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心理掌握「うそ・・・上条先輩生きてたんですか!?」上条「?」【ドキ☆怒気?デート編】

762 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/08/07(土) 21:54:06.50 ID:LQEq3Kwo [4/10]
ここから日常編に入ります
とは言っても、最終決戦(三年前の話で)前の、話なのでシリアスやバトルはその後にすぐ入ります
しばらくは彼らの日常で書くべき話をチョビチョビ書いて投下します
一気に書き上げる事は、シリアスやバトルまでないから失速に見えたらすまんです

765 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/08/07(土) 22:53:33.28 ID:LQEq3Kwo [5/10]
【ドキ☆怒気?デート編】

「…………」

「…………なぁ、かみじょ」

「言うなぁぁーーっ!ええそうですよ!このざまなんですよバカですみません!」

「……いや、気にすんなよ」

テーブルの上には、一枚の成績表。
そこには一学期の各教科が5段階評価をされている。
上条と垣根は、上条の部屋でそれを前にしていた。
夏休みに入って一週間経った。
なのにどうして今さら、成績表で一喜一憂しているのか、

「不幸だぁぁあああああああああああ!」

その理由は、その成績表にあった。
いつもお世辞にも良い成績とは言えない評価ではあるが、上条は気にしない。
5段階評価で、1が付いていなければいいのだ。
1の評価は、夏休み補習を意味する血のような赤い烙印を押される。
上条は受け取った際に、即座に「赤赤赤赤赤」と目を血走らせて確認した。

「で、1は付いていなかった。……そう思っていたんだな」

赤は、なかった。

「普通気付くと思うんだがなぁ……なんで各教科の成績をちゃんと確認しないのか――あ、そんな落ち込むなって上条!」

だが、1は付いていた。

何故か、黒色で。

「……はは」

「お、おーい上条ー?ダイジョブかー?」

「ねぇよ!なんで黒色なんだよ!ブラッディジャッジ(血ぬられた判決)はどうした!」

「ブラッディメアリー(血ぬられた英女王)みたいな名前だな」

先ほど、担任のハゲ山(子萌先生からハゲ山に戻ってしまった現実が悲しかった)から電話があった。

『補習…来てくれるかな?』

「いいともー……って言うかバカ野郎!!」

上条は理不尽に不幸を叫んだ。
そんな様子を、垣根は優しげな目で見ていた。

766 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/08/07(土) 23:07:56.19 ID:LQEq3Kwo [6/10]
「あー、不幸だ不幸」

「まだ言ってんのか。元気出せよ」

「いやね、終業式の日に気付いてたらここまでならないんだけどさ。もう夏休みでパーッと遊ぼうと思ってたわけですよ」

「おう!俺もそう思ってたぜ!」

「そこにきてこれだよ…」

「あ、そうだ上条海行こうぜ海!」

「海ぃ?あの、ね?上条さんは補習があるんですけど」

「あれだろ?数日参加すんのは義務だけど、あとはテストを受けて一定以上の点数を取れば良いんじゃなかったか?」

「85点なんて赤点取る人にとっちゃ地獄ですよ?そんな補習が嫌なら点数を取ればいいじゃない、みたいなこと言わないでくれよ!」

「……ところどころ世界史ネタが入るのは何なんだ、上条」

「あー、ふっこうだなぁ」

「なら海行こうぜ、う・み☆」

「あー……プールで良くね?」

「どうせなら海行って、ナンパしようぜ!ナ・ン・パ☆」

「…そのいかにもなギャルゲテンプレ友人キャラは何なんだ」

「そうか?ギャルゲなんてしたことないからわかんねえや。メジャーハートのやつならよくやってるみたいだが」

――――――――――――――――――――――――――――――――――

「んじゃー、そこらで暇潰してっからガンバれよ~!」

「おう!サンキューな垣根。昼飯は一緒に食いに行こうぜ」

「……!おう!」

「さーて頑張りますよ、上条さんは」

――――――――――――――――――――――――――――――――――
――垣根サイド

「ふ、ははは。上条にランチに誘われちまったぜ!」

ちなみにいつも一緒に食べているが、誘われたということ自体が垣根にとっては嬉しかった。

「さて、いつものようにメジャーハートのやつに自慢しよっと。メルメル」

769 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/08/07(土) 23:21:59.68 ID:LQEq3Kwo [8/10]
「……暇だ」

メジャーハートにメールしたものの返信がない。
昼まで待つ4時間は、結構長いようだ。

「あんにゃろがメール返さないんが悪いんだよな、うん」

バサバサと、羽を羽ばたかせる。

「メジャーハートん所にからかいに行ってやろっと」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――垣根到着

「……何か言う事は?」

「喉乾いた!なんかくれ!」

「…………」

「あるだろ友人宅Aみたいな「サイダー飲むか―?」とか「麦茶飲むかー?」的なやつがさ!」

「……そんなワクワク顔で自分が送りたかった子供の頃の青春的な要求をされても」

「……とか言って出してくるところが可愛いよな、お前」

「そんなツンデレみたいに言わないでよ」

「これ何茶?」

「ご所望の麦茶よ。飲んだこともないのに麦茶って言ってたのね……」

「おっ、サンキュ一度飲んでみたかったんだ」

ゴクゴクと透明なグラスに入った麦茶を飲む垣根。

「うめめええええええーっ!青春の味がする!」

「どんな味よ」

「麦茶ってさ、コンビニとかに置いてないじゃん?飲んでみたかったんだよなー」

「今は美味しいペットボトルのが売ってるわよ。これは水出しして作ったやつだけどね――それこそご所望通りのやつね」

「案外家庭的なんだな」

と笑う垣根。
対し、こめかみをピクリと引きつらせるメジャーハートの少女は、高級マンションである自室の――ベランダを指さす。

「それより、何か言う事は?――窓ガラス割って入って来ておいて」

770 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/08/07(土) 23:34:22.69 ID:LQEq3Kwo [9/10]
「あー、わり」

「普通に下のエントランスから呼んでよ。そしたら鍵開けたのに」

「面倒じゃん」

「窓ガラス割られるほうがよっぽど面倒」

「お、お前なんかお母さんみたいな怒り方だな!」

「知るかっ!」

「まぁぶっちゃけノリだ。ノリでやってきました、ハイ」

「請求先はあなたにしておくからね」

ふん、と首を振る少女。
自室だからか夏だからか、彼女はワンピースタイプのキャミソール姿である。

「いつものドレスじゃねえんだな」

「暑いからね」

「そのほうが年相応でいいんじゃねえの」

と、そこで垣根は薄いキャミソールを見ていて首を傾げる。

「それってブラ付けねえの?」

「なっ!」

「いや見えてるわけじゃねえけど、横から見えるっつーか……何て言うんだっけ?土御門が言ってた……あぁ、『横乳』だ」

「ド直球でセクハラ発言しないでよ!?」

顔を真っ赤にして垣根から後ずさるメジャーハートの少女。

「ポロリはしてないからセーフじゃね?」

「なんであなたがセーフかアウトを決めるのよ!」

「俺は気にしないからいいじゃねえか」

「わ・た・し、が!気にするのよ!なんで平然とした顔でそう言う事言うの!?」

「はっは、お前も可愛いとこあんだな……まあ上条には及ばないがな!」

「男に負けたぁぁーっ!女としてのプライドがぁぁ!なんでだろう、とっても悔しい!」

メジャーハートの少女は、両腕で自分の体を抱いて顔を真っ赤にし、涙目になっていた。

771 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/08/07(土) 23:57:46.51 ID:LQEq3Kwo [10/10]
「……PC付いてんな、何やってたんだ?」

「見ればわかるでしょ」

「おー、これがギャルゲか。絵と文章が映ってら」

物珍しそうに、垣根はパソコンに繋がっているピンクのヘッドフォンを取って装着する。

「あっ、ちょっと」

「少しぐらいいいだろ」

「まぁ二周目だからネタばれにならないし、いいけど」

「えーと『お兄ちゃん!私仕事に行くからね』ってなんだこの娘、ガキのくせに仕事してんのか」

「その娘(こ)は高校生よ。学生生活とグラビア活動してるの」

「グラビアだぁ?……おお、確かに胸でけえメロンみたい」

「ふ、それでこんな可愛くて背が小さくて世話焼きなのよ、そそるでしょ」

「…なんで我が娘を褒めるみたいな顔してんだよ。でもま、あれだろこれって。ロリ巨乳ってやつだな」

「最近の若い連中には良さがわからないみたいだけどね」

「リアルでロリッ娘の歳なお前が何言ってんだ」

しばらくカチカチと文章を読み進める。

「あー……」

「へー、こいつ神様なんだ……」

「……また巨乳だなこいつも。巫女って設定がエロい」

「…お、巨乳じゃないやつ出て来た――ってなんだこの変態キャラ」

カチカチ。

「うん――――で?いつになったら話が進むんだ?」

「何言ってるのよ、この日常を楽しむのよ」

「はぁ!?なんだそれ!意味わかんね!」

「一応ルート毎にちゃんと話はあるけど、このゲームの醍醐味は田舎の島での楽しい日常よ!――あぁ、いいなぁこんな生活」

うっとりした顔をするメジャーハートの少女。
彼女ももしかすると、垣根みたいに〝友人〟や〝仲間〟というものに憧れを抱いているのかもしれない。

773 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/08/08(日) 00:14:14.96 ID:uB3.LSIo [1/2]
「あー、飽きた」

垣根はヘッドフォンを外して清潔感のある床に転がる。
室内はエアコンと加湿機が稼働している。

「失礼ね」

「ま、ギャルゲがどういうもんかわかった。ギャルゲってPCでやるもんなんだな」

「え、ええそうね。こういうのがギャルゲよ」

微妙に目を逸らすメジャーハートの少女。

――まるでギャルゲじゃないみたいな挙動だな。まいっか。

「つうかアレだ。窓ガラスはこの前の仕返しだな」

「確か六日くらい前に呼び出したこと?」

「そうそ。俺が上条から離れてる間に、麦野のやつが上条を殺そうとしたんだよ」

「でも結局なんとかなったんでしょ」

「当たり前だ!さすが上条と言うべきか、上条だから当たり前と言うべきか、レベル5を一人で倒しやがったからな!」

「ま、凄いわよね」

「そうだそうだ……って話を逸らすな。元々お前に呼び出されてなけりゃこんな事は起こらなかったんだよ」

「チッ、気付いたか」

「おいコラ」

「四日ぐらいで怪我も全部治ったんだからいいじゃない」

「へぇ?なんでそんな隠したがるんだかなぁ」

「な、何のことかしら」

「お前が『今ピンチ!あなたが来てくれないと私殺される!』なんて言って呼びだしたから行ったが、あの程度、俺じゃなくても良かったよなぁ?」

「……ええまぁ。白状すると麦野から脅され――」

ゴツッ、とメジャーハートの少女に垣根がチョップを喰らわせた。

「いったぁ…もう、だから言いたく無かったのに」

垣根は自分でも気付いていない。
上条の護衛を外れても、この少女を助けに行ったことに。
それだけでなく、麦野に脅されたとはいえ上条が襲われた原因を作ったこの少女に――特に怒りを覚えていないことに。

783 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/08/10(火) 17:24:06.04 ID:SK7wcCEo [1/9]
――上条サイド

「お、ベル鳴りましたよ先生!これで終わりですねはい起立礼さよーならー!」

昼を知らせるチャイムに野生動物のように即座に反応した上条。
上条は一人で席を立って礼をすると鞄を持って教室を飛び出す。

「おい上条!明日はテストをするからな!こんなんじゃ何日あっても85点に届かないぞ!」

「へいへーい!」

たった一人の補習生徒である上条に、担任教師は声をかけた。
上条は走りながら生返事をすると、階段を一段飛ばしで駆け下りる。

「わきゃっ」

「っと」

階段を降りたところで、一人の女子生徒にぶつかりそうになる。

「悪ぃ……って吹寄か」

「何だ、あたしとぶつかりかけるのが不満なのか上条当麻」

私今不機嫌です、とでも言いたげなムッとした表情の吹寄。
上条は思わず苦笑する。

「んなこと言ってねえだろ。それより、何で学校来てるんだ?」

「べ、別に貴様に関係ないでしょ!」

――相変わらずだなぁ。

あんな事があった後でも、変わらない吹寄を見れて上条は少し安堵する。

「…何をニヤニヤしてる」

「やだなぁ吹寄サン。カミジョーさんはいつだってこんな顔ですよ」

「フン、不幸不幸っていつも頭抱えてる癖に」

「はいはいネガティブキャラですいませんねぇ!」

やれやれ、と上条は汗でべたつくシャツをバタバタとさせる。

「……この間のこと」

今まで一生懸命言いだそうとしたが、言いだせなかったかのように、吹寄は恐る恐る口を開いた。

「あたしが、何で捕まってたか聞かないの?」

785 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/08/10(火) 17:36:40.25 ID:SK7wcCEo [2/9]
「聞いて欲しいのか?」

「え…」

上条は肩を竦める。

「聞いて欲しけりゃいつでも話せばいいさ。だが無理に何でも聞きたいとも――聞き出そうとも俺は思わない」

そう言って、上条は吹寄の横を通り過ぎて行く。

「俺達は、それでいいんじゃねの?」

「……そう」

上条は「んじゃな」と言い、その場を後にする。

「あ、待って」

「ん?」

「一応言っておいてあげるわ、間抜け面」

「……去り際に一応悪口を言っておいてやると?吹寄さんやい」

「違うわよ!い、今のはその、枕詞のような何て言うか」

「俺に話しかけるにはまず悪口を言わないと話しかけられないと?」

「あぁーもうっ!いいから聞きなさい!」

顔を真っ赤にし、吹寄は上条を指さして言う。


「助けてくれてありがとう!」


その言葉に、しばらく上条は固まった。
何故なら、吹寄がそんな言葉を自分に投げかけることは一生ないと思っていたからだ。

「あー…えっと…」

何て返せばいいのか、上条は逡巡した。
どういたしまして、なんて言い慣れている日本人はそう多くないと上条はこの時思った。

――だってめっちゃ恥ずかしいもん。つか、あー、もうっ。お礼とかされたいと思ってたわけじゃないし期待してなかったからどう返事していいかわかんねえ!

とりあえず、上条はいつも通りの返事をすることにした。
顔を赤くする吹寄に。

「気にすんなよ。また明日な!」

786 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/08/10(火) 17:49:15.91 ID:SK7wcCEo [3/9]
「あちぃ…」

玄関では、垣根帝督がだるそうに待っていた。

「よぉ垣根」

「おっ、上条!早かったな!」

「まぁな。午前だけだってのも学食が動いていないからなんだろ」

「あーなるほどな。昼飯買いに外に行くのはダメなんだっけ」

そうそう、と相槌を打ちながら上条は靴を履き替える。

「どこ食いに行く?」

「暑いし、さっぱりとした寿司でも食うか?」

「……財布の中身がさっぱりしそうだから無理だ」

「そうか。んじゃ上条が決めてくれよ」

「んー、適当にファミレスでも行くか?」

―――――――――――――――――――――――――――――――
――ファミレス

「……」

「……」

「お客様二名様でよろしいですか?」

店員の声にはっとする上条と垣根。

「え、ええ」

しどろもどろに答えると、こちらのお席にどうぞと通される。
そこには、上条と垣根が無言になった理由がいた。


「結局、学園都市でやるアウトレットセールじゃ掘り出し物見つからない訳よ。――やっぱサバ缶は美味いっ」

「んー、まぁそうね。午後は他の学区回って見る?――あれれー?今日のシャケ弁は昨日のと違うようなぁ。あれれー?」


非常識過ぎる二人が、いた。
ファミレス内で堂々とシャケ弁や缶詰を広げている。
周りの視線――というか店員の視線が気にならないのだろうか。
彼女らの前の席に案内された上条と垣根は、彼女らに気付かれないようにしようと、目で合図した。

787 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/08/10(火) 18:11:30.47 ID:SK7wcCEo [4/9]
「あ、上条」

「早くもバレた!?」

フレンダがこっちに気付く。
すると麦野がバッとこちらを振り向いた。

「アハハー麦野サン奇遇デスネー」

前回の戦闘の恐怖から、カチコチになる上条。
その様子を見て麦野は不満そうな顔をする。

「何オドオドしてんのよ幻想殺し」

――おや?

と上条は麦野から受ける視線に違和感を感じた。

「えぇっとぉ…」

「ったく。もう殺そうとしたりなんかしないわよ。それと――」

グイッと麦野が上条に顔を寄せる。
思わず顔を赤くする上条。

「――私を倒したアンタが、そんな弱いフリするんじゃないわよ」

はぁ、としか上条は答えられなかった。

――俺に対する、強い憎しみが感じられない…?

フレンダの説明によると、麦野はフレンダと過去に離れ離れになったという。
そして、フレンダが上条の監視役をしていると聞いた。
上条はアレイスター・クロウリーという理事長の計画に組まれているとも、聞いた。
だから、上条を襲いに来た。
だが一度目は垣根という護衛がいた。
麦野達に狙われているからこそ、垣根という護衛を上条に付けたのだろう。
その後、完璧な状態で上条を殺しにかかった。
結果的にフレンダと会えたが、麦野がそれで上条に対する憎しみが消えたのか――上条にはわからない。

「俺のこと、憎んでいないのか?」

と、上条は尋ねた。
上条は思う。
自分さえいなければ――麦野とフレンダは離れ離れにならないで済んだのではないか、と。
だが、そう思っていた上条を、麦野は笑った。

「フフ、バカね。むしろアンタには感謝してるわよ」

と、美しい少女――麦野沈利は笑いかけた。

788 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/08/10(火) 18:28:39.26 ID:SK7wcCEo [5/9]
上条には理解できないだろう。
ずっと、闇の中を走って来た麦野の気持ちは。
麦野は、出口の見えないトンネルをずっと走って来た。
必死に、息を切らして。
その手を赤く染めて。
でも、出口なんてなかった。
そこに、救いなんてなかった。
上条は――そんなトンネルを強引に壊したのだ。
どんどん、自分が自分でなくなっていく恐怖。
化物になってしまいそうになる――その一歩手前で。
上条は、そんな麦野を打ち負かした。
逆上されるかと、上条は思ったかもしれない。
だが違った。
麦野は、そんな世界から抜けだしたかった。
麦野は、そんな自分をぶち殺したかった。
完璧に、こてんぱんに打ち負かして欲しかった。
上条は、麦野にやり直すきっかけを与えたのだ。

「アンタさあ、覚えてないの?」

と麦野が上条に確認する。
戦いの後に――上条が言った言葉を。

――もしもこの先、お前を再び連れ戻そうと暗部が動いたら、俺が助けてやる――

上条は、麦野にそう言った。

もう、薄汚れた私なんかが戻って来ていいわけがない、と泣きだした麦野に。

フレンダと出会えても、もう私に幸福になる権利なんかない。と自己嫌悪する麦野に。

――もう、お前はそんな戦いをする必要はねえんだ。お前だって、こんなに頑張って来たんだろ?――

――確かに、お前は罪を犯した。許されることじゃないってのもわかってる――

――だがよ。そこで終わりにしていいのか?――

――せっかく、戻って来れたんだろ?――

――なら、もうやめようぜ。もう、負の連鎖を作るのはやめようぜ――

――間違っても間違っても、人間はやり直せるんだ。そうだろ?――


――俺達は、お前の味方だ。だから、お前はもう孤独な戦いなんてする必要はねえよ――


その言葉で、麦野は変わった。
麦野はもう二度と、人を殺さないと誓った。
もう二度と――道を踏み外さないと……。

789 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/08/10(火) 19:18:48.65 ID:SK7wcCEo [6/9]
「これからどうする?」

「ショッピング続けたいなぁ」

「アンタらは?」

「上条どうする?」

「勉強シマス」

その後。
結局四人で昼飯を食べた後、上条と垣根は学生寮に帰ることにした。

そこで――。


「あ、上条先輩っ」


心理掌握の少女と出会った。

――――――――――――――――――――――――――――――――

「ですからXの値を求めるにはですね」

公園の一角。
木陰にて上条は心理掌握に勉強を見てもらっていた。

「あぁー…えっと…」

「わかりませんか?――なら、こっちに代入する方法もありますよ」

「おぉっ、これならわかった!」

「ふふ、良かったです」

ノートに計算を書いていく上条。

「はい、正解です。ではこの公式も覚えておきましょう」

「うえぇ。また公式…」

「良い覚え方がありますよ。実はですね――」

心理掌握の少女の教え方は上手かった。
とにかく解り易く、理解できそうもなければ別の解答方法を示す。
上条はどんどん理解していった。
ちなみに垣根は「私が上条先輩に教えるから、あなたは飲み物でも買って来てね」と心理掌握にパシられていた。
心理掌握の少女が言うには、垣根は生まれながらの天才肌だから、人に教えるのは上手くいかないらしい。
だからこそ、上条に勉強を教えると心理掌握が言うと――垣根は引き下がったのだ。

791 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/08/10(火) 19:34:44.79 ID:SK7wcCEo [7/9]
「ほらよ」

垣根が器用に三つのジュースを運んで来た。

「私の頼んだトロピカルジュースは?」

「ほら。――ったく、このジュース大人気で売り切れてたんだぞ。とっととミキサーにかけないとお前をミキサーにかけるぞって脅したらすぐに作りだしたが」

「野蛮ね、最低。――あっ、やっぱり美味しい」

「てめっ!買ってきてもらっておいて何て事言いやがる。つか美味いなら文句言うな」

「えーでもこういう乱暴な男は嫌いですよねー上条先輩」

「何!?マジか上条!今からあのハゲ店主に土下座して来ようか!?」

垣根は極端だな、と上条は苦笑いした。

「いや、そこまでしなくてもいいだろ。で?俺にはなに買って来たんだ?」

「おう!季節限定夕張メロンジュースだ!」

サンキュ、と礼を言い、上条はメロンジュースを飲む。

「お、美味いな」

「あっ、いいなぁ私もそれが良かった」

と心理掌握。

「俺が苦労してトロピカルジュースを買って来たってのにかコラ。つか上条みたいに礼の一つくらい言えや」

と空いた椅子に座りながらパインジュースを飲む垣根。
そんな垣根は完全無視で、心理掌握の少女はジー、と上条を見た。
上条は整った心理掌握の可愛らしい顔に微妙に頬が赤くなる。

「上条先輩、飲み比べしませんか?」

「へ?」

「ほら、こっちも美味しいですよどーぞっ」

とストローごと上条の口に押しつける。

「…ん。まぁ美味いな。ほら、こっちも飲んでみろよ」

「ありがとうございますっ。んー美味しいです」

あれ?何このラブラブ空間…と垣根が引いていることに上条は首を傾げた。
一方、心理掌握の少女はとても楽しげだった。

792 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/08/10(火) 19:47:28.17 ID:SK7wcCEo [8/9]
夕方になり、勉強会は終わった。

「んー、サンキューな。これなら明日で補習を終わりに出来るかも知れない」

「いえ、上条先輩が頑張ったからですよ。それに上条先輩はやればちゃんとできる子です」

「できる子って、俺のほうが甘えてる感じだな」

と笑う上条。
でもそんな母性ある年下の少女は、上条から見て好印象だった。

――ん?これって土御門に言わせるとロリコンってことに…。

――いや違うぞ違うぞ!俺はそんな目でこいつを見ない!

「何かお礼するよ。…まぁ高い物は買ってやれないが」

「本当ですかっ?物はいいです。前にゲコ太もらいましたしね」

パァ、と瞳を輝かせる心理掌握の少女。

――うん、可愛いな。妹みたいなモンだろ。

「そっかぁ、じゃあ何かして欲しいこととあれば…」

と言っても上条は思い付かない。
考えてみれば、今まで女の子とこうして多く関わることが少なかった。

――まぁフレンダは幼馴染だから別としてだが。

こうして、女の子から別枠に分類されてしまうフレンダ。
本人が聞いたら憤慨するだろう。

「じゃぁ、先輩――」

心理掌握は、夕日を背景に頬を染めて言った。


「私と――デートしてください♪」



【ドキ☆怒気?デート編】

――後編に続く

810 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/08/12(木) 22:14:41.21 ID:QjaTbMko [1/5]
上条サイド――

心理掌握の少女からそのメールを受け取ったのは、補習が終了した旨を伝えた翌日のことだ。
上条は心理掌握に教わったおかげで、その翌日の補習では90点を取った。
これには流石に教師も疑いを持ってしまい、不幸なことにそのまた翌日に再テストとされた。
さらに不幸なことに傾向の変わった問題が増え、81点を取ってしまう。
結局、補習を終えられたのは心理掌握との勉強会から一週間後のことだった。
補習としては通常と変わらない期間だったんじゃないか、と上条は思う。

「でもまぁ、無事に終えられてよかったよ……っと」

「何してんだ?」

とカップ麺を啜る垣根。

「いや、無事に補習が終わったってアイツに報告してんだ」

「ふーん。……そういや最近、やたらと心理掌握とメールしてね?」

「へ?そ、そんなことねーよ」

意表を突かれ、動転する上条。

「ま、いいけどさ」

ズズズー、と垣根は汁を飲み干した。



翌日――


届いたメールには、デートの予定が書かれていた。

「なぁなぁ、見せてくれよぉ」

「だぁーから、これはデートなんだ。絶対に冷やかしに来るんじゃねえぞっ」

ベタベタと
ひっついてくる垣根を振り払う上条。

「だって俺、上条の護衛だぞ?」

「うっ……じゃあもしものことがあったら、すぐに呼び出すからさ」

「それじゃ警備員と変わらねえじゃん!俺護衛だぞ、護衛。これマジ重要。どれくらい重要かって言うとだなぁ……いやアレイスターの計画なんざ袋綴じグラビア程も興味無いが……えぇっとアレだ、また麦野のやつみたいなんが襲ってくるかもだぞ!?」

――確かにそれは恐いが……。でも心理掌握のやつからはメールに『垣根とフレンダの護衛監視二人は絶対に連れて来ないでくださいね?』とあったしなぁ……。

「ま、上条なら誰が来ても大丈夫だろうがな!ははっ!レベル5なんて第何位が来ようが第一位が来ようが余裕だろ!――――はっ!アレ?俺いらなくね!?」

813 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/08/12(木) 22:32:09.61 ID:QjaTbMko [2/5]
「とにかく、絶対来るなよ?」

と上条は念を押す。

「えぇー……ん?あぁ!わ、わかったぜ!」

「こら、いきなり瞳をキラキラさせるなっ。フリじゃないからな!?違うからな!?『押すなよ?絶対押すなよ?』っていうフリじゃないからな!?」

「わかってるってぇ~」

「ダメだこいつ!絶対フリだと思ってやがる!」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
デート当日――

「はぁ……!はぁ……!」

炎天下の中、上条は疲れ切った状態で待ち合わせ場所に到着した。
待ち合わせの9時は過ぎ、時刻は10時を回っていた。

「か、上条先輩!?」

可愛らしくもどこか品のある美しさが漂うワンピース姿の心理掌握が、上条を見つけて目を見開く。

「ど、どうしたんですかっ?疲れているみたいですけど……」

「はぁ……!……はは、悪いな待ち合わせに遅れちまって」

「い、いえ!私は別に……とりあえず先輩、日陰に入って下さい」

白く細い腕が、上条を日陰のベンチにやる。
日射病になるといけないと、心理掌握がアクエリアスを買って来る。
溺れるように上条はそれを飲み、しばらく休む。

「実はさ、」

と上条はいつもの不幸話を話す。
というよりは、巻き込まれた話だが。
夏休みということもあり、強引なナンパをしている連中がいて助けに入った上条。
結果として、女子たちは逃げられたものの上条はナンパ連中に怒りを買ってしまい、1時間近く追いかけ回された。
そこで今度は日射病で倒れている女性を発見し、病院まで運んで来たところだった。

「ってわけなんだ。スマン!」

実は初デートということもあり、上条は待ち合わせよりかなり早い、8時30分には着いていようと思っていた。
年上としての余裕を見せたかったのだ。
恥ずかしい話だが、それだけ浮ついて早く来ようとしなければ、もっと遅刻するハメになったかもしれない。
心理掌握の少女は、上条の言い訳を聞いて嬉しそうに微笑んだ。

「やっぱり、上条先輩は素敵な人です」

823 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/08/13(金) 20:40:49.27 ID:Dwl3Snso [1/9]
【ドキ☆怒気?デート編】後編


予定では、午前中は水族館に行くはずだった。
その後、館内のレストランで食事を摂り、食後には美術館を周ることになっていた。
なんでも、お嬢様らしく招待券を貰ったそうで、あと一名までなら一緒にどうぞとあったらしい。
科学万能の学園都市にも芸術を愛でる場はある。
上条には芸術など解らないが、今日(こんにち)では特別展示がされているらしい。

「着きましたよ、先輩」

バスが静かに停車する。
駅から出たバスは二十分程で目的地に着いた。
上条が遅れたことで予定を変更し、先に美術館に赴いた。

「ここか……」

何とも形容しがたい。
白い建物だった。
この前の麦野と戦った洋館にも似ている。
後から聞いた話によると、あの洋館は麦野の所有するアトリエだったそうだ。

――それを燃やすっていうのもなぁ。ん?この場合って放火の罪にならないのか?

などと上条は疑問を抱く。
その間にも心理掌握の少女はバスを降りる。
上条も慌てて後を追う。
ピッ、とICカードを鳴らす。
バス賃が支払われ、駅の改札口のような柵が開く。
上条が出ると再び閉まり、それを背に上条はコンクリートの地面に降り立った。

「……はー」

バスから降りるとやはり、日射がキツイ。
急に眩しいところに出たため、しばらく目が慣れない。
美術館は白く丸い形状だった。
二階建ての上に丸い三階らしき小さな部屋が乗っている。
あれは屋根裏部屋みたいなものなのだろう。
俗に言う、絵直しに使われるのだろうか。
丸い部屋はドーム式で展望のようだ。
全体的に丸い印象のある建物は、不謹慎だが広島の原爆ドームに似ている。

――いや、わざと似せてるのか?

戦争へのメッセージ的なものなのだろうか。
建物の周りに茂る緑溢れる木々は、原爆ドームの表す『戦争』と緑の『命』を彷彿とさせた。





824 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/08/13(金) 21:02:59.23 ID:Dwl3Snso [2/9]
館内はしんと静まっていた。
それは沈黙とは違った。
ストーンサークルのような、言い様のない未知さが漂っている。

――な、何が何だかわかんねえ。

これが上条の感想。
人の顔なのか二つの卵で作った目玉焼きなのかわからない絵画。
何人もの人々が重なり合って十字架にすがる名画。
確かに実写かと思うものもあり、素直にすごいなーとは思うものの、上条に芸術を理解する術はない。

「これ、いいですね……」

と心理掌握。
天使だろうか、翼を生やした女性が天から見下ろしている。
天を見上げ、手を伸ばす人々。
描写されているものは、そんな一場面だった。

「天使なのか?」

「ええ」

小さく答えた心理掌握。
美術館に入ってから彼女は口数が減っていた。
だがしかし、退屈している訳ではない。
心理掌握は、うっとりとその世界に見入っていた。


「失礼」


誰かと肩がぶつかった。
そこで、低く重い謝罪の声が聞こえた。
上条は振り返る。
するとやはり、老人がいた。
まず、驚いたのはその服装。
仰々しく、派手なのだ。
どこかで見たことのある服だな、と上条は考えるも答えが出ることはなかった。

「ロ、ローマ教皇ですか!?」

と目を見開いた心理掌握が答えを出したからだ。

「ははっ、学園都市のガキでもわかるのか」

頷く老人の隣にいた、赤く長い髪の中性的な男性が小さく笑った。
その後ろには、緑色の髪の緑色の礼服を着た男性。
緑一色の男性は、上条を見て言った。

「んー、これが幻想殺しで間違いないようですねー。――あぁ申し遅れました、私の名前は『左方のテッラ』です」

826 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/08/13(金) 21:20:00.14 ID:Dwl3Snso [3/9]
唐突だった。
左方だとか、ローマ正教だとか、上条には理解できなかった。
だが、

「幻想殺しを……知っているのですか?」

心理掌握の少女がそう訊いた通り、何故かこの人達は幻想殺しを知っているのだ。
学園都市外の人間が。
驚く上条と心理掌握。
ローマ教皇は、そんな二人を鋭い眼差しで見遣ると、赤い髪の男とテッラを「少し席を外してくれ」と遠ざけた。



「それは、神浄であろう」

しばらくして、ローマ教皇はそう言った。
心理掌握は慎重に、尋ねる。

「神、ですか?」

「そうだ。神の奇跡ですら打ち消す。――それはそういったモノだ」

「奇跡……?」

当人の上条は何も言えない。
心理掌握が、続いて訊く。

「あの、私には上条先輩の周りに蠢いている物が視えるのですが」

「私にも見える。拡大しているようだな」

「っ!そ、そうなんですっ。ここのところ、急速に上条先輩に纏わり付く何かが大きくなっていて……」

――マジで?俺初耳なんだが。

と上条は置いてけぼり。

「幻想殺しが、その真価を発揮しようとしているのだ。恐らく――アレイスターの計画の影響か、この時期ならばだが」

「不幸の塊のような物が、幻想殺しの正体なのですか……?」

「違う」

と断言する老人。

「その程度のモノではない。それは、幻想殺しの覚醒段階により生み出されている副産物に過ぎない」

ローマ教皇は、上条の右手を指さした。

828 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/08/13(金) 21:38:19.44 ID:Dwl3Snso [4/9]
「不幸、と言ったな」

強い眼光が心理掌握を射抜く。

「はい。上条先輩は異常な不幸を抱いています」

「だろうな。――何故だと思う?」

「何故、ですか……私は科学的には証明できないと思います」

「言い方が違うな。科学とは別次元に思える、のではないか?お嬢さん」

「……えぇ。学園都市の者としてあまり認めたくないのですが……」

「理解はしている。否、可能性は認めているといったところか」

「仰る通りです」

「ふむ……」

ローマ教皇は顎に手をやって考える素振りをする。
まるで、とあるワードを使わずにどう説明するべきか考えているかのように。
科学とは別の方式を知っていて、それを言わずにどう説明するか考えているように。

「主の恩恵、と言ってわかるか?東洋の者よ」

「……私は無宗教者ですが、十字についてなら知識としてのみ存じています」

「我々は主に感謝し、祈り、支えられて日々生きている」

「はい」

「全てを主に感謝し、時には奇跡すら見せられる。――そして、主より幸運を恵まれている」

ビクッ、と上条は震えた。
それを心理掌握が心配気に一瞥する。

「語弊を承知で言わせてもらいますと……我々は主から幸運を与えられていると?」

「そうだ。だから――」

ローマ教皇は上条を見据える。

「神浄であるほどの幻想殺しは――そんな主の恵みを打ち消している。すなわち、人に平等に訪れるであろう不幸と幸運の内、主より授かる幸運を打ち消しているのだ」

ローマ教皇の言葉が、上条と心理掌握の胸を抉った。
その後、心理掌握はいくつかの質問をしていた。
ありがとうございました、と心理掌握が綺麗に頭を下げるとローマ教皇はその場を去った。
今まで気付かなかったがテッラという人は、近くでこちらを終始観察していた。
相当重要な用があって学園都市に来たらしい。ローマ教皇含む三人はすぐに上条達の前から姿を消した。

829 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/08/13(金) 22:01:42.36 ID:Dwl3Snso [5/9]
「上条先輩、見て下さい」

心理掌握が指さす。
二階の特別展示スペース。

「これは……?」

「古代エジプトの『死者の書』です」

本物じゃないんですけどね、と心理掌握は苦笑する。

「さっき、主……つまりキリストの話がありましたね」

「あぁ。つっても俺は世界史に詳しくないから、あんまわからなかったが」

「そうですか。でも、これは知ってますよね。キリスト誕生で、紀元が変わった事」

そして、と死者の書のレプリカに目を向ける。

「それより前――古代エジプトで有名な死者の書」

心理掌握は説明を続ける。

「あれが『オシリス』。冥界の王です。彼の斜め上の文字は神聖文字で、死者の生前の善行や再生復活のための呪文が記されています」

指が横にずれる。

「そしてオシリスの前に『アメミト』と呼ばれる『心臓を食べる怪物』がいますね」

指がさらに横に。

「死んだ者はここにやって来て、判決を待ちます。これは知恵の神『トト』といいまして、その記録をしています」

その横に。
今度は大きな秤がある。
秤の両側に、また二つの生き物だろうかがいる。

「この秤で、『アヌビス』の方には『羽根』を。ホルスの方には『心臓』をかけます。それで天秤が傾けば告白を偽りとし、怪物に飲み込まれてしまいます。そして――無実となれば人間として再生できます」

天秤からさらに横にずれると、『マート』、そしてその向こう、一番端で死者は判決を待っている様子だ。

「あぁ、上に42人の裁判官がいましたね。……つまりですね」

くすっと心理掌握は上条に笑いかける。


「実際、そんなものなんですよ。科学と違って、それぞれをかけ合わせたら矛盾やらが起こってしまう。何でもありの――〝たかが人間の考えた事〟なんです」


だから、気にする必要ないですよ。と心理掌握は上条に微笑んだ。

830 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/08/13(金) 22:16:35.39 ID:Dwl3Snso [6/9]
その後、美術館を出た。

「もういいのか?」

「ええ、楽しめました」

「そっか……ありがとな」

「え?」

「さっきの死者の書のくだり、俺を励ましてくれたんだろ?でも大丈夫だって。やっぱ俺って不幸なんだなぁって思っただけだからさ」

と上条は明るく笑う。
心理掌握もほっとしたようだ。

「ふふ、そうですね。上条先輩はもう、大丈夫です」

「おうっ」

二人連れだってバスに乗る。

「では次は水族館に行きましょう、上条先輩っ」





水族館に着いた。
時刻はちょうど昼時。
並ばずに入れたのは都合が良かった。
チケットを買い、中に入る。

「ささっ、行きましょー上条先輩♥」

心理掌握が上条の腕に、細い腕をからませてくる。

「うぉっ?」

思わず赤面する上条。

「えへへー」

嬉しそうに上条の腕に抱きつく心理掌握。

「こ、これはそのええっと俗に言う恋人つなぎじゃないですか!?と上条さんは疑問に思ったりします!」

「ふふ、上条先輩?顔真っ赤です、可愛い♪」

うひゃぁっ!と上条は謎の奇声を上げて悶える。
その上目づかいは卑怯だぞ!ていうかお前も顔赤いよ可愛いな畜生!と心の中で上条は精一杯ツッコミを入れた。

833 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/08/13(金) 22:25:57.08 ID:Dwl3Snso [7/9]
そんな二人を、彼らは見ていた。

「……」

「……」

「……」

沈黙。

「……あ、上条動いt」

ビクッ、と即座に尾行する。

「……」

「……」


「……なぁ、お前ら。いい加減、やめね?」


と、垣根は麦野とフレンダに声をかけた。

「はぁ?何言ってんのよこんな楽しいこと放っとけないでしょ!」

と麦野。

「そうよそうよ!そ、それに私には結局上条の監視という任務がある訳なんだから!」

とフレンダ。

「そう、か」

男一人、垣根は野次馬根性丸出しの二人に「やれやれ」と肩を竦ませる。

「なぁによ、アンタ。一番乗り気だったんじゃないの?」

「そうだけどさぁ。なんつーか見てても仕方なくね?」

――ていうか麦野は上条のことが気になってんのか?

――はっ、まさか上条ハーレム建築!?

「ほら、二人とも上条達が動いた訳よ!追う追う!」

「もっちろんよ!」

ハイテンションの二人と対照的に、垣根は嫌な予感しかしなかった。
そう、もしも心理掌握にバレたら……と考え第二位は頬を引きつらせた。

834 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/08/13(金) 22:41:23.92 ID:Dwl3Snso [8/9]
一方、上条と心理掌握はまずレストランに向かった。
レストランで軽食を取り、食後のコーヒーを飲みながら談笑する。
それからガラス張りの水族館を見て回ることにする。

「壮大ですね」

「そうだなぁ。でも横や天井だけじゃなく、下まで水槽だと割れたら怖いなんて思っちゃうな」

「あははっ、それは実際に起きたら大変ですよ。それに、水圧にも耐えらているんですから簡単には割れませんよ」

「それもそうだな……っと」

人込みになっていた。
思わず二人は繋いでいた腕を離してしまう。

「あっ……」

それでもバラバラになるわけではない。
恋人同士でもないのに、この繋ぎ方をしていることは上条にとって少し恥ずかしかった。
だからしばらく上条の手は宙を泳いだ。


一瞬、心理掌握が悲しげな顔をした。


そんな、気がした。
一瞬だったから、見間違いだったかもしれない。

「あははー……混んで来ましたね、先輩」

でも、上条にはそう見えた。

「上条先輩?」


それが、上条の胸を締め付けた。


――あれ……?


「上条せんぱ――きゃっ」

上条は心理掌握の手を取った。
そして、右手でしっかりと握り締める。
驚き顔を真っ赤にして縮こまる少女。
だが上条は、それ以上に驚いていた。
前々から、少しづつ気になり始めていた――。

――もしかして俺、こいつのことが……好きになっているのかもしれない……。

841 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/08/14(土) 01:13:13.80 ID:15IUTMAo [2/9]
夕方――

「夕方からのチケットは安いからいいよなー」

上条と心理掌握は、学園都市内にある観覧車の有名なテーマパークに来ていた。


「……はぅ……」


――ん?

何か変な声を聞いた気がする上条。

「とりあえず景気付けにジェットコースターでも乗りますか!なーんてな!」

「……はぅぅ……ゲコ太……」

「……」

どうやら聞き間違いではなかったらしい。

「えっと……それ、気になるの?」

「ひぇっ!?べ、別に気になってないですよ上条先輩!」

「そ、そうか。じゃぁあのアトラクションから行きま―――――ねえ気になってるよね!?めっちゃ気にしてるよね!?だってさっきからずっとゲコ太のポスター見てるもん!俺の話聞いてないもん!」

「そんなことないですっ、さっ、行きましょう上条先輩!」

「……」

「……」

「と、とりあえずアトラクション周りながらやるか?――そのゲコ太スタンプラリー」

「……はい」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
垣根サイド――

「麦野!心理掌握と上条がアトラクションに向かう訳よ」

「ふっふーん。まっかせなさーい。見ろ!これで変装すれば同じアトラクションに乗ってもバレないわよ!」

麦野が買って来たキャラクター物の帽子とサングラスを広げる。

「入ってすぐみやげ物屋に行くなんて常識が通用しねえな、原子崩し」

「どうでもいいから行くわよ!ホラ、第二位はこの緑の帽子――こら逃げてんじゃないわよ!」

842 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/08/14(土) 01:28:06.70 ID:15IUTMAo [3/9]
「はぁ……はぁ……」

「さーて次は、Bブロックのゴールデンリバーのところですね。行きましょう上条先輩!」

「はぁ……あ、あのさ」

「はい?」

「さっきからスタンプラリーがメインになってない?」

「そうですか?」

「うん。だってアトラクション二つしか乗ってないのに園内はもう三周してるもん!」

さすがは学園都市。
スタンプラリーのほとんどは、周って行けば集められる。
のだが、

「なんでスタンプが移動すんだよ……」

ゴーイングマイウェイ、などというふざけた名前の自立歩行ロボットが最後の二つのスタンプを持っていて、園内を逃げ回るのだ。
それを追って、最後の二つを押さないとスタンプラリーは終わらない。
ロボットは園内の所々にある園内案内電子ボードに、赤い点で示される。
現在上条達がいるのはCブロック。
Eブロックにいるやつを追うより、Bブロックにいるやつを追うことにする。

「あ、でも待てよ」

「はい?」

上条は思い付いた。
今まで三周も追いかけ回して捕まらなかった。
ロボットは不規則に色んなブロックを転々とする。

「なら、一つのブロック内で待ってた方がいいんじゃないか?」

「あ……そうでした」

こんな子供騙しに引っかかっていたのだ。
そう、元々ゲコ太は子供向け。
だからこそちょっと頭を使えば動かないでいれば会える、と気付ける様にされていた。
だが心理掌握はゲコ太に必死になりすぎて、上条を引っ張って走り回っていた。

「急がば回れ、だな」

と、上条が言う。
ふと心理掌握が隣にあるジェットコースターを見つめている。
そして、不思議そうに言った。

「上条先輩――今垣根の声が聞こえたような」

843 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/08/14(土) 01:47:02.48 ID:15IUTMAo [4/9]
垣根サイド――

「ふー、いやぁ最高だったな!」

ジェットコースターから降りて来た垣根は晴れ晴れとした顔をした。
一方。

「おぇ、気持ち悪い……」

「うぷっ……無理、マジ無理。……畜生ォォ!こんなジェットコースターなんざぶっ壊してやる!」

「んだよだらしねえなぁ」

同意を得られず、垣根はつまらなそうに階段を降りる。

「あ?」

ウィーウィーン、とわざとらしいロボット特有の機械音を出しているロボットを発見。

「常識が通用しねえ……」

メタリックなそのフォルム。
野球ボールみたいな瞳。
動く度に鳴る機械音。

――か、かっけえじゃねえか。

垣根の頭に『捕獲』の二文字が浮かんだ。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「いいぜ!てめえがスタンプ集めたがる女の子から逃げるってんならまずはその幻想を――」

――いた!

上条はメリーゴーランドの柵を駆ける。

「――ぶち殺す!」

予想外の位置から迫る上条に、ロボットは対応できない。

「もらったぁぁぁ!」


「俺の未元物質から逃げられると思うなよォォ!」


「ってえぇえええ!?垣根!?」「か、上条!?」

二人は勢いを止められず、そのまま羽を生やした垣根を――上条の拳が撃ち抜いた――。

844 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/08/14(土) 02:02:17.06 ID:15IUTMAo [5/9]
「いやぁ、スマンスマン!俺は一応尾行なんてやめようと言ったんだぜ?」

「まぁいいけどさ」

上条は垣根と合流し、心理掌握の待つ電子ボード前に向かう。
ロボットは垣根が引きずっている。

「お、いたいt……」

「ん?あれh……」

心理掌握がいた。

その眼前に――

麦野とフレンダが土下座させられていた――。


「え、えぇっとぉ……何があったんですか?と上条さんは状況が理解できないのですが」

「あ♥上条先輩♪」

――その笑顔がこええよ!なんだよ!なんであの麦野が土下座してんの!?

「あ、あのね上条私たち脅さr」

オドオドと上条に救いを求めようとするフレンダ――が、心理掌握の二コリという笑顔で固まる。

「お、おい麦野?」

とフレンダはいつもあんなキャラなのでスルーする上条。

「言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで」

「怖っ!なんか麦野さんが大変なことになっているんですが!?お前本当に何したんだよ!」

「やだなぁ上条先輩。――デートを尾行されて頭にきたので、ちょっと二人の心の中を上条先輩に教えてあげようかなーって言っただけなんですよ?」

その言葉に麦野とフレンダがビクッ!?と反応する。

――あぁ、なるほど。

と上条は納得した。
心理掌握は自動的に半径5メートル以内の人の思考が読み取れる。
大抵上条と一緒にいるため、上条の右手でその領域が消されてたが、上条と離れればそれが復活するのだ。
誰しも心の中は暴露されたくないだろう。

「さて上条先輩、二人で観覧車に乗りましょー♪残りのスタンプはこの二人が集めてくれるので♥――ね?」

笑顔の心理掌握に、麦野とフレンダはこくこくと頷いていた。

847 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/08/14(土) 02:16:37.23 ID:15IUTMAo [6/9]
夜――

ライトアップされた学園都市を一望できる観覧車。
夏休みということもあり、大勢のカップルがいる。
長い間並んで、ようやく上条と心理掌握は観覧車に乗れた。

「わぁっー。きれいですねぇ上条先輩」

「おぉ……凄いなこの景色は」

色んな事があった。
嫌なことも、辛いことも、悲しいことも。
そんな学園都市だが。
それ以上に――楽しかった。

「俺、この街に来て良かったよ……」

「ふふ、そうですね。私も来て良かったです……か、上条先輩と、そのぉ……出会えて」

――ッッ!

薄暗い一室。
ライトアップされた景色。
恥ずかしげに頬を染める心理掌握の少女。
たった二人だけの密室。
上条の心臓がバクバクと鳴り響く。

「……いいシチュエーションですよね。私が、その……子供っぽい夢見ちゃってるからなのかな。あはっ」

「こ、こういうシチュエーションが……か?」

「はい……」

しんと静まる。
でもお互い、顔を真っ赤にして胸を高鳴らせていた。
花火が上がる。
同時――。


「上条先輩……!わ、私!先輩のことがずっと好きでした!大好きです!私と……!」


言い終える前に――上条が心理掌握を抱き寄せる。

そして――キスをした。

「俺も――お前のことが好きだ。――ずっと一緒にいてくれ」

大きな花火が、夜空に咲いた。
永遠にこの時が続けばいいのに――二人はそう思った。

849 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/08/14(土) 02:30:55.19 ID:15IUTMAo [7/9]
その後、出口では麦野とフレンダと垣根が待っていた。

「ほら集めて来たわよ!これでチャラ!」

そう言って麦野は、心理掌握にスタンプカードを渡した。

「あ♪」

嬉しげにそれを見る心理掌握。
周りで警備員がドタバタと走り回り、「ロボットが下半身と上半身真っ二つにされてるじゃん!犯人を追うじゃん!」と息巻いているのは無関係だと――上条は思い込むことにした。

「とりあえず上条よぉ」

垣根がニヤニヤしている。

「な、なんでせうか」

――ば、バレてる!?さっきの観覧車の一件を垣根は知っているのか!?

だが知っているのかは垣根ははぐらかし、

「みんなでもう一回観覧車乗ろうぜ!」

と上条、心理掌握、麦野、フレンダ、垣根は一室にギュウギュウ詰めで乗ることにした。


「ギャー!垣根私の服踏んでる!」

「あん?んなこと知らねえよ!うっわ高けえ!写メってメジャーハートに送ってやろっと!」

「きゃっ」

「おっと。大丈夫か?俺に捕まっとけ」

「はい……上条先輩」

「てめェェらイチャついてんじゃねえぞォォォ!」

「ギャー!麦野暴れないでぇー!」

「バッカやろ!原子崩し!常識が通用しねえようだな!ん?なんかミシミシいってね?」

「キャー!ホントに落ちる!上条先輩助けて!」

「バッカ辞めろ!麦野!と垣根も同調すんな!」

その後、五人は警備員に怒られたとさ。
それから五人で食事をして買い物をして、デートは終わった。

【ドキ☆怒気?デート編――終了――】

850 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 02:36:27.50 ID:15IUTMAo [8/9]
や、やりきった…書くべき伏線は書ききったぞこんちくしょー
後はどんどん進めて行くだけだ

次からは、三年前の話の最終決戦【神の奇跡編】を書いて行きますー

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