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律「一番大切なもの」

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 00:17:35.34 ID:3RdLHAD10 [1/119]
生温かい湿気が纏わりつき
気分も沈みがちなこの季節
私は間近に控えた中間テストに向けて幼馴染と図書館に来ていた

律「しかし、じめじめとした日が続きますなぁ」

澪「梅雨なんだから当たり前だろ?」

律「こうも湿気が多くては勉強する気力が・・・」

澪「何言ってるんだよ、一緒に勉強しようって言ってきたのはおまえだぞ?」

律は机に肘をつきながら窓に目を向け、
しとしとと降り続ける雨をつまらなそうに眺めていた
私はふと律の白紙のノートに目をやり、呆れかえった
参考書にはなんだかよくわからないライオンのような落書きがされている

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 00:18:41.44 ID:3RdLHAD10 [2/119]
澪「まったく・・暇さえあれば落書きばっか・・昔から変わらないな」

律「ふふ・・この落書きがなんだか分かるかい、お嬢さん」

澪「・・さぁ」

律「これはね、はるか昔から田井中家に伝わる晴天の使いなのさ」

澪「へぇ、そうなんだ」

律「信じてないな?」

澪「信じてるよ」

律「嘘だ」

澪「ホントだよ」

律「・・・」

澪「・・・」カリカリ

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 00:19:39.81 ID:3RdLHAD10
こうでもしないと律は自分から勉強しないからな
少し冷たい様だけど、これが律の為になるんだ
テストの結果が悪いと軽音部の部活動にも色々と支障をきたすだろ?
律がいない部活動なんて寂しいじゃないか

私が相手をしてくれないと悟ると律は渋々とペンを握った
少ししてようやく私に分からない問題を尋ねてくるようになった
一問一問律と一緒に問題を解いていった

律の勉強に対する集中が途切れる夕方まで
私達は共に時間を過ごした

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 00:20:22.68 ID:3RdLHAD10
澪「田井中家に伝わる晴天の使いも大した事ないんだな」

律「くそ~どんだけ降るんだよ~・・」

澪「さぁ、帰るぞ・・あれ?」

律「どしたの?」

澪「傘・・ないし・・」

律「ん、ホントだ、私の傘ともう一つ・・」

澪「図書館を出る人が私達で最後だから・・」

律「誰かが間違えて澪の傘持って行っちゃったんだろうな」

澪「まいったな・・どうしよう・・」じっ

律「(なんで私を見る・・・)」

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 00:21:07.74 ID:3RdLHAD10
律「べ、別にその傘使ってもいいんじゃない?交換て事で!」

澪「それはダメだ!・・人の物を勝手に使うのは良くないだろ!」

律「・・ま、まぁそうだよな・・」

律「・・・」

澪「・・・」

律「・・・」ばさっ

澪「・・・」

律「ほら、澪・・早く」

澪「・・あ、ありがと・・」///

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 00:21:49.88 ID:3RdLHAD10
幼い頃から親友にずっと抱いている感情
それは友情なんかじゃなくて
もっと深い感情

私はね
律の事が好きなんだ

律「なんか澪と相合傘なんて久しぶりだな、小学生の頃以来か?」

澪「そ、そうだな・・あ、私が傘持つからいいよ」

律「いいって」

澪「いいから、私の方が背高いんだし・・」

律「ん、ありがと」

澪「・・・いいよ」

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 00:22:47.98 ID:3RdLHAD10
あえて自分の感情を伝えようとは思わないよ
女性が女性を好きになるなんて、おかしいと思うのが普通だ
私だってそのくらいは心得てる
それ以上に素直に自分の感情を律に打ち明けるなんて事は
臆病者の私には到底不可能な事だった

それでも私は入学して1年以上経った高校生活に充実感を覚えていた
ただ、律と一緒にいられれば満足だった

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 00:23:43.42 ID:3RdLHAD10
澪「もうすぐ律の家だな」

律「しっかし全然雨止まないなぁ」

澪「・・ありがとう律、ここからは走って帰るよ」

律「え、なんで?泊ってかないの?」

澪「えっ、そんなつもりはないけど・・」

律「濡れちゃうじゃん、今日はもう泊ってきなよ」

澪「・・え・・でも・・」

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 00:25:23.84 ID:3RdLHAD10
律「いいじゃんいいじゃん、明日も学校休みなんだしぃ」ぐい

澪「あっ、おい律!」

律と今晩ずっと一緒にいられる
本当はすごく嬉しい事なのに、
私は素直に自分の感情を表す事ができないんだ
いつもそうなんだ
どこか強がってしまう
もっと素直になれたらいいのに

唯みたいにさ

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 00:26:49.43 ID:3RdLHAD10
澪「晩御飯ごちそうさまでした」

律「ごちそうさま!」

聡「いただきました!」

律母「いいのよ、澪ちゃんウチに来た時は遠慮しないでね」

澪「はい、ありがとうございます」

律母「あ、そうそう・・律達は今日お風呂入る?」

律「って当たり前だろいっ!」ビシッ

律母「やっぱり?今日壊れちゃったみたいでお風呂使えないんだけど・・」

律「えぇ~そうなの・・」

澪「そうなんですか・・」

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 00:27:38.05 ID:3RdLHAD10
律母「っていう訳だから今日は銭湯行ってきてね、ごめんね澪ちゃん」

澪「あ、いえいえ・・」

律母「はい、律」

律「?」

律母「お金」ぱさっ

律「お札ですか?!・・ってか多くない?・・いくら澪の前だからって・・」

律母「どうせ帰りにアイスとかジュースとかお菓子とか買ってくるんでしょ?」

律「あ、よくわかってらっしゃる・・」

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 00:28:42.48 ID:3RdLHAD10
澪「あ、ありがとうございます」ぺこり

律母「あんまり無駄使いしないようにね、澪ちゃんよろしくね」

澪「はい、まかせて下さい」

律「・・じゃあ、早速行ってくるか!久々の銭湯!」

律母「ちょっと・・ちゃんと聡も連れてくのよ?」

律「わかってるって・・おーい!聡」

聡「なにー?」

律「今から銭湯行くから準備しろー!」

聡「えっ、今日銭湯なんだ!」

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 00:29:37.07 ID:3RdLHAD10
律の家族は本当にみんな仲が良い
ここに来ると私もその一員になれた様な気がしてきて
本当に気持ちが良くなってくる
うまく言えないけど
私と律と律の家族はこんなに仲が良いんだよって
誰かは分からないんだけど、誰かに自慢したくなるんだ

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 00:30:39.44 ID:3RdLHAD10
澪「雨止んでるな」

律「ほらほら~すごいだろ?落書きのおかげだよ」

澪「そうかもなっ」

聡「・・・」じっ

澪「・・・?」

聡「・・・///」プイッ

律「・・・」ちらっ

律「良かったなー聡、愛しの澪ちゃんと銭湯に行けるなんて」テクテク

聡「はっ!?へ・・へんな事言うなよな!」///

澪「・・・」くすっ

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 00:31:33.96 ID:3RdLHAD10
澪「聡は今、中2だっけ?」

聡「はい・・」

澪「どう、学校は楽しい?」

聡「色々大変です・・部活とか・・勉強とか・・」

澪「そっか、勉強は律に教えてもらったらいいんじゃない?」

聡「ねえちゃんはダメです、教えるのてんで下手くそだから」

律「おいっ!」チョップ

聡「いって・・そうやってすぐ怒るのがいけないんだよっ!」

律「なにを~~~」ぐりぐり

聡「う~~離せっ!」

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 00:33:31.16 ID:3RdLHAD10
澪「聡、今度私が勉強教えてあげるよ」

聡「」

律「おっ」

聡「ほ、ホントですか?!」///

律「良かったな~聡、こんな美人さんに家庭教師してもらえるなんてなかなか無いぞ?」

澪「ちょっと、律!」///

聡「・・・うへへ」

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 00:35:31.66 ID:3RdLHAD10
私には兄弟がいない
だから律と聡の会話は私にしたらとても新鮮で
羨ましくもあった
だからこんなやりとりに憧れを持ってしまうのかもしれない
実際こんな弟や妹がいたら可愛いんだろうな
私はそんな事を考えながら歩みを進めていた

澪「ここの銭湯は久しぶりだな」

律「昔はよく来てたんだよなぁ」

澪「じゃあ聡、後でな」

聡「はい!」

律「覗くんじゃないぞ~?」

聡「覗くかっ!」

ガチャ パタン

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 00:39:01.44 ID:3RdLHAD10
律「ここ昔から温泉使ってるんだよなぁ」

澪「知ってる、けっこう有名だよな」

律「肌もぴちぴちにしてくれるぞ?多分」するする・・

澪「・・・!」

律「ん、どしたの?」

澪「・・えっ?・・なんでもない・・」///ぷいっ

澪「そ、そうだよな!肌もぴちぴちだっ!」

律「どうしたんだよ澪、突然顔赤くしちゃって」

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 00:40:27.06 ID:3RdLHAD10
律「のぼせるにはまだ早いぞ~?」ぬぎぬぎ・・

澪「う、うるさいなっ!」

律「で、なんで脱がないの?」

澪「い、いいからっ、先に入っててよ!」

律「相変わらず恥ずかしがり屋だな、澪は」

律「別に澪の着替えてるとこ見たりしないぞ?」

澪「・・・」

律「ま、いいや・・じゃ、先行ってるぞー?」がらがら・・

澪「・・・」

澪「・・・」ドキドキ・・

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 00:41:36.62 ID:3RdLHAD10
なんでだろう?
この緊張は前にも経験した事があるな・・
あ、一年前の合宿の時だ
あの時もみんなでお風呂に入ったっけ
みんなの前で着替えるのは恥ずかしかったなぁ

別に女性同士なんだから気負う必要はどこにも無い筈なのに・・
私がこんなに緊張してしまうのは、私が臆病だからかな?

私は髪を繕い、ゆっくりと衣服を脱いでいった
こんなこと人前で堂々と行えるような事ではない
堂々と行える律の強心臓振りに感心しながらも
私は律の家から借りた大きめのバスタオルをはおり、浴場への扉を開けた

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 00:43:14.26 ID:3RdLHAD10
澪「・・・」がらがら・・

律「みおー遅いぞ~?」

澪「ご、ごめん」

律「体流して澪も浸かりなよ、今日なんかしんないけど誰も人いないぞ!」ぽかぽか

澪「う、うん」ザザー

澪「・・・」

澪「・・・ちゃぽん」

澪「お客さん私達だけなのか?珍しいな・・」

律「まぁ、いいんじゃない?貸し切り貸し切り♪」

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 00:44:41.79 ID:3RdLHAD10
澪「・・・」ドキドキ・・

律「・・・」

澪「・・・」ドッキンドッキン

律「・・・」

カポーン・・

なぜか気まずい
無駄に広く感じるこの浴場で、お互いの声がこれでもかと響き渡る
律と二人きりになれる事は普段ならむしろ嬉しい事の筈なのに・・
なぜなんだろう?

わかった
この状況が良くない
お互い裸で会話せざるを得ないこの状況が私に緊迫感を与えているんだ
第一私の胸のドキドキは脱衣室から高まるばかりじゃないか・・
律への目のやり場もなんか困るし・・
まともに顔を見て話せない

それでも何か会話をしないと・・

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 00:46:21.67 ID:3RdLHAD10
澪「わ、私がこの前行った銭湯は人一杯いたんだけどな」

律「澪もけっこう銭湯行ったりするんだな」

澪「言う程行ってないけど・・たまにはね」

律「・・にしては慣れてない感じだぞ?」

澪「そ、そうかな?」

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 00:47:55.99 ID:3RdLHAD10
そうじゃないか
私はやっと自分の矛盾点に気がついた
何度も銭湯を経験している筈なのに
なぜ今日に限ってこんなにも緊張しなくてはいけないのか?
いくら小心者の私でも今までは銭湯でこんなに緊張する事はなかった
こんなに私が心を惑わされているのは、さっきも言った通り1年前の合宿以来・・

共通点は・・

律「澪、お湯ほっぺにもかけとけっ」ぴちょ

澪「わっ!ちょっと律!」///

律「あははっ、澪のほっぺ柔らかいなぁ、もっとぴちぴちになるぞ?」

澪「わ、わかったから律!手離してくれっ」かぁ

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 00:48:43.28 ID:3RdLHAD10
律がいる事だった
律が私の心を惑わしているんだ
考えてみれば簡単な事じゃないか
私は律に恋愛感情を抱いているんだ
自分が恋愛感情を抱いている人と二人きりで一緒にお風呂に入り、
冷静でいられる人間は果たしてどれだけいるんだろうか?
そう考えると例え女性同士であるとはいえ、
私の今の心情は極々自然の事であるような気がした

律「悪かったよ、みおー、そんな怒るなよっ」

澪「ま、まったく・・銭湯で騒いだら周りの人に迷惑だろ!」

律「周りの人いないけどな」

澪「いなくてもマナーはちゃんと守らないとダメだろっ!」

律「はいっ!すみませんでした!髪洗ってきますっ」ザァ

澪「(立ち上がると目のやり場に困るってば・・)」///

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 00:50:29.68 ID:3RdLHAD10
律「澪も一緒に洗うかー?」スタスタ

澪「わ、私は後でいいや、もうちょっと浸かってる」

律「そっかぁ・・うわっと」はらり

澪「ドキン!」かぁぁ///

律「みおー、バスタオルはだけちゃった・・」

澪「い、い、いいから、は、早くまとえって!」///ぷいっ

律「あははっ、なーに赤くなってるんだよっ澪」

澪「う、うるさいっ!のぼせてるだけだっ!」///

心臓に悪い銭湯だった
本来ならば心落ち着く筈のバスタイムは
私にしてみたら終始緊張の連続だった
律との銭湯は今後控えよう

でもなんだかんだで楽しかったな

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 00:52:30.09 ID:3RdLHAD10
がらがら・・

律「おー聡、待った?」

聡「遅いし!お金ねえちゃんが持ってるから飲み物も買えなかったんだぞ!」

澪「ごめんな聡、遅くなっちゃって・・」

聡「いえ、全然待ってませんから」キリッ

律「おかしなやつだな、ほらっ聡何飲みたい?」

聡「バナナミルクで」

律「はいよ、私達はこれなっ」

澪「あ、ありがとう」

律「あ、帰りにコンビニ寄っていきたい」

澪「あんまり無駄使いしたらダメだぞ」

律「わかってるって」

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 00:53:11.12 ID:3RdLHAD10
聡「・・・」

律「ほら、聡帰るぞ」

澪「どうしたんだ聡?ぼーっとして・・」

聡「え?あ、うん」

律「どうせのぼせたんだろ」

聡「じー・・(ちょっと髪が濡れてる澪さん可愛すぎる・・良い匂いもするし)」

聡「(・・来て良かった・・)」ジーン

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 00:54:17.65 ID:3RdLHAD10

――
―――

律の部屋

律「はい、澪のアイス」

澪「ありがと」

澪「なんか今日は蒸すな・・」ペロッ

律「雨は上がったんだけどなー、やっぱり梅雨は嫌いだ!」ペロペロ

澪「どうする?時間もあるしもうひと勉強・・」

律「えー・・今日はもうやめておこうぜ?」

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 00:55:24.54 ID:3RdLHAD10
澪「そ、そうか・・じゃあ今日はもう寝とくか?」

律「えーまだこんな時間じゃん、寝るにはもったいないっす!」

澪「わがままなやつだな・・じゃあ何するんだ?」

律「そう言うと思ってぇ、これを用意しておきました!」ジャン

澪「・・う、こ、これは・・」

律「もの凄く怖いと評判のホラーDVD借りておきました!」キラーン

澪「わ、私はそんなもの見ないからなっ!」

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 00:56:33.21 ID:3RdLHAD10
律「まぁ、そんな事言うなって、一緒に見ようよ」

澪「いやだっ」

律「さっき蒸すなぁって言ってたじゃん、多分涼しくなると思うけどなー」

澪「いやだっ!」

律「心霊映像ものなんだけど、こういうのって全部作り物らしいよ、だから・・」

澪「いやだっ!!」

律「・・・わかった見るのやめるよ」

澪「やだっ!」

律「じゃあセットするね」ニヤニヤ

澪「え?いや、違くてっ!ちょっと律!」

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 00:57:47.57 ID:3RdLHAD10
律「大丈夫だよ澪、怖くなったら抱きついてきていいから♪」

澪「・・・えっ・・?」

律「・・・な?」

澪「・・・う、うん・・わかった・・」

律「よし、それじゃあ・・」パチッ

澪「え・・電気消すの?!」

律「こういうのは雰囲気作りが重要なんだぞ?」

澪「細かいやつ・・」

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 00:58:52.84 ID:3RdLHAD10
私があんなに拒絶したのはね
別に勉強がしたかった訳でもなくて、寝たかった訳でもない
私は本当に怖いものが苦手なんだ

ふと思った事がある
律は・・私の気持ちに気づいているのかな?
だ、だって・・
「抱きついても良いよ」だなんて・・
普通はそういう関係を持ってる人同士じゃないと言えない事だよね?
ずっと思ってはいけない事だって自分自身決めつけていた
律にもひょっとして・・・
私が律に抱いているような感情があったりするのかな
そんな事が頭をかすめ、私の中で何かの勢いがついた
怖いものが苦手な癖にさ
これから起こるかもしれない何かを期待して私は律の提案に乗る事にしたんだ

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 00:59:35.03 ID:3RdLHAD10
DVD「おわかり頂けただろうか?」

律「うわー・・なんかいるし・・澪、見た?」

澪「・・・」ガクブル

律「ははっ・・澪にはやっぱりきつかったな・・」

澪「・・・だ、大丈夫・・だ!」

律「おいおい無理するなー、目つぶってろよ」

澪「た、大したことないじゃないか・・」

律「声震えてるし・・うわっ、またきたこれ」

DVD「おわかり頂けただろうか?」

律「澪、今のはヤバ・・」

澪「・・こわい・・グスッ」ぎゅ

律「・・・」///

澪「・・・ぎゅ」

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:01:13.66 ID:3RdLHAD10
ああ・・私は何をやっているのか
この消極的な私が律の腕に抱きつくなんて積極的な事・・
思い出しただけでも恥ずかしくなる・・

別にこうなる事を最初から期待していた訳じゃない
あのDVDが本当に怖かったんだ
私が律の腕に抱きついた時
律に言われた抱きついても良いという言葉は私の頭にはなかった

DVDを見ている間、私は律の横に座って、怖くなりそうなシーンがくると
うつむいてみたり、TVを見つめる律の横顔をふと眺めてみたりしていた
律が前髪を下ろしているせいかな?
それとも私が苦手な怖いDVDを無理して見たせいかな?
なにか律の表情がいつもよりすごく頼れる存在に感じたんだ
そう感じた瞬間と、怖いシーンが流れたのはほとんど同時で
気がつくと私は律の腕に顔を埋め、少し涙を流してしまっていた
もう高校生にもなるのに・・
こんな姿、みんなには絶対に見られたくない

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:02:25.59 ID:3RdLHAD10
律「ご、ごめんなー澪、大丈夫か?」

澪「・・・大丈夫」グス

律「見るのやめる?」

澪「・・大丈夫だよ・・ほんと・・怖いけど見る」

律「無理してるだろ?」

澪「・・してないよ・・律が・・」

律「?」

澪「り、律が横にいてくれれば・・見れるから・・」///

律「な・・なーに言ってんだよ澪!ははっ」///

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:03:35.60 ID:3RdLHAD10
律の前でこんなに素直になれたのは久しぶりだ
素直に思いを伝えられた自分が不思議に思えた
でも、本当の事だった
律の腕の中は本当に安心していられた
律の温もりや、律の香りが私の恐怖を確かに和らげてくれた
怖いものは苦手だよ?
だけどそれ以上に律ともう少しこうしていたかった
DVDを見続ける事でこの幸せな時間を少しでも長く続けたかった

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:04:38.67 ID:3RdLHAD10
DVD「このビデオを視聴して良からぬ事が起こっても当方では一切責任を持ちません」

律「さ、最後に嫌な一文乗せるんだな・・後味悪・・」

澪「・・終わった?」

律「終わったな」

澪「・・そんなに怖くなかったな」

律「てゆーか見てないだろ、ほとんど」

澪「見てたぞ、指の間からちょこっと・・」

律「まぁ、澪にしてはがんばったよな・・」

澪「もう二度と見ないからな!」

律「へいへい」

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:06:27.02 ID:3RdLHAD10
本当は見たいんだよ
律と一緒に本当はまた見たいんだ
私はなんでこんなに不器用なんだろう・・

また・・

誘ってくれるよね?律

律「じゃあ、そろそろ寝ますか」

澪「そうだな」

律「澪がベッド使いなよ、私は布団敷くから」

澪「いや、でもそれは悪いし・・」

律「いいから、いいから」

澪「あ、ありがとう」

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:07:26.34 ID:3RdLHAD10

――

律「じゃ、電気消すぞー?」

澪「うん、おやすみ」

律「おやすみー」パチッ

澪「・・・」

律「・・・」

澪「・・・」

律「・・・」

律「澪・・今度さぁ、除湿機買うから買い物つきあってよ」

澪「この季節やっぱり必要だよな」

律「じめじめやだー・・」

澪「子供か・・」

律「・・・」

澪「・・・」

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:08:23.91 ID:3RdLHAD10

――

律「・・・」すーすー

澪「・・・」

律「・・・」すーすー

澪「・・・」

澪「(・・・ね、寝れない・・)」

眠りにつけない理由は分かりきっていた
私はベッドの中でひたすら後悔していた
あのDVDを見てしまった事に・・・

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:09:29.12 ID:3RdLHAD10
いい年しながら怖いものを見てしまったから眠れない
なんて情けないんだろう私は・・
まぶたを閉じてもあの時の強烈なあのシーンが目に焼き付いてしまっている
目を開けていても、それはそれで暗闇に覆われた律の部屋が怖く感じる
耳に入ってくる律の寝息だけが、私に唯一の安心感を与えていた

澪「(うう・・情けない・・)」

律「・・・」すーすー

お約束と言っていいんだろうか
こういう時に限って尿意が私に襲いかかってくる訳で・・
律にまた馬鹿にされるかもしれない
しかし、私に残されている選択肢は1つしかなかった

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:10:45.31 ID:3RdLHAD10
澪「りつ・・」

律「すーすー」

澪「りつ・・おきて・・」ゆさゆさ

律「・・ん、むにゃ・・み・・お・・どうした?」

澪「・・・」

律「?」

澪「いっしょに・・」

律「・・・いっしょに?」

澪「・・と、トイレいこ・・」

律「」

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:11:33.14 ID:3RdLHAD10

――

カチャ パタン

澪「ごめん律・・寝てるとこ起こしちゃって・・」

律「いや、別に良いんだけどさ・・」

律「・・・」

澪「・・・律?」

律「寝れないの?」

澪「えっ?あ、うん・・ひ、人のウチだとちょっと緊張するっていうか・・」

律「・・・」

澪「・・ははっ」

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:12:11.45 ID:3RdLHAD10
律「DVD・・」

澪「ドキッ」

律「・・のせいでしょ?」

澪「・・・」

澪「・・・はい・・」

律「怖くて寝れないの?」

澪「・・・うん」

律「・・・そっか」

澪「・・・」

律「・・ごめんな澪」

澪「・・いいよ」

律「なぁ・・澪」

律「・・・私の横なら眠れそう?」

澪「・・・・え?」

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:13:10.30 ID:3RdLHAD10
律「だって怖いんでしょ?」

澪「・・・うん」

律「・・・」

律「・・ほら、澪・・・おいでっ」

澪「・・・」

澪「ありがと・・律」

律「どういたしまして」

これまでの長い付き合いの中で
律と同じ布団で寝る事なんて過去にあっただろうか
あったとしても遠い昔の話になるだろう

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:14:02.68 ID:3RdLHAD10

――

律「・・・」

澪「・・・」

律「・・・」

澪「・・・」

耳に入る律の呼吸
密着する事によって伝わる律の温もり
遠い昔経験した事のある懐かしい律の香り
そして私を気遣って、自身の布団へ招き入れてくれた律の優しさ
その全てが、先ほどまで恐怖が支配していた私の心を和ませてくれるものだった

でもね・・律

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:14:41.07 ID:3RdLHAD10
澪「(・・もう寝たのかな・・)」ちら

律「・・・」すーすー

澪「・・・」

ごめんね律
せっかく律に優しくしてもらったんだけど・・
眠りにつけないのはやっぱり変わらないよ・・
当たり前だろ?

律・・
私は律の事が・・・

律「・・ん・・うぅん・・」

澪「(・・・!)」ドキドキ・・

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:15:30.64 ID:3RdLHAD10
唐突に律が私の方へ顔を傾けた
律の吐息がよりいっそう近くで感じられる
ふわっと律が使っているシャンプーの匂いが漂った
律の小さな手が私の胸の辺りに置かれる

胸を締め付けられるような感覚が私を襲った
苦しいような、切ないような・・
まるでその感覚に導かれる様だった
気がつくと私も律の方へ、顔を傾けていた

律「・・・」すーすー

澪「(・・りつ・・)」

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:16:13.80 ID:3RdLHAD10
いつも明るく活発で、いざという時にいつも頼れる・・
昔から誰にでも優しくて、困っている人を見るとほっとけないんだ
幼馴染をしている私から見て
律の良いところだけを上げればそんなところだ

私は月明かりに照らされた律の顔をじっと見つめた
しかしそこに私が昔から知っている律の姿はなかった

静かに寝息をたて、無垢な表情で私の肩に顔をうずめるこの姿は
華奢で可憐な少女を私に印象つけた
普段よりもずっと幼く、そしてか弱く感じさせた
当たり前の事だけど、
律も私達と変わらない普通の女の子なんだ
ひょっとしたら私や他の人達よりももっと・・・
律はそんな一面を持っているのかもしれない
律の寝顔を見つめる事で
律の意外な内面を垣間見た気がした

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:16:46.06 ID:3RdLHAD10
律「・・ん・・んん・・」ぎゅ

澪「(・・・?)」ドキドキ・・

うなされている?
悪い夢でも見ているのか

律「ん・・ううん・・み・・お・・」

澪「(・・今、私の名前?起きている・・?)」

律「ん・・むにゃ・・」すーすー

澪「(・・・寝てる・・よな)」

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:17:20.89 ID:3RdLHAD10
律「・・み・・お・・」

澪「?」

律「いく・・な」

澪「・・・」

澪「・・・」

律が私の衣服をきゅっとにぎる
私はそれに応えようととっさに律の赤く染まった頬を手で撫でる
無意識の行動だった
心臓の鼓動が自分でも聞き取れるくらいに激しくなる

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:17:59.13 ID:3RdLHAD10
澪「(大丈夫だよ・・律・・ずっとそばにいるよ)」スス・・

律・・
律の事を思うとね・・?
胸が・・苦しくなるんだ
いつもきゅんと締め付けられる・・
息をするのも辛く感じる程に・・
今だってそうなんだ

律・・
律が今起きたらどうなってしまうんだろう?
自分の顔をこんなに律に近づけて・・
律の頬に手をあてて律の顔をじっと見つめて・・
律が今目を覚ましたら私はきっと嫌われてしまうんだろうな・・
こんな事して悪いと思ってるよ
でもね・・律

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:18:35.18 ID:3RdLHAD10
律「・・う・・んん・・」すーすー

澪「・・・」ドキドキ・・

律の顔・・
かわいい顔・・
もっと近づいていいかな?
もっと近くで律を感じていたいよ
ごめんね律

澪「・・・」スス・・

律「・・・」すーすー・・

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:19:10.89 ID:3RdLHAD10
律・・
こんなに近くまできちゃった・・
律の吐息が肌で感じられるよ
律の寝息、かわいいんだね
私達・・長い付き合いだけど、
こんな距離までお互い近づいた事って、今までにないよね
初めてのことだ

ねえ律

抱きしめても・・いいかな

澪「・・・」ぎゅ・・

律「・・ん・・」

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:19:41.31 ID:3RdLHAD10
律の甘い匂い・・
柔らかな感触・・
自分の顔が紅潮しているのが自分自身で分かる
これまでに経験した事の無い律との距離感を感じる事で
私自身いままで必死に制御していた律への思いが
一気に溢れだした

律「・・・」

澪「・・・」スー・・

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:20:32.07 ID:3RdLHAD10
律・・
起きちゃ・・ダメだよ?

律・・
ごめんね・・

私もう・・
自分の気持ち
抑えられないよ・・

律・・

澪「・・・ん・・」

律「・・・」

律と唇を重ねた
やってはいけないと自戒をこめていた事
私は今、それを破ってしまった

まっさきに感じたのは律への罪悪感だった
私は意識の無い律の無防備な唇を
一方的に奪ってしまったのだから

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:21:10.71 ID:3RdLHAD10
私はそれ以上の事は望まなかった
短い口づけを済ませた後
直ぐに私は律との距離をはかり、
当初の天井を眺める体勢に戻った

澪「・・・」ドキドキ・・

律「・・むにゃ・・」


ごめんね
私、いつかきっと必ず
律に思いを伝えるから
ちゃんと律が起きている時に・・
きっと凄い勇気がいるんだろうけど・・
私頑張るから・・
だから、その時まで・・

待っててくれるかな?

律・・愛してるよ

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:22:15.51 ID:3RdLHAD10

――
―――

唯「りっちゃん」

律「ん~?」

唯「最近元気ないよ?なにかあったの?」

律「いやーそれがこの前なんか変な夢見ちゃって・・」

梓「へー、どんな夢だったんですか?」

律「・・・それは」

律「言えないっ!」

唯「えー、気になるよぉ」

律「絶対に言えない!」

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:24:10.50 ID:3RdLHAD10
放課後のみんなでの下校時間
りっちゃんが最近元気ないのは確かなんだ
心配して聞いてみたのは良いんだけど
りっちゃんは頑ななに私達にそれを教える事を拒んだ
いったいどんな夢を見たんだろう・・?
テストで赤点とる夢かな?

唯「りっちゃんのけちんぼ」

澪「(も、もしかしてあの時の・・)」

律「まぁ、ご想像にお任せします・・ん?」

律「ムギー、どうしたんだー?」

梓「雑貨屋さんのウインドウ眺めてますね」

紬「あ、これこれ~」

唯「可愛い物でもあったの?むぎちゃん」タタッ

澪「ん?これは・・」

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:25:37.36 ID:3RdLHAD10
むぎちゃんが指をさした先には
全アルファベットが可愛く彩られている
小さなストラップが並べられていた

紬「これ、おもしろいわ~」キラキラ

唯「ホントだね~むぎちゃん、最近お店に入ったっぽいね~」キラキラ

梓「可愛いデザインですね」

律「閃いた!」

澪「?」

律「これ、みんなで買おうぜ、一人一文字ずつさっ」

律「みんなでKEIONの文字買って携帯につけようっ!」

澪「ちょうど5人だから良いかもなっ」

梓「良いですねっ、それ!」

唯「りっちゃん隊員さすがっ!」

紬「そうしましょう!」パァ

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:26:33.24 ID:3RdLHAD10

――

店員「ありがとうございましたー」

律「みんなーつけたか?」

梓「はい」

唯「うんっ!」

澪「ああ」

紬「・・・じー・・」にこにこ

律「むぎー、嬉しそうだなっ」

紬「え?あ、こういうの、初めてだから・・」

澪「けっこう可愛いデザインだな」

唯「むぎちゃんが見つけてくれたおかげだねっ」

澪「そうだな、ありがとう!むぎ」

梓「ありがとうございます、むぎ先輩」

紬「どういたしまして~」にこにこ

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:27:16.53 ID:3RdLHAD10
唯「あっ、りっちゃん」

律「どしたぁ?」

唯「今日・・駅前まで一緒に買い物行かない?」

律「あ、ごめん・・今日澪と一緒に除湿機買いに行く約束してるんだ」

唯「そ・・そうなんだ・・」

澪「唯も一緒に行くか?」

唯「えっ?あ、うん、私はいいよっ!憂が待ってるから」

唯「また明日ね~」たったった

律「・・・?」

澪「・・・?」

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:27:57.16 ID:3RdLHAD10
憂「おかえり!お姉ちゃん」

唯「うーい、ただいま・・」

憂「お姉ちゃん・・?」

唯「?」

憂「元気ないよ?・・何かあったの?」

唯「え・・そんな事ないよ・・着替えてくるね?」トボトボ・・

憂「(どうしたのかな・・お姉ちゃん・・)」

カチャ・・パタン・・

唯「・・・」

唯「・・・はぁ・・」ボフッ

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:28:47.76 ID:3RdLHAD10
ギー太をいつもの場所に置く
本当は着替えてからでないと憂に怒られるんだけど・・
私は力無くため息を発しながらうつ伏せに自分のベッドへ倒れこんだ

唯「・・・りっちゃんのばか・・」

私はベッドに向かってそう呟いた
りっちゃんが悪い訳じゃない
そんな事は分かってるんだけど・・・

楽しみにしていたんだ
この前おいしいアイス屋さんを見つけたんだ
今日りっちゃんと二人きりで行く予定だったのに・・
りっちゃんが好きそうなアイスまで調べてたんだよ?
アイスを一緒に食べて喜ぶりっちゃんの顔が見たかったのに・・

私は・・
私は・・りっちゃんの事が好きなんだ

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:29:55.33 ID:3RdLHAD10
憂「(コンコン)」

唯「・・・」

憂「お姉ちゃんっ、ごはんだよ」カチャ

唯「・・・」すー

憂「おねえちゃんっ、制服のままで寝ちゃダメじゃん!」

唯「ん・・うい・・おはよう・・」ふわぁ

憂「もう・・皺になっちゃってるよ?後でアイロンするから出しておいてね?」

唯「ごめんね・・うい・・」

憂「(やっぱり元気ないなぁ・・)」

唯「・・・」

憂「今日のごはんはからあげだよっ、早く食べよう!」

唯「・・・うん、ありがとう・・すぐにいくね」

憂「・・・う、うん(お姉ちゃん・・どうしちゃったんだろう?)」うるっ

76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:30:40.47 ID:3RdLHAD10
憂「今日のからあげはどう?」

唯「うんっ、とってもおいしいっ」

憂「そ、そう・・良かった」

唯「ごちそうさま・・」

憂「えっ?!・・まだこんなに余ってるよ?」

唯「ご、ごめんね憂・・なんか食欲無くて・・」

憂「え、そうだったんだ?も、もしかしてどこか体調悪いの?」

唯「ううん、平気、今日はもうお風呂入って寝るね・・」

憂「う、うん!早く寝た方がいいよ」

唯「お風呂・・先に入っちゃうね?」

憂「うん、パジャマ用意しとくからっ」

唯「・・・ありがとう」スタスタ・・・

憂「(お姉ちゃん・・)」

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:31:20.87 ID:3RdLHAD10
ブーブー・・

憂「あ、おねえちゃんっ、携帯鳴ってるよ!」

唯「えっ」タタッ

パチッ

Title 今日はごめんなー
From ☆りっちゃん☆

本文
澪の方が先に約束してたからさっ!
明日唯の買い物付き合うよ

私にあまりお金使わせるんじゃないぞ~~

除湿機買って部屋が快適になったぞ!
唯も今度ウチ来いよなっ

唯「・・・」

78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:31:59.11 ID:3RdLHAD10
唯「あははっ」

憂「?」

憂「どうしたの?お姉ちゃん」

唯「ううんっ、何でもない!」

憂「そ、そう・・(お姉ちゃんが笑った)」

唯「う~い、私やっぱり食欲出てきたみたい!」

唯「おかわり欲しいなぁ~~♪」

憂「う、うん!一杯食べてね(お姉ちゃん・・良かった・・)」

唯「アイスも食べたい~」

憂「もう、お風呂から上がってからね?」

79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:33:06.51 ID:3RdLHAD10
りっちゃんからのメールでこんなにも幸せになれる
明日一緒にお買いものに付き合ってくれるって
りっちゃんの部屋に今度行ってもいいって

りっちゃん
きっとその時りっちゃんの笑顔いっぱい見れるね
私は・・
私はそれだけで・・


唯「~♪」

お風呂から上がって
布団に横になりながら、りっちゃんとのメールを楽しんだ
返信メールが届くまでの時間がすごく長く感じる
もどかしいな
りっちゃんと話したい事いっぱいあるんだよ?
電話しちゃおっかなぁ?
そんな事を考えている私に、ひとつのメールが届いた

80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:33:56.06 ID:3RdLHAD10
Title さっきはごめん
From ☆澪ちゃん☆

本文
今日は買い物に付き合えなくてごめん
律から聞いたんだけど、明日放課後行くんだって?
律が私も一緒に行こうって・・

一緒に行ってもいいかな?

唯「・・・」

りっちゃん・・
なんで・・?

私が勝手に思ってるだけなんだよね・・
りっちゃんも、澪ちゃんも悪くないんだ
だけど・・
私はこの瞬間、りっちゃんに裏切られた気がした

私は・・私はりっちゃんと二人きりで・・

切なかった・・
涙が頬をつたう程に・・

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:34:49.92 ID:3RdLHAD10
Title もちろん!
To ☆澪ちゃん☆

澪ちゃんも一緒に行こうよ!
おいしいアイス屋さん見つけたんだ☆
みんなでいけばもっと楽しいよっ♪

パチッ

唯「・・・」

唯「・・・」ぼふっ

部屋の電気を消しまたベッドにうつ伏せになった
もう今日は寝てしまおう
寝て全部忘れてしまおう
嫌な事は、時間が経てば薄れていくから・・

でもりっちゃんへの気持ちは
りっちゃんと顔を合わせる度に強くなっていくんだ
不思議だね、りっちゃん

りっちゃん、おやすみ

82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:35:50.10 ID:3RdLHAD10

――


唯「・・ん・・うぅん・・」ぱちっ

不快な気分で目を覚ます
嫌な汗が私の体に纏わりついている
時間は午前2時を指していた

唯「・・ん・・」ぼー

もう一度寝ようと試みる
まぶたを閉じて朝日が昇るのを待とうとした
しかしまぶたを閉じるとそこには
私の安眠を妨げている光景が私の脳裏に写し出される
嫌な汗の原因もそれだ

唯「・・・」スクッ・・

もう一度眠れそうもない
仕方なく上体を起こし、
暑くなった私のおでこを自身の手で押さえたまま、
自身の布団を見つめる格好で俯く

唯「(・・嫌な光景・・・)」

83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:36:44.99 ID:3RdLHAD10
夢から覚めてもなお私の気分を沈めさせるその光景は
頭からいっこうに離れようとしない

その光景はね
りっちゃんが私の前に現れるんだけど・・
その横には必ず・・澪ちゃんがいるんだ
二人は笑みを浮かべて私の方を見てる
二人並んだその立ち姿は、きっと大半の人が魅了されちゃうと思う
二人とも美人さんで、かっこよくて・・
お似合い・・なんだ
ものすごく・・

その光景にはまだ続きがあって
りっちゃんを残して澪ちゃんが途中でいなくなっちゃうんだ
でね、今度は私がりっちゃんの横に並ぶんだけど・・
澪ちゃんに比べると
私はなんて不格好なんだろうって・・

私からみても、りっちゃんには澪ちゃんがお似合いだなって思って・・
でも・・
それを認めたくない気持ちは私にはあるんだ・・
りっちゃんの横にいて、ふさわしい人になれたらって・・

84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:37:33.41 ID:3RdLHAD10
唯「いこう・・」スクッ

頭がぼーっとしてうまく働かない
どこに歩みを進めているのか・・
私はまだ・・そんな年じゃ・・
自分でも自分のとってる行動がよく分からない
でも・・私にはこれしか思いつかなかったんだ
今の気持ちを抑えられる方法はこれしか・・

カチャ・・パタン・・

唯「・・・」ストン

不在の両親の部屋に入り、
お母さんが使っている化粧台の前に立つ
化粧台の鏡が私の全身を映しだす
幼い顔・・もっと美人さんだったら・・
私はおそらくお母さん以外がかけた事がないであろう椅子に腰を落ち着かせた

85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:38:26.35 ID:3RdLHAD10
唯「・・・」じー・・

化粧台の引き出しを開ける
口紅、ファンデーション、マスカラ、これは・・何に使うんだろう?
見なれない物も中には混じっている
私はその中から一つの化粧品を取り出し
鏡に顔を近づけた

唯「・・んっ」スー・・

唇に赤い紅を塗る
私の唇が赤く染まっていく
慣れない手つきで唇を塗り終えた
残念ながら暗闇のせいで自身の顔がどう変わったのかよく分からない
確認する為に私が部屋の照明を点けようと椅子を立った瞬間
誰かの手によって部屋の照明が点けられた

86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:39:17.53 ID:3RdLHAD10
憂「お母さん?帰ってきてたの?」

唯「・・わわっ」びくっ

眠っていた所を無理して起きてきたんだろうな
憂が目を擦りながら部屋の照明を点けた

憂「お・・お姉ちゃん・・何やってるの?」

唯「・・うい・・・私きれいになりたい・・澪ちゃんみたいに・・」

憂「・・・澪さんみたいに?」

唯「・・・うん・・」

憂「・・・」

唯「・・・」

憂「お姉ちゃん・・口紅ずれてるよ」

87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:40:00.57 ID:3RdLHAD10
唯「えっ・・あ、本当だ・・」

憂「拭いてあげるからこっち来て」

唯「・・うん、ありがと憂」

憂「・・・勝手にこんな事したらお母さんに叱られちゃうよ?」フキフキ

唯「ごめんね・・うい」

憂「それに・・お姉ちゃんは十分可愛いよ、お化粧なんてまだ早いよ」

唯「でもっ、きれいになりたくて・・」

憂「・・・(元気が無かったのってこういう事なのかな?)」

憂「はい、口紅落ちたよ」

唯「ありがと、憂」

89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:41:04.37 ID:3RdLHAD10
唯「うい・・私今よりきれいになりたいの・・お化粧の仕方分かる?」

憂「私も・・よくわからないからなぁ・・」

唯「・・・そうだよね」シュン・・

憂「・・・」

憂「やっぱりスタイリストさんにやってもらった方が良いんじゃないかな?」

唯「・・すたいりすと?」

憂「うん、ほら美容院とかでやってくれる人だよ」

唯「きれいにしてくれるのっ?」

憂「うん、多分・・」

唯「ありがとっ憂!」だきっ

憂「(お姉ちゃんも・・そういう年頃なんだ・・)」

91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:42:27.98 ID:3RdLHAD10

――
―――

天気も良く晴れた日曜日の朝
今日は私が待ちに待っていた日だった
りっちゃんと遊園地に遊びに行く日
りっちゃんはみんなで行こうと行っていたんだけど
私がわがままを言って二人きりで行く事になった
前日の夜はあまり眠れなかったけど
勿論今日を最高の日にする為下準備は怠らなかった

唯「おはよう、うい」

憂「あ、お姉ちゃん!自分で起きれたん・・・だ・・」

唯「あれっ、どうしたの憂?」

憂「・・・」ぽー

唯「ういー??」

92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:44:27.21 ID:3RdLHAD10
憂「え、いや、お姉ちゃん変わっちゃったから・・」

唯「も~憂、昨日も見たのに慣れないの?」

唯「どう憂?・・・おかしく・・ないかな?」

憂「うんっ!とってもきれいだよっ!」

唯「良かったぁ、朝ごはんもらうね?」

憂「うんっ食べよう」ドキドキ・・


憂「(なんかお姉ちゃんがお姉ちゃんらしくなっちゃったな・・)」

唯「・・おいしい~」モグモグ

憂「(あっ、でもやっぱり性格はお姉ちゃんのままだ)」じー

唯「憂・・?食べないの・・?」

憂「・・えっ、あ、うん、今から食べようと思ってたとこ」ドキドキ・・

93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:45:20.74 ID:3RdLHAD10
TV「今日の占いです、今日一番の運勢は射手座のアナタ☆」

唯「あ、憂!やった、今日一番の運勢だって!」

憂「ホントだ、良かったね、お姉ちゃん」

TV「特に恋愛運絶好調☆愛しのあの人に急接近かも??」

唯「やったぁ、きっと今日は最高の日になるよお!」

憂「えっ」

唯「・・え?」

憂「だって今日は律さんと遊園地だよね?・・・今なんて・・?」

唯「・・・」

憂「・・・」

94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:46:21.93 ID:3RdLHAD10
唯「あー!もうこんな時間!早くしないとっっ、ごちそう様!」

憂「えっ、あ、・・お姉ちゃん?」

唯「行ってきま~す!おみやげ買ってくるからねっ!」

憂「ちょ、お姉ちゃん、待って・・」

バタンッ!

憂「・・・」

憂「・・・」

憂「・・・」

TV「今日一番悪い運勢は魚座のアナタ、身近な人に裏切られちゃうかも・・気をつけてね☆」

憂「えっ・・」

憂「お姉ちゃんに・・」

憂「・・彼氏・・?」うるっ

98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 02:21:06.87 ID:3RdLHAD10
さるでした


ちなみに唯は「Listen!!」の時のイメージで書いてます


唯「りっちゃーん!」

律「えっ、あ、人違いです」

唯「ひどっ!・・私だよお」

律「・・・え、唯?・・なのか?」

唯「唯ですっ!」びしっ

律「うっそだろ?・・全然気付かなかった!」

唯「えへへ・・ちょっとおめかししてみました」

律「なんだよー、いいなー、髪の毛超サラサラじゃん!」

唯「変・・かな・・?」///

律「そんな事ないぞー、めっちゃ可愛いと思う!」

唯「ありがと、りっちゃん!」だきっ

99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 02:22:28.35 ID:3RdLHAD10
りっちゃんに可愛いって言われた
努力が報われた気がしてとても嬉しかった
貴重なお小遣いを使って、すたいりんぐ?・・をしてもらった甲斐があった
少し私の願望に近づけた気がして良い気持ちになれた
そんなこんなで私達は時間通り遊園地行きのバスに乗り込んだ

律「しっかしホントにきれいになったなー・・」じー

唯「そ、そうかなぁー」テレッ

律「な、なんかさぁ・・これだけ綺麗になっちゃうと・・」

唯「?」

律「一緒にいる私が存在感無いっていうか・・」

100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 02:23:52.72 ID:3RdLHAD10
唯「そ、そんな事ないよお!」

律「唯の横にいてしまって恐縮というか・・」

唯「!」

律「ま、そんな事思ってないけどなっ!」

唯「も~りっちゃん」

律「へへっ」

りっちゃん
それを思ってたのは私の方なんだよ?
私がずっと悩んでた事・・
私の方こそ・・横にいても良いのかな?

りっちゃん、今日はいっぱい楽しもうね

101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 02:25:36.29 ID:3RdLHAD10
律「ゆーいー!こっち来てみろよー!」

唯「どうしたのりっちゃん?」

律「まずはアイツからだっ!」

唯「おおっ、メリーゴーランド!」キラキラ


――

唯「りっちゃーん、このスイカの馬車一緒に乗れるみたいだよっ!」

律「それスイカじゃなくて、かぼちゃだからっ」

唯「え~スイカにしか見えないよ?」

律「かぼちゃだからっ!100%」

唯「え~・・・」

102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 02:27:10.90 ID:3RdLHAD10

――

唯「りっちゃん回しすぎだよ~」

律「まだまだぁ!」

唯「りっちゃん~~もう無理ぃ~」

唯「・・・」

律「ご、ごめんな唯・・そういえば唯乗り物酔いしやすかったもんな・・」

唯「まだ目が回ってます・・」ふらふら

律「コーヒーカップは辛かったか・・よしっ、気を取り直してアイツだな」びしっ

唯「観覧車?」

103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 02:28:25.63 ID:3RdLHAD10

――

唯「わあ~、高いねりっちゃん」

律「もうすぐ頂上だな!」

唯「向こうに私達の町が見えるよっ!」

律「良い眺めだな~」

唯「見えた!りっちゃんの家見えたよっ!」

律「ホントか?!」

唯「ほらっ、あのちっちゃい家!」

律「どうせ私の家はちっちゃいですよー!」じたばた

唯「りっちゃん暴れちゃ危ないよ!観覧車揺れてる!」

律「おぉ、ここで落ちたら死んじゃうな・・」

唯「りっちゃん・・死ぬ時は・・一緒だよ?」

律「唯・・」がしっ

唯「りっちゃん・・」がしっ

104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 02:31:04.07 ID:3RdLHAD10

――

唯「遊園地って食べるものがいっぱいあって何にしようか迷っちゃうね」

律「そうだなー、おっ?」

唯「どうしたの、りっちゃん?」

律「見ろよ唯、ジャンボ6段アイスだって」

唯「えぇ~!!」キラキラ

律「買っちゃったよ・・」

唯「・・えへへ」

律「しかし・・でかいな」

唯「私一人じゃ食べきれないよ~りっちゃんも一緒に食べて?」

律「まかせろいっ!」

唯「おいしいねーりっちゃん」

105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 02:33:14.40 ID:3RdLHAD10

――

唯「りっちゃん、次はお化け屋敷行きたい!」

律「よしきた、えーと地図によると・・あっちだな」

唯「いこう、いこう!」

唯「り、りっちゃんから先行ってよ・・」

律「えー・・唯から先行けよお・・」

唯「こんな暗い所・・歩けないよぉ・・」

律「仕方ないな・・唯、つかまってろよ?」

唯「うんっ」がしっ

106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 02:34:21.35 ID:3RdLHAD10
律「・・・」トコトコ・・

唯「・・・」トコトコ・・

律「・・・出るなよー・・出るなよ・・」

お化け「うおおおおおおお!!!!」

律・唯「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

唯「りっちゃん、無理だよ無理―!」がしっ

律「唯、それお化けだから!抱きついてるのお化けだぞ!」

お化け「///」ちらっ

唯「わあああぁぁぁ!!」

律「逃げろ唯隊員!走るんだっ!」

唯「りっちゃん~怖いよ~~!」

お化け「うおおおおおおお!!!」

律・唯「ぎゃあああぁぁぁぁ!!」

107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 02:35:20.85 ID:3RdLHAD10

――

汗を流しながら私達は日が沈むまで遊園地を駆け回った
りっちゃんはすごく笑っていた
私との二人っきりの遊園地、楽しんでくれたみたいだよ

ここに来る前はね、
実はちょっと不安だったんだ

りっちゃんは私と二人っきりでもあの眩しい笑顔を見せてくれるのかなって
でもそんな私の不安は時間が過ぎるにつれて、薄れていって
今日という日を最高の一日にする事ができた

律「・・・」くー・・

唯「・・・」

帰りのバスの中
りっちゃんははしゃぎ疲れちゃったのかな?
私の肩に、顔を預けて眠ってしまっている

辺りはすっかり暗闇に覆われ、
バスの窓から入ってくる街のネオンライトがりっちゃんの寝顔を映しだしている

109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 03:02:43.30 ID:3RdLHAD10
律「・・・」すー

唯「・・・」にぎっ

りっちゃん
寝息まで立てちゃって・・
かわいいな・・

りっちゃん・・今日はありがとう

私のわがままにつきあってくれて
私の事をかわいいって言ってくれて
私にいっぱい笑顔をみせてくれて
私を・・
私を心の底から幸せにしてくれて

私はりっちゃんの小さな手をとり、
指と指を絡ませて、手をつないだ

りっちゃんの手・・あったかいね
とっても優しいあたたかさだね

110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 03:03:42.92 ID:3RdLHAD10
唯「・・・」スッ

律「・・・」

肩に預けられたりっちゃんの顔に自分の顔を近づける
りっちゃんの髪と私の髪が密着する
こうやって近くでりっちゃんを感じていると・・

すごく気持ちいいんだ
なんでだろ・・?
なんだか、落ち着けるっていうのかな?
ううん、ちょっと違う・・かな?

なんていうか・・
りっちゃんに全てを包みこまれたいっていうか・・
私とりっちゃんが・・このまま一つになれたらって
そんなのが一番近い感じがする

りっちゃんが・・恋しいよ・・

111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 03:04:39.53 ID:3RdLHAD10
唯「・・・」ぎゅ

律「・・・ん・・」

唯「・・!」

律「・・・あっ・・ごめん唯・・寄りかかっちゃって・・」スクッ

唯「・・・」ぐい

律「わっ・・唯・・?」

唯「いいよ・・りっちゃん・・私の肩まくらにしても」

律「い、いやっ・・でも・・」

唯「大丈夫だよ・・りっちゃん・・」

律「ゆ・・い・・?(え、てか、手・・繋いでるし・・)」///

唯「・・・」ぎゅ・・

律「あ、ありがと・・な・・」///

112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 03:05:42.32 ID:3RdLHAD10
りっちゃん、私ね
りっちゃんとずっと・・
一緒にいたいんだ

高校を卒業しても・・
ずっと・・りっちゃんと一緒にいたい
離れたくなんかないよ・・
ずっと・・
ずっと私の傍にいて?
私もずっとりっちゃんの傍にいるから・・

りっちゃん

大好きだよ

143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 22:17:20.78 ID:3RdLHAD10

――
―――

梓「唯先輩、すごく変わりましたね」

唯「そ、そうかな?」

梓「すごく似合ってますよ!」

唯「ありがと~あずにゃん」

紬「なんだか、大人っぽい感じ♪」

唯「そ、そうかな~」

律「だよな~、クラスのみんな驚いてたもんなぁ」

144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 22:18:53.81 ID:3RdLHAD10
いつも通りの放課後のティータイム
この日の話題は唯が可愛く変身した事についてだ
ホントに唯は可愛くなった
遊園地に行ったあの日の朝、
声をかけられた唯に、ドキッとさせられた
なんだか可愛いから美人へって感じの変貌だ
くそー・・
なんか女として唯に先を越された感じだ・・

澪「でもさ、唯、なんでいきなりイメチェンする気になったんだ?」

唯「そ、それは・・」

律「(あれ・・なんだろう・・?)」

唯の目線が澪の顔から外される
何か不吉な予感がしたのはこの瞬間からだった

律「(この・・光景・・前にも見た事があるような・・)」

145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 22:20:45.91 ID:3RdLHAD10
梓「確かに気になりますね・・唯先輩の性格からしてちょっと意外な気が・・」

律「べ、別に似合ってるからいいんじゃないかぁ?ははっ」

律「そ、それよりもさっ」

全てを思い出した
この光景を私は前に一度経験した事がある

嫌な夢だった
二度と見たくない夢だ
もちろん予知夢なんてものは信じてはいなかった

しかし、嫌な予感を感じ話題を逸らそうと発した私の言葉は
その嫌な夢の中で私が発した言葉とまったく同じものだった
もちろん澪が唯に問いかけた言葉も
梓が口にした疑問の言葉も同様だった

その瞬間私は確信したんだ
このままじゃ・・
あの嫌な夢は正夢になってしまうって
このままじゃ・・いけないって・・
なんとかしないとって・・

146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 22:21:42.69 ID:3RdLHAD10
律「今日はもう練習始めないか?学際も近い事だし!」

澪「珍しいなっ、律がやる気だ」

梓「そうですね、練習しましょう、練習!」キラキラ

唯「・・・」

律「・・・唯?」

澪「・・・」

澪「理由なんて、関係ないか・・」

澪「私達もそういう年頃だし何も不思議じゃ・・」

唯「澪ちゃんにはきっとわからないよ・・」

澪「・・えっ?」

律「・・・」

147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 22:22:51.14 ID:3RdLHAD10
唯、やめてくれ
それ以上喋らないでくれ
頼むから・・

唯「きっと・・澪ちゃんには分からない事だよ」

澪「ど、どうしたんだよ唯、私何か変な事言ったか?」

ピリっとした空気が辺りに流れた
おそらく部室にいる全員がそれを肌で感じ取ったと思う
私はこれ以降、言葉を発する事ができなかった
その場に俯いたまま、床を見つめる事しか私にはできなかった
これがまた夢である事を、胸の中でひたすら願うだけだった

紬「ちょ、ちょっと・・二人とも・・」

梓「えっ・・唯先輩・・?」

唯「・・・」

澪「・・・」

148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 22:23:52.62 ID:3RdLHAD10
沈黙が包む
澪はどうしたらいいのか分からないんだろう
唯は必死に自分の感情を抑えているんだろう
そんな場面に陥っても私はみんなと同じく沈黙を続けていた
私はなぜ・・

なぜ澪を
なぜ唯を

助けてやれなかった?

唯「澪ちゃんは・・いいよね・・美人さんで・・かっこよくて」

澪「・・・私の事は・・今は関係無いだろ?」

唯「それに・・いつも・・」

澪「・・・?」

唯「(いつもりっちゃんと一緒にいられて・・)」

唯「いつも・・そうなんだ・・」

149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 22:25:27.80 ID:3RdLHAD10
澪「唯・・どういう事だ?・・勘にさわる様な事言ったのなら謝るよ・・」

唯「だから・・」

澪「・・・?」

唯「澪ちゃんには・・絶対わからないよ・・」

澪「・・・」カチン

澪「ちゃんと言ってもらわないと分からないよっ!」ぽろっ

唯「!」

紬「ちょ、ちょっと澪ちゃん・・」

梓「もう、やめてください・・」オドオド・・

151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 22:26:46.90 ID:3RdLHAD10
律「・・・」

唯「・・ぐすっ・・澪ちゃんのばか・・」たたっ

よせ・・
行くな・・唯・・

行くな・・

ガチャ・・パタン・・

澪「・・・グスッ」

律「・・・」

紬「・・・澪ちゃん・・」

梓「・・・」

澪「・・・ごめんみんな・・ちょっと今日は・・帰らせてもらうね・・」

行くな澪・・
行かないでくれ・・
戻ってきてくれ・・

152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 22:28:59.95 ID:3RdLHAD10
澪「・・・」カチャ・・パタン・・

私は俯いたままスカートをぎゅっと握りしめた
私は確かに感じていた
澪と唯の今のやりとりは・・
透きとおった一点の曇りもない綺麗なガラス玉に
ピシッっと亀裂が入ったような・・
そんなイメージを私の頭の中に植え付けさせる

これを放っておくと・・きっとその綺麗なガラス玉はバラバラになって
跡かたも無くなってしまうんじゃないかって・・
この時の私の胸中はそんな感じだった

紬「・・・」

梓「・・・」

律「・・・」

160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 23:01:32.91 ID:3RdLHAD10
静寂があたりを包んだ
残された3人はしばらく言葉を発するのを忘れてしまった様に黙りこくった
お互い目を合わせる事もしない、みんな机の一点を見つめていた。
3人とも今の状況を受け入れたくない気持ちは同じだと思う
でもこれは・・
現実なんだ・・

残酷で受け入れがたい・・
現実なんだ

梓「先輩達・・どうしてあんな事を・・」

長い沈黙を破り、最初に言葉を発したのは梓だった
まるで自分の身に起こった事の様に梓の顔つきは沈んでいた
軽く俯いたその瞳は、私が今までに見た事がないくらいに
哀しい目をしていた

163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 23:14:48.81 ID:3RdLHAD10
律「・・・」

紬「・・・」

律「ま、まぁ澪も唯も一晩経てば気持ちも収まるだろっ」

梓「・・・そうでしょうか・・」

紬「・・だと・・良いけど・・」

律「・・ははっ」

本当にそうだろうか?
沈んだ二人を励まそうと嘘をついた自分が滑稽に思えた
本当の私は、このままだと取り返しのつかない事態に陥る気がしてならなかった
それを残された二人も十分に感じていたんだろう
2人の沈まりかえっている表情を眺めると心が痛む
この嫌な空間をどうしたらいいのだろう

165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 23:23:04.15 ID:3RdLHAD10
律「・・・」

律「・・二人とも・・今日は私達も帰ろうぜ」

紬「・・・」

梓「・・・」

律「・・やっぱり・・5人揃って練習したいだろ?」

紬「・・りっちゃん・・」

梓「・・ですね」

166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 23:32:19.12 ID:3RdLHAD10
心からの本音だった
別に部長の貫録だとか責任を果たしたかった訳じゃない
本当に思った事を2人に伝えただけだった

だってさ

私が作った軽音部なんだよ
私が澪を誘って、ムギを誘って・・
少ししたら唯が入って来てくれて
4人でいっぱい・・じゃないかもだけど必死に練習して
私達の全てがこもった演奏を聴いて梓が入ってきてくれて・・

ここが・・
ここが私の居場所なんだ
軽音部が私の居場所なんだ

私達は誰ひとり欠けても、いけないんだ

167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 23:37:48.39 ID:3RdLHAD10
梓「・・お疲れ様でした・・」ぺこり

律「お疲れ様」

紬「また明日ね」

重い足取りで梓が音楽室の扉へ歩みを進める

梓「・・・律先輩、ムギ先輩!」

梓が歩みを止めこちらを振り返る

律「・・・?」

紬「・・・どうしたの?梓ちゃん」

梓「・・・」

梓「・・・」ぽろっ

梓「き、きっと・・また前みたいに・・みなさんと一緒に演奏できますよね?・・グスッ」

169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 23:43:20.44 ID:3RdLHAD10
紬「梓ちゃん・・」

律「・・・」

律「・・・ああ」

律「心配するな・・梓、必ず元通りになる」

梓「・・グスッ・・」

梓「・・ひっく・・そう・・ですよねっ」

まるで自分に言い聞かせる様だった
涙で顔を歪めた梓が必死につくった笑顔を見ると、
私はそう答える事しかできなかった

梓「失礼します・・」

ガチャ・・パタン・・

170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 23:47:39.54 ID:3RdLHAD10
紬「りっちゃん・・」

律「ん?」

紬「りっちゃんは・・」

紬「気づいているの?」

律「・・えっ?」

ドキッっとした
なぜだろうか?
いやわかっている

気付かないフリを続けていた
私は必死にそれから逃げようとしていた

律「気づいているって?」

紬「・・・本当にわかっていないの?」

もう逃げられない
これからはその逃げていたものと
面と向きあっていかなくてはいけない
ムギの一言で私はそれを自覚する事ができた

紬「唯ちゃんと澪ちゃんの気持ち・・」

171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 23:55:33.20 ID:3RdLHAD10
律「・・わかってた」

紬「・・だよね」

律「・・・」

わかってた
わかってたけど・・
私はそれを信じたくはなかった
受け入れたくなかった
二人との関係は当初に比べると確かに変化していた
その変化は私に違和感を感じさせ、
次第に私の中で一つの確信に変わっていった

澪も唯も私に恋愛感情を抱いている

だけど・・
どうすればいいのか分からなかった
分からなかったから今日まで必死に逃げてきた

172 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 00:02:04.71 ID:3RdLHAD10
律「・・ははっ」

紬「・・?」

律「私ってば・・モテモテだなっ・・」

紬「りっちゃん・・」

律「・・・」

紬「悩んでるの?」

律「・・・」

律「・・・うん」

律「・・どうすればいいのか・・わからない・・」

私は女だ
澪も女だ
唯も女だ
それで・・

175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 00:06:32.21 ID:3RdLHAD10
それが・・全てじゃないか・・
女性同士で恋愛・・・?

澪も唯も、本気でそう思ってるのか?
本気で私と恋愛しようって・・

私は・・
私はどうすればいい・・?

紬「・・りっちゃん」

律「・・?」

紬「一番大切なのは・・りっちゃんの気持ちじゃない?」

律「私の・・気持ち・・」

紬「そう、りっちゃんの気持ち・・」

気持ちの整理がつかないまま私は自分の家へ歩みを進める
一番大切なのは私の気持ち
それを聞いた瞬間、ムギのその言葉は私自身簡単そうに思えた
でも考えれば考える程に、その答えは遠ざかっていくんだ

律「・・・」

178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 00:11:38.70 ID:pR2uO7I70 [1/42]
私が男だったら・・
きっと有頂天になっているんだろうな

澪と唯
両方可愛くて女性の私から見ても魅力的で・・
男の人から見たら誰もが恋愛するに申し分ないと思うだろう
男の人だったらね・・・

でも私は女だ
女性同士でそんな関係になるなんて
普通じゃない
抵抗感を感じるのが普通だ
私も当然その「普通」の人であって
同性愛なんてものは、一生関わる事の無いものだと決めつけていた

にも関わらずさらに澪か唯かを選択しろって?

律「ははっ・・」

自分の立たされた境遇の重さ、辛さを実感し
思わず笑みがこぼれた

律「・・・いきますかっ」

180 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 00:15:13.04 ID:pR2uO7I70 [2/42]
自分の家へ歩みを進めていた筈だった
なにも今日じゃなくても良いのかもしれない
緊張するのが当然の場面で
私は臆する事なく呼び鈴のボタンを押す
やけになったわけじゃない
ムギに言われたあの言葉・・
私が選んだ答えは正解ではないだろう
でもね・・例えそうであっても

私に残された選択肢はこれしかなかったんだ

澪「・・律・・」

律「話があるんだ、入るぞ」

澪の顔は浮かない
それもそうか
唯と初めて喧嘩したんだ
それでも澪は何事も無かったようにできるだけ平静を装っていた
澪のその表情を痛々しく感じながらも、
私は澪の部屋へ招き入れられる

澪「話って・・?」

律「・・・澪、正直に答えてくれ」

澪「・・・」

律「・・・」

181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 00:20:15.47 ID:pR2uO7I70 [3/42]
澪「・・ああ」

律「・・・」

律「・・・私の事・・好きなのか?」

澪「・・なっ・・!」

律「・・・」

澪「なっ・・なっ・・何を・・!」

律「いや・・その・・友達としてとかじゃなくてさ・・」

澪「・・・」

律「・・・」

律「・・ど・・どうなんだよっ、澪!」

澪「・・・」

澪「・・・」

澪「・・・」

183 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 00:25:11.03 ID:pR2uO7I70 [4/42]
澪「・・・うん」

律「・・・」

澪「・・好き・・だ・・」

律「・・・」

澪「・・・律の事・・ずっと好きだった・・」

律「・・・そっか・・」

澪「・・・」

律「私もさっ」

澪「・・・え」

律「澪の事好きだったんだ」

澪「・・・」

澪「・・・嘘付き」

律「う、嘘じゃね~・・」

澪「分かるよ・・律の嘘くらい見破れる」

律「・・・」

184 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 00:30:12.43 ID:pR2uO7I70 [5/42]
澪「ずっと一緒にいるんだぞ?それくらい」

律「・・・澪」グイッ

澪「ちょ・・ちょっと律!」

律「・・・ん」チュッ・・

澪「・・あ・・」

律「・・」プイッ

澪「・・・」かぁぁ

律「・・・これで・・信じてくれるか?」

澪「・・・」

律「澪・・・私とつきあおう」

澪「・・・うん」

澪「・・・わかっ・・た」

185 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 00:36:01.03 ID:pR2uO7I70 [6/42]
澪「・・でもさ・・律・・」

律「・・・?」

澪「唯の事・・律も分かってるんだろっ?」

律「・・・あぁ・・分かってる」

律「唯には・・ちゃんと話するから・・だから・・」

律「唯と仲直り・・してくれないか?」

澪「・・・うん、そのつもり」

澪「ちゃ・・ちゃんと仲直りできるかな・・?」

律「大丈夫、私がついてるから」

澪「・・・ありがと」

律「・・・」

186 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 00:38:58.89 ID:pR2uO7I70 [7/42]
澪「ね、ねぇ律・・」

律「なに?」

澪「もっと・・しようよ・・」

律「・・・」

澪「・・・やだ?」

律「・・いいよ」

澪「律・・」

律「どうした?」

澪「・・なんか私・・夢みたいだ・・ありがとう・・」

律「・・・」

澪と付き合うという事を口に出せば
澪と私の関係は崩れる事はないだろうと
そう思った

唇を重ねるという事はこんなにも不快な事なのだろうか
そんな筈はない
女性同士でこんな事してるんだ
きっとそれは当たり前の感情なんだ

187 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 00:42:10.67 ID:pR2uO7I70 [8/42]
浅はかだった
澪と唇を重ねた時、そう思った
私は自分で自分を追い詰めているんだ
自分に必死に嘘をついてさ
澪の気持ちは私には到底理解できないものだけど
必死に応えようとした
辛かった

でもね・・・
後悔なんかしないよ
これで・・いいんだ

私が選択した事
それはね・・・

憂「律さん?」

律「こんばんはっ憂ちゃん・・唯いるかな?」

憂「お姉ちゃん・・学校から帰ってきて、部屋にこもりっきりで・・」

律「そっか・・部屋、上がっても平気かな?」

憂「お姉ちゃんに・・何かあったんですか?」

律「・・うん、ちょっとね」

189 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 01:08:45.90 ID:pR2uO7I70 [9/42]
憂「・・お姉ちゃん」ウルッ

律「いやっ!でも大丈夫だから!心配しないでっ」

憂「・・ホントですか・・?」

律「ホントだよ、ちょっとおじゃまするね?」

コンコン・・

ガチャ・・

律「ゆーい」

唯「・・・」

唯は机に顔を隠す様に腰かけていた
私が呼びかけても返事の言葉はない
澪よりも唯の方が落ち込んでいるようだ
その姿を見ると、なんだか私まで気分が沈んでしまう

・・・いや、まてまて

律「ゆいー?」

唯「・・・」ふすー

律「(寝てるだけじゃん・・・)」

191 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 01:10:56.33 ID:pR2uO7I70 [10/42]
律「唯」ゆさゆさ

唯「ん・・ふにゃ・・えっ、りっちゃん?」

律「ごめんな、起こしちゃって」

唯「なんでここに・・?」

律「いや、ちょっと唯に話があってさ・・唯の事も心配だったし」

唯「ありがと・・りっちゃん」

律「いーえ」

唯「でもね、私の事なら平気だよっ」

律「ホントか?・・でもなんかホントに大丈夫そうだな」

唯「そうですともっ、元気いっぱいですから!」

律「ははっ、立ち直り早いんだな」

唯「えへへ・・で、りっちゃん話ってなに?」

律「あ~・・それなんだけど・・」

律「・・・」

唯「・・・」

192 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 01:13:33.51 ID:pR2uO7I70 [11/42]
律「唯はさぁ・・私の事」

唯「・・好きだよ」

律「・・え?」

唯「私、りっちゃんの事が好き」

律「・・・」

唯「・・・」

律「まじで・・?」

唯「まじだよっ」

律「・・・実は」

律「私も唯の事好きなんだ」

唯「・・・りっちゃん」

律「・・あれっ?唯」

唯「ほんとなの・・?」

律「冗談で言えるわけ・・ないだろ」

193 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 01:16:12.65 ID:pR2uO7I70 [12/42]
唯「・・・」きゅ・・

唯「夢じゃない・・」

律「現実だぞ?・・・恋人に・・」

律「なってくれるか?」

唯「う、うんっ!勿論だよっ!」

これが私の選んだ事
私には澪と唯、どちらかを選択するなんて事はできなかった
どちらかを選べばどちらかの存在が私の中で消えてしまう
そうなれば軽音部も、もう元には戻れなくなってしまう
それは私の居場所が無くなる事を意味していた

最低の事をしている
そんな事は分かってるんだ
ただね

私には
澪と唯の気持ちを突き放す、度胸や非情さなんてものは備わってなかったんだ

梓やムギと約束したんだ
元の軽音部にきっと戻るって

194 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 01:20:04.88 ID:pR2uO7I70 [13/42]
私が我慢すればみんな幸せになるじゃないか
みんな元通りだ
みんなの幸せを願う事が悪い事なのか?
そんな筈ない


ただ、このまま変わる事無く
みんなの笑顔が見られればそれで良かった

唯「りっちゃん・・!」どさっ

律「えっ・・唯、どうした・・?」

唯「こ、恋人同士ってさ・・こういう事するんでしょ・・?」

律「え・・唯・・」

唯「しても・・いいかな・・?」

唯が私に覆いかぶさってくる
やっぱり、本気なんだ・・
自分から告白しておきながら
いまさらそんな事を考えた

195 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 01:23:09.43 ID:pR2uO7I70 [14/42]
拒絶したい気持ちは当然あった
だけど、そんな事は許されない事は私が一番分かっていた
澪の気持ちも唯の気持ちも、
私は全てを受け入れなくてはいけない義務があるのだから

律「いいよ・・しよっ」

唯「りっちゃん・・・」スッ

律「・・・」

唯「・・・ん・・」ちゅ

律「・・ん・・あ・・」

唯「・・・ん・・はぁ・・はぁ・・ちゅる・・」

律「・・・・」

・・・やっぱり不快だ
力いっぱい唯の体を押し上げたい衝動にかられる
しかしそんな事、考えても仕方のない事だった
唯の舌が私の口内に強引に入ってきた時
私は考えるのをやめた
全てを唯に委ねようって
そう思った

197 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 01:26:31.56 ID:pR2uO7I70 [15/42]
唯「・・ぷはっ・・はぁはぁ・・」

律「・・はぁ・・はぁ・・」

唯「・・えへへ・・りっちゃん」

律「・・・?」

唯「りっちゃんの・・ファーストキス・・奪っちゃったっ」

なぁ・・唯
私は・・
私はね

唯だけのものじゃないんだ
澪だってそうだ
ごめんね・・

二人がどんなに私に思いをぶつけてきてもさ
それに応える事はできるよ?
応える事はできるんだけど
私は二人と違って真剣になれないよ・・
適当に受け流す事しか・・私にはできない
正直に言わせてもらえれば・・
澪も唯も私には分からない
どうしてそんな感情を同姓に対して抱けるのかが分からない

198 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 01:30:51.29 ID:pR2uO7I70 [16/42]
律「じゃあな、唯」

唯「うんっ、また明日ね」

律「・・・」スッ・・

無意識のうちの行動だった
自分の唇を制服の袖で拭った
自身の唇についた唯の唾液が不快に思ったせいだろう
同様の行為を先ほど澪の家を出た時にも行っていた
それを思い出し、私は強く自己嫌悪する

律「(嫌な女・・)」

暗く心細い一人での帰り道
思いだすのは、
唯の無垢な笑顔と、澪の幸せそうな表情
二人の顔が頭から離れない

二人の顔が頭の中で切り替わる度
私の胸はズキッと何かを刺された様な痛みに襲われる

200 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 01:33:26.52 ID:pR2uO7I70 [17/42]
痛みの理由は勿論罪悪感だった
こんな事、二人が望む筈無いじゃないか

でもこうするしか・・
私は・・澪も唯も
軽音部も失いたくない

これで良かったんだ
私は大丈夫・・
きっと頑張れる・・

後悔はしないよ
後悔はしない・・・

大丈夫・・・

201 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 01:36:07.70 ID:pR2uO7I70 [18/42]

――
―――

澪ちゃんと唯ちゃんがね
喧嘩をしたんだ
でもりっちゃんが二人の家に話をしに行ってくれたみたいで
次の日に2人共仲直りしたの
何事もなかったかの様に2人は振舞っていたけど

なんでかな・・前と少し違うような・・
そんな違和感を感じたのは最近になってからだった

紬「・・・」スー・・

今はね・・自転車に乗っているの
何か物思いにふけりたくなって

私達の町にはね
町並みを一望できる丘があって
私はそこに一人でやってきているの
斎藤なんかはお供しますって言って聞かないんだけど
どうしても一人になりたくて・・
突き放してきてしまったの

204 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 02:02:07.43 ID:pR2uO7I70 [19/42]
紬「綺麗な夕日・・」

もう日が暮れようとしていた
その夕日を眺めようと
その丘に備え付けられたベンチに歩みを進めた

紬「(あらっ・・先客が・・)」

普段人通りが少ないこの丘に
わざわざ夕日を眺めに来る人なんているんだって
その人の後ろ姿を眺めながら近づいていった
なにか世間話でもできたらいいなとも思った

紬「(・・どうしたのかな?)」

そう思ったのはその人の背中が寂しそうに感じたから
ベンチに体育座りをしながらじっと夕日を眺めている
こんなに悲壮感を感じるのは太陽が沈んでしまうからなのかな?
その寂しくて小さな背中の持ち主がりっちゃんだって分かったのは
もう5歩くらい歩みを進めてからだった

206 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 02:05:15.27 ID:pR2uO7I70 [20/42]
紬「りっちゃん」

律「・・・ムギ!?」

紬「どうしたの?こんな所で」

律「ムギこそどうしたんだよ~こんな所でさっ」

紬「ちょっと考え事したくて」

律「・・・そうなんだ」

りっちゃんの横に腰かける
りっちゃんの表情は私を見て驚いた表情から
直ぐに哀しげな表情に移り変わった

私の考え事はね
りっちゃんの事に対してだったんだ

だからね
こうして二人っきりで話し合える機会がもらえた事に
何か運命的なものを感じちゃった

紬「りっちゃん・・聞きたい事があるんだけど・・」

律「ん~?お金なら貸せないけどっ」

紬「も~・・りっちゃん、真剣な話ぃ」プクー

律「あぁ、ごめんごめん・・ムギ」

208 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 02:08:48.30 ID:pR2uO7I70 [21/42]
紬「あ、あのね、りっちゃんて・・最近悩んでるでしょ?」

律「え、そんな事無いけど・・」

紬「だって・・元気ないじゃん・・」

律「え~・・そうかな~・・」

紬「そうだよ!今だって・・」

律「いやっ、ほら、私も徐々に大人の女性に成長しているっていうか~」

紬「りっちゃん・・悩みごと・・聞くよ?」

律「・・・・」

律「ありがと・・ムギ」

律「でも・・本当に大丈夫だから」

そう言ったりっちゃんの表情は本当に切なくて
見ていられなかった
思えばりっちゃんのこの表情は
最近よく見かける気がする

私はおそらく間違ってはいないだろう
りっちゃんに違和感の核心部分を伝えてみる事にした

209 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 02:11:22.64 ID:pR2uO7I70 [22/42]
紬「りっちゃん・・ひょっとしてなんだけど・・」

律「・・うん?」

紬「澪ちゃんと付き合ってるでしょ?」

律「!」

紬「そして唯ちゃんとも・・」

律「・・・」

紬「・・・違う・・?」

律「・・・」

律「・・・」

律「・・・うん、・・すごいねムギ」

紬「やっぱり・・」

律「・・・そうなんだ」

そう言って俯いたりっちゃんは
既に私の知ってるりっちゃんじゃなかった
元気いっぱいのりっちゃんを知っているだけに
切ない気持ちと、救ってあげたい気持ちと
私の中で二つの感情が交錯した

212 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 02:14:03.46 ID:pR2uO7I70 [23/42]
律「・・・なぁ・・ムギ・・」

紬「うん」

律「もしさぁ・・・・もしもだよ?」

紬「うん」

律「澪と唯にこの事がバレちゃったら・・・」

紬「うん」

律「あいつら・・・」

律「あいつら・・・それでも友達でいてくれるかなぁ・・」ぽろっ

紬「りっちゃん・・・」

律「・・ぐっす・・ひぐっ・・ずず・・」ぽろぽろ・・

りっちゃんの涙が全てを物語っていた
きっとりっちゃんは・・

214 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 02:17:08.36 ID:pR2uO7I70 [24/42]
ずっと我慢してきたんだ
二人に対する罪悪感とか・・
女性同士で恋愛関係を持ってしまっている事に関してとか・・

そして一番りっちゃんが恐れている事は・・
多分・・
二人から疎まれてしまう事なんだよね?
そうなんだよね?

律「・・・ひっぐ・・」

紬「・・・」

りっちゃんは限界だ
そんな印象を私は受け取った

私はね
少し前とは違う放課後のティータイムに違和感を感じながらも
それで良しとしていたんだ

215 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 02:18:59.86 ID:pR2uO7I70 [25/42]
ううん、違うな
いつかりっちゃんが何とかしてくれるって
いつかりっちゃんが元の軽音部に戻してくれるって
勝手にりっちゃんに期待を持たせていたんだ

私もれっきとした軽音部の一員なのに
どこか他人のような目で勝手にりっちゃんに全てを背負わせていたんだ

私・・ばかだった
りっちゃんは・・私達とまったく同じだっていうのに
りっちゃんは・・もちろん傷つくし、涙ももちろん流すっていうのに
同じ女の子なのに・・
こんなにも弱いのに・・

律「・・う・・うぇぇん・・・」

紬「・・・りっちゃん」

なのに・・
なのにね・・

私は・・
何もできない
涙を流すりっちゃんに対して
どうすればいいのか・・わからない・・

217 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 02:20:34.78 ID:pR2uO7I70 [26/42]
こんな時どんな言葉を投げかけてあげれば良いのだろう?
心配しないでとか
元気だしてとか
そんな言葉を投げかけてあげれば
少しはりっちゃんも楽になるのだろうか?

「りっちゃんの気持ちが一番大事」
そんな事を言うだけで、良いアドバイスができたと気持ちよくなってる自分がいた
今思えば、自分からは何も行動を起こさない
冷たいただの傍観者に見られても仕方ないと思う

それなのにりっちゃんは梓ちゃんや私の気持ちを汲み取って
必死に今まで自分を犠牲にして、軽音部が元に戻る様に頑張ってくれてたんだ
誰にも相談する事もできずに・・
ずっと一人で・・

考え直してみれば、すべて簡単だった
りっちゃんの悩みも、
本当は私も一緒に悩まなきゃいけなかったんだ
私は今まで積極的に交友関係を持つ事がなかった
それを良い訳にしたくは無いけれど
こんな事も分からない自分が本当に嫌になった

親友がさ
泣いてるのに・・

何もできないの?

218 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 02:22:08.42 ID:pR2uO7I70 [27/42]
紬「りっちゃん・・・」ぎゅ・・

律「ムギ・・?・・グスッ」

紬「・・・」ぽろぽろ・・

紬「辛かったんだよね・・?・・ごめんね・・りっちゃん・・」

律「・・んぐ・・辛いよぉ・・ずず・・」

紬「・・・」ぽろぽろ・・

私には
荷が重すぎる問題かもしれない

けれど
りっちゃんを一人にする事はもうできない
もう目を背けることはしないよ
りっちゃんを救いたい
澪ちゃんも唯ちゃんも梓ちゃんも
みんな心から笑える様に・・

私に・・
何ができるだろうか

219 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 02:23:35.44 ID:pR2uO7I70 [28/42]
今日はもう限界でござる・・
保守頼みばっかして本当申し訳ない・・

次で完結まで持っていければいいなと思ってます

243 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 22:44:46.12 ID:pR2uO7I70 [29/42]
保守ありがとうございました

続けます

244 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 22:46:17.62 ID:pR2uO7I70 [30/42]
ブーブー

律「・・・」

パチッ

Title りっちゃん大丈夫??
From 唯

本文
まだ風邪治らないんだね・・
明日はクリスマスだから2人でごはんでも食べようって
思ってたんだけど・・

体調悪いなら無理しなくても良いからねっ☆
りっちゃんにはいつでも会えるんだから♪

りっちゃんの体調が一番心配だよぉ
早く治してね☆

あ、帰りにお見舞いの物何か買ってくね
何がいいかなぁ・・・??

律「・・・」

パチッ

246 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 22:52:34.82 ID:pR2uO7I70 [31/42]
ブーブー

パチッ

Title 風邪、酷そうだな・・
From 澪

本文
ちゃんと暖かくして寝てるか?
薬ちゃんと飲まないとダメだぞ?

明日はクリスマスだけど・・
その・・明日も律がそんな調子なら仕方ないな
律の看病っていうクリスマスも嫌じゃないからな

とにかくちゃんと治すんだぞ?
帰りに様子見に行くからな

律「・・・」

247 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 22:55:30.81 ID:pR2uO7I70 [32/42]
もう5日も学校には行ってない
風邪っていうのは嘘だけど
体調が優れないのは本当の事だった
ここ2、3日まともな食事はとっていない
にも関わらず吐き気が酷い

医者には精神的なものだろうと言われた
・・・そんな事は自分でも分かってるって

律「・・・」

メールを返す元気も無かった
私は一日ベッドの中でうずくまるだけの日々を送っていた

最初はね・・
こんなつもりじゃ無かったんだけどな・・

2人とつきあってみて
やっぱり女同士の恋愛なんてできっこないって
2人だっていつかそれに気づくだろうって
そこで過去の笑い話として、ふとした時に思いだす程度になる
そんな事を期待していた

249 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 23:00:54.64 ID:pR2uO7I70 [33/42]
だけど2人の気持ちは本物で
私は2人から思いをぶつけられる度に
自分の心を傷つけていった
いつか2人にバレてしまうんじゃないかって
それに怯える毎日でもあった

もう・・欺けない
2人は今日・・
私の家にやってくる

もう・・私は
疲れてしまった・・
ここで・・すべて終わりにしてしまおうか

たとえどんな悲惨な結末であっても・・・
これが・・私の選んだ事・・

250 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 23:06:03.02 ID:pR2uO7I70 [34/42]
唯「りっちゃん返信無かったなぁ・・」

唯「お見舞い何にしようか・・」

唯「やっぱ果物だよね」

店員「まいどあり~」

唯「いざっ、りっちゃん宅へ!」

澪「律のやつ、大丈夫かな」

澪「休んでる分の授業、私が律に教えてあげないとな」

澪「ノート映させてって言われる前に持って行ってやるか」

唯・澪「あれっ・・」ばったり

澪「・・唯・・どうしたんだ?(なんで律の家に・・)」

唯「澪ちゃんこそ・・(うう・・なんか気まずいな・・)」

澪「律に用事なんだ?」

唯「うん、お見舞いだよっ」

252 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 23:11:22.88 ID:pR2uO7I70 [35/42]
澪「そっか、まだ治らないらしいからな~」

唯「そうみたいだね・・」

澪「りつー?」コンコン

唯「りっちゃーん?お見舞いに来たよー?」

澪「返事無いな・・」

唯「寝てるのかな?」

澪「入ろうか」

唯「うん」

ガチャ・・バタン

澪「え・・」

唯「りっちゃんが・・」

澪「いない・・」

唯「トイレ?」

澪「いや、誰もいなかったぞ」

唯「・・どこ・・行ったんだろっ」

255 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 23:17:27.92 ID:pR2uO7I70 [36/42]
重い体を無理に動かして例の丘のベンチに私は来ていた
最近ここに来る機会が増えた
丘の上という事で肌寒い風が私を容赦なく吹き付ける
それでも私は苦に感じていなかった

ここに来るとね
安らぐんだ
誰も知らない土地に来たような気がして
あの夕日を見ていると
色んなしがらみを忘れさせてくれるんだ

今、ちょうど2人が私の家に着く頃かな
ケータイの電源を切っておこう
もう、今日で全て終わりにしよう

家に帰ったら・・
2人に全てを伝えるんだ
それまでは
あの夕日を見て
頭の中を整理をしておこう
まずどんな事から話そうか

257 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 23:23:28.12 ID:pR2uO7I70 [37/42]
澪「律・・」

律「・・・み・・お・・?」

唯「りっちゃん・・風邪じゃなかったの?」

律「・・・ゆ・・い・・なんで・・?」

澪「律はさ・・昔から悩んでる事があるとここに来てたろ?」

律「・・・」

澪「ひょっとしたらと思ってさ・・」

律「・・・」

唯「・・・りっちゃん、暖かくしてなきゃダメだよ」ふぁさ

律「・・マフラー・・ありがと・・」

澪「・・・」

律「・・・」

唯「・・・」

259 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 23:27:24.97 ID:pR2uO7I70 [38/42]
澪「律・・もう聞いたよ・・」

唯「・・・」

律「・・・」

唯「りっちゃん・・」

律「・・・うん」

澪「・・・」

唯「・・・」

律「・・・ごめん」

澪「なぁ、律・・私達2人とつきあってた事は・・もういいんだ・・」

律「・・・」

唯「りっちゃん、りっちゃんは・・」

唯「女の子同士の恋愛って・・やっぱり嫌だ?」

律「・・・」

律「・・・ううん、そんな事ない・・よ?」

260 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 23:32:23.81 ID:pR2uO7I70 [39/42]
なぜ嘘をつくんだろう?
私はこうやって自分をどんどん追い詰めている
はっきりと自分の気持ちを伝えれば
こんな事には・・
だけど・・

私は・・
自分の気持ちの事よりも
やっぱり澪や唯の気持ちの方が大事だった
女の子同士の恋愛
それを否定すれば、澪も唯も裏切ってしまう気がしたから・・
だから自分の気持ちを偽った

さっきまでは全てを打ち明ける覚悟を決めていたのに
2人を前にすると、そんな気も起きなくなってしまった
臆病だ、どうしようもなく
人に嫌われるっていう事がこんなにも恐ろしい事だとは思わなかった

261 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 23:38:22.49 ID:pR2uO7I70 [40/42]
澪「律・・だったら・・」

澪「選んでくれないか?」

律「・・・」

澪「・・今・・この場で・・」

律「・・・」

唯「・・りっちゃん・・お願い・・」

唯「・・はっきりさせて・・」

律「・・・」

律「・・・わ、私は・・」

紬「勝手だよ!!」

私は2人のうち、どちらかを選ぶなんて事はできない
そう伝えようとしたが、
ムギの声が私達の間に割って入った

263 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 23:44:11.58 ID:pR2uO7I70 [41/42]
澪「・・・ムギ・・」

唯「ムギちゃん・・?」

紬「勝手だよ・・そんなの・・」

律「・・・ムギ・・なんで・・?」

紬「りっちゃんは・・」

紬「りっちゃんは、本当はそんな関係望んでないんだよっ」

律「・・・!」

本当は私の口から2人に伝えなくてはいけない事
それをムギは目に涙を溜めながら必死に2人に訴えかけた
2人に私の本当の気持ちが伝えられてしまった
焦るべき場面の筈なのに・・
焦って、ムギの言った言葉を否定しなくてはいけないのに・・
なぜか私はそうしなかった

なんでかな・・
私の心に一番最初に浮かんできたのは、
ムギへの感謝だった

265 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/07(土) 23:50:08.32 ID:pR2uO7I70 [42/42]
澪「ムギ・・律は、そんな事・・ないと思うぞ」

唯「・・そうだよムギちゃん、だってりっちゃんあんなに楽しそうに・・」

紬「・・じゃあ・・聞かせて欲しいんだけど・・」

紬「・・今まで一緒にいてりっちゃんの本当の笑顔を見た事があった?」

紬「近くにいると、みんながつられて笑顔になるような」

紬「りっちゃんは2人に対してそんな笑顔を一度でも見せてくれた?」

澪「・・・」

唯「・・・」

紬「・・ほ、本当にりっちゃんが2人の事が好きなら・・」

紬「こんなに元気の無い姿になる訳ないじゃないっ!」ぽろぽろっ

268 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/08(日) 00:04:32.45 ID:hGwN25C60 [1/18]
律「・・・」

澪「・・・」

唯「・・・ムギちゃん・・」

紬「ねぇ・・みんな・・」

紬「戻ろうよ、あの頃みたいに・・」

紬「・・・」スッ・・

ムギが皆の前に差し出したのは、
アルファベットのIを型どった小さなストラップ
いつの日か皆で一緒に買った物だ

律「・・・」

澪「・・・」

唯「・・・ごめんね・・りっちゃん・・ムギちゃん・・」

唯「私・・勝手だった」

269 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/08(日) 00:06:59.40 ID:hGwN25C60 [2/18]
律「・・唯・・」

澪「・・・」

澪「・・・戻ろう、あの頃にさ・・」

律「・・・澪」

澪「・・ごめんな・・律」

律「・・・いいよ」

紬「・・・」

紬「・・・・」にこっ

紬「みんな、一緒に帰ろっか」

律「ああ」

澪「そうだな」

唯「うんっ!」

270 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/08(日) 00:11:31.65 ID:hGwN25C60 [3/18]

――
―――

15ヵ月の月日が流れた
今日は私達3年生の卒業式だ

律「・・・おはよう」

澪「おはよう・・」

あれから何があったのか
私達の話に興味がある人だけ聞いて欲しい

律「・・・」スタスタ

澪「・・・」スタスタ

あの丘で話し合って以来ね
私達はなるべく昔の姿に戻ろうとしていた
だけどね
放課後に集まる部員は一人・・また一人と姿を消していった

今ではね
顔を合わせると軽くあいさつを交わすだけの
そんな仲になった

15か月の間にみんなそれぞれ新しい友達ができたみたいだ
そんな中今日という日を迎えたんだ

273 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/08(日) 00:20:19.06 ID:hGwN25C60 [4/18]
さわ子「みんなー、最後のホームルーム始めるわよ」

律「・・・」

卒業式は済ませた
みんな今日限りで顔を合わせる事は無くなる
クラスの誰もがそれを自覚しているせいか
さわちゃんの声にみんな耳を傾けずに
どこか哀しげな表情を見せながら雑談を続けていた
中には涙を流す子や、お互い抱き合っている子もいる
そんな光景をさわちゃんは仕方ないといった表情で見渡していた

律「さわちゃん・・3年間ありがとう・・」

さわ子「・・りっちゃん・・どこに行くの?席につきなさい」

律「・・・」スタスタ・・

さわ子「りっちゃん!」

さわ子「・・最後なのよ?」

律「・・・」

律「・・すみません・・もう・・辛いだけなので・・」

さわ子「・・・」

276 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/08(日) 00:27:20.82 ID:hGwN25C60 [5/18]
私はそっと教室を抜け出した
クラスメイトの誰にも気づかれずに抜け出したつもりだ

本当の事だった
私にとって
この空間はもう
辛いものでしかなかった

鎮まりかえった下駄箱に歩みを進め
靴を履き替える
下ばきの靴を持ちかえるという行為が
もうここにはくる事が無いんだなと
改めて私に実感させる

紬「りっちゃん!」

律「・・・ムギ・・」

紬「はぁ・・はぁ」

律「・・・」

紬「・・・」

277 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/08(日) 00:33:21.02 ID:hGwN25C60 [6/18]
律「ムギ・・ありがとな・・」

紬「・・・」

紬「最後・・」

紬「なんだよ・・?」

律「・・・」

紬「・・・私達・・ずっと・・!」

律「・・元気・・でね」

紬「・・・」

278 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/08(日) 00:42:11.11 ID:hGwN25C60 [7/18]
私は
一番大切なものを選べなかった
全てを求めた結果
全てを失った
澪も唯もムギも梓も
そして私の居場所だった軽音部も

結局私には亀裂の入った綺麗なガラス玉を元に戻す事はできなかった
あの時ああしてればとか
なんでこうしなかったんだろうとか
そんなこと今になって考えてもどうしようもない事だ
後悔なんてものは
先に立つもんじゃない

律「・・・」スタスタ・・

なんでかな
校門に向かって歩みを進める度
昔の事を思い出すんだ
澪と銭湯に行った事
唯と遊園地に行った事
ムギが一緒に買ったストラップを嬉しそうに眺めている所
みんなで汗を流しながら音楽室で練習をした事

どれも懐かしいな

なんで・・

なんであのまま今日という日を迎えられなかった?

279 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/08(日) 00:48:08.64 ID:hGwN25C60 [8/18]
律「・・・」スタスタ・・

後ろで唯の声がする
振り返る事はしなかった

振り向けなかったんだ
涙を見せる訳にはいかない

律「バイバイ・・みんな・・」

ポケットに忍ばせたKの文字のストラップを握りしめる
校門をくぐり、私の高校生活は幕を閉じた

(完)

283 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/08(日) 00:49:50.17 ID:hGwN25C60 [9/18]
(澪)
今日で最後だ
そんな事は分かっている
教室で最後の会話を楽しむクラスメイト
私もクラスの一員として友達の話に耳を傾けていた

だけどね
目の端にはちゃんととらえていたんだ
律の姿をさ

律の姿が教室から消える
多分一番初めに気づいたのは私なんだ

クラスメイト「澪っ、これで最後だね!」うるうる・・

澪「ご、ごめん!ちょっとトイレに・・」

トイレの鏡に映った私の顔をじっと見つめる
律の後を追わないと・・

285 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/08(日) 00:55:08.21 ID:hGwN25C60 [10/18]
そんな事は
分かっている
でもね
何かが私の中で邪魔をして
そうさせてくれないんだ

「律がこんなに元気の無い姿になる訳ないじゃない」
ムギがあの丘で言った言葉
私の脳裏に焼き付いている

私は・・
私は幼馴染で恋人っていう立場にありながら・・
ムギ程に律の事を思いやっていただろうか?

私は自分の気の向くままにわがままを律に押しつけていただけだ
そんな私にいまさら律の前に立つ資格があるのか?

澪「・・・くっ・・グッス・・」

286 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/08(日) 01:00:34.10 ID:hGwN25C60 [11/18]
トイレの鏡が涙にまみれた私の顔を映しだす
ムギだ・・
ムギが律の後を追っていった
この足音は・・
きっと唯だな・・

私も・・後に続かないと・・
もう、これで・・
会う事は無いのだから・・

澪「・・・うっ・・くっ」どさっ

トイレの床に膝をつく
私にはどうしてもみんなの後を追う度胸はない
私は・・
私は・・臆病で・・
卑怯者だ・・

律・・
最後に律に思いを伝えられるのならこう伝えたい・・



ごめんね
大好き

288 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/08(日) 01:06:34.51 ID:hGwN25C60 [12/18]
(唯)
りっちゃん
りっちゃんは気付いているかな
今日も私はギー太を連れてきている事に
みんなで音楽室に集まって
演奏する事はもうなくなっちゃったね

だけどね
私は毎日欠かさずにギー太を連れて登校していたんだよ
みんなで楽器屋さんに行って悩んで買ったギー太をさ
気づいていたかな?

唯「・・・あれっ?」

りっちゃんの姿が消えた
少しして教室から澪ちゃんもムギちゃんもいなくなっちゃった

嫌な予感を感じて
さわちゃん先生の制止を振り切って3人の後を追った

289 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/08(日) 01:14:39.64 ID:hGwN25C60 [13/18]
唯「はぁ・・はぁ・・!」たったった

下駄箱を出た所でムギちゃんがへたりこんでいる
嫌な予感はきっと的中しているんだろうな

唯「ムギちゃん!りっちゃんは?!」

紬「・・・行っちゃう・・」ぽろぽろ・・

ムギちゃんが指さした先には
校門に向かって歩みを進めているりっちゃんの姿があった

唯「りっちゃん!」

いやだっ
いやだ!いやだ!
こんな別れ方・・
これで・・

これで最後なんだよ?

明日からはもうみんな会う事はないんだ


290 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/08(日) 01:16:21.13 ID:hGwN25C60 [14/18]
先生「おいおい!卒業生はホームルームの時間だろう?」ぐいっ

唯「いやだっ!離して!りっちゃんが!りっちゃんがぁ・・!」ぽろぽろ・・

なんで?
なんでりっちゃんは行ってしまうの?

私の声・・
聞こえている筈なのに・・

りっちゃん
りっちゃん私ね
朝音楽室に寄ってきたんだ
りっちゃんのドラムも
みんなで使ってたアンプも準備して
最後にみんなで演奏しようって!
そう思ってたんだ

行かないで
行かないで・・りっちゃん・・

りっちゃん・・
私まだりっちゃんの事―――――――

291 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/08(日) 01:17:14.66 ID:hGwN25C60 [15/18]
(紬)
りっちゃんの浮かない顔
もう見なれてしまった
私はできうるかぎりの事はした
毎晩考えて・・考えて・・
りっちゃんだけじゃなくて
みんなが笑顔になれるように

紬「りっちゃん!」

律「・・・ムギ・・」

紬「はぁ・・はぁ」

律「・・・」

紬「・・・」

律「ムギ・・ありがとな・・」

私は何もできなかったも同然なんだ
りっちゃんの力に何一つなれなかった
りっちゃんのあの眩しい笑顔は
あの後も一回も見る事はできなかった

293 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/08(日) 01:18:28.59 ID:hGwN25C60 [16/18]
私も辛いんだけど
きっとりっちゃんはもっと辛い
優しい人だから
自分の事よりも
他人の心配をまず第一にに考える様な人だから

紬「・・・最後・・なんだよ?」

律「・・・」

紬「私達・・ずっと・・・!」

律「元気でね・・」

友達でしょ?
そう伝えたかった
りっちゃんは言葉を待たずに振り返ってしまった
今理解した
あの楽しかった日々はもう過去のものなんだって

絶望から私は立っている事ができなくなってしまった

294 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/08(日) 01:19:43.50 ID:hGwN25C60 [17/18]
唯「ムギちゃん!りっちゃんは?!」

紬「・・・行っちゃう・・」

もう過去には戻れない

涙が止まらない

明日からは
みんな顔を合わせる事はない

失われた時間は

もう取り戻せない

(本当に完)

295 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/08(日) 01:21:28.55 ID:hGwN25C60 [18/18]
最初から最後まで読んでくれた方
途中支援してくれた方

ありがとうございました

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