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心理掌握「うそ・・・上条先輩生きてたんですか!?」上条「?」2

心理掌握「うそ・・・上条先輩生きてたんですか!?」上条「?」
の続き
354 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga 入れ忘れてた] 投稿日:2010/05/02(日) 18:51:46.83 ID:FfscYtso [6/12]

日曜日十五時――

上条達四人はゲームセンターに来ていた。

「キターーー!ほらキタキタキタ!どーよこれ!」

フレンダがアームを指さしながら飛び上がる。

「うわ、すげえな。あんなデッカイ…パンダ?を一掴みかよ」
「ふふん。バ上条とは違うのよ。このフレンダ様に取れないものはないって訳!」

UFOキャッチャーが三つ目の商品をフレンダに渡す。

「上条もやってみれば?」
「俺は不幸だからやめとく」
「不幸ってwwこれは頭脳ゲームな訳よ?頭使えばいい訳wwあ、ごめん上条は不幸なだけじゃなくてバ上条だった訳ね!」
「てっめ言ってくれるじゃねえか。よーしやってやるよ!」
「売り言葉に買い言葉。ははっ、簡単に乗せられてやんの」
「結局垣根には言われたくないと思う訳よ。ねえ上条」
「ああ?俺が挑発に弱いとでも言うのか?」
「まじで弱いじゃねえか…ってまあいい。垣根は置いとく。いっくぜ!あの緑のヘンテコなやつ獲ってやる!」
「やめときなって上条には無理な訳よ!」
「そうだそうだ」
「上条先輩。無駄遣いですか?」

「えっ、お前までそんなこと言うの!?」

心理掌握の心配する一言に一番胸を抉られる上条。

「上条先輩?なんなら私が獲ってあげましょうか?」
「いいえ!そんなこと言われては引き下がれません!上条さんは自分で獲ります!そして獲ってお前にプレゼントしてやる!くっそー見てろよ!」

「あっ、はい…頑張ってください上条先輩」

急に頬を染め、俯く心理掌握。
対し、フレンダと帝督は、

「何!?なんでコイツな訳」「何!?なんでコイツなんだよ!」

と自分達でなく心理掌握にプレゼントと言われ、激昂していた。

356 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/05/02(日) 19:05:48.18 ID:FfscYtso [7/12]

「よくもまあ頑張ったな」

帝督が缶コーヒーを投げて寄こす。
上条はそれを受け取る。

「ん。ありがとな」
「二千円も粘って獲れたのは何故か手前のちっこい…あれ、なんつーんだっけ?あの病院キャラみたいなカエル」
「ああ。なんだっけ?でも喜んでくれたからよかったよ」

ふん、と帝督はつまらなそうにそっぽ向く。
上条は首を傾げる。

「ゲコ太ですよ♪上条先輩♪」

笑顔で心理掌握が上条の腕に抱きつく。

「うわっ」
「ありがとうございます上条先輩。一生大事にしますねっ」
「あーうん。ならよかったよ」

周りからの視線が痛くて上条は顔を背ける。
金髪碧眼のこんな美少女に抱きつかれているのだ。嫉妬の嵐である。

「ほら上条嫌がってるじゃねえか心理掌握。離れろや」

と一人別の人間に嫉妬してる帝督。

「ヤッター!来て来て上条!3カードでブラフ勝ち!現在一位な訳よ!」

フレンダは某カジノゲームに熱中している。

「お。面白そうじゃねえか」
「垣根はこういうの似合うよな。なんか、競馬よりカジノな雰囲気」
「上条先輩。それはこの極悪面が非合法しか似合わないと言っているようなものです」
「なんだとテメー、自分だけ上条からプレゼント貰ったからっていい気になってんじゃねえぞ!」

むしろどうしてここまで帝督が上条を好きなのか、上条にはそちらのほうが気になった。

「だがまぁ(悪い気はしないんだよな。ソッチの人な感じはしないし)」

と上条はやはり妙な所で鋭かった。
帝督が自分でも気付かずにいること。

初めての〝友達〟である上条に浮かれていることに。

357 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/05/02(日) 19:25:59.92 ID:FfscYtso [8/12]

「だぁー!レイズに乗せられるんじゃなかったー!不幸だー!」

上条が叫ぶ。
メダルの全てが一瞬で消えていた。

「結局、これは不幸とは言えない訳よ。戦略性のない上条が悪い訳」
「全くだな。…ん?おい現在俺ってば店舗一位だってよ!っはは!俺現在一位!」
「垣根…そんなに順位にコンプレックスあったんだ…」
「は、はぁ?バッカじゃねえの、そんなんじゃねえよ!」

焦る帝督と、ドラえもん並の温かい目で見遣るフレンダ。
傍らでは上条は倒れ込んでいる。
上条がバッ、と立ち上がる。

「クッソが!ああいいぜ。てめえら勝者が余裕の会話に花咲かせるってんならまずは――」

上条が叫ぶ。

「――その 幻想(階級社会) をぶちこ――」

「現実は消せない訳よ」

フレンダの一言で上条は再び床に崩れ落ちる。

「上条先輩。メダルあげますから元気出して下さい」

そう言ったのは心理掌握。

「うん。五百円で開始して現在四千枚になってる君から言われても空しいだけだ!」
「そうですか?でも結構これって確率論やブラフなど読み合いでいくらか勝てますよ?」
「うわー、やっぱ世の中学力社会なのか!?なんでてめえらそんな頭良いんだよ!」
「そんなことないですよ」

「結局上条がバかみ――にぎゃっ」

「フーレーンダーさーん?」
「なんか上条が化け物みたいに!?ギャー!」
「てっめ、こら、メダル投げつけるな。え、待ってマジで痛い。痛いからやめ。っだぁー!痛いっつの!」

その後店員さんに怒られた上条一行。
勿論帝督が店員を睨んで事無きを得た。

「って事無きを得てねーよ!警備員呼ばれたらどうすんだ!?」

上条だけは一人不幸絶好調だった。


359 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/05/02(日) 19:38:20.79 ID:FfscYtso [9/12]

「プリクラ撮りましょう上条!」

フレンダが上条の腕を引っ張る。

「プリクラかぁ。まぁいいけど」
「あ、ずるいですよ。私も上条先輩と撮りたいです」
「ってお前もか。女ってのはどうしてプリクラを――」

「俺も撮りたいぜ!」

「「…………」」

「なんだよ、何でお前ら無言なんだ!?」
「いや、垣根ってば本気な訳?」
「何が!?」
「上条先輩。私たとえライバルが男だろうと負けませんから」
「え?」

目を丸くする上条。
帝督は必死だ。

「だって俺、プリクラとか撮ったことないし!撮りてえじゃん」

そう言った帝督の言葉が、フレンダには理解できた。
プリクラを撮ったことのない男なんて別におかしくはない。
帝督が言っていることはそうではない。
生まれて初めてできた〝友達〟とゲームセンターに来たのだ。
友達と遊ぶことなんて初めてで。
何もかもが初体験。
ここでレベル5の第二位は完全にただの一人の少年となっていた。
レベル5の第二位がこれまでどんな生き方をしてきたのかなんて、フレンダにはわからない。
だが、それが幼少期から暗い実験室で過ごしてきたとすれば?
そんな少年が。
力だけを備えた少年が、果たして難なく友達作りなどできるだろうか。
暗部の者ならば友達などいらないと言う者もいるだろう。
だが、一部を除いて暗部にいる者は多く、大切な人がいる。
果たして、そんな人物が垣根帝督にいたのだろうか。
いるのだろうか。
そんなわけはなかった。
垣根帝督は現在、まるで本当に子供のように楽しげにしているのだから。
素の自分で、楽しんでいるのだから。
いつも飄々とどこか人間らしい彼は。
誰よりも強い彼は。
誰よりも他人を求めていた。
たったそれだけの話だったのだ。

フレンダの顔に浮かんだのは笑顔。

「(しっかりと自分の居場所見つけられた訳ね。よかったじゃない垣根)」

365 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/05/02(日) 21:32:51.48 ID:FfscYtso [10/12]

日曜日十六時――

黒いヒールに長い髪の少女があるビルにテレポートした。

「あら、おかえり」

それを出迎えたのは綺麗な見た目をした女子高生。名は麦野沈利。
レベル5の第四位にして原子崩し(メルトダウナー)の能力者。

「あの電気野郎は?」
「殺したわ」

あっさりした言葉で黒いヒールの女が告げる。
対し、麦野は笑う。

「あっはは!何あいつ、敵に捕らえられでもしたの?」
「ええ。対暗部の水使いにね」
「対暗部ねぇ。水って相性最悪ね。まぁそれでもあっさり捕まるのはノロマだが」
「心理掌握がいてね。あいつの頭から情報を取られたら厄介だから」
「あはは。血も涙もないわね。一緒にアレイスターに反逆しようとした仲間を」

黒いヒールの女は答えない。
代わりに背後から声がかかる。

「それで、どうする気だ?」

大男。手の平から炎を出している男だ。

「はん、決まってるじゃない。計画の要を潰すのよ」
「じゃあ麦野。幻想殺しを潰しに行く?」
「そうね。あれは、スペアプランが存在しない貴重なものだし。ふふ、アレイスターが一生懸命になって護衛を付けるぐらいだもの」
「なら俺も行こうか」

大男が炎を消し、声を張り上げる。

「おい鉄網(てつもう)!」

呼ばれた少女がビクリと反応する。
部屋の端に座り込んでいた陰気な少女だ。

「なに。またするの?あなたって結構几帳面ね」
「ふん。最近は肉体変化(メタモルフォーゼ)で成り澄ましてスパイなんてザラにあるからな」
「はん!この第四位がそんな奴にやられるわけないでしょ」
「念のためだ。裏切りで死ぬなんてバカな真似は嫌だからな」

黒いヒールの女や麦野に大男はそう返す。
大男の側にその陰気な少女が歩いてくる。

「鉄網。意見解析(スキルポリグラフ)をやれ」

368 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/05/02(日) 21:53:40.37 ID:FfscYtso [11/12]
日曜日十八時――
上条サイド――

「んじゃーなー」

ゲームセンターを出ると上条はフレンダと心理掌握と別れた。
帝督とは同じ寮なため一緒に帰る。

「ていうかお前ってレベル5だったのかよ」
「ああ、悪いな。嘘吐いてた。レベル5の第二位、未元物質とは俺のことだ」
「へー、第二位かすげえな。第二位なんて初めて知ったぜ」
「まあそうだろうな。というか殆どのレベル5の名前知らないだろ?」
「言われてみればそうだな」
「まず第一位は――」
「って教えなくていい」
「そうなのか?」
「知りたくないというか、裏側のやつらのこと知りすぎると嫌な気が…」
「っははー。安心しろ。俺の未元物質に常識は通用しねえ。どんなやつが来ようと守ってやるぜ」
「いや別に自分でどうにかしようと思うけどさ」
「何!?俺いらねえの!?」
「あー…うん、いります」
「だろ。全く焦ったぜ。ふぅ…この俺をそんな扱い方できるやつなんて初めてだ」
「それにしても四六時中お前が護衛できるわけじゃないだろ?」

上条の言葉に帝督の開いた口が固まる。
そうだ。
今までアレイスターの指示だから適当に隣の部屋で一応護衛らしいことをしていたのだが、実際に守ろうと思うと穴だらけな気がする帝督である。
とは言っても実際は帝督の未元物質で壁を壊して数秒で助けに行けるのだが、帝督にとってそれが『絶対』の安心でないことが不満だった。


「よし、なら今日からお前の部屋で暮らすわ」


帝督はそう結論付けた。

「ええー…」

上条は渋い顔をする。

「いやだって相部屋とかよくあるだろ!?別に怪しまれないって」
「いや、みんな一人部屋なのに一緒って。ソッチの人に思われるぞ絶対!」
「大丈夫だって、バレない!少なくとも俺と上条は部屋隣なんだから、もう一方の部屋に気を使えば大丈夫だ!」
「もう一方って…」
「ん?誰だっけ?上条の隣」
「金髪の変なヤンキーだよ…」
「なん…だと…」
「いつも酒飲んでて、その、たまに…」
「たまに?」

「小学生を連れ込んでる、犯罪者だ」

381 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/05/03(月) 00:43:28.11 ID:yX5.vPIo [1/8]

「はっぁーい幻想殺し、元気?」

後ろから突然かかった声に上条が振り返る。
その時にはすでに帝督が臨戦態勢を取っていた。
声からして殺気を感知し、即座に未元物質を発動させる。
白い光が放たれた。
それの正体は原子崩し。
帝督は上条の首根っこを掴んで寄せると、背中の羽を広げてそれを防ぐ。

「あーやっぱり第二位なんだ」

と、別の女が言う。
そこには二人の女と一人の大男がいた。
女子高生らしき長い髪の綺麗な女と、黒いヒールに髪の長い少女。
そして手の平にサッカーボール大の炎の塊を持つ大男。

「とりあえずさ、死んでくれない?」

帝督は知っている。
白い光線を放った女がレベル5の第四位だと。
麦野沈利、原子崩し。あれを一発でも受ければ終わりだ。

大男が火の玉を投げる。
方羽が腕の一部のように動き、それを突き刺し消す。
そのまま大男に向かって羽先を尖らせる。
白い光線が五つ、麦野から放たれる。
それらは大男に迫る白い羽にぶつかり、白い羽が正体不明の爆発をする。

「私の原子崩しが…?」
「随分と余裕そうね」

麦野と大男に向いた帝督の背後に、黒いヒールの女がテレポートする。
その指に絡めるのは無数の針。上条と帝督の体内に直接突き刺そうとテレポートさせる。

カランカラン、と音を立てた。

無数の針は、黒いヒールの女の足元に落ちていた。

「は?」

黒いヒールの女が呆気に取られる内に大男が迫る。
大男の両腕は炎に包まれている。
その拳で上条に向かう。
上条が右手を構える。

「待て、じっとしてろ」

帝督は上条の首を掴んで寄せ、自身のもう一方の羽を男に向ける。
羽は男に迫ると爆発し、消え散るが一瞬で二枚の羽が帝督の背から復活する。

383 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/05/03(月) 00:56:10.99 ID:yX5.vPIo [2/8]

「三人相手でも怯まない、か」
「第二位を相手にするのは腰が折れるな」

麦野と大男がそう評価する。どちらの戦意も消えていない。
大男は先程の未元物質の爆発を防いでいた。
身体中傷だらけではあるが、あの瞬間に炎の壁を展開させたのだ。

「どうして…テレポートが効かないの…?」

黒いヒールの女だけは瞬きを繰り返していた。
その現象が信じられなかった。
この計画は簡単だった。
第二位の能力なら知っている。
科学現象を捻じ曲げる物質を操ると。
だが、テレポートならどうか。

「ははっ!テレポートが最強だとでも思ってんのか?」

帝督がそう笑う。
黒いヒールの女はそうだ、と思う。
テレポートで体内に直接攻撃してしまえば防ぎようがない。
テレポートの弱点は演算が高度なことと、認識。
例えば、弱小な能力でも位置を特定しずらくする能力者や、視えなくする能力者だと、非常に勝ちにくい。
だが、それ以外の能力者ならどうだ。
たとえレベル5の誰だろうとテレポートを防げるはずがないだろう。
次元を超えて発動するテレポートを防げるわけがない。

「テレポートが最強だって言うならレベル3でもレベル5が倒せるのか?」

そういうことになる。
自分の身体が飛ばせればレベル4だ。
体内に直接テレポートなんてレベル3でもできる。
最強に決まっている。
だからこそ発現し難い能力なのだ。
だが、帝督にそれは届かなかった。

世界に一つしかない能力の使い手にそれは効かなかった。

未元物質は――。

「ま、まさか!」

黒いヒールの女は気付く。

「それじゃその物質はこの世に存在するわけじゃなくて――」


「はは。気付いたか。――俺の未元物質(ダークマター)に常識は通用しねえ」

389 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/05/03(月) 01:13:28.78 ID:yX5.vPIo [3/8]

「くっ、麦野!撤退するわよ」

黒いヒールの女が叫ぶ。
麦野はそこで苛立ちを見せる。

「ハァ?何言ってんのよこれからだっての」
「無理よ、こんな化け物に勝てるわけが――」

黒いヒールの女に白い光線が飛んだ。
黒いヒールの女は突然のことに驚き、演算が上手くいかない。
それでも何とかその場をテレポートする。
テレポート先は駐車場の車の上。

「がぁっ!ぐっ」

ボンネットを転がり、地面に落ちる。
それを麦野ははっ、と笑う。

「どこ跳んでんのよバァーカ!」

ビクリと震える黒いヒールの女。
そこに白い光線が発射される。

パキン!!

躍り出た上条の右手がそれを破壊する。

「バカ!」

帝督は慌てて上条を引き寄せる。
そこが、先ほどまで上条がいた場所が爆発した。
大男の炎だ。
爆炎の威力に上条は喉を鳴らす。
麦野の光線が帝督を襲う。
帝督はそれらを一枚の羽で受け止め、もう一枚の羽で大男を狙う。
大男は狙われる度に炎の壁で自身に近づかせず、時には爆炎を放つ。
上条は見ていた。
黒いヒールの女が立ちあがるのを。
その表情は暗い。
黒いヒールの女は、顔を上げるとテレポートした。

「あん?」

それを見遣ったのは麦野。
帝督の羽を避けていた彼女の背後に影が映る。

黒いヒールの蹴りが、麦野の後頭部を直撃する。

「がぎゃぁっ!」

390 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/05/03(月) 01:32:31.45 ID:yX5.vPIo [4/8]

「テッメェ!!覚悟はできてんだろうな!?」

頭から血を垂らして麦野は起き上がる。
その目には野獣の怒りしかない。
どれほど傷を負おうが、相手を食い千切るまで止まらない獣である。

「ふん。死ぬのはアンタよ――」

その言葉は遮られた。
麦野が白い光線を五つ飛ばしたから。

「あぁああああ!死ね死ねクズ女!」

そこに少女はもういない。
麦野の背後に周っている。
一枚の紙をその指に絡めている。
紙一枚。それを麦野の首にテレポートするつもりだ。
それだけで頭を吹っ飛ばして瞬殺できる。
そう考える黒いヒールの少女に白い光線が飛ぶ。

「(背中からでも撃てるの?)」

少しだけ驚くが、確かにそれでこそレベル5。
少女は慌てずその場をテレポートする。
電柱の上にテレポート。

「(今度こそ!)」

そこで少女は目にする。
全方位に向けて発せられる白い光線を。

「そんなっ」

今までの光線がロケットみたいなものならば、全方位のそれはまるで気体だった。
だがそれは気体として蔓延するのではなく、弾き飛ばされる。

「くっ(全方位なんて厄介なっ)」

黒いヒールの少女は後方に飛ぶ。
ほんの一発。ほんの少しでも受ければ終わりだ。
道の向こうまで跳び、そこに着地する。
麦野の血走った目がこちらを向いた。

「あっひゃっひゃ!見ぃーつけた!」

麦野の足元が光を帯びる。
それはやはり白い光。
彼女はロケットエンジンのように勢いよく跳ぶ。

392 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/05/03(月) 01:47:28.05 ID:yX5.vPIo [5/8]

「おいおいアイツら追いかけっこしてるぜ!っははー!なあ俺らもしてみるか?」

帝督が嘲笑う。
黒いヒールの女と麦野の命懸けの追いかけっこを指指す。

「なあ、あっはは!」

そう、話しかける。
目の前に転がる大男に。

「勝てるわっけがねーよなぁ。さっきまでみたいにお前ら三人で頑張ればいいものをさ、何仲間割れしてんだよ!」

大男は全身に火傷を負っている。
それは自身の能力ではない。
発火能力者は自分の炎で火傷などしない。
帝督の能力だ。
上条が止めなければ帝督はこんなものではすまさなかっただろう。
何故なら、


上条当麻を襲ったから。


それだけで万死に値すると帝督は考えた。
帝督は何より自分優先だ。
自分が一番。
だからこそプライドが高い。
だからこそ自分の物も大切。
自分の物に唾をかけられればそいつをぶち殺す。
そういう男だ。
帝督は、自分の物すら相手に好きにさせない。

無論、大切な〝友達〟を傷付けようとする人間など、人間として扱う必要があるのか?と帝督は真面目に考える。

「化け物が…!」

大男が呻く。
帝督はとりあえずそいつの携帯電話を踏み潰す。

「あっははぁー!これで連絡も取れねえな?」

腹いせに過ぎない。
ぶち殺せないからする、嫌がらせに過ぎない。

「おら上条が表側の救急車手配してくれたぞ」

帝督は皮肉気味に嘲笑った。
戻って来る上条に手を振り、帝督は大男を蹴飛ばし寮へと帰る。

393 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/05/03(月) 02:14:54.41 ID:yX5.vPIo [6/8]
――【始まりの日曜日】――

日曜日十二時頃――

「強盗事件?」

風紀委員(ジャッジメント)の一人が報告をしてきた。
風紀委員全ての長――〝風紀長(ジャッジマン)〟はその報告を聞く。
男のくせに一本縛りにした髪型。
日曜日でもしっかりと制服を着ている。
本来なら黒学ランの学校の制服なのだが、彼は違う。
白学ラン。それも背中には盾をモチーフにした風紀委員の紋章が大きく刺繍されている。
長点上機学園中等部の三年生である。
風紀長――直江(なおえ)は風紀委員のテントが張られたスペースにいた。
何十人もの風紀委員が忙しなく動いている。

「なるほど。偶然居合わせた警備員が…ふむ」
「どうされました?」
「いや、今回の見学者諸君に悪いイメージを与えかねないからな」
「しかし、もう取り押さえられましたよ」
「だからこそだよ。その痕跡が残ってしまうだろう?万が一にもそれを聞かれたらどうするんだ」
「は、はいっ。そうですね」
「常に我々風紀委員が見回りをしていることにしろ。これを風紀委員全員に通達。盾でも持たせておけ」
「はい」
「模倣が起こる可能性もあるしな」
「その通りですね」
「私はこれから見学者諸君を引率する。私がいなくてもしっかりやれよ」
「はっ」

直江はその場を去る。
彼の後ろで音がする。
それはいつものこと。
彼だけでなく、多くの学園都市の学生が知ること。

直江の後ろでは銀盤が転がっている。
それはタイヤのようにしっかりと転がる。
丸みを帯びているものの本来ならば、横に倒れてしまうだろう。
だが、その銀盤は狂いなく直江の後ろに着いて行く。
八枚の銀盤。見た目は銀板と言える。それはただの鉄の塊ではなく所々線が入っていて機械であることが窺える。

通称――八つ盾の風紀長。

直江の磁力を操る能力で八つの銀盤はコロコロと転がる。
パトロール時などもそれを離さない。
今回、そんなことをする必要はないかと思ったが、やることにした。
現在小学生で、中学から学園都市に来るかを決める子供達の――学園都市見学会。それが本日日曜日に行われている行事だ。
能力の言い見世物になるだろう、と直江は考え、銀盤を転がしながら子供達のほうに向かった。

395 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/05/03(月) 02:26:38.81 ID:yX5.vPIo [7/8]

始まりの日曜日――。


――
上条当麻は帝督と寮に帰る。
とりあえず今日だけ!と帝督が着替えを持って上条の部屋に押し寄せる。
何故か意気揚々と、
「トランプやろうぜ!」
旅行気分の帝督に上条当麻はため息を吐く。
――

――
麦野沈利と黒いヒールの女は追いかけっこが終了していた。
結局黒いヒールの女は青ざめた表情で逃げ去った。
麦野は彼女の腹に蹴りを叩き込んだことで、少しは立っていた気が元に戻ったのか、帰ろうとする。
途中コンビニに寄る。
「あ?おいシャケ弁がないってどういうことだよ店員オラァ!」
やはり彼女の気は紛れていなかった。
――

――
心理掌握の少女は寮の自室に帰っていた。
上条当麻から貰ったゲコ太を嬉しそうに抱きしめる。
「上条先輩♪」
今度はメールアドレスを聞こう。そう決意する心理掌握。
彼女の携帯電話にはプリクラが貼られている。
上条当麻、垣根帝督、心理掌握、フレンダの四人で撮ったものだ。
もちろん自分と上条当麻にはハートを落書きしてある。
心理掌握の少女は嬉しそうに息を吐いた。
――

――
フレンダは寮の自室で機械いじりをしていた。
作っているのは爆弾。
正確には爆弾の改良。
「うーむ。今後上条の目の前で戦う時のために…」
考えているのは爆弾の威力を落とすこと。
上条当麻の前で人殺しなどできないためだ。
「結局、上条は人が良い訳よ。そこが良いんだけどね」
どこか楽しげに見えるフレンダ。
彼女の携帯電話にもやはり、四人で撮ったプリクラが貼られていた。
――


それぞれと同じように、
風紀長(ジャッジマン)直江の日曜日も、一つの始まりであった――。

431 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/05/05(水) 00:04:00.93 ID:r0FOno.o [1/2]

「二人行方不明?」

さらに報告。
子供達を待たせている広場に風紀長の直江が行くと、風紀委員の一人からそんな不安要素が飛び込んできた。

「はい。この二人です」
「…と佐天涙子…か。よしわかった。私が探しに行こう」
「えっ、でも風紀長はこれから引率のほうがあるのでは?僕たちが探しますが」
「いや。迷子を捜すことこそ風紀委員の務め。それにこれは風紀長である私の役目だ」
「は、はい。わかりました」

直江はその場を後にする。
直江の後ろでは八つの円盤が転がって着いてくる。
その様子に見学会の子供達が目を輝かせる。
直江はその様子に微笑むと、二人の少女を探すため足を進めた。

時刻は十三時に差し掛かる頃――

直江の真横を金髪碧眼の少女が通り過ぎた。
その少女は直江の後ろに続く円盤に首を傾げるもその場を後にする。
その足取りは軽い。
まるで楽しい場所に行くかのように。
少女がそこではたと足を止めた。
直江は気になったので様子を見る。
少女は、数人散らばる風紀委員を見ていた。

「(ああ。盾が気になるのか。確かに非常時でもないのに不自然だな)」

そう納得し直江はその場を後にする。

「(そこまで遠くに行っていないはずだが)」

街中を歩いていると一人の少女を見つけた。
首から提げているゲストIDでわかる。
行方不明になっていた少女の一人だ。
直江は少女の目の高さにしゃがみ込んで微笑む。

「風紀委員と言ってわかるかな?」

こくりと頷く少女。

「よかった。見学会の子だよね?広場に戻ろうっか」
「で、でも涙子がまだ来なくて…」
「(涙子…もう一人の子か)…よし、わかった。じゃあお兄さんが探してあげるから、そこの風紀委員のお姉さんと広場に戻ろうか?」
「は、はい。…あのっ、よろしくお願いします。涙子、いつもどこか迷いこんじゃうんで」
「わかったよ。それじゃ」
風紀委員の一人に預けると直江は立ち上がり、街中を捜しに出る。

「それにしても…今日は暑いな…」

434 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/05/05(水) 00:23:30.58 ID:r0FOno.o [2/2]

「見つけた」

直江の声に少女――佐天涙子はビクリと反応した。
首から提げたIDカードの磁場を巡ったら案外簡単に見つかったのだ。
だが、ここは予想外だった。

「どうしてこんな場所に…」

そこには何もない。
いや、今は何もないと言うべきか。
過去にとあるレベル5のためだけに存在していた研究所。
結構な規模だったらしいが今はもう、まっさらな地面となっていた。
空き地。
土地に困っている学園都市でも珍しく、この平地は何一つとして使われていない。
規模で考えれば学校一つ立てられそうなものだが、と直江は首を傾げる。

「あ、あの」
「ん?」
「案内の人ですか?」
「そうだよ。君がはぐれたようだからね、探しに来たんだ。戻ろうか」
「は、はい。すみません」

それにしても、と直江は気になる。
この少女はずっとこの土地を見ていた。
いや、正確にはこの土地の虚空を見ていたと言える。
まるで、幽霊でも見るように。
それにしては茫然と、よく認識してないかのように。

「(AIM拡散力場の残り香でも感知しているのか…?)」

そんなはずはない。
学園都市に初めて来たはずの少女がそんなものを感知できるわけがない。
仮に、確率は低いが今話題の〝原石〟と呼ばれる天然の能力者だとしても、こんな漠然としたものではないろう。

「なんだか、変な感じがするんですよね」

少女は言った。

「霊感でもあるのかな?」
「ええっ、ここ誰か死んだんですか!?」
「いいや。ただ、私には見えないからさ」
「うーん、見えるっていうより変な感覚がするんですよね」
「飛行機の中みたいな?」
「あ、乗ったことないのでわかりません」
「電車がトンネルをくぐる時の感覚かな?」
「うーん…?」

首を傾げる少女。数分後、ようやく動いてくれた少女と元の広場に戻る。
途中、クレープを奢ってあげたらとても喜んでいた。

442 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/05/06(木) 00:56:02.66 ID:9n6ONIMo [1/6]

始まりの日曜日――

窓のないビル。
アレイスターと〝対話する〟者がいた。

『超電磁砲の様子はどうだぁ?』

その者は気軽に、友人と話すかのようにアレイスターと対話する。

「ふむ。順調と言える。現在レベル3からレベル4にかけて成長しているところだ」

『まだそんなとこかぁ…』

「何、たかが数年だ。君も知っているだろう。彼女がレベル5に到達するにはあと二年」

『確かにさぁ。重要な鍵であるのはさぁ認めるけどさぁ…まだるっこしいんだよなぁ』

「君にはそう思えるのかも知れないな」

『そりゃぁ、バカみたいに長生きできるお前とは違うんだからなぁ』

「年老い死ぬのが怖いか?」

『もちろんそうさぁ。この若さで人間の寿命の短さを悟っちまうんだから酷だよなぁ』

「その割には楽観的に見えるが」

『んーそぉかなぁ』

「それに君は随分と世間話が好きなようだ」

『あははははははははははははは。そりゃぁそうさぁ、お前がここから出してくれないんだからさぁ。暇でしょうがないよねぇ』

「仕方あるまい」

アレイスターはふ、と笑む。
その笑みを知っている者がどれだけいようか。


「君は、学園都市に一人しかいない 〝絶対能力者(レベル6)〟 なのだからな」


対話相手は「そうだねぇ」と脳天気そうに言う。

学園都市の頂点――レベル6はただただ気軽にアレイスターと対話する。

443 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/05/06(木) 01:01:52.85 ID:9n6ONIMo [2/6]
通信が入る。

「なんだ」

アレイスターが応答すると、〝案内人(テレポーター)〟からだった。

「ふむ。通してくれ」

『どぉしたぁ?』

「第三位が来た」

『おぉ。あいつは美人だから好きだぜぇ』

「意外だな。君はまだ人間に興味があるのか」

『基本的に可愛い子は好きだなぁ』

「彼女は〝唯一君を知る〟が、今日も対話するのか?」

『そうだなぁ。若い可愛い子と話してるとさぁ楽しいしねぇ』

「……」

唐突に二人の人物が現れた。
一人は少年。高校生らしき見た目のテレポーター。彼は案内を負えるとテレポートしてその場から消える。
もう一人の少女。綺麗な黒い髪の女子中学生。
だが、その格好は女子中学生と言えない。
明らかに〝コスプレだと分かる〟高校生の制服。青のセーラー服でありながら派手、なお且つスカートはとても短い。

レベル5の第三位――〝未知源発(ダークエネルギー)〟の名を持つ少女――沙耶(さや)。

「どもーアレイスター」

「ふむ。呼んだ覚えはないがどうした」

「冷たいなー。計画のほうは順調?」

「今のところ不備はない」

「ふーん。あ、じゃあさ、じゃあさ、垣根帝督はどんな感じ?」

「現在は幻想殺しの護衛をしているが」

「にゃははー、幻想殺しを殺してたりしてっ。なんちゃって!」

「今のところそのような様子はない」

「ふーん。…会いたいな。未元物質(ダークマター)に」


444 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/05/06(木) 01:07:49.46 ID:9n6ONIMo [3/6]







日曜日十四時三十分――





レベル5の第三位――〝未知源発(ダークエネルギー)〟の名を持つ少女――沙耶(さや)が街中を歩き始める。





彼女が彼と接触するまであと、数秒。










446 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/06(木) 01:29:58.26 ID:9n6ONIMo [4/6]


え、最近更新少ないって?
なんかあれだよ、五月病とか言う奴だよ。
もちろん寝るよ

450 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/05/06(木) 23:19:55.81 ID:9n6ONIMo [5/6]

「だから言うたんやボクぁもうすっかり治ってますって」

「そ、そうか…」

「なんやどないしたん?平助」

「随分とキャラに嵌まっているな…」

「はっは、そりゃぁそうですよ。ボクは基本的に万能ですからなぁ」


怪しい関西弁の青髪男と、黒白を基調にしたビジュアル系の男。
黒白の男に関しては腰に堂々と長ドスを提げている。

「(あれは…対暗部の雨蛙のリーダーかな)」

沙耶はすぐにその正体に気付く。

「それで、〝アヤ〟とは話したのか?」

「そりゃぁもう!可愛いすぎて思わず抱きついてしもうたんやけど、看護婦さんに蹴り飛ばされましたわ」

「え…」

「いやね、アヤちゃんはぽかーんとしてて抱きついても抵抗しないんよ。それがまた可愛くてなぁ」

「まずいだろ…」

「そしたら通りかかった看護婦さんのハイキックがボクに炸裂してなぁ。――我々の業界ではご褒美ですキリッ」

「どうしてこうなった…」

「しっかしホンマ可愛いんよ?もうね、もうね、心理掌握グッジョブ」

「許したのか?」

「あっははー、冗談キツいでー」

青髪は笑う。
その瞳の奥が鋭く尖る。


「一生許す訳ないやん。今も憎しみで溢れてますよ?」


続けて言う。


「けどなぁ。アヤを作った心理掌握の行いは、間違っちゃいないとボクぁ思うんですよ」

452 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/05/06(木) 23:42:14.96 ID:9n6ONIMo [6/6]

その人物に見覚えはない。
見た目も、声も、仕草も、口調も、キャラクターも、何一つとして沙耶は知らない。
青髪ピアスの少年を、沙耶は知らない。
なのに、どこか気になった。
彼は何者なのか気になった。
対暗部のリーダーと歩いているからだろうか。
だが、彼にだって表側の友人ぐらいいるだろう。
沙耶だってそうだ。
だから何らおかしいことはない。
それに、沙耶が知る男など暗部以外に存在しない。
基本的に沙耶は男より女が好きなバイなため、わざわざ表側の世界で男と話そうとも思わない。

「(ま、あんな脳天気な顔したやつが暗部や対暗部なわけないか…)」

と沙耶は結論付ける。
彼らが沙耶の横を通り過ぎる。
その際、黒白の少年に目を向ける。
雨蛙のリーダーと目が合う。


「やっほう、対暗部」


沙耶がウインクすると雨蛙のリーダーが長ドスに手を伸ばした。
沙耶はそちらに注意を払わない。
沙耶は横目で観察する。
青髪ピアスの男がどのような行動を取るか。
対暗部やらならば、今の一言で臨戦体制を取るはず。
動揺するかもしれない。
そのどれか一つでも沙耶の目に映れば、青髪ピアスの少年はそちら側の人間だということになる。

青髪ピアスが目を丸くし、口を開く。


「めっちゃ可愛いなぁ!何、コスプレ?ええなーええなー、めっちゃエロいでぇ!」


青髪ピアスは、アホみたいに身体をうねらせてそう言った。

「は…?」

呆気に取られる沙耶。

その、沙耶の首筋に雨蛙のリーダーが長ドスを突きつけた。

「貴様。何者だ」

沙耶は一歩も動けない。
それほどまでにぴったりと、その鞘を押しつけられていた。

463 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/05/10(月) 01:40:17.03 ID:nxcgQMEo [2/2]

「ふふ、せっかちだね」

沙耶は長ドスを押しつけられた状態で妖艶に笑む。
その眼は期待。

「貴様は何者だ」

雨蛙のリーダーが続けて訊いてくる。
沙耶は答えない。
答える必要がない。

「ねえ、今日って何の日だと思う?」

クスクスと笑いながら指さす。
風紀委員。
風紀委員がこちらに向かって歩いてくる。
その眼は険しい。

「学園都市見学会の日、らしいよ?」

ただの女子中学生に長ドスを押しつけている少年の図。

「おい、何をしているんだ。その武器はなんだ」

風紀委員がやってきて、雨蛙のリーダーに詰め寄った。
雨蛙のリーダーは軽く舌打ちすると手の内を明かす。

「これ、ただのおもちゃなんで」

そう言って長ドスを引く。
刀身が一切ない、ただの長ドスの形をした木材に過ぎないそれを。
木刀より安全と言えるそれ。

「行こう、青髪」

雨蛙のリーダーは青髪ピアスの少年の肩を叩き、先を促す。

「ほな、風紀委員さんさいなら。あ、あと可愛いお嬢ちゃんもまたな~」

青髪ピアスはへらへらと手を振り、二人してその場を離れる。

「全く、盾は突然消えるし今度は長ドスのおもちゃだって…?」

風紀委員の少年がため息混じりに零した。

「盾が消えた?」
「ええ、昼ごろにあるファミレスの近くで警備してたんですけど。突然持っていた盾が消えてしまって」
「ファミレス?」
「爆発して全焼したんですよ。その中から盾は見つかったんですけどね。アポート系の能力者でもいたんでしょうか」

468 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/05/14(金) 22:56:23.71 ID:BKr7sMUo [1/3]
沙耶はカフェテリアで一人、窓際の席から街を見下ろしていた。
アイスラテを片手に、思案する。

『ファミレス爆破事件と殺人事件があったんです』

風紀委員の彼はそう言った。

「(暗部が派手に出過ぎてるなぁ…)」

沙耶はふぅとため息を吐く。

「(テレポーターの女ね……ちょっと生存しているか調べないとかな。麦野のバカも動き回るしさぁ…全く、いい胸してるのに勿体ない)」

街を見下ろしていると、ん?と気付く。

「あ、風紀長だ」

八つ盾の風紀長。
磁力使いのレベル4にして、かなりレベル5に近い存在。

「(超電磁砲はレベル1からだけど、風紀長はレベル4からレベル5に上がるって樹形図の設計者が出してたっけ)」

子供達を連れそう風紀長を眺め、沙耶は暇そうにため息を吐く。

「(ま、風紀長の能力じゃプランには関係ないからね。超電磁砲と並んで表舞台のレベル5として宣伝塔になってもらいますか)」

それにしても、と風紀長の去った街並みを眺める。
ガラの悪い、スキルアウトだろうか。
街に何人も見かける。

「(確か、今日は強盗事件を起こしたはず…仲間が捕まって警備が大きくなったのに何故?)」

何かが起きている、と沙耶は思案する。
スキルアウト達の瞳に生気が見られないことを、沙耶は見抜いていた。

「ちょっと見に行ってこよっと」

沙耶は立ち上がり、店を出た。
彼女の影が小さく蠢く。
黒い、それは動く。


471 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/05/14(金) 23:16:35.69 ID:BKr7sMUo [2/3]

始まりの日曜日の夜中――

沙耶はため息を吐いた。
スキルアウト総勢八名。
彼らは〝洗脳〟されていたのだ。
沙耶の能力も届かず、結局スキルアウトは犯罪に走り、警備員に捕まった。

「心理掌握…」

彼女に間違いない。
こんな芸当ができるのは他にいない。
何故なら、犯罪を犯したスキルアウトが向かう場所。

「確か少年院にはAIMジャマーだっけがあるんだよね」

沙耶はそれに気付いた。
少年院に連れて行かれると、洗脳が解ける。
そうして一切の証拠は残らない。
うまいやり方だ。

「ほんと、食べちゃいたいぐらいに気になるね」

心理掌握の少女を思い浮かべ、舌を出す。
妖艶に笑む。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

上条は絶句した。
垣根はアホみたいに口を空けたまま固まっている。

「……」

隣の部屋の住人がやってきた。

「……」

うるさかったのだろう。
垣根が「俺の本格料理を味わえ!」と言い、火を暴走させると換気扇を壊した。
上条は「バカ野郎!くっそー不幸だぁー!」と叫ぶ。
それからもテレビのリモコンを巡って軽いバトルをしたり、トランプで二人ババ抜きをすればジョーカー以外を取らせてくれない雰囲気の垣根に上条が叫ぶ。

そんなドタバタ騒ぎに隣人はやってきた。

金髪のアロハシャツ姿。
そいつは、
赤いランドセルを片手に言った。

「小学校に侵入するにゃー」

473 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/05/14(金) 23:49:27.65 ID:BKr7sMUo [3/3]

「どうしてこんなことに…」

「それ、俺のセリフ」

上条と垣根はため息を吐く。

夜中の小学校の校門にて。

「にゃー、まさかお前らがロリコンだとは知らなかったぜい。同士として声をかけさせてもらったにゃー」

「いや違うだろ。垣根か?」

「まあ上条のことだろうな。だってほら、あいつ」

「どいつだ?」

「心理掌握は小学生だろ?」

「マジで!?」

「知らなかったのかよ…」

呆れる垣根。
上条が振り返ると金髪男、土御門の姿が見えない。

「にゃー早く来るんだぜい」

前方。
校門のセキュリティを怪しげな針金の束で攻略する男、一人。

「「……」」

垣根と上条はただ、思う。

「「(帰りてえ…)」」

土御門は嬉々として赤いランドセル片手にしている。

「にゃー!ここが小学校だぜい!THE・ロ・リ!!天国だにゃー」

思わず警備員への通報をしそうになる上条だったが、仕方なく後に続く。
そう、見過ごすわけにはいかない。

「見過ごせないよなやっぱ」
「にゃー、やっぱお前っていいやつだな、上条」
「お前が児童のたて笛を舐めないか心配だしさ」
「にゃにー!?そっちかにゃー!」

「冗談だよ。妹のため、なんだろ?」

488 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/05/23(日) 16:54:51.59 ID:/lb3pzco [2/6]
「妹の忘れ物を取りに行くんだぜい」

学生寮の隣人、土御門元春はそう言った。
なんでも明日までの宿題が出たノートがあるのだが、それを机の中に忘れてきたしまったそうだ。
妹は現在、いつものように土御門の部屋に遊びに来ている。
現在、土御門の好物のシチューを作ってくれているそうだ。
その合間に、小学校に潜入して宿題のノートを取って来てやろうという話だ。
上条は自分にも妹みたいな存在である従兄妹の乙姫がいるため、土御門の行動の理由が納得できた。
それ故に、護衛である垣根を引きつれてやってきたのだが。

ビービー侵入者あり、侵入者ありビービー、

警告、警告、警告、

拘束します、拘束します、拘束します、

ビービー、ビービー、ビービー

けたたましい音が校内に鳴り響く。
防犯システム。
それが警告するのは三人の少年。

「だぁー!こうなるに決まってんだよ、俺の不幸っぷりからしてさぁ!」

上条は叫ぶ。
息切れしそうになるも横二人に置いてかれないよう、必死に走る。

「にゃーっ、まさかあんなトラップがあるなんてにゃー」

「てっめ、土御門!『せっかくの機会だから更衣室見てみようぜい』じゃねーんだよ!」

「にゃははー男の性(サガ)ってやつだにゃー」

「いいや違うよ!お前のはロリコンの性ってやつだからな!?」

「にゃー上条ってば自分を除外してるぜい」

「だから俺はロリコンじゃねえっつの!」

今度からは年上好きアピールでもしようかと上条は考える。

「正直になろうぜい?」

「いや違うってば!ホントにロリコンじゃないからね!?上条さんは年上好きですよ!…いやそんな疑いの眼差し向けんなって!誤魔化しじゃないから!」

息も絶え絶えに会話を続ける二人。



489 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/05/23(日) 17:09:53.45 ID:/lb3pzco [3/6]
あれ?と上条はそこで気付き振り返る。
垣根が立ち止まっていた。

「おい垣根!何止まってんだよ!」

「俺が引きとめるから、お前ら先に行けよ」

「何言ってんだ、一緒に戦うって!」

「俺はお前の護衛なんだぜ?今この学校の警備ロボは一部に集まった。お前を守るにはここで片づけたほうが好都合だ」

垣根はそう言うと白い二枚の羽を展開する。

迫り来るのは五つの警備ロボット(侵入者迎撃用武装ロボ)である。

「さってと。お前らの力を見せてもらおうか。俺の未元物質に常識は通用しねえぞ」

ニヤリと笑み、垣根がその羽を自らの腕のように操る。
上条はしばらく黙り、

「後から追い付けよ!」

土御門とともに廊下を駆け抜けた。
土御門元春が、しばらく垣根をジッと見ていたことに上条は気付かない。

廊下を駆け抜けているとより大きな音がした。
校庭から警告音。
できればあまり聞きたくない物である。
それを鳴らしているのが、見覚えのある車だからだ。

「上条…耳を塞いでも現実は変わらないぜよ?」

「ああっ、もうわかってますよ!でもその車って明らかに警備員だよね!?」

「にゃー、上条ってば犯罪者(笑)」

「だっからお前にだけは言われたくないっての!」

「でもにゃー上条。深夜だから風紀委員が出しゃばって来ないため、不幸中の幸いとも言えるぜい?」

「いいえ!右手がある上条さんと致しましては能力者の学生のほうがよかったです!」

「それを言ったら俺なんてレベル0の使えない能力しかないにゃー」

「くっ、高位能力者は垣根だけか。…つか、小学校潜入で少年院行きとかどんな不名誉だよ!?親に絶対知られたくないぞ!?」

「にゃははー俺はそういうの大丈夫だけどな。でも舞夏を一人にはしたくないな」

「…ああ、そうだよな!」

491 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/05/23(日) 18:48:01.31 ID:/lb3pzco [4/6]
「待て!」

警備員の声がかかる。

「ッ!?」

二人は立ち止りかけ、また走りだす。
警備員の男は走って追いかけてくる。

「げえ!もう追いつかれたぁ!?」

「こら!待ちなさい!」

「俺達不審者じゃありませんからー!」

「そうだにゃー!こんな見た目だが中学一年なんだぜい!小学校が懐かしくなるとかあるじゃないですかー!」

「ならどうして不法侵入などしている!」

「若気の至りってやつですよ許してぇ!」

「だから止まりなさい!…ブッ、私だ。現在三階西館に向かって追っている。中学生だと名乗る少年二人。一人はワックスで立てた髪、もう一人は金髪にアロハシャツだ」

「うわー!なんか連絡取ってるし!」

「くっ、上条、こっちだ!」

土御門が上条の腕を引く。
階段。
二人は迷わず手すりを滑り降りる。
まだ中学生ということもあり、体格からして難なく三階から一気に一階まで降り立つ。
対し、警備員の男は体系から階段を下りてくる。

「お、上っ条ー!」

一階の廊下。
走りだそうとした上条が声とともに抱きつかれる。

「うっわ!…って垣根かよ!抱きつくな!」

「なんだよーつめてえなぁ。せっかく警備ロボ全滅してきたやったのに」

「ああ、まあそれについてはサンキュー!つか逃げるぞ!」

「あれ、土御門の目的の物は?」

「にゃー、ちゃんと手に入れたぜい」

「なら理科室から逃げるか!?どうする土御門、垣根?」

492 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/05/23(日) 22:07:03.17 ID:/lb3pzco [5/6]
「よし、理科室の窓から逃げるぜよ!」

「裏門飛び越えるか」

三人は警備員を振り切ると理科室に跳び込む。
追ってくる警備員が入れないよう、ドアを閉めた後隙間に机を置く。

「くっ!こら、開けなさい!」

「よし、今のうちだ!」

上条達は理科室を駆け、窓を開く。
地面に飛び降りると同時、反対側の理科室のドアから先ほどの警備員が追いかけてくる。

「急げ!ノロマな警備員なら撒けるぞ!」

上条は土御門と垣根にそう叱咤する。


「ノロマとは言ってくれるじゃん?」


「ッッ!?」

ライトの光が三人に降りかかる。
眩しさに目を堪える。
そこには数名の警備員がいた。

「はいゲームオーバー。大人しく捕まるじゃん?…本当に中学生みたいだな」

警備員の女が強い力で上条の腕を掴む。

「くっそー…」

ジャージ姿なのにどこか色っぽいお姉さんの警備員。
彼女は車をこちらに寄せろ、と手配する。

「背景父さん母さん。こんなくだらないことで捕まる私めを許して下さい…」

「ん?上条捕まりたくねえの?なんなら俺の未元物質で暴れようか?」

「それはやめとけ!そんなことしたら完全に追われるから!もう素直に事情説明しようぜ土御門!」

「にゃー、それはいいが果たして信じてもらえるかにゃー…」

「ごちゃごちゃ言ってないで来るじゃん。ま、でも面白いやつらだな。…全く私のクラスもこういうやつがいれば面白いのになー」

三人はぶつぶつと言い合いながらも抵抗せず、物凄い握力の女警備員に引きずられていった。

493 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/05/23(日) 22:23:56.73 ID:/lb3pzco [6/6]
「そこに直りなさいです!上条ちゃんに土御門ちゃんに垣根ちゃん!!」

教師、月詠小萌はぷんすかと怒る。

「にゃーすでに床に正座させられてるにゃー」

「つか何でこの俺が正座なんかしなきゃならねえんだよ」

「……」

「にゃー、上条はさっきからずっと土下座してるぜい。プライドのカケラも見当たらないな」

「なにい?なあ上条、俺もそのポーズ取った方がいい?」

「もう!三人とも先生の話を聞いて下さい!」

小萌は足踏みをするが、まるで駄々をこねる子供のようである。

「…ってか、なんで小萌先生が来るんだ?」

ようやく上条が顔をあげる。

「え、この小っこいのが担任じゃねえの?」

と不思議そうに首を傾げる垣根。

「いや違うぜい。本来の俺らの担任はハゲ山だにゃー」

「こら!萩山先生をバカにしてはいけませんよ?土御門ちゃん」

「へー、なんで担任じゃなくてこいつが来たんだ?俺の転校の時も教壇にいたが」

「あれ?垣根ちゃんには資料で説明があったはずですよ?」

「ティッシュなかったから鼻かんで捨てたわ」

「もう!」

「うそうそ。実際には紙飛行機にして飛ばしといた」

「ポイ捨てはいけませんよ?」

「掃除ロボいるんだからいいじゃねえか」

「って垣根、なんでお前はそんなくつろいでるんだよ!しかも野菜ジュースちゅちゅう吸ってるし!」

「ん?飲むか?やっぱカゴメに限るよな」

「もう!三人とも真面目に話聞いて下さいです!先生怒ってるんですよ!?」

515 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/05/29(土) 01:12:39.00 ID:pCaGB3ko
「能力調査ぁ?」

垣根が理解できないとばかりに眉を寄せる。

「はい。先生は高校教師ですが、専攻能力もありますし研究者としてこの一週間基礎能力の調査にやってきたのです」

「それって何の意味があんだよ…ってああ、なるほど。確かこの中学はレベル低いやつ多いんだよな。今のレベルの成長具合で進学先もある程度把握しておくと」

垣根は笑った。
ちらりと上条を見遣る。
上条は特に気にしていないようだ。
だが、それはレベル0をバカにした行いである。
要は、レベル0を何人どこの学校に送るか決め、珍しい能力者を高校側が早めに確保しようということだ。
中学一年の段階で引き抜きか。
そのためにとある高校教師の月詠小萌は一週間担任の代わりをしていると。
恐らく、本来の担任は時間的に合わせて出張か何かに出ているのだろう。

「そりゃ、ご苦労だったな」

垣根は小萌をニヤニヤと見下す。

「わざわざ担任でもないのに夜中に呼び出され、挙句に結果を出してない上条や土御門が問題を起こすなんてな。面倒だよな?」

だが、小萌はただ首を傾げた。

「?いえ、一週間の間は先生が担任ですから。生徒さんの面倒を見るのが先生の役目なのですよ?」

小萌は笑う。

「それに、結果を出したか出してないかは上条ちゃんや土御門ちゃんの人となりと関係ないです。それだけで、人は区別できませんよ?」

ニコニコと笑う。
それに垣根は言葉が詰まる。
上条と土御門も少し驚いた顔をしている。
レベル0の扱い。
それを二人はよく知っている。
教師からして、結果を出さない生徒。
教師からして、結果を出さないばかりか夜中に騒ぎを起こした生徒。
そんな生徒のために笑顔で面倒を見て、夜中に呼び出された苦情も言わない。

「(珍しい人間だな…)」

垣根は少しだけこの教師を認めた。
上条と土御門も少しだけ癒されたような顔をしている。

「って土御門ちゃん!その赤いランドセルはなんですか!?ま、まさか小学校から盗って来たんじゃ。先生も一緒に謝ってあげますから、返しに行きますよ!」

上条と土御門が慌てて誤解を解こうとする。
それを背に垣根は外に出る。
暗い夜道に人影を見つけたからだ。

518 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/05/30(日) 14:05:40.84 ID:wBbjcnQo
「よう、こんな時間に出歩いてちゃ危ないぜ?」

くく、と垣根が笑う。
すると夜闇に映る一人の少女がこちらに近づく。
ワンピース姿の少女だ。

「あなたが妙な問題を起こしたから気になったのよ」

ワンピースの少女――心理定規(メジャーハート)がため息を吐く。

「ああ、そっか。悪いな」

垣根は特に気にしてないような顔で謝る。
それにメジャーハートは肩を竦ませる。

「どういうつもりなの?」

「ん?別に意図なんかねえよ。ただ上条に付き合ってるだけだ」

「あなた、護衛よね。一緒に事を起こす必要はないはずだけど」

「暗部の理屈なんて知ったこっちゃねえよ。俺はただ上条の友達だってだけだ」

誇るように言う。
メジャーハートは思わず目を丸くする。

「どうしたの?あなたが他人に付き合うなんて初めて聞いた」

「そうかい」

「ま、でも有り得ない話じゃないか。暗部にいる者だって多くは日常に大切な人がいる。あなたにはまだそういった人がいなかっただけの話ね」

「お前もそうなのか?」

「さあね。それにしてもレベル5も人間ってわけか。原子崩しや一方通行の噂ばかり聞いてると人間味がないように思えたのに」

「第一位なんてただのモルモットじゃねえか。黙ってテメェから研究者の言いなりになってるやつなんざ人間味とも言えねえよ」

「あなたはあまりにも飄々としていて、人間味がありすぎるのよね」

「へー。それで、これからどうすんだお前?」

メジャーハートは警備員室を見遣る。
上条たちが必死に誤解を解いている。

「私は帰るわ。送ってくれるの?」

真顔でそう答える垣根にメジャーハートがくすっと笑った。

「バカ言え。俺が送るのは上条だけだ」

522 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/06/06(日) 12:35:12.23 ID:lz7/Q4so [1/8]

「夏休みだな!」

「……」

翌朝。
目を覚ました上条の視界には、瞳を輝かせる垣根が映った。

「いや、違うだろ。まだあと二日あるような」

「何ぃ!?」

「ほれ」

上条は散らかっていたプリントを拾い上げ、愕然とする垣根に手渡す。

「マジかよ…上条~サボろうぜ?」

「学生の街で何言ってんだよ、夏休みを補習として削られるぞ」

「うぇ。んじゃ、行くか」

「そうだなー、うっし、着替えて朝食を作らないと」

「お?上条って料理できんの?」

「当店では朝食メニューはハムエッグや野菜炒めしか扱っておりません」

「小学生の家庭科実習以下かwwww」

「あっ、てめ!言いやがりましたね?じゃあ垣根様はできやがるんですか!?」

「いや、できん。つかする気もねえしな。…モーニングでも食いに行くか」

「そんなに上条さんの手料理は食いたくないと……てかモーニングとは何ですか?」

「上条…」

「えッ!?なんでそんな同情的な目で見るの!?やめて、上条さんのナイーブな心をこれ以上傷つけないでッ!」

「まあレベル0だと支給額低いしな…」

「お前さ、もうちょっと遠回しな言い方しようよ!確かに直球なお前の性格は嫌いじゃないけどさ!レベル5から同情されても嬉しかないやい!同情するなら能力をくれ!」

「おぉ、学園都市バージョンか。で、どうするよ。喫茶でも適当に探せばモーニングセット食えるぞ」

「うぅー、そんな贅沢そうなメニューは俺にはちょっと」

「俺がよく食いに行くところは1000円くらいだが、他はファミレスより安いぞ?大概珈琲付きで500円くらいか」


526 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/06/06(日) 13:46:19.04 ID:lz7/Q4so [2/8]
「結局、昨日はコンビニ飯だったしなぁ」

「俺なんかは暗部の仕事の合間だから、ファーストフードや外食で過ごしてきたんだがな」

「ふーん、お前も大変なんだな」

「ん、まあ今は全然だがな。お前の護衛するってことは他の仕事が全て回って来ないってことだし」

「ああ、そっか」

「よし、鍵は持ったし、忘れ物はなしっと」

上条と垣根は部屋を出て、鍵を閉める。
ふと、隣人のドアが開いた。
金髪のサングラス男、土御門元春だ。

「にゃー、二人ともちょうど良かったぜい」

「お、どうした」

「朝飯は食ったかにゃー?この時間に出るってことはまだかと思ったが」

「その通りだな、これから上条とモーニング食いに行こうとしていたところだ」

「良かったらシチュー食わないか?舞夏が昨日作ってくれたんが沢山あってな」

「朝からシチューか」

とは言いつつも、上条的にはありがたかった。

「まぁ俺としては大助かりだが、垣根は?」

「俺も別にいいぜ」

「にゃー、んじゃ入れにゃー」

と、土御門の妹手製のシチューを頂くことになったのだが。

「うめええええええええええええええええ!!」

垣根が騒ぎ立てていた。

「ナニコレ!上手いんだけど!ちょ、まじかよ料理スキルある娘っていいよな!」

「にゃー、褒めてくれるのは嬉しいが、舞夏に手は出させないぜー」

「うまっ!つか俺、初めてじゃね?手料理とか食ったの!レストランとかみたいに味濃くなくて、家庭的な料理っていいな!」

何気なく漏らす垣根の言葉に、上条はふと思う。
垣根に親はいなかったのだろうか…、と。

528 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/06/06(日) 14:25:41.14 ID:lz7/Q4so [3/8]
「はよーございます」

HR前。
上条達三人は小さな人影を見つけた。

「あっ、上条ちゃんに土御門ちゃんに垣根ちゃん。おはようございますー」

教師、小萌は小さな体で書類を抱えている。

「三人とも夜遅かったのに、遅刻しなかったですねー、先生は嬉しいです」

「にゃー、もう夏休みも近いしな」

「だな。遅刻なんてダサいぜ」

「垣根はサボろうとしただろ」

「何故ばらす!?」

「もー、垣根ちゃんは少し不真面目ですね」

「はいはい。その書類は何?」

垣根が小萌の持つ書類を指さす。

「これですかー?これは生徒さん達の能力のデータです。今日もう一つ採れば終了ですよ」

「てことはまたシステムスキャン?」

上条が首を傾げる。

「いえ、これは実験ですね。能力同士の共感による影響などを調べたりします。ですから、例えば精神感応系の能力者への催眠効果がいか程影響を与えるとかですかね」

「うえ、何言ってるか全然わからない…」

上条はうなだれ、気付く。

「てことはレベル0の俺は実験なしですか?」

「いいえー、先生としてはレベル0の人のほうが気になるのですよー。なぜ同じカリキュラムを受けて能力が発掘できないのか。逆に言えば能力が発掘できない人がいるということは、能力開発の定理に不備があるということです」

「逆転の発想か」

垣根が呟く。

「はい。もしかしたら、通常では能力が開発される環境で成されないという人は、他の何か可能性を持っているのでは?私たちにそれが解明できていないだけなのでは?というのが先生の持論です」

「てことは俺みたいなレベル0も実験を?」

「はい。簡単なテストです。能力者にのみ感応する音や光を受け、その反応を採る。先生からすればこの実験が今回一番重要なのです」

529 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/06/06(日) 14:45:34.94 ID:lz7/Q4so [4/8]
「おっはよー、上条」

「おう」

教室に入るとフレンダがいた。

「もうすぐ夏休みだね」

「まあな。俺は特に予定ないが」

「ありゃ?そうなの?上条のことだから補習尽くしかと」

「お前は俺を何だと…あ、そういや今日実験あるってよ」

「ふーん。上条も?」

「ああ」

「気を付けてね」

そう言ったフレンダの瞳は鋭かった。
上条には何に気を付けるのか、少し不思議に思った。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

『被験者、上条当麻、茨城信二、和野麻恵、入室してください』

アナウンスとともに白い部屋に入る。
上条の他に、クラスメイトの男女一人ずつ。
いずれもレベル0。

『部屋の中心の円に入ってください』

部屋の中央には丸い円が書かれている。
そこに三人は入る。
ブワッ、と音が鳴る。

『実験を始めます。3、2、1、スタート』

数秒。
しんと静まっている。
十秒ほど経っただろうか。
上条がそう思った時、再びブワッと音が鳴る。

『第一実験終了。続いて第二実験に入ります』

音の反応を調べたのか、と上条は納得する。
つまりそれは能力者にしか聞こえず、反応が起きないもの。
他二人もそうだと気付いたのか、微妙そうな顔をしている。

530 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/06/06(日) 14:56:43.24 ID:lz7/Q4so [5/8]
『第二実験、開始します。3、2、1、スタート』

パシャ。

光が弾けた。
単なる光ではない。
眩しくてすぐに目を閉じてしまったが、それは球体であった。
球体の白い光。
花火のように、それがたくさんの小さな光の粒に弾けたのだ。

バチッ!

上条の半歩後ろで紫電が飛び散った。

『エラー発生。…故障のようです』

またか、と上条は思った。
そして心中でため息を漏らす。

上条は不幸だ。

今日だって学校に来るまで、車にはねられそうになったり、学生寮から上条の頭上に布団が落ちてきたりした。
そのどれもを垣根が弾き飛ばし、ぶち切れていた。

実験だってそう。
上条の右手の影響ではない。
ただ、不幸な上条に影響されるだけ。

上条は右手を見つめる。

その時。

大きな音がした。

先ほど走った紫電の影響だ。

電気ほど厄介なものはない。

なんでも、それは影響するのだから。

白い部屋に備わる機器に紫電が飛び散った。

煙を散らす。

『大変だ!緊急事態発生!実験中止!…くそッ、信号を受け付けない!自動操作は…、ッ!どんな偶然だ、いや、偶然にしてはおかしすぎる、こんな、どうしてあの程度の故障でこちらに飛び火が!』

エラーコード。
赤い文字が部屋中に映る。
クラスメイトは狼狽する。

531 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/06/06(日) 15:03:15.19 ID:lz7/Q4so [6/8]
ビービー!

けたたましい音が鳴り響く。

『とにかく!その部屋を今すぐ出てください!現在何が作動するかわからな――ッ!!』

上条は見た。

クラスメイトの少女。

脅える彼女の眼前で消火システムが作動した。

白い煙が跳び出す。

「目を閉じろーッ!」

上条は叫び、駆けだす。

だが、到底間に合わない。

「――ッ!!」

声にならない絶叫。

少女は、体を震わせその場に倒れた。

上条は足が止まった。

止まったのに気付かず、膝を動かした。

足元がもつれてその場に転ぶ。

「あ、ぁあ…」

少女の目を、喉を消火システムは襲った。

見て取れた。

そして、こんな事態を引き起こしたのは誰か。

上条当麻。

二度目だ。

かつて銀行強盗の時と同じ。

自分の不幸が人を巻き込んだ。

その事実が、明るさを取り戻し始めていた上条の心(幻想)を――粉々に砕いた。

532 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/06/06(日) 15:10:10.44 ID:lz7/Q4so [7/8]
垣根帝督は、戻って来た上条の表情を見て狼狽した。

「な、何が起こった――」

聞こうとして、やめた。
聞けるわけがなかった。
それほどまでに、上条の瞳は光を失っていた。
上条は、部屋の前で待っていた垣根を通り過ぎて行く。

待て、待ってくれ、と声をかけたかった。

だが、かけられない。
上条の心はそこになかった。

何が起きたのかはすぐにわかった。
研究者に聞いた。
そして、

垣根帝督は激怒した。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「アレイスタァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーー!!」

窓のないビル。

それを前に垣根は咆哮した。

激怒。

激しい怒りが垣根を支配した。

辺りはしんと静まる学区で、垣根は叫ぶ。

「てめぇえ!!おい!!てめえがやったことはわかってんだよ!!」

垣根は叫ぶ。

「今すぐ応答しろ!!さもないとてめえらの情報を片っ端からバラシテいくぞ!!」

シュッ、と音がした。

テレポーターだ。

「どうしました、垣根帝督」

案内人がやってきた。



534 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/06/06(日) 15:36:17.09 ID:lz7/Q4so [8/8]
「何を騒いでいますか垣根ていt――」

グシャッ。

喋っている最中のテレポーターの顔面に、垣根の拳が突き刺さった。
そのまま後ろに倒れ、テレポーターが怒りを露わにする。

「何を――」

その時にはすでに、白い羽が展開していた。

バチバチと、それを震わせていた。

時折地面を叩いては、砕き飛ばす。

それを見てテレポーターの顔が真っ青に染まる。

「今すぐアイツのところに連れて行け!」

返事などしなかった。
そんなことをする余裕もなく、
テレポーターは垣根を窓のないビルに連れて行った。

『どうした垣根帝督』

アレイスターは平然と呟く。
垣根は少し落ち着いたのか、怒気を孕んだ声ではあるが、静かに答える。

「上条当麻の実験で不備が起こった」

『ふむ』

「あいつは不幸体質だ。だがな、これはおかしい」

『不幸に理屈などない』

「あいつの不幸の理屈を、お前は知っているだろうが」

『……』

「右手だろ」

垣根は言い当てる。

学園都市に七人しかいないレベル5の第二位の頭脳、垣根帝督は言い当てる。

「あいつの右手の影響で上条は不幸となる。だが、それに他人を巻き込むことは本来有り得ない」

545 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/06/06(日) 20:17:14.39 ID:lz7/Q4so [9/11]
『何故だ?』

「確かに、他人を不幸に巻き込めば、必然的に上条も不幸となるだろう。だが、どうして上条は不幸となるんだ?」

くく、と垣根は笑う。

「上条がお人よしだからだ。だが、こうは考えられないか?俺ならもし、他人を不幸にするチカラなら――とても魅力的に思える」

邪悪に笑う。

つまりはそういうこと。

「人間自分ってのが可愛い。例えばギャンブルなんかそうだろ?他人が外れろ、俺が当たれって思う。それで他人を不幸、不運にできたら最高じゃないか」

『……』

「もし、さらに卑屈なやつならどうだよ?テメェのテストの点数が60点だったとする。そこでみんなが100点を取ったとしたら、どう思うか――」

一つ、

「――〝自分も100点だったらいいのに〟」

二つ目、

「――〝他のやつらが、60点以下ならいいのに〟」

二つ目の、考え方。
とても卑屈な考え方。

「要は自分より下に落そうという人間、てめえが低い点だってわかってて周りもそうしようとする人間だったら、あの右手は不幸なんかじゃねえよな?」

上条に備わる右手は。

「それとも上条という人格者だから与えられたか?いいや違うだろう?あいつの不幸は〝生まれつき〟だよな。なら、遺伝はともかく生活環境で性格なんざコロリと変わっちまうし、なにより上条は信念を持って行動をするほど自制しているわけでもない」

すると、

「あいつの右手が他人を巻き込む可能性はない。根拠か?悪魔の力とは思えないからかな。だってそうだろ?超能力を打ち消すなんてまるで神様だ。ほら、こう言いたいんだよ神様は――【いい加減現実を見ろ】ってさ。それがあいつの右手の正体だ」

『神などというオカルトがいると考えるのか?』

「いるさ。科学的というより、論理的な思考となるがな。上条の右手だが、超能力でもないのに、異能の力を消す、それに不幸なんてオプションが付くなら、まるで〝オカルト〟だな」

『オカルトなら、悪魔とでも言うか?』

「ちげえよ。オカルトってのは例えだ。俺らの科学の力が、人間が導き出した法則だとするなら、オカルトとは天上の神からもたらされる法則なのではないか?ってのが俺の推測だ」




546 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/06/06(日) 20:33:39.55 ID:lz7/Q4so [10/11]
『……』

自分の能力が天使のように思えたことがある。
白い羽。
だからこそ、それに加えて柔軟な思考の垣根帝督だからこそ、そんな考えを持った。

『ならば、私がどうしたというのだ』

「未知源発(ダークエネルギー)はどうした?」

『ふむ…』

「チッ、やっぱそういうことかよ。あのコスプレアマぶち殺してやる」

『面白い空想の理論だったよ』

アレイスターが笑む。

「そりゃどーも」

アレイスターに対する怒りも失せ、垣根はその場を去ろうとする。

『まだ、幻想殺しの護衛は頼むよ』

去りゆく彼の背中に、アレイスターが声をかけた。
垣根は冷静になり、気付く。
自分程度が、まだアレイスターを殺せるわけがない。

「未知源発…この礼はさせてもらうぜ」

垣根はニヤニヤと笑いながら、上条の心配で胸を痛めていた。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「全く嫌な仕事だったなぁ」

綺麗な黒い髪の女子中学生はため息を吐く。
だが、その格好は女子中学生と言えない。
明らかに〝コスプレだと分かる〟高校生の制服。青のセーラー服でありながら派手、なお且つスカートはとても短い。

彼女の眼前には、一人の少年が転がっている。
上条のクラスメイトである。
催眠ガスで眠らせ、暗部のトラックの中に縛って放り込んでおいたのだ。
ふと、女子中学生――沙耶の横に少年が現れた。

「能力を解除するぞ」

どうぞ、と沙耶は手を差し出す。
その手に少年が触れると、淡い光が現れて消えた。

547 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/06/06(日) 21:02:33.28 ID:lz7/Q4so [11/11]
攫って眠らせた少年の名前は茨城信二。
上条と一緒に実験を受けるはずだった少年だ。
沙耶に付属していた能力は精神汚染。
沙耶に精神汚染の能力を付けて、周りに、沙耶が〝茨城信二〟であると錯覚させたのだ。

「この少年、どうするの?」

沙耶が精神汚染の少年に訊く。

「公園にでも放って置く。それより、早く逃げた方がいい」

茨城信二に成りすまし、沙耶は能力を使った。
沙耶の能力はこの宇宙に存在すると言われる、科学で解き明かしきれないエネルギーを操る事。
それを空気中にぶつけ、空気中の酸素に反応を起こした。
結果、紫電が弾け、機器に当たる。
それだけでこんな事故は起きない。
自動操作できないように力を展開させ、消火システムのボタンを未知の力で押して発射させた。

「なんで?」

精神汚染の少年はトラックに乗り込むと、扉を閉める直前に言う。

「第二位がこちらに向かっている」

バタン、とトラックは扉を閉めるとすぐに跳び出した。

「うわー、ひどい置いてけぼりだなぁ」

と、ため息を漏らすもその表情は明るい。

「こんな時のためにー、と」

携帯電話で一人の少女を呼び出す。

「もしもしー、今第二位に追われちゃってさぁ。…ん?化け物?確かにね。じゃあ、セブンスミストの前まで迎えに来てくれる?うん、テレポートで逃げたほうが追跡ができないしね」

携帯電話を切り、しまう。
呼んだのは黒いヒールの少女。
麦野に反抗し、居場所がなくなった彼女を引き取ったのだ。

「もうすぐ戦えるんだから、それまで待っててね?――垣根帝督」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

上条当麻の心は荒れていた。
どうしようもなく、荒んでいた。
もう、何もしたくないと無気力になっていた。
細い路地で、倒れこむ。
冷たい地面に伏せ、当てどころのない怒りに奥歯を噛み締める。
ちくしょう、と上条の腹から声が漏れる。
涙とともに。

577 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/06/19(土) 22:01:47.73 ID:umX6kM2o [1/5]

だから、背後に人がいることに気付かなかった。
上条は苛立ちに腕を振るい、近くにあったゴミ箱を弾き飛ばす。
その拳を地面に打ち付ける。
呪いのように、自身に秘められる不幸。
それを砕きたくて。
そんな迷信を、壊してしまいたくて。
でも、いくら打ち付けても、いくら血を流しても、それはなくならない。
不幸などと言う迷信を、幻想を砕くこの手で変えてはくれない。
何度も、何度も喚きながら拳を振るった。
憎くてたまらない自分を壊そうと、そうするその手が止まっていた。

「……」

小さな手が、上条の腕を握っていた。

「ッ!……!」

乱暴に振り向く上条の目の前に、月詠小萌がいた。

「それ以上自分を傷付けちゃだめですよ?」
「な、んで……!先生がここに…」

すると小萌はにこりと笑い、その腕に抱える花束を見せる。

「和野ちゃん…和野麻恵ちゃんのお見舞いに行くところなのですよ」

和野麻恵は上条のクラスメイトだ。
今回、上条が原因で負傷した少女。
その現実が、夢幻でないことを上条に見せつける。

「お、れ、が…」
「上条ちゃんもお見舞いに来ますか?きっと喜びますよ?」
「っ!」

行けるわけがない。
恐い。
どうしようもなく、怖い。
自分が原因で傷付けてしまった少女。
自分さえいなければこんな事にならなかったであろう、少女。
そんな少女に、
そんな少女を傷付けた人間が、
お見舞いに行けと?

「あっはは…」

乾いた笑い声をあげる。
お見舞いに行ったら、
また、自分の不幸に巻きこんでしまう。
そんなことはわかりきっているのだ。

579 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/06/19(土) 22:24:34.63 ID:umX6kM2o [2/5]
「俺が、傷付けたんですよ…?」

もし、それを言われてしまったら。

「俺の不幸が…巻き込んだ…」

――この、疫病神が。

かつて言われた言葉。
いくつもの、罵り。

――お前が来ると、不幸がやってくる。

物心ついた頃にはもう、聞き慣れていた。

――近寄るな、不幸を持ってくるな!

石を投げられた。
同級生は、
クラスメイトは、
その親までも、
上条の存在を憎んだ。

――来ないで

そう、何度も言われた。

「俺は…!怖い……」

それを再び言われてしまう事が。

「拳銃が……ッ」

あの日。
学園都市で、銀行強盗の拳銃が放った弾丸。
それが上条ではなく、別の人間を傷付けた。

「また、傷付けてしまうのが……!」

誰かを不幸にすることが、
誰かを巻き込んでしまう事が、

「たまらなく怖いんです……」

涙が頬を伝う。
その涙を、小萌が小さな指で拭う。

「大丈夫ですよ、上条ちゃんは悪くないです」
「でもッ、俺は…」
「上条ちゃんのせいではないです。だから、誰も上条ちゃんを責めたりしません。先生が言うんだから間違いないです」

581 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/06/19(土) 22:43:30.88 ID:umX6kM2o [3/5]

病室に、少女はいた。
ベッドの上で上半身を起こしていた。

「あ…」

少女――和野麻恵は、病室に入って来た小萌と上条に気付く。
少女は眼帯をしていた。
消火システムに襲われた片目は、失明には至らなかったそうだ。
喉には包帯が巻かれている。
呼吸器を付けてはいないため、喋るのが辛いと言う事はないようだ。

「先生と――上条君」

そう言って、少女は微笑んだ。

「ッ!」

たじろぐ上条。
小萌はにこりと笑う。

「大事には至らなかったそうで良かったです、和野ちゃん」
「はい。わざわざありがとうございます。…あ、花瓶はそこにあります」
「わかりましたー。それじゃ、上条ちゃん。先生は花瓶にお水を入れて来るです」
「あ…」

戸惑う上条を残して、小萌は病室を出て行く。
病室がしんと静まる。
上条は意を決して口を開く。

「ごめんなさ――」

「ねえ、上条君」

言いかけた上条を、少女は遮った。
上条が謝ろうとしていることを知って、あえてその言葉を遮った。

「覚えてる?数学教師の事」

それは二月ほど前の出来事。

「数学教師からセクハラを受けていた私を、上条君が助けてくれたよね?」

そう言って上条に微笑みかける。

「私、すっごく怖かった。毎日毎日、学校に行くのが嫌で仕方なかった」

嬉しそうに、少女は話す。

「そんな私をさ、上条君が助けてくれたんだよね」

582 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/06/19(土) 23:01:53.96 ID:umX6kM2o [4/5]
「休み時間にさ、セクハラされてた時上条君が通りかかって、数学教師の腕を掴み上げたんだよね」

その日。

「それで『何やってんだ!』って怒鳴ってさ、ろくに話したこともない私のために怒って、そして私をその場から連れだしてくれた」

上条も覚えている。

「すごいな、って思った」

あの後、セクハラの事を学年主任に伝えた。
学年主任が調べると、その証拠がたくさん出て、その数学教師は首になった。

「上条君は凄いよね。まるで関係ない誰かのために行動できるんだもの」

少女は、頬を染めて上条を見遣る。

「だから上条君は自信を持っていいよ。上条君は、誰かを不幸から救って上げられる人間なんだって」

「……」

「不幸体質なんて関係ないよ。私はさ、思うんだ」

「……」

「事故やアクシデントなんていくらでも起こり得る。だから今回だってそれだと思ってた。でも上条君が自分のせいだと思ってる」

「……」

「それって、ただの〝偶然〟なんじゃないかなって。確かに不幸体質なのかも知れないけど、それで誰かを巻き込んでしまうなんておかしな話だよね」

「……」

「転びやすい人、クジ運のない人、こういった人なんて山ほどいるし、科学的にも色々な憶測がある。でもね、事故や何かをその人のせいにするのはおかしいかなって。だって世界で一日にどれだけの事故が起こると思う?それが上条君の周りでいつも起きている訳でもないでしょ?なら、それはやっぱりただの偶然だよ」

上条は何も言えない。

「だからさ、上条君は何も気にしなくていいの。わかった?」

そんな言葉を、
今まで誰かにかけてもらったことがあっただろうか?
そんな見解をする人間が今までいただろうか?
いや、いない。
だから上条はそんな言葉がかけられるとは思わなかった。

だから上条は、涙を流していた。

「クラスのみんなもね、上条君の不幸なんて笑い飛ばせるんだよ?みんなと距離なんて取る必要ないんだから」

小萌を含めたこのクラスは、あまりにも優しい奴ばかりで、上条は泣き笑いしながら「馬鹿やろう…」と呟いた。

583 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/06/19(土) 23:23:48.50 ID:umX6kM2o [5/5]

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「よう、見つけたぜ」

垣根は白い羽を羽ばたかせ、その人物に嗤い掛けた。

「あっちゃー、見つかっちゃったか」

第三位、沙耶が困ったような顔をする。
その後ろには黒いヒールの少女が震えている。
黒いヒールの少女が、沙耶に向かって指先を伸ばす。

「テレポートか?」

びくっ、と黒いヒールの少女が震える。
垣根の声に。
その表情に。

「いいぜ、やってみろよ」

「い、言われなくてもッ」

空間を切る音がし、その場から黒いヒールの少女と沙耶の姿が消える。
垣根はポケットから一つの装置を取り出す。
AIMキャプチャー。
学園都市の現在いる学区が地図として映し出され、そこに特定の能力者を検索するとAIMを感知する機械だ。

「北東に19メートルか」

羽が振動する。
羽ばたき、周りの視線も気にせず垣根は飛び上がる。
ビル群を抜くほど舞い上がり、その体を半回転させて上昇を止める。
方向転換し、羽を後方に伸ばして目標に向かう。

「見ーつけた」

黒いヒールの少女と沙耶の後ろ姿を確認し、その羽を突き飛ばす。
白い羽は刃物のように尖り、黒いヒールの少女を狙う。

「危ない!」

沙耶の声に黒いヒールの少女は反応し、迫る白い羽に気付く。
咄嗟に避けるも、いきなり羽は分裂し、幾つもの羽が弾丸のように少女の背を撃ち抜いた。

「がぁっ!ごふっ…!」

地面すら抉るその羽に撃ち抜かれ、少女は身体中から血を噴出する。
口からどろっとした血の塊を吐き出すと、その場に前のめりに崩れ落ちる。
街中の通行人の叫び声が響いた。


603 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/06/28(月) 18:12:07.86 ID:aeGypP6o [2/3]
「ご、がぁっ…・・・」

黒いヒールの女は地面に伏せ、血を吐き続ける。
肢体のあちこちに空いた風穴から血は溢れ、影すら赤く染める。

「ごぁあっ!」

女の頭を垣根が踏み潰す。
グシャッ、と音を立て、顔面が地面にめり込む。
綺麗な黒い髪は今や赤く染まり、踏み潰されて汚く見える。

「さてと。あとはお前か」

垣根は女を踏みつけたまま沙耶を見遣る。
沙耶は緊張した面持ちで垣根の足元を見つめる。
その視線に応えるように垣根が足を振り上げる。

「がぁっ、が、ぎゃっ、ぁあああぁああああああああ!」

何度も踏み下ろす。
女の悲鳴と肉を打つ音。
骨がいかれる音に、鮮血が垣根の制服を濡らす光景。

「テレポートなんざもうできねえよ。これだけ頭にダメージがありゃあな」

垣根は狂ったように笑う。

「垣根帝督……あなたの目的は何?」

沙耶が恐る恐る聞く。

「てめえらを殺すこと」

「その娘(こ)を今ここで殺す気?」

「当たり前だ」

「そう……」

その答えがわかっていたかのように、沙耶は一度息を吐く。
そしてその目に力を込め、能力を発動させる。
注意深く、震える垣根の羽を見ながら。

「第三位如きが俺に歯向かうってか?」

沙耶の影が揺れた。
沙耶の周りの空気が揺れ、熱を帯びたかのように空間そのものがぶれる。
影から黒い霞が溢れる。
それは沙耶を中心にして、空気中に展開される。
同時、影はペンキのような黒さとなって地面を侵食していく。

604 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/06/28(月) 18:42:26.58 ID:aeGypP6o [3/3]
「未知源発(ダークエネルギー)の力、見せてあげるよ」

沙耶がにやりと笑む。
同時、垣根は足元まで黒い影が侵食してきたことに気付く。
羽を羽ばたかせ、飛び上がる。

「正解、よく気付いたね……これからすることに」

あっという間に黒い影は街中の通りを侵食しきっていた。
人々がパニックを起こし、逃げ惑う。
店などに避難しようとするも、影は店の締め切ったドアの隙間からも侵入する。
沙耶はただ道の真ん中で佇んでいる。
黒い霞が沙耶の周りで膨らむ。

「ねえ、人の“意識”って一種のエネルギーなのは知っているかな?」

沙耶の声とともに、ドサドサドサ!!と崩れる音がした。
垣根は空中から街中を見回す。
全ての人間が地に付していた。

「意識を強引に沈めたか」

「エネルギーだよ。人の意識、それこそ心理掌握みたいに操れるわけじゃないけどさ。私にだって物理攻撃以外もできるんだよ?」

強引なシャットダウン。
パニックを起こしていた人間たちはみな、倒れている。

「暗部としての隠蔽か」

「そ。あとで精神操作系の能力者呼んで記憶を書き換えとくの」

「はっは!随分と派手で、面倒な仕事だな」

「誰のせいなのかな?」

沙耶の周りに蠢く霞。
それが一つの大きな“手”を創り出す。
巨人のような、ゴーレムのような手。
手は空中に飛ぶ垣根に向かう。

「あぁ?なんだそりゃ」

垣根の羽が伸びる。
その先端を構えると、弾丸のように小さな羽が飛び出す。
霞の手が指を広げる。

空間が歪んだ。

重力をぶつけられたように、飛び出した羽がミシミシと音を立てて崩れる。
霞の手が羽を掴み、潰す。



続きます!&現時点で作者より明かされてるまとめ↓

373 名前:pasuta ◆QXQDE8vvhs[saga] 投稿日:2010/05/02(日) 22:35:43.37 ID:FfscYtso [12/12]
まとめ更新

オリジナルキャラ

・心理掌握(原作の設定を元に構成)
・不良2(スキルアウトの一人。結構頭の回転が速い…ロリコンでない人)
・青髪(〝原作の青髪ピアス〟に設定付属。元AIM保護の銀髪少年。レベル5の一人だったが死んだことになった。能力は超能力が効かないことと、体晶によって相手の超能力を奪うことができる。死んだフリで暗部を抜け、整形した。
通常時はレベル3のAIM抵抗(AIMレジスト)。ピアスに触れると絶対防御が復活してレベル5の能力を取り戻せる)
・〝死吸部族(デッドドレイン)〟。学園都市の暗部組織。戦闘狂。武装している。殺人に快楽を求める。猟犬部隊(ハウンドドッグ)ができる前の組織。暗部に存在する。
・平助(対暗部組織、雨蛙のリーダー。レベル4の水蒸気操作〟の能力者。ビジュアル系の見た目に反して静かな口調で話す。カエル顔の医者を〝先生〟と呼び、先生をバカにされると表情と口調が変わる)
・アヤ(かつて心理掌握によって壊された少女の身体に心を入れた。心理掌握を〝ママ〟と呼び慕う。現在フレンダと友達になる)
・紫色のバンダナの少年(死亡。次回からリスト削除)
・黒いヒールに長い髪の少女
・発火能力者の大男


原作キャラ(詳しくはwikiで)

・フレンダ
・麦野沈利
・鉄網
・カエル医者
・上条当麻
・布束
・丘原
・佐天涙子
・一一一(ひとついはじめ)
・アレイスター・クロウリー
・垣根帝督
・月詠子萌
・土御門元春


現状で名前出てきたキャラはこんなとこ。

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