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美琴黒子佐天初春「貴方たちを全力で倒す!」 vs 上条一方通行「……やってみろ」1-1

1 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/07(月) 18:24:51.65 ID:/WCxYmg0 [1/2]
禁書サイドと超電磁砲サイドが交わればどのようになるのかと思い、スレ立てさせてもらいました。
矛盾が出ないよう原作も読み込みましたが、一応、原作未読者の方も読めるようにしています。
結構長くなると思います。一応バトルとシリアスものを目指してるつもりですが拙い表現もあるかもしれません。
あと「禁書サイド」=「魔術」っていうわけではありません。ここでの「禁書サイド」は世界観じゃなくて登場人物を指してます。
取り敢えず投下していきます。

3 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/07(月) 18:30:21.48 ID:/WCxYmg0 [2/2]
学園都市――。


美琴「喉乾いたわね……」

美琴は、とある食堂に入る――。
食堂、と言っても実際は内装が洋風の洒落た店内だ。メニューも、女の子向けばかりの軽食が揃っており、学園都市の女子学生たちに人気だった。

美琴「黒子も初春さんもジャッジメントの仕事だし、佐天さんは学校で補習。暇なのは私だけか……」

美琴はカウンターに向かい、レモンティーとサンドイッチを注文する。グラスの乗ったお盆を受け取ると、彼女は窓際の席に座った。

美琴「何よみんなして。暗い顔しちゃって…」

見渡した所、店内にはある程度女子学生たちが来客していたが、みな、あまり明るい顔をしているとも言えず、どちらかと言うと暗い表情を浮かべて会話をしていた。

美琴「以前4人で来たときは、店内は黄色い声で溢れかえってたって言うのに…。本当に今時の女子学生っ?って思うほどテンション暗いわね……。まあ、仕方ないけど…」
美琴「長居したってつまんないわね。帰ろうっと」

席を立ち上がり、グラスをカウンターに返そうとしたところ、美琴は誰かと衝突した。
相手が持っていたお盆が床に落ちる。

美琴「あ、ごめんなさい!」

女の子「大丈夫大丈夫。もう食べ終わったところだから」

美琴「そう、でも手伝うわ」

美琴は床に落ちた紙くずを拾い、ゴミ箱に捨てる。

女の子「ありがとう。いい人ね。みんなが疑心暗鬼になってる今では、ちょっとした気遣いが胸に響くわ」

美琴「どういたしまして」

ニコッと笑顔を見せる美琴。女の子も笑顔で返した。

女の子「あ」

美琴「どうしたの?」

女の子「席にケータイ忘れちゃったわ」

美琴「そう。じゃあ、私はもう帰るから」

女の子「うん、またね。元気でね」

美琴「貴女もね」

4 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/07(月) 18:41:22.25 ID:gNYZGno0 [1/2]
女の子は忘れた携帯電話を取りに行くため、席に戻って行った。
美琴はそれを見届けると、食堂を後にした。

美琴「さてと、どこ行こうかな…」





ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!!!!!!!!!





――直後、激しい音が爆ぜ、突風が美琴を襲った。
視界が揺れに揺れ、身体が浮遊するような感覚を味わった美琴は、誰かの叫び声が自分の耳を突き抜けてくる中、鈍い音と共にアスファルトの地面に叩き付けられた。

美琴「ぐっ……!!」

何が起きたのかも理解出来ず、耳に霞がかかったような状況で、美琴は何とか身体を動かしてみる。
どうやら五体満足であることは確かなようだ。ところどころ、肌から出血してはいたが。

美琴「い……たい……」
美琴「あ………」

口中に血の味を噛み締めながら美琴がゆっくりと目を開けると、そこには誰かが倒れておりその人間の身体中から大量の血が流れ出ていた。

美琴「……死んでる……」

急いで辺りに視線を巡らせてみる。
煙が周囲を覆い、モノが焼ける臭いが鼻をつんざく。
明瞭とも言いがたい光景の中に浮かび上がってきたのは、何体もの死体と鮮血に染まりまくった地面だった。

「痛い痛い」

「いてぇぇ……チクショウ…」

「誰か助けて……」

幾つもの悲痛な呻き声を聞き、何とか身体が動くことを確かめた美琴は、側にあったポールに手を預け、よろよろと立ち上がった。

美琴「…………………」

つい2分前まで美琴がいた食堂の入り口からは黒い煙が吹き出ており、店内の状況は壊滅的と言えた。

美琴「………店が……無くなってる……」

阿鼻叫喚の地獄の中、美琴は茫然とその光景を眺めていた――。

18 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/07(月) 22:14:14.12 ID:Vf2bu9U0 [2/2]
ジャッジメント第177支部――。

美琴「っ…」

黒子「我慢して下さいましお姉さま。かすり傷で済んだのが不幸中の幸いでしたわ」

哀しそうな表情を見せる黒子に腕を見せ、美琴は応急処置を受ける。

初春「……御坂さんが無事で、本当に良かったです…グスッ」

美琴「泣かないでよ初春さん…。私はもう大丈夫だから、ね…」

初春「はい……」

支部には、黒子と初春がおり、美琴負傷の報を聞くと、佐天も馳せ参じて来た。

佐天「あ、御坂さん、ニュースやってますよ!」

美琴「え?」

4人は部屋に備え付けられたテレビに目を向ける。

『今日午後4時13分頃、喫茶店『ファニーランド』で発生した爆発事件についての続報です。
アンチスキルによると、現場は学区内に住む能力者たちの女子学生たちの憩いの場所となっており、死傷者は少なくとも10人は越す模様です。
現場で採取された形跡から見るに、アンチスキルはこの爆発は意図的に起こされたものとして捜査を進めており、同部隊隊長は、この件について『能力者たちが多数集まる「ファニーランド」を狙った爆発テロとして、警戒レベルを上げると……』

佐天「…また、テロですね」

黒子「今回も能力者が狙われてますの……」

初春「これで、今月に入って5件目…。しかも被害者の中には無能力者もいることから、無差別テロであるのは明らか…。もう嫌です、こんなの……」

佐天と黒子と初春が、元気の無い声で話す。

20 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/07(月) 22:24:06.07 ID:mH9WXJw0 [1/4]
黒子「テロだけでなく、学園都市の要人暗殺も行われてますの。それどころか一昨日には、レベル4の学生が何者かによって殺害されています」

美琴「やっぱり…本気で今、学園都市ってやばい状況にあるのね…。こんなんじゃ、うかうか外出も出来ないわ……」

美琴は握り締めた手を見つめた。

美琴「……………………」

そして彼女は、先程自分が巻き込まれた爆発現場の様子を思い出す。

美琴「(私……あの時、何も出来なかった……。大勢の人たちが苦しみ、死にそうだったのに……)」

彼女は悔しそうに顔を歪める。

美琴「(何がレベル5よ……何が『超電磁砲(レールガン)』よ。傷ついた人も助けられない超能力者に何の意味があるの!?)」

美琴の葛藤に気付いていないのか、黒子たち3人は会話を続ける。

黒子「ネット上では、『学園都市崩壊のXデーはもう間近』などとも噂されてますの…」

初春「何で……こんなことに……私たちはただ、普通に生活してただけなのに……」

黒子「学園都市の外では、私たちを『普通』ではない、『化け物』と称している方々や団体が増え始めてますの。彼らによれば、私たちは脅威であり、排除すべき対象とのことですわ」

佐天「確か、『神に背く者には鉄槌を』って言って、色んな国の色んな秘密結社の工作員が学園都市に潜り込んでる、って噂も聞きます。もしかしたら、一連の爆発事件はその人たちによるものなんじゃ…」

黒子「可能性は充分有り得ますわね。どちらにしろ、我々『風紀委員(ジャッジメント)』や『警備員(アンチスキル)』が全力で対策を行っているので、すぐに事態は沈静化しますわ」

美琴「なら、いいけどね……」

黒子佐天初春「…………………」

美琴の言葉を機に、4人は一斉に黙りこくった。

21 名前:>>19あれぐらいなら全然大丈夫です[saga sage] 投稿日:2010/06/07(月) 22:32:31.43 ID:mH9WXJw0 [2/4]
初春「ところで、固法先輩遅いですね……。確かお昼頃から、アンチスキルとの合同捜査に向かっていたはずですけど…」

黒子「そう言えばそうですわね。連絡もありませんし……」

Prrrrrrrrrrr.....

その時、支部の電話が唐突に鳴り始めた。

佐天「あ、電話だ」

黒子「固法先輩ですわきっと。どれどれ」

ガチャッ

黒子「はい、もしもし。こちらジャッジメント第177支部の白井と申し……」
黒子「………えっ!?」
黒子「…そ、それは本当ですの??」

突然、黒子の表情が一変した。

美琴佐天初春「???」

黒子「………そんな…」
黒子「………何で…」

幽霊でも見たような口調で、黒子は言葉を搾り出す。

美琴「何? どうしたの黒子?」

初春「白井さん?」

佐天「何かあったんですか?」

22 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/07(月) 22:40:21.52 ID:mH9WXJw0 [3/4]
美琴たちが心配して声を掛ける。

黒子「分かりましたわ……。これから向かいますの…」

トーンを低くし、黒子は震える手で電話を切った。

美琴「ちょっと黒子? 何があったのか言いなさいよ」

顔面が蒼白になった黒子の顔を見、美琴は異常な空気を察知する。
そして、黒子は静かに、一言だけ呟いた。

黒子「……固法先輩が……」

美琴「?」





黒子「…死にましたの……」





美琴佐天初春「……………え?」

衝撃的な事実が、4人を襲った。
そして、彼女たちはこの時知る由もなかった。これが、地獄の日々の始まりを告げる合図だったことに――。

31 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/08(火) 21:52:46.22 ID:0/g74E.0 [2/12]
第7学区・とある病院――。

美琴「先生!」

カエル医者「やあ君たちか」

黒子「固法先輩は? どこですの!?」

初春「死んだなんて嘘ですよね!?」

佐天「だって昨日まであんなに元気にしてたんですよ!!」

懇願するような表情を浮かべ、美琴たちは固法の検死を担当したカエル顔の医者に詰め寄っていた。

カエル医者「残念ながら……」

カエル顔の医者がまるで自分の身内が死んだように静かに答える。

黒子佐天初春「そんな……!!」

初春「…先輩……固法先輩………やだぁ……グスッ…ヒグッ…」

佐天「初春、大丈夫…?」

初春「だって……何で……急に…」
初春「わあああああああああああああああああああん」

耐え切れなくなったのか、初春が泣き始めた。

佐天「初春……グスッ…泣いちゃ、駄目だよ……グスッ」

佐天も初春に影響されたのか声に嗚咽が混じる。

黒子「……どうして…こんなことに…」

カエル医者「……………」

美琴「先生…」

蛙医者「ん?」

美琴「ならせめて……固法先輩の遺体と……会わせてください…」

黒子「お姉さま…」

美琴「最後に、最後だけでも……今までお世話になったお礼を言っておきたいんです……」

美琴はカエル顔の医者を見据えて頼み込む。

33 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/08(火) 21:59:42.48 ID:0/g74E.0 [3/12]
黒子「そうですわ……。私も同じです。先生、お願いしますわ」

佐天「あたしからもお願いします!」
佐天「ね、初春も、そうでしょ?」

初春「ヒグッ……ヒグヒグッ…はい…グスッ…お願い…じまず…」

4人は目に涙を浮かべてカエル医者に懇願する。
無言でそれを見ていたカエル医者だったが、やがて彼は口を開いた。

カエル医者「……それは無理なんだよ……」

美琴黒子佐天初春「何で!!??」

カエル顔の医者の言葉に美琴たちは抗議にも似た声を上げた。

カエル医者「僕としても会わせてあげたいんだがね?」

美琴「じゃあ、どうして!!」

カエル医者「“物理的に”、不可能なんだよ…」

黒子「物理的?」

一言聞いただけでは、カエル顔の医者が何を言っているのか分からなかった。
彼も美琴たちの表情を見てそれを汲み取ったのか、ゆっくりと言葉を付け足した。

カエル医者「ああ……何故なら彼女は…」





カエル医者「爆死したからね」





美琴黒子佐天初春「え………」

美琴たちの脳内が真っ白になった。

35 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/08(火) 22:06:27.61 ID:0/g74E.0 [4/12]
ジャッジメント第177支部――。

初春「グスッ…ヒグッ…ヒッグヒッグ…」

美琴「……………」

黒子「……………」

佐天「……………」

静寂な室内に、初春の嗚咽だけがこだまする。
黒子は手にした固法の遺品である歪んだ眼鏡を見つめていた。

佐天「……まさか、固法先輩も爆発現場にいたなんて…」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

カエル医者「固法くんは、あの爆発に巻き込まれて死んだんだ」

美琴「そんな……!!」

カエル顔の医者は美琴たちから視線を外し、事の顛末を打ち明けた。

カエル医者「たまたま、テログループの手掛かりを求めてあの喫茶店にいたとの話みたいでね?」

美琴「じゃあ…私と同時刻に店内にいたんだ」

カエル医者「その可能性が高いね?」

美琴「………………何で…」

言葉を失くす美琴。それを横目で窺い、黒子が訊ねた。

黒子「では、固法先輩の遺体は……」

36 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/08(火) 22:10:29.21 ID:0/g74E.0 [5/12]
カエル医者「無い…と言えば、嘘になるね?」

黒子「え?」

カエル医者「正確にはある。だが、“ある”だけだ」

佐天「先生、それってどう言う……」

初めは、カエル顔の医者の使う日本語がおかしいのかと思った。
だが、次に彼が発した言葉を聞き、美琴たちは衝撃を受けた。



カエル医者「君たちが見るもんじゃない」



美琴黒子佐天初春「!!!!!!!???????」

カエル医者「これは現場に残ってた彼女のものだ。君たちが持っておくんだ。いいね?」

そう言ってカエル顔の医者は懐からある物を取り出し、黒子に渡した。

黒子「これは……固法先輩の眼鏡…」

初春「固法先輩……」ガクッ

急に、初春がその場に崩れ落ちた。

佐天「初春! どうしたの!? 初春!!」

佐天が初春の身体をゆする。

カエル医者「ショックで気絶したようだね? ちょっと病院のベッドを借りるといい」

黒子「……ではお言葉に甘えさせてもらいますわ」

佐天「……じゃ、あたしが運びます。よいしょ……」

佐天が初春をおぶる。
美琴はその光景を見て、口中に一言呟いていた。

美琴「(固法……先輩……)」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




37 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/08(火) 22:16:42.58 ID:0/g74E.0 [6/12]
美琴「私が……あの時、店内の固法先輩に気付いていれば、あるいは…」

悔しそうに、美琴が話す。

黒子「お姉さま、もう過ぎたことです。今更仮定の話をしても仕方がありませんわ」

佐天「白井さん……」

美琴「黒子…過ぎたことだなんてよく言えるわね」

黒子「私だって…グズッ……本当は…ヒグッ…どうしようも…グスッ」

黒子の言葉に嗚咽が混じり始めた。

御坂「黒子……」

佐天「やめてよ白井さんまで…。みんなして、泣かないでよ…。初春もさあ、いい加減泣き止んで……」

初春「だって…グスッ…だってだって…ヒグッ」

佐天「何言ってるの初春……グスッ…あれ?…何でだろ……あたしまで…グスッ」

部屋に3人分の嗚咽が響く。

美琴「何よ、佐天さんまで……」

佐天「そういう御坂さんだって……グジュッ」

美琴「え?あれ? …何でだろ?」

美琴は自分の目元に触れた。小さな水滴が指についた。

美琴「う……う……」

黒子「おねえ……さま…まで…グスッ…」

佐天「……みんな…ヒグッ…泣き虫…なんですね…グスッ」

初春「……御坂…さん…グスッ」

美琴黒子佐天初春「わああああああああああああああああああああん」

限界だった。彼女たちも所詮は普通の女子中学生でしかなく、感情を制御する能力までは持ち合わせていなかったのだ。
顔を見合い、4人は互いを慰めるように寄り添って泣きじゃくっていた。

38 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/08(火) 22:20:10.05 ID:0/g74E.0 [7/12]

『臨時ニュースです!! 先程、第6学区で大きな爆発が……』

『昨夜、自宅で殺害された科学者の服に付着した髪の毛から…』

『見て下さい!! あの煙! まだ避難を終えていない生徒たちが中に……っ!!』

『カメラを止めろ!! ここはアンチスキル指定立ち入り区域だ!!』

『現在、一部の学区でスキルアウトたちによる暴動が起きているとの情報が…』


39 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/08(火) 22:26:21.96 ID:0/g74E.0 [8/12]
翌日・ジャッジメント第177支部――。

初春「……………」ウツラウツラ

部屋の一角にあるスチールデスク。そこで初春は、電源が点いたままのパソコンを前にして座っていた。
頭がリズムを刻むように上下に揺れる。

初春「はっ!」
初春「……ダメダメ」ブンブン

目下、初春は眠気と格闘していた。

初春「……………」ウツラウツラ

ピトッ

初春「ひゃう!」

初春の目が大きく開かれる。どうやら冷たい何かを頬っぺたに押し付けられたようだった。

初春「あ、佐天さん…」

佐天「大丈夫? ちょっと休んだら?」

初春が顔を向けると、缶コーヒーを持った佐天がそこに立っていた。
佐天は初春に缶コーヒーを渡す。

初春「ありがとうございます。でも、今は休んでる暇は無いですから……」

ゴクゴクと初春は行儀よく缶をあおる。

佐天「そうだよね……」
佐天「白井さんは大丈夫?」

佐天は後ろに顔を向けた。黒子がデスクに座りパソコンのキーボートを叩いていた。

黒子「当たり前です。徹夜など、ジャッジメントにとって日常茶飯事ですわ」
黒子「しかし眠いことも確か……ふぁーぁ…」

佐天「白井さんも缶コーヒー、飲みます?」

黒子「ではお言葉に甘えて」

佐天「はい」

黒子に缶コーヒーを渡す佐天。

佐天「無理は駄目ですよ」

40 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/08(火) 22:33:00.25 ID:0/g74E.0 [9/12]
黒子「ありがとうございます」

佐天「それで、どうです? 何か新しいこと見つかりました?」

黒子「見つかるも何も……所詮はジャッジメントに回ってくる情報なんて限られてますの」
黒子「一連のテロ騒動や要人暗殺に関する重要情報はアンチスキルの方で一元化して管理されてますし、私たちが触れられる情報は僅か」
黒子「一応、管轄区内として、昨日の『ファニーランド』での捜査は我々に任されてる部分は大きいですが」

佐天「で、テログループの尻尾とか掴めました?」

黒子「ダメですわ。せいぜい分かるのは爆発現場で死亡が確認された学生たちの直前の行動や友人関係のみ。しかし、やはり彼女たちから犯人の足跡を辿るのは無理ですわね」

佐天「そっかー。じゃあ初春は?」

初春「zzzzz......」

佐天「あらら、寝ちゃってる」

黒子「初春も徹夜でしたからね」

佐天「みんな頑張ってるんですね」

黒子「…殉職した固法先輩を殺した犯人を見つけるまでは、絶対諦めませんの。それは恐らく初春も同じはず」

佐天「悔しいですよね……」

黒子「ええ、とても……」

一時、静寂が漂った。

『新しい情報が入ってきました』

その時、テレビからニュースを報せるアナウンサーの声が聞こてきえた。

佐天黒子「!!」

『第7学区の学生2名が行方不明となった事件について、捜査を進めていたアンチスキルは事件発生から4日後の今日、更なる情報を求めて学生2名の顔写真を公開しました。2日前の朝、『友達が帰らない』という通報を受け、アンチスキルが捜査を開始していましたが……』

佐天「今度は誘拐事件ですか…っていうか、最近誘拐事件もかなりの頻度で増えてますよね……」
佐天「何かもう学園都市、世紀末状態じゃないですか……」

黒子「上から小耳に挟んだ話ですが、現在、学園都市には各国の工作員だけでなく、特殊部隊、秘密結社、新興宗教団体などが紛れ込んでまるで戦国時代の様相を示しているそうです。噂では、『内戦勃発』も間近だとか…」

佐天「あたしたちは、どうなるんでしょうか?…正直、恐くて仕方ありません」

黒子「大丈夫ですわ。学園都市がそう易々と崩壊することは有り得ません。所詮、他国の工作員だろうが、軍隊だろうが、こちらには能力者が五万といるのですから」

佐天「……なら、いいんですけど」

41 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/08(火) 22:40:40.58 ID:0/g74E.0 [10/12]
とある公園――。

美琴「………まただ。またあいつが来ない」

自動販売機の側のベンチに腰掛け、缶ジュースを飲む美琴。

美琴「ここ1週間、あいつの顔全然見ないわね。もしかして避けられてんのかしら?」

美琴は空を仰ぎ見、溜息を吐き出す。

美琴「いい天気ねー。こうしてると、平和なんだけどねー」

顔を正面に戻し、続きを飲もうとした美琴の目にある人物の姿が映った。

美琴「あれは……!!」




インデックス「………とうま……」トボトボ

公園の一角を、彼女は暗い表情のまま歩いていた。頭の中に10万3000冊の魔導書を記憶するイギリス清教会の修道女――インデックスだった。

美琴「ちょっとあんた!!」

と、突然インデックスは声を掛けられた。

インデックス「え?」
インデックス「うわ、短髪!」

急に美琴が現れたためか、お化けを目撃したように驚くインデックス。

美琴「うわ、って何ようわって」

インデックス「………」ダッ

何故かインデックスが、慌てたように逃げ出そうとする。

美琴「あ、こら逃げるな!」

ガシッ

咄嗟に、インデックスの腕を掴む美琴。

42 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/08(火) 22:47:29.73 ID:0/g74E.0 [11/12]
インデックス「は、離すんだよ短髪」

ニャ~

インデックスの胸の中の三毛猫、スフィンクスが鳴いた。

美琴「ちょっとあんたに聞きたいことがあるのよ」

インデックス「知らないんだよ知らないんだよ。とうまは何も関わってないんだよ」

美琴「はあ?」

インデックス「はっ!」

しまった、と言うように口を両手で塞ぐインデックス。

美琴「あんた、あいつ…上条当麻がどこにいるか知らない? 近頃見かけないんだけど」

インデックス「私は何も答えちゃいけないんだよ」

美琴「何言ってんの?」

必死に何やら弁解するインデックスに対し、美琴は怪訝な顔をする。

ニャ~

インデックス「わっ、駄目だよスフィンクス。黙ってるんだよ!」

ニャ~

インデックス「じゃ、じゃあ私はこれで行くから!」

美琴「え、ちょっと待ちなさいよ」

インデックス「短髪も気をつけるんだよ」

美琴「え?」

それだけ残すと、インデックスは走り去っていった。

美琴「あ、逃げた……」
美琴「もう、逃げ足速いわね…」

美琴は呆然と彼女の姿を見送る。

43 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/08(火) 22:55:05.34 ID:0/g74E.0 [12/12]
夕方・裏通り――。

泡浮「随分遅くなってしまいましたわね」

湾内「早く寮へ戻りませんと」

夕日が落ち始めた頃、常盤台中学に通う2人のお嬢さま――泡浮と湾内は寮への帰路に着いていた。

泡浮「にしても、本当に学園都市はどうなってしまうのかしら?」

湾内「恐いですわね」

不安を口にする彼女たち。

ズッズウウウウウウウン!!!!!

その時、遠くの方から何かが爆発する音が聞こえてきた。

湾内「今のは……」

泡浮「とても遠くに感じられましたが、またしてもどこかで事件かテロが起こったのでは……」

2人は顔を見合わせると無言になる。

湾内「………………」

泡浮「………………」

湾内「…急ぎましょう」

泡浮「ええ」

小走りになる2人。そう広くもない道を彼女たちは2人して駆ける。
辺りに人はおらず、先程の爆発もあってか、彼女たちの焦燥感は増しつつあった。

泡浮湾内「!!??」

急に立ち止まる2人。

泡浮「…あ、あれは…?」

湾内「……何でしょう? 嫌な予感がします。迂回した方が良さそうでは?」

2人の視線の先に、夕日を背にして立っている1人の男がいる。
ポケットに手を突っ込んだその男の顔は逆光になっていて判然としないが、どうやら湾内と泡浮の2人をじっくり見つめているように見えた。

泡浮湾内「……………」ゾクッ

44 名前:少し休憩[saga sage] 投稿日:2010/06/08(火) 23:02:51.64 ID:JOGmnjk0
2人の脳裏に、最近頻発中の行方不明事件が蘇る。
視線をゆっくりと交わした2人は踵を返し、急いで別の路地へ逃げ込んだ。

泡浮「ハァハァハァ……」

湾内「ハァハァハァ……」

泡浮湾内「!!!!!」

また立ち止まる2人。
彼女たちが恐怖の視線を注いだその先には、先程とはまた別だが1人の男が立っていた。
その男の背後の空は既に暗くなっていて、顔は判然としない。

泡浮湾内「………っ」

寄り添った2人が来た道を引き返そうと後ろを振り向いたとき、彼女たちの目の前に、また男が1人立っていた。

泡浮湾内「!!!!」

恐らくは、先程の通りで待ち伏せしていた男だ。

泡浮「いや……」

湾内「た、助けてください……」

泡浮と湾内は弱々しく言葉を搾り出す。
しかし、2人の男たちは彼女たちを挟み撃ちにするように徐々に距離を縮めてくる。

泡浮「通報……しますわよ!」

携帯電話を取り出す泡浮。
後ろから迫ってきた男が泡浮の携帯電話を奪おうと触れた。

泡浮「やめて!!」

咄嗟に泡浮は手を引っ込める。

湾内「来ないで……」

男たちとの距離は既に半径2メートル以内。
泡浮と湾内は前から迫ってきた男に視線を向けた。

男の口元が、不気味に歪んだ――。

46 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/08(火) 23:37:50.30 ID:hR4QmeM0 [1/3]
時間は少し遡り…ジャッジメント某支部――。
連日のテロや殺人・誘拐事件などの影響を受けてか、室内は普段より何倍もの学生たちで溢れていた。

「本部には連絡取れたのか!? アンチスキルは何て言ってるんだ? 全然、情報が回ってこないじゃないか!!」

「スキルアウトの暴動だぁ? 知るかそんなこと、他の支部へ回せ!!」

怒号が飛び交い、熱気が充満する。元々、学区内でも比較的施設が大きかったためか、現在ここに詰めているジャッジメントの学生の数は50人近くに昇っていた。

「支部長~!」

「あ?」

1人の女子生徒が慌てて支部長と呼ばれた男の下に駆け寄ってきた。彼女の手には1つの箱が収められている。

「何だそりゃ?」

「たった今、アンチスキルの方がこちらの物を届けに来ました~」

「箱?」

「何か、昨日起きた放火事件の現場に捨ててあったものらしいです。アンチスキルでは調査優先レベルが低いとのことでこちらに回してきたとか」

「チッ、俺たちはアンチスキルの残飯処理じゃないってのに……。しかも忙しいこの時に。もういい。俺が調べとくからお前は仕事に戻れ」

「分かりました」

女子生徒が机に戻っていくのを見届け、支部長は箱に手をかけた。

「一体、今更何だってんだ。………って、何だコリャ?」

箱の中には、粘土状のものと時刻を刻むデジタル式の表示盤が入っていた。

「………時計?」

何か、様子がおかしい。しかし、今こうしている間にも、表示盤に刻まれた数字は「00:10」……「00:09」と1つずつ数字を減らしていっている。

「!!!!!!!!」

嫌な予感が、支部長の頭を過ぎった。

「お……

カッ!!!!!!!!!!!!!!!

箱を運んできた女子生徒に声を掛けようとする時間すら許されなかった。
直後、ジャッジメント支部は一瞬で炎と爆音に包まれた。

48 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/08(火) 23:44:34.84 ID:hR4QmeM0 [2/3]
ジャッジメント第177支部――。

黒子「何ですって? ジャッジメントの支部が狙われた!?」

初春「ええっ??」

電話を手にし、大声で聞き返す黒子。
初春が驚嘆の声を上げる。

黒子「……分かりましたの。気をつけますわ」ガチャン

黒子が電話を切る。

初春「白井さん!!」

不安な表情を浮かべ、初春が立ち上がる。

黒子「今言った通りですわ。隣の学区にある支部で爆発がありましたわ」

初春「そんな……っ!!」

佐天「怪我人は、いたんですか?」

黒子「まだ具体的なことは分かりませんが、死傷者は50名近くになるとのことですわ」

初春「……酷い……何て、酷いことを……」

ショックの余り、初春は無意識に椅子に腰を降ろした。

佐天「何でジャッジメントの支部が狙われたんですか?」

黒子「分かりませんが、恐らくまたどこかのテログループがやったのでしょう。あの支部は高レベルの能力者がたくさん在籍していましたから……」

佐天「またですか…。みんな無関係なのに…。どうしてこんなことに……」

黒子「とにかく、こちらも不審物には注意せよ、とのことですわ」

佐天「どういう意味です? もしかしてこの支部も爆発されるってこと?」

初春「ええっ!! そ、そんな……」

黒子「落ち着きなさいな初春。そう連続してジャッジメントの支部を狙うと、警戒されるのはテログループも分かっているはずです。彼らもそういった点は注意するでしょう」
黒子「取り敢えず、最寄りのアンチスキルの部隊が用意出来次第、ジャッジメントの全支部に速やかに警護につくことが決まりましたの。ですから、我々の業務に支障はありませんわ」

佐天「でもまさか、ジャッジメントの支部まで狙われるなんて……。これで学生の被害も一気に増えましたね」

黒子「犯人たちももっと過激になるでしょうね。もしかすれば近いうち、学園都市内の全校に休校措置が出されるかもしれませんわ。そうなる前に事が収まればいいのですが……」

49 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/08(火) 23:51:30.06 ID:hR4QmeM0 [3/3]
初春「……………」

佐天「初春、元気出しなよ。落ち込んでても仕方がないよ」

初春「だって、無実の人が……それも私たちとそう年齢も変わらない人たちが死んだんですよ……。こんなの…酷すぎるじゃないですか」
初春「それに、この学園都市にいる限り……いつ私たちも同じ目に遭うか分からない……。ジャッジメントの私たちなら特に……。嫌ですよそんなの……逃げる場所も無いのに…」

佐天は初春の手を見る。彼女の手は僅かに震えているようだった。

佐天「……………」

黒子「……………」

美琴「みんないるー?」

出し抜けに後ろから声を掛けられ、3人は肩を少しビクつかせた。

黒子「あ、あらお姉さまでしたの…」

美琴「何よ? 私だと何かダメだった?」

黒子「い、いえ別に。それで、どうかしましたの?」

美琴「実は……」

黒子「あら、貴女がたは……」

泡浮「こんにちわ」

湾内「お邪魔します」

佐天「あ、湾内さんと泡浮さんだー」

黒子たちが美琴の背後を見ると、そこには泡浮と湾内が行儀よく立っていた。

初春「何かあったんですか?」

美琴「うん、実はちょっとねー」
美琴「ほら、ここに座って」

泡浮湾内「はい……」

促され、椅子に座った泡浮と湾内の顔はどこか怯えているようにも見えた。

黒子「それで、一体何が?」

美琴「実はさっき、帰り道で会ったんだけどさ。何か2人とも、誰かに襲われかけたみたいで」

黒子「襲われた??」

51 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/09(水) 00:04:46.77 ID:eCnvMVA0 [1/3]
湾内「怖くて…逃げるだけで精一杯だったので……」

美琴「そっか…」

泡浮と湾内は一生懸命思い出そうと試みる。

泡浮「………………」

湾内「………………」

泡浮「あ!」

美琴「?」

泡浮「お待ちになって」

何かを思い出したのか、ガサゴソと学生鞄を漁る泡浮。美琴たちはその様子を見守った。

泡浮「これですわ!」

泡浮が取り出したのは、彼女の携帯電話だった。

初春「ケータイ…ですか……?」

泡浮「ええ」

黒子「でも、それが何の手掛かりに?」

泡浮「この携帯電話を、男の1人が触れたのです!」

美琴「ホ、ホントなの!?」

泡浮「ええ、確かに見ましたわ。私が通報しようとこの電話を取り出したとき、男が奪おうと一瞬触ってきましたから」

湾内「そう言えば…そんなことが……」

美琴「なるほど! それじゃあそのケータイについた指紋を辿れば……」

初春「簡単に犯人が割り出せます!」

佐天「やったー! ざまあ見ろですね!」

美琴たちは歓喜の声を上げる。

美琴「黒子!」

黒子「分かりましたわ。では早速、指紋鑑定の依頼を出しましょう。………ですが、どこに?」

美琴「………」ニヤッ

52 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/09(水) 00:08:07.72 ID:eCnvMVA0 [2/3]
黒子「?」

美琴「……あの人のところなら…きっといち早く、正確な結果を出してくれるはず……」

どや顔になる美琴。

黒子「誰ですの?」

ニヤッと不適な笑みを浮かべたかと思うと、美琴は叫んでいた。

美琴「リアルゲコ太のことよ!!!!」ドーン!!!

黒子佐天初春「えっ?」

美琴「忘れたの? あの、カエル顔の先生のことよ! あの人なら、きっと……!!」

右手にガッツポーズを作り、勢いよく椅子から立ち上がる美琴。
一同は茫然としながら、彼女のどや顔を見る。

黒子「……………お言葉ですがお姉さま」

美琴「ん? 何?」

黒子「あの方は医者であって、科学者ではないのでは……?」

美琴「…………あ」

直前の体勢のまま、美琴は動きを止める。

黒子「まあ、念のため聞いてみますか」

60 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/09(水) 22:44:57.54 ID:2TB5W7w0 [2/7]
とある病院――。

黒子「ではお願いしますの」

カエル医者「うむ。分かったよ」

泡浮の携帯電話に付着した指紋の鑑定依頼を黒子たちから受けたカエル顔の医者。意外にも彼はそちらの畑にも精通していたのか、快く承ってくれた。
そして早速、黒子が空間移動(テレポート)を繰り返し病院まで携帯電話を持って来たのだった。

黒子「まさか先生が指紋鑑定出来るとは、思いませんでしたの」

カエル医者「これでも学園都市で一、二を争う技術を持っていると自負している医者だよ?」
カエル医者「科学の分野についても詳しいんだよ。医者が科学に精通していても、この街では何も不思議ではないと思うがね?」

黒子「クス……確かにそうですわね。ご協力に感謝致しますわ」

カエル医者「何これぐらい。ここには最新の機器が揃ってるからね。結果は早く出ると思うよ?」

黒子「ありがとうございます」

カエル医者「いやいや、君たちとは縁があるからね。これぐらい朝飯前だ」

黒子「感謝してますわ」

一礼し、黒子はまたテレポートでジャッジメント支部へ帰って行った。

61 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/09(水) 22:51:40.79 ID:2TB5W7w0 [3/7]
ジャッジメント第177支部――。

黒子「ただいま帰りましたわ」ブン

部屋の中央に突然出現する黒子。

美琴「あ、お帰り黒子ー」

初春「ちゃんと受け取ってくれましたか?」

黒子「もちろん。結果は早く出るそうですわ」

美琴「良かったー」

佐天「これで後は犯人を見つけるだけですね!」

美琴「泡浮さん、湾内さん、ゲコ太はとても優秀で信頼できる医者なの。だから安心して」

泡浮「はい!」

湾内「皆様、ありがとうございます!」

感謝し、頭を下げる2人。美琴たちは笑みを浮かべて彼女たちを見た。

ビーッ

その時、呼び鈴が鳴った。

初春「あ、誰か来たようですね」

黒子「どれどれ」
黒子「はい、どなたですか?」

黒子が部屋に取り付けられたテレビドアホンに応じる。

『アンチスキルのものじゃん。こちらの支部を警護しに来たじゃん』

そう言って、画面越しにIDを見せる警備員(アンチスキル)。

黒子「分かりましたわ。わざわざご苦労ですの。今迎えに参ります」

美琴「アンチスキルが来たの?」

黒子「ええ。下まで向かいに行きますわ。初春、お茶を用意しておいてくださる?」

初春「分かりました、今すぐに」ガタッ

初春に指示を出すと、黒子は下に降りていった。

62 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/09(水) 22:58:58.66 ID:2TB5W7w0 [4/7]
黄泉川「アンチスキルの黄泉川じゃん。どうぞよろしくするじゃん」

鉄装「同じく鉄装です。宜しくお願いします」

警備員(アンチスキル)の2人――黄泉川と鉄装が挨拶をする。

一同「お願いしまーす」

初春「はいこれ、お茶です」

黄泉川「サンキューじゃん」

美琴「(取り敢えずこれで、この支部が狙われる危険はもう無いわね)」

佐天「(あ、あの人、特別講習の時の先生だ……)」

黒子「わざわざ警護に着いて下さり、ありがとうございますわ」

黄泉川「取り敢えず、今この支部は私の部隊が守ってるじゃん。爆発物の反応もなし。安心するじゃん」

黒子「やはり、隣の学区の支部の爆発はテログループによるものなので?」

早速、黒子が気になっていたことを訊ねた。

黄泉川「いや、それはまだ分からないじゃん。ただ、支部に正体不明の怪しい男が不審物を届けに来たという証言は得ているじゃん。今、我々はその男の行方を追っているところじゃん」

黒子「なるほど」

美琴「あの……」

黄泉川「ん?」

美琴「もし良ければ、こちらの子たちを2人、寮まで届けてくれますか?」

黄泉川「どうした?」

黄泉川は美琴の後ろに視線を向けた。怯えたような顔つきの女の子が2人、立っていた。

美琴「実はこの子たち、さっき街で暴漢らしき男たちに襲われかけて……」

黄泉川「ほう、どこで?」

黄泉川が眉を顰めて聞く。

泡浮「18番通りです」

黄泉川「なるほど。あそこは人通りが少ないからな。男の顔に特徴は?」

湾内「それが……暗くてよく見えなかったので…」

63 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/09(水) 23:05:36.16 ID:2TB5W7w0 [5/7]
黄泉川「分かった。その件については、こちらも本部に報告上げとくじゃん」

泡浮湾内「ありがとうございます!」

泡浮と湾内がお辞儀をする。

黄泉川「鉄装、車の用意しとけ」

鉄装「え? ど、どうしてですか?」

黄泉川「私たちがこの子たちを寮まで送るからに決まってるじゃん。早くしろ」

鉄装「わ、分かりました!」

慌てるように鉄装は支部を出て行った。

黒子「申し訳ありませんわ黄泉川先生。何から何まで面倒を見てもらって」

黄泉川「なーに、能力者と言えど学生たちを守るのは教師の務めじゃん?」

ニコッと黄泉川は笑みを見せた。

黄泉川「基本的に第7学区のこの辺りは直属の管轄だから、用があればすぐ飛んでくるじゃん」

佐天「(いいなー…憧れるな、黄泉川先生…)」

佐天は目を輝かせて黄泉川を見つめる。

初春「アンチスキルの方がいれば、百人力ですもんね!」

黄泉川「よすじゃん。照れるじゃん」

Prrrrrr......

その時、黄泉川の懐の携帯電話が鳴った。

黄泉川「はい、黄泉川」

鉄装『車の用意出来ましたー』

黄泉川「了解、すぐ行くじゃん」ピッ
黄泉川「で、常盤台の寮は『学び舎の園』だったっけか?」

泡浮「あ、いえ…最近、私たちは『学び舎の園』の外の寮に移ってきたので、そちらで宜しくお願いします」

美琴「あれ? そうなんだ」

湾内「はい。寮の一部が改築中なので。一時的ですけど、婚后さんたちと一緒に移ってきたんです」

64 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/09(水) 23:13:00.90 ID:2TB5W7w0 [6/7]
黒子「ほーう…あの婚后さんも」

泡浮「なんでも『御坂さんたちが寂しいでしょうから私たちも移って差しあげましょう』とか何とか」

初春「(何という分かりやすいツンデレ)」

美琴「また挨拶に行っといたほうがいいかもね」

黒子「ですわね。また皮肉たっぷりの嫌味ばかり言われるのかもしれませんが」フン

黄泉川「じゃ、そういうことでそこの2人、一緒に来るじゃん」

泡浮「はい」

湾内「分かりました」

黄泉川「私たちはこの子らを寮まで送ったら、また本部へ戻るじゃん」
黄泉川「私の部下たちが支部を警護してるので問題は何もないと思うが、何か困ったことがあったらこの番号に連絡するじゃん」

黄泉川は懐から取り出した名刺を黒子に渡した。

黒子「恩に切りますわ」

泡浮「では、御坂さま、白井さん、佐天さん、初春さん、今日はお世話になりました」ペコ

湾内「とても感謝していますわ」ペコ

黒子「どういたしまして」

佐天「気を付けて帰って下さいね」

初春「また何か困ったことがあったら、遠慮なく言ってください」

美琴「いつでも私たちが助けてあげるんだからさ!」

泡浮湾内「ありがとうございます」

手を振る御坂たち。泡浮と湾内も手を振り返し、彼女たちは黄泉川に連れられ支部を後にした。

65 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/09(水) 23:20:31.60 ID:2TB5W7w0 [7/7]
翌日・とある病院――。

放課後、美琴と黒子はカエル顔の医者から指紋鑑定の結果が出たという報せを聞き、病院まで馳せ参じていた。

黒子「まさかこんなに早く鑑定結果が出るとは思いませんでしたわ」

美琴「さすがゲコ太ね!」

黒子「あ、いましたわ。先生~!」

遠くにカエル顔の医者の姿を視認すると、黒子が手を振った。

カエル医者「ん? おお、君たちか」

黒子「今回の件ではとてもお世話になりましたの」ペコ

美琴「ありがとうございます!」

カエル医者「あー…まあ、それはいいんだがね…?」

2人の礼を聞くと、急にカエル顔の医者の表情が申し訳無さそうに曇った。

美琴黒子「?」

黒子「どうかいたしましたの?」

カエル医者「実は……」



研究室――。

美琴黒子「指紋が出なかった!?」

美琴と黒子が同時に叫んでいた。

カエル医者「そうなんだよ」

椅子に座り、残念そうな表情を浮かべて美琴たちに話しかけるカエル顔の医者。

美琴「どうして……」

カエル医者「そう言われてもね? 採取できた指紋を調べてみたんだが、ほとんどが彼女本人のもの、または友人やクラスメイトと思われる常盤台中学の生徒のものばかりだったんだよ」

黒子「本当ですのそれは?」

カエル医者「ああ。学園都市上のデータベースを照合してみたが、男性の者と合致する指紋は無かったよ」
カエル医者「もしかしたら、泡浮くんの勘違いだったのかもしれないね? 実際は、携帯電話は暴漢に触れられてはいなかったのでは?」

66 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/09(水) 23:27:07.00 ID:6Rglqhk0 [1/3]
カエル顔の医者は顎に手を当て推測する。

美琴「でも…泡浮さんは、確かにケータイを男に触られたって…」

カエル医者「すまないね。力になれなくて。どうか許してくれないかな?」
カエル医者「これ、彼女に返しといてやってくれるね?」

泡浮の携帯電話を黒子に渡すカエル顔の医者。

黒子「……ありがとうございます。…出なかったのなら仕方がありませんわ」
黒子「…ご協力に感謝致しますわ」

カエル医者「うむ。困ったことがあったら、いつでも頼ってくれていいからね?」
カエル医者「今は学園都市も大変な時期だしね?」

黒子「…はい」
黒子「では、行きましょうお姉さま」

美琴「…………………」

黒子「お姉さま?」

反応が無いので黒子が美琴の顔を覗き込むと、彼女は納得出来ないような、そんな空気を醸し出していた。

美琴「えっ? あっ……」

黒子「帰りましょう?」

美琴「うん、分かってる……」
美琴「ありがとう……ございました…」

元気の無い声で美琴は礼を述べた。

カエル医者「うん、どういたしまして」

美琴と黒子の後姿を見送るカエル顔の医者。

黒子「泡浮さんたちには帰ったらすぐ伝えましょう?」

美琴「……ええ…」

カエル医者「……………………」

67 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/09(水) 23:36:38.83 ID:6Rglqhk0 [2/3]
ジャッジメント第177支部―。

佐天「ええ!? 指紋が出なかった!?」

美琴「…そうなの」

初春「どうしてです? 確かに泡浮さんはケータイを暴漢に触られたって…」

ジャッジメントに帰ってきた美琴と黒子から、病院であったことを聞いたが、どうにもこうにも佐天と初春は釈然としないようだった。

美琴「…でも、ケータイからは泡浮さんと女友達かクラスメイトの指紋しか出てこなかったって…」

佐天「じゃあ、泡浮さんの勘違いだったってことですか?」

美琴「うーん…」

黒子「駄目ですわね」ピッ

離れたところにいた黒子が、自分の携帯電話をポケットに収めた。

美琴「どうだった?」

黒子「湾内さんに電話をしてみましたが、今は電源を切ってるようで繋がりませんでしたわ」

美琴「そっか」

初春「でもこうなると、暴漢の行方が掴めませんね」

佐天「だよねー。また襲われでもしたりしたら危ないもんね」

黒子「…まあ、ストーカーでもない限り、18番通りに再び行かなければ大丈夫だとは思いますが…」

Prrrrrrr....

初春「あ、電話ですね。湾内さんからでしょうか」

支部に備え付けられた電話がコール音を鳴らす。

黒子「いえ、ケータイではないですし、きっと関係各所からでしょう」ガチャッ
黒子「はい、もしもし、ジャッジメント第177支部の白井です」
黒子「え?」
黒子「ああ……その件ですの」

急に表情を曇らせた黒子を見て、美琴たちは怪訝な表情で顔を見合わせる。

黒子「ええ。そうですよ…それで?」
黒子「えっ……!?」
黒子「そ、それは本当ですの!!??」

68 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/09(水) 23:44:29.62 ID:6Rglqhk0 [3/3]
美琴佐天初春「???」

電話の相手に向かって大声を上げる黒子。

黒子「ちゃんと確認を取ったのですか!?」
黒子「・・・……………そうですか」

僅かに間隔があって、彼女は落ち着いたようだった。

佐天「な、なになに? どうしたの?」

初春「何だか恐いんですけど……。最近は嫌なことばっかりでしたし」

黒子「了解しましたわ」

ガチャン

電話を切り、黒子は無言で美琴たちを見つめた。

美琴「な、何なのよ黒子? 何か言いなさいよ」

初春「もしかしてまた何か事件が起こったんですか!?」

黒子「いえ…」

美琴「じれったいわね」

黒子「実は……隣の支部が、例の、お姉さまが巻き込まれた爆発事件について調査していたんですが…」

美琴「ああ、あれね」

初春「何か分かったんですか?」

黒子「どうやらその調査の過程に於いて、固法先輩の友人の証言を取ったそうですの」

70 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/09(水) 23:51:17.46 ID:XrFe1zk0
美琴「固法先輩の!?」

初春「友達の証言ですか?」

黒子「ええ」

佐天「で、何て言ってたんですその人は?」

黒子「……爆発に巻き込まれる2日前のことでしたの……。先輩はその友達に告げたそうですわ『2人組みの男に尾行されてる』と」

美琴「何ですって!?」

佐天「ス、ストーカーですか?」

初春「で、でも、それと爆発事件とどう関係が?」

黒子「それはまだ分かりませんの。ただ、固法先輩が爆発に巻き込まれる日まで何者かに追い回されていたのは事実ですわ」

美琴「それって……つまり、そのストーカーがあの爆発を起こしたってこと?」

佐天「でも、いくら何でも店を爆破して無関係の人を巻き込んでまでそんなことしますかね?」

新たに提示された事実に、美琴と佐天が推測を述べる。

黒子「確かにそうですの。爆発の件とストーカーの件は別件かもしれませんわね」

初春「とにかく、その固法先輩の友達に会ってみましょうよ!」

黒子「…そうですわね」

71 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/09(水) 23:58:35.27 ID:iaTa.PE0
それから2時間後――。

ジャッジメント第177支部には、件の固法の友人が訪れていた。

黒子「では、詳しく話して頂けます?」

目の前に座る固法の友人と対面するようにして、黒子が訊ねる。

友人「ええ。あれは2日前だったわ。思えば、美偉はその前日…つまり3日前からずっと落ち込んでたっけ…」
友人「初めは、何かプライベートの悩みがあるのかと思って、敢えて聞かずにはいたんだけど、翌日になってもずっと同じ調子だったから、ちょっと聞いてみたの。そしたら美偉、暗い顔で……」

黒子「『2人組みの男に尾行されてる』と…」

固法の友人の言葉に続くように、黒子が確認した。

友人「ええ…」

黒子の後ろで話を聞いていた美琴と佐天と初春が神妙な顔つきになる。

初春「でも、固法先輩、ジャッジメントではそんなこと一言も…」

佐天「確かに。いつも通りきびきび動いてたよね…」

黒子「固法先輩のことですの。きっと、私たちに迷惑を掛けて仕事に支障をきたせたくなかったのでしょう」

友人「ええ。本人もその後、急に明るい顔になって『私はベテランジャッジメントよ。ストーカーが襲ってきても返り討ちにしてやるわ!』って自信満々に答えてたから……」
友人「でも……まさか…それが…あんなことになるなんて……」

徐々に固法の友人の表情が崩れていく。

友人「うわあああああああん」

両手で顔を覆いながら、固法の友人は泣き始めた。
黒子は彼女の肩に手を置き、慰めるように話しかける。

黒子「まだ、その2人組みのストーカーが固法先輩を殺したとは決まってませんの。ですが、どの道犯人は我々が見つけますので、ご安心下さいませ」

友人「わああああああああああああああああん」

ずっと我慢でもしていたのか、吹っ切れたように彼女は大声で泣き始めた。

美琴佐天初春「…………………」

72 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/10(木) 00:06:14.17 ID:a9ix2gk0
夜・常盤台中学女子寮――。

美琴「はー…結局、謎は深まっていくばかりね」

黒子「そうですわね」

208号室の自室で、美琴と黒子はそれぞれベッドの上に座りながら話していた。

美琴「喫茶『ファニーランド』でのテロ爆破事件、固法先輩の死、固法先輩の友人の証言、そして2人組のストーカー……。全部、怪しいわね。ま、今の学園都市は何が起こっても仕方がない状況なんだろうけどさ」

黒子「……精神的にも疲れてきましたわね。今日は12日ですか。事件が起こってから2日ほど経っていますが、固法先輩がいないだけで、ジャッジメントの仕事がいくぶんか滞ったような気がしますわ」

美琴「そうよね。私絶対、固法先輩を殺した犯人を見つけてやるんだから…!」

ググッと美琴は手に力を込め、宣言する。

黒子「それは私も同じですわ」

美琴「どっかのイカれたテログループか、もしくは2人組みのストーカーか…。爆死の直接的な理由としては、前者のほうが可能性高いんだろうけど…」

黒子「…ええ」

美琴「………………」

と、そこで美琴は何かを考え込むように顔を少し俯かせた。

黒子「どうしました?」

美琴「………2人組み…」

黒子「え?」

美琴「2人組みの男……」

ボソボソと呟きながら、美琴は思考を巡らせる。



  ――湾内「それが…暗くてよく見えなかったので…。ただ、男性の2人組みであったことは覚えています」――



美琴「……!!!!! ……………ねぇ黒子…」

美琴は強張った形相で黒子に視線を向けた。

黒子「何でしょうか?」

美琴「確か…泡浮さんと湾内さんも、2人組みの男に追いかけられた、って言ってなかったっけ?」

73 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/10(木) 00:14:04.04 ID:n/t9kYA0
黒子「!! ……そう言えば確かに…」

美琴「…まさかとは思うけど、固法先輩をストーカーしてたのって…」

黒子「考えられなくはありませんわ。しかし、2人組みの男など、どこにでもいますし…。それに固法先輩をストーカーしていた2人組と泡浮さん、湾内さんを襲った2人組が同じだったとして、何か理由があるのでしょうか」

黒子は顎に手を添え考えを巡らす。

黒子「固法先輩と泡浮さんたちの接点や共通点と言えば……」

美琴「いやいや。ほら、前みんなで一緒に水着になってカレー食べたりしたじゃん? 水着モデルのときの」

黒子「あ……」

黒子の動きが一瞬止まる。言われてみればそうである。確かに以前、固法と泡浮、湾内は水着モデルの時に顔を合わせているが…

美琴「これって……偶然?」

黒子「…しかし…」

ただの思い過ごしではないだろうか、と黒子が思った時、部屋の外から何やらざわめきが聞こえてきた。

ザワザワ

黒子「ん? 何だか外が騒がしいですね」

美琴「そう言えば…」

ガチャッ

ドアを開ける美琴。彼女の目の前の廊下を、常盤台中学の教師と思われる大人たちが数名駆けていった。周りに注意を向けてみると、女子生徒たちが怯えるような顔つきでヒソヒソと話し合ってる。

黒子「どうかしたんですの?」

ドアノブに手をかけたままの美琴が気になったのか、黒子が部屋の中から声を掛けてきた。

美琴「いえ、それがよく……。あ、ねぇねぇ」

美琴は近くにいた女子生徒に話しかけてみた。

美琴「何かあったの?」

女子生徒「さぁ…何だか聞いた話によると、生徒が2人行方不明になってるとか…」

美琴「行方不明!? 誰が!?」

女子生徒「1年の、泡浮さんと湾内さん、という方たちらしいですわ」

美琴黒子「!!!!!!??????」

81 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/10(木) 21:15:37.08 ID:gzASGvE0 [2/6]
常盤台中学女子寮・管理人室――。

教師「では、泡浮と湾内は?」

寮監「…一通り、寮内を探してみましたが、見当たりませんでした…」

部屋に訪れた常盤台中学の男性教師3人を相手に、寮監は神妙な顔つきで話していた。

教師「いつからいなくなったか覚えてますか?」

寮監「昨日は11日でしたか…。夕方頃に、アンチスキルの黄泉川という方がわざわざ2人を送っていただいたのは確かです。その後の巡回の時には部屋にいたのですが…」

自責の念にかられているのか、寮監の雰囲気はいつもとは違って覇気の無いものだった。

教師「なんということだ…。我々はもう一度、寮内の探索に行きますので、寮監さんはアンチスキルに通報しておいてくれますか?」

寮監「分かりました」

管理人室を出て行く教師陣。
それを見てようやく寮監は溜まった疲れを吐き出すように溜息を吐いた。

寮監「フー………」
寮監「ん?」
寮監「何だお前ら?」

うなだれた寮監が部屋の外を見ると、ドアの隙間から美琴と黒子が頭を重ねるようにこちらを覗いていた。

寮監「今はややこしいから部屋に戻っとけ」

いちいち相手をする余裕も無いのか、寮監は一言だけ注意する。

美琴「あの…泡浮さんと湾内さんが行方不明になったのって、本当ですか?」

美琴が心配そうな顔で訊ねた。

寮監「………本当だ」

黒子「何故? 一体いつ??」

黒子も冷静に訊ねたが、その口調にはどこか動揺が含まれていた。

寮監「それが分からん。昨日の最後の巡回時には確かに部屋にいたんだがな」

美琴「今朝は?」

寮監「今朝はあいつら早くから部活動だ。ほら、今は『学び舎の園』の中にある女子寮が改築中であいつら今こっちに一時的に移ってきてるだろ。だから朝早くから寮を出なければならんらしい」
寮監「よって、朝の巡回時にも朝食の時にもあの2人は既に寮内にいなかったんだ。まあ、それでも特別な理由での外出は私の許可が必要なんだが、あいつらこっちの寮生活に慣れてないのかそれを忘れて行ったようでな。が、実際はそれどころか学校にも登校していなかったようだ」

そこで一息つき、寮監は何かを思い出したように美琴たちに質す。

82 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/10(木) 21:20:55.30 ID:gzASGvE0 [3/6]
寮監「そうか、お前ら、昨日はあの子らと一緒にジャッジメントの支部にいたらしいな。2人を送ってくれたアンチスキルの人から聞いたぞ」

黒子「ええ。ちょっと問題があったので」

寮監「2人組みの男に追い回された、というやつか?」

黒子「はい」

寮監「確か、泡浮の携帯電話を指紋鑑定に出したらしいな? 結果はどうだったんだ?」

黒子「いえ、それが泡浮さんの勘違いだったらしく…男の指紋は出なかったそうですわ」

寮監「そうか……」
寮監「どうした御坂?」

美琴「え? いや、何でも……」

声を掛けられた美琴を黒子は横目で窺う。どうも彼女は今もまだ指紋鑑定の結果に納得いっていないようだった。

寮監「…………………」

黒子「実は、今日1日ジャッジメントの支部で泡浮さんの携帯電話を預かっていたので、返そうと思い昼頃、湾内さんの携帯電話に電話をしてみたんですの」

寮監「それで?」

黒子「その時は、電源を切っているのか、繋がらなかったんですの……。今までそのことを失念していましたが、もしかしたら、もうその時にはあの2人は……」

顔を暗くする黒子。

寮監「そういうことはアンチスキルに言っておけ」
寮監「それに気に病むことではないだろう。別に、あの2人が消えたのはお前のせいじゃない」

黒子の表情から彼女の心情を汲み取ったのか、寮監が声のトーンを少し優しくして言っていた。

黒子「はい……」

寮監「…御坂もな」

美琴「……………はい」

寮監「さ、私は今すぐアンチスキルに通報せねばならんのだ。気になるだろうが、2人は部屋に戻れ」

美琴黒子「分かりました……」

寂しそうな背中を見せながら、美琴と黒子は管理人室を出て行った。
受話器を耳にあてながら、寮監は2人の姿を無言で見送る。

寮監「……………………」
寮監「……あ、もしもし、アンチスキル支部ですか? こちら第7学区・常盤台中学女子寮の………」

83 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/10(木) 21:26:36.80 ID:gzASGvE0 [4/6]
1時間後、アンチスキルが女子寮に到着し、教師や生徒たちへの聴取が始まっていた。

208号室・美琴と黒子の部屋――。

黒子「それは確かですの?」

携帯電話に耳を押し付け、受話器の向こうの相手と会話する黒子。

黄泉川『だから、そうだって言ってるじゃん。昨夜、確かに私と鉄装が泡浮と湾内を寮まで送り届けたじゃん』
黄泉川『わざわざ、寮監さんにまで事情を話したじゃんよ。嘘だと思うなら、寮監さんに聞いてみればいいだろう?』

黒子「いえ、寮監からは、既にその話は聞き及んでおります」
黒子「問題はあの時、泡浮さんと湾内さんにおかしな様子は無かったということですの」

美琴「………………」

黄泉川『もしかして家出の可能性とか? そんなことするような雰囲気じゃなかったじゃん。ちゃんと笑顔で手を振ってまで分かれたじゃん』

黒子「……そうですか」

静かに、黒子は答えた。

黄泉川『とにかくこっちもそっちに向かいたいところだが、私も鉄装も他の仕事に追われててな。一応、常盤台中学も私の直属の管轄内だから、部下たちがそっちに行ってるが…まあ何か新しいことが分かったらこっちから連絡するじゃんよ』

黒子「了解しましたわ。ありがとうございます」ピッ

電話を切る黒子。

美琴「どうだった?」

黒子「どうやら寮監の話していた通り、確かに黄泉川先生たちは昨夜、泡浮さんと湾内さんをこの寮まで送り届けたようですわ」

美琴「じゃあ、帰宅途中で誰かに襲われた可能性もないってことか」

黒子「そういうことですわね」

美琴「でも何か引っかかるのよね…」

顔を横に向け、虚空を見つめるように美琴は考え込む。

黒子「え?」

美琴「黒子、泡浮さんのケータイって今、ジャッジメントの支部に保管してるんだっけ?」

黒子「? そうですけど」

美琴「あんた、今から取りに行ける?」

黒子「え? 何故ですの?」

84 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/10(木) 21:33:06.90 ID:gzASGvE0 [5/6]
美琴「いえ、取りに行ったら、そのままの足で木山先生のところまで行ける?」

黒子「木山春生のところまで? 一体何故??」

突然出て来た名前に、黒子は顔を傾げた。

美琴「きっと、アンチスキルによる私たちへの聴取が始まったら、間違いなく泡浮さんのケータイは没収されることになるわ。その前に、もう1度だけ、彼女のケータイの指紋を調べておきたいの」

黒子「で、ですがどうやって…」

美琴「今度は木山先生に指紋鑑定を依頼してもらうのよ。そしたらまた、新しいことが何か分かるかもしれない。ゲコ太が見落としてたかもしれない指紋が出てくるかもしれないし」

黒子「なるほど。ですが別に、アンチスキルに没収されてもどうせまた指紋鑑定されるでしょうし、後でその結果を聞けば宜しいのでは?」

美琴「……いえ…それじゃ…ダメな気がする…」

そこで、妙な間があり美琴は自分に言い聞かせるように呟いていた。

黒子「?」

御坂「…今やっておかないと、ダメな気がするのよ……」

今度は黒子の顔を見据え言う。
ただならぬ何かを感じ、黒子は答えていた。

黒子「……………了解しましたわ」

美琴「じゃあ、急いで行ける?」

黒子「お任せくださいまし。飛ばして行ってきますわ」

美琴「宜しく頼むわ」

それを聞いて1秒後、既に黒子は部屋から消えていた。

85 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/10(木) 21:40:06.77 ID:gzASGvE0 [6/6]
とある研究所――。

木山「こんな遅くに君が来るとはな。思ってもみなかったよ」

白衣を纏った1人の研究者――木山春生は大して驚く素振りも見せず、突然目の前に現れた黒子にそう言った。

木山「私以外の研究者が出ていたら、とっくに門前払いにされてるところだ」
木山「…と言ったところで、君なら易々と私の部屋まで辿り着くんだろうがね…」

のらりくらりとした口調で木山は語りかける。
それに対し、黒子は伸ばした両手をお腹の辺りで交差させてかしこまっているようだ。

黒子「……夜遅くに申し訳ありませんの。ですが、緊急の用事でして…」

木山「……君の顔を見れば分かるよ、白井黒子」

白衣を纏った木山に続き、黒子は廊下を歩く。
飾りっ気のない、無機質な廊下が永遠と続く。

木山「大方、今、学園都市で多発している事件に関してかな? それも、こんな夜中に1人で来たということは、よっぽど非公式にしたいことか」

黒子「お見通しですわね」

木山「まあね。で、何の用かな?」

黒子「これです」

感情を窺わせないような声で肯定した木山に、黒子は1つの携帯電話を差し出した。

木山「…携帯電話? 誰のだ?」

黒子「私のクラスメイト、泡浮万彬さんのものですわ」

木山「これをどうしろと?」

黒子の顔と彼女の手元にある携帯電話を、視線だけ流すように交互に見る木山。

黒子「泡浮さんとその友人である湾内絹保さんは、昨日の夕方、第7学区の18番通りで正体不明の暴漢2人に襲われそうになりましたの」
黒子「その時、通報しようと泡浮さんが取り出したこの携帯電話に一瞬ですが、暴漢の1人が触れたとのことです」

木山「……その指紋を採取しろとでも?」

黒子「その通りです」

木山「何故私に頼ろうとする? 専門の機関にでも頼めばいいじゃないか」

黒子「…実は既に1回頼んでますの。ですが、暴漢の男らしき指紋は見つからず、採取出来たのは泡浮さん本人のものと、友人、あるいはクラスメイトの女子生徒のもののみ…」

木山「その…あわうき、とかいう子の勘違いでは…?」

86 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/10(木) 21:49:48.47 ID:eIK6mbk0 [1/3]
黒子「…それも無きにしも非ずですが、彼女たちの口ぶりを思い出すに、勘違いとは思えませんの。今ではもう、改めて確認することが出来ないのですが……」

突然表情を曇らせた黒子の顔を見、木山は怪訝な表情を彼女に向けた。

木山「どういう意味だ?」

黒子「実は先程、泡浮さんと湾内さんが行方不明になっていることが判明しましたの」

木山「…それは……大変だな」

黒子「ええ。もうアンチスキルによる聴取が始まっていますわ。いずれこのままでは、アンチスキルに泡浮さんの携帯電話も没収されてしまいます。その前にもう1度、確かめておきたかったんですの…」

木山「それで私のところにか…。だが、別にアンチスキルに没収されても構わないのでは? いずれ、頼み込めば、またその時に出た指紋採取の結果を教えてくれるだろうに…」

黒子「いえ…」

ゆっくりと黒子は目を閉じる。

木山「…?」

黒子「…それではダメなんです。そうしてしまうと、一生、泡浮さんと湾内さんの行方を見失ってしまうような……そんな嫌な予感がして……」

木山「…………………」

友達を心配する黒子の落ち込みようは半端なものではなさそうだった。

木山「なるほどな…。事情は分かった。だが、そう簡単に私を信用してもいいのかな?」

黒子「え?」

木山「私も面倒事には巻き込まれたくないのでね。君ら子供の言を無視して、アンチスキルにこの携帯電話を提出してしまうかもしれないぞ?」

黒子「……それは、有り得ませんの…」

木山「何故、そう言える?」

黒子「……何故かは、分かりませんが…何となく…貴女なら…」

木山「………………」

語尾が弱くなった黒子を見、木山は押し黙った。
黒子は下を向き、視線を逸らし、泡浮の携帯電話をギュッと握り締めている。
しばらく、静寂がその場を支配した。

ポンッ

黒子「……え?」

突然、小気味良い音が頭の上から聞こえた。

87 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/10(木) 21:52:19.77 ID:eIK6mbk0 [2/3]
黒子が顔を上げる。木山の手が彼女の頭に置かれていた。

木山「何だかんだ言って、まだまだ君たちも子供だな。私の教え子たちを思い出すよ」
木山「だが、その心意気は感謝するよ。バレたらジャッジメントの仕事も停職になり兼ねないだろうに…」

黒子「………覚悟しておりますの」

木山「…いいよ。君たちには枝先や春上たちの借りもあるしな」

黒子「本当ですの?」パァァ

木山「フフッ…私を信じてくれ」

まるで子供を励ます親のように木山は微笑んでいた。
それに応えるように、黒子の声に張りが戻った。

黒子「ありがとうですの!」

木山「その顔だ」

黒子「え?」

木山「笑っていると、君たちも歳相応の子供に見えて可愛いものなんだが…」クスッ

黒子「ま、まあ! 失礼ですのね。これでもレディですのよ?」プンプン

顔を膨らませる黒子を見て、木山は更に笑みを零した。

木山「では、これは私が責任を持って秘密裏に鑑定しよう。遅くとも明日の朝には結果は出るはずだ」

黒子「感謝しますわ」

88 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/10(木) 21:57:21.96 ID:eIK6mbk0 [3/3]
常盤台中学女子寮・208号室――。

美琴「遅いわね、黒子の奴…」

ベッドの上に座りながら、美琴は組んだ自分の腕の上で規則的に指を叩いていた。

黒子「お姉さま!」ブンッ

突如、ベッドの側に黒子が姿を現した。

美琴「黒子!」

黒子「遅くなって申し訳ありませんの」

美琴「それはいいから。で、どうだったの?」

黒子「ちゃんと木山先生に頼んできましたわ。こちらの事情も理解してくれたようで、秘密裏に調べてくれるそうです!」

美琴「よ、良かったー……」

美琴が胸を撫で下ろす。

黒子「それで、アンチスキルによる聴取は?」

美琴「さっき、隣の部屋の生徒のが始まったばかりよ。ギリギリだったわね」

黒子「それはそれは、危ないところでしたの」

美琴「どの道、アンチスキルも寮監さんから聞けることは聞いてるだろうし、泡浮さんのケータイについては事情を話さないとこっちが怪しまれるわ」
美琴「問題は、いつ、木山先生の元からケータイが戻ってくるかね」

黒子「ええ。明日中に戻ってくれば、こちらも余計な手順を踏まずにジャッジメントの公式捜査物品として普通にアンチスキルに提出できるのですが…」

美琴「とにかく、木山の鑑定結果を待つわよ!」

黒子「はい!」

89 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/10(木) 22:03:46.22 ID:z57Z5Vo0 [1/3]
数時間後・木山の研究室――。

木山「この指紋も、常盤台中学生徒のもの…」

泡浮の携帯電話から採取した指紋を、学園都市の学生データと照合する木山。

木山「……本当に、男の指紋は無いぞ…」
木山「やはり、泡浮とかいう子の勘違いだったのでは…?」

木山は泡浮の携帯電話をもう1度見て取る。

木山「さて、次で最後だ。この指紋がまた女子生徒のものだったら、結局のところ、その子の勘違いだったということになる…」
木山「さて、何が出てくるか…」

木山はスキャンを始める。
1秒後、その指紋の照合結果に一致する者のデータがディスプレイに表示された。
木山の目が細くなる。

木山「!!!!!!!」
木山「出た……確かに、男だ。……こいつがその暴漢とやらか…」

確かめるように、木山は顔を画面に接近させる。
と、そこで彼女は何かに気付く。

木山「待てよ……この男、確かどこかで………」




「世の中には、知ってはいけないことがあるんだよ?」




木山「!!!!!?????」

刹那、木山の背中に悪寒が走った。
誰もいないはずの研究室。
突如、後ろから掛けられた声に冷や汗が背中を伝っていく感覚を味わった木山は、ゆっくりと後ろを振り返った。

木山「……あんたは…!!」

「さて、知っちゃったからには、君をどうしようかね?」

その時、木山の目に映ったのは底無しの絶望だった―。

90 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/10(木) 22:13:19.29 ID:z57Z5Vo0 [2/3]
翌日・ジャッジメント第177支部――。

黒子「遅い」
黒子「…ですわね」

美琴「そうねー…もう昼過ぎちゃったのに…」

佐天「本当に木山先生、朝までに鑑定結果が出るって言ってたんですか?」

黒子「ええ。確かにそう言ってましたわ」

初春「遅いと言えば、アンチスキルからも、泡浮さんのケータイ提出の依頼電話が掛かってきませんねー」

1日の半分も過ぎた頃、美琴たち4人はジャッジメントの支部に集まって、木山からの電話を待っていた。

黒子「そうですわね。今のところはそれでややこしいことにならずに助かってるんですが…」
黒子「まあ、バレたとして、はなから承知の上。ジャッジメントの停職ぐらい、受け入れてやりますわ」

初春「でも…白井さん1人で責任を負うのも…」

黒子「もしもの話ですの。取り敢えずは大丈夫でしょう」

初春「ならいいんですけど……」

Prrrrrrr......

その時、支部の電話が鳴った。

美琴「来た!」

佐天「電話ですよ白井さん!」

初春「あわわわわ…遂に…」

黒子「さて、木山かそれともアンチスキルか…」

黒子が受話器を手にする。それを見て一同は唾を飲む。

ガチャリ

黒子「はい、もしもし……ジャッジメント第177支部の白井ですの…」

美琴と佐天と初春は会話を聞き逃さないように、黒子の持つ受話器の側に集まり、聞き耳を立てる。

木山『木山だが…』

黒子「!!」

電話の相手は木山だった。4人が安堵の表情を見せ合う。

92 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/10(木) 22:18:20.75 ID:z57Z5Vo0 [3/3]
指紋の鑑定結果が出たのだ。
美琴たちがヒソヒソと小声で話し合う。

佐天「よかったー」

初春「先に木山先生から連絡あってよかったですね!」

美琴「そうね」

黒子が鼻に手を当て「静かに」と言うと、3人は慌てて口に手を当て押し黙った。

黒子「これはこれは。お電話お待ちしておりましたわ」

木山『そうか。遅くなってすまんな』

黒子「いえいえ。それで早速ですが…」

木山『早速だが、悪いな…』

黒子の声を遮るように、木山は淡々と言い放った。

黒子「はい?」

木山『泡浮とか言ったか』
木山『その子の携帯電話、アンチスキルに提出させてもらった』

黒子美琴佐天初春「………………え?」

余りにも自然に紡いだその口調に、美琴たちは初めその言葉を理解できなかった。

黒子「い、今、なんと…?」

木山『聞こえなかったか? 君らが私に鑑定依頼を出してきた携帯電話だが、今朝、アンチスキルに提出させたもらったよ』

やはり、それは聞き間違いではなかった。

初春「……どういうこと?」

佐天「……何で?」

美琴「………木山先生…」

3人の顔が青ざめていく。

木山『悪いね。昨日も言ったが、余計なことに巻き込まれたくなくってね。それに、わざわざ私が君ら子供の言うことを聞く義理もあるまい』

黒子「……木山っ!!」

冷静に務めていたつもりだったが、黒子はつい感情的になってしまった。

93 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/10(木) 22:27:35.94 ID:ZGtiZXc0 [1/8]
黒子「裏切ったんですのね!?」

木山『裏切る? 今言ったろう? 私に君らの言うことを聞く義理は無い。申し訳ないが、事情を説明して携帯電話はアンチスキルに提出した』
木山『鑑定結果を知りたければ、後日アンチスキルに聞くといい。私より彼らの方が、より信頼性のある鑑定をしてくれるだろうしね』

反省の色も後悔の念も窺わせない木山の声に、黒子は苛立つ。

黒子「…………っ…」

木山『じゃ、私は忙しいんでこれで』

黒子「待ちなさい!」

美琴「黒子、変わって!」

美琴が奪うように黒子から受話器をひったくる。

美琴「“先生”!! 私たちは、貴女を信じて頼んだのよ!?」

木山『超電磁砲(レールガン)か…。だからどうした。今回のように大人の言動を信じないところを見ると、まだまだ君も子供だな』

美琴「何言ってるの!? ふざけないでよ!!」

激昂する美琴。

木山『ああ、そうそう。ツインテールの子に伝えといてくれ。私が事情を説明したアンチスキルの隊員、どうやら君たちの知った顔ということで、今回のことは見逃してくれるそうだ』

黒子「……黄泉川先生ですね…」

木山『そういう訳だ。力になれなくてすまんね。それじゃ』

ガチャン

ツーツーツー……

一方的に、電話は切れた。

美琴「くっ………」

ガチャン!!

叩きつけるように美琴は受話器を置いた。
彼女は握り拳をつくる。

美琴「……木山っ……」

黒子「…こればかりは仕方がありませんわ…」

と言いつつ、黒子の声は小さく弱々しい。

94 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/10(木) 22:32:56.92 ID:ZGtiZXc0 [2/8]
黒子「それに、木山先生が言ったように、アンチスキルでも指紋鑑定はなさるでしょう…。その結果を後で聞けば…」

美琴「ダメなのよそれじゃ……」

黒子「え?」

美琴「何でか説明出来ないけど……ここで没収されたら、もう泡浮さんと湾内さんに2度と会えないような気がして………」

思いつめるように美琴は顔を俯かせた。

黒子「お姉さま…」

佐天「御坂さん」

初春「…御坂さん」

美琴「(…あの2人にはもう会えないの……?……何か…手掛かりはないのかしら……せめて暴漢2人組みの男の顔さえ分かれば……)」
美琴「!!!!!!!!!」

と、そこで彼女は何かを閃いた。

美琴「待って……」

黒子佐天初春「え?」

美琴「そう……そうよ! 手掛かりはまだあったわ!!」

突然、美琴の明るい顔が黒子たちに向けられる。

黒子佐天初春「?????」

5秒ほど前の彼女のテンションとの違いに3人は少し驚いた。

黒子「…えっと……本当ですのお姉さま?」

佐天「でも、そんなのどこに?」

美琴「防犯カメラよ!」

黒子佐天初春「!!??」

95 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/10(木) 22:37:16.34 ID:ZGtiZXc0 [3/8]
美琴「この学園都市には至る所に防犯カメラが設置されてるわ。つまり!」

黒子「…防犯カメラを調べ上げれば、泡浮さんと湾内さんが暴漢に襲われている場面を発見できると?」

美琴「その通り! よっぽどの僻地じゃない限り、学園都市には数え切れないほどの防犯カメラがあるわ」
美琴「初春さん、チェックできる?」

そう言って美琴は初春の顔を見る。

初春「え、あ…多分。中にはジャッジメントやアンチスキルでは閲覧を禁止されている場所もありますけど……普通の学生区なら、大丈夫だと思います」

美琴「よし! それよ!」

佐天「でも、たくさんある防犯カメラの記録の中から、どうやって泡浮さんと湾内さんが襲われた場面を探し出すんですか? 見つけるだけでも相当の時間を要するかと思うんですけど…」

美琴の話を聞いていた佐天が不安材料を口にする。

黒子「いえ! それなら大丈夫ですわ!」

佐天「え?」

美琴に続くように、黒子も何か思いついたのか声を張り上げた。

黒子「お忘れになりましたの? あの2人、ちゃんと仰っていたじゃありませんか」

佐天「あ…」

美琴「学園都市第7学区18番通り!!」

黒子佐天初春「そこだ!!!」

彼女たちは顔を近付けて同時に発していた。

96 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/10(木) 22:42:44.69 ID:ZGtiZXc0 [4/8]
その頃――。

インデックス「…とうまの馬鹿。何日も私を1人ぼっちにして…許せないんだよ」

ニャ~

人気のない道を、安全ピンで繋ぎとめられた修道服を纏った少女インデックスは歩いていた。
心なしか、彼女は本気で落ち込んでいるように見えた。

インデックス「帰ってきたら、頭噛むだけじゃ済まないんだから!」

ニャ~

インデックス「スフィンクスも怒ってるの? スフィンクスも一緒にとうまにお仕置きするんだよ」

ニャ~

本当に怒っているのかは定かではなかったが、スフィンクスは鳴いて答えた。
と、その時だった。


ドガアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!


インデックス「ひっ…!」ビクッ

突如、轟音が響き渡った。
インデックスが肩を震わせる。

インデックス「…遠くで聞こえたけど、きっとまた爆発なんだよ」

ニャ~

怯えるようにインデックスは立ちすくむ。

インデックス「きっとまたどこかでテロが起こったんだ……」
インデックス「正直言って怖いんだよ……とうま……」

彼女は数日前のことを思い出す………。

97 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/10(木) 22:47:18.98 ID:ZGtiZXc0 [5/8]

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ステイル「インデックス、君も僕と一緒に学園都市を出るんだ」

必死の形相で、インデックスに話しかける1人の男。黒い神父服を纏い、耳にピアスの束をつけ、目の下にバーコードのような刺青を入れた彼の名は、魔術師ステイル=マグヌスだった。

インデックス「嫌なんだよ! とうまは絶対戻ってくる、って言ったんだよ!」

しかし、インデックスはステイルの言葉を聞き入れようとしない。

ステイル「今、この学園都市には、色んな魔術師たちも潜り込んでる、って話だ。それだけじゃなく、世界中のテログループや工作員、特殊部隊もいるらしくって危ないんだ!」
ステイル「僕も色々と残って調べたいところだが、今は一時避難するのが先決だ!! 頼む! 一緒に来てくれ!!」

もはや懇願にも似た言葉を発すステイル。それでもインデックスは了承しようとしない。
彼女の頭にある最優先事項はたった1つ――1人の少年の存在だった。

インデックス「とうまは帰るって言ったんだよ! それまで私も待つんだよ!!」

ステイル「…っ……」

『とうま』という名前を出されては、もう説得の余地は無かった。
唇を噛むようにステイルは、言葉を搾り出す。

ステイル「分かった…。僕は先に学園都市を出る…。あの少年に会って帰国する算段が着いたら連絡してくれ。すぐに迎えに来る(本当は今すぐ連れて帰ってやりたいが……)」

自分の非力さにやり切れなさを感じているのか、ステイルは本当に悔しそうな表情を浮かべた。
彼としては、インデックスを縛ってでも、現在危険な状況下にある学園都市から連れ出したかったのだ。だが、インデックスの1人の少年への想いを断ち切ってまではさすがに出来なかった。

インデックス「……分かったんだよ…」

インデックスは静かに一言だけ呟いた。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



98 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/10(木) 22:52:20.68 ID:ZGtiZXc0 [6/8]
インデックス「……………とうま…」

ドンッ

インデックス「あ…ごめんなさいなんだよ……」

下を向いて歩いていたのか、インデックスは前から歩いてくる人間に気付かず衝突してしまった。

「……………」スタスタ

インデックスと衝突した男は足早に去っていった。

インデックス「ぶー愛想悪いなあ……」

インデックスはふてくされる。続き、彼女は正面を見やる。

インデックス「あーお腹すいたぁー」

彼女はお腹に手を当てる。


ヌチャ


インデックス「ん?」

気味の悪い感触と音がして、インデックスは咄嗟に両手を顔の前まで上げ注視してみた。

インデックス「…………何これ?」





インデックス「………血?」





自分のお腹を見るインデックス。
彼女の真っ白な修道服は鮮やかなまでに赤く彩られていた。

100 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/10(木) 23:02:19.41 ID:ZGtiZXc0 [7/8]
ニャ~~

不気味な液体の感触が嫌だったのか、スフィンクスがインデックスの胸の中から飛び出し、そのまま遠くへ走り去っていった。
しかしインデックスはもう、スフィンクスのことまで気がいっていなかった。
彼女は赤く染まった自分の両手とお腹を交互に見る。





インデックス「……………まずいかも……」





急速に身体から力が抜けていくのが、感じられた――。

117 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/11(金) 22:46:26.89 ID:IjY23PE0 [2/2]
ジャッジメント第177支部――。

美琴「どう? 何か発見した?」

初春「うーん……ダメですね…」

ジャッジメントの本部サーバーから、監視カメラのモニターセンターにアクセスし、学生区の監視カメラの録画記録を確かめることになった初春。
が、しかし、数時間経っても目星の映像を発見することが出来ず途方に暮れていた。

佐天「えっと、本当に第7学区の18番通りですよね?」

美琴「確かにそうよ。それは何度もあの2人も言ってたじゃない」
美琴「私もあの2人をここに連れて来たのは一昨日11日の放課後だった。だから……」

黒子「11日の15時から18時までの18番通りの映像を調べ上げていけば、泡浮さんと湾内さんが暴漢に遭遇した場面を捉えられるはず」

初春「そうすれば、その暴漢2人、引いては最近多発してる誘拐事件の犯人たちを見つけることができる、と」

美琴「…の、はずなんだけどね…」

4人はパソコンの前で同時に溜息を吐く。

初春「見つかりませんね…。4人で隅々までチェックしてるのに……」

黒子「恐らくアンチスキルも今頃、監視カメラの録画記録を調査してるところでしょう」

佐天「でも、それで見つからなかったら結局……どうなるんでしょう?」

初春「まさか、全て泡浮さんと湾内さんの狂言だったとか…?」

黒子「しかしそんなことして何の意味があるのやら…」

佐天「でも、結局カエル顔の先生の所では、泡浮さんのケータイから暴漢らしき男の指紋は見つからなかったんですよね?」

美琴「……そうだけど」

佐天「まさか…2人して、誘拐事件を装った家出とか…?」

美琴「ない。絶対ないわ。あの怯えよう、覚えてるでしょ? あれが狂言だったとは思えない」

佐天「確かに……」

美琴「絶対犯人はいる。今も恐らくは泡浮さんと湾内さんは誘拐された恐怖で怯えてるはず。いえ、それだったならまだいいけど、もし………」

そこまで言って言葉を切る美琴。
彼女が何を言おうとしていたのか、大体予測がついていたのか黒子たち3人も一斉に静かになった。

119 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/11(金) 22:52:53.24 ID:1miQ6Eo0 [1/2]
佐天「…………………」
佐天「……あたし、ちょっと聞き込みに行ってきます」

と、そこで何かを思案していた佐天が真っ先に口を開いた。

美琴黒子初春「え?」

佐天「大切な友達2人がさらわれたっていうのに、何も出来ずにいるなんて我慢できません」

勢いよく佐天は立ち上がる。

佐天「だからあたし、18番通りに行って誘拐事件の聞き込み調査に行ってきます!」

美琴黒子初春「えええっ??」

初春「ダ、ダメですよ佐天さん! あそこはただでさえ人通りが少ないんですよ! もし、佐天さんまで誘拐犯に襲われたらどうするんですか!?」

黒子「そうですわ。それにテロや爆発の危険だってあるのに……」

必死に佐天を止めようとする黒子と初春。しかし、そんな2人の心配をよそに彼女は既にやる気満々だった。

佐天「大丈夫大丈夫! あたし、こう見えて強いですから!」エッヘン

そう言って腰に手を当てる佐天。

初春「でも……」

美琴「ダメよ佐天さん」

佐天「え?」

と、そこで美琴が横から割って入った。

美琴「そんな危ない所、行かせられない」

佐天「いや、だって……」

美琴「………………」ジッ

佐天「うっ…」

真剣な面持ちで美琴は佐天を見つめる。彼女の気迫に呑まれたのか、佐天は言葉に詰まった。

120 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/11(金) 22:58:08.10 ID:1miQ6Eo0 [2/2]
しかし、美琴はすぐに笑顔を見せた。

美琴「だから、私も一緒に行くわ」ニコッ

佐天「えっ?」

美琴「私も何かしたいしね。一緒に行きましょう」

佐天「御坂さん!」パァァ

黒子「しかしお姉さま…」

美琴「大丈夫。無茶はしないから。黒子と初春さんは、引き続き監視カメラのチェックお願い」
美琴「ね!」

ウインクをしてみせる美琴。

黒子「………………」

黒子は一度溜息を吐くと、口元を緩めた。

黒子「分かりましたわ。全身全霊を込めて頑張らせて頂きますの」
黒子「ですわよね初春?」

黒子は椅子に座る初春の肩にポンと手を置くように訪ねる。

初春「はいもちろん! 何時間でも何日でも何ヶ月でも何年でもやってみせます!」

威勢良く初春は答えた。

美琴「よし! じゃあ絶対に泡浮さんと湾内さんの誘拐犯を見つけるわよ!」

黒子佐天初春「はい!!」

121 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/11(金) 23:06:05.02 ID:w47THlw0 [1/2]
それから2日間、美琴と佐天は18番通りを中心に聞き込みを行い、黒子と初春はジャッジメントでの業務を監視カメラのチェックにひたすら費やした。しかし………

第7学区・18番通り――。

佐天「…っていう事件なんですけど、何か知ってることとかありませんか?」

学生「そう言われてもなー」

通りを歩いていた男子学生に聞き込みを行う佐天。あまり人気の無い通りだったので、貴重な情報を逃すまいと彼女は詰め寄るように訊ねていた。

佐天「何でもいいんです! どんなに些細なことでも!!」

学生「俺も最近、怖くてあんまり外出しないんだよ。ここに来たのだって久しぶりだし…。悪いな」

そう言って、学生は去っていった。

佐天「……ダメか。やっぱり目撃情報すら手に入らない。ま、そんなのあったら、アンチスキルが既に誘拐犯を捕まえてるよね…」

美琴「………………」

その日の聞き込みも終え、2人は支部への帰路に着く。

佐天「2日合わせて既に50人以上に聞き込みを行いましたけど、全然手掛かり見つかりませんね」

美琴「…………………」

佐天「まあ、普通の学生がそんなこと知ってるはずないですもんね」

佐天は苦笑いする。と、その時、美琴がボソッと呟いた。

美琴「…普通の学生、ならね」

佐天「え?」

美琴「ごめんなさい佐天さん。ちょっと私、用事あるからさ。先に支部まで戻っててくれる?」

佐天「用事?」

美琴「そ! ちょっとしたことだから」

美琴は片目を閉じ、顔の前で手を合わせる。

佐天「……それぐらいは別にいいですけど」

美琴「ごめんね! じゃ!」

佐天「あ、御坂さん」

呼び止める間もなく、美琴は走っていった。

122 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/11(金) 23:16:46.66 ID:w47THlw0 [2/2]
ジャッジメント第177支部――。

佐天「ただいま帰りましたー」

黒子「お帰りなさい」

初春「お帰りなさい佐天さん」

佐天が支部に戻ると、黒子と初春の2人はパソコンに向かってキーボードを叩いていた。
2人とも忙しいのか、振り返ろうとしない。

黒子「どうでしたか?」

黒子がパソコンの画面を眺めたまま、佐天に問い掛ける。

佐天「ダメです。全然ダメ。手掛かりなんて何1つ得られないですね」

お手上げだ、と言うように佐天はソファに腰かける。

佐天「白井さんはどうですか?」

黒子「今、黄泉川先生から送られてきたアンチスキルの一連の誘拐事件の資料をチェックしていますの」

佐天「へー、どうです?」

黒子「大したことは分かりませんが…ここ2、3週間で30名近くにものぼる学生が行方不明になっておりますの。一応、僅かながら誘拐現場の目撃談もありますが、犯人も一筋縄ではいかないのか手掛かりとなるものは何1つ残っていません」

佐天「そうなんだ。他には何か有力な情報とかないんですか?」

黒子「それがまったく。どの学生にも共通点は見当たりませんし。被害者たちの能力レベルも、無能力だったりレベル1だったり、3だったりと様々。誘拐現場も学園都市全域に及んでますわね」
黒子「まあ、同じ地区の学生ばかり狙っていても、足がつくでしょうし…。ですが、ここまでしてアンチスキルが手掛かり1つ得られないということは、よっぽど相手は手馴れているということ」

多少、苛立ちを思わせるような口調で説明する黒子。どうも犯人発見の決め手となる情報が少ないためか、自分で喋っていてイライラしているようだ。

黒子「しかも、誘拐された学生の中にはレベル3の強能力者もいます。と、いうことは誘拐犯はレベル4以上の能力を持つ可能性も高いですわ。しかし、それほどの高位能力者なら、例えば、統率のとれた組織を使えば1度にもっと複数の学生を短期間で誘拐することも可能なんでしょうけど、そうしないということは敢えてそこに目的があるのか、それともそんな組織を持つほどの余裕もないのか……」

佐天「でも! レベル4以上の能力者だとしたら、結構絞れてきませんか!?」

飛び上がるように大声で推測を声にする佐天。

黒子「いえ、あくまで可能性の話ですの。もしかしたら、学園都市外部の人間の仕業かもしれませんし。アンチスキルの捜査がいまいち進まないのも、外部の治安機関との連携がいまいち進まないから、という理由があるからかもしれません」

佐天「………結局、何1つ手掛かりが見つからない、ってことかぁ」

力が抜けたように佐天はソファにグタッと背中をもたれかける。

123 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/11(金) 23:23:30.59 ID:GVqSu3I0
黒子「それにしても、こちらの捜査資料……泡浮さんと湾内さんについての証言が載ってませんね」

佐天「え?」

黒子「私とお姉さまが、寮でアンチスキルから聴取を受けた時、泡浮さんと湾内さんが暴漢に襲われた時のことについて証言したのですが、その記録がここに記載されてませんの」
黒子「まあ…ここに載せるほど大事な情報でもないと判断なさったのでしょうが……」

佐天「…ふーん」
佐天「あ、初春はどーお?」

佐天は今度は初春の方へ向かう。彼女は監視カメラの録画映像のチェックを行っているようだった。

初春「うーん……」

佐天「どうしたの?」

初春「佐天さん、何か変だと思いませんか、この映像?」

顎に手を添えながら、初春は首を傾げる。

佐天「え? どれどれ?」

佐天は初春が見ている画面を覗き込む。

初春「泡浮さんたち、確か『16時から17時頃の間に暴漢に襲われそうになった』って言ってましたよね?」

佐天「うん」

初春「これ、16時20分頃の映像なんですけど…ここ、分かりますか?」

佐天「え?」

初春「見えました?」

佐天「え? いや、分かんなかった…」

初春「じゃあもう1度」

巻き戻し、再生する初春。

初春「ほら…16時21分34秒のとき、少し画面が揺れているように見えません? 何かノイズが走ったような……」

目を細め佐天は画面を凝視する。路地裏の見える18番通りの一角。誰も映っていないが、夕方の歩道の映像が見てとれた。

佐天「あ…確かに」

初春「ですよね?」
初春「それで……」

125 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/11(金) 23:30:25.29 ID:jSrIUMI0 [1/2]
今度は早送りをし、しばらくして初春は再生ボタンをクリックした。

初春「16時26分50秒です。…ほら!」

佐天「あ」

初春「普通に見てたら気付きませんけど、何かまたここでも画面が揺れたというか、ノイズが走ったと思いません?」

佐天「うーん…微妙だなあ。それぐらい、よくあることなんじゃないの?」

初春「でも気になるんですよね……」

また首を傾げると、初春は立ち上がった。

佐天「ん? どうするの?」

初春「ちょっと、アンチスキルの方にも連絡してみます」
初春「えっと…白井さん、黄泉川先生から貰ったケータイ番号を書いた紙、どこです?」

黒子「白板に貼ってありますの」

パソコンを見ながら黒子は答えた。

初春「あ、あったあった本当だ」

ホワイトボードから紙を取り、それを見ながら初春は電話の番号を押す。

ピポパポ

Rrrrrrrrrr...

初春「あ、黄泉川先生ですか? ジャッジメント第177支部の初春ですけど…ちょっと気になることがあって…」
初春「ええ、そちらにも少し確認してほしいことが……」

ジャッジメントとして仕事をこなす初春と黒子を、佐天は交互に見る。

佐天「(さすが2人とも…)」
佐天「にしても、御坂さんはどこに行ったんだろ?」

126 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/11(金) 23:37:45.77 ID:jSrIUMI0 [2/2]
第7学区・某所――。

スキルアウト「ボ、ボ、ボス!! ボスぅぅぅ~!!!!」

リーダー「ああ?」

スキルアウト「た、大変です!!」

リーダー「どうしたっつぅんだよ騒がしい」

学生区から外れた場所にある廃ビルの一室。10人も満たないが、スキルアウトの不良たちがたむろっていた。
急いで駆けてきたスキルアウトの1人は息を切らしながら、ソファに座るリーダーの前で膝をついた。

スキルアウト「ハァ…ハァ…大変ッス!」

リーダー「だから、何だよ?」

スキルアウト「と、常盤台の……」

リーダー「?」

スキルアウト「常盤台のレベル5、超電磁砲(レールガン)が1人で乗り込んで来ました!!」

リーダー「なにぃっ!?」

ざわめくスキルアウトたち。
リーダーは無意識に立ち上がっていた。

リーダー「な、何で超能力者がここに……」

美琴「さあ、何故かしらね」

一同の注目が部屋の隅に注がれる。そこには、1人の少女が立っていた。
常盤台のエース・超電磁砲(レールガン)こと御坂美琴だった。

リーダー「超電磁砲……」
リーダー「な、何しにきやがった!? 無能力者相手にウサ晴らしにでもしにきたか?」

強がっているが、リーダーの顔は慄いている。

美琴「いえ、聞きたいことがあるの」

リーダー「あぁ?」

美琴「第7学区にはびこるスキルアウトのグループの中でも、あんたたちは普通のゴロツキとは違うみたいね」

リーダー「………………」

黙り込むリーダー。美琴はそんな彼の様子を気にする素振りも無く続ける。

127 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/11(金) 23:45:30.62 ID:XutmIr.0 [1/2]
美琴「隠したって無駄だから。ちょっと不正な手段を使ってスキルアウトの独自ネットワークを盗み見させてもらったけど、あんたち、今まで色んな裏組織に雇われてたみたいね」

リーダー「で、だから何だってんだよ?」

美琴に攻撃の意思が無いのを感じ取ったのか、リーダーは既に落ち着いて話に応じていた。

美琴「要するにあんたたちは、ヤバメな犯罪グループの使いぱっしりをしてるってことでしょ?」

リーダー「ふん。よく調べたもんだ。が、だったらどうした? 俺たちのようなはぐれ者は生きてくだけで精一杯なんだよ。お前みたいなお嬢様と違ってなあ!!」
リーダー「そのためならどんな組織だろうとパシリぐらいしてやるぜ」

リーダーは悪ぶることなく、寧ろそれが自慢であるかのように答える。

美琴「別にあんたたちの犯罪自慢を聞きにきたわけじゃないわ」

リーダー「そうかい、じゃあ何しに来た?」

美琴「………最近、この辺りで誘拐事件あったのよ。私と同じ常盤台の生徒2人が失踪したって……」

リーダー「………………」ピクッ

僅かに、リーダーの眉が動いた。

美琴「何か、知ってるわね?」

ドスの利いた声を響かせ、美琴はリーダーを睨みつけた。
同時に、彼女を囲っていたスキルアウトたちが殺気立つ気配が部屋中に広がった。

美琴「…連れさられたの、私の友達なのよ…」
美琴「知ってること、洗いざらい全部話さないと痛い目に遭うわよ」

しばらく、その場に静寂が舞い降りた。
スキルアウトたちはいつでも美琴に飛び掛ることも出来たのだが、美琴とリーダーの膠着の前をして叶わずにいた。

リーダー「………………」
リーダー「ふん」

美琴「?」

リーダー「何しに来たかと思えば、そんなことか」

ややあってリーダーはつまらなさそうに口を開いた。
ソファにドカッと腰を降ろし、リーダーは腕組みをする。

美琴「そんなことですって?」キッ

リーダー「お前はどうも俺たちのことを理解してないようだな。俺たちは、学園都市内で蠢く様々な裏組織の雇われ傭兵みたいなもんだ。それで生計を立ててんだ。分かるだろ? 雇用主との間には毎回、守秘義務が発生する。で、あるのに、俺たちがその契約を破って秘密をペラペラ喋ってみろ。もう誰からも信用されなくなって仕事も来なくなっちまう」

美琴は睨んだままリーダーの話に耳を傾ける。

128 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/11(金) 23:52:32.16 ID:XutmIr.0 [2/2]
リーダー「そういうわけで、俺はお前に仕事のことに関しては何も言うことが出来ない。今、俺たちが誰かに雇われているのか、それとも雇われていないのか、たとえ雇われていたとしても、その雇用主は誰なのか、その仕事内容はなんなのか。…それら全部、打ち明けるなんて馬鹿な真似はしねーんだよ」

美琴「………………」

リーダー「残念だったな。帰んな超電磁砲。ここにいても埒はあかねーぞ、ククク」

リーダーの笑い声に反応し、周りのスキルアウトたちが「そうだそうだ」「帰れ帰れ」と野次を上げる。

美琴「………そう」

リーダー「世間知らずなお嬢様は家に帰って誘拐犯にビビッて泣いてりゃいいんだよ、あっはっはっは」

口を大きく開けて笑うリーダー。

スキルアウト「ボス!!」

リーダー「あ?」

部下から掛けられた声に、リーダーが閉じていた目を開いた瞬間だった。
そこで彼が見たのは、剣のようなものを持って突進してくる美琴の血気迫った顔だった。

リーダー「!!!!!!!!!!」

ジャキン!!!

美琴が砂鉄を集めて作った剣が、鋭い音を響かせ紙一重でリーダーの顔の側の壁に突き刺さる。

リーダー「……は……あ……が…」

ソファに左足だけを掛け微動だにしない美琴。
あまりの出来事に、リーダーは言葉を失ってしまう。

スキルアウト「てめぇ!!」

怒ったスキルアウトたちが美琴に殴りかかろうとする。

ビリビリビリッ!!!!

スキルアウト「ぐああっ!!!!」

美琴「邪魔しないでくれる? 今、こいつと1対1(サシ)で話してんのよ。次、邪魔したら本気でいくからね」

尖ったような美琴の視線と言葉に、スキルアウトたちは蛇に睨まれた蛙のように動けなくなった。

美琴「さて……ボスさん?」

美琴は砂鉄剣を壁から抜き取ると、今度はそれをリーダーの顔の前に突き出した。

リーダー「ひっ!!」

129 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/12(土) 00:00:08.34 ID:OCgUDnE0
美琴「別にね。私は、貴方たちを傷つけようとか、アンチスキルに通報しようとか、そんな気はないの。ただ貴方の反応次第では、例外もあるけどね…」

リーダー「れ、例外……?」ブルブル

美琴「私が今、知りたいこと教えてくれる? そうしたら、口の中を剣で貫かれて死ぬなんて無残なことにならないと思うわよ?」

リーダーは美琴の顔を見る。本当に美琴に殺す気があったのか無かったのか分からなかったが、彼女の言葉には、全てを従わせるような強制的な力があった。

美琴「教えてくれないならもういいわ。もう用済みよ」

リーダー「!!!!!!!」

美琴は剣を振り上げた。

リーダー「ま、待て待て!!」

美琴「…何よ?」

間一髪、砂鉄剣が虚空で動きを止める。

リーダー「わ、分かった。教える。教えるから、それをしまってくれ」

美琴「本当?」

リーダー「ほ、本当だ」

美琴「嘘じゃない?」

リーダー「う、嘘じゃねぇ…。俺も、今回の雇い主とだけは早く縁を切りたいと思ってたんだ…。だから……」

目を瞑り、両手を振って懇願するリーダー。

美琴「そ。じゃあ教えてくれる?」

そう言って、美琴は砂鉄剣をリーダーの顔から離した。

リーダー「………と、言っても、あまり詳しいことまでは知らない」

美琴「え?」

リーダー「い、いやいや本当なんだ。と、とにかく聞けよ」

美琴「分かったわ」

美琴が1歩下がると、リーダーは一息つき、やがて話し始めた。

130 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/12(土) 00:08:12.08 ID:HOZ8Lek0 [1/2]
リーダー「……雇い主、って言っても実際には会ったことがないんだ。今回、俺らが請け負ってる仕事は全部、電話を介して指示される」

美琴「ふーん」

リーダー「仕事内容は、学園都市内の逃走ルートを考えることだ」

美琴「どういうこと?」

リーダー「例えばだ。もし誰かを誘拐するとした場合、その地域の中で一体どの場所が、誘拐を行いやすいのか。そしてどのルートを使って逃げれば、人目に触れにくく監視カメラの死角をつくことができるのか」
リーダー「そういうのを考えるのが俺たちの役目なんだ。俺たちは今まで色んな組織と関わって、そういう裏の道には詳しいからな。おあつらえ向きの仕事ってわけだ」

美琴「じゃあ、あんたたちが考えた逃走ルートを使って誘拐犯たちは学園都市の学生たちをさらってる、ってわけ?」

リーダー「多分な…と言うのも、俺たちは逃走ルートの情報を提供するだけで、実際に犯行には加わってないから細かいことまでは分からねぇ」

まるで自分は主犯じゃないですよ、と言うようにリーダーは語る。
美琴にしてみれば、間接的に関わっているだけでも本来なら許せなかったが。

美琴「………………」

リーダー「だが、奴を辿るのは難しいかもしれないぜ?」

美琴「どうして?」

リーダー「あいつ、念を入れているのか、俺たちには誘拐実行現場は正確に伝えねぇんだ。毎回、『○○学区の○○周辺から、××学区の□□周辺まで逃げられるルートを教えろ』っていう風に指示してきやがる」
リーダー「始めのポイントと終わりのポイントを曖昧にしやがるんだ。だから、毎回どこで誘拐を行っているのかも分からないし、どこに学生たちを連れ去っているのかも分からねぇ」

美琴「そうなんだ」

リーダー「これを見ろ」

そう言ってリーダーは懐から1枚の地図を取り出すと、ソファの側に置かれてあったガラスの机の上にそれを広げた。見たところ、第7学区の地図のようである。

美琴「これって……」

リーダー「今言った、逃走ルートのいくつかだよ」

地図には、第7学区をまたぐように、何本かの歪つな線が書き込まれていた。そのどれにも共通しているのが、線の端と端がそれぞれ同じ色のマークで囲まれていることだ。その両端のマークの横には、「A-25」など同じ英数字が並んで書かれてある。ただし、マークの色や英数字は線によってそれぞれ違うようで、隣の線を見てみると、その両端のマークの横には「D-14」と書かれてあった。が、中には英数字が書かれていない線もあり、どういう風に区別されているのか美琴にはさっぱり分からなかった。

リーダー「この地図を元に、雇用主に逃走ルートを教えているんだ。もちろんこの地図の中に書かれてあるのは、盗まれた時のためにと、ダミーのルートも書き込んであるがな」

美琴「ふーん。この両端のマークは何? 線によって色が違うけど」

リーダー「それは単に、スタート地点とゴール地点を表してるだけだ。別にどっちがスタートでどっちがゴールかはどうでもいいから、同じ線の両端にあるマークは同じ色にしてある。ただ、ややこしいから別の線ではそれぞれ他の色でマークしてるけどな」

美琴「じゃあこの『A-25』とか『D-14』って英数字がマークの横に書かれてる線は何?」

次々と質問を繰り出す美琴に、リーダーは「遠慮のないやつだ」と1拍置いてから説明を続けた。

131 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/12(土) 00:15:30.20 ID:HOZ8Lek0 [2/2]
リーダー「それは地下のルートだ」

美琴「地下?」

リーダー「ああ。主に今では使われなくなった『共同溝』を利用したルートだ。ただし、ルートによっては、今も使われている共同溝を一部に組み込んだものもある。まあ、ちゃんと監視カメラやセキュリティを避けたエリアを組み込んでるし問題はないんだがな」

美琴「へえ」

美琴は感心したような声を上げる。意外と緻密に考えられているらしい。

リーダー「で、その『A-24』だの『D-14』って言う数字は入口のことだ」

美琴「入口?」

リーダー「ああ、入口と言っても大層なもんじゃなく、ただのマンホールなんだけどな。その数字はマンホールの蓋に刻まれてるものだ」

美琴「あ、そうなんだ」

リーダー「マンホールって言っても、設置箇所は色々あるようでな。例えば、人目がつくような大通りの道路にあるマンホールは『A-○○』、人目につかないような裏路地にあるマンホールは『D-○○』って言うようにアルファベットでランク分けされてるんだ。『A』ランクのマンホールは今でもバンバン使われている共同溝に繋がってるが、逆に『D』ランクぐらいになると、今では使われていない、点検もほとんど行われていない共同溝に繋がってる」

美琴「じゃあ、アルファベットの後ろにくっついてる数字のほうは?」

リーダー「それは単に、『同じ数字が刻まれたマンホールとマンホールは一直線で繋がってますよ』って印だ。まあ実際には曲がり道もあるし、階段の上り下がりもあるんだけどな」

美琴は地図の端から端までを見渡す。
『A-24』だの『B-32』だの『A-11』だの『C-43』だの『B-21』だの『D-02』だの『D-16』だの様々なルートが見て取れる。その中でも、スキルアウトたちが根城にしているこの廃ビルの1番近くにあるのは、『D-14』マンホールらしい。恐らくそのマンホールも日頃から利用しているのだろう。試しに『D-14』の線を辿っていくと、終点は第7学区の裏路地の一角だった。

美琴「よくそこまで調べたわね」

リーダー「これだけやっとかねぇと仕事は来ないからな」

美琴「(なるほど。随分と本格的に調査されてるわね。…さて、誘拐犯の足跡を辿るには、どのルートが使われたのか聞くのが一番だけど……もっと手っ取り早い方法の方がいいわよね)」

リーダー「これが俺たちが知ってる全てだ」

美琴「…分かったわ、教えてくれてありがとう」
美琴「言った通り、あんたたちのことは見逃してあげるから安心して。それに、すぐにでも誘拐犯の尻尾捕まえてこれ以上好き勝手にはさせないわ」

リーダー「そ、そいつは助かるぜ。電話だけの接触とは言え、あいつは声だけで他人を殺せそうな恐ろしい奴だからな。正直、そんな人間とこれ以上会話するなんてこっちも懲り懲りだったんだよ」

美琴「だから1つ頼まれてくれる?」

132 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/12(土) 00:22:29.19 ID:B6VnT4Y0 [1/2]
リーダーの言など知ったこっちゃない、と言うように美琴は発していた。

リーダー「え?」

美琴「いや?」

そう言って美琴は再び砂鉄剣を胸の前にかざす。

美琴「あんたたちもその雇用主とは縁を切りたいんでしょ? だったら、そのためにも私が全力を尽くしてあげるから、ちょっとぐらい協力しなさいよ」

リーダー「なななな何だよ? 何が目的だよ?」

目の前にかざされた砂鉄剣の切っ先を見つめるようにリーダーは問う。

美琴「その誘拐犯をおびき出して欲しいのよ」

リーダー「はぁ!?」

美琴「電話番号は知ってるんでしょ? だから、奴らをおびき出すことぐらい出来るでしょ?」

リーダー「バ、馬鹿言うなよ! 言っとくけど、お、俺はあいつに会うつもりとか全くねぇからな!!」

リーダーはうろたえるように必死に断ろうとする。

美琴「大丈夫。会うのはあんたたちじゃないから」

リーダー「え?」

美琴「じゃ、頼んだわよ」

それだけ言って、美琴は踵を返した。
さんざん好き勝手にされたのに、悠然と部屋を出て行く美琴をスキルアウトたちはただ黙って見送ることしか出来なかった。

161 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/12(土) 21:23:03.49 ID:mvmfvdw0 [2/2]
ジャッジメント第177支部――。

美琴「たっだいまー」

佐天「あ、帰ってきました!」

ドアを開け、美琴が室内に入ってくる。
部屋の中央では、黒子と佐天と初春がお菓子を食べながら一服していた。

黒子「随分と遅かったですわね」

佐天「結局、どこ行ってたんですかあの後?」

美琴「ん、ちょっとねー」

黒子「………………」

軽く美琴は受け流す。

初春「あ、御坂さん、これ食べます?」

美琴「ありがとう初春さん」
美琴「で、どう? そっちは何か発見した?」

椅子に座り、初春から受け取ったミニサイズのバームクーへンをほお張る美琴。

黒子「進展なし、ですわ」

美琴「そっか……」

黒子「アンチスキルから送られてきた資料をもう1度隅から隅までチェックして、書庫(バンク)の中から、誘拐を実行するのに都合の良い能力を持つ学生を探してみましたが、結局みんなアリバイがあって見つかりませんでしたの」

黒子は紅茶を飲みながら説明する。

黒子「固法先輩が巻き込まれた爆発事件も同様に調査してみましたが、目ぼしいことは見当たらず。一応、アンチスキルが容疑者を拘束したという話は聞いていますが、ただ偶然現場近くにいた万引き犯である可能性が高いとか」

初春「私は、監視カメラの映像で気になることを黄泉川先生に聞いてみたんですけど……」

続き、初春が会話に入ってきた。

美琴「気になること?」

美琴は眉をひそめる。

初春「はい。4日前の11日、第7学区18番通りの映像なんですけど、16時21分34秒と16時26分50秒のところで微妙にノイズが走って画面が揺れるんです。ほんと、よく見ないと気付かないんですけど……」
初春「で、アンチスキルの黄泉川先生にも確認してもらったんです」

美琴「それで?」

162 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/12(土) 21:30:51.78 ID:hi1q2i60 [1/2]
初春「ただ、黄泉川先生が言うには『たまにこういうことがある』らしくて…」

佐天「あたしと御坂さんの聞き込みでも、手掛かり1つ見つけられなかったし、全然進みませんね……」

4人は無言になる。
彼女たちも所詮、能力以外は普通の女子中学生。出来ることはどうしても限られてくる。

美琴「(やっぱり……頼りはあれしかないか…)」
美琴「(みんなには黙ってて悪いけど……)」

顎の下で手を組み、チラッと美琴は黒子たちの顔を一瞥する。

黒子「取り敢えず、今日の仕事はこれで終わりにしましょう」

佐天「そうですね」

初春「分かりました」

一服も終え、3人はソファから立ち上がる。

美琴「……………」

と、いつまでも黙りこくり座ったままの状態の美琴を不審に思ったのか、黒子が声を掛けた。

黒子「お姉さま?」

美琴「え? ん? 何?」

黒子「大丈夫ですか? 何か考えごとでも?」

美琴「あ、何でもないから心配しないで」

黒子「そうですか……」

美琴「さ、明日もがんばろー!」

強引に話を終わらせるように、美琴は腕を上げ叫ぶ。

佐天初春「おー!」

黒子「(お姉さま……また何か1人で抱え込んでいますわね……)」

163 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/12(土) 21:36:15.52 ID:hi1q2i60 [2/2]
翌朝・常盤台中学女子寮――。

ザワザワ

美琴「ん? 何だろ?」

廊下を歩く美琴。奥の方から何やらざわめきが聞こえたので、彼女は人だかりが出来ているホールに向かった。

美琴「ねぇねぇ、どうしたの?」

生徒「あ、御坂さま。ほら、ご覧になって」

美琴「え?」

美琴は生徒たちが見つめる掲示板に視線を移す。
そこには、『休校のお知らせ』という告知が書かれた紙が貼られていた。

美琴「休校?」

黒子「あ、お姉さま!」

美琴が眉をひそめていると、人だかりの中から黒子が手を振りながら駆けてきた。

美琴「黒子、休校って…」

黒子「見ての通りですわ。頻発するテロや要人暗殺を受けて、学園都市中の学校に休校措置がとられましたの」

美琴「そうなんだ…」

寮監「その通りだ」

美琴「!!」

突然、背後から大人の女性の声が聞こえた。
美琴と黒子が振り返ると、そこには光る眼鏡に片手を添えながら立つ寮監の姿があった。

寮監「ここにいる生徒たちに告ぐ。知っての通り、本日から常盤台中学は休校となった。学校の指示通り、貴様らは休校措置が解除されるまで、寮から外出してはならん!!」

ええええええええええええ、と女子生徒たちが同時に抗議の声を上げる。

寮監「黙れ!!!」

シーン……

寮監が一喝するやいなや、女子生徒たちが一瞬で静かになった。

寮監「貴様も例外じゃないぞ、御坂」

美琴「えっ!?」

164 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/12(土) 21:43:56.55 ID:rpgWs3.0 [1/3]
光る眼鏡の奥から寮監の鋭い目が美琴に向けられた。

寮監「ジャッジメントの学生だけは、所属する支部に限って外出は許されているが…」チラッ

黒子「……はい」

寮監「一般学生は外出禁止だ」

美琴「そんな!」

寮監「特に御坂、お前はよく支部に通い詰めているらしいな」

美琴「それは……友達の失踪事件の調査で…」

美琴の声が弱まる。

寮監「そんなものは白井たちに任せておけばいい。とにかく、規則を破ったら休校措置が解除されても、一定期間の外出禁止とするからな」

美琴「そんなの……」

寮監「以上だ! お前らもどうしても外出したいときは私の許可を得てからにしろ!!」

ホールに集まった女子生徒たちに再び一喝すると、寮監は悠然にスタスタと来た道を戻っていった。

美琴「……………」

黒子「お姉さま…」

落ち込んだ素振りを見せる美琴の顔を、黒子が心配そうに覗き込む。

美琴「黒子、ごめん…」

黒子「気にしておりませんわ。泡浮さん、湾内さんのことは私にお任せ下さいまし」

美琴「………………」

黒子はそう言うものの、美琴は黙っているしか出来なかった。

165 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/12(土) 21:49:50.97 ID:rpgWs3.0 [2/3]
ジャッジメント第177支部――。

黒子「とにかく、お姉さまの落ち込みようは半端ありませんの…」

初春「佐天さんも同じです。せっかくみんなで犯人を追い詰めようとしていたのに……」

部屋のソファに座って向かい合い、黒子と初春は残念そうに会話する。
心なしか、いつもより室内が寂しく思えた。

初春「御坂さんも悔しいでしょうね」

黒子「まあ…ならいいんですけど…」

初春「……? どういう意味です?」

黒子「どうもお姉さま、何か隠しているような気がしますの」

虚空に視線を向け、黒子は推測を口にする。

初春「隠してる? …って何をですか?」

黒子「それが分かれば苦労しませんが……」
黒子「とにかく、私たちはお姉さまや佐天さんの分も頑張ることです」

初春「そうですね! ジャッジメントの意地を見せてやりましょう!!」

元気一杯に初春はガッツポーズをしてみせた。

黒子「ええ……(お姉さま……)」

166 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/12(土) 21:54:17.48 ID:rpgWs3.0 [3/3]
とある廃ビル――。

スキルアウト「ボ、ボス!! 来ましたぜ!!」

リーダー「あ? 誰が??」

慌てて駆けてきた部下の1人に、漫画を読んでいたスキルアウトのリーダーは僅かに顔を上げた。

スキルアウト「超電磁砲(レールガン)です!!」

リーダー「来たか……」

部下たちが騒然とする中、リーダーの男は漫画を捨てて立ち上がった。

美琴「元気してる?」

と、スキルアウトたちが準備に時間を割く余裕すらないまま、美琴はいつの間にかフロア内に侵入していた。

リーダー「昨日会ったばっかじゃねぇか」

溜息を吐くようにリーダーはぼやく。

美琴「あら、そうだったっけ? 色んなことあって1週間は経ってると思ったわ」

リーダー「確か、休校措置出されてたよなぁ? いいのかよ、こんなところにいて?」

美琴「ふん、別に処罰なんて怖くともなんともないわ。友達を取り戻すためならね」

腰に手を当て美琴はいたって平然と言う。

リーダー「そうかい…」

美琴「で、連絡は取れたんでしょうね?」

顔を横に向けたまま、美琴は目をリーダーに向けた。

リーダー「ああ…大変だったんだぞ。あれから何度も電話して…15回目でようやく出やがった」

美琴「そう、それで?」

リーダー「話はつけた」

美琴「………………」

何の反応も見せず、美琴は押し黙る。

167 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/12(土) 22:01:38.91 ID:.6Tinfw0
リーダーの口元がニヤリと歪んだ。

リーダー「上手いこと乗ってくれたぜ」

美琴「で、いつ?」

リーダー「明後日だ」
リーダー「明後日の夜12時。つまりは明々後日18日午前0時っていうことになるな。場所は、この資材置き場だ」

そう言ってリーダーは地図を広げ、印をつけた場所を美琴に見せる。

美琴「ふーん…ありがとう。でもよく向こう、乗ってくれたわね」

地図に顔を向けたまま、美琴はリーダーに視線を流す。

リーダー「いずれ働いた分の金の受け渡しが必要になるんだ。『口座は足がつく危険もあるから直接受け取りたい』って言ったらあっさり承諾してくれたぜ」

美琴「そう、罠じゃなきゃいいけど。ま、どっちみちあんたたちには関係ないわね」

リーダー「…お前、マジで一人で行く気なのか?」

心配、とまではいかなかったが、多少信じられないという顔でリーダーは美琴に質した。

美琴「そうよ。ろくに捜査の手掛かりも掴められないアンチスキルに任せて、取り逃がされても困るし。それに私は第3位のレベル5よ。コソコソと人の目を盗んで学生を誘拐するような卑怯な奴に負ける気なんてしないし」

リーダー「ふん、まあ止めはしねぇぜ」

美琴「じゃあ、お世話になったわね。ありがとう。また何かあれば来るわ」

リーダー「待てよ、これ持ってけ」

踵を返した美琴に、リーダーが後ろから呼び止めた。

美琴「……何これ?」

美琴は差し出されたリーダーの手元を見る。

リーダー「見れば分かるだろ? 拳銃だよ」

御坂「…私にはそんなの…」

リーダー「だろうな。が、自衛用だ自衛用。わざわざ能力使わなくても、これちらつかせるだけで、大の男も怯むもんだ」
リーダー「だから持ってけよ」パシッ

美琴「…………………」

美琴のお陰で、雇用主との関係が切れることに対するお礼からの行動なのだろうか。リーダーは美琴に拳銃を渡していた。

168 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/12(土) 22:08:33.20 ID:t5.awfo0
2日後・常盤台中学女子寮――。

美琴「待ち合わせの時間まで、あと12時間を切ったわね…」

1人、美琴は部屋の中で地図を広げ、件の場所を確認する。

美琴「見てなさいよ誘拐犯。あんたたちなんて必ず、私がとっ捕まえてやるわ」
美琴「場合によっては……」

ベッドの下から取り出した拳銃を見つめる美琴。

美琴「……そう、これは私1人で決着を着ける…。黒子たちを巻き込むわけにはいかない……」
美琴「これ以上、私の大切な人を失いたくないから……」

美琴は拳を握り締めた。

美琴「………………」

Prrrrrrrrrr.....

美琴「はいもしもし」

反射的な行動だった。
深い考え事をしていた美琴は突如鳴ったコール音を聞き、無意識のうちに手元にあった携帯電話に出ていた。

美琴「もしもし?」




『ふざけた真似を続けるなら命の保障はないぞ』




美琴「え?」

169 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/12(土) 22:17:14.62 ID:hb08PNI0
一瞬、頭が真っ白になった。


『お友達がまた死んでもいいのか?』


美琴「……な、何言ってるの?」

状況が理解出来ないのか、美琴はうろたえるように訊ねていた。
彼女の言葉を気にすることなく、相手は答えた。

『泡浮万彬、湾内絹保。2人の行方を追っても無駄だ』

美琴「!!!!!!!!!」
美琴「……あ、あんた誰よ!?」

想像もしていなかった者からの電話。相手は機械で声を変えているのか、酷く無機質で無感情な印象を受けた。

『もう一度言う。深追いするな。これは命令だ。従わなければ……殺す』

美琴「…殺す……ですって?」

それを聞いた瞬間、美琴はぶち切れていた。

美琴「ふざけんじゃないわよ!! あんたが泡浮さんや湾内さん、学園都市の学生をさらった誘拐犯ね!!」

『こちらのことなどどうでもいい』

対し、電話の声はいたって冷静に答える。

美琴「どうでもよくないわよ!! この卑怯者!! 正々堂々と出てきなさいよ!!!」
美琴「……いいわよ。やってみなさいよ。殺せるもんなら殺してみなさいよ!! ただし、私が誰だか知ってて言ってるんでしょうね!!??」

『超電磁砲(レールガン)』

美琴「!!」

『君の身元は既に判明している』

美琴「(こいつ……私をレベル5の超能力者だと知ってて、『殺す』とか息巻いてんの?)」
美琴「あんた……!!」



『お友達のように深い海の底に沈められて死にたくはないだろう?』



美琴「え……」

172 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/12(土) 22:24:43.13 ID:bbnLoC60
続けて電話の声に抗議をしようと思った美琴だったが、その言葉で強制的に遮られてしまった。

『我々は単なる誘拐犯ではない』
『君のお友達、泡浮万彬と湾内絹保のことだ。彼女たちは今、冷たくて暗い海の底で、安からに眠ってる』

美琴「…………死ん……でるの……?」

不意に告げられた衝撃の真実。
美琴は言葉を紡ぐのも出来ず、ただ呆然とする。

『足に重りをつけられてな』

美琴「…………嘘…よね?…」

『嘘をつく必要が無い』

美琴「あんたが……殺したんだ……」

泡浮と湾内の最後の笑顔が美琴の脳裏に蘇る。

美琴「あんたが!! 殺したんだ!!!!」

徐々に、美琴の心の奥底から言い知れぬ感情がフツフツと沸き上がってくる。

美琴「許さない!!! 絶対許さない!!!!」
美琴「私の後輩を…友達を殺すなんて!!!! 絶対にあんたを見つけ出して跡形が無くなるまで燃やし尽くしてやる!!!!」

激昂する美琴。彼女は我を忘れたかのように、大声を吹き込む。

美琴「これ以上、あんたの好きにはさせない!!」

『なら、やってみるか?』

機械を使って話しているはずの無機質な声が、受話器の向こうで笑ったような気がした。

美琴「え……」

電話の声は言う。

『ジャッジメント第177支部』

美琴「!?」

『今、そこに……君の友人か……』
『ツインテールの少女と、頭に花飾りをつけた少女、それと…黒い髪をストレートに伸ばした少女がいるな………』

美琴は走り出していた。
相手の声を最後まで聞き終えるのも待たず、彼女は部屋のドアを開け、廊下を全速力で駆けていた。

173 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/12(土) 22:34:13.76 ID:YNadw660
前方に、寮監が現れる。

寮監「こら御坂!! 廊下を走るな!!! ……御坂!!!」

美琴「………………」

寮監「外へ行くつもりか!? 許さんぞ!!!」

寮監が正面に立ち、美琴を捕まえようとする。しかし彼女はそれを猫のようにすり抜け、寮を出て行った。

寮監「御坂!!!」

後ろから寮監が叫ぶ声が聞こえるが、無視する。と言うよりも、そんな声は既に意識の外だった。

婚后「あら御坂さん、どこへ行かれるのですか? ……って、あら?…なんとまあ、お忙しい方ですわね」

寮を出ると、美琴は早速携帯電話から「黒子」の連絡先を表示し、発信ボタンを押した。

Rrrrrrrr....

しかし…

Rrrrrrrrr....

何度コール音が鳴っても、黒子が電話に出る気配はない。

美琴「黒子!! 何で出ないのよ!?」

次に美琴は「初春さん」の表示を呼び出し発信ボタンを押す。

Rrrrrrrrrr......

が、しかし。

Rrrrrrrrrr......

美琴「何で!? 何で初春さんまで出ないの!???」

またもやコール音が続いただけで、初春が出ることはなかった。最後に彼女は、「佐天さん」の連絡先を表示し発信ボタンを押した。

Rrrrrrrrrr......

が、何故か佐天にいたっても電話に出ないのだ。

美琴「何で!? 何で出ないのよ!!!」

泡浮と湾内の2人のことを美琴は思い出す。彼女は不安に駆られ、足を速めた。

美琴「……黒子……佐天さん……初春さん……。……みんな、無事でいて!!」

174 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/12(土) 22:40:53.95 ID:SGK.5xI0 [1/6]
息も絶え絶えに、彼女は走る。休校措置が発令されていたためか、通りには目立つほど学生はいない。
もうどれほどの時間が経ったのだろうか。そう思った時、眼前に1つの建物が見えてきた。

美琴「見えた! ジャッジメント第177支部!!」

見たところ、別に爆発したわけでもなく、火事になっているわけでもない。
建物の周囲にはいつものように、黄泉川の部隊のアンチスキルたちが警護についていた。

警備員「おいこら待て!!」

警備員の検問を突破し、美琴は突き進む。
飛ぶように階段を駆け上がった彼女は、支部のドアを破壊するような勢いで押し開けた。



美琴「…………ハァ…ハァ…ハァ…」



立ち止まり、息を切らしながら、室内を見つめる美琴。

美琴「…………ハァ…ハァ…」

175 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/12(土) 22:46:25.16 ID:SGK.5xI0 [2/6]
そんな彼女の姿を、不思議そうに3人の少女が見つめていた。

黒子「あら、お姉さま、どうかしたんですの?」

キョトンとした顔で黒子が訊ねる。

美琴「………………」

佐天「すんごい汗かいてますよ!」

驚き、佐天も声を上げた。

初春「何か急用でも?」

初春が首を傾げて言う。

美琴「フフ……」

黒子佐天初春「????」

美琴「……フ…」

壁にもたれかけるように、美琴はその場に崩れた。

黒子「お、お姉さま!!」

黒子と佐天と初春が駆け寄ってくる。

佐天「しっかりしてください!」

初春「何があったんですか!?」

美琴「フフ……いえ…何も…何もなかったわ……」

黒子佐天初春「?」

美琴の行動がさっぱり理解出来なかったのか、黒子たちは顔を見合わせた。

警備員「おいこら! 君、勝手に入っちゃいかんだろ」

美琴を止めようとした警備員がしばらくして室内に入ってきた。

美琴「ああ…すみません…」

黒子「この方は私の先輩です。心配はいりませんわ」

警備員「…何だ。ならいいんだが…」

警備員も美琴の顔を覚えていたのか、すぐに下に戻っていった。黒子がドアを閉めると、美琴はヨロヨロと立ち上がった。

176 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/12(土) 22:52:27.55 ID:SGK.5xI0 [3/6]
初春「御坂さん、冷たい水です」

美琴「ああ、ありがとう初春さん」

初春から受け取った水をゴクゴクと一気飲みする美琴。

黒子「で、どうしたんですのお姉さま? そんなに慌てて…」

一息つき、美琴は目に入った椅子に腰をかけた。

美琴「……警告があったわ」

黒子佐天初春「え?」

美琴「泡浮さんと湾内さんの件、私たちだけで独自に調べてたけど……」
美琴「さっき、どこから嗅ぎつけたのか…誘拐犯が自ら私のケータイに電話してきたわ」

黒子佐天初春「ええっっ!!??」

3人は驚愕の声を上げる。

黒子「ゆ、誘拐犯ですって!?」

初春「ほ、本当に電話が掛かってきたんですか!?」

佐天「一体何で……」

美琴「だから、警告よ」

黒子「警告?」

美琴「これ以上深入りするな、ってね……。で、そいつがあんたたちの安全を脅かすようなこと仄めかすから、急いで走ってきたってわけ……。みんな、何ともなくて良かったけど……」

本当に安心したように、美琴は息を大きく吐き出した。

黒子佐天初春「………………」

誰かが息を呑む声が聞こえたような気がした。

美琴「あいつ……絶対に許せない……」

黒子「そ、それでどうされたんですか?」

組んだ両手に顎を置き、言葉を震わせる美琴を見て、黒子は疑問を口にした。

美琴「………黒子、初春さん、佐天さん……」

潤んだ目を3人に向ける美琴。その表情に、3人は言葉を失う。
意を決し、美琴は言葉を搾り出していた。

177 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/12(土) 22:58:33.33 ID:SGK.5xI0 [4/6]
美琴「……泡浮さんと湾内さんは既に殺されてるわ……」

黒子佐天初春「!!!!!??????」

佐天「ど、どういうことですかそれ!!??」

黒子「誘拐犯がそう言いましたの!?」

美琴「ええ……」

初春「そんな……何で……酷い………酷すぎる……」

3人は愕然とした表情になる。

美琴「だから、同じ目に遭いたくなかったら、もうこれ以上深追いはするなって……」

黒子「……そんな…そんなこと、尚更出来ませんわ。私たちの…私たちの友達を殺しておいて……」

佐天「……何のために…ここまで…やってきたんだろ……」

初春「泡浮さん…グスッ……湾内さん…ヒグッ」

美琴「…………………」

涙を浮かべる3人を前に、無言になる美琴。
と、その時だった。

Prrrrrrrrrrrr!!!!!!

悲しみに暮れ、ただ泣くことしかできない彼女たちの雰囲気をぶち壊すように、支部の電話が鳴った。

Prrrrrrrrrrrr!!!!!!

黒子「……グスッ…私がとりますの…」

赤くなった目を拭き、黒子が受話器をとる。

黒子「はい、こちらジャッジメント第……え? どなたですの? ……はぁ?」

美琴たちは頓狂な声を上げた黒子を怪訝な顔で見る。

美琴「どうしたの黒子?」

黒子「何だか理解出来ませんが、分かりましたわ……」

そういうと、黒子は電話のスピーカーボタンを押した。

黒子「お姉さま、知らない人が『とにかくスピーカーを押して全員に聞こえるようにしろ』と……」

178 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/12(土) 23:04:38.11 ID:SGK.5xI0 [5/6]
美琴「?」

『超電磁砲、お友達が無事で良かったな』

美琴「!!??」

その機械のような声に、美琴は覚えがあった。

佐天「…グスッ…知り合いですか御坂さん?」

驚いた顔で美琴は言う。

美琴「………知ってるもなにもこいつは、ついさっき……」

『君たちの友達を誘拐し、更には殺した犯人だ』

黒子佐天初春「!!!!!!!!!!」

『君たちへの要求は1つ』

美琴たちの反応を気にするつもりもないのか、電話の声は普通に話を続けた。
しかし、それで黒子たちが納得するはずがない。

黒子「お待ちなさい!! 貴方が泡浮さんと湾内さんを殺した犯人ですのね!?」

佐天「どうしてこんなことをしたのよ!! 答えろ卑怯者!!」

初春「…私たちの……友達を返してください……!!」

『君らのことなど知ったことじゃない。君らの愚痴を聞きに電話をかけたわけではない』

美琴「…………っ…」

その遠慮も配慮も無さすぎる声に、美琴は改めて怒りを覚える。

『要求はただ1つ。これ以上、我々に深追いするな。それだけだ』

佐天「ふざけないでよ!! あんたに友達を失った悲しみが分かるって言うの!?」

黒子「絶対に、貴方を追い詰めてみますわ……すぐにでも!!」

『なら、こっちも君たちには容赦しない。我々の計画を邪魔するなら、君たち4人を殺す』

黒子佐天初春「!!??」

機械で声を変えているとは言え、その言葉が嘘だとは思えなかった。
受話器の向こうの人間が本気であることはその口調からすぐに理解出来た。

179 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/12(土) 23:10:31.66 ID:SGK.5xI0 [6/6]
佐天「フン、今更恐くないわよ! やってみなさいよ!!」

黒子「そうですわ。返り討ちにしてやりますの!!」

初春「……中学生だからって、舐めないで下さい……」

それでも少女たちは怯まない。

『そうか。ならばせいぜい健闘したまえ。こちらも容赦しない。以上だ』

美琴「待ちなさいよ!!」

それまで黙っていた美琴が、黒子たちを押しのけて電話に近付いた。

美琴「いい気にならないでよ! あんたなんか、この私がじきじきに倒してやるんだから!! 私は、学園都市第3位の超電磁砲(レールガン)なんだからね!!」

『過信している人間ほど終わりはあっけないもんだ。そう、君らの先輩の……』
『 固 法 美 偉 の よ う に ね 』

美琴「え……」

黒子「今なんと……」

佐天「固法先輩って言った?」

初春「こ、固法先輩がどうしたんですか!?」

『理解出来なかったか? そうだ、爆死した固法美偉。彼女も我々が殺した』

金槌で頭を殴られたような、大きな衝撃が美琴たちを襲った。

佐天「あんたが……あんたが…固法先輩も殺したって言うの……?」

初春「そんな…固法先輩まで………酷すぎる!」

黒子「……何てことを。では、貴方があの『ファニーランド』をテロ爆破した張本人でもありますのね!?」

『もう君たちとの問答も飽きた。君たちに出来るのは、普段通りに生活を送ることのみ。もし我々の邪魔をするというのなら、覚悟しておくことだ』

美琴「待ちなさい!!!」

最後に美琴が叫んだが、その時には既に通話が切れ、ツーツーと空しい音が鳴り響くだけだった。
しばらくの間、押し黙り微動だにしない4人。みな、赤くなった目に涙を溜め、ただ悔しそうな表情を浮かべていた。

180 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/12(土) 23:18:08.60 ID:KTi5jTQ0 [1/6]
美琴「…………………」

伸ばした両手を机に置き、美琴は1人黙考する。

美琴「(………どうして…こんなことに……何で…固法先輩まで……やっぱり、私の能力なんて人を助けられないんじゃない…っ!!)」

1度閉じた目を再び開ける。

美琴「(………どちらにしろ、このまま奴らを放っておくわけにはいかない……当初の予定通り、今夜、奴らを待ち伏せして……)」
美琴「(……でも…もし失敗したら……もし失敗して…報復に黒子たちが奴らに殺されでもしたら……)」

そんな彼女の脳裏に、とある人物の顔が蘇る。

美琴「(……あんたなら…あんたなら……どうする? ……いえ…あんたなら…私の妹達を助けたときみたく、何も考えずに猪突猛進に向かっていくんでしょうね……)」

もちろん美琴の頭に浮かんだ、とある人物は今、彼女に答えを提示してくれない。

美琴「(……でも怖い…怖いのよ……もし…失敗したらどうしようかって……私の大切な友達に危害が及んだらどうしようかって……そう思うと怖いのよ……)」

美琴はギュッと握り拳を作る。

美琴「(……でも、あんたは違う……あんたは…相手がどんなに自分より強い人間でも……例え相手が最強の超能力者だったとしても……信念1つで果敢に立ち向かう……だけど、私は怖いのよ……1人で全てを背負いきれるのか……1人で、自分の行動の結果に責任をもてるのか……)」

ふと美琴は、とある実験が中断された日のことを思い出す。

美琴「(…そっか……今のあんたが…私を見たら、怒るでしょうね……また1人だけで無茶しようとして……お得意の説教を何時間にも渡って、垂れるんでしょうね……)」

美琴はチラッと後ろに視線を移す。ただ、泣くことしか出来ない親友たちの悔しそうな顔が目に入った。

美琴「(……みんな…とても悔しそう……。そうだよね……固法先輩を殺されて…泡浮さんと湾内さんを助けることも出来ず……今までの行動も全て水泡に帰そうとしてる…)」
美琴「(……そう…これは、私だけの問題じゃないんだ……。私には、頼りになる親友がたくさんいるんだから……)」

意を決し、美琴は黒子たちに振り返っていた。

黒子「グスッ……」

佐天「グズズ……」

初春「ヒッグ…ヒッグ…」

美琴「黒子、佐天さん、初春さん……」

声を掛けられ、3人が顔を向ける。みんな歳相応に、子供のような泣き顔を浮かべていた。

黒子佐天初春「??」

美琴「私の話、聞いてくれる?」

181 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/12(土) 23:25:20.32 ID:KTi5jTQ0 [2/6]
とある廃ビル――。

スキルアウト「ボス!! 逃げて下さ……グエッ!!!」ドスッ

リーダー「チッ……!!」

そこらじゅうに赤く染まった死体が転がる中、リーダーは何とか廃ビルからの脱出を試みようとしていた。
しかし、目の前に立つ人間がそれを許すはずも無かった。

リーダー「…全員やられたか……」

辺りを見回す。室内に残ってるのはリーダーと侵入者1人のみ。
その状況はもはや、『戦闘』とは言えない、ただの『虐殺』だった。

リーダー「フンッ! 舐めてもらっちゃ困るぜ。これでも俺は学園都市の裏を歩いてきた男だぜ?」

拳銃を取り出すリーダー。狙いを定め、引き金を引いた。
その瞬間、侵入者が歪な笑みを口元に浮かべた。

リーダー「!!!!!!!」
リーダー「何故だ……何で…」

近付く侵入者。
リーダーは、ゆっくりと近付いてくる絶望を目の前に、言葉を失くした――。

182 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/12(土) 23:32:38.21 ID:KTi5jTQ0 [3/6]
美琴「……以上が、私が考えてたことよ…」

美琴は全てを語る。今まで黒子と佐天と初春に密かに行っていたことを。

初春「今日の夜0時……。誘拐犯が……」

佐天「じゃあ、御坂さんがこの間、あたしと別れた後って…」

美琴「ええ。スキルアウトの集団と接触をとっていたのよ。奴らに…誘拐犯に辿り着くためにね」

美琴の突拍子も無い告白に、3人は驚きの表情を隠せない。

黒子「何故そんな危ないことを!! どうして黙ってらっしゃったんですの!?」

心配の含んだ声で黒子は美琴に怒る。それを見て美琴は一瞬、目を伏せ語った。

美琴「……ごめん黒子。でも私、どうしても許せなかったのよ…あいつらが…。…危険なことになるって分かってたから、貴女たちを巻き込みたくなかったの……」

黒子「……そんなこと。もう、私たちは既に危険に巻き込まれていますわ」

初春「そうですよ。だから覚悟して、この調査を始めたんじゃないですか…」

佐天「ずるいですよ御坂さん。あたしたち、今まで色んな苦楽を共にしてきた仲間じゃないですか。なのに黙ってるなんて……」

美琴「…仲間…か」

3人の言葉を前に、美琴は優しい笑みを刻み膝の上で組んだ手元に視線を移した。

美琴「……でも、危険なのよ? 今まで何人もの能力者を誘拐してきた奴らと直接会うのよ?」

黒子「お姉さま…今更ここまで来て、私たちを蚊帳の外に置くのはずるいですわ」

初春「私たち、どうしても固法先輩や泡浮さん、湾内さんの仇を討ちたいんです。そのために…ここまでやって来たんですから…」

顔を上げる美琴。天井に見える蛍光灯の光が、妙にぼやけた。

美琴「……いいのね? 本当に?」

黒子「くどいですわよお姉さま」

初春「もう私たち、覚悟は出来てます」

佐天「虚空爆破(グラビトン)事件、幻想御手(レベルアッパー)、ビッグスパイダー、そして乱雑開放(ポルターガイスト)。様々な修羅場をあたしたちは4人で潜ってきたじゃないですか」
佐天「多分、あたしたちほどこんな修羅場くぐった人間なんてこの学園都市にいませんよ!!」

初春「そうですよ。そんな私たちが、そう簡単に負けるとも思いません」

黒子「何しろこっちには、レベル5の超能力者であるお姉さまがついていますものね!」

184 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/12(土) 23:39:48.62 ID:KTi5jTQ0 [4/6]
笑顔を浮かべ、美琴を見つめる黒子と佐天と初春。
彼女たちの顔からは既に、涙は消え去っていた。

美琴「みんな……」

佐天「はい!」

と、突然、佐天が腕を前に差し出した。

美琴「ん? 何?」

佐天「分かってないなあ。“戦友”の証ですよ」

チッチッチ、と言うように佐天がウインクしながら説明する。

初春「戦友?」

佐天「そ! あたしたちは親友であると共に戦友なんです。“どんなに厳しい状況も、4人一緒で乗り越える”って証ですよ。だからさ、ほら、御坂さんも、初春も、白井さんも」

初春「あ、はい! 戦友です戦友」

初春は腕を差し出し、佐天の手にコツンと当てる。

黒子「まったく、佐天さんらしいですわね」

黒子も初春に続く。

美琴「恥ずかしいわね、ったく…」

そして、美琴も腕を前に突き出した。細く、白く、小さく、華奢な4本の腕が十字をつくる。
しかし、そこに結ばれた絆は固かった。


185 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/12(土) 23:48:01.44 ID:KTi5jTQ0 [5/6]
佐天「じゃ、これからあたしたち“超電磁砲(レールガン)組”は一蓮托生です」

黒子「れぇるがん組?」

佐天「御坂さんをリーダーとした、女の子4人による精鋭集団ですよ!」

美琴「リ、リーダーってそんな…」

初春「しかも精鋭ですか?」

佐天「あたしたちは4人で1つの“超電磁砲(レールガン)組”。一心同体なんです。あたしたちが力を合せれば、1+1+1+1も、100×100×100×100になる」
佐天「さ、御坂さん、気合入れましょう気合!!」

美琴「………フッ…分かったわ」

気合を入れるように美琴が口元を緩める。

美琴「私たちが4人組めば、どんな敵も恐くないわ。だから、頑張りましょう」



美琴「超電磁砲(レールガン)組、ファイトオオオオオッ!!」





美琴黒子佐天初春「ファイトオオオオオオオオオオオッ!!!!!!!!」





4人の少女たちのか弱くも力強い声が響き渡った――。

210 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/13(日) 16:05:02.31 ID:6uDnSF60 [2/2]
夜・ジャッジメント第177支部――。

美琴「現在時刻21時30分。奴らと顔を合わすことになる時刻まで、残り2時間30分…」

美琴は時計を見る。
側では、佐天と初春が間食をとりながら、美琴がスキルアウトから貰った地図を確認していた。

美琴「あと30分したら出るわよ。2人とも、大丈夫?」

佐天「はい! 大丈夫です! 見て下さい! 以前、テレスティーナを倒すためにキャパシティダウンを破壊したこのバット!」
佐天「ずっと支部に保管しておいて正解でしたね! これで敵をボッコボコにしてやるんです!」

どや顔で佐天はブンブンとバットを振り回す。

初春「あ、危ないです佐天さん」

佐天「あはは、ごめんごめんー」

美琴「佐天さん、バットを振るのは、まず相手の話を聞いてからね。勢いあまって突っ込んでいかないように。それにバットで殴られただけで大抵の人は死んじゃうからね」

一応、苦笑い気味に美琴が注意すると、佐天は明るい顔で言い放った。

佐天「保険ですよ保険!」

黒子「お姉さま、陰から様子を見てきましたわ」ブンッ

その時、部屋の真ん中に黒子が突然現れた。

美琴「どうだった?」

黒子「この支部の警護に就いているアンチスキルの数は多く見積もっても10人以上。正面から出て行ったら、有無を言わさず止められますわね」

誘拐犯を待ち伏せするためにはまず支部から出なければならなかったが、当然こんな夜中に出て行こうとすれば警護に就いている警備員に止められるのは必至だった。
黒子はそういった状況を踏まえテレポートで支部の外まで移動し、警備員に見つからない場所から支部の警護の様子を確かめていたのだ。

黒子「なら…」
黒子「2回に分けて私のテレポートで、アンチスキルの見えない場所まで3人を移動させるしかありませんわね」

美琴「分かったわ。大変だけど宜しくね」

黒子「ええ。お任せを」

黒子が頷く。

Prrrrrrrrrr.....

黒子「あら、電話」ガチャッ
黒子「はい、もしもしこちらジャッジメント第177支部の白井ですが……」

213 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/13(日) 16:12:45.61 ID:aYP5vdY0 [1/2]
寮監『くぉらぁぁ!!! 白井!!! 御坂を出せ御坂を!!!』

黒子が言い終わるより先に、電話の向こうから怒号が聞こえてきた。

黒子「げ、寮監…」

美琴「マジで?」

美琴と黒子はあちゃー、というように顔をしかめる。

寮監『お前、昼に電話したら『御坂はいない』ってほざきやがったな!? さっき、黄泉川先生経由で警護の警備員から話聞いたら、そこに御坂いるって話じゃないか!』

黒子「あんらぁ…何のことですかしら?」

顔から冷や汗を流しながら、黒子はシラを切る。

寮監『とぼけるな! お前はともかく、御坂は外出禁止中なんだぞ!』

黒子「いや、それは……って、あ…」

美琴「もしもし? 御坂ですけど?」

黒子から受話器を奪う美琴。

寮監『やっぱりそこにいたか! お前、今外出禁止中だと分かって……』

美琴「ごめんなさい寮監」

寮監『あ?』

美琴「今日だけは譲れないんです。帰ったら、罰でもなんでも受けますから…今日だけは見逃して下さい」

真剣な声で、僅かに頭を垂れる形で電話の向こうの寮監に美琴は答える。

黒子「お姉さま…」

佐天初春「御坂さん…」

寮監『ふざけるな! 私の役目は常盤台生徒の寮での安全を守るためにだな! ……』

ガチャン

美琴「………………」

静かに、美琴は受話器を置いた。

黒子「宜しいのですか?」

美琴「寮監には悪いけど、今日だけは……ね」

美琴は柔らかい微笑みを見せる。

214 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/13(日) 16:20:35.36 ID:aYP5vdY0 [2/2]
美琴は柔らかい微笑みを見せる。

Prrrrrrrrr

その時、また電話が鳴った。

美琴佐天初春「!!」

黒子「またですか。結構、しつわいですわね」

呆れたような顔で黒子が受話器をとる。
ぞんざいな感じで受け答えした黒子だったが、電話の相手は寮監ではなかった。

黒子「はい、もしもし白井ですが……って、あら黄泉川先生?」

美琴「なんだ、寮監じゃないのか」ホッ

黒子「え!? それは本当ですの!?」

美琴佐天初春「?」

黒子「そ、そうですか……分かりましたわ…情報提供、ありがとうございます…」
黒子「え? あ、滅相もありません。まさか、そんなこと、おほほほ…」
黒子「ああ、お姉さまですか?」チラッ

美琴「どうしたの?」

黒子「分かりました。明日には必ず……はい。お休みなさいませ」

ガチャン

美琴「私の名前が出てたけど、何かあったの?」

黒子「どうやら、寮監がお姉さまの居所を聞いた時、かなり心配してたらしくて…それもあってか、黄泉川先生から『関係ない生徒は早く帰るように』と注意を受けましたわ」

美琴「そうなの。でもまあ、どうせいいわ。今日で決着を着ければいいことだし」

佐天「あたしも密かに来ちゃった系だから、そこは気にしないでいいんじゃないですか?」

至極のん気に言ってみせる佐天。初春が苦笑いする。

初春「もう、佐天さんったら」

佐天「あはは」

美琴「それで、最初のほう、随分驚いてたけど何があったの?」

黒子「そう!! それですの!! お姉さま、大変です!!」

215 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/13(日) 16:28:10.73 ID:Minq5mo0 [1/4]
突然、黒子が血相を変えた。
その変わりぶりに、美琴たちが驚く。

美琴「え? 何々!?」

黒子「お姉さま、誘拐犯の情報を得るために接触していたスキルアウトのグループがいたでしょう?」

美琴「え、ええ…」

黒子「今日夕方頃、そのグループが廃ビルで壊滅された状態であるのが発見されましたの!!」

美琴「な、何ですって!!??」

初春「え…それって…つまり、どういうことですか?」

黒子「分かりませんわ。ただ全員、死んでいたらしくて……」

美琴はそれを聞いて眉をひそめ、顎に手を添えた。

美琴「何かあったのね……」

佐天「何か、って何がです?」

美琴「多分、誘拐犯である雇用主から、臨時雇いのスキルアウトの連中を、消さなければならないことが起こった、ってとこかしら……」

黒子「もしかして、私たちの情報が漏れたのでは?」

美琴「なら、すぐにでもこちらに電話を掛けてきてもおかしくないんだけどね。相手はこっちの携帯番号を知ってるんだし…」

黒子「どうなさいます? やめますか?」

美琴「いえ、まだ気付かれていないはず。ここで奴らを取り逃がしたら、次いつチャンスが出来るか……だから、予定通り、今夜は奴らに会いに行くわ」
美琴「でも…やっぱり、常識が通用しないイカれた狂人みたいね。仕方が無いわ」

そう言って、美琴は隠していた物を取り出した。

黒子佐天初春「!!!!!!!!!」

それを見た黒子たちの表情が一変する。

216 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/13(日) 16:35:28.73 ID:Minq5mo0 [2/4]
黒子「お、お姉さま…それ…」

美琴「見ての通り、拳銃よ」

佐天「どこで手に入れたんですかそんなの?」

美琴「その壊滅したスキルアウトのリーダーから貰ったのよ」

初春「わ…すごい…本物の拳銃ってこうなってるんですね……」

黒子と佐天と初春は物珍しいものを見るように、机の上に置かれた拳銃を覗き込む。

佐天「あれ? ジャッジメントって拳銃の訓練も受けるんじゃないの?」

黒子「初春は握力がない上に、体力も皆無ですからね。一応、後方支援が専門ですから、拳銃の訓練は免除されているんですよ」

佐天「そうなんだー」

黒子「私のような前線に立つジャッジメントですら、銃の訓練はほんの僅かしかやったことがありませんからね」

初春「だから本物の拳銃を間近で見るのはこれが初めてなんです」

普段見慣れないものを前にし、彼女たちは興味深そうに話をしている。

美琴「まあ、もしもの時の保険よ。相手が例え、牙を向いて襲ってきても私が超電磁砲でぶっ飛ばすから大丈夫だろうけど……万が一、ってこともあるしね」
美琴「誰でもいいわ。私以外で誰か、持っておいてくれる?」

黒子佐天初春「………………」

美琴はそう言うが、拳銃ほど女子中学生に縁遠く似合わない得物もない。
3人はゴクリと喉を鳴らし、互いの顔を見る。



美琴「……じゃあ名乗り出ないようだから、私が決めるわね」




217 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/13(日) 16:42:36.19 ID:Minq5mo0 [3/4]
午後22時――。

美琴「行くわよ!!」

美琴の鋭い眼光が、目の前に並ぶ少女たちの顔を見据える。
みな、彼女たちの表情は真剣そのものだった。

佐天「泡浮さんと湾内さんのために!!」ブンブンッ

バットを振り回す佐天。

初春「固法先輩のために!!」

グッと初春は拳を握る。

黒子「そして、私たちのためにも……」

黒子はフル装備の金属矢を革ベルトで太股に装着する。



美琴「超電磁砲(レールガン)組、出動!!!」





美琴黒子佐天初春「おーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!!!!!」





繊細だが、力強い声と共に美琴たちは腕を一斉に挙げた。
彼女たちは今、誰にも負ける気はしなかった。
今宵、4人の少女は戦場へ出陣する――。

コメント

No title

ひどい文章だ

No title

これは素晴らしい!!!!!
続きが気になりすぎる

※1
そうか?

No title

指紋採るよりサイコメトラー使ったほうが……

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