuS0
憂「…」

携帯電話を取り出す憂。

憂「梓ちゃん、入ってきていいよ。」

そう短く伝えると携帯電話を切る憂。

ガチャ…

平沢家の玄関が開く音がする。

457 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 19:55:10.97 ID:Bo6NrwuS0
律「お邪魔しまーすと…」

和「静かにね。」

律「はいはい。」

澪梓純「「「お邪魔します。」」」

紬「お邪魔します。憂ちゃん、とりあえず、
  憂ちゃんのお部屋にいけばいいのよね?」

憂「はい。」

461 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 20:08:23.30 ID:Bo6NrwuS0
憂の部屋。
女の子の部屋に似つかわしくない機材が、所狭しと並べられている。

紬「今日の日中に斉藤が指揮を執って、
  すべてセッティングしてくれたわ。」

律「で、なんで唯の部屋を監視カメラで覗くんだ??」

紬「あの憂ちゃんがどうしてもって言うから私も協力したんだけれど…」

和「それは、今から見てみればわかるわ。」

和(一昨日のうちに憂の部屋の覗き穴から唯のこと観察してたけど…)

和(本を読んだり、クラシックを聞きながら、
  確かに、誰かと話しているようだった。)

和(唯の口から、唯が一生使わないだろう単語が、
  ぽんぽん出てくるんですもの。)

464 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 20:14:47.52 ID:Bo6NrwuS0
紬「じゃあ、スイッチ入れるわね。」

紬「ポチッと。」

6台のモニターに、それぞれ別方向から、唯の部屋が映し出されている。

律「ベッドに座って、音楽聞いてるな。」

紬「唯ちゃんに今日貸してあげたベートーヴェンのCDだわ。」

澪「どっかで聞いたことがあるな…」

紬「交響曲第3番、『英雄』よ。」

466 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 20:18:58.86 ID:Bo6NrwuS0
和「紬、赤外線カメラをお願い。」

紬「わかったわ。」

律「はぁ!?なんで赤外線??」

和「とりあえずは見ていて頂戴。」

紬「ポチッと。」

紬が赤外線カメラのスイッチを入れる。
モニターの一つが、赤外線カメラ特有の暗さを帯びた映像に切り替わる。

468 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 20:24:33.29 ID:Bo6NrwuS0
和「特に移ってないようね…」

純「多分無理ですよ。そう言う番組で、テレビ局が雰囲気を出すために
  赤外線カメラやサーモグラフィーを小道具として使っただけですから。」

純「実際には、そのどちらにも反応しないはずです。」

和「一応、念のためだったんだけどね…」

梓「あ、先輩が喋り始めました!」

律「え?」

澪「?」

469 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 20:29:28.11 ID:Bo6NrwuS0
アドルフ『どうだい、さっきの曲は?』

唯「すごく勇ましい、じゃなくて何かな…
  鷹とか鷲をイメージしちゃう。」

アドルフ『良い例えだね、ゆい。』

アドルフ『さっきの曲は、ベートーヴェンが"コルシカの鷲"
     ナポレオン・ボナパルトのために書いたものだ。』

唯「ナポレオンってあの、チンはこっかなり、の?」

アドルフ『それはルイ14世だよ。
     下級貴族からフランス大革命を経て皇帝にまでなった男だ。』

アドルフは唯のボケも綺麗に受け流す。

472 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 20:39:51.64 ID:Bo6NrwuS0
唯「"成り上がり"ってやつ??」

アドルフ『そうだね。彼は非常に才能に恵まれていた。』

アドルフ『ただ…結局は、』

アドルフ『彼はその才能をうまく生かすことができなかった。』

唯「どうして?」

アドルフ『彼の夢、フランスの繁栄、これを追い求めることは正しかった。
     彼の戦略もほぼ正しかった。』

アドルフ『だがね、彼は人材、人間を用いる際に手ひどい失策をしたんだ。』

473 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 20:46:40.41 ID:Bo6NrwuS0
アドルフ『彼は、部下として使ってはいけない人間をつかったし、
     何より身内びいきだった。

アドルフ『無能な兄弟を諸王にしてしまった。他人が信用できなかったんだろうね。
     さらに、すぐ下の弟は有能な男だったが、これを使いこなすこともできなかった。』

アドルフ『さらには、革命で追い出したはずの旧貴族と和解して、
     自分たちの部下に、自分の宮廷のなかで、貴族の猿真似までさせた。』

アドルフ『フランスの旧貴族など、精神的に堕落しているし、
     なにより皆、外国から金をもらっている売国奴だった。』

アドルフ『目標と手段、これはね、どちらも妥協してはいけないんだ。』

唯「ほう…」

479 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 20:57:01.91 ID:Bo6NrwuS0
アドルフ『私は身内びいきをしなかった。』

アドルフ『そのために甥のハンスを、戦場で失ってしまった。
     彼は勇気と知能に恵まれた、真にドイツ人らしい男だった。』
     
アドルフ『彼の父や兄とはまったくの別物だよ。
     彼は私の誇りだ。』

そういうとアドルフは窓から外に顔を向け、空をじっと見つめた。
甥のことを思い出しているのだろうか。

唯『アドルフ、元気をだして。』

アドルフ『おお、ありがとう!心優しい、ゆい。』



※(ハンス・ヒトラーはソ連の収容所で傷病死している。
  ヒトラーは、捕虜交換でなんとしても甥を取替えそうとしたが、かなわなかった。)

487 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 21:15:08.32 ID:poV8hkQcO
憂の部屋

律「お、おい、唯は誰と話してるんだよ…」

澪「…」

和「いい、よく聞いて頂戴。」

和「単刀直入に言うわね。」

和「唯がレンタルしてもらっているピックには
とんでもないものが宿ってたの。」

澪「ま、まさ、まさ、まささささか…」

488 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 21:20:03.56 ID:poV8hkQcO
和「さっき、『アドルフ』って単語を唯は口にしたわよね?」

律「…」

和「それが今、唯の隣にいる人物の名前よ。」

律「と、となりって、唯しかいないじゃん…」

和「鈴木さんが"見える人"でね、教えてくれたのよ。」

律「…」

489 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 21:28:45.54 ID:poV8hkQcO
和「唯はね、なぜだか知らないけれど、白人の男性、」

和「おそらく、アドルフ・ヒトラーと思われる人物に
とり憑かれているの。」

律「ま、また、和よ、いいかげんに…」

和「私が下らない、いい加減なことのために、紬に機材をお願いして、
あんたらをこんなことに巻き込むと思う?」

律「…」

紬「鈴木さん、本当なの?」

純「あの人物が誰かはまだ完全にはわかりませんけど、」

純「とにかく、唯先輩は若い白人の霊体に憑かれています。」

491 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 21:36:47.85 ID:poV8hkQcO
澪「…」

澪「ヒッ」

澪「ヒッ…ヒヒヒヒ…ヒッ…ヒヒヒヒ…」

梓「い、いけない!澪先輩が過呼吸に…!」

和「しまったわ。澪がこの手のことに弱いの忘れてた!」

憂「い、いまビニール袋もってきます…!」

律「…」

律「鈴木さん。」

純「はい。」

律「どうすりゃいいんだ…?」

493 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 21:47:46.43 ID:poV8hkQcO
純「一通り、お母さんの道具を無断で借りてきました。」

純は、幸福実現党総裁が肩からよくかけているような肩掛け、
数珠、何冊かの経文を取り出す。

律「これでお祓いを?」

純「おはらいというか、お祖母ちゃんが霊を降ろして
お母さんがそれを手伝ってるところしか見たことないもので…」

憂「純ちゃんのお祖母ちゃんは青森のイタコなんです。」

律「見てただけ?」

純「はい。」

律「駄目じゃん!!」

純「お祖母ちゃんの遺伝子は四分の一持ってますから!」

梓(というかイタコってお祓いもするの?
お祓いって神社の仕事じゃないの?)

494 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 21:55:27.31 ID:poV8hkQcO
和「鈴木さん、まあ抑えて。」

和「今日は特にアクションを起こさないわ。」

和「関係者が集まって事実を認識して、
傾向と対策を考えるためのものだから。」

純「わ、わかりました…」

澪「う、うう…」

梓「少し澪先輩も落ち着いたみたいです。」

496 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 22:11:24.99 ID:poV8hkQcO
一方、唯の部屋。

アドルフ『妻のエーファ、姪のゲリ(アンゲラ)、姉のアンゲラ、…』

アドルフ『私の周りには心優しい女性がいて、いつも私を支えてくれた。』

唯「うん。」

唯はヒトラーの家族や親しい人間のことを、
このごろは自分から聞こうとしなくなっていた。
そういう話をすると、度々、アドルフが悲痛な顔を見せるからだ。

ヒトラー『そして、女性こそ家庭の要だ。』


497 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 22:21:47.93 ID:poV8hkQcO
アドルフ『そして家庭は人間を育てる大もとの場所だ。』

アドルフ『また、個人が集まり国家ないし民族となる。』

アドルフ『国家と民族は同義だ。切り離すことはできない。』

アドルフ『そして、個人よりも、まったく、
国家ないし民族が優先されねばならない。』

アドルフ『個人は民族ないし国家のために生きねばならない。』

唯「なんかそれだと、わたしたちの自由がないような…」

アドルフ『はは。多くの人間は、とくに大衆は、そう考えるだろう。
しかし、そのまま留まっていては駄目だ。』


502 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 22:29:21.63 ID:poV8hkQcO
アドルフ『例え話をしよう。』

アドルフ『ゆい、君は言葉を、日本語を話すね?』

唯「当たり前だよぉ…」

アドルフ『そうだ、当たり前のことだ。』

アドルフ『しかしだ、日本語の文法をある個人や集団が勝手に大きく改変して、
出鱈目な言葉を話したらどうなるだろう?』

唯「新しいことばもたくさん生まれてくるよ?」

アドルフ『いや、単語個々の問題ではなく…うむ…』

アドルフ『日本語とドイツ語を足して2で割った言葉を話したとしたら?』

唯「そんなのだいこんらんだよ。
それにきっと、誰からも相手にされなくなっちゃう。」

503 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 22:38:09.14 ID:poV8hkQcO
アドルフ『だろう?』

アドルフ『言葉、とくにある民族に固有の言葉というのは非常に大切なものなのだ。』

アドルフ『我々は日頃言葉を用いるため、その恩恵に与っている。』

アドルフ『ところがこれが国家ないし民族のことになると…』

アドルフ『確かに、人間は国家と離れて、
短時間なら個人や小集団で生きることができるかもしれない。』


506 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 22:46:06.66 ID:poV8hkQcO
アドルフ『しかし、人間は一人では生きていけない。』

アドルフ『小集団は、それより強い集団の前に脆くも崩れさるだろう。』

アドルフ『だからこそ、血と言語を同じくする個人は助けあい、
共同体を形成しなければならない。』

アドルフ『おそらく、民族総体としての共同体から
個人や小集団が距離を置くとき、』

アドルフ『その個人や小集団は多分に利己的な行動をする。』

アドルフ『そしてそれが、人間精神にとってかけがえのないもの、
真に価値あるものを毀損するようになる。』

アドルフ『これは、アブラハム以降、ユダヤ人のお家芸だった。』

509 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 22:54:21.62 ID:poV8hkQcO
ヒトラー『彼らは自己流の価値を創作する。』

ヒトラー『ただ、貪欲を満たさんがためだけにだ。』

ヒトラー『そのためには、屁理屈や姑息な論理をためらわず使う。』

唯「なんかよくわからない…」

アドルフ『そうだね、ゆいは知らなくていいことだ。』


511 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 23:02:19.02 ID:poV8hkQcO
アドルフ『そういえば、私は日本人も二種類に分けられると聞いているね。』

アドルフ『一方は集団と美徳のために進んで己を捨てるサムライ。』

アドルフ『それに対して、退廃していて利己的で貪欲なものたち。』

アドルフ『先帝のお側と資本家の多くには、
そのような碌でもない輩が満ちていた、と聞いたよ。』

唯「初耳。でも、"サムライ"の数はどんどん減ってるかな。」

アドルフ『今のドイツでも同じことだろう。まったく!耐え難いことだ!!』

523 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 23:21:26.33 ID:poV8hkQcO
アドルフ『ただ、希望はあるかもしれない。』

唯「どういうこと?」

アドルフ『現世に蘇ってまだ日は浅いが、
様々に有益な情報を手に入れることができた。』

アドルフ『我が国家社会主義ドイツ労働者党の
有意あるものたちが、南米に多く逃れただろう?』

唯「あー、そんなこと書いてあったね。」

アドルフ『彼らおよび彼らの意志を継ぐ者たちが、
サークルのような物を作っているかもしれない。』

これは虫の良すぎる話だろう。
唯は気が付かなかったけれど。

アドルフ『今のドイツにいる、私の名ないし思想を振りかざして、
無意味な行動に走る、あの馬鹿者どもとは違う…』

アドルフ『そういった、真に心ある者たちと連絡が取れればよいのだが、
如何せん、この身体ではね…』

526 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 23:27:38.80 ID:poV8hkQcO
唯「なら、アドルフ、私が協力してあげるよ!」

アドルフ『ゆい、本当かい!?』

唯「うん!って言っても、どうすればいいかわからないや。
南アメリカでしょ…」

アドルフ『ゆい、焦らずに。堅実に考えいこう。』

唯「うん!」

543 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 00:13:29.31 ID:SCmAupzQO
再び憂の部屋。

律「唯のやつ、協力するとか、南米、とか言ってるぞ…」

和「うーん。唯だけの話じゃ、
何について話してるのかほとんど分からないわ…」

純「ブツブツブツ…」

梓「純はお経唱えたままだし…」

純「…」

純「あずさ、私はね、ジャミングを和らげようとしてるの。」

梓「い、意味がわからない…」


545 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 00:30:07.53 ID:SCmAupzQO
純「おかげで霊体のほうの音声も九割型拾えました。」

和「ほんとう!?」

純「はい。」

純「多分、あの霊体は生前には、アドルフ・ヒトラーだったはずです。」

和「そう…」

純「国や民族について唯先輩に話してました。
あとユダヤ人の悪口も。」

梓「死んだ後も、ユダヤ人に酷いこと言うなんて…可哀想なひと…」

547 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 00:37:04.73 ID:SCmAupzQO
純「あと、国家社会なんたら党の生き残りが
南米にいるかもしれないから、連絡取りたいと…」

さわ子「南米にはNSDAPの流れを汲む秘密組織があるっていうしね…」

律「って、さわちゃん!?」

さわ子「あんたらなんであたしに黙ってたのよ!
総統が唯ちゃんに取り憑いたこと!」

律「私ら軽音部もさっき知ったんだよ!」

549 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 00:42:53.98 ID:SCmAupzQO
さわ子「総統と話すチャンスじゃない!」

律(とりあえずさわちゃんは無視っ、と。)

律「鈴木さん、他には?」

純「とりあえずは慎重に堅実に行こう、
みたいなことを言ってました。」

和「なら、まだ具体的なことも決まっていないのね?」

純「さっきの会話じゃそこまでは…」

552 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 00:51:36.92 ID:SCmAupzQO
和「でも早く手を打たないと…」

さわ子「末は唯ちゃん、"第四帝国"の最高幹部かしら?」

憂「お、ねーちゃん…」

和「そんなに上手くいくはずないでしょう。
それに唯は日本人、モンゴロイドよ。」

梓「でも、ヒトラーみたいなとんでもない人間を
私たちがどうにかできるんでしょうか…」

553 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 00:52:21.69 ID:SCmAupzQO
すみません、眠ります
ごめんなさい

609 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 11:12:21.16 ID:SCmAupzQO
すいません、再開します。
仕事中なので飛び飛びになります。

610 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 11:19:15.29 ID:SCmAupzQO
和「今は唯にくっついている、ただの幽霊よ。」

和「それに…私たちが、チャーチルやルーズベルトと
同じ土俵に立つ必要はないでしょ?」

梓「でも…」

純「払うにしても、多分ですけど、かなり大変だと思います。」

律「マジ!?」

純「はい…」

612 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 11:28:38.79 ID:SCmAupzQO
純「歴史上の人物の霊っていうのは、
一般人よりも、"我"がすごく強いっていうか…」

純「怨念だとか執念だとか、そんなのが桁違いなんです…」

梓「確かに、ヒトラーの幽霊ってだけで執念深そう…」

純「かなり周到な準備が必要になります。」

紬「琴吹グループも総力をあげてバックアップするわ!
唯ちゃんを救うためだもの…!」

613 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 11:46:28.27 ID:SCmAupzQO
和「でも、問題なのは…」

和「ヒトラーを追い払うなり消滅させるのに加えて、唯を説得、というか…」

和「あの子を上手く教え導かないと…」

さわ子「私を頼りなさいっ!」

律「さわちゃんじゃ、かえって引きこんじゃいそうだ。」

659 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 14:42:52.04 ID:SCmAupzQO
澪「わ、わたし…だって…」

律「澪無理するな。話聞くだけでも駄目なのに、
相手はモノホンだぞ?」

澪「な、なんとか頑張って…みる…」

和「では、みんな、いいわねっ!?」

律紬梓憂純さわ「「「「「「応(おう)!」」」」」」

澪「ぉ…ぉぅ…」

こうして、放課後ティータイム+生徒会長+αは
唯奪還作戦を開始する。


660 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 14:51:14.11 ID:SCmAupzQO
~某日、生徒会室~
和「で、その霊体の特性というのは?」

純「標準語で言う"波長"や"ゆらぎ"みたいなものがあるらしいんです。」

和「ひ、ひょうじゅんご??」

純「津軽の言葉だと持って複雑な概念構造になるらしいんです。」

和「そ、そうなの…」

724 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 20:45:36.44 ID:SCmAupzQO
すみません、仕事終わりました。
明日は休みなので、今日明日で終わります。

728 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 20:53:30.01 ID:SCmAupzQO
同日 田井中家

律「『スリーピーホロー』、『リング』、『エクソシスト』」

律「どれから始める??」

澪「もっとソフトなのが良い…」

律「じゃ、もっとハードなやつにするぞ!」

澪「さっきのから選ぶ…!」

澪「う、うう…こんなので、幽霊と戦う訓練になるの…?」

律「多分。」

澪「…」

729 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 21:02:20.52 ID:SCmAupzQO
同日 桜高軽音部員行きつけのアイス屋

唯「あずにゃん、アイス美味しいね~」

梓「は、はい…」

アドルフ『ドイツとオーストリアの、
さらに東欧、バルト諸国に散らばるドイツ人たち…』

梓(ちかくにいるんだよね…)

梓(ア、アイス食べたいとか考えてるのかな…)

アドルフ『彼らヨーロッパに散在する雄志あるドイツ人を募り、
草の根の地下ネットワークを作ることから…』

732 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 21:15:25.98 ID:SCmAupzQO
同日 平沢家近くの神社

パンパン!

憂「どうか…どうか…おねーちゃんのことを助けてください!」

憂「五十一回目…」

憂「あと四十九回…」

憂「よーし!」

同日 琴吹家

紬「機材の確保はどの程度かしら?」

斉藤「はっ、七割ほどかと…」

紬「急がせなさい。」

斉藤「ハッ!」

736 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 21:33:17.58 ID:SCmAupzQO
数日後 京都府のどこかにある某滝

滝に打たれる少女たち

純「オンアミリタテイゼイカラウン!」

憂「オンアミリタテイゼイカラウン!」

梓「オンアンンんりみったっリタテイゼイカラあああウン!」

純「ノウマクサンマンダバザラダンカン!」

憂「ノウマクサンマンダバザラダンカン!」

梓「の、ノーまっクバあザランカンんん!!」


※真言や修験道とイタコの関係は知りません。
信じないで下さい。

738 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 21:44:49.39 ID:SCmAupzQO
同じく数日後 秋山家

律「え、えーと…百姓一揆!」

澪「バカっ!ミュンヘン一揆だ!」

律「こ、こんなの覚えても何にもなんないって…」

澪「りつ、敵がどんな奴なのかを知ることはすごく重要なんだ!!」

澪「さっ、あと半日、みっちりやるぞ!」

律「くっ…」

律(この間のこと根に持ってやがる…)

741 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 21:56:04.90 ID:SCmAupzQO
同じく数日後 さわ子のアパート

さわ子「あったあった!」

さわ子「取っといて良かったわぁ…」

さわ子「でもまだ入るかしら…」

さわ子「まあ少しきつくても」

さわ子「ふふ…」

さわ子「うふふふ…」

743 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 22:13:27.20 ID:SCmAupzQO
同じく数日後 琴吹家

紬「機材の搬入、セッティング、テスト。」

紬「全て完了したわ。」

和「しかし、よく借りられたわね?流石は琴吹家。」

紬「ううん、単にオフシーズンだからよ♪」

745 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 22:20:27.66 ID:SCmAupzQO
和「軽音部のメンバーや鈴木さんとの打ち合わせも済んだし…」

和「…」

和「でも…」

和「唯にとっては悲しいことになるのかしら?」

紬「人類史上最も破滅的だった出来事の原因から
離れることができるんだから…」

紬「唯ちゃんにとっても、私たちにとっても正しいこと、だわ。絶対に。」

和「…」

和「ええ、そうね。」

759 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 23:35:22.92 ID:dIcj8uAC0
同じく数日後 京都市内 鞍馬山

唯は一人、ではなくアドルフと一緒に鞍馬山を訪れていた。
アドルフに京都市内を案内するためだ。
しかし、アドルフは、京都御所と本能寺を見た後は、
ほかの名所を選ばずに、鞍馬山を希望していた。

唯「良い眺めだね!」

アドルフ『そうだね、ゆい!日本の自然風景もまた、
     高地ドイツのそれとは違った魅力がある。』



観光客A「奥さん、あの女の子さっきから一人でブツブツ…」ヒソヒソ

観光客B「きっと心の病気になって傷心旅行なのよ可哀相…」ヒソヒソ

763 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 23:52:06.66 ID:dIcj8uAC0
唯「そういえばさあ…」

アドルフ『なんだい、ゆい?』

唯「アドルフは建物の設計したり絵を描いたりする仕事につきたかったんでしょ?」

アドルフ『ああ。前に話したね。』

唯「京都の中には、お寺や神社がいっぱいあるんだよ?
  見学しなくていいの?」

アドルフ『そうだねえ、唯。たしかに、日本の寺社仏閣は素敵な建物かもしれない。』

アドルフ『ただね、伝統的な日本建築は、
     私にとって風車小屋や水車小屋と同じものと考えられるのだよ。』

唯「?」

アドルフ『子供のころ、よく遊びに帰った、母の実家のあるシュピタル村。
     かの景色…』

764 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 23:58:42.81 ID:dIcj8uAC0
アドルフ『あの景色を思い返すたびに、私は懐かしさに浸り、
     楽しい時間をすごすことができる』

アドルフ『しかし、それだけなのだ。
     それはメランコリーから出ているに過ぎない。』

アドルフ『伝統的な日本建築への日本人の愛着も、実は、』

アドルフ『牧歌的なものや始原的なもの、もしくは原始宗教にまつわるもの
     …へのメランコリーなのだ。』

アドルフ『それは、真に美的なもの、および…
     それより生まれる建築物とは、あまり関係がない。』

766 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 00:06:36.85 ID:GvpoFofD0
アドルフ『まあ、おいおい、"真の美"について、
     私の思うところを話してあげよう。』

アドルフ『ただ、今はこの鞍馬山に来ていることだし…』

アドルフ『ひとつ、神、のことについて話すとしよう。』

唯「神様??」

アドルフ『ああ、そうだよ、ゆい。』

767 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 00:16:57.73 ID:GvpoFofD0
唯「アドルフはキリスト教徒だから、キリストさんのこと?」

アドルフ『うーん、そうではないな。私がこれから話すのは
     いわゆるキリスト教の神ではないんだ。』

アドルフ『かといって、無関係でもないがね。』

アドルフ『それに、私がキリスト教徒であるのは"形"だけなんだよ。』

アドルフ『…さて。』

アドルフ『神というのは、超越的で、人間の運命を握っている存在だ。』

アドルフ『そして、宗教は様々あり、日本人のもっているような自然宗教、
     キリスト教、イスラム教、仏教…』

アドルフ『そして宗教には、その宗教を創始した者がいる。
     預言者と呼ばれている人々がそうだ。』

アドルフ『もちろん、自然宗教は例外だがね。』

768 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 00:29:56.60 ID:GvpoFofD0
アドルフ『さて、宗教を理解するために肝要なことの一つは…』

アドルフ『預言者とはいったい何者なのか、を理解すること。』

アドルフ『預言者とは、神と預言者以外の人間をつなぐ、人間だ。』

アドルフ『そして、おそらく神は、人間が進むべき道、
     また逆に、誤れる道、を知っている。』

アドルフ『しかし、全ての人間が神から召命を与えられうるわけではない。』

アドルフ『それに召命を与えられうるとしても、預言者の側にも
     神の意思を慮る能力の差が生まれてくる。』

アドルフ『たとえばモーゼとキリスト、モーゼとムハンマドの差、としてね。』

769 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 00:42:46.17 ID:GvpoFofD0
アドルフ『そう、大切なのは、神の召命を読み解く力だ。』

アドルフ『しかしだ、ほとんどの預言者は"きちがい"で、
     ほとんどの宗教は迷信なのだ。』

アドルフ『人間はもともと、神秘的なもの、人間的なものを超え出る力存在に
     惹かれるようにできている。』

アドルフ『しかし、その瞬間に、迷信や誤謬に引き寄せられる可能性が付きまとう。』

アドルフ『神のしるし、を正しく読み解き、人々を率いる者。』

アドルフ『そして、民族を指導する責務を最も負って言う者には、
     この能力が備わっていなければならない。』

アドルフ『キリスト教の神、父と子、これもまた迷信にしか過ぎない。』

アドルフ『しかし、神は、確実に存在する。』

771 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 00:50:09.73 ID:GvpoFofD0
アドルフ『ただし、迷信だといってキリスト教を退けるのも間違いだ。』

アドルフ『キリスト教がモラルや規律の維持に必要ならこれを使う。』

アドルフ『ただし、次第に消えるにまかせ、より確実かつ明証的な規律やモラルに道を譲るのが望ましいだろう。』

アドルフ『ようするに、キリスト教は、一過性的な道具なのだ。
     民族の発展および繁栄のための。』

唯「…」

唯「アドルフの言っていること、
  ちんぷんかんぷんだよ…ぜんぜんわからない。」

アドルフ『それでいいんだよ、ゆい。今はね。
     世の中には、知ったかぶりをして男に媚びる女狐が多くいるのだから。』

773 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 01:03:57.60 ID:GvpoFofD0
アドルフ『おっと、かなり日が傾いてきたようだ。』

アドルフ『ゆい、そろそろ帰ろうじゃないか?』

唯「そうだね、帰ろっか!」


唯の背後には、鞍馬山よりやや高い貴船山がそびえている。
その山影の中に、落ち日は飲み込まれつつあった。

774 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 01:05:54.80 ID:GvpoFofD0
まことにすいません、寝ます。
明日で最後になります。


805 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 13:25:19.01 ID:GvpoFofD0
すいません、おきました
再開します

808 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 13:28:21.71 ID:GvpoFofD0
翌日 関西最大の某ドーム型野球場

唯「この野球場の中でサプライズコンサートがあるの??」

憂「うん、そうだよ♪」

アドルフ『この大きな建築物のなかで?』

アドルフ『ついて来たくは無かったが、ゆいとは離れられぬし…』

横のアドルフは苦り渋ったような顔をしている。

唯は憂に急かされるまま、何もわからぬままに連れ出されていた。
なんでも、新進気鋭のアーティストのコンサートなりライブがある、との理由で。

唯「やっぱり、みんなと一緒に来たかったなぁ…」

憂「に、二枚しかチケットが手に入らなくてね!」

憂(おねーちゃんと"もう一人"用の)

809 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 13:34:45.15 ID:GvpoFofD0
憂は唯を先導する。
一般客は普段立ち入りが禁止されている、関係者用の回廊を進んで。

一分ほどで、巨大な左右開閉式の扉の前にたどり着く二人と一体。

憂「この中だよ!」

唯「うん!」

唯「でもさ、お客さん、私たち以外にぜんぜんいないね??」

憂「そ、それはね、超限定なコンサートだからなの!!」

唯「ほー!!」

憂「さ、入ろう!」

憂がそう言うと、目前の扉が少しずつ開いていく。

810 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 13:41:56.50 ID:GvpoFofD0
唯「おっ…!」

唯「…」

唯「??」

憂「ささ、おねーちゃん!」

憂に背中を押される形で扉をくぐる。

球場の中には、センターとライトの間ぐらいにステージが設置され、
その前には座席が二つ。
座席を広く円形に囲んで、唯の背丈よりもはるかに大きい
巨大なモノリスのような物体がいくつもそびえている。

唯「!!!!」

しかし、何より唯を驚かせたのは…
ステージの上にいる「アーティスト」たち。


「わたしたちのライブにようこそっ!」

812 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 13:50:36.85 ID:GvpoFofD0
唯「み、んな…」

ステージ上には唯を除いた放課後テイータイムのメンバー。
その向かって右隣には、白装束と肩掛けを装った純。
電電太鼓を大きくしたような太鼓とバチを手にもっている。

紬の少し後ろには、様々な配線のついた装置があり、
そのすぐ後ろに和が座る。

律「さっ、ステージ前の席にすわってくれよっ!!」

唯「え、えーと…」

憂「ほら、おねーちゃん♪」

アドルフ『??』

アドルフは気付くはずもない。
このライブイベントが催される意味を。

813 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 13:59:35.73 ID:GvpoFofD0
澪「え、えーと、きょ、きょうは放課後ティーっツァイムのライブに…」

律(噛むなよ…)

梓(澪先輩ファイトです!)

澪「来てくれてありがとう…」

唯「ぽっかーーーん。」

唯「…」

唯「ま、いいや♪私が参加できないのがかなし-けど。
  いじめとか…?」

そうぶつぶつ言いつつ、座席に着く唯。
アドルフは唯の右隣に立ったまま。

814 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 14:06:40.88 ID:GvpoFofD0
唯「ほら憂、憂も座りなよ?」

唯は左の席をぽんぽん叩きながら言う。

憂「ごめんね、おねーちゃん、そこは私の席じゃないんだ。」

そういうと憂は、ステージの上に駆け上がり、
正座で座っている純のとなりに、彼女と同じ姿勢で着座する。

唯「う、うい??」

一方のアドルフは彼女たちを、いぶかしむようにみる。

アドルフ『なぜこの子たちは、メイドの格好をしているのだ?』

アドルフ『意味がわからない…』

なぜか、和までメイド姿である。
なので、純の衣装がかえって引き立つ。

816 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 14:17:38.45 ID:GvpoFofD0
澪「きょ、きょうは…あなたたちのため…だけに、
  ライブを開く…ことにしました…」

唯「あなたたち??」

唯「わたししかいないのに??」

アドルフが見えていないのは唯の勘定に入っている。

アドルフ『…』

アドルフ『まさか…』

澪「で、ではさっそく…」

純「いくよ、憂!」

憂「うん!」

純憂「「あまてらしますすめおおかみののたまわく
    あめがしたのみたまもの…」」


澪「『Heart Goes Boom!! 』」

817 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 14:25:12.76 ID:GvpoFofD0
律「いちにさんしーいちにっさん!!」

澪「ハッツハッ!」

紬「♪~」

梓「ヨイショ♪」

各々演奏をはじめる放課後ティータイムのメンバー。

澪「花は恥らうもの ♪

澪「鳥はさえずるもの ♪」

純憂「みみにしょしょのふじょうをききて、
   こころにしょしょのふじょうをきかず―」

ドンドンドンドンドンドンドン…

祝詞のようなものをひたすら唱える二人。
加えて純は、太鼓もひたすら熱心に叩く。

819 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 14:33:51.57 ID:GvpoFofD0
唯「やっぱり澪ちゃんはうまいな~♪」

唯「でも…憂と純ちゃんはなにやってるの?
  純ちゃん、変な格好で変な太鼓みたいのたたいてるし。」

唯「ね、あどる…」

唯「!!!」

アドルフ『ぐ…ぐぐ……ぬ…!』

苦悶の表情を浮かべるアドルフ。
脂汗でもかいているような…

唯「アドルフ、どうしたの!?」

822 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 14:43:26.10 ID:GvpoFofD0
唯「ねえ、アドルフ!!!」

アドルフ『ぐ、ぐぅ…こ、この…忌まわしき…波のような…!!』

アドルフ『か、か…ら…だが…!!』

唯「アドルフ!!!」

アドルフ『せい…しん…が…!!!!!!』

霊体のアドルフにとって、身体と精神は同じものだ。


和(聞いているようね、対ヒトラーの霊体用の…)

和(いわゆる音波攻撃システム。)

825 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 14:49:10.77 ID:GvpoFofD0
~和の回想~

和「楽器を使う?」

純「はい。イタコは、その技術を用いる際に、一種の楽器を使うんです。
  太鼓とか、ほかにも種類がありますけれど…」

純「純粋な仏教で言うなら、密教の護摩の際の太鼓や、
  もっとポピュラーな木魚と同じです。」

純「標準語の概念構造でいうなら、霊の波長と同調するためらしいんですけど。
  これを逆に使いまして…」

~和の回想終わり~

和(逆利用して、ヒトラーの霊体にぶつける。)

和(鈴木さんと憂の祈祷なり読経で増幅して…)

和(ヒトラーが身の毛よだつほど嫌う音…)

和(退廃音楽を!!)

829 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 14:56:30.50 ID:GvpoFofD0
ヒトラーは自分の芸術観、音楽観の対極にあるものを
嫌うを通り越して、忌み恐れている。

例えるなら、皆さんも想像してもらいたい。

内面も外見も、自分のタイプにあたる異性(同性愛者の方は同性)
とまったく対極の人間に言いいよられ、ストーキングされ
体中なめまわされ、ありとあらゆる愛撫をされるのを。
そして、それが長時間つづいたとしたら。

現在のアドルフは、霊体、一種の精神体である。
この煉獄で炙られるような状況が、えんえんと続いたなら…

834 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 15:05:29.81 ID:GvpoFofD0
アドルフ『グ…ググ…』

唯「アドルフ!!ねえあどるふっ!!」

澪の曲が一通り終わるが伴奏はとまらない。
伴奏は変奏をはさみ、そして、
曲調が変わる。

ファースト側の左右開閉扉が開き、そこから、
黒い格好をした女性が乱入する。


さわ子「ドイッチュラントユーバーアレスぅぅぅ!!!!!」



和(さわ子先生。)

和(異常だわ…)

836 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 15:14:24.43 ID:GvpoFofD0
ヴァッフェンSSの将校制服を着込んださわ子である。
メイクは彼女のキャラソンのジャケットを参考にしてもらいたい。
眼鏡をはずした、キメまくったメイク。

澪の隣に飛び込むさわ子。

澪「ひぃぃぃぃ!!!」

紬(メイクキメキメのさわ子せんせぇ…/////)ジュン

さわ子「おーら、ハイルヒットラーーーー!!」

そういうとさわ子は、唯の前にある本を投げる。

841 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 15:24:02.72 ID:GvpoFofD0
唯「表紙のおじさん…年取ったアドルフ!?」

アドルフの著書『わが闘争』だ。

アドルフ『ワ…タシ…ノソン…ザイ…ニ…キズイ…』

アドルフ『グウウウウウウウウウウ!!!!!!!』

唯「もしかして、みんな…」

唯「!!!」

唯「やめてっ!!!すぐに演奏を止めて!!!!」

さわ子「否!いなっ!!三度いなぁぁぁっぁ!!!」

さわ子「『Mady Candy』!!!!」

純憂「諸法皆是因縁生因縁生故無自性無自性故無去来無去来故無所得…」

842 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 15:32:39.87 ID:GvpoFofD0
そして演奏は続く…

アドルフ『k…m…pf…』ジッジジッ…

アドルフの霊体の姿のちらつきが激しくなり、
上下左右に膨張縮小を繰り返し始める。

唯「アドルフが消えちゃうっ!!!」

唯「お願いやめてっ!!やめてよぉぉぉ!!!!!」

純憂「自相空共相空一切法空不可得空…」

純(よーしよし!)

純は太鼓を叩くのをやめ。両手で頭上に円を大きく作る。

和「もう一押しってところね…」

844 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 15:37:58.38 ID:GvpoFofD0
和「みんな、ラストスパートが近いようよ!!」

律「おうっ!!」

澪「ああ!!」

さわ子「ゼーハー…ゼーハー…」

アドルフ『…』

唯「や…」

唯「やぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

そのとき。

パ…キン!!

唯の懐から、何かが割れる音がする。
大きく響き、大音響で演奏している律たちの耳にもはっきりと聞こえる。

845 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 15:40:07.24 ID:GvpoFofD0
律「が、ガラスか何かわれるような!?」

和「多分あのピックじゃないかしら!?これで多分ヒトラーの霊も…」

純「!!!!」

純「ブクブクブク…」

憂「じゅ、じゅんちゃん!?」

純が泡を吹いて失神する。

梓「じゅんっ!!」

澪「お、おい、あ、あれ…」

846 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 15:42:03.43 ID:GvpoFofD0
澪が指差す唯のいるほう。
唯の頭上にオーロラのようなものが漂っている。
そしてその輝く半透明なカーテンのようなものは
少しずつ人型をとり始める。

唯「やぁぁぁ…ぁぁぁぁ!!」

紬「人の形!?」

和「女の人…鎧を着ているような…」

アドルフ『ヴァル…ハル…ヴァル…キューレ??』

輝く人型のようなものは、片手の長い剣のようなものを
アドルフの頭上で一閃する。

851 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 15:47:38.49 ID:GvpoFofD0
その瞬間、アドルフのいる空間からほとばしる閃光。

紬「ま、まぶ…」

数秒の後―

律「目がいてぇー…」

澪「これはヒトラーが消え…」

澪「!!!」

輝く人型は消えていた。
そのかわり、唯の隣には、白人の、痩せた若い男。
その瞳は澄んだ青。
その場の全員がはっきりと視認できる。

和「う…そ…」

律「見え…てる…」

858 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 15:56:45.08 ID:GvpoFofD0
アドルフ「わたしは…」

アドルフ「これはどうしたことだ…」

唯「よかった…よかったぁ!!」

アドルフに抱きつこうとする唯。
しかし、アドルフの身体をつかむことはできない。

唯「あ、そういえば幽霊だったね…へへ…」

唯「痛いところはない??」

アドルフ「ああ、全く無いよ。先ほどのおぞましい苦痛が嘘のようだ。」

梓「も、もしかして状況が悪化してません…??」

863 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 16:04:10.00 ID:GvpoFofD0
律「おいヒトラー!!唯から離れやがれ!!」

アドルフ「!!」

アドルフ「この娘、私の瞳を見ている…」

アドルフ「きみたち、わたしが見えるのか?」

和「ええ、何でかは知らないけどね…」

アドルフ「そうか…そうか!!」

アドルフ「…」

アドルフ「いやまったく、きみたちには感謝しなければならない。」

アドルフ「苦痛とは人を一段階押し上げるものだ。
     今回もまた思い知ったよ。」

864 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 16:05:05.67 ID:GvpoFofD0
和「…」

和「意思疎通ができるようになったついでに、お願いがあるんだけど…」

和「唯から離れて、どこかへ行ってくれないかしら??」

アドルフ「…」

アドルフ「ゆいはどう思う?」

唯「いや!」

アドルフ「わたしも唯に同じだよ。」

和「そう…」

和「それで、これから、どうするの?」

アドルフ「私が誰かを知っているなら、容易く想像がつくだろう。」

アドルフ「私に課せられた召命を再開するだけだ。」

梓「あなた、まだわかってないの!?
  あなたが昔仕出かしたことの大きさ!悲惨さ!!」

871 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 16:15:49.76 ID:GvpoFofD0
アドルフ「女はいつもそうだ。物事の本質を理解せず、感情に流され、
     男たちを泥沼に引きずり込もうとする。」

唯「わたしも??」

アドルフ「ゆい。この女性の性質には悪い面もあるが良い面もあるんだよ。」

アドルフ「姪のゲリや妻のエーウァ、私の最も大切な女性たちも、
     そういった女性ではあったが…」

アドルフ「ようは夫が、父が、兄が、男が強くあればよいのだ。男は兵士でなければならない。
     死を前に勇んで進み、指導者には服従する。
     優秀な兵士とはそういうものだ。」

和「あなたの考え方は、まったく時代錯誤よ。」

アドルフ「それは違うな。現代人はすっかり飼い慣れされ、家畜になってしまったから、
     価値ある生き方をけなして自らを正当化しようとする。」

アドルフ「現代人は、最悪なマルクシズムとは別の悪
     貪欲と利己に精出しているだけだ。」

875 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 16:30:22.65 ID:GvpoFofD0
アドルフ「『歴史のおわり』などという概念を見つけたときには、
     腹を抱えて笑ったものだ。」

アドルフ「たしか、彼も日本人の系統であったかな…」

アドルフ「まあ、いい。真に価値あるものから目を背ける人間は
     ただ滅び行くだけだ。」

和「わたしは、あんたの目指したものが価値あるとはまったく思えないわ。
  自分の民族のことしか考えない…」

アドルフ「ならきみたちは他民族のことを思いやっているかね?」

アドルフ「マルクシズムの概念も、価値判断を抜いた分析概念としては
     正しいものがいくつかある。」

アドルフ「きみたち日本人やアメリカ人が甘い汁を吸うことで、
     その奴隷になっている外国人が多くいることをしらないかね。」

876 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 16:38:48.73 ID:GvpoFofD0
アドルフ「現代の先進国は、交換および分配に生じる不平等を
     低発展な諸国に押し付けている。」

アドルフ「その世界経済の状況を維持することで、裕福な生活を送っている。」

アドルフ「まあ、私に言わせれば、そのような状況に甘んじる民族など
     そのような発展なき隷従のもとの生活がお似合いだが。」

和「それは、多分ちがうわ。最近は中国や、インド、東南アジアの国々は、
  経済力は馬鹿にできないものがある。国際援助やそういう助け合いだって!」

アドルフ「しかし、きみたちが、私が先ほど言った矛盾の上に生きているのは
     変わらないだろう?」

アドルフ「約二十数億の国が富めるようになったとして、
     さて、その国の内部の汚濁、また、あいかわらず低級なままの諸民族は??」

和「話にならない!」

アドルフ「いいかね?ユダヤの金貸しに、慈悲や全体利益の話をしても、
     彼には全く理解されない。」

アドルフ「彼は自分の欲望にしか興味がないからだ。」

878 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 16:47:14.62 ID:GvpoFofD0
アドルフ「貧しい土壌には、ほとんど作物は育たない。
     では、貧しき精神にいったいどんな価値があるだろうか。」

アドルフ「滅ぶに任せればよいが、それが血を同じくする民族の堕落を
     誘うものであったとしたら??」

アドルフ「腐肉は早めに取り除こう!そうせねば疫病が国の方々を覆ってしまう!」

アドルフ「そうなっては、もう遅いのだ!」

和「…」

和「みんな、改めてわかったでしょう?
  この男は狂ってる。そんな男と唯を一緒にしておいたら…」

澪「ゆい!ヒトラーを相手にするな!」

唯「なんで、なんでそういうこと言うの??」

880 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 17:01:20.81 ID:GvpoFofD0
唯「アドルフはドイツの人たちのこと心から考えてるんだよ??」

唯「それに、日本だって自分のことしか考えない、それに
  良いことを口にするけど、自分ではやろうとしない…」

唯「そんな人ばっかりでしょ…??」

唯「わたしはぜんぜん勇気がないから、
  今までいろんなことから逃げてきた。」

唯「でもそれじゃ駄目なんだと思う。
  妥協とかそんなのしてたら、もっと酷いことが待ってるかもしれない…」

憂「おねーちゃん…」

梓「もう、そんなとこまで唯先輩を引き込んでるなんて…」

884 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 17:09:09.73 ID:GvpoFofD0
澪「唯はまっすぐだから、疑いもせず。」

アドルフ「そうだ、それが君たちと唯との違いだ。」

アドルフ「この娘は、ドイツの強い乙女たちに劣らぬ何かを持っているのだ。」

さわ子「総統閣下。」

アドルフ「この前のあばずれ教師か。」

アドルフ「その姿は勇者にのみ許されたものだ。
     その姿で私を"総統閣下"などと呼ぶなっ!!」

さわ子「そ う と う か っ か 。」

アドルフ「きちがいめ…」

さわ子「それはお互い様でしょ??」

885 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 17:18:11.33 ID:GvpoFofD0
さわ子「総統閣下は、"ディ・エンド・レーズング"の計画と実施については
    唯ちゃんに話してるの?」

アドルフ「…」

さわ子「やっぱりね。」

律「さわちゃん、そのディなんたらって何?」

さわ子「日本語でいう最終的解決。ユダヤ人問題についてのね。」

梓「それってもしかして…」

梓「ホロ…コーストのこと…ですか…?」

さわ子「そういうこと。
    まあ、ホロコーストはその一部だけどね。」

887 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 17:24:39.30 ID:GvpoFofD0
唯「?」

アドルフ「…」

さわ子「総統閣下。」    

さわ子「戦後、あなたのお姉さんは、"最終的解決"をあなたが進めたことを
    信じようとしなかったわ。」

アドルフ「!!」

さわ子「『アドルフがそんなことをするはずがない。
    彼はそれに気付いていたら絶対に止めさせただろう』って。」

アドルフ「…」

889 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 17:31:40.80 ID:GvpoFofD0
さわ子「アンゲラやパウラに隠し通したかったこと、
    ばれちゃったわよ?」

アドルフ「…」グッ

さわ子「総統閣下。あんたは、あんたの姉妹、あんたの姪、あんたの奥さん…」

さわ子「身内の女性でも、これだけの人間不幸にしてるわね。」

さわ子「…」

さわ子「甲斐性なし。」

アドルフ「だまれっ!!」

891 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 17:39:45.22 ID:GvpoFofD0
アドルフ「ユダヤ人を地上から消すのは、われ等ドイツ人のいや
     地球人類の発展と健全化のために絶対に必要なことだったのだ!!」

アドルフ「だのに…だのにやつらは、シオニズムを実現させてしまった!」

アドルフ「現代に住まうお前たちは、かならず、その報いを受けるぞ。」

唯「アドルフ、最終的解決って何??」

アドルフ「…」

アドルフ「ゆい、このまえに話したね。」

アドルフ「ユダヤ人はドイツ人、ヨーロッパ人社会を蝕んでいた。
     多くの人たちを苦しめていたんだ。」

アドルフ「だから罰を私が下そうとしたんだよ。」

唯「でも、やっぱりたくさんの罪も無い…」

アドルフ「ゆい、罰を下されるのは罪があるからなんだよ?」

892 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 17:47:12.19 ID:GvpoFofD0
梓「ほんとうに救いようがない…
  自分が神様になったつもり!?」

アドルフ「神の命令だ。」

アドルフ「それに、君たちは同胞や隣人に対して同じようなこと、
     いや、それ以上のことをしているんだよ。」

律「はぁ??なにねぼけてんだよこの七三分けっ!!」

アドルフ「神に変わって、私が言おう。」

アドルフ「君たちは他者への無関心と搾取で、
     それ以上の人間を死なせているのだ。」

アドルフ「勇気をもたず、自分のことしか考えない。」

アドルフ「ユダヤ人問題を放置したのと同じく、
     君たちは、君たちの精神的腐敗のために醜い滅びの道をたどることだろう。」

アドルフ「君たちにはこれ以上何をいっても無駄なようだ。」

アドルフ「ゆい、いこう。私の姿を衆人がみることができるようになった以上、
     私の仕事を先に進ませねばならない。」

さわ子「ちょっと待った。」

さわ子「和ちゃん、舞台のスクリーンに例のパワー○イントを。」

和「は、はい…」

893 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 17:54:00.53 ID:GvpoFofD0
アドルフ「君たちに付き合っている時間は無い!」

さわ子「ふふ、総統閣下。何がはじまるか薄々気付いてるんでしょ?」

アドルフ「…」

律「なにが始まるんだ、さわちゃん?」

さわ子「鈴木さんと和さんの作戦は
    成功するかどうかわからなかったから。」

さわ子「唯ちゃん説得用にね。」

和「このデータですよね?さっきもらったばかりだから、私も見てないんですけど」

さわ子「いーからいーから!」

和「は、はい…」ポチ

896 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 18:01:11.79 ID:GvpoFofD0
スクリーンに次々と映像が映し出される。

澪「あ、あ、あ…」

梓「ひ、どい…」

唯「これ、なに…」

唯「な、んでたくさんの人たちが…」

その情景に心から慄く少女たち。

さわ子「世界史の○○先生にもらったデータをちょっと補強したやつよ。
    教育委員会の指導で、未成年には見せちゃいけないみたいだけど。」

899 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 18:10:55.67 ID:GvpoFofD0
さわ子「…」

さわ子「そう。」

さわ子「ホロコーストの映像資料集。」

さわ子「この男がしでかしたことの一部を納めた映像。」

アドルフ「あ…あ…ああ…」

アドルフが震えている。
目前のスクリーンに映し出される、
無残に殺され打ち捨てられた人々の写真を見て。

さわ子「その男は何百万人ものユダヤ人、東欧やロシアの人々、
    自分に歯向かった人間たちを殺したの。」

さわ子「この映像は収容所で殺された人たちの映像。」

さわ子「この男は"収容所"と呼ばれる刑務所よりも劣悪な場所にユダヤ人を集めて
    管理的、機械的に殺させていたのよ。」

900 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 18:18:54.99 ID:GvpoFofD0
唯「ひどい…」

アドルフ「否っ!!ちがうぞ唯!!」

アドルフ「私は、私はむしろ慈悲を与えてやったのだっ!
     苦痛無く彼らが死を迎えるように!!」

さわ子「あんたの部下連中には、実験材料やおもちゃにしたやつ等も結構いたわよ?
    まあ、ユダヤ人をおもちゃにした連中は、発覚すれば、
    あんたが粛清していたみたいだけど。」

唯「どうして、どうしてこんなことをしたの!?」

アドルフ「それはっ!!それはユダヤ人が、
     我々の社会にはびこる寄生虫だったからだ!!」

唯「わからない…」

902 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 18:27:26.32 ID:GvpoFofD0
唯「わからないよアドルフ!!」

唯「アドルフみたいな純粋で優しくて夢を追いかけてるひとがこんなこと…」

アドルフ「ゆい、きいてくれ、ゆいっ!!」

さわ子「アンゲラやパウラも、真相を理解したら、
    唯ちゃんみたいな反応を見せたかもね。」

アドルフ「だまれ!!!だまれ売女め!!」

さわ子「売女でけっこう。好きな男にはこっちから股開くわ。」

さわ子「和ちゃん、パワ○ポイントのフォルダに入っている画像開いて。」

和「はい。」

904 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 18:34:36.48 ID:GvpoFofD0
大きく映し出されたのは、母子の映像だった。
子供のほうは三歳ぐらい、女性のほうは二十代半ば。
銃で殺されたようで、死後数日たった様子だった。

澪「う、うう…ひ…どい…」

さわ子「SSの隊員の手にかかった、あるポーランド人の親子だわ。」

アドルフ「あ…あ…あああ…」

梓「せんせい!!もう、止めてくださいっ!!もう…」

紬「梓ちゃん、目を背けちゃ駄目。」

紬「この男と同じじゃ駄目よ。」

アドルフ「うわわわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

さわ子「子供好きでフェミニストのあなたには耐えられないでしょう。」

さわ子「でも、この親子はあなたが殺したのよ?」

905 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 18:44:16.23 ID:GvpoFofD0
アドルフ「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

唯「あ、どるふ…」

さわ子「ムギちゃん、唯ちゃんに貸したピックの
    持ち主について話してあげて。」

紬「はい。」

紬「あのピックは、ヒトラーさんのお姉さんの、子孫のものです。」

紬「持ち主は、ギタリストとして有名になるまでは、
  あなたと自分の関係を知りませんでした。」

紬「けれど、その方の名が世に出始めると、
  あるマスコミがその出生をかぎつけて…」

紬「あなたの親戚だということがばれてしまったんです。」

910 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 19:01:53.77 ID:GvpoFofD0
紬「音楽家にとって、狂気の独裁者の親戚であるということを
  喧伝されることがどういうことになるか。」

紬「その方は言われない中傷や迫害を受けました。」

紬「その方はアルコールに走って、志半ば、
  身体を壊して亡くなってしまいました。」

紬「事情が暴露されてからの、その方の日記や曲にはたくさんのあなたへの恨みと
  自分の血からくる、ユダヤ人や、あなたの犠牲になった人たちへの懺悔のことばでいっぱいだったそうです。」

アドルフ「…」

アドルフ「わ…た…しは…」




※もちろんフィクションです

915 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 19:12:44.10 ID:GvpoFofD0
アドルフの顔がたるみ始め、皮膚に光沢が無くなっていく。
髪型もいつのまにか、我々に馴染み深い1:9分けになっていた。

憂「ヒトラーの姿が…?」

純「よ、よわっているわ…私たちに見えている姿が…
  老化していっているのが証拠…」

憂「じゅんちゃん!」

さわ子「確かにあなたを霊体としてよみがえらせたのは神様の意思かもね。」

さわ子「あなたの精神が地獄の業火で
    焼くつくされねど炙られ苦しむように…」

922 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 19:24:35.89 ID:GvpoFofD0
アドルフ「あ…あ…」

突然に、アドルフのこめかみから鮮血が走る。

唯「!!」

アドルフ「ば…つ…」

さわ子「ええ。」

そして、炎のようなものがアドルフの身体を包む。

アドルフ「あ…つい…」

唯「あ…ど…るふ…」

925 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 19:34:53.49 ID:GvpoFofD0
アドルフの身体はどんどん炎につつまれ、
黒く焼け焦げていく。

アドルフ「そう…だった…のか…」

さわ子「そうよ。ダンテ・アリギエリの描く、
    その罪のため、死後苦しめられる人々のように。」

炎の中、黒く焼け焦がれゆく中、
その青い両の瞳が強く唯を見つめる。

アドルフ「Yui, mein reizend und mitfühlendes Mädchen…
       Leben ist Mengen Kämpfe.
  Seien Sie stark und mutig…!」

(ゆい、愛しく心優しき娘…生きることは闘いの連続だ。
 君が強く勇気あるように…!)

唯「あ…」

その言葉を残すと、煤が空中に舞い消えるように、
アドルフの姿も消えていた。

928 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 19:43:11.64 ID:GvpoFofD0
こんばんわ、平沢憂です。
あの事件から数週間が立ちました。
おねーちゃんは、まだ、心ここにあらずというか…
クラシックの曲を聴きながらぼーっとしていることが多くなりました。

純ちゃんは、御祖母ちゃんに無断で"儀式"をおこなったことがばれて
こっぴどく叱られ、こちらも心ここにあらずです。

あの後、さわ子先生が言っていたんですが…

931 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 19:51:36.72 ID:GvpoFofD0
律「さわちゃん、こんなのも用意してたんだな。」

さわ子「さっきも言ったでしょ、唯ちゃん説得用。」

さわ子「まさかこうまでうまくいくとは思わなかったわ。」

さわ子「で、あとは、彼のメンタル面の弱いとこを突いただけ。」

さわ子「まあ、摺れてない良い子ちゃんのあんたらじゃ、
    あの男を相手にするのは、まず無理よ。」

律「へいへい…」

澪「おい、唯、大丈夫か??」

澪が唯を揺さぶると、唯の懐から、
いくつかのかけらになったピックが、地面に落ちる。

紬「あのピック、壊れちゃったのね…」

憂「あの、弁償とかは?」

紬「大丈夫よ、気にしないで。」

932 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 19:58:38.79 ID:GvpoFofD0
梓「なんとか…解決…でしょうか?」

さわ子「さーてどうかしら?」

さわ子「少なくとも、あの男の言っていたことのいくつかは
    人間個人や社会の核心をついてるわ。」

さわ子「問題なのは、手段がえげつないとこだけど。」

さわ子「あたしらパンピーは、
    『見たいものしか見ず、見たくないものを見ない。』」

さわ子「某作家の受け売りだけど。
    そういうふうに、あたしらがちんたらしてるうちに…」

さわ子「状況が悪化してとんでもないことになる、
    ってのは、これからもありえる話だわ。」

澪「大きすぎる問題のような…」

律「ま、気楽にやるしかないだろ?」

唯「…」

939 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 20:04:58.62 ID:GvpoFofD0
今日もおねーちゃんは、自分の部屋で、なにやら音楽を聴いているようです。

憂「おねーちゃん、ごはんだけど…」

唯「…」

憂「おねーちゃん!」

唯「あ、憂。ごめんね…」

憂「もう…」

憂「…」

941 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 20:07:55.47 ID:GvpoFofD0
憂「この曲、なんだか優しい曲だね?」

唯「うん、ワーグナーの『ジークフリート牧歌』っていうんだって。」

唯「アドルフの勧めてくれた曲では、一番好きな曲なんだ。」

憂「…」

憂「おねーちゃん、あの…」

唯「うーん?」

942 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 20:10:48.30 ID:GvpoFofD0
憂「…」

憂「なんでも、ない。」

憂「ご飯だから、その曲が終わったら、早く来てね?」

唯「うん。」

そういうと、唯はまた、そのやさしく暖かい調べに、耳を傾けはじめた。

おわり。

958 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 20:22:01.99 ID:GvpoFofD0
三点補足します。

>>150の質問について
ヒトラーは腹心の人間のアドヴァイスのもと、
1936年か1937年に、アメリカやイギリスのヒトラーやナチスを風刺した絵や漫画を集めた本を
ドイツ国内で出版しています、おそらく、これらの国のマスコミのやり方を相対的に弱める狙いがあったと思われます。

>>166
このssの種本は
J.トーランド『アドルフ・ヒトラー』
H.トレヴァー=ローパー『ヒトラーのテーブルトーク』上・下
あとは、ショーペンハウアーやニーチェの諸本と
その他諸々です。

最後にピックとの関連で。
アンゲラの子孫についてですが、娘のゲリが死んだ後、
アンゲラには息子一人と娘ひとりがいました。
それぞれ子孫がいますが、息子レオのほうは80歳ぐらいの方で子供はいません。
アンゲラの娘にも、60前後の子供がいますが、こちらの子孫についてはわかりません。

961 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 20:24:02.47 ID:GvpoFofD0
失礼、もう一つ。
ヒトラーの言葉は『ヒトラーのテーブルトーク』を参考にしましたが、
ヒトラーが日本建築について語る部分だけは全くの私の独創です。

963 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 20:29:58.29 ID:GvpoFofD0
すいません、本当にもう一つ。
なので、このssに出てきたピックの持ち主は、まったくの想像上の人物です。

981 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/08(月) 22:51:25.63 ID:WKc2///C0
大文字と小文字すら訂正するとは…こだわってるな

まとめブログはこの訂正を本文ととりかえて載せとけよ

982 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 22:55:16.38 ID:GvpoFofD0
>>981
lovery→reizend
英語→ドイツ語の機械翻訳だからスペルをミスるとね…もうね…


って事で、訂正して載せますた

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