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心理掌握「うそ・・・上条先輩生きてたんですか!?」上条「?」3

心理掌握「うそ・・・上条先輩生きてたんですか!?」上条「?」

心理掌握「うそ・・・上条先輩生きてたんですか!?」上条「?」2

612 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/06/30(水) 17:47:33.89 ID:e6.ubGco [2/7]
沙耶サイド――

小羽を握りつぶした。

「(よし、未元物質に対応できてる!これなら勝てる!)」

垣根帝督にも勝てるはずだ――研究者は沙耶にそう言った。
垣根は霞の手に驚いている。
沙耶は手を休めず、霞の手を操作する。
今度は垣根に向かい、その指を広げる。

ギイン!!

音とともに垣根にその力がぶつかる。
だが、垣根を中心に展開される未元物質がそれを防ぐ。
押し潰すように重力の力を上下左右様々な方向から操作する。
重力と未元物質の拮抗は、やがて空間を歪ませる。
熱で空間を焼いているかのように、垣根を中心にした球体が浮かび上がる。

「チッ」

垣根は自身がボールの中に入っているかの状況で、舌打ちをした。
ミシミシと音が立つ。

「空気中に展開している未元物質。攻撃には使えないんだよね?使えたら見えない物質で攻撃できることになるし」

「だから何だってんだよ。防御には使えてんだ」

「その防御、いつまで持つかな?」

ミシミシ。
空気中に展開している未元物質はどんどん消し飛ばしているだろう。
背から伸ばしている二枚の羽も、同じように。
沙耶はその様子を見ながらピアスの無線機に触れる。
片手は垣根に構え、握りつぶすように霞の手と連動させる。

「(アレイスター見てる?)」

『垣根帝督の羽か』

アレイスターが見ているのは垣根の様子。
二枚の羽が、怒り狂うように振動している。
これは沙耶の力によるものではない。

『窓のないビルの前で、案内人と対峙した時にもその現象が起きた』

「(これが、レベル6の鍵なんでしょ?)」

613 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/06/30(水) 18:05:05.68 ID:e6.ubGco [3/7]
『そうだ』

上条当麻の事故。
それを仕組んだ理由はそこにある。
垣根帝督へ深い悲しみと怒りを与え、その能力をさらに開花させる。
そうすることで、スペアプランである垣根帝督はレベル6に近付ける。

「くっ…」

沙耶は指先に痛みを感じる。
抵抗が強い。
垣根が羽を羽ばたかせ、重力の力に反発している。
アレイスターが見ていることはわかったため、通信を切る。
ふと横目に黒いヒールの少女を見る。
大量出血の状態だ。このまま放っておけば確実に死ぬ。

「(助けてあげたいけど…ここを動くわけには…)」

片手でポケットの中にある携帯電話を操作する。
短縮ダイヤルで電話をかけ、ワンコールで切る。
緊急呼び出しの合図だ。
これでGPSを辿って仲間が着てくれる。
改めて垣根相手に集中しようとした、
そのとき、

「貴様ら!何をしている!」

一人の少女がこちらに歩いてきた。

「なっ」

黒い長い髪。おでこが出ていて、豊満な胸。
沙耶は知っている。彼女は上条当麻の学校の生徒だ。
驚いたのはそこではない。
現在、街中は黒い絨毯が伸びている。
その沙耶の力に触れれば自動的に意識を飛ばせるはずだ。
なのに少女はこちらに歩いてくる。

「確か…名前は吹寄制理(ふきよせ せいり)だっけ?」

「私を知っているのか」

吹寄はこちらに堂々と歩いてくる。その身なりは中学校の制服。そして、鞄。

「くっはは、なんだそりゃ?ドラえもんか?」

垣根が吹寄を見て笑う。
少しして、沙耶はその言葉の意味に気付く。
吹寄はわずか数センチ、地面から浮いて歩いていた。

614 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/06/30(水) 18:27:21.17 ID:e6.ubGco [4/7]
そして、吹寄は叫んだ。

「私は対暗部、雨蛙の一人だ!即刻戦いを中止しろ!」

「(対暗部?そういえば五人いるんだっけ。マズイな。この状況は)」

吹寄が拳を構える。

「(何をする気?)」

直後、衝撃が走った。
沙耶は霞を引き戻すわけにもいかず、両手でそれを防ぐ。

「ぐぁっ!」

そのまま宙に飛び、背後に吹き飛ぶ。

「念動力(サイコキネシス)かぁ…」

だが、そこまでの威力ではない。
レベル3程度だろう。
さらにサイコキネシスで自身の体を浮かしているのだ。
そこまで力が出せるわけでもないだろう。
吹寄は今度は片足を下げる。
浮きながらもバランスを取っていて、地面に地をついているかのように軽やかだ。
足を振り回し、斜め下から宙を蹴り上げる。
学校指定のローファー靴が飛び出す。
サイコキネシスの応用だろう。
それは本来の靴飛ばしとは比べ物にならない速度で撃ち出される。
今度こそ霞を呼び戻す。
霞の手は、垣根から沙耶の眼前に飛び出す。
指を広げるまでもなく、ローファーが霞の手に触れると、電撃が流れ、ローファーは消し飛ぶ。

ゾク!!

直後、沙耶の背筋に冷たいものが走った。
振り向くとそれは、垣根の邪悪な笑み。
開放してしまったのだ。

「くっくく!さぁてお返しの時間だなぁ!」

垣根がその羽を羽ばたかせ、こちらに向かう。
吹寄は再び、今度はもう片方の足を構える。
蹴り上げ、その靴を飛ばす。
それは正確に垣根の顔面を狙っている。
垣根は方羽を操作してそれを防ぐ。
その瞬間を狙い、吹寄が動く。

「はぁあああっ!」

615 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/06/30(水) 18:49:16.35 ID:e6.ubGco [5/7]
念動力で自身を砲弾のように飛ばす。
それは一直線に垣根に向かう。

「はっはぁ!無謀な特攻だな!」

吹寄の拳が垣根の羽にぶつかる。
念動力で体全体に膜を張り、その拳で羽に打ち込んだ。

「っ!?」

だが、羽はびくともしない。

「だめだな。そんなレベルじゃどう足掻いても話にならねえ」

目を見開く吹寄。
正体不明の爆発が、吹寄を襲う。

「きゃ、あぁあああああ!」

爆煙が立ち昇る。
その時には既に、垣根の羽は沙耶に向かって伸びていた。

「くっ、っとと」

沙耶は霞の手を操作し、その指を広げる。

ギイイン!!

重力を真横に発生させ、それで防ぐ。

「重力とはいわば重さを生み出す力よ。それが操れる私は擬似的に第一位に近い力を操れるわけ」

これで、垣根を倒せる。

「様々な力を操れる私と、存在しない物質を操れるあなた。どっちがつよ――」

そこで沙耶の言葉は止まった。
垣根の様子がおかしい。
怒り、怒り、怒り。
それが如実に現れていた。
二枚の羽はピリピリと震え、黒い地面を抉る。

「あぁ…もうい、てめえは黙ってろ…殺してやる殺してやる殺してやる」

静かな怒り。
二枚の羽は千切れそうなほど振動し、

背中からさらに二枚の羽が飛び出した。


616 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/06/30(水) 19:23:57.76 ID:e6.ubGco [6/7]
「ちょ、っとマズイかも…」

冷や汗をかくも、垣根の成長にレベル6の可能性を知る沙耶。
シュッ、と空気を切る音がする。
暗部のテレポーターの少年と精神操作の少年と赤いドレスの少女だ。

「……メジャーハート?てめえ?」

垣根が赤いドレスの少女、メジャーハートを睨む。
メジャーハートはその視線に嘆息し、恨めしげに沙耶を見つめる。
沙耶は「あはは…」と引きつった笑顔を浮かべる。すると嫌そうな顔でメジャーハートは垣根に向かう。

「ええ、そうよ。あなたの暴走を止めに来たの」

「てめぇ!!」

ガキン!!

「残念ね。これで終わりよ。今あなたの攻撃が向かう人間は全て、大切な幻想殺しと同じ尺度にあるわ」

「くっそが!!邪魔をしてどうなるかわかってんだろうなぁ!?」

「あなたに歯向かうつもりはない。話を聞いて、今は静まって。お願い」

「チッ!」

苛立たしげに背中の四枚の羽をしまう垣根。
その様子にメジャーハートはほっと胸をなでおろす。

「ありがと~助かったよぉ~」

沙耶はメジャーハートに抱きつこうとするが、軽くかわされてしまう。

「私にそっちの気はないって言ってるでしょ」

「むぅ」

沙耶は霞の手と黒い絨毯を消し、精神操作系の少年に後処理を頼む。
テレポーターの少年と一緒に、黒いヒールの少女へと駆け寄る。
酷い状態だった。もはや虫の息である。

「…大丈夫…よ。私が、いい病院を知っている…」

爆発させられた少女、吹寄がこちらに歩いてくる。
その体はあちこちに傷や火傷があるも、サイコキネシスの応用で身を守ったのだろう。
吹寄は黒いヒールの少女を優しく抱き上げ言った。

「“先生”なら治してくれるから、一緒に来なさい…」

626 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/07/03(土) 22:25:25.27 ID:vTxV53co [1/2]
「上っ条ぉおおおおおおお!」

病院を出た上条の眼前に、羽ばたく人間が飛び込んできた。

「ぎゃぁあああっ」

思わず避け、それが垣根だと気付く。

「ごはぁっ!が、ぐぁ、げあっ」

垣根はそのまま勢いを殺せずに花壇にぶつかり、何バウンドもして壁に激突した。

「お、おい。大丈夫か!?垣根!」

「が、がが。…ふ、さすが上条だぜ。荒んだ気持ちな俺の飛び込みすらかわしておきながら、地に伏す俺に手を差し出すとはな」

フッ、とキザっぽく笑う垣根。

「いや悪い、反射的に体が避けてた。つか、なんであんな派手に転がって怪我してねえんだよ、お前」

「ま、レベル5ってのはハリウッド並に迫力があるってことだ。ほら、敵とかでさ、いるだろ?能力以外も理由なしに強ええやつ。カァンケイねェェんだよォォォ!とか言ってな」

「いや、わからんが」

「そうか?ま、いいや。とっころで上条、随分と明るい顔になったじゃねえか」

「ん。悪いな、心配かけて」

「ハッ!んなこと全く気にする必要ねえな!」

「お前は優しいな。ホント、悪かった。自分を見失ってた。情けねえよな、心理掌握とかにさ、好き勝手言っておいてこんなザマじゃ」

「何言ってんだ」

垣根が真顔でそう言う。
え?と上条が驚くと、垣根が当たり前のように言った。

「お前はただの人間だろ?この世に理想で塗り固められるほど完璧な人間なんざいねえよ。どうしてお前が全て正しくし、全て背負って、全てにおいて泣き事を言っちゃいけねえんだよ?そうじゃなきゃ人に言葉を投げかける資格もないって言うやつがいたら、そんなクソ野郎の言うことを聞く必要はねえよ」

「そっか、そうだな…」

「おう。とりあえずここにいるってことは、クラスのやつと話せたんだろ?」

「ああ」

「そいつは何て言ってたよ?いや、恥ずかしくて言えねえか。でもきっと、ウチのクラスのやつならお前を認めてくれてたんだろ?」

「ああ、そうだったよ」

627 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/07/03(土) 22:50:02.65 ID:vTxV53co [2/2]

――麦野沈利編――

「にゃー、そんなことがあったなんて知らなかったぜよ」

「全く、このロリコン野郎はてんで情けねえなっ。上条の大ピンチだったんだぞ!」

「まぁまぁ、秘蔵のロリ本今度貸してやるから機嫌直すんだぜい、垣根」

「いや俺はそんな特殊性癖ねえし……はっ、いや違うぞ上条!決して上条のことを馬鹿にしたわけではないからな!」

「って!なんで俺が公式(21)設定受けてんの!?違うからね!?上条さんは普通に年上のお姉さんが好きだからな!」

「にゃははーツンデレツンデレ(笑)、全く萌えないにゃー」

「どっこがツンデレだこの見た目ヤンキー!」

「いやいやカミやん、オレはこの格好に特別な意味を持ってるんだぜ」

「なんだよカミやんって」

「あだ名だぜい」

「あだ名、だと…?友達っぽくていいな」

一人、垣根が羨ましげに土御門を見る。

「で、なんだよ意味って」

垣根は放置して上条は話を続ける。

「フッ、聞いてくれカミやん!実はな、なんか不良っぽいほうが女の子にモテそうだと思ったからだにゃー!!」

「って、全然大したことねえじゃねえか!言っておくがな、そんなド金髪でアロハ上半身露出に声かけてくる女の子なんていないからね!?」

「にゃー!そんなことないんだぜい!今はムサい男しか声かけて来ないが、そのうち街を歩けばきっと声をかけられるんだぜい!」

「それ違う方向にモテてるから!お前の筋肉にソッチの人達が寄って来てるだけだから!」

「にゃにぃ!?オレにショタ属性はないぜよ?」

「もう駄目だこいつ」

上条は土御門の思考回路の酷さに落胆する。
ふと、帰り道で一人の後ろ姿を見かける。

「お、心理掌握じゃねえか。おーい!」

金色の綺麗な髪をなびかせ歩く心理掌握の少女に、上条は手を振って声をかけた。

639 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/07/12(月) 01:13:18.84 ID:B3WR9Iko [1/2]
「あ、上条先輩」

心理掌握は探し物を見つけた子供のように、顔を輝かせた。

「よっ、今帰り?」

「はい。上条先輩もですか?」

「まぁそんなとこ」

「にゃー、この美少女誰ぜよ?」

土御門が首を傾げる。

「心理掌握だよ、俺と同じレベル5」

そう言ったのは垣根だった。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


麦野沈利は一つの椅子に座っていた。
椅子は部屋の中央に位置し、部屋自体は洋風の造りで日の光を取り込んでいる。

「……」

彼女が手に持つのは一枚の紙。
そこにはこう記載されていた。

第一位、一方通行
第二位、未元物質
第三位、未知源発
第四位、原子崩し
第五位、心理掌握
第六位、最大原石

「第五位が死んで、繰り上げか…」

AIM保護は、厄介な能力だった。
麦野は正直、苦戦する相手だと思っていた。
だが、そのAIM保護が死んだ。

「あとは、計画の要である幻想殺しと心理掌握。こいつらを殺せば、アレイスターに…」

ギリッ、と奥歯を噛み締める。

「絶対にぶっ殺してやる…そうして、私は…ッ!」

手に持つ紙を、握りつぶした。

640 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/07/12(月) 01:24:20.94 ID:B3WR9Iko [2/2]
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「そんなことが…?」

「ああ、まぁこの通り、もう安心していいがな」

心理掌握の私は、垣根帝督から上条先輩の話を聞いた。
そして、垣根がその仕返しに第三位と一戦交えたことを。
私たちは公園にいた。
上条先輩と土御門は、自動販売機に行っている。

「でも、よく私のところに来なかったわね」

「あん?なんでだよ?」

「だって、一番怪しいのは私じゃない。精神の総てを操れる能力なのよ?真っ先に疑うべきなんじゃないの?」

「はっ、バーカ」

垣根が心底馬鹿にしたような顔をする。
ムカつく。

「な、何よ」

「お前が上条をどうこうなんてする訳ないだろうが」

「…それって信用してくれてるってこと?」

「上条に関してはな」

「……」

「俺たちは、上条の仲間だ」

「……仲間?」

「そうだ。上条を中心にした一つのグループ、それが俺たちだ。俺、お前、フレンダ、とな」

「以外ね、上条先輩以外なんて人間として扱わないと思ってたのに」

「俺がそんな奴に見えてたのか?」

「そうとしか見えなかったわよ」

「ふ、そうか…得てして他人の心の中なんてわからないものなんだな」

「あ、ツンデレってやつだったの?」

「……そうかもな」

676 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga sage] 投稿日:2010/07/27(火) 19:38:10.81 ID:P3w.iS6o [1/12]
垣根サイド――

心理掌握は言った。

「上条先輩に纏わりつく何かが……日に日に肥大化している気がする」

それは、垣根帝督には見えない物だった。

「どういうもん何だ?」

「不幸を表すような、どんよりした感じで…」

「右手が発生源か?」

「おそらく、ね」

取り除くことはできないのだろう。
上条は言っていた。
この右手の力は、生まれつき持っていたものだと。
ならば仕方ないのか。
だが、

――上条を苦しめている元凶が、より濃くなっていくのは何故だ?

垣根にはそれがわからなかった。
どうしてこのタイミングなのか。
そして、何が起ころうとしているのか。
時は流れて行く。
垣根、心理掌握、フレンダ、上条、そして土御門。
彼らの日常は平穏に過ぎ、
夏休みがやってきた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
上条サイド――

始まりは、唐突だった。

「なっ!?」

一つの建物が、燃えていた。
全焼確実であろう。
二階建ての洋館らしき建物だ。
火は建物を包むように唸る。

「何が起こってんだ…?」

上条はその様子を群衆の中から見ていた。
偶然通りかかったストリート。
消防は未だ到着しない。

677 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga sage] 投稿日:2010/07/27(火) 19:48:50.36 ID:P3w.iS6o [2/12]
「きゃあっ」

少女の悲鳴が聞こえた。

――中にまだ人がいるのか!?

消防は未だ到着しない。
それどころか警備員も未だ。

――なんでだよ!?これだけ火が回ってんだぞ?なのに何故到着しない。

上条は珍しく一人だった。
垣根は用事があるらしく、ここにはいない。
帰り道だったので、護衛のほうは大丈夫だろうと。

「フレンダー!いるか!?」

上条は声を張り上げた。
騒ぎを聞きつけた人々の中で、その声はあまり響かない。

「っ、お、おいあんた!」

「な、なんだよ」

「消防と警備員呼んでくれ」

上条は近くにいた男子中学生に言った。

「はっ、何言ってるんだか。もうとっくに連絡したさ!」

――連絡した?確かにこれだけの人がいれば、誰かしら通報するはず。

だが、風紀委員すらいない。

「なん、で。誰も来ないんだよ…」

「知るかよっ」

風で炎が揺れた。

「くっそがっ」

上条は居てもたってもいられず、炎の洋館に向かって走り出した。

「お、おいあんた!」

誰かが止めようとした。
だが上条は止まらない。
建物はもはや火の海だった。
上条はそこに身一つで突っ込んだ。

678 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga sage] 投稿日:2010/07/27(火) 19:57:54.95 ID:P3w.iS6o [3/12]
フレンダは上条の監視役だ。
そのフレンダすらいなかった。

――何故だ?

垣根は用事でいない。
フレンダは何故かいない。
警備員は、消防は、救急車は、風紀委員は、そのどれもは、何故来ない?

「くっそが!」

炎に躊躇している暇はない。
こんな火の海に、取り残された子がいるのだ。

「っつぁあ!」

焼け焦げた入り口。
扉を蹴り飛ばして建物に侵入する。
熱気が上条の肌を焼いた。

「ぐ、ぁああ」

息も吐かせぬほどの、灼熱地獄。

――こんな中に人がいるのか!?

その様子を想像し、背筋が凍った。
喉が干上がるなんてレベルではない。
炎に触れていなくても、火傷になりそうだ。
煙は立ち込むし、それを吸ったら一大事だ。
だが、姿勢を低くしても床からも火が立っている。

「く、あぁあ――」

パキン!

「えっ――」

暴れる炎が、上条の右手をかすった。
それで、

炎が消し飛んだ。

「これは…能力者ってことか?」

試しに他も触れてみる。
どの炎も呆気なく、消し飛ぶ。
つまりは、

――人為的な火事ってことかよ!

679 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga sage] 投稿日:2010/07/27(火) 20:10:06.61 ID:P3w.iS6o [4/12]
それはもしかしたら、一つのダンジョンにも思えたかもしれない。
進んでは炎を消し、洋館を進んだ。

「ゴホッ…!おほっ、が、はぁ…・はぁ…」

煙を思わず吸ってしまい、何度もむせた。
上条は煙を自分から吸おうとする喫煙者が理解できないと思った。

「ゴホッ…おっほ…はぁ…階段か…」

一階の部屋という部屋は探したが、誰もいなかった。
煙で失神していたり、声が出せなかったら困るので全ての部屋を隈なく探したのだが、誰ひとりいなかった。

――そういやあの悲鳴は二階から聞こえたな。

メラメラと燃え盛る階段。
上条は一つ一つ、火を消しながら進む。
焼け焦げた木製の階段は、場所によっては一段消し炭になっていたりする。

「おわぁっ!」

不幸な上条はそのせいで、三度ほど躓いてしまった。
二階に上がると、そこはもう部屋が視えなかった。

「くぁっ…!」

視界一面に映えるのは、灼熱の炎。

「邪魔だ!」

パキン、と音を立てて炎が消し飛ぶ。
そこにいたのは、


「はっあーい幻想殺し、元気ー?」


一つの椅子に悠々と座る、麦野沈利。


「ふん、やはり来たか」


この前の襲撃の時の、レベル4相当のパイロキネシスト。

そして、

「うぁ、あぁぁあ…」

柱に縛りつけられた、一人の少女――吹寄制理だった。

680 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga sage] 投稿日:2010/07/27(火) 20:41:52.32 ID:P3w.iS6o [5/12]
吹寄制理と上条は、特別仲が良いわけではなかった。
風紀を順守しようとする吹寄と、風紀など気にかけない上条。
あまり他人と関わらないようにしていた上条も、吹寄制理のことは知っていた。

『また貴様か』

ちょっとした事故で上条が学校のガラスを割った時、吹寄はため息を吐いた。

『へーへー、すみませんねえ。危ないからとっとと行けよ』

上条はガラス片を片づけながら言った。

『ふん、貴様に命令される覚えなどないわよ』

そう言って吹寄は自分のクラスに入って行った。
やれやれ、と上条が肩を下ろすと、

『上条当麻』

戻って来た吹寄が相変わらずの不機嫌そうな顔で声をかけてきた。

『ほら、それじゃ手が危ない。これ使いなさいよ』

教室から取って来たのは、チリトリと小さなほうき。
吹寄はその場にしゃがみ込むと、ガラス片を集め出した。

『わ、悪い』

『全くだ。こんな状態にしていたら、誰か怪我してしまうかもしれないじゃない』

『そうだな…』

『……ねぇ』

『んだよ』

『なんでガラス割ったの…?』

『はぁ…なんですか、吹寄センセーは俺がわざと割ったとでも?』

『あ、あたしは…別に…』

吹寄があの日、何を言いたかったのかなんて上条にはわからなかった。
だが、それでも吹寄と仲が良いとは思えなかった。
それどころか、自分は嫌われていると上条は確信していた。
でもそれも、関係なかった。

「おい、てめぇら!吹寄に何してやがるんだ!」

一人の少女を、助けようとすることに――何の関係もなかった。

686 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga sage] 投稿日:2010/07/27(火) 23:06:56.95 ID:P3w.iS6o [8/12]
「別に、大した理由じゃないわよ」

麦野が脚を組みなおして笑った。
にっこりと、笑った。


「あんたを殺したいだけ、よ。幻想殺し」


その言葉だけでわかった。

「そんなことの為に、吹寄を人質に取ったのか…?」

「うーん?ちょっと目障りな連中だったてのもあるんだけど」

「目障り?」

「はっ、これから死ぬあんたに教える必要なんかねえわよ」

上条は柱に縛られている吹寄を見遣る。
所々服は焼け焦げていて、健康的な肌には傷が走り、血が滴っている。

「…なによその眼は。随分と気に入らなそうね」

「当たり前だろ」

麦野を上条は睨んだ。

「なんでコイツなんだよ!関係ねえだろ!?」

「はっ、別に誰だっていいのよ。あんたさえ来れば」

「だったら俺を直接呼び出せよ、直接俺に向かって来いよ」

「はぁ?それができたらしてるっつーの」

「……垣根か」

「正ー解っ」

「あいつには勝てないからか、あいつが…俺の護衛をやっているから、だから」

「おっと」

麦野の目が細くなる。

ガンッ、とヒールで床を叩いた。


「あんま調子こいたこと言わないでよ?てめぇはこれから私に黙って殺されてりゃいいんだから」

688 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga sage] 投稿日:2010/07/27(火) 23:24:00.82 ID:P3w.iS6o [9/12]
「くっ……」

縛られている吹寄が呻いた。
思わず膝を動かす上条。

「おっと、動くんじゃないわよ?こいつが人質でもあるってこと、まさか分からない訳じゃないわよね?」

「っ、くっそが!」

「さってと、これからあんた殺すから。あ、もしもその右手で防御したら――こいつ殺すからね」

「ざけんな!」

「黙って殺されてくれればいいのよ」

「…お前らが約束を守るとは思えない」

「約束?…あっははっ!約束じゃないわよ。これは命令。わかるかしら?あんたが私の攻撃を受けなければこの女を痛めつける。それが嫌なら、死ね。けどあんたが死んでもこいつを逃がすわけでもない。どの道あんたに選択肢はないの」

「……」

グッ、と上条は右拳を握り締める。

「あっはは!イイ眼してるわね。ざまぁないわ!悔しいでしょう?悔しいだろぉ?でも死んじまうんだからよっ!」

「……お前、無抵抗の人間を殺して恥ずかしくねえのか?」

「ハズカシイ?はぁ?なぁーに言ってんのよバァーカ!あんたには何が何でも死んでもらわなきゃ困るのよ!今さら正々堂々としろってか!?」

「……はっ、それでレベル5ねえ」

「あん?」

「俺なんかただのレベル0だぜ?精々この右手で防御することしかできない…だが、てめえはレベル5じゃねえか!そんな力を持っておきながら、てめえに超能力者としてのプライドはないのかよ!」

「…ナメたこと言うんじゃねえわよ」

「ナメられるような行動取ってるお前が何言ってんだ」


「ああ!?てめぇ調子こいてんじゃねえぞ!!まるで私があんた相手にビビってるみたいじゃねえか!!レベル0如きが図に乗んじゃねええぞォ!!」


「だったら、一対一で、かかって来いよ」

上条は人差し指を揺らして挑発する。
大きく息を吸い込み、宣言する。


「人質取ってなぶることしかできねえ三下が!人質取らなきゃレベル0一人殺せねえってのか!?ザコ野郎が!!」

689 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga sage] 投稿日:2010/07/27(火) 23:38:55.88 ID:P3w.iS6o [10/12]
「……」

それは、麦野を挑発するにはもってこいのセリフだった。

「……イマ、ナンテ言ッタ?」

「人質取らなきゃレベル0一人殺せねえのかって言ったんだよ!!」

「……」

「てめえの実力が足らねえ、ザコが!三下ってな!!」

「……」

「……」

「…オーケィ、わかったわかった。…あー、ゴメン私キレちゃったわ。もうプツンてね。……悪いわね、あんたその女には手ぇ出さないでね」

「わかった」

麦野の後ろに控える男が、了解した。
男は吹寄から離れるように部屋の端に移動する。

「……」

「……やッすい挑発だってわかってんだけどさぁー、んじゃあんた」

ガンッ!と椅子から飛び降りる麦野。

ニィタァア、と化物のように口を裂けて嗤い、


「ブ・チ・コ・ロ・シ・か・く・て・い・ね」


ゾクッ!!

上条は今度こそ、心臓が止まるかと思った。
それほどまでの、恐怖。

「ッッ!…あぁいいぜ、かかって来いよ」

精一杯の挑発をかける。
喉が涸れる。それほどまでのプレッシャーが上条を襲う。

「レベル5の原子崩しをナメてんじゃねぇぇぞォォ!!家畜がァアア!!」

「……ッ!」

原子崩しが、動いた。

690 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga sage] 投稿日:2010/07/27(火) 23:56:13.69 ID:P3w.iS6o [11/12]
麦野サイド――

少女は何でも手に入った。
幼少から、お嬢様として育てられた彼女に、手に入らない物などなかった。
ぬいぐるみでも、可愛いお洋服でも、なんでも。
彼女は恵まれていた。
それは財力だけではない。
才能。
勉学、スポーツ、その他なんでも、彼女は他人より優れていた。

「お前は天才だな」

父はいつでもそう言って笑った。
笑って、彼女の頭を撫でた。
でも彼女は知っていた。
ピアノで少しでも失敗した時、赤くなるほど手を叩かれたことを。
あの優しい顔を、鬼のように変えて自分を叱る事を。
だから彼女はいつだって全力を尽くした。
いつだって、全ての一番に君臨した。

「沈利ちゃんと仲良くしたいなって」

一人、また一人と彼女の周りに集まった。
彼女はそいつらを、群がるハエだと心の底で笑った。
名家の一人娘に近づこうとしている、意地汚い奴らだと。

「お前は他の人間を見下すべきなんだよ――」

父はそう言って笑い掛けてきた。

「――私がそうするようにな?」

化物のような、邪悪な笑顔で父は彼女に嗤い掛けた。
それが、彼女の道標で。
彼女の全てで。
だから、その少女と出会っても、彼女は心を許したりなどしなかった。

「おっはよう麦野!」

学園都市に入った後の話だ。
馴れ馴れしくひっついて来た少女がいた。

名前は、フレンダ。

「うっざいわね。くっ付かないでよ暑苦しい」

「えー、麦野ったら冷たいなぁー」

フレンダと出会ったのは、一つのファンシーショップ。
彼女――麦野沈利と、少女――フレンダは、それ以来よく一緒にいるようになった。

695 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga sase] 投稿日:2010/07/30(金) 01:41:53.85 ID:nFNfocco [1/5]
「麦野ってさ、ぬいぐるみ抱いてる時可愛いよね」

「なっ」

ふとフレンダがそんなことを言った。

「なぁに生意気言ってんのよ」

「あ、お世辞とかじゃない訳よ?」

「ふん、どうだか」

出会いがファンシーショップだったため、二人は今日も一緒にファンシーショップにいた。
初めて会った後、他の店でも何度かばったり遭遇し、今では一緒に出かけるようになっていた。

――ま、学校の連中と違って媚び売って来ないから楽でいいけどね。

んっ、と麦野は伸びをする。
ぺた、とフレンダが麦野の胸をタッチした。

「……なに堂々と痴漢してんのよ」

「いや、隙ありだったから」

ゴンッ、と麦野の拳がフレンダの頭を叩いた。

「いたぁっ!…うぅ…縮む…」

「縮め縮め、蟻みたいに這いつくばれバァーカ」

「縮む……麦野の胸みたいにぺったんこに…」

ゴンッ、ゴンッ。

「がきゃっ!」

「なぁーにか言ったかしらー?」

「い、いえ!何でもないです!」

「私はこれからだっつの!まだまだ成長期なんだからね!?」

「……結局、思いっきり聞こえてた訳ね…」

「……ったく」

麦野はぺたぺたと自分の胸に触れてみる。

――うーむ、ちょっと不満。でもま、高校生くらいには大きくなってるでしょ。

696 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga sage] 投稿日:2010/07/30(金) 02:01:11.60 ID:nFNfocco [2/5]
学校では退屈に過ごし、休日にはフレンダと二人でショッピング。
口では何だかんだと言いつつも、麦野はそれを楽しんでいた。
こんな日々も悪くないと、少しだけ思っていた。

けれどそれは、突然起こった。

「父が……死んだ?」

その知らせを聞いたのは、学校の寮だった。
時刻は夜で、突然の来訪者を寮監が通したことに驚いた。

「嘘でしょ…」

信じられなかった。
あの父親が死ぬなんて。
いつだって不敵に笑っていて、
いつだって命令してきて、

「残念ながら…」

麦野は茫然とした。
頭の中が真っ白になった。
自分が何のために生まれて来たのか、
これからどう生きて行くべきなのか、
何一つ分からなくなった。

そこで彼女は、麦野は、気付いた。

――あぁ、そっか。

――父は私にとって全てだったんだ。

自分に命令してきた父。
何をするにも、全て父が決めていた。
だから、麦野にとって全ての道標は父によって敷かれるもので、
それが当たり前だった。
その父親が、死んだのだ。
それも、

「昨夜、お父上は学園都市のあるホテルに泊まっていたんですが――」

病気や自殺ではなくて、

「窓の外から狙撃されまして…先ほどまで、病院で治療を受けていたのですが、残念ながら…」

それを聞き、麦野の眼に力が戻った。
強い意志が生まれた。
為すべきことが決まったのだ。
だがそれは、
自ら深い闇に向かう、始まりでしかなかった。

697 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga sase] 投稿日:2010/07/30(金) 02:24:25.90 ID:nFNfocco [3/5]
「はぁ……はぁ…」

肩で息をする麦野の周りには、多くの死体が転がっていた。

「はぁ…はぁ……ふ」

あるビルの最上階。
父の死を聞いた麦野は、すぐに暗部の存在を調べ上げた。
大したことはなかった。
レベル5の彼女は、大胆にも統括理事会の一人を襲ったのだ。
半殺しにして、父の死についての情報を聞いた。
すると、暗部の存在を説明された。

『ぅっ…はぁ……あの人は……暗部を操る人間だった。…統括理事会にも干渉できる立場だからな…』

統括理事会のその男は麦野の父をそう、語った。

『だが、あの人と対立する者がいた……くっ……そいつが、暗部を雇った…』

名を聞き出した。
雇われた暗部の潜伏場所を聞き出した。
その後、統括理事会のその男は殺した。

そして、現在。

「はぁ……ふ、ふふふふふふふふふふふ」

麦野は雇われた暗部の潜伏場所を探り、
そのビルにて彼らを虐殺した。

「あっははははははははははははははは!」

手に付着した血を払い、麦野は狂ったように笑った。

「さぁーて次はてめぇだぞ!あはははははははは!」

暗部を操っていた男の正体は聞いた。
あとは、そこに向かうだけだ。

ドタバタと足音がした。

「あん?」

麦野は最上階の部屋の、入り口の扉を向いた。
暗部の応援だろう。
だが、誰が来ようと、殺すだけだ。
そう思ってニタニタ笑っていた麦野。
やって来たのは、一人の少女。

フレンダだった。

708 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/08/04(水) 21:26:54.55 ID:x9OnAPYo [1/10]
――あ、そのテディベア可愛い。

初めての出逢いは、ファンシーショップで。

――おっはよう麦野!

何度か声をかけられて。

――麦野ってさ、ぬいぐるみ抱いてる時可愛いよね。

いつの間にか、一緒に週末を過ごしてて。

麦野は、いつからか。

本当に、いつの間にか。

――楽しい……。

なんて、

思ってしまっていて、

フレンダに気付かれないように、

ふふ、と嬉しさを堪え切れずに笑っていたのに。

それなのに――


「なんで…………」


麦野の口から漏れたのは、疑問だった。

709 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga sage] 投稿日:2010/08/04(水) 21:30:33.12 ID:x9OnAPYo [2/10]

罵倒でも、

怒りでも、

何でもなく、


「なん……で……アンタが、ここに来るのよ……?」


麦野の表情からは、

驚きと、

悲しみが、


「どうしてよ……?」


一筋の涙と共に浮かんでいた。


「……やっぱり、麦野だったんだ」


フレンダが、ぽつりと零した。


「私は、麦野がレベル5だとかどうでもよかったのに……」


ただ、一人の友達だと思ってたのに。

友達で、それで良かったのに。

そう、フレンダが呟いた。


「どういう事、よ……フレンダ……アンタ、アンタは私の敵なの……?」


麦野は、震えていた。

震える声で、尋ねた。

決して良い答えなど返って来ないのに。

訊かずにはいられなかった。

710 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga sage] 投稿日:2010/08/04(水) 22:03:52.52 ID:x9OnAPYo [3/10]
「どうなんだろう」

フレンダは続ける。

「今日ここに来たのは、暗部組織から依頼を受けたからなんだけど…」

続ける。

「結局、私は麦野と敵対したい訳じゃないし…」


「え……暗部…?」


麦野は初め、フレンダが何を言っているのか分からなかった。

いや、分かりたくなかった。

――あぁ、そういうことか。

でも、分かってしまった。

「いつから、暗部にいたの?」

この少女は、フレンダは闇の世界にいたのだ。

元から、


「物心付いた頃から」


そう、

一人の研究者が、

自分の娘を、

生まれたばかりの娘を、

暗部に売り渡した。

「麦野はさー、知らないかも知れないけど」

フレンダは、気軽に話す。

「結局、それだけの話って訳よ」

フレンダという少女は、暗部しか、世界を知らない――それだけの話だった。

711 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga sage] 投稿日:2010/08/04(水) 22:14:49.43 ID:x9OnAPYo [4/10]
たぶん、イギリス人だった。

物心付いた頃。

フレンダが「パパとママはどこ?」と訊いた時、

奴らはそう言った。

たぶん、確か、そういえば、

お前を捨てたのは――イギリス人の研究者だった。

だから、フレンダにとって親はいなかった。

フレンダの世界は、暗部しかなかった。

能力開発では、珍しいテレポート系を得るために通常とは異なるカリキュラムを組まれた。

幻想殺しの監視役として、幼馴染となり。

そして、暗部では血生臭い世界を生きた。


「こんなとこかなー」


話し終えたフレンダ。

どこかさっぱりしたようで。

どこか悲しそうな顔をしている。

麦野はしばらく言葉を失った。

自身の手に付着した血も振り払わず。


「麦野は、なんでここに来ちゃったの?その様子だと暗部にいたようには見えない訳なんだけど」


麦野は、


「私は…ただ復讐がしたくて」


その言葉を、フレンダは否定する。


「こんな世界に来ても、痛みが増えるだけなんだけどなぁ」

712 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga sage] 投稿日:2010/08/04(水) 22:24:14.13 ID:x9OnAPYo [5/10]
「それでも!だからって黙ってられるわけないでしょ!」

麦野が声を荒げる。

「うん。そうだね」

フレンダは肯定する。

「でも――来たら後悔するのよ」

暗部で生きて来たフレンダは知っている。

自ら入って来て、泥沼から出られなくなって、それでも今ももがいている人達を。


「あっれー?まだ侵入者片付けてないの?」


いきなり、場違いな陽気な声が響いた。

「!?」

フレンダの後ろから、ツカツカと一人の少女が歩いてくる。

コスプレのような制服姿の少女が。


「侵入者確認。やっぱり原子崩しだったかぁ」


ニヤリと少女は笑う。


「――ようこそ、裏側の世界へ」


麦野は黙っていた。

黙って、その能力を放った。

白い光線が少女に向かう。

「無駄無駄」

少女の周りの空気が凝縮し、一つの大きな〝手〟を作りだす。

白い光線がそれにぶつかる。

シュッ、という音とともに光線が消し飛んだ。


713 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga sage] 投稿日:2010/08/04(水) 22:33:28.06 ID:x9OnAPYo [6/10]
「私の、原子崩しを消した…?」

「その能力では、絶対に勝てない――」

少女のセリフを遮り、麦野は白い光線を幾つも飛ばす。

手が指を開き、光線を掴み取るようにして消し飛ばす。

「だから無駄だってぇ」

「ふざけんな!」

叫ぶ麦野を、少女は笑った。


「井の中の蛙ってね。なんちゃって、あはは」


ブチブチと、麦野の中の怒りがこみ上げて来た。

父が死んだ。

だから、復讐をした。

でも、結局その命令を出した奴は突きとめられず。


「テメェなんかに邪魔されたくねええんだよぉぉー!!」


怒りをぶつけるように、

光線を放ち続ける。

その視界の端で、フレンダが背中を見せた。

「え……」

はっとした麦野を、コスプレの少女がニヤリと意地悪く見遣る。

「フレンダ……?」

フレンダが、去っていく。

「ちょっと待って……!」

思わず駆け寄ろうとする麦野を、コスプレの少女が邪魔する。


「行かせないよー?あなたはこっちに落ちて来てもらうんだから」

714 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga sage] 投稿日:2010/08/04(水) 22:41:25.52 ID:x9OnAPYo [7/10]
「ざっけんな!どけ!」

「えー、無理だって。これだけの事を起こしたんだもん。落ちて来てくれなきゃ済まないよ?」

「黙れ!邪魔すんなぶち殺すわよ!」

原子崩しを放つ。

でもそれも防がれてしまう。

「んーちょっと動き止めとくかな」

コスプレの少女の影が、動いた。

ガクン、と麦野の体が崩れた。

「は……?」

そのまま、地に伏せてしまう。

「筋肉に電気を走らせただけだよ。ちょっと身動きを抑えさせ」


「うっさい!!――フレンダ!待って!」


フレンダが、その場を離れて行く。

そして、開け放たれたドアを出て行き、

エレベーターを開いた。


「麦野」


そこで、フレンダは振り返った。


「残念だけど、もう会えないや。――じゃあね」


悲しそうな顔で、そう言って、


「あ、あぁああ…あぁぁあああああああああー!!」


麦野の前から――姿を消した。

715 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga sage] 投稿日:2010/08/04(水) 22:55:54.16 ID:x9OnAPYo [8/10]
「あの子は賢い選択をしたんだよ」

コスプレの少女が、そう言った。

「今の私は、あなたを殺せるの。簡単に。呆気なく」

そう、説明した。

「交換条件みたいなものかな。フレンダは私たちに逆らえない。そして、フレンダは麦野を死なせたくない」

ニヤリと人の悪い笑みを浮かべる。

「――だから、あなたはこっちに落ちてくるしか選択肢がない」

麦野は、落ちて行く。

「ほら、こっちの水は美味いぞーってあるよね」

悪魔の囁きとともに。


「いつか、お父さんの敵も取れて――フレンダとも会えるかも知れないよー?」


そんな希望を、麦野は与えられ――堕ちて行った。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
麦野サイド――

――だから……。

――だから……!


「お前さえ……!幻想殺し…!テメェさえ死ねば全て解決するんだよぉーー!!」


上条当麻を前にして、麦野が動いた。

「ッッ!?」

右腕を振るう麦野に、上条が右手で防御の構えを取る。


「見え見えなんだってーの!」


それはフェイント。

原子崩しを放つと見せかけて麦野は、その拳を上条のこめかみに叩きつけた。

716 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga sage] 投稿日:2010/08/04(水) 23:11:34.42 ID:x9OnAPYo [9/10]
「がっ…!」

上条はそのまま後方に転がる。
転がって、壁にぶち当たる。

ビッ、と光った。

「ッッ!」

上条は目の端で捉えた光に、即座に反応した。
右手をかざす。
白色の光線が鈍い音を立てて消し飛ぶ。

「テメェさえ……!いなければ……!」

その様子を見て、麦野は声を荒げる。
麦野は、一気に上条との距離を縮める。
上条が弾かれるように床を転がって逃げる。

「おっせえんだよォォ!」

ヒールを履いている麦野の脚が、上条の腹を蹴り上げる。

「ごぁっ…!がぁあっ!」

上条はひっくり返り、呻く。

「はぁ……!テメェさえ…!テメェさえ殺せば……!」

麦野は怒りを落ちつけるように、肩で息をする。
けど収まらない。
高ぶった気持ちは全く静まってはくれない。

「くっそが…!」

上条が立ちあがり、拳を握る。
右拳を振りかぶって、麦野に向かう。

「うおおおぉっ!」

麦野は対し、やはり右拳を構えた。
そして、上条の顔面を狙う。

「うぁあああっ!」

二人の拳が、交差し、すり抜けた。

「ごぱぁッッ!」

麦野のクロスカウンターが、上条の顔面を殴り飛ばした。

726 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga sage] 投稿日:2010/08/06(金) 20:03:35.24 ID:kX3jpL.o [1/11]
上条サイド――

「がっ…!」

上条はそのまま床に転がり、階段の手前で止まった。

「ッッ!?」

眼前に、麦野の脚が迫っていた。
堅いヒールの爪先が、上条の右頬を蹴り飛ばした。

「がぁっ…!」

口内が切れた。歯にぐらぐらする嫌な感覚を覚えるとともに、血の味が広がる。
頬に裂傷が走った。あとわずかでも上なら、瞼を削られていたかもしれない。
そして、怯む上条の腹を麦野が蹴り上げる。
それは、物を持ち上げるように。
缶蹴りのように。
上条の体が、浮いた。

「ごふぉッッ……!」

同時、呻いた上条の口から鮮血が唾液と共に吐き出された。
上条はそのまま抵抗できず、階段に落とされる。

「がっ!……ぐぁっ!」

まず、背中を打った。
鉄板で叩かれたような痛みが、背中から四肢に伝わる。
腕や足を打たなかったのは、腹を蹴られて猫背になっていたからか。
痛みが走り、頭がグラついた。
さらに浮遊感で吐き気がした。
バウンドしたのだ。
小さなバウンド。
それは体を回転させる程度。
上条は目を見開いた。
そのまま、雪玉のように勢い良く転がっていく。

「がぁああアアっ!」

転がれば転がる程、勢いは増す。
腕や脚、体全体を余すところなくぶつけていく。
回転する視界に吐き気が収まらない。
首も捻りそうで、必死に後頭部を打たないように意識を集中させた。
ふわっと浮いた。

「がはァああッッ!」

そして、一階に落ちた。
最後の段から落ちただけなのに、ぶつけた肩に酷い痛みが走り、上条は奥歯を噛み締める。

727 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga sage] 投稿日:2010/08/06(金) 20:19:59.75 ID:kX3jpL.o [2/11]
「つッッ…!ぐっ…!」

ふらつく脚に力を込め、立ち上がる。
口の中の血が気持ち悪くて、唾飛ばしのように吐き出す。

「うっ、く……はぁ……」

それでも、上条の闘志は消えない。
ギラリとその眼が輝く。

「あっはは!バァーカが落っこちてやがる!」

閃光が迸った。
眩しさに思わず瞼が下がる上条。
必死に右手を眼前に突き出す。
だが、やって来たのは攻撃ではなかった。
木材が砕ける音がした。
後から、焼ける臭いと煙が立つ。

「なぁーにかなーん?攻撃だと思ったの?アハハッ!」

やって来たのは、攻撃ではなく麦野自身。
目を開いた上条の前に、麦野沈利が姿を現した。
彼女は、脚の下から原子崩しを放出しながら二階から飛び降りたのだ。
砕けた、消し飛んだ、のは木製の階段のほう。
だが完璧な着地とは行かなかったのか、麦野は脚を動かそうとして少しだけ眉を寄せた。

「チッ、やっぱ着地が上手くいかないか」

わずかな不満を露わにする。
そこからは余裕が見て取れた。

「うぉおおおおっ!」

上条は動いた。
狙うは麦野の顎。
顎は、一つの急所である。
上手く当てれば相手を一撃で沈黙させられる。

「あひゃっ!イイわねェ!」

体勢を低くする上条に対し、麦野は右脚でキュッ、と音を鳴らした。
半回転。
そこから繰り出すのは、左脚による回し蹴り。

「くたばれやァアアア!」

麦野の蹴りが、上条の腰骨に炸裂した。
同時、
上条の拳が麦野の顎を弾き上げた。

728 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga sage] 投稿日:2010/08/06(金) 20:37:31.47 ID:kX3jpL.o [3/11]
「ごッ……!」

上条の腰骨から、電気が流れたかのような感覚がした。
そのまま、上条の体は廊下の壁にぶち当たる。

「がはァ…っ!」

背中をぶつけ、肺が圧迫された。
酸素を欲し、せき込む。

「ごほっ…はっ……」

対し、麦野は。

「…………」

沈んでいた。
舌を噛むことなく、顎に上条の全力を喰らったのだ。
上条は安堵からその場に崩れ落ちる。

「はぁ……助かった……」

その時、動けたのは類稀なる反射神経のおかげか。
それとも、殺されかけた緊張感がまだ敏感になっていて体が反応したのか。

上条の目先に迫った光線を、右手が真横から伸びて打ち消せたのは――奇跡に近かった。

「は……アハハハハハハハハハハハハハッッッ!ヒャハハハハハハハハッッ!」

沈黙していたはずの、麦野が起き上がっていた。

「ざッけんじゃねェェエエエぞォォォオオオオオオ!調子に乗ってんじゃねエエよォォクソガキがァァアアアア!」

血走った眼の、怪物が吠えた。
五つの光線が、麦野の前から放出される。

「うあぁぁぁあああああああああ!」

上条は右手を構えなかった。
間に合わないし、防ぎきれない。
上条は階段に転がっているのだ。
上条の体で、動かしたのは両脚だった。
プールで折り返し地点を蹴るように、両脚で思い切り階段を蹴り飛ばした。
自身の体を、後方に飛ばす。
ダンッ、と音を鳴らし、上条は斜め下に転がり落ちて行く。

瞼の上を、光線が通り抜けた。

チリ、と髪の一部が消し飛んだかもしれない。
上条はギリギリで避け、頭から階下に落ちた。

729 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga sage] 投稿日:2010/08/06(金) 20:50:55.58 ID:kX3jpL.o [4/11]

後頭部に走った衝撃と共に――上条の意識が飛んだ。

――――――
――――
――

「ッッ……くっ…」

ズキズキと痛む頭を押さえ、上条が再び瞼を開いた。
場所は、変わらない。

そして、眼前には麦野がいた。

「なっ……!」

麦野は、階段に腰掛けてこちらを見ていた。
そして、起きた上条を見てニタァアアと嗤った。

「なん…!で……!」

どれだけの間、気を失っていたのかはわからない。
だが、数秒でもあれば、麦野は上条を殺せたはずだ。
目を覚ました上条が初めに思い描いたのは、「助かったのか!?」というありえない奇跡だった。
あの状況で、都合良く誰かが助けに来てくれるはずがない。
でも、もしも目を覚ませたなら、そこはここではなくて、戦いは終わっているのだと、上条はそう思っていた。

けれど、麦野はいた。

気を失う前と変わらず。
決して戦意を無くしている訳でもなく。

「さて、第二ラウンドね?」

戦いを、
上条を、
自分の力で倒すことを、
待ち望んでいる眼をしている。

――そういうことか。

上条は気付いた。
麦野は、上条を憎んでいる。
上条が死ななければならないと、何度も言っていた。
そして、その上条に挑発をかけられた。
憎い相手に――ザコが、三下が、と言われた。
だから麦野は、自分の力で正々堂々と殺しにかかった。
そして、だからこそ、
麦野沈利は場にそぐわない、ボクシングルール(スポーツマンシップ)に則った。
それほどまでに、上条を一人の宿敵(対戦相手)とみなしていた。

730 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/08/06(金) 21:09:49.88 ID:kX3jpL.o [5/11]
上条は、そんな麦野に親近感が湧いた。
異常なほどに、麦野に敬意を覚えた。

そして、瞳孔が開くほどに――闘気が湧き上がった。

全身から、指先一本残らず。
自らの体を完全に支配下に置いている感覚がする。
火事場の馬鹿力にも似た、異様なほど集中力が増す。

「お前、最高だな」

殺されようとしているのに、上条は笑っていた。
筋肉の解れる笑いではない、みなぎる闘気から自然と生まれる――笑いだ。

「アンタこそ、最高にイイ顔をしてるわよ」

対する麦野も、笑っていた。
嘲笑いではない。
上条と同じだ。
一人の敵に、敬意を感じていた。

「アンタみたいなのと…!殺し合いができるなんて最高よォォオオオオ!!」

「俺もだァァァアアアァァァアアアアアア!!」

二人が、動いた。

床が軋んだ。
上条は跳ね上がるように、麦野に向かった。
麦野は、階段を蹴り壊すように、宙に跳び出した。
二人の顔には、笑顔しかない。

「うおぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

「うあああぁぁぁあぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

だが、そこには、

第三者が見たら震えあがるほどの気力が流れていた。

上条の拳が、麦野の肩を捉える。
グリィィイイ、と拳がめり込む。
麦野の半身が後方に下がる。
それは、もう半身が前のめりになることを意味する。
麦野が面を持ち上げた。
上条の拳の力のベクトルには逆らわず、力を流す。
そうして、斜めから、上条に頭突きを喰らわせた。
二人が、弾けた。
上条は、うめき声と共に後方に転がり落ちる。
麦野も、やはり歓喜にも似たうめき声と共に、階段にぶち当たった。

741 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/08/06(金) 23:18:49.85 ID:kX3jpL.o [8/11]
「ぐぁっ…!……はは!」

「いっつぁ!……あっはは!」

二人して、笑う。
再び階下に落ちた上条。
上条より先に、麦野が動いた。
脚の下から白い光線を撒き散らす。
ジェット機のように放出しながら上条に飛びかかる。

「喰らェェえええええええ!!」

上条に覆い被さるように、麦野は飛ぶ。
そして、右手を上条に構えた。
白い光線が発射される。

「ッッ!オォォオオオオオ!!」

上条は、右手を構えなかった。
この状況で、ガードなど意味を為さない。
上条は光線を避け、自分から麦野に向かう。
床を蹴り、斜め上から迫る麦野に向かってジャンプする。

「なにッ!?」

驚いたのは麦野。
上条は麦野の胸元に迫る。
そして、麦野の突き出した右腕を奪う。

「ウォォオオオオオオオ!!」

上条は、体全体を使って力を込める。
斜め下に向かう麦野。
その勢いに乗せて、上条は麦野の腕を背負い上げる。

麦野の脚が、天井を向いた。

驚愕に眼を見開く麦野。
上条は、そのまま後方に向かって、麦野を投げ飛ばす。

「おらァァアアアアアアア!!」

麦野の体は、空中で一回転した。
回転は殺せず、着地と同時に床をしばらく転がる。

「がッ、がはぁッッ!…ぐぁ…!……っ」

麦野は体を何度も打ち、一階の床に倒れた。

743 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/08/06(金) 23:27:55.49 ID:kX3jpL.o [9/11]
だが、麦野はまだ終わらない。

「まだまだァアアアア!全ッッ然これからなんだよォォオオオオオ!!」

麦野は吠える。
だが、ダメージは確かにある。
今度は、上条が先に動いた。
右腕を振り上げて、麦野に向かう。

「オォォォォォォオオオオオオオオオオオオ!!」

「来いやァァアアアアアアアアアア!!」

麦野が、立ち上がる。
立ちあがると、上条に光線を三本放つ。
上条の脚が床を叩いた。
わずかに跳び上がり、一本をかわす。
二本目を打ち消す。
そして、三本目を空中で体を曲げて避ける。

「がぁッッ!まだまだァァ!!」

上条はバランスを崩して転がった。
だが、即座に立ちあがる。
右拳を握り締める。

眼前に、麦野が迫っていた。

「オラァァアアアア!!」

麦野の拳が、上条の腹を突いた。
殴りではなく、勢いを込めた突き。

「ごふぉ…ッッ!」

上条の視界が点滅した。

「がはっ!」

上条は、後方に崩れる。

「まだ終わりじゃねェェぞォォオオオオオ!!」

麦野が跳び上がった。
純粋に脚力で。
跳び上がった麦野は、右脚を振り上げる。
そして、上条の左肩にそれを振り下ろした。

麦野の、かかと落としが決まった。

746 名前:pasuta ◆AJEh89g1vE[saga] 投稿日:2010/08/06(金) 23:39:26.56 ID:kX3jpL.o [10/11]
「がぁぁあああああああああああああああああ……ッッ!!」

上条は絶叫した。
肩が、外れたかもしれない。
左腕に力が入らない。
骨にヒビも入っているかも知れない。
上条は感じた。

「決着を付けるぞォォオオオオオオ!!」

「イイネ!イイネェ!イイネェェエエエエエ!!」

麦野は笑う。
麦野が、迫った。

「おらぁぁあああああああああああああああ!!」

麦野の前から五つの光が現れる。
あれが、光線として発射されるのだろう。

「させっかよぉぉオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

上条は、右腕を伸ばした。
そして、麦野の腕を右手で掴む。

五つの光が、消し飛んだ。

――やっぱり!

空中から飛び出してくる光線。
それは、麦野の体を包む薄い膜から飛び出すと上条は考えていた。
だからこそ、背中だろうが、死角からだろうが、麦野は光線を出せていた。
ならば、麦野の体に触れていれば。
その膜は構成できない。

「うッッ、オ!オォォオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

力を振り絞った。
ぶちぶちと、血管が裂けるほどに。
筋肉のあちこちが悲鳴を上げるほどに。

「オオォォォオオオオオオォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

上条は、右腕一本で、麦野を宙に振り回す。

「ッッッ!?」

麦野は、原子崩しを発動できない。
上条は、自身を軸として麦野を振り回す。
そして、宙に放った。

747 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/08/06(金) 23:51:30.56 ID:kX3jpL.o [11/11]
「終わりだァァアアアアアアアアアアアアアアア!!」

麦野が、宙に舞う。

「上条当麻ァァアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

「麦野沈利ィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!」

両者は吠える。
麦野は、即座に原子崩しを発動させようとする。

「テメェの幻想をォォォォオオオオオオオオオオオオオ――」

上条が、右拳を振るう。

麦野に向かって。

「――ぶち殺すッッッ!!」

右手は、光線を消し飛ばし――、

――麦野の顔面を殴り飛ばした。

―――――――――――――――――――――――――
――麦野サイド

――私はッッ!上条を殺す!

「終わりだァァアアアアアアアアアアアアアアア!!」

上条の声が響く。

――アレイスターの計画を壊して!もう一度!もう一度フレンダに会いたいんだッッ!

――諦められる訳ねェェだろうがァァァアアアアアアアアアア!

「上条当麻ァァアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

麦野は、吠える。

――お前さえッッ!お前さえ倒せば私はッッ!

「麦野沈利ィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!」

そんな、麦野沈利の 目標(幻想) を。

「テメェの 幻想(目標) をォォォォオオオオオオオオオオオオオ――ぶち殺すッッッ!!」

右拳が炸裂すると同時――長いこと彼女を苦しめた幻想が――壊れた。

748 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/08/07(土) 00:03:33.16 ID:LQEq3Kwo [1/10]
麦野沈利は、涙を流しながら――意識を失った。

「…てめ……俺だって……んだよ……」

「…たく……条は……なんだから……」

――なんだろう?

――とても、懐かしい声が聞こえた。

――あぁ、なんだか。

――温かい。

温かい、まどろみの中で。
麦野沈利は笑った。
天使のような、見る者全てを惚れさせるような笑顔で。

――なんでだろう?

何故か。
上条当麻の拳が、突き刺さったと同時。
決着が着いたと同時。
麦野沈利の心の中の様々な感情が――きれいに透き通っていた。

――今、とっても気持が良いな。

「あ、今笑ったわよ」

「うぉっ、マジだ」

「なぁーにバ上条は見とれてんのよ」

二人の声。

――うそ……。

麦野は、驚きとともに眼を開いた。
頬を赤らめる上条がいた。
そして、フレンダがいた。
麦野を優しく抱きかかえるフレンダが、麦野に微笑んだ。

「久しぶり、麦野」

ポロポロと、麦野の両目から涙が零れた。

「久しぶり、フレンダ」


【麦野編――END――】

750 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/08/07(土) 00:17:00.09 ID:LQEq3Kwo [2/10]
麦野編――裏エピローグ――

「よお、暗部の精神操作系能力」

精神操作の能力者の少年の前に――土御門元春が現れた。

「殺されに来たのか?バカが」

嘲笑う少年に対し、土御門元春が口を開いた。

「魔術における〝人払いのルーン〟みたいなものか。お前がこの地域一帯に発動させている能力は」

なっ、と少年が目を見開く。
魔術の意味は知らないだろうが、自分の能力が見破られたことに驚く。
少年が手を土御門元春に構える。

「無駄だ。そこにいるのは俺の式神だ。壊せばお前は〝呪い〟を受けて死ぬぞ。そして説明を続けよう。お前の発動させている物は、『この火事の中に入ろうとする者に、そのことを忘れさせる能力』だ。
警備員も風紀委員も、救急車も消防車も何もかも来れなくする。だからこそ、野次馬は来られる。まぁ、幻想殺しには効かないからこそ、この方法を取ったのだろうな。――お前が、麦野沈利に脅され
てこんな手伝いをしていることは、上から知らされた。だが、俺も近づけばそのことを忘れてしまうのでな。故に式神を使わせてもらった」

「くそっ」

少年が逃げ出す。

「式神は、お前をどこまでも追跡するぞ」

少年は逃げ続ける。

――――――――――――――――――――――――――

「なんてな」

〝ウソツキ〟である土御門元春は、通話でスナイパーに合図する。

「殺せ」

と。今まで建物の陰に隠れていた少年が、焦って出て来たところを遠くから撃ち殺させた。

「ご苦労」

式神に呪いの力も追跡能力もない。
そんなくだらない嘘に騙された少年が、死んだところを遠くから眺める。

「もしもし。俺だ。フレンダ、今精神汚染は解いた。――幻想殺しの保護に向かえ」

そう指示する。

これは、フレンダが麦野のところに駆け付けたところまでの経緯。

知る必要のない、裏側の話――。

751 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 00:24:31.57 ID:LQEq3Kwo [3/10]

以上!
35レスに渡る【麦野編】でした。
リアルタイムで見てくれたみんな、ありがとう!

実は、麦野編はやるかやらないか、かなり悩みました。
それで二週間近く(?)姿を消してたわけなんだよ。
まあ言い訳をするつもりはないんだけど。
麦野編は、納得がいく物が思い付かず、何度も書き直しました。
でも今日まで、書いてる自分はかなり楽しかった!だからみんな、ありがとう!

垣根と心理掌握は、次の話から動き始めます!

コメント

No title

いままでおもしろかったのに・・・
麦野編はなんか えぇ・・・?
って感じだ

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