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たいが「とらまるようちえん!」

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 04:41:23.19 ID:7iBjALcu0
眠れないから今まで書こうとして書かなかったやつ書く

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 04:56:39.14 ID:7iBjALcu0
北村「よう、高須」

竜児「おう、北村か」

北村「今日から二年生、今年も同じクラスだな」

竜児「おう、今年もよろしくな」

今日から俺は泰子の未体験ゾーンである高校二年生を迎えることになった。
泰子とは俺の母親であり、我が高須一家の稼ぎ柱である。何故、泰子にとって高校二年生が未体験ゾーンなのかの説明はここではしないでおく。
とにかく今、俺のテンションは最高潮まで上がっており、それは泰子がなる事の出来なかった高校二年生になれたからではない。

実乃梨「やあやあ北村君!今年は同じクラスだね!」

北村「櫛枝、何だお前も同じクラスだったのか」

実乃梨「やだねえ、北村君ったら!同じクラスのメンツくらいちゃんと確認しといてよー」

竜児「……」

実乃梨「およよ、君は高須君だね!何回か北村君の周りでニアミスしてるんだけど覚えててくれてるかな?」

竜児「く、櫛枝、櫛枝実乃梨だろ……」

実乃梨「おおー!フルネームで覚えてくれてるとは嬉しい限りだよ!これから一年間よろしくね!」

竜児「……おう」

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 05:19:27.33 ID:7iBjALcu0
そう、彼女――櫛枝実乃梨こそが俺のテンションをかつてないほどまで上げている原因だ。
櫛枝実乃梨は元気溌剌、天真爛漫、清廉潔白……とにかく俺にとって女神のような存在であり、俺が一年生の頃から片思いをしている相手である。
そういったわけで俺はクラスで席に着いてからも口元から笑みを消すことなど出来なかった。
それがクラスの生徒を恐がらせていると知りながらも、だ。

春田「……高須君こええ」

木原「馬鹿!聞こえるわよ、春田!」

能登「だから、高須は顔だけだって。別に恐くないし、普通にいい奴だから」

香椎「そうなの?」

一年生の頃からの数少ない友達の一人である能登がどうやら俺の弁解をしてくれているみたいだ。能登の行為はものすごく嬉しいのだが、他の生徒が恐がるのも無理はない。
実際、俺の顔は恐いのだ。と言うよりも、目付きがヤバい。
そのせいで誰かが勝手に付けたあだ名は「ヤンキー高須」、噂の俺はこの学校を暴力で支配しようと目論んでいたり、関東一帯を統括する暴走族の総長だったり、ヤクザの組長の息子だったりするらしい。
だが、俺はこの学校を暴力で支配しようと考えてなどないし、暴走族の総長でもない。ヤクザの息子、と言うのは当たっているのかもしれないが確証もない。
とにかく俺はケンカもしたことがないほど大人くて良い子である。
俺がそんなことを考えているうちに、いつの間にか俺を恐れるクラスの雰囲気が消えていた。と言うより、男共の熱狂的な歓声と女子達の黄色い悲鳴にかき消されていたのだ。

能登「よっ、我がクラスのエンジェル!」

春田「神様仏様亜美ちゃん様ー!」

木原「亜美ちゃん遅いよー!」

香椎「どうしたの、亜美ちゃん?」

亜美「ごめんごめん!クラス間違っちゃって別のクラスを転々と訪ねちゃったんだ!」

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 05:43:12.77 ID:7iBjALcu0
川嶋亜美――我が校の誇るトップアイドルであり、ファッション誌などでモデルをやってるスタイル抜群の超絶美少女。
どうやら川嶋も同じクラスだったらしい。俺は自分の名前と櫛枝の名前しか探していなかったので川嶋が同じクラスだと言うことには全く気づかなかった。
恐らく同じクラスの男共はおろか、女子達も同じクラスに川嶋の名前があるかを確認しただろう。確認しなかった人間が俺以外にいるとするなら、それは北村くらいだ。

北村「よう、亜美。遅かったじゃないか」

亜美「もう祐作~!同じクラスなんだったら教えてくれれば良かったのに~!」

春田「あ、あ、あ、あ、亜美ちゃんが!男子を名前で呼んでる!!」

能登「ああ、北村先生はしょうがねえよ」

木原「まるおと亜美ちゃん幼なじみなんだってね、いいなー!」

独身「はーい、みなさん席に着いて下さい。HR始めますよー」

このクラスの担任の恋ヶ窪ゆり先生が来たが、クラスの喧騒は未だ鳴り止まない。おーい、みんな。そろそろ静かにならないと先生が愚痴り出すぞ。

独身「静かにして下さーい、HR始めますよー……誰も聞いちゃいない」

独身「そりゃそうよね……三十路手前独身真っ只中の女教師を見るより学校のトップアイドルの女生徒見てるほうが楽しいわよね……」

ヤバい、始まる。そう思った俺は椅子を少し大げさに、音が出るように後ろにずらす。

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 05:54:17.34 ID:7iBjALcu0
その瞬間、クラス中が一気に静まり返る。

春田「ひいいい!……高須君怒ってる!?」

木原「ヤバい、超恐いー!」

独身「た、た、た、高須君!?ごめんなさいね!クラスをまとめることも出来ない駄目な先生でごめんなさいね!だから、怒らないでね!」

竜児「……HRを」

独身「……そ、そうでしたね!はい、みなさん!気を取り直してHRを始めましょうね!」

恋ヶ窪先生とは去年一年間も同じクラスだったのに、未だに俺は恐れられている。
ちなみにさっきの行為は、別に俺がイライラしてクラス中を締め上げるために立ち上がろうとしたわけではなく、去年から続けている恋ヶ窪先生が円滑にHRを進めれるようにするための手助けだ。
……当の恋ヶ窪先生は俺がイライラしている時の癖だと勘違いしているみたいだが。

北村「さっきはすまんな、俺が何か言うべきだった」

竜児「いいよ、去年と同じだ。あれでみんな静かになるんだったらお安い御用だ」

北村「でも、そのせいで去年はお前がクラス中の生徒に正しく理解されるのに1月まで掛かったじゃないか」

北村「今年のクラスではそのようなことが起きないように、俺も誠心誠意努力するからな」

竜児「おう、その言葉だけでも十分嬉しいぞ北村」

時間をかければこうやって俺のことを正しく理解してくれる奴も現れる。俺は今年もそれでいいと思っていた。
今の今までは。

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 06:14:25.42 ID:7iBjALcu0
亜美「高須君、だったっけ?先生を脅かすみたいなことはあまりしない方がいいと思うけどな~」

俺に犬が噛み付いてきた。それもクラス中の生徒の寵愛を一斉に受けている愛犬が。

竜児「……何の話だ?」

亜美「さっきのHR始まる前のことだよ~、ゆりちゃん先生すごく怯えてたじゃない」

北村「違うんだ、亜美。高須は……」

亜美「祐作は黙ってて……祐作が肩持つってことは、何か弱みでも握られてるの?」

クラス中がざわめき出す。こいつのこの言い草じゃ、俺の立場はどんどん危うくなっていくのがわかる。
さしずめ、正義の美少女戦士VS悪の魔王と言ったところか――当然、俺は正義の美少女戦士の方ではない。

亜美「高須君さぁ、そういうのやめてみんな仲良く平和に行こうよ!ねぇ?」

竜児「だから、そんなわけじゃ……あ」

しまった。どうやら俺はやらかしてしまったらしい。
この顔のおかげで今まで障りはあっても当たりのない生活を送ってきたのだが、初めて自分と対峙する人間が現れ、その結果思わず凄んでしまったのだ。
すると、どうだろうか。今までキャンキャンと吠えていた愛犬は、一瞬にして目元を潤ませてぷるぷると震えだしたではないか。
まずい。これはまずいぞ。

亜美「あ、亜美ちゃんはね……みんなで仲良くやりたいだけなのに……!」

グスングスンと鼻を鳴らし、その大きな瞳から真珠のような輝きを持った雫を零して、川嶋は泣き出した。
この瞬間、俺はおそらくこのクラスでは一生俺という人となりを理解されないことを覚悟した。

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 06:44:33.92 ID:7iBjALcu0
北村「超絶わがままお姫様で人身掌握に長けている、それが亜美だ」

放課後、と言っても今日は始業式のため午前授業で学校は終わっている。今はまだ午後の二時頃だ。
家に帰った俺は、俺と泰子の昼ご飯を作り、それから北村に呼び出されてスドバでコーヒーを共に北村と話している。

竜児「はあ……」

北村「あれでも昔は超絶わがままお姫様だけで済んでいたんだがな、モデルを始めてからああいう仮面を身につけるようになったんだ」

北村「以来、昔からの幼なじみである俺にだってその仮面の姿で接している」

北村の話によるところ、学校のトップアイドルと褒め称えられている川嶋は本当の川嶋ではないらしい。

竜児「じゃあ、俺に噛み付いてきたのは新しいクラスでの自分の立ち位置を磐石にするためのパフォーマンスってところか?」

北村「おそらくそうだろうな……いや、本当にすまない高須」

竜児「何で北村が謝るんだよ……でも、本当にすごいな。あれでクラス中のみんなは確実に川嶋の味方になったろうな」

北村「何を他人事のように言ってるんだ、高須。あれで被害を受けるのはお前なんだぞ」

竜児「まあ、そうなんだろうけどよ……でも、俺はいいよ」

北村「いいって、何がだ?」

竜児「俺はあのクラスで誰かに理解されることを諦めた、この状況じゃもうチェックメイトだろう」

そして、俺の淡い初恋も終わったのだ。
櫛枝のために書いた何枚にも及ぶラブレターも、櫛枝とのドライブのために作ったMD集も、櫛枝にプロポーズする時のために選んだ夜景の綺麗なホテルも。
全てが無駄になったのだ。そう思うと、こんな俺でも胸がちょっぴり苦しくなる。

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 06:47:36.10 ID:7iBjALcu0
駄目だ、急に眠くなってきた。寝ます。
残ってたら続きを書きたいと思います。

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 11:40:03.93 ID:7iBjALcu0
おはようございます、再開します

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 12:04:07.07 ID:7iBjALcu0
北村「高須……本当にお前はそれでいいのか?」

竜児「ああ……悪い、北村。今日はかのうやの特売日だからそろそろ行くわ」

北村「お前がそれでいいと言うのなら俺はこれ以上口出ししないが……そうだな、高須の気が変わったならすぐに俺に声をかけてくれ。出来る限りの協力は惜しまないからな」

竜児「北村ありがとうな、じゃあまた明日」

そう言って俺はスドバを出て、かのうやに向かった。
北村に言った言葉は嘘ではない。どう考えても今の状況から俺を理解してもらうのは今までにも増して困難だと思ったからだ。
ただ、一つ――せっかく一緒のクラスになることの出来た櫛枝に誤解されたままなのは少し辛かったが、それもしょうがないのだろう。

竜児「……今日は俺を慰めるために少し豪華にするか」

竜児「豚ブロックが安いな……角煮にするか」

家に帰る頃には四時を回ってるかもしれないが、今日は泰子が同伴のはずだ。夕飯は取って置くことになるだろうからゆっくり時間をかけて煮込もう。
かのうやからの帰り道、一人頭の中で今夜の夕飯をイメージしながら歩いていると家の近くにタクシーが止まっているのを見つけた。

竜児「あれ?もう泰子出るのか……?」

ボロアパートの方に目を向けてみるが、一向に人が出てくる気配はない。
あのタクシーは泰子が呼んだのではないのかと俺が思うと、ちょうどよくタクシーのドアが開き中からはよく見知った顔が出てきた。

竜児「あれは……川嶋?」

竜児「そうか……あのマンションの住人だったのか、あいつは」

76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 12:26:58.16 ID:7iBjALcu0
さっき買った豚ブロックに包丁を入れていく。自然といつもより力を込めて。

竜児「そうか……あいつ、あのマンションの住人だったのか……ククク」

眼光は鋭く、口元に笑みを浮かべながらゴンッ、ゴンッ、と包丁がまな板を叩く。

竜児「家から太陽の恵みを奪ったのは……あいつのマンションなのか」

高須家はボロアパートながらも、南に窓がありそこから燦々と日の光が差し込んでくる中々住み心地のいい家だった。
だが、神様が高須一家に唯一贈ったプレゼントを奪った輩が現れた――それが隣にある高層マンションだ。
以来、洗濯物は乾きにくくなり、水場にはカビが生えやすくなり高須家に深刻なダメージを与えてきた。ただ、その分家賃も安くなったのだが。
だからといっても、安くなった家賃だって俺の節約術で何とか出来る範囲だった。まあ、要するに俺が何を言いたいかと言うと……
あのマンションが憎い。
太陽を奪ったあのマンションが憎い。
公園を見渡せる景観を奪ったあのマンションが憎い。
デザインと機能性に優れているであろうシステムキッチンを備えたあのマンションが憎い。
シンプルかつオシャレな内装を施されているであろうあのマンションが憎い。
あのマンションに住む住民が憎い。
川嶋亜美が憎い。ほら、イコールで繋がった。

竜児「ククク……さて、今からじっくり煮込んでやるぞ」

ちなみに言っておくが、今から煮込むのは角煮用に切り落とした豚肉である。
川嶋が憎いからと言って、決して五体をバラバラに切り落として煮込んで食べようなんてカニバリズム的思考は、俺の頭の中には一欠けらも存在しない。
いや、マジで。
結局のところ、川嶋のことをどう思おうが何も動くことが出来ないのが高須竜児と言う男である。
いくら人相が危なかろうが手を出すことなんて俺には出来ないのだ。

78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 12:55:26.89 ID:7iBjALcu0
俺は走っていた。何故走っているかと言うと、それは数分前まで遡ることになる。

竜児「ククク……高須特製角煮定食、完成だ!」

竜児「さて、茶碗に真っ白なご飯ちゃんをついで……お茶を出して……芥子芥子っと……おう!?」

竜児「……芥子がねえ」

と言ったわけで、俺は家からコンビニまでの道を鬼気迫る形相で爆走していた。
今の時間は午後九時を回ったばかり。約五時間を費やして作った今日の夕飯、何か一つでも欠けているのは俺にとっては許せなかった。
コンビニで買ったチューブ入りの芥子を握り締め(もちろんエコのためにビニール袋はもらってない)、俺はコンビニから家までの道のりを再び爆走していた。
おそらく、この時も子どもが見たらなまはげと勘違いしそうな顔をしていたはずだ。
あの曲がり角を曲がれば、我がボロアパートまで後少し。そんな時だった。

竜児「あれは……?」

全身黒のジャージに黒のキャップを被っていたが、あれほどのスタイルを持った人間はこの街に一人しかいない。よって、見間違えることもない。
本日三度目の邂逅、川嶋亜美である。

竜児「あいつ何持ってるんだ?……ビニール袋?随分とパンパンだな」

川嶋の詰めたであろうビニール袋の歪な形に俺は気を取られながらも、俺は面倒なことにはなりたくないと思って足を止めた。 
だが、その瞬間――

亜美「きゃっ!?」

あの学校のトップアイドル川嶋亜美が、あろうことにも転けたのだ。しかも、袋の荷物をぶちまけて。

96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 19:21:00.45 ID:7iBjALcu0
すいません、気づいたらパソコンの前でうつ伏して寝てました。
再開します

98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 19:32:28.65 ID:7iBjALcu0
竜児「おう……また随分と派手に転んだな」

いくら今朝噛み付かれたばかりの犬であろうと、いくら口ではあんな風に思っていても、その窮地を見てほっておくような男ではない。
ましてや川嶋の転んだ場所は家からもほど近い場所――我が家には今か今かと芥子の到着を待っている角煮ちゃんもいるのだ。
ここはパパッと声をかけて、袋詰めをしてやって、家に帰ろう。

亜美「やだ……もう最悪」

竜児「おう、大丈夫……か?」

亜美「きゃっ!?」

第一声が叫び声とは。まあ、しょうがないか。夜道で出くわしたら殺されそうな顔しているもんな。

竜児「俺だ……高須だ」

亜美「高須君……?やだ、どうしてこんなところに?……もしかして今日のことを恨んで付けて来たの?」

100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 19:44:47.57 ID:7iBjALcu0
こいつ本気で俺を見て怯えてやがる。もうそのまま帰ってやろうか。
だが、俺の顔がいくら鬼のようでも心は仏なのだ。
そうでもしないと人としてバランスも取れないしな。

竜児「はあ……随分派手にぶちまけたな。何だこれ、お菓子ばっかじゃねえか」

亜美「え……ちょっと何……?」

竜児「川嶋、お前な袋詰めには手順ってものがあってよ……こんな入れ方じゃそりゃパンパンにもなるだろう」

亜美「え……あ、うん……」

竜児「ほら、全部入れてやったぞ……どうした、立てよ?」

そういって俺は川嶋に手を差し伸べてやった。
だが、その手は取られることもなく逆に必要以上に俺と川嶋の間に空間を作った。
……そこまで警戒するか。

102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 19:54:26.88 ID:7iBjALcu0
亜美「ありがとう……で、何で高須君ここにいるの?」

竜児「俺の家、そこなんだよ」

亜美「え……高須君もあのマンションだったの?」

竜児「違う……俺の家はその隣のアパートだ」

ああー、と納得したような表情を見せる川嶋。その納得はどういう意味だ。
俺の顔は鬼面ではあるかもしれないが、貧乏面のつもりは毛頭ないぞ。

竜児「で、何で袋の中身はお菓子ばっかなんだ?今からホームパーティーでもするのか?」

亜美「違うわよ、私の食べる分に決まってるじゃ……あ」

竜児「そんなもんばっかり食べてると太るぞ、お前モデルじゃないのかよ?」

亜美「うるさいな……高須君、小姑?亜美ちゃんに指図しないでくれるかな?」

竜児「ってか、北村の話は本当だったんだな。学校の姿はガラスの仮面、本性はそれってわけか」

亜美「あ……」

今さら素に戻っていたことに気づく川嶋。鬼面ドッキリ作戦大成功ってところか。
もちろん意図していなかったけどな。

103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 20:03:45.91 ID:7iBjALcu0
亜美「やだ~、何言ってるの高須君!今のは高須君に驚かされちゃったから、亜美ちゃんからの逆ドッキリだよ!」

竜児「俺は驚かすつもりなんて微塵もなかったけどな」

こいつ俺に仮面が外れていることを気づかされるや否や、すぐに仮面を被り直してきやがった。
なんて面の皮が厚い奴だ。

竜児「あのな、川嶋……別にもういいんじゃないか?」

亜美「いいって……何が?」

竜児「俺にはお前の本性はバレてるし、北村にだって当然バレてる。なのに、なんでまた取り繕う必要があるんだ?」

亜美「え~、何のことかなぁ?亜美ちゃん、全然わかんないな~!」

竜児「だからよ、その……」

グゥ~。ふと可愛らしい鳴き声のようなものが聞こえてきた。なんだ、猫でもいるのか。いや、それとも芥子の到着を今か今かと待っている角煮ちゃんの声か。
意外にもその声の主は案外近くにいた。というか、俺の目の前にいた。
赤面する女子が一人。

竜児「……腹減ってるのか?」

亜美「や、ヤダ~何言ってるの高須君!亜美ちゃんモデルなんだからそんなわけ……」

グゥ~。再び鳴く川嶋の腹。流石に二度目は堪えたのか、顔は真っ赤に染め上げ、俯き、モジモジしている。
クソッ!カワイイじゃねえか。これだから女子はズルい。それもカワイイ子はなおさら、だ。

竜児「……家で飯食うか?」

106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 20:19:24.46 ID:7iBjALcu0
一応言っておくが、俺が川嶋を家に誘ったのは家の中で野蛮な行為をしようと目論んでいたためではない。
何度も言うが俺の顔は確かに鬼、悪魔、大魔王、その他諸々によく似たものかもしれないが、その心はそこらの高校生よりも清く正しく美しい。そう自負しているつもりだ。
だから、俺が川嶋を家に誘ったのはあくまでもご飯を食べさせてやるためであり――さながら、腹を空かして鳴いてる子猫に餌をくれてやるようなものなのだ。

竜児「……どうだ?」

亜美「ヤダ……っ!何これ……っ!」

竜児「ふふふ……もっと味わえよ」

亜美「やめて……っ!でも、止まらない……っ!」

もう一度言っておく。俺は川嶋に野蛮な行動など一切行っていない。当然するつもりもない。もし迫られたとしても……いや、それはわからないが。

亜美「ふう……食べ過ぎちゃった」

竜児「おい、ごちそうさまは?」

亜美「あ……ごちそうさまでした。って!何で亜美ちゃんが高須君に指図されなきゃいけないのよ!」

竜児「おい、戻ってんぞ」

亜美「あ……キャハ☆」

108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 20:33:11.25 ID:7iBjALcu0
誰が誤魔化されるか。お前の性格はいわば俺の顔みたいなもの――つまり、最悪だ。
……自分で言っていて少し悲しくなってきたな。

竜児「おい、口元に米粒付いてるぞ」

亜美「いや~ん!恥ずかしい、高須君取って~!」

竜児「自分で取れ……ほら、茶淹れたぞ」

亜美「あ、ありがとう」

そうして、二人で茶を啜りながら テレビを見て、まったりとした時間を過ごしている。
あれ、何かおかしくないか?

竜児「……おい、川嶋」

亜美「ん~?」

竜児「……何でお前家でくつろいでんだ?」

亜美「え……駄目なの?」

112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 20:49:22.53 ID:7iBjALcu0
いや、駄目じゃないけれども。
だけど、おかしくないか。今朝ケンカをふっかけた初対面の相手と、その日の夜には家で一緒に和んでいるというのは。
でも、そんな図太い神経を持っているからこそ川嶋はあの仮面を被り続けられるのかもしれない。
頭の中ではそう納得しながらも、俺はついつい口に出して聞いてみてしまった。

竜児「だってよ……今朝あんな揉め事あったのによ」

亜美「ああー、高須君ってそういうの気にするタイプ?顔に似合わず結構デリケートなんだ~」

竜児「顔のことは余計だ!」

亜美「ふふ、高須君って面白~い!主に顔が」

竜児「だから、顔のことは言うな!」

なんて失礼な奴なんだ、全く。
こんな奴に何で俺は愛しの角煮ちゃんを食べさせてしまったのだろう。こんな奴、冷食で十分だ。家に冷食なんてものは置いてないが。

116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 21:01:20.62 ID:7iBjALcu0
亜美「でも、高須君が本当に私のことを理解しているんだったら今朝のことだってわかるでしょ?」

竜児「そりゃ……」

思わず言葉に詰まる。
北村と話した時に思ったことを正直に言ってやればいいのだろうが、それでも言うことに躊躇った。

亜美「私はクラスでの自分の立ち位置を磐石にするためにあんな芝居打ったの、別に相手なんて誰でも良かったのよ」

亜美「ただ、そこに高須君がいた。だから、高須君を利用した。それだけよ」

竜児「……」

亜美「やだ~!もうこんな時間!早く寝ないとお肌荒れちゃうかも~!」

亜美「じゃあね、高須君!このことは二人だけのヒ・ミ・ツね☆もし誰かに言ったら……その時は、高須君にあんなことやこんなことをされちゃったって言っちゃうからね!」

竜児「大丈夫だ、誰かに言うつもりなんてねえよ……それに俺が何をしたって言うんだ」

亜美「ふふ、高須君優しい……ご飯すごく美味しかった」

竜児「え……?」

亜美「バイバイ!」

竜児「あ!川嶋……」

こうして、嵐のような新学期初日は過ぎていったのだった。

117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 21:18:48.20 ID:7iBjALcu0
それからの一週間は変化に富んでいた。
まず、クラスの生徒の俺の見る目が変わった。今までは恐れからか敬遠されていたが、今はクラスのアイドルを虐めた悪者として敵視されている。
かと言って、誰かが俺に直接危害を与えるようなことはなく、俺はただ孤立を深めていくだけだった。まあ、孤立していたのは去年もさほど変わらないのだが。
今では俺に話しかける生徒はクラスに二人しかいない。
一人は、今俺の中で好感度急上昇中の大親友・北村だ。あいつは川嶋の幼なじみということもあってか川嶋に媚びへつらうこともなく、また俺と川嶋との対立に責任を感じているのか妙に優しい。
そして、もう一人は意外な人物だった。
先に言っておくが能登ではない。あのインチキ眼鏡野郎は始業式の次の日に俺にこう言ってのけた。

能登「いや、高須がいい奴だったのは俺はわかってるよ!でもさ、亜美ちゃんに嫌われたくないじゃん!わかってくれるよな、高須?」

別に俺は能登を責めるつもりはないし、能登がそういうのも無理はないとも思っている。俺だって能登の立場だったらそう言うかもしれない。
川嶋は今やクラスの男子に崇拝される存在であって、川嶋に背くことは絶対的神に背くのと同じことだからだ。だけど、俺の中で能登の好感度が著しく下がっていることも言うまでもない。
では、一体誰がクラスで孤立している俺に話しかけてくれているのかと言うとだな……お前ら、聞いて驚くなよ。

121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 21:29:05.19 ID:7iBjALcu0
なんと、あの櫛枝なのだ。
櫛枝は毎朝俺に会うたびに声をかけてくれるし、廊下などで偶然出くわした時も自然に声をかけてくれる。
ああ、櫛枝!あなたは天使、いや女神か!そして、今もまたトイレに行った帰りに偶然櫛枝と出くわしたわけだが。

櫛枝「やあやあ、高須君!元気してるかい!」

竜児「お、おう……」

櫛枝「そうかいそうかい!元気があれば何でも出来る!いくぞー!ってね!」

竜児「おう……!」

今、俺の顔を見た女生徒の一人が明らかに顔を青ざめてさせていた。どうやら、俺の顔が般若か何かのように見えたらしい。
だが、今の俺にはそんなことはどうだっていい!嬉しい、嬉しすぎて泣きそうなのだ!そして、その涙を堪えるの必死なのだ!

櫛枝「およよ、高須君どうしたんだい?顔が引きつっているけど、今君のお腹の中でイオナズンでも唱えられたのかい?」

竜児「い、いや……そ、そういうわけじゃ……ねえけど、よ」

時々櫛枝は意味の分からないことを宣うが、その言葉すら今の俺には一語一句聞き逃せない大事なものだ。そして、櫛枝と話す機会は神に与えられた最大の試練である。
俺はここ一週間、あまりにも言葉を慎重に選びすぎて結局櫛枝と会話することはままならなかった。
だからこそ、今日は必ず櫛枝と会話してみせる!神が一週間も連続して与えてくれた最大の愛の試練、今日こそは乗り越えてみせようじゃないか!

竜児「な、なあ櫛枝……」

櫛枝「なんだい、高須君?」

竜児「あ、あの……何で俺に……は、話しかけてくれるんだ?」

125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 21:52:32.72 ID:7iBjALcu0
櫛枝「そりゃ、高須君……君のことが好きだからだよ」

………………

…………

……

なんて言われた日にはどうしてしまおうか!俺は嬉しさのあまり、一年間ラマダーンであっても耐えられる!まあ、俺はイスラム教徒ではないのだが。
とにかく掴みとしては悪くないんじゃないか、俺は冷静に自己分析した。ここでいきなり櫛枝に彼氏がいるのか探るのは馬鹿げているし、愛を叫ぶのはもっと大馬鹿だ。
よって、ここでの選択は正しいはずだ。まずは、ゆっくりと確実に外堀を埋めていく作業から始めようではないか。櫛枝と仲良くなる、それが第一の関門で最大の難関だ。

櫛枝「何でって……私と高須君はもう友達じゃないの!」

竜児「友達……!?」

ああ、ここは天国か!櫛枝が俺を、俺のことを友達と言ってくれた!なんて身に余るお言葉!嬉しさのあまり全身に鳥肌が立つ!今にも昇天してしまいそうだ!

櫛枝「友達の友達はみな友達だ、世界に広げよう友達の輪!」

竜児「……」

櫛枝「……あれれ?高須君、どったの?もしやネタのチョイス間違った?」

竜児「いや……す、すまない!櫛枝が俺のことを友達と思っていてくれたことが嬉しくて、な」

櫛枝「そんな大層なことじゃないよ!ハハハ!高須君大げさだな~!おっと、もうこんな時間!授業始まっちゃうよ、先行くねー!」

櫛枝の後ろ姿に白い天使の翼が見えるのは幻覚ではないはずだ。そう、確かにこの瞬間、彼女はまさしく俺にとっての天使だった。

127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 22:19:44.07 ID:7iBjALcu0
昼休みが終わり午後の授業が始まる。昼食後ということもあってクラスには倦怠感が広がっていたが、それ以上に負のオーラを振りまく者が一人。
もちろん俺だ。
机をガタガタと震わし、机におでこを擦り付けてブツブツと一人呟く様は、まるで死の間際に世界を呪う大魔王のよう。
昼休みあれだけ晴れ渡っていた俺の心が、どうして今大雨洪水竜巻雷地震直撃と壊滅的な状況に陥っているのかと言うと――気づいてはいけないことに気づいてしまったのだ。

櫛枝「何でって……私と高須君はもう友達じゃないの!」

と言うのはつまり、友達以上の関係には進展しないということではないのか。
私は高須君のこと友達としか思ってないから告白なんかされても迷惑なだけだよ、ということではないのか。

128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 22:31:22.63 ID:7iBjALcu0
今の授業は英語、担当教師は担任である恋ヶ窪先生だ。
先生は留学経験があるらしく確かに流暢な英語を話すのだが、時々語る留学時代の思い出はいつ聞いても同じ内容ではっきり言って誰もが聞き飽きている。
そして、そのことを気づいていないこの担任教師は今日もまた留学時代の思い出に耽っていたのだ。

竜児「……はぁ」

高須竜児の溜息!クラス中が凍りついた!

独身「ど、ど、ど、ど、どうしたの高須君?な、な、何か嫌なことでもあったのかな?そ、それとも先生の話がつまらなかったかな?」

竜児「……」

恋ヶ窪ゆり(29)独身の質問攻撃!しかし、高須竜児には当たらなかった!

独身「そ、そ、そうだ高須君!気分転換に教科書読んでもらいましょうか!ね、そうしましょうね?」

29歳独身(恋ヶ窪ゆり)の指名攻撃!しかし、高須竜児には当たらなかった!

竜児「……はぁ」

高須竜児の溜息!痛恨の一撃!恋ヶ窪ゆり(もうすぐ三十路)独身は逃げ出した!

独身「そ、そ、そ、そうですよね!嫌なことがあった時に教科書なんて読んでらんないわよね!じゃあ、春田君お願い!」

春田「ええーっ!!俺ーっ!?」

すまない春田君、だが俺は今教科書を読んでいられるような状況じゃないのだ。

130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 22:37:54.93 ID:7iBjALcu0
すいません、お風呂入ってきます

135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 23:33:45.38 ID:7iBjALcu0
放課後、俺はかのうやに寄って夕飯の食材を買い、いつもの道を歩いていた。
この一週間の変化の中で、唯一変わらないものがあった。
それは川嶋亜美だ。
あの始業式の夜以来、川嶋とは一度も口を利いていない。廊下ですれ違っても声はかけないし、帰りに見かけても声はかけない。
正義の美少女戦士と悪の魔王が簡単に馴れ合ってはいけないのだ。恐らく、川嶋と会話を交わすのはあの日が最初で最後だったのだろう。
俺はそれを別に寂しいとは思わないし、川嶋だってきっとそうだと思う。
だから、そんなことを考えていた今だからこそ、俺は川嶋に話しかけられて少し驚いていた。

亜美「た、高須君……!やっと……やっと追いついた……!」

竜児「川嶋……!?」

息を切らし、膝に手を当て、川嶋は呟いた。

亜美「ごめん……少し匿ってくれない?」

その怯えた表情は、普段身に着けている仮面の川嶋ではない、本物の川嶋だった。

138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 23:49:36.12 ID:7iBjALcu0
竜児「ほら、これ飲め……落ち着くぞ」

亜美「ホットミルク……?ありがとう」

手渡したマグカップを両手で持ち、ゆっくりと口を付ける。

亜美「温かい……それに甘くて優しい味」

竜児「川嶋……落ち着いたらでいいから話してくれ、なんであんな顔をしてたんだ?」

亜美「……うん」

ストーカー。
特定の誇示に異常なほど関心を持ち、その人の意思に反してまで跡を追い続ける者。
川嶋はストーカーの被害にあってるらしい。
中学の頃からモデルとして活躍していた川嶋には結構ファンも付いているようで、その中には時々こういった危ない人間もいるみたいだ。

亜美「……中学までは両親と一緒に住んでたんだけどさ、多分今付けてる奴がすごくしつこくて」

亜美「親の迷惑になるのも嫌だったし、こっちには親戚もいるから引っ越すことになったんだけど、親戚の人にも迷惑かけたくなかったから結局一人暮らにしたんだ」

竜児「親の迷惑って、そんな……」

亜美「高須君知らなかった?私のお母さん女優なんだよ。お父さんも芸能関係の仕事してる人だし、やっぱそういうのってイメージ悪いじゃん」

竜児「でもよ……!」

俺にはこれ以上言葉を続けることが出来なかった。家庭の数だけ事情があるのに、考えなしに何かを言うのも間違っている。
それは俺自身も痛いほど身に染みているから。

139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/08(月) 23:59:14.54 ID:7iBjALcu0
俺と川嶋の間に沈黙が続く。お互いに何て言葉を続けていいのかわからない状況だった。
その時、玄関の方からガチャリと音がした。何故か家に居なかった一家の大黒柱が帰ってきたみたいだ。
けど、その大黒柱はきっとこの状況を打破する救世主にはなれないだろう。

泰子「あれ~?鍵開いてる~?竜ちゃん帰ってきてるの~?」

竜児「おう、おかえり泰子。どこ行ってたんだ?」

泰子「ちょっとお買い物~!あれ~、お客さん来てる~?」

竜児「お、おう……ちょっとな」

亜美「あ、お邪魔してます……」

泰子「……」

泰子「わぁ~!大変だ~!!竜ちゃんが、竜ちゃんがべっぴんさんな彼女を連れてきた~!!!」

やっぱり泰子は救世主にはなれなかった……それどころか事態を余計にかき乱してくれている。

141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/09(火) 00:10:35.62 ID:Fsu31dR40
竜児「お、落ち着け泰子!こいつはただの友達だ!」

泰子「へ?お友達、なの?」

亜美「高須君、えっと……」

竜児「悪い川嶋、紹介が遅れた……高須泰子、俺の母だ」

亜美「……」

泰子「へへへ、どうも~!やっちゃんって呼んでね!」

亜美「おおおおお母さんっ!?」

竜児「泰子、この子は川嶋亜美。クラスメイトだ。ほら、そろそろ仕度しないと仕事遅れるぞ……飯は今すぐ作るけど食べてくか?」

泰子「食べる~!あ、川嶋さんだっけ?ゆっくりしていってね~!」

亜美「はあ……」

竜児「川嶋も食べてくか?今日の夕飯は野菜炒めだけど」

亜美「え……悪いよ、それは」

泰子「いいのいいの~!みんなで食べた方がご飯もおいしいし~!」

こうして川嶋はあっさりと我が家の家長に認められたのだった。

145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/09(火) 00:49:52.02 ID:Fsu31dR40
夕飯が済み、泰子も仕事に出た。
今高須家には、俺と川嶋とあと一匹我が家の秘蔵っ子しかいない。

亜美「ねえ、高須君」

竜児「おう、何だ?」

亜美「さっきから気になってたんだけどさ、あれ何?」

川嶋が指差す方向には鳥かごがかかっている。
我が家の秘蔵っ子はその中にいる。

竜児「あれとはなんだ、あれとは。あの子はインコちゃん、高須家の大事な家族の一人だ」

俺がインコちゃんの名を呼んだ途端、インコちゃんは両翼を数回はためかせた。そうだ、インコちゃんも何か言い返してやれ。
だが、一方川嶋は突然腹を抱えて笑いだしたのだ。

亜美「アハハハハ!い、インコの名前が、インコちゃんって!た、高須君それ誰が名づけたの?」

竜児「お、俺だ……」

亜美「キャハハハハ!た、高須君、センス無さ過ぎ!ククク!しかも、このインコ超ブサイクだし!ヒヒヒ!だ、駄目だ、超面白い!」

竜児「ば……インコちゃんを馬鹿にするなよ!そうだ、インコちゃん!川嶋に自己紹介してやってくれ!」

亜美「フフフ……へぇー、そ、そんなこと出来るんだ?やらせてみてよ」

川嶋、今に見てろよ!インコちゃんの話す様を見たら、きっとお前だって感動するに違いない!
さあ、行け!俺のインコちゃん!

146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/09(火) 00:51:16.20 ID:Fsu31dR40
眠くなってきたんで目覚ましがてらタバコ買ってきます

149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/09(火) 01:23:18.67 ID:Fsu31dR40
俺の声と共に、インコちゃんは可愛らしい奇声を上げながら自分の名前を名乗ろうとし始めた。

インコ「ン、ンコ、ンコ!」

竜児「いいぞインコちゃん!その調子だ!さあ、ほら!川嶋をぎゃふんと言わせてやれ!」

インコ「イ、イン、イン!」

亜美「へえー、すごい……ってか、喋るのってオウムじゃなかったっけ?」

竜児「うちのインコちゃんは喋るんだよ!さあ、ほら!インコちゃん、もう少しだ!」

インコ「インデックス!」

竜児「……」

亜美「……」

竜児「あ……ち、違うんだ川嶋!これはインコちゃんなりの精一杯のギャグなんだよ!なあ、インコちゃん!」

インコ「ちげーよ」

竜児「……不幸だ」

せっかくフォローしたのに見事にスカしてくれるとは、この気持ち悪い化け物め。明日からラマダーンでもしてもらおうか。

152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/09(火) 01:34:42.11 ID:Fsu31dR40
亜美「で、でもさ、ペットと漫才出来るって逆にすごいと思うよ!」

竜児「いいんだ川嶋……そのフォローが逆に辛い」

亜美「ご、ごめん……」

俺はインコちゃんの鳥かごに布をかけ、強制的に眠りに付かせることにした。
ふと時計を見ると、時計の針は既に10時を示していた。

竜児「おう、もうこんな時間か……そろそろ帰るか?」

亜美「そうだね……そうするよ」

竜児「あ、送っていくぞ。と言ってもすぐそこまでだけどよ」

亜美「ううん、大丈夫。さすがにこの時間までストーカーが張り付いてるなんて考えられないし」

竜児「そうか……でもよ」

亜美「大丈夫!亜美ちゃん、実は拳法とか習ったりしてるから強いんだぞ☆高須君だって秒殺出来るんだからね!」

竜児「川嶋……」

亜美「じゃあ……本当に今度こそもう話すこともないと思うから……うん、ありがとうね!じゃあね、高須君!」

そういって川嶋は家を出て行った。最後に、再びあの仮面を付け直して。
それはつまり、もう二度と俺には素の自分を見せないという意思表明なんじゃないかと俺は思った。

153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/09(火) 01:46:23.26 ID:Fsu31dR40
瞬間。叫び声。
その声はさっきまで俺が耳にしていた声だ。
馬鹿野郎、何が拳法習ってるだ。何も出来てないじゃないか。
いや……馬鹿野郎は俺の方だ。あそこは無理矢理にでも付いていくべきだったはずだ。

竜児「何やってんだ俺は……!」

そして、俺は靴など履かずに勢いよくドアを開けた。

竜児「川嶋!」

亜美「高須君!」

俺の目に映ったのは川嶋と、そこから逃げようとする男の影。
何も考えていなかった。ただ、感情の赴くままに。

竜児「鍵かけて家の中に居ろ!」

亜美「え……」

川嶋に特に外傷がないことだけ確認すると、俺は振り返りもせずに男を追った。

155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/09(火) 01:55:24.39 ID:Fsu31dR40
泰子は昔こんなことを言っていた。
自分は魔法使いで、三回だけ魔法が使えると。
そのうちの二回はもう使ってしまったけど、最後の一回は俺にくれると。
悪い、泰子。
その一回、ここで使わせてもらうぞ。

男「ひい……ひい……こ、ここまで来れば……」

竜児「大丈夫なわけ、ねえだろ?」

男「ひいいいい!!」

男はきっと混乱しただろう。少なくとも後ろから追っかけてくるはずの人間が今目の前にいるのだから。
俺は男の襟首をグイと掴み上げ、出来る限りの強面をしてみせた。

竜児「おい、お前……」

男「ははははははいいいいいい!!」

竜児「今度川嶋の跡を付けるような真似をしてみろよ……」

男「……!」

竜児「ただじゃ済ませねえぞ……!」

男「すいませんすいませんすいませんすいませんすいませんすいません!」

俺が男の襟首をパッと離すと、男は一目散に逃げ出した。

156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/09(火) 02:05:04.54 ID:Fsu31dR40
竜児「ふう……」

脚がガクガクと震えている。全身に鳥肌が立っている。
正直、めちゃくちゃ怖かった。
額からは嫌な汗が未だに流れ、恥ずかしい話だがパンツも少し湿ってる気がする。

竜児「ハッタリが利く相手で良かった……はあ……」

俺の武器はその顔だけだった。この顔で脅して、ハイ終了。それが俺が唯一考え付いた撃退法だった。
もし相手が手を出してきたら……その時は俺の方が危なかったかもしれない。
何度も言うが、俺が「ヤンキー高須」などと呼ばれているのはこの顔のせいだけである。殴り合いのケンカなんて今までに一度もしたことがない。
だから、今日だけはこの顔面凶器のDNAをくれた父親に感謝しよう。
俺はそんなことを思いながら家に帰った。

159 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/09(火) 02:27:14.70 ID:Fsu31dR40
亜美「馬っ鹿じゃないの!」

家に帰ってきた俺に対する川嶋の第一声はそれだった。

竜児「か、川嶋……」

亜美「何でそんな危ないことするのよ!」

竜児「す、すまん……」

亜美「高須君に何かあったらどうするのよ!」

竜児「すまん……」

亜美「もう……何で私を助けてくれたのよ……」

川嶋は泣いていた。俺の胸に額をつけ、両腕で俺を叩きながら泣いていた。
そんな川嶋に俺はどんな反応をすればいいのかわからず、ただそのままその場に立ち尽くしていた。

160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/09(火) 02:37:09.66 ID:Fsu31dR40
川嶋が落ち着くのを待ってから、今度こそ俺は川嶋を送ってった。
今まで素通りして行くだけだったお隣さんの高層マンションの玄関はやっぱりキレイで、高級感も漂っていた。

亜美「今日は本当にありがとうね」

竜児「おう」

亜美「これからは私もストーカーに負けないような強い女になるから」

竜児「おう」

亜美「……またご飯食べに行ってもいいかな?」

竜児「もちろんだ、泰子も喜ぶし」

亜美「そっか、わかった!じゃあ、また明日ね……あ」

竜児「どうした、忘れ物か?」

亜美「ううん、バイバイ竜児!」

竜児「なっ!?りゅ、竜児って……!」

亜美「アハハハハ!顔赤らめてる~!高須君うぶだね~!」

竜児「う、うるせえ!」

さっきとは違って今度は本物の川嶋と別れの挨拶を済ませて俺は家に帰った。

161 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/09(火) 02:48:52.05 ID:Fsu31dR40
次の日、クラスで俺を取り巻く環境に変化が生まれた。

亜美「あ、おはよう高須君」

竜児「……」

川嶋が俺に声をかけてきたのだ。俺も思わぬ出来事に思わず目を丸くした。

亜美「なんて顔してんの?そんな顔なんだからもうちょっと気を使った方がいいと思うけどな~」

木原「あ、亜美ちゃん!?」

竜児「う、うるせえ……」

亜美「あーあ、昨日はあんなカッコよかったのに。亜美ちゃんがっかり~」

香椎「昨日って、亜美ちゃん高須君と何かあったの?」

亜美「うん、あのね……」

昨日まで悪の魔王だった高須竜児は、一転して暴漢からクラスのアイドルを救ったヒーローになった。
広めたのはもちろん俺ではない。川嶋だ。
川嶋の敵ではなくなったと知るや否や、声をかけてくる奴らも増え、新しい友達も出来た。
クラスメイトに理解されることを諦めていた俺の高校二年生の生活は、ここからリスタートを切ることになるのだろう。

162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/09(火) 02:51:26.13 ID:Fsu31dR40
『ちわドラ! 1』 完

165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/09(火) 03:10:48.28 ID:Fsu31dR40
お疲れ様でした、文章は難しいです。
スピンオフ3、楽しみですね。これが最後のとらドラ!なのは悲しいですが。
『ちわドラ! 2』 のあらすじみたいのだけ考えたんで一応書いときます。

『ちわドラ! 2』 あらすじ
目つきは悪いが普通の高校生、高須竜児はひょんなことからクラスのアイドル川嶋亜美と仲良くなることに。
季節は五月。季節外れのミニマム美少女転校生、逢坂大河が竜児たちのクラスに梅雨入り前の嵐を巻き起こす!?


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