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上条「招待状?」 インデックス「?」

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/25(木) 23:31:21.54 ID:/yjVE7+vQ
「お、おいインデックス。
ちゃんと大人しくしてんだぞ」

緊張でソワソワしている上条は、
隣に立っている銀髪シスターに
釘を刺す。
安全ピンだらけの白い修道服に、
透き通るような白い肌。
銀髪が潮風になびいている。
インデックス。訳あって上条の家に居候している女の子だ。

「む、バカにしないで欲しいんだよ。
私は神に仕える身、
ちゃんと場をわきまえ……」

インデックスの瞳が急に大きくなる。

「と、とーま!船!おっきい船!」

インデックスの視線の先には、
この船と入れ違いで港に入る、
巨大な貨物船が見える。
船体には有名な薬学研究施設の
名前が書かれていた。


4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/25(木) 23:45:47.93 ID:/yjVE7+vQ
インデックスは甲板の柵に
身を乗り出し、
貨物船に手を振りながら
きゃあきゃあ騒いでいる。
周りの乗客がインデックスを見て
クスクスと笑っていた。

「あ、あぶねーから落ち着け!
落ちるって!」

上条はインデックスの首根っこを
掴むと、柵から引き剥がした。

「はぁぁ~…」

上条はこの日七度目の溜め息を吐いた。

上条はポケットから一枚の紙を取り出す。
紙にはこう書かれていた。

【学園都市製最新型豪華客船へご招待】

「俺にこんな幸運が起こるなんて…」

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/25(木) 23:49:45.94 ID:/yjVE7+vQ
上条は八度目の溜め息を吐く。
招待状をポケットにしまおうとした上条は、
携帯が二つ入っている事に気付いた。

「てか、ほれインデックス。お前の携帯」

上条はインデックスに携帯を渡す。
「いらなーい」

相変わらず柵から身を乗り出し、
足をパタパタさせている。

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/25(木) 23:51:01.81 ID:/yjVE7+vQ
「携帯電話は携帯するから
携帯電話なんです!」


「むー…」

無理矢理携帯を握らせると、
インデックスはフードを脱いで
頭の上に携帯を乗せる。
そしてその上から再度フードをかぶる。

「一応聞いてやる。何してんだ?」

インデックスは満面の笑みで答える。

「こうしとけばなくならないんだよ」

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/25(木) 23:52:28.09 ID:/yjVE7+vQ
上条とインデックスは海の上にいる。
豪華客船《シャングリラ》。
学園都市が開発した、
最新型の豪華客船だ。
全長は179メートル。総トン数は
30,260トン。
航海速力は20,0ノット。
旅客定員は664名。
船底から順に、11ものデッキがある。
宿泊設備の他に、レストラン、
フィットネスクラブ、プール、
ショップなどなど、様々な設備が
整っている。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/25(木) 23:53:40.00 ID:/yjVE7+vQ
「やっぱ…場違いだよなー」

招待状が届いたのは一週間程前だった。
招待状には、船の完成を記念して学園都市に住む学生を、
ランダムに招待している事、
一枚の招待状で二人まで参加出来る事、
その他に諸注意などが記載してあった。

上条はあまり乗り気ではなかったが
(そもそもこのラッキーを
不審に思っているのだ)、
インデックスに押し切られる形で参加したのだ。

「なんか…世界が違い過ぎて
落ち着かねー」

柵にもたれかかり、空を見上げながら、
上条が九度目の溜め息を吐こうとした時だった。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/25(木) 23:55:25.33 ID:/yjVE7+vQ
「あっ!!あんた!!」

甲板の向こうから誰かが近付いて来る。

「ん?…み…御坂!?」

御坂と呼ばれた少女は、
上条の前まで来ると立ち止まった。
御坂美琴。名門常盤台中学のエースにして、
学園都市第三位のレベル5。
通称【超電磁砲】

「な、なんでお前がここに?」

「じゃあ、あんたは何でここにいんのよ?」

上条は招待状を美琴の前に掲げる。

「じゃあ私がいる理由も分かるでしょーが」

鈍い上条に、
美琴の顔が引きつっている。


12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/25(木) 23:56:36.78 ID:/yjVE7+vQ
「はぁ~、まぁいいわ。
ところであんた一人で来たの?」

「何言ってんだ。ここに……あれ…」

さっきまで横に居たインデックスが居なかった。

「あいつ!いつの間に!」

「な、何?」

一人で慌てる上条に、
美琴は訳が分からないといった顔をする。

「悪い御坂!またなっ!」

それだけ言うと、上条は
甲板から船内へ慌てて走って行ってしまった。
一人取り残された美琴は、
ムカつき半分、寂しさ半分の
複雑な気持ちになった。

「な…なんなのよぉぉぉ!!」


13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/25(木) 23:58:14.48 ID:/yjVE7+vQ
「お姉さま、そんなに大声を
出されたら…目立ちますわよ」

いつの間にか美琴の横に
一人の少女が立っている。
ツインテールに美琴と同じ
常盤台の制服を着ていた。
白井黒子。美琴のルームメイトで、
学園都市のジャッジメント。
レベル4のテレポート能力者だ。

「く、黒子…音もなく忍び寄るのは止めてよね」

ちなみに今回の招待状を受け取ったのは
黒子だった。美琴はなかば無理矢理
連れて来られたのだ。

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/25(木) 23:59:57.35 ID:/yjVE7+vQ
「そんな事よりお姉さま。
間もなく歓迎式典が始まりますの。」

「はぁ~、面倒ね…」

美琴は頬杖をついて海を眺める。

「まぁまぁそう仰らずに。
ささ、行きましょうお姉さま」

黒子は美琴の腕を引っ張り
強引に連れて行く。
二人が今いるのは第5デッキ。
つまり下から数えて5番目の階層だ。
この第5デッキが
この船のメインデッキになっている。
歓迎式典は第5デッキのロビーで
行われるのだ。

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 00:02:50.28 ID:/yjVE7+vQ
「でもこの船定員は600人以上よね」

「学生のみを対象に招待してますからね。
保護者もいませんし…
何かトラブルがあった時に
対処しやすい様にではありませんか?」

「ふーん…」

美琴は興味無さそうに返事をする。
美琴の視線は学生達の間を
行ったり来たりしている。

(あいつ…どこにいんのよ)

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 00:01:37.91 ID:CcD4bKN/Q
甲板から船内に入ると、
すぐにロビーになっている。
赤い絨毯に、豪華なシャンデリア、
乗船した時はなかったが、
今は規則正しく椅子が並べられていた。
椅子の正面にはスタンドマイクが
設置されている。
ロビーには既にほとんどの
乗客が集まっていた。
船の乗組員以外は学生しかいない。
「なんか思ったより乗客が少ないわね」

美琴はロビーを見渡しながら呟く。

「まったくお姉さま。
招待状に書いてありますわよ。」

黒子が差し出した招待状には、
招待予定人数は約200人と書いてある。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 00:04:30.41 ID:CcD4bKN/Q
「ぐ…あの船長。
一人でどんだけ喋んのよ」

美琴は甲板のベンチで
ぐったりしている。
式典は一時間半程で終わったが、
その三分のニは船長の話で潰れた。

「あの方の晴れ舞台ですからね。
仕方ありませんの」

そう言う黒子の顔も、
ウンザリといった表情だった。
黒子はポケットから携帯を取り出す。

「今は…午後5時。
お夕食まではあと2時間
ありますわよ、お姉さま」

招待状には簡単な
スケジュールが記載してある。
それによると夕食は
午後7時となっていた。
場所は第10デッキのレストラン、
バイキング形式となっている。

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 00:05:40.05 ID:CcD4bKN/Q
「第10デッキって事は…」

美琴は面倒臭そうに首を持ち上げる。

「あそこね…」

二人がいるのは第5デッキ。
つまりレストランは
5つ上のフロアという事になる。
(結局あのバカは来なかったわね…)


20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 00:06:53.38 ID:CcD4bKN/Q
「確か上条さんは大人しくしてろって
言いましたよね?」

上条はインデックスの首根っこを
掴んで説教の真っ最中だった。

「だ…だって」

「だってじゃありません!」

あれから上条は船内を
駆けずり回っていた。
ようやくインデックスを見つけたのは、
第10デッキだった。
第10デッキには和洋中と様々な
レストランがある。
ちなみに今日の夕食は
レストランの中ではなく、
同じフロアのパーティー用の
スペースに用意される。
椅子やテーブルが並べられ、
色とりどりの料理が保温器に
準備されていた。
インデックスはそれをつまみ食いしようと、
準備しているスタッフを困らせていた。

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 00:08:23.76 ID:CcD4bKN/Q
「もう少しでご飯食べれるんだから、
我慢だ我慢!」

「あぅぅぅ…」

名残惜しそうなインデックスを
引きずって、上条は第10デッキを後にする。

「式典の後に部屋の鍵貰う事になってんのに…
預けた荷物もその時に
返してもらうんだぞ。ったく」

「だ、だって…」

「だってじゃありません!」

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 00:09:57.83 ID:CcD4bKN/Q
結局式典に出られなかった事を平謝りして、
上条は預けた荷物と
部屋のカードキーを手に入れた。
第7デッキから第9デッキまでが
客室になっている。
第9デッキはスイートルームのみの
フロアで、今回招待された学生達は
第7デッキのみ利用出来る様になっていた。

「えーっと…ここだ」

上条は渡されたカードキーの番号と、
扉の番号を見比べる。
部屋に入ると、新築の独特な匂いがした。


24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 00:12:13.60 ID:CcD4bKN/Q
部屋に入ってすぐ左には、
トイレとシャワールーム、
洗面台があった。
部屋はそんなに広くはなかったが、
テーブルに椅子、テレビに冷蔵庫など
設備は充実していた。
しかし上条が真っ先に確認したのは
そんなものではない。

(良かったー!ベッドが二つある!)

インデックスと一緒に暮らしてはいるが、
上条の部屋にはベッドが一つしかない。
一緒に寝るわけにはいかないので、
上条は毎日浴室に寝袋を持ち込んで寝ているのだ。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 00:13:17.43 ID:CcD4bKN/Q
(ひ、久しぶりに柔らかいベッドで
寝られる!!神様ありがとう!)

「とーま、何ニヤニヤしてるの?」

インデックスに声を掛けられ、
上条は現実に引き戻される。
部屋の時計は午後6時を差している。

「なんでもねーよ。
それより飯まであと一時間か。
お土産でも見に行ってみるか?」

インデックスは満面の笑みで答える。

「行くー!」


26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 00:15:56.36 ID:CcD4bKN/Q
「お姉さま。いつまでここでのんびり
しているつもりですの?」

式典が終わってから、二人は部屋で
何となく過ごしていた。
あれから一時間が経っていた。
上条の事が気になってはいたが、
自分で探しに行くのも何となく癪
なので、美琴は部屋に居る事にしたのだ。

(何で私があいつの事で
モヤモヤしなきゃいけないのよ…)

部屋には小さな窓が一つ付いている。
美琴はその窓から海を眺めていた。
美琴は上条に特別な感情を持っている。
それは以前美琴自身気付いた事だ。
だがその感情を
上手く受け止められていない。
美琴の恋愛レベルはまだ低いのだ。

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 00:20:14.17 ID:CcD4bKN/Q
「…えさま!お姉さま!」

「へ?」

「まったく。私の話聞いてます?」
美琴が振り返ると、黒子が
呆れた顔で立っている。

「ですから…せっかくなので
どこか行きませんかと私は
何度も何度も…」

「ご、ごめん。ちょっとボーっとしてた」

黒子は船内の案内図を美琴に渡す。

「黒子としましては、プールか
フィットネスクラブ、
んー、スパも捨てがたいですの」

そういって黒子は、
ニヤニヤしながら第11デッキを
指差す。
第11デッキは最上階のフロアだ。

「…着替えなきゃいけないとこばっかね…」

「な、何の事か黒子には分かりませんの」

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 00:22:47.63 ID:CcD4bKN/Q

「あんた…変な事考えてないでしょうね?」

そう指摘された黒子は、
明らかにうろたえている。

「べ、別にお姉さまの着替えを
どうしても見たいとかそんな
……あ」

「やっぱり…」

自爆してしまった黒子を見て、
美琴は深い溜め息を吐く。


30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 00:23:47.55 ID:CcD4bKN/Q
「まぁいいわ。確かに黒子の
言うようにせっかくだしね」

「お、お姉さま!では…」

「そっちは行かないからね」

目をキラキラと輝かせる黒子を、
美琴は一刀両断する。

「お土産よ!お土産を見に行く!」

「えー……………」

不満そうな黒子を連れて、
美琴は第6デッキに向かう事にしたのだった。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 00:26:21.72 ID:CcD4bKN/Q
「んー、どれにすっかなぁ…」

上条とインデックスは、第6デッキの
ショップに来ていた。
このフロアは、通路を挟んで左右に
様々なショップが並んでいる。
お土産やアクセサリー以外にも、
ケーキやチョコレートなどの
スイーツショップも多数並んでいる。
さながらデパートのようだ。
上条はその内の一軒でお土産を選んでいた。

「小萌の分ー?」

「おう、小萌先生にはスフィンクスの
面倒みてもらってるしなー」

スフィンクスというのは、
インデックスが拾って来た猫の名前だ。
船内はペット禁止になっていたので、
小萌に預けて来たのだ。
月詠小萌。見た目は幼児だが、
上条の担任の教師だ。
いつも何かと世話になっている。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 00:27:58.32 ID:CcD4bKN/Q
「秋沙の分も買うー」

姫神秋沙、インデックスの数少ない友達だ。
現在その力は抑えられているが、
ディープブラッドという特殊な能力の持ち主。

上条にとっても友達と呼べる人物の一人だ。
上条は財布の中身と値札を見比べる。

「じゃあ、小萌先生と姫神と…土御門達の分は…
よし、諦めよう!」

いくら豪華客船の中にいても、
上条の財布はいたって庶民なのだ。
「とーま。お土産買ったら…」

「ダメだ」

「う…まだ何も言ってないんだよ」

「どうせ『ケーキ買って欲しいかも』
なーんて言うんだろ?
上条さんにはお見通しなのです」

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 00:29:10.20 ID:CcD4bKN/Q
「とーまのけちー」

インデックスがケーキの一つや
二つで満足するはずがない。
上条は空の財布が容易に想像出来た。
豪華客船に乗るという事で、
お金は少し多めに持って来てはいたが、
あくまでも万が一の時の為だ。
出来れば生活費にしたい。
上条はお土産を買うと、
だだをこねるインデックスを連れて
部屋に戻る事にした。


36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 00:30:49.97 ID:CcD4bKN/Q
「く…お姉さまの生着替えを見られると
思ってましたのに…いや、
チャンスはまだありますの…」

「黒子、何ブツブツ言ってんの?」

「な、何でもありませんの!お、
おほほほほ」

二人は通路を歩きながら、
様々な店を見て歩く。
30分程ぶらぶらしていると、
雰囲気の良いお店が見えた。

「初春さんと佐天さんにも
お土産買って帰らないとね」

二人がお店に向かってのんびり
歩いていると、
通路の奥、こちらに向かって
見慣れた人物が歩いて来た。


37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 00:31:56.55 ID:CcD4bKN/Q
「あぁぁ!!あんた!!」

「おぉ、また会ったなー」

「何が『また会ったなー』よ!
あんた今までどこにいたのよ!?」
上条は頭を掻きながら、
苦笑いをしている。

「いやー、説明すると長くなるんですよ御坂さん」

「あらあら上条さん。お久しぶりですの。
ところでその方は?」

黒子は上条にズルズルと
引きずられている少女を指差す。
少女はうわ言の様に、
ケーキケーキと呟いていた。

「げっ…あんたもいたの」

美琴の声に、引きずられていた少女が
振り返った。

「あ!短髪だ!」

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 00:33:41.58 ID:CcD4bKN/Q
「ビリビリとか短髪とか…
あんた達は名前を覚えるのが苦手のようね」

美琴は眉間にしわを寄せて、
前髪からパチパチと電気を放っている。

「い…ち、違うんですよ御坂さん!
こいつは決して名前を
覚えていない訳ではなく…
そう!親しみを込めたあだ名です!
あだ名!」

上条は美琴から距離を取りながら、
必死に言い訳をする。
しかしそれは単に、火に油を
注ぐ結果となる。

「そう…あだ名ね。なるほど」

美琴の顔が笑顔に変わる。
黒子はその笑顔に恐怖を感じたが、
上条は致命的に鈍感だった。

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 00:34:40.07 ID:CcD4bKN/Q
「そう、あだ名!いやー、分かって
もらえて良かった!あ、あははは」
この後上条の身に起こる事に同情して、
黒子は静かに目を閉じる。

「そんなあだ名で……」

「あはは…は?」

「親しみ感じるかぁぁぁぁ!!」

美琴の前髪からバチバチと
音を立て、電撃が放たれる。
一直線に向かってくる電撃に、
上条は咄嗟に右手を突き出した。
次の瞬間、電撃は弾ける様に
消えてしまった。
このやり取りを何度繰り返しただろう。
無駄だと分かっていても、
美琴は電撃を放たなければ
気が済まないのだ。

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 00:35:58.10 ID:CcD4bKN/Q
上条が美琴の電撃を
消してしまったのを見て、
黒子は初めて上条に会った時の
出来事を思い出していた。

(あの時も…私のテレポートが
使えませんでしたわね…)

黒子は上条の能力について、
薄々は感づいていた。
確証を得る為に一度調べた事があるが、
《能力を消す能力》は学園都市の
バンクにも一切のデータがなかった。

「はぁ~、お姉さま。
場をわきまえて下さいな。」

上条の能力、気にはなるが、
それがなにかしらの脅威ではない以上、
詮索しても仕方がないと黒子は判断した。
それよりも聞かなければならない
事がある。

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 00:36:50.99 ID:CcD4bKN/Q
「で、上条さん。もう一度お伺いしますの。
そちらの方をご紹介してくださいませんか?」

黒子は改めてその少女を観察する。
日本人ではないようだが、
日本語は話せるようだ。
銀髪で白い肌、瞳は薄い緑色。
人の事は言えないが、かなり幼く見える。

「あ、あぁ。こいつは……」


44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 00:38:05.18 ID:CcD4bKN/Q
上条は黒子にインデックスを紹介した。
もちろん"重要な項目"は話さなかった為、
紹介は薄っぺらいものになってしまったが。
こうして改めてインデックスの事
を誰かに話すと、
記憶をなくした事を実感する。
上条はインデックスと出会った経緯も、
なぜ記憶をなくしたのかも覚えていない。
黒子に話さなかった"重要な項目"も、
記憶ではなく知識として知っているだけなのだ。

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 00:39:06.67 ID:CcD4bKN/Q
「まぁ、あまり納得出来る紹介では
ありませんが…
とりあえずよろしくですわ、おチビさん」

黒子はそう言って恭しく頭を下げた。
こう見えてもきちんとお嬢様なのだ。

「む?あなたには言われたくないかも」

おチビさんと言われた事に、
インデックスはムッとしている。
「"短髪"より"おチビさん"の方が
マシよね…」

黒子の横では美琴がブツブツ
呟いている。
面倒な事が起きる前に、
上条は話題を変える事にした。

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 00:40:30.52 ID:CcD4bKN/Q
「そ、そういえばそろそろ夕食の
時間じゃねーか?」

上条が携帯を取り出すと、
ディスプレイにはPM06:52と表示されている。

「あら、本当ですの」

黒子も携帯で時間を確認している。
夕食と聞いて、
インデックスの顔がみるみる明るくなる。

「とーま大変!急がないと!」

つまみ食いをした時に
場所は覚えたのだろう、
インデックスは一人で走って行ってしまった。

「じゃあ俺達も行こうぜ」

上条は二人に声を掛ける。

「え?」

美琴は驚いて聞き返す。
上条はてっきりあの少女を追って、
別行動になると思っていた。

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 00:41:44.14 ID:CcD4bKN/Q
「せっかく知り合いに会えたんだし。
一緒に飯食おうぜ」

そう言うと上条はさっさと第10デッキに
向かって歩き出してしまった。
思わぬかたちで一緒に食事を
する事になって、
美琴は嬉しいような、
気恥ずかしいような気持ちだった。
ちなみに上条は知り合いと一緒の方が、
落ち着いて食事が出来ると思っただけだった。
なにせ豪華客船。
上条の様な貧乏学生とは無縁なのだ。
正直二人に会えて、上条はホッとしていた。
もちろん美琴はそんな上条の心情が
分かるはずもなかったが…

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 00:43:11.00 ID:CcD4bKN/Q
第10デッキの船尾側には広いスペースがある。
希望があれば結婚式なども執り行われ、
主にパーティー用などに使う為、
あけられているスペースだ。
会場には綺麗に飾り付けられた円テーブルや椅子、
バイキング形式で様々な料理が並んでいる。
すでにほとんどの乗客が集まっていた。
テーブルは丁度四人で一つ割り当てられている。
単純計算でおよそ50脚だ。

「………」

会場を見渡していた上条は
思わず絶句してしまう。
予想はしていたが、
会場の奥、テーブル一杯に料理を
広げているインデックスが目に入った。

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 00:44:19.96 ID:CcD4bKN/Q
「おい…インデックス」

上条は一心不乱に料理を
口に運ぶインデックスに声を掛ける。

「あ、とーま。これは私の分。
とーまにはあげないんだよ?」

「いらねーよ。てか取りすぎだ。」

上条は呆れた顔で席に着く。

「だって好きなだけ取っていいって
言われたもん」

そう言いながらもインデックスは
食べる事だけは止めない。

「…残すなよ」

「うんっ!」

インデックスが幸せそうならまぁいいか。
上条は今日だけは大目に見る事に
決めたのだった。

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 00:45:45.32 ID:CcD4bKN/Q
「あいつ、席取ってくれてるかな」
美琴と黒子は少し遅れて会場に入った。
席は決められていないようで、
皆思い思いの場所に座っている。
「おーい!御坂ー!白井ー!
こっちこっち!」

声がする方を見ると、
奥のテーブルで上条が両手を振っていた。

「あ、あのバカ!大声で名前呼んでんじゃないわよ!」

その大声に、周りの乗客の
視線が二人に集まっていた。

『ねぇ、御坂って…』

『あの"超電磁砲"の?』

『嘘ー?』

『でもあれ常盤台の制服だぞ』

『すげー!俺初めて見た!』

招待客は皆学園都市の学生なので、
レベル5の"超電磁砲"といえば
ちょっとした有名人なのだ。
会場内はザワザワとしていた。

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 00:46:34.22 ID:CcD4bKN/Q
「あらあらさすがお姉さま。
黒子は鼻が高いですわ」

乗客の皆に笑顔で頭を下げている黒子を置いて、
美琴は上条に詰め寄る。
顔は真っ赤だ。

「あっ、あんたね!ちょっとは空気を読みなさいよ!」

「えー、何怒ってんだよ?
いいじゃん別に」

「ぐっ…この…」

上条は何が悪いのか
分からないという顔をしている。上条には分からなかったが、
レベル5にはレベル5の苦労があるのだ。

「……はぁ~、もういい」

不毛な言い争いになるのは目に見えている。
美琴は諦めて席に着いた。

「で…この大量の料理は何…」

インデックスは満面の笑みで答える。

「私のー!短髪は食べちゃダメなんだよ!」

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 00:49:32.51 ID:CcD4bKN/Q
毎度お馴染みの揉め事はあったものの、
三人はそれぞれ料理を取り、
席に着いた。

「んじゃ、いただきますか」

上条の一言で夕食の時間が始まる。
三人は食べ始めたばかりだが、
インデックスは既に折り返し地点に来ていた。
料理の半分以上はなくなっている。
お箸を上手く使えないインデックスは、
フォークで次から次へと料理を刺していた。

「あ…あんた見てると
お腹いっぱいになるわね」

「えぇ…胸焼けしそうですの」

上条にとっては至極当たり前の光景だが、
やはり他人が見れば
この反応が当たり前なのだ。

「おいインデックス。
食べ過ぎたらお腹壊すぞ」

上条は内心無駄だと分かっていたが、
保護者的立場から一応忠告する。

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 00:50:54.14 ID:CcD4bKN/Q
「らいひょーふ!」

インデックスは口一杯に料理を
詰め込んで答える。
頬にご飯粒がいくつも付いていた。

「ったく、慌てて食わなくてもご飯は逃げねーぞ」

そう言いながら上条は
インデックスの頬に付いた
ご飯粒を取ってやる。
もちろんこれも保護者的立場
からとった行動だった。
が、美琴はそれを面白くなさそうに見ていた。
そんな美琴に気付いた上条は、
心配そうに声を掛けた。


59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 00:52:16.37 ID:CcD4bKN/Q
「ど、どーした御坂?食欲ないのか?」

「…何でもない」

美琴の声は明らかにイライラしていた。

「具合悪いのか?
具合悪いなら医務室に連れて行っ…」

「何でもないって言ってるでしょ!」

美琴は勢い良く立ち上がり、
テーブルの上の食器がガチャンと音を立てる。
突然の大声に、周りの乗客達は
静まり返ってしまった。

「……御手洗い行ってくる」

驚いて、ただ美琴を黙って見ている
上条達を残して、美琴は会場から
出て行ってしまった。
黒子だけは何かを感じ取ったのだろうか、
ただ黙々と食事を続けていた。

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 00:53:38.48 ID:CcD4bKN/Q
丁度夕食の時間なので、
トイレの前の通路に人の気配はない。

誰もいないトイレ、洗面台の前で
美琴は溜め息を吐く。

「…最低ね」

鏡には暗く沈んだ自分が映っている。
何故あんなにもイライラしたのだろう。
何故こんなにも胸が締め付けられるのだろう。
上条の前では"自分だけの現実"が保てない。
美琴は最初からレベル5だった訳ではない。
多少の才能はあったのかもしれないが、
間違いなく"努力"の結果だった。
誰よりも自分に厳しく、
誰よりも努力をして今の位置に立っている。
それにより積み上げて来たのが、
パーソナルリアリティ、"自分だけの現実"だ。
【常盤台のエース】【学園都市第三位のレベル5】
そういった"現実"も、
粉々に砕いてしまう程の上条への感情が
美琴の中にあった。
この感情を上手く受け止められる程、
美琴は大人ではないのだ。
それがこうした形で表に出てしまった。

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 00:57:18.37 ID:CcD4bKN/Q
「よし、笑顔笑顔!」

ここでウジウジしていても仕方ない。
美琴は頬をパチンと叩くと、
上条達のもとへ戻る事にした。

「?」

トイレから出ようとした美琴は、
誰かの話し声に気付いた。
どうやらトイレ前の通路から
聞こえて来ているようだった。

(う…何よ。出にくいじゃない)

理由は特にないのだが、
なんとなく恥ずかしいので
どこかに行くのを待つ事にする。
かなり小声だが、どうやら男女二人が
話しているようだった。
会話が断片的に聞こえてくる。

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 00:58:18.19 ID:CcD4bKN/Q
『…のか?…に…が……』

『…わよ。もちろん……は…よ』
『じゃあ……。……で頼む』

『それじゃ』

会話が途切れ、足跡が遠ざかって行く。
美琴がそっと通路に顔を出すと、
既に誰一人いなかった。

「ふぅ~、カップルか何かかしら。
話すならコソコソせず
堂々と話しなさいよね」

さっきまでコソコソしていた美琴は、
ブツブツ言いながら
トイレを後にするのだった。



65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 00:59:47.87 ID:CcD4bKN/Q
「あ…れ?」

上条の箸が皿に当たって
カチャンと音を立てる。

「俺のエビフライがない!」

上条にはすぐに犯人が分かった。
きっとどんなに冴えない探偵でも、
犯人を突き止められるだろう。

「おい、インデックス。
俺のエビフライ食べただろ」

「し、知らなーい」

インデックスは分かり易く顔を背ける。

「じゃあ質問を変えよう。
俺のエビフライはおいしかったか?」

「うん、おいし…あ…」

インデックスはしまったという顔をしている。

「単純な奴め!つーか俺の盗らなくても
あっちから取って来たらいいだろ!」

「とーまこそ取って来たらいいんだよ!」

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 01:00:52.24 ID:CcD4bKN/Q
ギャーギャー言い合う二人を横目に、
黒子は自分のエビフライの尻尾を摘む。
黒子の指先からエビフライが消え、
上条の皿の上にポトンと落ちた。

「たかがエビフライで
そこまで喧嘩なさるなんて。
ある意味尊敬しますわね」

黒子が呆れて二人を眺めていると、
美琴が席に戻って来た。

「あんた達、食事の時くらい
大人しくしなさいよねー」

そう言って美琴は席に着く。

「御坂、ほんとに大丈夫か?」

「大丈夫に決まってんでしょ。
さ、ご飯ご飯!」

明るく振る舞う美琴を、
黒子だけは心配そうに見ていた。

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 01:02:46.46 ID:CcD4bKN/Q
黒子は一番近くで美琴を見て来た。
美琴の事は誰よりも理解しているつもりだ。
そんな自分が今美琴にしてやれる事は…。

黒子は美琴の耳元で囁く。

『お姉さま。あまり無理はしないで下さいな』

きっとこれで充分だ。
美琴はたったこれだけでの言葉でも、
自分が伝えたい事を理解してくれる。
黒子はそう思った。
その証拠に、
美琴は声を出さずに唇だけ動かす。

"ありがと"

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 01:03:59.96 ID:CcD4bKN/Q
その後は食事もスムーズに進んだ。
黒子は少し心配していたが、
美琴はいつもの御坂美琴に戻ったように見える。
今は自然な笑顔を見せていた。

「はぁ~、お腹いっぱいかも」

インデックスは満足そうに
テーブルに突っ伏している。
あれだけあった料理も、
今は重ねられた皿に変わってしまった。

「あんたねー…あれだけ食べて
よく平然としてられるわね」

美琴は心底呆れた顔で、
食い意地の張ったシスターを眺める。
上条の話では、このシスターは
いつも人の何倍も食べるらしいが、
見たところ腕も首筋にも余計な
肉は付いていない。
どちらかと言えば
痩せているとさえ言えるだろう。

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 01:05:33.81 ID:CcD4bKN/Q
「いいなー、食べても太らないなんてさ」

そう呟いた美琴に、
黒子が背後から襲い掛かる。

「お姉さま。女性は少しくらい
ふくよかな方がモテますの。
確かにここは少し
痩せ過ぎかもしれませんけど…」
そう言いながら、黒子は美琴の胸を鷲掴みにする。

「ちょっ!黒子!やめて!」

「でも黒子はお姉さまのこの!
この慎ましい胸を好いておりますのっ!」

黒子はひたすらに胸を触り続ける。
上条はわざとらしく目をそらしている。

「やめろって言ってんでしょーがぁぁ!」

「げふっ!!」

美琴が繰り出した肘は、
背後の黒子を正確に仕留めた。
これも毎度お馴染みの光景だ。

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 01:08:53.98 ID:CcD4bKN/Q
「さて、と。あんた達はこれからどーすんの?」

美琴は携帯で時刻を確認する。
ディスプレイにはPM08:45と表示されていた。

「んー、そうだな。まずは風呂でも入って…」

上条は上のデッキにスパがある事を思い出す。
こういった客船は、煙突の下のデッキなど
騒音の恐れがある場所には、
スパやレストランなどの
パブリックスペースを造るようにしている。

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 01:09:58.95 ID:CcD4bKN/Q
幸いにも美琴と黒子がいるのだ。
インデックスも一緒に
お風呂に連れて行ってもらおう。
一人で行かせるのは正直不安なのだ。

「インデックス。風呂に…ん?」

上条はテーブルに突っ伏している
インデックスがプルプル震えて
いる事に気がついた。
嫌な予感がする。

「とーま…」

「インデックス…お前まさか」

「お腹がちくちくする…」

「………」


76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 01:11:32.53 ID:CcD4bKN/Q
「お約束の展開ですわね」

「…そうね」

結局インデックスを部屋で休ませる為、
四人は別行動する事になった。
上条は医務室で胃薬をもらい、
インデックスをベッドに寝かせてやる。

「とーま、ごめんなさい」

布団で口元を隠し、
インデックスは謝る。
彼女なりに迷惑を掛けたと思って
いるようだ。

「ったく、だから気をつけるように言ったんだぞ」

「うん…」

落ち込むインデックスに、
上条は優しく微笑んでやる。

「まぁとにかくゆっくり休め。
ここにいてやるから」

インデックスは本当に
嬉しそうな顔をして目を閉じた。

79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 01:12:52.57 ID:CcD4bKN/Q
「ふぅ~」

上条は窓から外を眺める。
出航してからどれだけの
距離を進んだのだろう。
もう街の灯りも見えない。
ただただ闇が広がっていた。

「さてと、のんびりしますか」

それから上条はテレビを見たり、
部屋でシャワーを浴びたりして時間を過ごした。
インデックスはいつの間にか、
スースーと小さな寝息を立てている。
気付けば部屋の時計は午後10時を差していた。

「はは、疲れてたんだなー」

上条はインデックスの寝顔を
眺める。
とても幸せそうな寝顔だ。
インデックスと暮らし始めてから、
上条は浴室に寝袋を持ち込んで寝ている。
だからこんなにマジマジと寝顔を
眺める事はめったにない。

80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 01:14:38.85 ID:CcD4bKN/Q
>>78

すいません、携帯です
改行上手く出来なくて申し訳ないです
大目に見てくれたら幸いです

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 01:15:44.25 ID:CcD4bKN/Q
「来て良かった…かな」

記憶の無い上条にとって、
インデックスに出会う前の事は
知識として頭に入っている。
こんな小さな体で、どれほど
辛い思いをしてきたのだろう。
インデックスの頭の中にある、
10万3000冊の魔導書のせいで、
どれだけ危険な目にあっただろう。
一年に一度、大切な思い出を消され、
この少女には何が残ったというのだろう。

「今日の思い出…大事にしよーな。
インデックス」

上条は幸せそうな寝顔を見て呟く。
この少女の笑顔を守る為に、
出来る事はなんでもしてやる。
上条は右手を握り締め、
強く強く心に誓った。

82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 01:17:31.68 ID:CcD4bKN/Q
「お姉さま…まるで檻の中の
動物のようですわよ」

黒子はベッドに腰掛けて、
美琴を観察している。
上条達と別れ、部屋に戻ってからというもの、
美琴は明らかにソワソワしていた。
立ったり座ったり、
テレビを付けたり消したり、
今は部屋の中をあてもなく
行ったり来たりしている。

「そんなにあのお二人が気になるなら、
お部屋に遊びに行ってはいかがですの?」

「べっ、べべ別に気になってなんかないわよっ!
てか何で気にしなきゃいけないのよ!」

美琴は真っ赤になって否定する。
上条の話をする時の美琴は、
とてもレベル5とは思えない。
ただの女の子だな、と黒子は思う。

84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 01:19:28.95 ID:CcD4bKN/Q
「へぇ…そうですの。
ではあのお二人の事は放っておいて…」

黒子の目に邪悪な光が宿る。

「私と愛を育んでくださいませ!
お姉さまぁぁぁ!!」

「育むかぁぁぁ!!」

「げふぅっ!」

飛びかかって来た黒子に、
美琴のアッパーが炸裂する。

(はぁ~、夜風にあたって少し落ち着こう)

「ぐふ…お…お姉さま…
どこへい…かれますの?」

美琴は牽かれたカエルのように、
床に這いつくばっている黒子を
置いて部屋を後にする。

「ちょっと夜風にね」

時刻は午後10時半を回ったところだった。

86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 01:23:00.91 ID:CcD4bKN/Q
「………」

美琴はメインデッキ、甲板の柵に
肘をついて、海を眺めていた。
甲板には乗客もまばらで、
美琴をいれても数人しかいない。
甲板にはオレンジ色の暖かなライトが灯り、
夜の甲板を優しく包んでいる。

(あのバカ……)

美琴は上条とインデックスと同じ部屋なのが、
なんとなく嫌だった。
訳があってずっと一緒にいるのは
分かるし、上条の性格なら
ほっとけないのも当たり前だろう。
頭では分かっているのだが、
実際に目の当たりにすると
こうも心が揺さぶられるとは思わなかった。

「はぁ~……」

美琴は深い深い溜め息を、
海に向かって吐き出した。

88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 01:25:45.28 ID:CcD4bKN/Q
「何溜め息吐いてんだ?」

「!?」

驚いて振り返ると、
そこには上条が立っていた。

「あ、あんた!何でここにいんのよ?
あの子は?」

「インデックスならもう寝ちまったよ。
ちょっと夜風に当たりに来た。
ほれ」

そう言って上条は美琴に
缶コーヒーを投げる。

「あ…ありがと」

缶コーヒーは温かく、
潮風で冷えた美琴の手には
心地良かった。

90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 01:27:25.96 ID:CcD4bKN/Q
「お前が居るのが見えたからな。
御坂も夜風に当たりに来たのか?」
上条は美琴の横に並び、
同じ様に柵にもたれかかる。

「うん」

上条に聞こえてしまうのではないかと思うほど、
美琴の鼓動は早くなる。

「白井は?」

「ね、寝てる」

正確には"伸びている"だが、
あながち嘘ではない説明だ。

「そっか」

そう言って上条は海を眺める。
美琴は何か話そうと思ったが、
こんな時にする会話が思い浮かばなかった。
いつもはからかったり文句をいったり、
追い掛け回したり。
これはこれで美琴は楽しかったりするのだが、
こんな時にする事ではないなと、
美琴にも分かっている。
二人の間に沈黙の時間が流れる。

91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 01:28:53.61 ID:CcD4bKN/Q
「くしゅんっ」

その沈黙を破ったのは、
美琴のくしゃみだった。

「寒いのか?」

「ちょっと冷えただけ」

美琴は常盤台の制服を着ている。
学校の外でも制服を着るのが校則なのだ。
もちろん学園都市の外に出る時まで
着る必要はないのだが、
習慣というか慣れというか…
美琴は制服で来てしまった。

(さすがにスカートは寒い…
ちゃんと着替えてくるんだったな)


92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 01:29:48.83 ID:CcD4bKN/Q
美琴が後悔していると、
ふいに背中から何かを掛けられた。
それは上条の上着だった。

「…へ?」

「さすがにその格好じゃ風邪引くと
上条さんは思うわけですよ」

美琴の体温が上がっていく。
きっと頬も耳も真っ赤になっている。
今が夜で良かった。美琴は心から
そう思った。

「あ…ありがと」

そして訪れる沈黙。
二人はただ黙って海を眺めている。
しかしさっきの沈黙よりも、
ずっとずっと居心地がいいなと、
美琴は上着を握り締めながらそう思った。

95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 01:32:08.38 ID:CcD4bKN/Q
美琴は海を眺めている上条の横顔を
こっそり眺める。

(そういえば…)

上条が記憶喪失だった事をふと思い出す。
自分と初めて出会った時の記憶も
失っているはずだ。
盛夏祭で偶然会った時も、
よく考えればよそよそしかった気がする。

(でも…)


99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 01:33:09.51 ID:CcD4bKN/Q
美琴は考える。
出会った時から上条は変わっていないと思う。
バカで適当でお人好しで…
でも優しくて。
そして誰かの為に命を懸けて戦える。

(やっぱり私こいつの事…)

美琴が缶コーヒーを飲もうと、
プルタブに指をかけた時だった。

パンッパンッと乾いた音が響く。
次いで女性の悲鳴。

「!?」

「な、何!?」

美琴の手から滑り落ちた缶コーヒーが、
暗い海に吸い込まれていく。

「じ、銃声…?」

101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 01:34:42.31 ID:CcD4bKN/Q
甲板の乗客達も、事態が飲み込めず
何事かとザワザワしている。

「おい、御坂!これって…おい、御坂?」

「………」

美琴はさっきから何か違和感を感じていた。

(この感じ……まさか)

何かに気付いた美琴は、
両手を握ったり開いたりしている。

「み、御坂。何やってんだ」

上条の声も美琴の耳には届かない。

(やっぱり……)

何度も何度も確かめてみる。
そして美琴は一つの結論に達した。

「能力が…使えない!」

103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 01:36:20.42 ID:CcD4bKN/Q
「能力が使えないって…どういうことだ!?」

「多分これは…」

美琴が何かを言いかけた時だった。

「全員動くな!手は頭の後ろだ!」

デッキの中から、
黒い服に身を包んだ男が二人現れた。
ポケットのたくさん付いた、
いわゆるアーミージャケットだ。
顔は覆面で隠れていて、
見えているのは目だけだった。
しかしそれよりも上条が気になったのは、
彼らが構えているモノだった。

「ライフル…!?」

男達はライフルを構えて近付いてくる。

「くっ!」

上条の横で美琴が身構える。
今にも飛びかかりそうな美琴を、
上条は反射的に制止する。

104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 01:37:26.81 ID:CcD4bKN/Q
「能力が使えないんだろ!
今むやみに手を出すのはダメだ!」

「でも!」

「インデックスや白井の事も心配だ…
今は従うしかねー」

美琴は上条の右手が強く
握り締められている事に気付く。
「あんた…」

上条も今すぐ飛びかかりたいのだ。
部屋には一人でインデックスが寝ている。
心配に決まっている。
それでも上条は我慢しているのだ。
今ここで動いても、
事態は良くならないと判断したのだ。

「…ごめん」

美琴は素直に謝る。
上条の気持ちを無駄には出来ない。

106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 01:38:55.45 ID:CcD4bKN/Q
二人が連れて来られたのは、
歓迎式典も行われた、メインデッキの
ロビーだった。
ロビーには既にたくさんの乗客、
乗組員達が集められていた。
ひそひそと話す声や、すすり泣く
声が聞こえて来る。
皆後ろ手に縛られ、
ロビーの中央に固められている。それを取り囲む様に、
覆面の人間達が並んでいる。
全員の性別までは分からないが、
彼らを何と呼ぶかは分かる。
テロリストだ。
上条はテロリストの人数を確認する。
これで全員かは分からなかったが、
上条達を連れて来た二人を含めて二十人近くいる。

「ほら、とっとと座れ!」

男に促され、上条は乗客を素早く見渡す。
見覚えのある白いフードを見付け、
横に腰を下ろす。

108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 01:40:51.90 ID:CcD4bKN/Q
「インデックス!白井も!」

「とーま!短髪!」

インデックスと白井は一緒にいた。
二人共見たところ怪我などはしていない。
上条はとりあえずは安堵し、
二人に話を聞く。

「それが…私にもよく分かりませんの。
いきなり部屋にあいつらが入って来て、
ご覧の通りですの」

黒子は背中を向け、
縛られた両手を上条に見せる。

「黒子、あんたも能力は…」

「えぇ、使えませんでしたわ。
使えればこんな事になっていませんの」

黒子は小さく溜め息を吐く。
ジャッジメントでもある黒子は、
多少の白兵戦は心得ている。
だがあくまで"能力の使用を前提"
とした白兵戦なので、銃を相手に
素手だけで挑むのは
自殺行為以外の何でもなかった。

113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 02:06:49.47 ID:CcD4bKN/Q
上条はずっと疑問に思っていた事を聞いてみる。

「そういえば御坂、さっき言ってたよな。
能力が使えないってどういう事だ?」

そう聞かれた黒子は、驚いた顔をする。

「上条さんは何も感じませんの?」
「感じるって…別に何も」

「黒子…これっていつかの事件に
似てるわね」

美琴の言う"いつかの事件"に、
黒子は首を振る。

「キャパシティダウン、ですわね。
けどこれはもっと別のモノですの」

美琴の脳裏に、大型の装置が浮かぶ。

114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 02:07:56.33 ID:CcD4bKN/Q
【キャパシティダウン】
スキルアウトの一つ
ビッグスパイダーが使った、
対能力者用の音響装置だ。
演算能力に干渉する特定のノイズを発し、
能力の使用を阻害する。
しかし今はノイズも聞こえなければ、
あの時の様になんとか出来る気がしない。
完全に能力が使えなくなっているのだ。

「別のモノ…まさか」

美琴は何かに気付いた様だが、
上条には話を聞く事で精一杯だった。

「えぇ…おそらく。【AIMジャマー】ですわね」


115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 02:10:20.39 ID:CcD4bKN/Q
「AIMジャマー?何なんだそれ?」

訳の分からない顔をする上条に、
黒子が説明する。

「AIM拡散力場はご存知ですの?」

「確か…能力者が無意識に発生
させる力の…フィールド?」

高校の担任、小萌がそんな事を
話していたような気がする。
もっと勉強しとけば良かったと
上条は思った。

117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 02:11:21.30 ID:CcD4bKN/Q
「えぇ、簡単に言うとそうですわね。
AIMジャマーとは、そのAIM拡散力場を
乱反射させ、自分で自分の能力に
干渉させる事で能力の発動を
阻害する装置ですの」

「よく分かんねーけど、
完全に能力を封じるって事か」

「えぇ。学園都市では少年院や、
能力者からのターゲットになりやすい
一部の施設で使用されてますわね。ですが…」

「こんなモノがどうして出回っているか
…って事ね」

118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 02:12:42.24 ID:CcD4bKN/Q
美琴の指摘に黒子は頷く。
ビッグスパイダーの時も今回の時も、
こんな装置が出回る事事態異常なのだ。
能力者を生み出すという事は、
その能力者を抑え込む"首輪"
も必要になる。
飼い犬に手を噛まれる事もあるからだ。
その"首輪"が出回れば、
いずれ"首輪"のはずし方も分かってしまう。

「対能力者用の装備を売買する
組織があるって事ね…」

「気にはなりますが今は後回しですの。
この状況を何とかしませんと…」

119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 02:15:38.88 ID:CcD4bKN/Q
上条はあらためて状況を整理していく。
黒子の話では、携帯電話やパソコンなどの
通信機の類は、簡単な身体検査や荷物検査で
全て取り上げられている。
上条も御坂も、ここに連れて来られる前に
没収されていた。
他の乗客達も、間違いなく同じ状態のはずだ。

「外部への連絡は無理か…」

上条の呟きに黒子が答える。

「そんな事はないと思いますの」

「へ?何でだ?」

「船内の電話や無線は無理でしょうね。
電話線を切断、無線の物理的破壊。
これは片手間で済む作業ですから」

「じゃあやっぱり無理じゃない」

美琴が呟き、三人に諦めムードが漂う。
しかし黒子は構わずに続ける。

121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 02:17:25.85 ID:CcD4bKN/Q
「携帯をわざわざ回収したという事が
気になりますの。
回収しなければ使われるから回収した。
だとすれば、携帯電話を手に入れる
事が出来れば…」

「で、でも黒子。AIMジャマーみたいに、
電波を阻害する装置があったら?」

「十中八九ありませんわね。
装置があればわざわざ手間を掛けてまで
回収する必要はありませんから。
それにこれは推測ですが、
互いに干渉してしまう為、
AIMジャマーと併用出来ないのかも
知れませんわね」

122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 02:18:34.55 ID:CcD4bKN/Q
「じ、じゃあ携帯さえ取り戻せば!」

「まぁ、海にでも捨てられてなければ
…の話ですの」

「嫌な事言うわね…」

だがこれで少し希望が見えた。
上条はそう思った。

124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 02:20:22.68 ID:CcD4bKN/Q
「問題は身動きが取れない事と
AIMジャマーか。くそ」

上条は頭を掻こうとして、
自分が後ろ手に縛られている事を思い出す。

「とーま…」

インデックスは不安そうな顔で
上条を見ている。
いつの間にか余裕の無い顔をしていたようだ。
どうしようもないイライラが、
表情に出てしまっていた。
上条はインデックスに優しく微笑む。

「大丈夫だインデックス。
絶対に助かる。皆で一緒に帰るぞ」

「まずは…ここから出なきゃいけませんわね」

「でもどうやって…」

黒子は覚悟を決めた顔で口を開く。


126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 02:23:33.03 ID:CcD4bKN/Q
「私が囮になりますの」

黒子の提案を、美琴はすぐに却下する。

「ダメよ黒子!あんた何言ってるかわか…」

美琴の言葉を遮る様に黒子は続ける。

「今出来る最善の方法ですの。
お姉さま、周りを見てくださいな」
黒子に言われて美琴は辺りを見渡す。
捕まった乗客達にテロリスト…

「!?」

美琴は何かに気付いて
黒子と目を合わせる。

「テロリストが…減ってる!?」

美琴の言葉に上条も辺りを見渡してみる。
確かに最初は二十人程いたテロリストが、
今は半分程に減っていた。

「どうやら他に用事でもあるみたいですわね。
少し前に何人か出て行ったようですの。
私がテロリスト達を引きつけている
間に、お姉さま達はそこの非常口から」

130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 03:01:41.82 ID:CcD4bKN/Q
すいません
さるさんでした

131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 03:02:32.69 ID:CcD4bKN/Q
黒子の視線の先には、
メインデッキの非常口があった。
距離にしておよそ20メートル。
非常口の前には誰もいない。

「私が非常口とは反対にテロリストの
視線を集めますの。
お姉さま達はその間に」

「し、白井、そんなあぶねー事…
囮なら俺が」

「本来ならあなたなんかをお姉さまと
一緒に行かせるのは不本意ですが…
私はジャッジメントですから」

132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 03:03:40.62 ID:CcD4bKN/Q
そう言って黒子は小さく笑った。
美琴はその笑顔を見て胸が痛む。
黒子はジャッジメントとして
出来る事をやろうとしている。
危ない事はして欲しくないが、
その気持ちを無駄には出来ない。
「…わかった」

「お、おい御坂!」

「必ず…必ずなんとかするから。
それまで待ってなさいよ、黒子」

「ふふ、信じてますわ、お姉さま」

そう言うと黒子はいきなり立ち上がる。


133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 03:06:52.64 ID:CcD4bKN/Q
「ジャッジメントですの!!」

黒子は声を張り上げて叫ぶ。
そのまま乗客を掻き分け、
非常口と反対方向へ歩いて行く。
乗客を囲んでいたテロリスト達が、
黒子を囲むように移動を始める。
「こんな事して、ただで済むとお思いですの?
今すぐ皆さんを解放しなさい!!
でなければ…」

黒子は身を屈め、
一番近くにいたテロリストへ走る。
テロリストが反応するより早く、
黒子は体を回して蹴りを叩き込む。

「ぐっ!」

テロリストは体をくの字に
折り曲げて膝をつく。


137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 03:08:04.33 ID:CcD4bKN/Q
「てめぇっ!!」

黒子はさらに非常口とは反対に、
視線を集めるように走る。
テロリストも乗客も、
全ての視線が黒子に向けられていた。

「調子に乗るなよクソがっ!!」

黒子の後頭部目掛けて、
テロリストの一人が銃床を振り下ろす。
体を捻って避けようとするが、
後ろ手に縛られて上手くバランス
が取れない。
黒子の後頭部に鈍く重い衝撃が走る。

「がっ…は!!」

ぼやけていく視界の隅に、
身を屈めて非常口から出て行く三人が映る。

(お姉さ…ま)

黒子の意識はそこで途切れた。

138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 03:09:55.56 ID:CcD4bKN/Q
「…黒子」

非常口から船のサイドにある甲板に出て、
三人は息を潜める。
上条は辺りを確認する。
甲板にはテロリストの姿はないようだ。
美琴の顔は悔しさに歪んでいる。

「白井の為にも早くなんとかしねーと」

きっとただで済むはずがない。
その事を考えると、
上条の胸にやり切れない思いが込み上げる。

「…わかってる。
ところであんたはどーして付いて来たのよ」

美琴はインデックスを睨む。
上条は抜け出す時、
インデックスには待っているように
言ったはずだった。
別に足手まといだと思った訳じゃない。
ただ危険だと思ったからだ。
大人しくあの場所にいる方が、
抜け出して動き回るよりずっと安全なはずだ。


139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 03:11:21.40 ID:CcD4bKN/Q
本当に心配だからこそ、上条の語気が強くなる。

「危ないから待ってろって言ったろ!」

「だって…」

インデックスは小さな手を握りしめる。

「とーまは…とーまはいっつも
私の知らないとこで戦って…
私の知らないとこで傷付いて…
私だってとーまと戦うもん!
とーまの役に立ちたいもん!
もう待ってるだけなんて嫌なんだよ!」

インデックスの目に涙が浮かぶ。
歯を食いしばって、必死に涙が
落ちないように耐えている。


141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 03:12:07.00 ID:CcD4bKN/Q
「あんた…」

美琴にはインデックスの気持ちが
少し分かるような気がした。
以前上条に伝えた事がある。
一人で抱え込まず、私を頼って欲しいと。
きっと彼女も自分と同じなのだ。
何も出来ず、ただ待っている事の
辛さを知っているのだ。

「…そーだよな。…ごめんインデックス」

上条は今まで自分がどれだけインデックスを
心配させてきたか思い出す。

「…一緒に行こう、インデックス」

上条は優しく笑いかける。
そして心に誓う。
危険なら…その危険から俺が守ってやればいいと。

142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 03:14:08.83 ID:CcD4bKN/Q
「まずは…どうやってAIMジャマーってのを
止めるかだな」

上条達は身を潜めながら、
作戦を立てる。

「それなら私に考えがある」

「考え?」

美琴は淡々と説明していく。

「この船の電源を落とすのよ」

「電源?」

「そ、電源。おそらくAIMジャマーは、
船から電気をもらって作動してるはず。
相当の電気量が必要なはずだからね。
だから船の電源を落とせば、
AIMジャマーも止まるはずよ」

上条は分かったような、
分からないような顔で聞いている。


143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 03:15:31.60 ID:CcD4bKN/Q
上条は一つ気になる事を聞いてみる。

「船から電気をもらってなかったらどうすんだ?」

「多分それはない。
黒子の話、あんたも聞いてたでしょ?
あれは少年院なんかで使われるものよ。
そんなもんがバッテリーなんかで
動いているとは考えにくい。
そもそも持ち運ぶ様なもんじゃないしね」

「だから電源を落とすのか」

美琴は頷き、続ける。

「私はAIMジャマーを探す。
あんた達は船の電源を落として」

「そんな、一人じゃあぶねーって!」

上条が心配してくれる事は嬉しかった。
しかし美琴には作戦があった。

149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 03:55:49.24 ID:CcD4bKN/Q
しかし美琴には作戦があった。

「もし船に緊急用の予備電源があったら困るのよ。
予備電源に切り替わるまでには、
必ずタイムラグがあるはず。
あんた達が電源を落として、
予備電源に切り替わる間に、
私が能力で装置を破壊する。
だから別行動よ」

「……分かった」

「連絡は取り合えないけど、
あんた達が電源を落とすまでには
AIMジャマーを見つけてるわよ」

美琴は小さく笑うと立ち上がる。

「じゃ、行くわよ!」


150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 03:57:35.46 ID:CcD4bKN/Q
すいません
今日はここまでにします
明日残っていれば続き書きます
支援してくださった皆さん
ありがとう

159 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 09:22:32.80 ID:CcD4bKN/Q
美琴は二人と別れた後、
外の階段から一つ上のデッキ、
第6デッキに上がっていた。

(あるとすれば…多分ここね)

当てずっぽうではない。
美琴はある推測のもと動いていた。

(捕まった時に見た限り、
メインデッキにはなかった)

美琴はショップの陰に隠れるように
身を屈めて移動する。

(効率良くAIMジャマーを使うなら…)

縛られた手のせいで、
上手くバランスが取れない。
何度も前のめりになってしまう。

(船の前でも後ろでも、
上でも下でもない)

美琴の目に何かが映る。

(ど真ん中っ!!)

160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 09:23:28.94 ID:CcD4bKN/Q
通路の中央に、何か大きな装置があった。
金属製の箱の様な物だった。
箱からは、太いコードが何本も
伸びている。
一辺が2メートル程あるだろうか。
上条達と会った時には無かったもの。
間違いない。美琴は箱との距離を
少しずつ詰めて行く。

(あと…多分10メートル!行ける!)

美琴が更に距離を縮めようとした時だった。
死角になっている箱の向こう側に、
誰かが立っているのに気付く。
一瞬だがライフルの銃身の様な
ものが見えたのだ。

(くそ…装置の護衛!?)

上条達がいつ電源を落とすか分からない。
グズグズしている訳には行かないのだ。

(やるしか…ないわね)

美琴の目に強い光が宿る。


162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 09:36:23.01 ID:CcD4bKN/Q
「インデックス、俺から離れるなよ」

上条とインデックスは、船の外周に沿って、
船首に向かう。
船首側にも大きなドアがあり、
上条はそこから船内の様子を窺う。

(なんか…おかしくねーか)

上条は何か言い知れぬ違和感を覚えていた。
テロリストが少ない。
本来なら出入り口には見張りが
立っていてもおかしくないのだ。

(船内に乗客がいないと思って油断してんのか?
…それとも何か理由が)

上条とインデックスはそのまま船内へ入る。
入ってすぐに、下のデッキへの階段があった。
二人は静かに階段を降りて行く。

163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 09:38:43.65 ID:CcD4bKN/Q
船の電気を管理している部屋は、
第4デッキ、今から上条達が向かうデッキにある。
途中、船の案内図をインデックスが記憶したのだ。
"完全記憶能力"。
一度見たものは決して忘れない、
インデックスの能力。
この能力のせいで、インデックスはたくさん
辛い思いをして来た。
しかし今はこの能力に頼るしかない。
上条は複雑な気持ちだった。

「とーま、この通路の奥。
左手の部屋が管理室なんだよ」

インデックスの声に、
上条は通路の奥を覗き込む。

「っ!?」

通路の奥、目的の部屋の前に、
テロリストが一人立っていた。

「と、とーま。どーしよう」

インデックスは不安そうな顔で
上条を見ている。

「俺に…考えがある」

「考え?」

164 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 09:40:38.39 ID:CcD4bKN/Q
上条は目測でテロリストまでの距離を測る。
およそ20メートル。
テロリストは扉にもたれ掛かる様にして、
こちらに背中を向けている。

(チャンスは…今しかねー!)

「うぉぉぉぉ!」

上条は陰から勢い良く飛び出し、
テロリスト目掛けて全力で走る。
手が縛られていようが関係ない。
「!?」

テロリストが振り返る。
しかし上条は既に自分の間合いまで詰めていた。
上条は素早く身を屈める。

「っらぁ!」

立ち上がる勢いを利用し、
テロリストの顎目掛けて飛び上がる。

「がっ、は!」

上条の頭がテロリストの顎を正確に捉えた。
脳を揺さぶられたテロリストは、
そのまま地面に崩れ落ちる。

165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 09:42:48.81 ID:CcD4bKN/Q
「ぐっ…はぁ、はぁ」

上条の頭にも、とてつもない痛みが走る。

「なんとか…なった」

「とーま!」

様子を窺っていたインデックスが、
上条に歩み寄る。
ひどくご立腹の様だった。

「考えって、これ!?」

「あ、あはは…」

上条は苦笑いをする。

「ただ突っ込んだだけじゃん!
下手すればやられてたのはとーまなんだよ!?」

インデックスが怒っているのは、
きっと本気で心配してくれているからだ。

166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 09:43:38.70 ID:CcD4bKN/Q
「もしとーまに何かあったら…」

インデックスはまるで自分が傷付いた様に、
辛そうな顔をする。
まただ。またインデックスを
悲しませる様な事をしてしまった。
上条は胸が痛む。こんな顔をさせたくないから、
上条は記憶が無い事を
隠してまでインデックスの側にいるのだ。

「ごめん。もうしねー。約束するよ」


167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 09:44:48.58 ID:CcD4bKN/Q
「ふー、やっと自由だな」

上条は赤くなった手首をさすりながら呟く。
テロリストの腰には、
ナイフがぶら下がっていた。
上条はプラスチックの拘束具を、
四苦八苦しながら切断したのだ。

「これでよし」

管理室には工具箱があり、
その中にはガムテープもあった。
上条は気絶したテロリストを、
ガムテープでぐるぐる巻きにする。

「とーま、芋虫みたいかも」

確かに肩から足の先までぐるぐる巻きだ。

「これぐらいしとかないとダメなんです。…さてと」


168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 09:45:47.91 ID:CcD4bKN/Q
上条は部屋を見渡す。
部屋の鍵は倒したテロリストが持っていた。
そんなに広くない部屋の壁に、
たくさんのパネルが並んでいる。
上条はそれを片っ端からこじ開けて行く。
中にはレバーがたくさん配置されている。
主電源以外にも、細かく電気の流れが
制御されているようだった。

「くそ、どれだ?」

上条は最後のパネルをこじ開ける。

「!!」

そこには今までとは違う、
大きいレバーがあった。
レバーはプラスチックの様なもので覆われている。
おそらく安全の為だろう。
上条は工具箱から金槌を取り出す。

「…やるしかねー!」


170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 09:48:46.46 ID:CcD4bKN/Q
美琴はいったん土産物屋に身を隠すと、
商品の陳列棚を勢い良く蹴り倒す。
静かなデッキに、
ガシャンと音が響き渡る。
次いで足音。徐々にこちらに近付いてくる。
美琴は別の棚に素早く身を隠す。

「誰かいるのか!?」

足音の主が声を出す。

(この声!?)

美琴には聞き覚えがあった。
夕食の時、トイレで聞いたあの声。

(テロリストの中に女がいたなんてね)

足音が土産物屋の店内に入ってくる。

「おりゃぁぁ!」

美琴は棚の陰から飛び出すと、
女の顔に蹴りを叩き込む。
いつもは自販機相手だが、
今は緊急事態なので仕方がない。

173 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 10:16:55.80 ID:CcD4bKN/Q
末尾Qはアイビスで書いてるからだと思います
携帯しかないのですが、
規制されて書けないので

174 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 10:18:28.82 ID:CcD4bKN/Q
「ぐっ!」

女は突然蹴られた勢いで、
思わずライフルを床に落とす。
美琴は落ちたライフルを、
縛られた両手で器用に持ち上げると、
女が体勢を立て直す前に、
素早く走り出す。

「くっ、待て!貴様!」

AIMジャマーの側まで走ると、
美琴は一番近い窓目掛けて体を捻る。

「強化ガラスじゃありませんよう……にっ!!」

そのまま体を半回転させ、
ライフルを勢い良く窓に投げる。
ライフルは窓ガラスを突き破り、
夜の闇に消えた。

「き、きさまぁ!」

美琴が振り返ると、
ナイフを構えた女が肩で息をしている。
疲れたからではない、
怒り狂っているからだ。

175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 10:20:50.85 ID:CcD4bKN/Q
「大事なものだった?ごめんね」

軽口を叩きながらも、美琴の視線は
女の一挙手一投足を見逃さない。
これは知識ではない。美琴が
色々な戦闘から得た経験だった。
女の視線、指先の動き、足にかける重心。
あらゆる情報から、女の次の行動を推測していく。

「あんた達…スキルアウトね」

美琴は確信している。
学園都市の船が狙われ、
学園都市の学生が人質。
そして目の前のAIMジャマー。
偶然がここまで重なると、
それは必然だ。

「だったら…なんだ?」

女は美琴との間合いをゆっくり詰める。

176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 10:24:03.83 ID:CcD4bKN/Q
「別に…聞いただけよ」

美琴は軽口を重ねる。
女が苛立っていくのが分かる。

「私は…あんた達みたいなのが大嫌いなだけ」

また軽口。

「きさまぁぁぁぁ!!!」

女が怒りにまかせてナイフを
突き出す。

(かかった!)

美琴はその直線的な攻撃を、
最小限の動きでかわす。
女の腕を右足で蹴り上げる。
ナイフが宙を舞う。

177 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 10:25:40.06 ID:CcD4bKN/Q
「っっ!」

そのまま今度は左足でがら空きの
脇腹へ蹴りを突き刺す。

「ぐっ!」

前に重心を掛けていた女は、
横からの衝撃にバランスを崩し、
吹っ飛ぶ。美琴は素早くナイフを拾うと、
ライフルと同じように窓から投げ捨てる。
しかしそこに一瞬隙が出来てしまった。

「うぁぁぁぁぁ!!」

女が立ち上がり、美琴に掴みかかる。

「うっ!」

そのままAIMジャマーに叩きつけけられる。

「殺す!殺す!殺す!」

AIMジャマーに押し付けながら、
女は美琴の首を絞める。

178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 10:27:40.87 ID:CcD4bKN/Q
(ま…ずい)

美琴は後ろ手に縛られているので、
女の手を振り解く事が出来ない。
足を使って突き放そうにも、
体が密着しているせいで上手くいかない。

「殺す!殺す!殺す!殺す!」

「うっ…うぐ…」

女の手に更に力が入る。

「お前ら能力者なんか!皆殺してやる!」

(やば…意識が…)

その時だった。突然船内の灯りが消えた。

「な!?」

女がうろたえているのが分かる。
一瞬首を絞める手が緩んだ。

(あの馬鹿…遅いのよ!)

美琴の顔に笑みが浮かぶ。


179 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 10:30:18.83 ID:CcD4bKN/Q
「ぶっ壊れなさいよ!」

AIMジャマーに押し付けられている美琴の掌は、
ぴったり装置に触れている。
そこから一気に電流を流す。
暗い船内に青白い光が走る。
大量の電流を流された装置は、
負荷に耐えられず煙をあげる。

「あんたは…これで勘弁してあげるっ!」

電流を使い、素早く拘束具を焼き切ると、
女の両手を掴んで電流を流す。
最低限、気絶させるだけの電流を。

「!!」

女は言葉を発する事なく崩れ落ちる。


180 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 10:31:20.33 ID:CcD4bKN/Q
「はぁ、はぁ、はぁ」

美琴が一息入れていると、
船内の灯りが戻る。
予備電源に切り替わったのだ。
「ギリギリ…間に合った」

美琴は装置のコードを何本か焼き切り、
女を拘束する。

「黒子!」

美琴は走る。大切な後輩のもとへ。

183 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 11:01:17.73 ID:CcD4bKN/Q
(……私は…気絶していたようですわね)

真っ暗だった黒子の意識に、
少しずつ光が戻ってくる。

(あ…ぐ…)

うっすら目を開けようとするだけで、
後頭部に激痛が走る。
それでも状況を確認しなければ。
痛みに耐えながら、黒子は少しずつ目を開く。

(な…なんですの…これは)

黒子は乗客達から少し離れた床に、
そのまま転がされていた。
一撃で気絶した事が幸いしたのか、
後頭部以外に痛みもない。
しかし黒子はもっと別の事に気を取られていた。

184 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 11:03:03.17 ID:CcD4bKN/Q
(一体…何が)

乗客達は皆目隠しをされていた。
黒子が気絶する前は、
そんなものは間違いなくしていなかった。
更にもう一つ。テロリストが二人しかいない。
よく観察すると、人質だった乗組員、
つまり学生以外の人質もいなくなっている。

(何をしようとしているのか…
直接聞くしかありませんわね)

黒子は体の違和感が消えている事に気付く。
おそらく美琴達がAIMジャマーを止めたのだろう。
それだけで黒子の体に力が戻ってくる。

(お姉さま…やっぱり大好きですの)


185 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 11:04:32.97 ID:CcD4bKN/Q
黒子は拘束具に指を触れる。
黒子の手首から拘束具が消え、
床に落ちる。
テロリストは二人並んで何かを話している。
黒子はその真ん中に割って入る形で
テレポートをする。

「な!?」

「っ!?」

突然現れた黒子に、テロリスト達は驚く。
何かさせる暇も与えず、
黒子はテロリスト達を掴むと
頭上へテレポートさせる。
4メートル程の高さから、
床に叩きつけられたテロリストは、
その衝撃で身悶える。
黒子は素早く近くの椅子を手に取ると、
テロリスト達を拘束するよう、
床に埋まる形でテレポートさせる。

186 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 11:05:23.38 ID:CcD4bKN/Q
テレポートさせた物体は、
そこにある物体を押しのけて現れる。
それを利用すれば、
紙でダイヤモンドを切断する事も可能だ。
黒子はそれを応用して、
椅子の脚を床に埋める形で
テレポートさせていた。

「さぁ、色々と聞かせてもらいますの」

テロリストを拘束している椅子に座り、
黒子が冷たく微笑んだ。

187 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 11:18:52.53 ID:CcD4bKN/Q
「黒子っ!」

美琴がロビーに飛び込むと、
見慣れた背中が見えた。
小さくて細い、そして美琴の
大切な背中。

「お姉さま?」

黒子がゆっくり振り返る。

「お姉さま…」

黒子の顔が緩んでいく。

「お姉さまぁぁぁぁ!!」

黒子は泣きながら美琴に飛びつく。
普段なら暑苦しいが、
美琴は黒子の体温が嬉しかった。

188 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 11:20:21.58 ID:CcD4bKN/Q
「黒子…良かった…ほんとに…良かった」

美琴も黒子を強く抱き締めてやる。

「怪我は?」

「大丈夫ですの。お姉さまは?」

「私は丈夫がとりえだからね」

二人はそれからしばらく再開の喜びを分かち合った。
上条達が戻って来たのは、
そのすぐ後だった。

「白井!良かった!無事で良かった!」

大袈裟に喜ぶ上条に、
黒子は少しだけくすぐったい様な
気持ちになる。
きっと上条は、他人を心から思いやれる人
なのだろうと黒子は思う。
美琴が上条にちょっかいを出す理由が、
少しだけ分かった様な気がする。

189 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 11:21:56.33 ID:CcD4bKN/Q
すいません
少し出掛けますね


198 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 14:07:59.85 ID:CcD4bKN/Q
「スキルアウト…でしたか」

四人はロビーを出て甲板にいた。
お互いに今までの状況を伝え合う。
乗客を解放したいのだが、
今解放すれば必ずパニックになる。
黒子はそう判断し、現状を維持する事にしたのだ。

「ところで黒子。何でテロリストが減ってんのよ」

美琴は最大の疑問をぶつけてみる。
それは上条も気になっていた事だ。
最低限の場所に、最低限のテロリストしかいない。

「その事なんですが…
どうやら船を降りたようですの」

「へ?船を降りた?」

美琴には訳が分からない。
あんな大事を起こして、
あっさり船を降りるなんて
不自然にも程がある。

「乗組員も避難用のイカダで
海に降ろしたみたいですわね」

拘束したテロリストを締め上げて、
この二つの情報は聞き出せた。
しかし目的だけは吐かなかった。

199 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 14:09:57.00 ID:CcD4bKN/Q
「せめて…外部と連絡が取れれば」

黒子は頭を抱え込む。
ロビーなどを探したが、
没収された携帯は見つからなかった。
海に投げ捨てられた可能性も高い。

「くそ…携帯さえあれば!…ん?」

上条は何かとてつもない見落としに気付く。

「とーま、私を見つめても困るかも。
私はけーたいじゃないんだよ?」

それには答えず、上条はインデックスに手を伸ばす。

「とーま?」

上条は勢い良くインデックスの
フードを脱がせる。

「ひゃっ!」

インデックスの頭の上に、
ちょこんと携帯が乗っていた。

200 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 14:11:55.56 ID:CcD4bKN/Q
「………」

「………」

「………」

「えぇぇぇぇ!?」

「な、何よそれ!」

美琴と黒子はまるで初めて
携帯を見たかの様に驚く。

「なんてこった。ずっと近くにあったんじゃねーか」

携帯を渡した時、
インデックスはフードの中に入れていたのだ。
すっかり忘れていた。
多分当の本人も。

「ふ、ふふーん。こんな事もあろうかと、
ここに隠してたんだよ!えらい?」
インデックスはわざとらしく胸を張る。

「調子に乗るんじゃありませんわよ、おチビさん」

「あいたっ」

黒子がインデックスにデコピンする。


201 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 14:13:07.41 ID:CcD4bKN/Q
「とにかく…これをお借りしますの」

そう言うと黒子は、
頭の中の電話帳から番号を一つ取り出す。

「さて…出てくれなければ許しませんの」

時刻は午前1時を過ぎた頃だった。

202 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 14:14:44.94 ID:CcD4bKN/Q
(早く…早く…)

たった数秒待っているだけなのに、
永遠のように感じる。

(早く…早く…)

黒子の耳に当てた携帯から、
プツッと電話が繋がる音がする。

『ふぁい……もし…もし』

明らかに寝起きの声だ。
だが出てくれただけでも感謝しなければ。

「もしもし、初春。緊急事態ですの」
初春飾利。ジャッジメント第177支部に所属する、
黒子の後輩。
能力はレベル1だが、
オペレーターとしての能力はずば抜けている。

203 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 14:16:08.43 ID:CcD4bKN/Q
『あれ…白井さん今船で優雅に
過ごしてるはずですよね…』

「その船が緊急事態ですの。
テロリストに襲われたんですの」

『そーなんですかー。あははは…』

「………」

『えぇぇぇぇ!!大変じゃないですか!!』

やっと目が覚めたか。
黒子は今までの経緯を手短に
説明する。

「初春、そちらではこの船の事、
何か情報あります?」

『ち、ちょっと待ってください!』

電話の向こうから、バタバタと慌てる音がする。
次に聞こえてくるのはキーボードを叩く音。
この時刻なら、初春は自宅の
パソコンを使っているのだろう。

204 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 14:17:19.80 ID:CcD4bKN/Q
『な、何も情報ありません!ニュースやネットだけじゃなくて、
アンチスキルやジャッジメントにも
情報は来ていません!』

(アンチスキルにも?おかしいですわね)

本来こうした事件の目的は、
人質を使った交渉だ。
テロリストが何かしらの要求を出せば、
必ずアンチスキルやジャッジメントに
情報が回ってくるはずなのだ。
黒子は高速で頭を回転させる。

(交渉が目的でないのなら…
人質自体が目的?
じゃあなぜ乗組員だけ降ろしたのでしょう…)

『白井さん…大変です…』

初春の声が、一段と真剣味を増す。

「初春?どうかしましたの?」

『船の進路…予定とは違います!』

206 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 14:40:24.77 ID:CcD4bKN/Q
携帯は上条が持っていたので
充電済み
と脳内補完してくれたらOKです

207 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 14:41:48.95 ID:CcD4bKN/Q
「進路が変わってる!?」

黒子の声に、三人も顔を見合わせる。

『調べてみたんですけど、
船は港に向かってます』

「港に?帰港予定は明日の夜ですわよ」

『んー…でも衛星からの情報では
港に向かってます』

黒子の背中を嫌な感覚が通り抜ける。

「分かりました…取り敢えず初春は関係各所に連絡。
海上では乗組員が救助を待っているはずですの。
急いでください」

それだけ伝えて電話を切る。
何かがおかしい。その何かが分からない。
ただあと一つ、あと一つピースがあれば、
何か分かるような気がする。
黒子はそう思っていた。

208 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 14:43:18.60 ID:CcD4bKN/Q
「港に向かってる?」

黒子から説明を受けた上条は、
何故こんな事になっているのか分からなかった。

「帰るの?」

インデックスも不思議そうな顔をしている。

「もう!一体何なのよ!」

「落ち着け御坂」

ある程度先が予想出来ないと、
人間というのは焦りや不安
といった感情が出て来る。
四人はまさにその状態だった。

211 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 16:05:10.40 ID:CcD4bKN/Q
「でもこのおっきい船、港に入れないかも」

インデックスの言葉の意図が掴めず、
上条は首を傾げる。

「き、急に何を言い出すんだ、インデックス?」

インデックスは場違いな笑顔で答える。

「だって、この船がしゅっぱつする時、
同じくらいおっきい船いたもん」

上条の頭にその時の映像が浮かぶ。

「確か……貨物船!」

入れ違いに港に入ったのを覚えている。

「貨物船…貨物船…」

黒子の頭の中に何かが引っ掛かる。

「上条さん。その貨物船、
何を運んでいたか分かります?」

「さすがに分かんねー。
ただ船体には第16薬学研究所って
書いてあったぞ」


212 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 16:08:30.63 ID:CcD4bKN/Q
「薬学研究所…まさか!」

黒子はすぐに携帯をかけ直す。
先程よりはしっかりとした声で、
初春が出た。

『あ、白井さん!アンチスキル、ジャッジメント他
関係各所に連絡しました!
私も今詰め所に向かってます!』

「乗組員の救助、逃走したテロリストの確保は?」

『そちらは海上保安庁が受け持ちます。
今回は学園都市の船での事件、
人質は学園都市の生徒、
犯人はスキルアウトなので、
例外的にアンチスキルが指揮をとるみたいです』

本来学園都市外の事件に、
アンチスキルが出動する事は滅多にない。
今回は学園都市外部といっても、
状況が状況なのだ。


213 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 16:09:49.50 ID:CcD4bKN/Q
「それから初春。今港に停泊している貨物船の積み荷を、
大至急調べて欲しいんですの」

『積み荷…ですか?』

何故そんなものを、といった調子で
初春は聞き返す。

「えぇ、積み荷ですの。
どんな手段を使っても構いません。
必ず調べて連絡を」

『は、はいっ!』

黒子はパタンと携帯を閉じる。
最悪のシナリオが頭に浮かぶ。

「今は…待つしかありませんわね」

215 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 16:11:25.78 ID:CcD4bKN/Q
それから30分余りが過ぎた。
黒子の鬼気迫る雰囲気に、
誰一人声を出せないでいた。
その沈黙を破るように、
携帯の呼び出し音が鳴り響く。

『し…白井さん』

「初春!積み荷は何ですの!?」

『表向きは新薬開発の為の
薬品という事になってます』

「"表向き"?」

初春の言い方に黒子は引っ掛かる。

『そ、それが…貨物船の警備体制があまりに厳重なので、
変だと思って研究所に
ハッキングかけてみたんです…』
黒子は自分の鼓動が早くなっていくのに気付く。


216 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 16:13:40.10 ID:CcD4bKN/Q
「で、中身は?」

『炭疽菌です…それも…
エアロゾル化された炭疽菌です』

「!!」

黒子の背筋に冷たいものが走る。

「エアロゾル化された…炭疽菌!?」

『はい…あともう一つ。
ニトロナフタレンが大量に…』

ニトロナフタレンとは、
ニトログリセリンの化合物で、
医薬品などにも使われる。
しかし取り扱いは極めて難しく、
強熱を加えれば爆発する。

『白井さん、あと20分程で、
アンチスキルの高速艇が到着します!
人質の皆さんを甲板に集めといてください!』

初春の言葉は、既に黒子の耳には
届いていなかった。

217 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 16:15:07.64 ID:CcD4bKN/Q
「エアロゾル化された炭疽菌?」

上条は説明を受けてもイマイチピンとこない。
上条の為に、黒子は簡単に説明してやる。

「炭疽菌はご存知ですわね?
生物兵器などに使われる、
致死率の高いウィルスですの。
しかしこの炭疽菌の主な感染ルートは、
炭疽菌に汚染された土壌への接触ですの。
この場合、感染拡大などさして脅威ではありませんわね。
しかし炭疽菌が肺に定着した場合、致死率は約90パーセントです。
肺に定着させる為には、
空気中を漂う状態にしなければなりませんの。
その漂う状態をエアロゾル状態と言います。
この場合、炭疽菌が気流に乗れば、
感染は爆発的に広がりますわね」

219 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 16:16:37.77 ID:CcD4bKN/Q
美琴の背筋を、嫌な汗が伝う。

「じゃああいつらの目的は最初から…」

「この船を貨物船にぶつけ、
ニトロナフタレンを爆発。
コンテナが破壊され、
炭疽菌が飛散…て事か!くそ!」

上条は苦虫を噛み潰した様な顔をしている。

「爆発の熱でウィルスの何割かが死滅したとしても…
被害は最悪ね…」


220 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 16:18:40.48 ID:CcD4bKN/Q
「でもまだ気になる事がある」

上条は自分の頭を整理しながら、
言葉にしていく。

「どうして船には学生だけ残したのか。
テロリストの大半は船から降りたのに、
なぜ何人かは残ったのか」

「そうですわね…ですがまずは人質を」

黒子は人質に事態を説明し、
出来るだけ焦らないように甲板に集めていく。
拘束したテロリストも、
テレポートで甲板へ連れてくる。
10分程すると、船の進行方向から
高速艇の灯りが見えた。
数は20隻程だろうか。

その内の一隻が
客船の真横につける。
残りは船から一定の距離で航行していた。
高速艇は30人程収容出来る大きさだったが、
客船の横に並ぶと、とてもじゃないが
飛び移れる高さではなかった。

221 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 16:19:48.72 ID:CcD4bKN/Q
「えー、あー、あー」

高速艇の先端に人影が現れ、
拡声器のテストを始める。

「いいかー!今から順番に海に飛び込め!
必ず助けてやるじゃん!
ただし、指示に従ってゆっくりとじゃんよ!」

それだけ言うと、人影は誰かに拡声器を渡し、
上条達のいる甲板にフックを撃ち込む。
フックは柵に引っ掛かり、
それを使って人影が船の側面を登ろとしていた。

「こ、この高さを登る気!?」

美琴が柵から身を乗り出す。
どう考えても高すぎる。

「うぉぉぉ!!」

美琴の心配をよそに、
人影はぐんぐん登ってくる。
ついには柵を乗り越え、
甲板に降り立った。


223 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 16:24:10.91 ID:CcD4bKN/Q
「さ、さすがにキツいじゃんよ」

長い黒髪を後ろで束ね、
アンチスキルの制服に身を包んでいる。

「よ、黄泉川先生!?」

上条はその見知った顔に驚く。

「おー、お前は小萌んとこの」

黄泉川愛穂。
上条の高校の体育教師で、
アンチスキルのメンバー。
バカな生徒ほど愛着の湧く、
根は熱い人物だ。

「まぁ世間話はあとじゃん。
ジャッジメントから連絡はもらってる。
なんとか船を止めるじゃんよ」

「新しい情報はありませんの?」

黒子が一歩前に出る。
その間にも、アンチスキルの指示の元、
乗客達は海に飛び込んでは、
引き上げられていく。


227 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 17:12:09.66 ID:CcD4bKN/Q
「まぁ…あんまり良い情報はないじゃん。
あと50分程で衝突じゃんよ」

「ご、50分!?」

美琴は残り時間の短さに、
驚愕する。

「そ、だから急いで船を止めるじゃんよ。
白井は私と来い」

黄泉川はそう言って、黒子と船内へ向かおうとする。
そんな二人に上条が声を掛ける。
「俺も…俺も行く!」

上条の申し出を、黒子は一蹴する。

「ダメですの。ここから先は、
私達の仕事ですわよ」

しかし上条は食い下がる。
どうしても行かなければいけない
"ある用事"があった。

「頼む!邪魔はしねー!
どうしても確かめたい事があるんだ!」

228 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 17:13:24.56 ID:CcD4bKN/Q
黄泉川はしばらく考え、
黒子の予想していない答えを出す。

「…分かったじゃんよ」

「よ、黄泉川先生!ありが…」

黄泉川は上条の言葉を遮る。

「ただし!身の危険を感じたら
すぐに逃げる。これが条件じゃん」

「はい!」

「行くぞ!」

黄泉川と黒子は船内に入って行く。
上条も後に続こうとして、
足を止めた。

229 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 17:14:23.22 ID:CcD4bKN/Q
「美琴…」

急に下の名前で呼ばれ、
美琴の体が強張る。

「な、なによ?」

「インデックスを頼む。
お前にしか頼めねー」

上条は何か覚悟を決めたような、
見ているだけで胸が苦しくなるような顔をしている。

(そんな顔されて…
断れる訳ないじゃない)

美琴はただ頷くしか出来なかった。
インデックスも何かを感じたのか、
ついて行くとは言わなかった。

「必ず帰ってくるから!」

先程とは違う、優しい笑顔でそう告げると、
上条は船内へ消えてしまった。

231 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 17:41:17.78 ID:CcD4bKN/Q
黄泉川と黒子は第7デッキの操舵室にいた。
この真正面に港があるはずだ。
闇の向こうに、微かに灯りが見える。

「ま、予想通りじゃん」

黄泉川は船の制御システムを見下ろして
呟いた。
船は自動操舵に切り替えられている。
自動操舵とは、船に取り付けられた
ジャイロコンパスや、航法支援装置からの情報により、
設定した方位から針路がずれると
自動的に舵を操作するシステムだ。

232 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 17:42:39.76 ID:CcD4bKN/Q
「ですが…自動操舵はあくまで
補助のはずではありませんの?」

黒子の質問に、黄泉川が答える。

「そこが学園都市最新型と言われる所以じゃん。
この自動操舵装置は、他にも衛星から
海流や風速なんかの様々な情報を
リアルタイムでもらってる。
そこにバランサーなんかも加わって、
着岸以外はほぼ無人でオッケーじゃんよ」

「厄介…ですわね」


236 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 18:34:24.64 ID:CcD4bKN/Q
「しかも…」

黄泉川は続ける。

「計器類はめちゃめちゃに破壊されてるじゃん。
中のシステムだけ傷付けないように。
こりゃぁ、直すだけで三日は必要じゃんよ」

「間に合いませんわね」

「アンカーを下ろそうかと思ったけど…
それもご丁寧に切り離されてるじゃん」

飄々とした黄泉川の顔に、
僅かな焦りの色が見える。

237 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 18:35:08.02 ID:CcD4bKN/Q
黒子は小さな希望を持って、
初春に連絡を入れてみる。

「初春、船のシステムに介入出来ませんの?」

しかし返って来たのは
小さな希望を打ち砕く答え。

『実は私もやってみようと思ったんです。だけど…
船の操舵システムは、独立したサーバーで
管理されていて、手が出せません』

黒子は静かに携帯を閉じる。
黄泉川は破壊された計器類を見て呟いた。

「新し過ぎるってのも…
考えものじゃんよ」

238 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 18:37:28.23 ID:CcD4bKN/Q
上条は船内をひたすら走る。
確かに見た。乗客達が次々海へ飛び込む中、
その輪から外れて船内へ消えた男の姿を。
上条は船内を片っ端から捜していく。
第10デッキ、船の隅に備え付けられた、
小さなバーの扉を開く。

「お前…」

バーのカウンターにナイフを突き立て、
グラスを傾けている背中が見えた。
それはあの時見た背中。

「邪魔してんのはてめぇらか」

男はグラスを持ったまま振り返る。
年は上条より年上に見える。
二十代だろうか。
茶色く肩まである髪は無造作にハネており、
肌は浅黒い。目には何か深い悲しみ
を湛えた威圧感がある。


239 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 18:39:14.28 ID:CcD4bKN/Q
「お前…あいつらの仲間か!?」

上条はナイフを横目で捉えながら問いかける。

「仲間?本当の仲間は最後まで船に残ってた奴だけだ。
あとは金で集めたクズだよ」

上条の中で少しずつピースが
揃っていく。

「クズ?」

「そうだ。死ぬ覚悟もねぇクズだよ。
ま、あいつらはもともと頭数には入れてねぇけどな」

たいして面白くもなさそうに、
男はグラスを傾ける。


240 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 18:40:20.76 ID:CcD4bKN/Q
「お前ら…何が目的だ!?」

上条の問いかけに、男の顔に強い
怒りが現れる。

「目的?」

男の目が鋭くなる。

「お前ら能力者の皆殺しだよっ!!」

男はカウンターにグラスを叩きつける。
グラスは粉々に砕け散り、
アルコールの匂いが上条の鼻をかすめた。

243 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 18:55:57.82 ID:CcD4bKN/Q
インデックスと美琴は高速艇にいた。
上条の言うとおり、二人は待つ事にした。

海に飛び込んでびしょ濡れの二人に、
アンチスキルの隊員が、肩から毛布を掛けてくれる。
他の隊員もせわしなく動いている。
満員になった高速艇は、
次から次へと帰港していく。
二人は無理を言って、
指揮官用の高速艇に乗せてもらっていた。
この高速艇は、黄泉川達が戻るまで、
ここから離れないと聞いたからだ。

244 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 18:56:48.86 ID:CcD4bKN/Q

「とーま…」

インデックスは不安そうに船を見上げる。

「黒子もいるし大丈夫よ」

そう励ます美琴の手も、微かに震えている。
体が濡れた寒さからだろうか。
それとも不安からくるものだろうか。

二人はただ、ただ待つ事しか出来なかった。

245 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 18:59:44.13 ID:CcD4bKN/Q
「皆…殺し?」

「そうだよ!皆殺しだ!!」

男は気分が高揚したのか、
饒舌になっていく。

「てめぇらを皆殺しにする為だよ!
この船はもう止められねぇ!
炭疽菌は風に乗って学園都市を覆い尽くす!
俺はこの命と共に、てめぇらに復讐してやんだよ!!」

「じゃあ船に残ったあいつらも…」

「あいつらも俺と同じだ!
自分の命と引き換えに復讐を選んだんだよ!」



246 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 19:01:10.88 ID:CcD4bKN/Q
上条の中で少しずつピースが組み合わさっていく。
ロビーにいた二人、美琴が倒した女、
上条が倒した男。
そして目の前の男。
この五人が本当のテロリスト。
他は途中で船から降りる事になっていた、
金で雇ったテロリスト。

目隠ししたのは、人数が減った事を悟られない為。
いくら拘束されているとはいえ、
少人数で200人近い人間を
制御するのは難しいはずだ。
そしてこの男が後から
乗客の中に紛れ込む為でもあった。
男は乗客に混じり、結末を見届けるつもりだったのだ。

「乗組員だけ降ろしたのはなんでだよ?」

上条は男から、ナイフから視線を離さない。

「邪魔だっただけだ。
それにさっきも言っただろーが。
俺達の目的はお前ら
"学園都市の能力者"だってなぁ!」

248 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 19:10:14.45 ID:CcD4bKN/Q
「はぁ!?
こっちは子供達の命がかかってんじゃんよ!」

黄泉川は携帯を乱暴に閉じる。

「くそ!!ふざけんな!!」

「どうなされたんですの?」

苛立つ黄泉川に声を掛けるのは気が引けるが、
情報は共有しなければ。
黒子は尋ねてみる。

「こいつがダメなら、貨物船を動かそうと思ったけど…
薬学研究所の責任者が首を縦に振らないじゃんよ!」

「問題は積み荷の扱い…ですわね」


249 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 19:14:36.39 ID:CcD4bKN/Q
もし船を動かせば、
わざわざ偽装した積み荷が、
炭疽菌だと認めるようなものだ。
そう簡単に動かすとは思えない。
それに…
黒子は船内の時計を確認する。

(あと30分程…どのみち動かしても間に合うかどうか)

「諦めてたまるか…じゃんよ」


250 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 19:18:59.70 ID:CcD4bKN/Q
「復讐?何だよそれ」

上条は男がなぜここまで能力者を
恨むのか分からなかった。
上条の知るスキルアウトは、
せいぜいギャングの集まりみたいなものだけだった。
男が口を開く。

「"無能力者"狩りを知ってるか?」

251 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 19:20:29.63 ID:CcD4bKN/Q
男はチャイルドエラーだった。
学園都市に置き去りにされた子供。
彼は中学に上がるまで、施設で育った。
そんな彼には親友と呼べる少年がいた。
同い年で気が合い、何をするにも一緒だった。
そして何よりも二人の絆を深めたのは、
互いに"レベル0"という事だった。
男も少年もそれを恥ずかしいと思った事はなかった。
同じ中学に入り、同じ寮に住む。
少年は家族と言ってもいい存在だった。
男と少年は一生懸命勉強した。
いつかレベル5になり、
たくさんの奨学金をもらう。
そのお金で育ててくれた施設に
恩返しをしたい。
それが二人の"夢"だった。
その夢が壊されたのは、
二人が高校二年生になった頃だった。

252 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 19:21:21.85 ID:CcD4bKN/Q
当時からスキルアウトによる"能力者狩り"が行われていた。
そして逆に、能力者による
"無能力者狩り"も行われていたのだ。
少年はその日、図書館で夜遅くまで勉強していた。
その帰り道、能力者による暴力を受けたのだ。
相手の能力は"肉体強化"のレベル1。
だが防ぐ力を持たなかった少年は、
折れた肋骨が肺に刺さり、
呼吸困難で死んでしまった。
駆けつけた男が見たのは、
原型を留めない程腫れ上がった顔の少年だった。
病院には担任の教師もいた。
その担任が小さく呟いた言葉が、
男の何かを粉々に打ち砕いた。

「こいつで良かった…」



255 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 19:23:12.93 ID:CcD4bKN/Q
男は上条を睨んで吐き出し続ける。

「"こいつで良かった"!この意味分かるか!?
所詮レベル0はこの程度の扱いなんだよ!
学園都市は格差社会の縮図なんだ!
レベルが高ぇ奴が優遇されて、
レベルが低い奴はゴミみたいに扱われる!
あんな街は滅びた方がいいんだよ!!」

「言いたい事はそれだけか?」

上条は静かに、冷たく呟く。

「あ??」

「言いたい事はそれだけかって言ったんだよ」

「てめぇ、なにいっ…」

男が何か言いかけるよりも早く、
上条は一気に間合いを詰める。
力一杯握った右手が、
男の顔面を打ち抜く。

「がはっ!!」

男はカウンターの椅子から吹っ飛ぶ。



256 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 19:24:31.06 ID:CcD4bKN/Q
「てめぇの気持ちも理解出来なくはねーよ。
けどな、だからってそれが
関係ねぇ人達を巻き込んでいい
理由にはならねぇ!」

「ぐっ…能力者がほざいてんじゃねぇぞ…
てめぇもそうやって無能力者を見下してんだろーが」

男は切れた唇を拭いながら立ち上がる。

「一番見下してんのはお前自身じゃねーのか?」

「な…に?」

「レベルに拘って…居場所失って…
自分見失ってんのはお前だって言ってんだ!」

上条は男に一歩ずつ近付く。

「確かに能力者がお前の友達にした事は
許されていいもんじゃねぇ。
けどな、お前がやってる事も、
そいつら能力者と同じじゃねーのか!
復讐で友達が喜ぶとでも思ってんなら…」

上条は右手を男に突きつける。

「その幻想をぶち殺す!」

258 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 19:40:13.69 ID:CcD4bKN/Q
「こうなったら、強硬手段じゃんよ」

黄泉川と黒子は機関室に来ていた。
船を止めるには、もうエンジン
を止めてしまうしかなかった。
機関室は薄暗く、機械の油の匂いが充満していた。
エンジンの唸る低い音だけが響いている。

「爆発…しませんわよね」

エンジンを破壊して、
万が一爆発でもしたら洒落にならない。

「まぁ、街を守って死ぬのも悪くないじゃんよ」

「や、やめてくださいまし、不吉な」

黒子は自分の何倍もあるエンジンの前に膝をつく。
床は鉄板を規則正しく並べて出来ている。



259 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 19:41:49.90 ID:CcD4bKN/Q
「一か八か…行きますの!」

黒子は床の鉄板に次々触れて行く。
触れた先から鉄板は消え、
エンジンの中から金属の
ぶつかるような音がする。

「止まれ!止まれ!」

黒子は横に移動しながら、
鉄板をエンジンの中にテレポートさせていく。

「くっ、ダメですの!?」

黒子がもう一枚と、鉄板に手を伸ばした時だった。

エンジンから不規則な音がして、
金属の繋ぎ目から黒煙があがる。
そのままエンジンは沈黙してしまう。

「や、やった!?」



263 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 20:14:16.42 ID:CcD4bKN/Q
黒子はすぐに初春に確認を入れる。

「エンジンは止まりましたの!」

『だめです白井さん!
GPSで確認したんですけど、船は止まってません!』

「ど、どうしてですの!?」

珍しく黒子が焦る。

『海流です…水の流れに船が乗ってるんです!』

「衝突までの残り時間は!?」

黒子は携帯に向かい叫ぶ。

『…残り10分です』

264 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 20:16:55.87 ID:CcD4bKN/Q
「あァ!?だから分かったッて言ってンだろォが!!」

彼は電話に向かって叫ぶ。

彼は港の脇にある砂浜に来ると、
首に捲かれたチョーカーに触れる。
膝をつき両手を肘まで海に突っ込む。

「クソ冷ェ…」

彼の視線の先に、船の灯りが見える。
距離はどれくらいだろうか。
そんなに離れていないように見える。

「やりャァいィンだろ、やりャァ…」



265 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 20:17:41.38 ID:CcD4bKN/Q
彼の頭を介した巨大なネットワークが、
水温、気温、海流、風速、地形など
ありとあらゆるものを数字に変え、
高速で演算していく。

「くッ…」

目まぐるしく変わる数字を、予測も入れつつ
次々処理していく。

そして変化が訪れる。
水につけた彼の両手の周囲が、
ざわざわと波打ち始める。

「クソがァァァァァァ!!」

小さな波がやがて巨大な波になり、
自然の法則をねじ曲げ、
船に向かって突き進む。

「なんとかしてみやがれ…
ヒーロー共がァァァ!」


268 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 20:21:57.21 ID:CcD4bKN/Q
ちょっと休憩頂きます!

276 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 21:55:27.14 ID:CcD4bKN/Q
「きゃっ!」

美琴は突然の波に、
高速艇から振り落とされそうになる。

「な、何よこれ!?」

先程まで穏やかだった波が、
正面から船を揺らす。
まるで山を越えるように、
高速艇は船首を上げたり下げたりしている。

「た、短髪!」

力のないインデックスは、
船が波を乗り越える度に跳ねている。
美琴はインデックスを抱き締める。

「あのバカにあんたを頼まれてんの!
しっかり捕まってなさいよ!」


278 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 21:58:36.35 ID:CcD4bKN/Q
「初春!この揺れは何ですの!?」

黒子は携帯に向かって叫ぶ。
片手は近くの手すりを握っている。
こうしておかなければ、
船の中をピンボールの様に
転げ回ってしまいそうだった。

『わ、わわ分かりますんっ!』

「どっちですの!?落ち着きなさい初春!」

『す、すいません!分かりません!
急に流れが…そもそも有り得ないですよこれ!』

「その有り得ない事が今起きているんでしょう!
船はどうなってますの!?」

電話の向こうでキーボードを叩く音がする。

『止まってはいませんが…
スピードが落ちてますっ!』

「最後のチャンス…ですわね」


280 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 22:33:51.03 ID:CcD4bKN/Q
「はぁ、はぁ、はぁ」

上条は肩で息をする。
唇は切れ、右の瞼は腫れている。

「諦めろよ能力者」

男は上条の死角に回り込むように間合いを詰める。

(くそっ、右目側ばっか狙いやがって)

上条はステップでかわそうとするが、
距離を上手く計れない。

「がぁっ…!!」

男の左手が、上条の脇腹に突き刺さる。
呼吸が苦しくなり、
意識が持っていかれそうになる。

281 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 22:35:17.02 ID:CcD4bKN/Q
「おらぁぁ!」

男はさらに踏み込み、
上条に追い討ちをかける。

「っ!」

上条は踏みとどまるのを諦め、
流れに任せて倒れ込み、
男の追撃をかわす。
男の視線が上条からカウンターに流れ、
ナイフで止まる。

「もう終わりにしてやる」

男はカウンターからナイフを引き抜くと、
上条に切っ先を向けた。

「お前も俺もここで死ぬんだよ」

男が上条と距離を詰めようとした時、
船に大きな衝撃が走る。
船体が揺れ、酒のビンが次々床に落ちる。

「くっ!」

男の重心が一瞬崩れる。
その瞬間を逃さず、上条は一気に
距離を詰める。


282 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 22:37:08.89 ID:CcD4bKN/Q
「うぉぉぉぉ!!」

男も重心を崩したまま、
上条にナイフを突き立てようとする。
上条は咄嗟に左手でナイフを
防ぐ。
上条の腕に、熱く鋭い痛みが走った。

「ぐっ!!」

腕に沿って血が流れていくのを感じる。

「俺は死なねぇし…」

美琴やインデックスと約束した。
待っている人がいる。

「お前も死なせねぇ!!」

上条の右拳が、男の顎を正面から打ち抜く。

283 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 22:39:34.97 ID:CcD4bKN/Q
「が………は」

男の膝から力が抜け、
その場に崩れ落ちる。

「はぁ、はぁ…ぐっ」

上条は左腕に刺さったナイフを引き抜く。
その腕から血が滴り、
床に水たまりを作っていく。

「死なせねぇよ…」

上条は男の肩に手を掛けると、
待っている人達の元へ向かった。

284 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 22:43:23.97 ID:CcD4bKN/Q
「くッ…もォもたねェ」

彼の能力使用時間には限界がある。
もちろん力をセーブすれば長く、
力をセーブしなければ短く。
今の彼は後者だった。

波が次第に小さくなり、
元に戻っていく。

「ここらが潮時か…クソッ」

彼は傍らの杖を使い、
ヨロヨロと砂浜を後にする。
潮風が白い髪を撫でる。

「ちッ…残業代出ンだろォなァ」


286 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 22:44:58.43 ID:CcD4bKN/Q
「もう迷ってる暇ないじゃんよ」

黄泉川は黒子を連れて甲板に出る。
もう貨物船は視界に入っている。
船を押しとどめていた波も、
今は無い。

どう長くみても、あと5分で衝突しそうだった。

貨物船も港も、肉眼ではっきり確認出来てしまう。

「くそ!エンジンだけで済ませられる
はずだったじゃんよ」

エンジンの破壊と船の全壊。
その損害は桁外れだが、
黄泉川は上の判断を待たずに動く。



287 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 22:45:38.33 ID:CcD4bKN/Q
「ガキんちょ共を守れるなら…
私のクビくらい安いもんじゃんよ」

黄泉川は黒子に告げる。

「私の独断だ。この船を沈めるじゃん。
超電磁砲の力を借りたい。
白井、頼めるか?」

黒子はそれだけで理解する。

「お姉さまの力を借りるのは気が引けますが…
分かりましたの」

「私はあのバカを連れて戻るじゃんよ」

黄泉川はそう言って腕時計を見せる。

「間に合いそうに無かったら、
私らを待たずに沈めるじゃんよ。
あのバカは私がきっちり成仏させてやるじゃん」

「また不吉な事を…」


294 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 23:10:03.64 ID:CcD4bKN/Q
一方さんはあくまで暗躍という事で
好きなのでムリヤリ出しました
申し訳ない

295 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 23:11:06.57 ID:CcD4bKN/Q
(早く!早く早く早く!)

美琴は高速艇の上で祈る。
右手にはゲームセンターの
コインを握り締めている。
美琴に与えられた役割。
船体に電磁砲で穴を開け、
船を沈める。
しかし黄泉川と上条が戻って来ない。
もしかしたら船内で動けないのではないか。
どこかに閉じ込められたのではないか。
嫌な想像ばかりが頭を駆け巡る。

296 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 23:12:37.30 ID:CcD4bKN/Q
貨物船はもう目の前。
もし沈めて上条の脱出が間に合わなかったら…
美琴の手に汗が吹き出る。

(早く!早く!早く!早く!)

「お姉さま!もう限界です!
沈めて下さいませ!」

「ダメっ!まだあいつが…」

「このままじゃ衝突しますわよ!」
「あいつが…当麻が!」

「お姉さまっっ!!!」

美琴の目に涙が浮かぶ。
船を沈められる力はあっても、
たった一人助ける力はないのか。
美琴が自分の無力さに打ちのめされて
しまいそうな時だった。


297 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 23:13:58.99 ID:CcD4bKN/Q
「撃てぇぇ!!御坂ぁぁ!!」

両手に上条と見知らぬ男を抱えた黄泉川が、
甲板から叫ぶ。
二人とも意識が無いように見える。
黄泉川が、二人を抱えたまま
海へ飛び込む。

「お姉さまっっ!!!」

「はぁぁぁぁ!!」

美琴はコインを指に挟む。

電位差のある二本の伝導体製のレールに、
電流を通す伝導体を弾丸として挟む。
弾丸とレールの電流に発生する
磁場の相互作用により、加速して打ち出す。

【超電磁砲】

美琴の通り名にして、必殺技。

美琴は力の一滴まで右手に注ぎ込む。
コインは弾丸に、指はレールに変わる。

299 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 23:15:23.41 ID:CcD4bKN/Q
「っけぇぇぇぇ!!!」

美琴の打ち出したコインは、
青白い軌跡を描きながら、
船体に突き刺さる。
船体に3メートル以上の穴が開き、
そこから一気に水が流れ込む。

「沈んで!お願い!」

美琴の思いが通じたのか、
船は徐々に高さを失っていく。
しばらくすると、メキメキと
音を立てながら、真っ二つに折れ曲がっていく。
船の沈む衝撃で、波が荒れ狂い、
美琴達の乗った高速艇を激しく揺さぶる。

波が収まると、海面には船の残骸が静かに漂っていた。


300 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 23:20:50.49 ID:CcD4bKN/Q
「また…ここか」

上条が目を覚ますと、
いつもの病室にいた。

「目が覚めたかい?出血が多すぎてね、
ショックで気を失ってたよ」

カエル顔の医者が上条を覗き込む。

「それよりも君はよく来るね。
まるで帰巣本能みたいだ」

冗談とも本気ともとれない事を
医者は笑って話す。

「はは、やめてくださいよ。
俺には帰る家があるんです。
待ってるやつも…」

「待ってる人か。
本人は待ちきれないみたいだけどね」

それだけ言うと、医者は病室を出て行く。


301 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 23:22:15.96 ID:CcD4bKN/Q
入れ違いに小さなシスターが入ってくる。

「とーま!りんごー!」

「お、サンキューインデッ…」

「剥いてー!」

「……」

上条は黙々とりんごを剥いていく。
悲しいかな、無意識にウサギさんにしてしまう。
りんごを向きながら昨日の事を思い出す。
インデックスの話では、
船は沈没。人的被害はなし。
海に放り出された乗組員も、
無事に救助されたようだ。
残りのテロリストの逮捕も時間の問題らしい。


303 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 23:24:25.80 ID:CcD4bKN/Q
病室の窓から優しい風が入ってくる。
インデックスはベッドの(正確には上条の)上で、
りんごを頬張っている。
そのインデックスは、事件直後、
黒子が事情を汲んで美琴と一緒に帰してくれたらしい。

「学園都市…か」

上条は今回の一件で、
学園都市の深い闇を見た気がした。
なんとなく暮らしているそのすぐ傍で、
何かに苦しんでいる人間がいる。
その苦しみはやがて大きなうねりとなり、
何もかもを巻き込もうとする。


304 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 23:25:15.52 ID:CcD4bKN/Q
その全てを助けてやる事は出来ないかもしれない。
上条は右手を突き出す。
せめてこの手の届く範囲だけは
助けてやれる人間になりたい。
上条はそう思った。
「とーま」

「なんだ、インデックス」

上条は優しく微笑んでやる。

「りんごのお汁こぼした」

「………」

「てへへ」

「ぐ…不幸だぁぁぁぁぁ!!!」

305 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 23:27:32.21 ID:CcD4bKN/Q
完結です

突っ込み所も多々あったかと思いますが、
みなさんのおかげで完結までこぎつけました
支援や保守本当にありがとうございました

322 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/27(土) 00:12:04.58 ID:qLp6e1h2Q
「ぐ……これで何枚目ですの」

ジャッジメント第177支部、
白井黒子は書類と睨めっこしていた。

「当たり前よ。私達は学園都市を出ればあくまで学生なの。
テロリストに戦い挑んだって聞いてるわよ」

「ぐぬぬ…」

ジャッジメントの先輩、
固法美偉に小言を言われ、
黒子はうんざりした顔で机に突っ伏す。

「頑張りましょう白井さん!」

許可を取らずにハッキングをした初春も、
山積みの書類と格闘している。

323 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/27(土) 00:12:45.96 ID:qLp6e1h2Q
「ぅぅぅぅぅ…」

「し、白井さん?」

不気味な呻き声を上げる黒子に、
初春が恐る恐る声を掛ける。

「もう我慢出来ませんの!
初春!後はお願いします!」

「あっ、ズルい!」

時既に遅し。
黒子の姿はどこにもなかった。

324 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/27(土) 00:13:25.49 ID:qLp6e1h2Q
「お見舞い行こうかなー…
いや、こっちから行くのも何かムカつくわね…
あいつに来てもらえば…
ってそれじゃお見舞いじゃないわね」

美琴はお気に入りのクレープを頬張りながら、
ベンチでのんびりしていた。
船を沈めたのは美琴だが、
黒子や黄泉川には黙っているよう言われた。
レベル5の扱いは、学園都市内の
パワーバランスを崩しかねない程デリケートなのだ。

「おっねっえっさっまぁぁぁあ!」

突然背後から抱き付かれ、
危うくクレープを落としそうになる。

「く、黒子!?あんた今日はジャッジメントの仕事じゃ…」

「嫌ですわお姉さま!お姉さまに会うためなら、
仕事なんてポイッポイッですの」

黒子は美琴に頬ずりする。

「ぐっ…暑苦しい!!」

肘うちでもかましてやろうか、
美琴が身構える。

325 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/27(土) 00:14:27.03 ID:qLp6e1h2Q
「あっ、やっと見つけた!」

声がした方を見ると、
黒髪ロングの女の子が走ってくる。

「御坂さん!白井さん!」

「佐天さん、どうしたの?」

佐天涙子。初春と同じ学校で、
二人とも友人だ。

「いやー、初春には断られちゃったんですけどね」

佐天は何かのパンフレットを見せる。

「良かったら一緒に行きません?」

二人はパンフレットの文字を見て固まる。

"豪華客船でクルージングで二泊三日!"

「行くかぁぁぁぁ!!」

「へ?」

二人の叫びに、
ただ呆然とする佐天だった。

327 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/27(土) 00:15:59.69 ID:qLp6e1h2Q
希望があったので電磁砲フォローを

これで完結ですっ

333 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/27(土) 00:43:24.20 ID:qLp6e1h2Q
「船…沈めちゃったんですよね?」

とあるオープンカフェで、
鉄装綴里が同情の眼差しで見ている。

「まぁ…いいんじゃん?
緊急事態って事で」

黄泉川はまるで他人事のように、
コーヒーを飲んでいる。

「弁償、なんて事になったらどうするんですか?」

鉄装は心配しているのか、
不安を煽ろうとしているのか。
朝からずっとこの調子だ。

「んー……まぁなんとかなるじゃんよ」

黄泉川はニカッと笑う。
そんな黄泉川を見て、
鉄装は仕事の時とは別人だな、と思う。


334 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/27(土) 00:44:06.22 ID:qLp6e1h2Q
ちなみに黄泉川が独断で沈めた船は、
学園都市がいつの間にか回収し、
関係各所に箝口令をしいた。
犯人も学園都市の人間だったのだ。
外部へ弱味を見せないため、
いろいろなものや人が動いた。
結果、表向きは無かった事として処理された。
無かった船は沈めようもない。
黄泉川が弁償する必要もないのだ。

「聞いてます?」

鉄装の言葉も聞かず、
黄泉川は急に立ち上がる。

「喧嘩じゃんよ!」

黄泉川の目が生き生きしてくる。

「行くじゃんよ!!」

黄泉川は鉄装の襟首をひっつかむ。

「ちょっと、支払い!支払いがぁぁ!」

335 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/27(土) 00:44:56.29 ID:qLp6e1h2Q
黄泉川 完結

340 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/27(土) 01:12:44.82 ID:qLp6e1h2Q
「今回はミサカも頑張ったよね?
ってミサカはミサカは胸を張ってみたり」

「あァ?はいはいそォですねェ」

彼は面倒くさそうにあしらう。
打ち止めに連れられ、
アーケードをぶらぶら歩く。
彼の得も言われぬ威圧感に、
道行く人が進路をあけていく。

(はッ、まるで反射だなァこれは)
なかば自虐的な笑みを浮かべ、
彼はとなりの少女を眺める。
打ち止め。彼自身が自覚しているかは別にして、
大切な少女。

「じゃああなたはミサカにお礼をしなきゃだねって
ミサカはミサカは無理を承知で頼んでみたり。
出来ればアイスがいいなってミサカはミサカは…」

「あァ!ミサカミサカうるせェ!
買えばいいンだろ、
買えばよォ」

341 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/27(土) 01:14:43.82 ID:qLp6e1h2Q
彼は更に面倒くさそうに手近な
コンビニに入る。

「そーいえば!」

打ち止めは急に何かを思い出す。
「あの時直接船に触るか、貨物船に触れば
あっという間に解決だったかもって
ミサカはミサカは今更な事を言ってみたり」



342 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/27(土) 01:16:14.72 ID:qLp6e1h2Q
打ち止めの指摘に、彼は意外にも丁寧に答えてやる。

「あァ…俺はややこしィ立場なンだとよ。
"上"と深く関わりある"レベル5"
は表立ッて動けねェんだと」

「あっ、これがいい!ってミサカはミサカは
新発売のアイスを…」

「てめェ…」

彼はコンビニの外を眺める。
誰もが平和そうに同じ道を歩いている。
彼は思う。
自分はもうあの道を通る事は出来ない。
だけどせめてこの少女だけは…

「これとこれとこれとー…」

「買い過ぎだぞオイ」

彼の目がほんの少し優しく見えたのを
誰も知らない。

343 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/02/27(土) 01:17:54.81 ID:qLp6e1h2Q
これで全部フォローしたはず

長々とお付き合いありがとうございました

指摘も有り難く頂きます!



コメント

No title

OVA化できるレベルの面白さ!

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