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男「怖い話っていうのは」

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 20:52:48.86 ID:S9fnaX760 [1/31]
男「二種類ある」

男友「聞こうか」

男「まずひとつ」

男友「うん」

男「最終的に全てのつじつまが合う話」

男友「というと?」

男「まぁこれも詳しく分けられるんだけどさ、例えば怪奇現象だと見せかけておいて人間の仕業だったとか」

男友「おぉ」

男「もしくはここには実はこういう謂れがあってこういう祟りでとか」

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 20:59:02.90 ID:S9fnaX760
男友「…うん…?…」

男「いや…なんつーのかなぁ。物理的?な説明は付かないけどそれにはこういう祟りとか曰くがあるからこんなことが起こるんだよ、とか」

男友「えぇっと…物理的な説明は付かないけど…こんな変な事が起こる理由が少なからずある…とか?そんな?感じ?」

男「そう!そう…そんな感じのことを言いたかった」

男友「うん、なんとなくわかったわ…なんとなくな。もう一種類は?」

男「それがない話」

男友「今言ったような理由?」

男「そう。別になーんの理由もなく、突然、変な事がある。ほんっとーに何もない」

男友「…そんな話、あるか?」

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 21:01:36.27 ID:S9fnaX760
男「仮にあったとしてさ」

男友「何?」

男「どっちの方が怖いかな?」

男友「…」

男「…どっちだよ」

男友「…いや…なん、とも…言えない、かなぁ…」

男「俺も最初はそんな感じだったけど、」

男友「けど?」

男「断然後者の方が怖い」

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 21:07:21.07 ID:S9fnaX760
男友「…あー、…そうかもな」

男「だってさ、前者だったらさ。何となくそれに対する対策っていうのが見えてきたりするじゃん」

男友「あー…なるほどねぇ」

男「後者にはそれがないわけでしょ?手がかりが何もないもん」

男友「そうだなぁ。確かにそっちの方が怖いな」

男「だろ?」

男友「うん…」

男「でも後者には決定的な欠点がある」

男友「欠点?怖い話に欠点とかあんの?」

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 21:14:37.41 ID:S9fnaX760
男「後者の話は体験しようと思ってできる体験じゃないんだよな」

男友「…?どういう意味?」

男「例えば前者の話だったらさ。」

男友「うん」

男「曰くつきの…えー、心霊スポット?とかに面白半分で言った若者たち、とか」

男友「あー、その心霊スポットに面白半分で入ったって理由で?」

男「そ。でも後者の話は…むしろ怖がりな奴の方がわかりやすい」

男友「どういうことっすか」

男「ほら、『俺はこういう祟りを信じてるから心霊スポット、とかそういうのには絶対に関わらないぞ。なのに何でこんな不可解な目に』」

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 21:19:08.77 ID:S9fnaX760
男友「あぁ、だから体験しようと思ってできる体験じゃない、と」

男「そういうことよ」

男友「ていうかややこしいわ」

男「そう?」

男友「要するにお前は体験したいのか?」

男「そうなんだけどさ…今回は…前者で妥協することにするよ」

男友「ん、何」

男「ちょっと待ってね。こないだ携帯のサイトで面白そうなとこ見っけたんだ」

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 21:24:40.15 ID:S9fnaX760
男友「ちょっと待って、意味がちょっとわからない」

男「あった。これ見てみ?『天使の潜む廃ビル』」

男友「…なんだ。心霊スポットってやつか?」

男「そう。今まで色んな心霊スポットがあったけど。ここはマジで面白そうなんだって」

男友「…え?行くの?」

男「…行きたいなーって…思ってんだけどさ…どう?」

男友「い、いや、どう?じゃないって。お前解ってんだろ。俺は結構こういうの信じちゃうタイプなんだって」

男「だーいじょうぶだって。これ別に、アレだから。人が死んだとかそういう怖いやつじゃないから」

男友「あぁ?なんだそれ?」

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 21:32:31.47 ID:S9fnaX760
男「怖いというか不思議な感じ?何で天使が潜んでいるという理由すらもわからない」。いつからそう呼ばれたのかも判らない。マジで謎だらけな場所」

男友「…いや、だったら尚更ヤバいでしょ。ここは」

男「これはマジで怖い体験とかじゃなくてさ、純粋にその廃ビルに何があるのか…気になってるだけ」

男友「…しかも、さ…ここ、場所結構遠くね?」

男「いやー行けるでしょー。ほら、怖くないようにもっと大人数で行くとかするからさ」

男友「お前が一人でいけばいいじゃん」

男「いや、さすがにそれはちょっと…」

男友「ふざけんなよお前。じゃあ行くな」

男「ほら、女とか女友とか呼ぶから。それならいいだろ?」

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 21:38:54.63 ID:S9fnaX760
男友「…そんなに行きたいの?」

男「だってお前。このビルも曰く付きだけどさ。一番さっき言った話に近いじゃん」

男友「あ?なんだって?」

男「まぁ。よーするに俺は怖い話よりか『謎』が好きなんだよ。『正体不明』とかな」

男友「…中二?」

男「そういうこと言うな。別にその謎を解くのが好きな訳でもない。」

男友「中二じゃん…おい、マジで誘うのかよ」

男「…あー、もしもし?あのさー今さー男友とさー心霊スポット行こうかって話しになってんだよねー」

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 21:44:51.40 ID:S9fnaX760
男「…うん、心霊スポット…いや、なんとなく…いい場所見つけたから…」

男「…うん、うん、できれば付いてきて欲しいなーなんて…」

男「いや、実はまだ行きたがってないんだ。男友。…うん、みんなで行くし、大丈夫だろ…」

男「…あ、あとこれから女も誘ってみる予定…うん…十分、だと思うんだけど…」

男「…あ、マジで?それ助かるわー。じゃあそれお願いしちゃっていい?…うん、ありがとーはいはーい…」

男「…ふぅ…」

男友「…何、決定?」

男「…女友が女も誘ってくれるって。四人いりゃ流石にいいだろ」

>>13
気持ち悪いことしてごめんなさい
恨まないでください
呪わないでください

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 21:50:46.66 ID:S9fnaX760
結局俺を含めた四人でその『天使の潜む廃ビル』とかいう場所に行くことになった。

女「…ねー、あとどんくらい?」

男「多分…もうちょっと…そろそろ、男友起こしといてくれる?」

女友「ん…男友、男友?」

男友「…んー…」ウトウト

女友「もうすぐ着くって」

男友「…んー?…」

女「ほら、おきなってーもーつくよーって」

男友「…」

男「おー起きたか。そろそろ着くわ。準備しといて」

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 21:56:20.09 ID:S9fnaX760
男友「…どこ、ここ…」

女友「さぁ…でも、もう着くって。起きな」

男友「…」

女「いやいや、だから寝るなって。おーい起きれよーぅ」

男友「…ねむい」

女友「ちょー男ー男友起きる気配がないんだけど」

男「ずーっと揺さぶってたらその内起きるだろ」

女「めんどいなぁ」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 22:11:00.82 ID:S9fnaX760
人気の無い山道を車で走って13分。

山道を抜けるととても怖い話とは縁があるとは思えないような場所へ出た。

時間は午後2時22分

そこは爽やかな草原のような場所だった。

空は雲一つなく澄んでいてそこから照り付ける太陽がいつもより眩しい

森を抜けたところからちょうど車一台が通れるくらいの砂利道が一直線に伸びている。

車の窓を全開にしてみると、とても爽やかな空気が一気に入り込んでくる。

でも

その砂利道の先に。その廃ビルが建っていた

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 22:15:08.80 ID:S9fnaX760
男「…あれか?あれ、だよな…」

女友「あれしかないでしょ。」

男友「…おかしいだろ、これ…」

女「…起きてたんだ…」

男友「こんなとこに廃ビルが建っていること自体…ありえないって…」

男「変だよなぁ。な?謎だらk」

男友「ふざけんなよ!!」

「…」

「…」

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 22:20:44.52 ID:S9fnaX760
男友「お前ら絶対わかってねぇだろッ!おかしいんだぞ!?謎なんだぞ!?この時点で!」

女「ちょっと?男友、男友…落ち着こうよ。ね?」

男友「もう絶対…入ったらダメってことだろ!これ…」

男友の尋常じゃない怯え方に女も、女友も、俺までもが呆気に取られていた。

異常だ。これは異常だ。非常事態だ。引き返すべきだ。

「…」

「…」

その内男友も頭を抱えたまま黙ってしまった。

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 22:24:01.39 ID:S9fnaX760
行きたい

あの廃ビルに入りたい

何があるのか確かめたい

気になる

すごい気になる

でも、多分何も起きないだろう

起きたとしてもあとで笑い話になる程度の事しか起きないだろう

それで十分

それに

どっかのホラー漫画じゃあるまいしそう怖いことなんか起こるはずないんだって

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 22:27:11.28 ID:S9fnaX760
いや、違うだろ

さっきから男友が言ってるだろ

こんな辺鄙な所に廃ビルが建っている事自体が異常だ

怖い。というのとは何か違う気がするけど

ありえない

女友「…ねぇ。やっぱ。やめよう?男友がなんか…ヤバいよ…」

男「…」

答えたくない。

行く、とも言いたくないし

行かない、とも言いたくない

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 22:36:14.38 ID:S9fnaX760
男「よし、わかった!入り口のさ、ところだけ…見て帰ろ?俺一人でこっから廃ビルまで歩いていくから。お前ら二人で男友見ててよ」

女友「いや、行かない方がいいって…!ホント、ヤバいって…!」

男「…いやいや、入り口だけだから。中には入らない」

女友「…」

女「じゃあ…あたしも行こっかな」

女友「え?行くの?…ねぇえぇもー帰ろうよぉ…」

本気だ。

女友も本気で怖がっている。

まだ何も起こっていない

まだ何も起こっていないのに女友と男友の様子を見ているだけで嫌な息苦しさが

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 22:42:35.95 ID:S9fnaX760
男「だーいじょうぶだって…ホント、ホントすぐ戻ってくっから。な?」

女友「…ホントすぐだよ?2分以内」

男「…それはちょっと短すぎだわ」

少しでも場の雰囲気を和ませようと茶化すように笑ったが

やはり何の効果もないようだ

男「…じゃあ行ってくるわ…」

女友「…」

男「…5分、な?5分ならいいだろ?」

女友がゆっくりと頷いたのを見ると俺と女は車から降りた。

車のエンジンはかけっぱなしだ

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 22:48:08.25 ID:S9fnaX760
車を降りてから廃ビルに辿り着くまで俺と女は無言だった

…元々ちょっとしたよくある肝試しとか

そういうノリでここに来たはずだ

本当にホラー漫画でよくあるような

面白半分で心霊スポットを訪れた若者4人

ホラー漫画だと大抵この後の展開は

何か不気味な出来事が立て続けに起こり

若者達は死ぬなり怪我をするなり慌てて逃げ出すなり

…いや、ないって…

漫画じゃねーんだもん

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 22:56:34.63 ID:S9fnaX760
とうとう廃ビルの前に辿り着いた。

…いや、『とうとう』なんて言い方はやめよう

男「…うん、やっぱ近くまでくると…すげぇでけぇな…」

女「…やっぱ、ビルだもんね」

男「入り口、あそこ、か…扉ないし…思った以上にボロボロなんだなぁ」

俺が一歩足を踏み入れようとするとぐいっと女に手を引かれた

女「…も、十分でしょ。…帰ろ」

俺が答えるのを待たずに女は俺の腕を引っ張って引き返そうとする

…その俺の腕を掴む力の強さにまた、ただならぬ女の『怯え』を感じた。

…なんなんだよ…みんなして…

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 23:04:06.09 ID:S9fnaX760
…すっかりみんなの気分が落ち込んでしまった。

いや…落ち込んでしまったなんてものじゃあない。

…みんな異常だ。

異常に怯えている。男友に至ってはヒステリックに怒鳴り声を上げていた

なんで?

確かにこんなところに廃ビルなんて建ってるはずがn

急な違和感を覚えたのはそこまで考えてからだった。

あまりにも急な違和感の侵入に思考がぷつり途切れるのを感じた。

女も違和感を感じたようで俺の腕を持ったまま立ち止まっている。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 23:09:33.85 ID:S9fnaX760
違和感の正体を考える。

…そうだ。

静かすぎるんだ。

ここに来てやけに静かだな、と感じると言うことは

さっきまで俺が無意識に聞き続けてきた『音』があるはず

…では、その『音』を考える。

何の音?答えはすぐ出た。車の音だ



車のエンジンがかかっていない

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 23:15:40.81 ID:S9fnaX760
…あれ?エンジンがかかってないって…なんで?

いやいや(笑)おかしいことなんかないだろ。エンジンが切れてるくらいで

…いやいやいやいや、おかしいだろ。なんでわざわざ?

車の燃料に気を遣って?

バカか。今の女友や男友に気を遣う余裕なんてあるわけねぇだろ

男「…エンジン…止まってる」

まだ違和感の正体を探っていたのか女は俺の一言で目を見開き、こっちを見た

しばらくお互い見つめあう。

もう茶化すとかそんな余裕もない。これはもう…ヤバい

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 23:21:22.48 ID:S9fnaX760
これはいよいよヤバくなってきた。

…ゆっくりと、車に近づいていく。


車内に男友と女友の姿はなかった


男「…いない…」

俺の腕を痛いくらいの力で抱えている女を半ば無理やり引き剥がし

車の下を覗き込み、トランクも空け、辺りを見回す。

目を凝らして、たっぷり時間をかけて回りを見回す。

その後もう一度つぶやいた

男「…いない…」

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 23:27:33.67 ID:S9fnaX760
息が苦しい。涙が出てきた。

どうしよう。

今の頭の中はどうしようという言葉でいっぱいだ。

女もぺたりと尻餅を付いたままぴくりとも動けないでいる。

俺もしばらく立ち尽くす

あいつらのイタズラかとも考えた

でも、車の下にもトランクにもいない。

他に人が二人隠れられそうな場所はない。

これが本当にイタズラだとしたらあいつらはマジシャンで食っていけるだろう

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 23:33:19.91 ID:S9fnaX760
…どれくらいの時間立ち尽くしていたか判らない

だがある程度俺の頭も落ち着いてきた

まずは車を出そう。

ここで今更車の鍵が閉まっている可能性があることに気付く

エンジンがかかっていないということは車のキーが抜かれている可能性もあるからだ

…と思ったのも一瞬でドアはすんなり開き、ホッと胸を撫で下ろし運転席に座る



車のキーは抜かれていた

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 23:38:44.53 ID:S9fnaX760
ガバっと慌てて運転席の足元や助手席などを覗き込む

両手のひらを乱暴に這わせて車のキーを捜す

無いわけが無い

無いわけが無い

こんなことになる訳が無い





十五分探し続けた結果

車のキーは見つからなかった

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 23:42:47.46 ID:S9fnaX760
男「…うっ…うぅうっ…」

晴々とした空を見上げて嗚咽を漏らす

言ってるだろう

さっきから

こんなホラー漫画みたいな…

泣いた事を情けないともみっともないとも思わなかった

だってそんな暇ねぇんだもん



48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 23:49:31.56 ID:S9fnaX760
流した涙や鼻水を拭いもせずに女のいた場所を見やると女はいなかった

ふと横を見ると女は森に向かって砂利道を歩いていた

その足取りは重く、おぼつかない。

男「う”う”っおっおんな”ぁっ」

もう恥も外聞もない

よたよたと女の方へ駆け寄っていく

涙で前が見えない

男「ずずっ…ど、どこっ…い”くんだよ”ぉ…」

女「…もう帰る…」

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 23:57:29.14 ID:S9fnaX760
男「…あるいて?」

女「…だって…それしかないじゃん…もう…それしか…」

女はブツブツと独り言のように砂利道をトボトボと歩いていく

…車でもここまでくるのに相当な時間がかかったのに

…いや山道を抜ければなんとかなるかもしれない

山道を抜けるだけなら、徒歩でもそんなに時間はかからないだろう

男「うっ…で、でも…男友と…女友は…?」

女「先に帰ったんでしょ…」

女はこっちを振り向きもせずに即答した。またしても独り言のように呟いて

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 00:07:38.00 ID:5Swonsfl0 [1/21]
そんな訳ないのはすぐにわかった

わざわざ車を置いて徒歩で帰る意味が解らない

…なぁ

…ホントにあの二人はどこ行っちゃったんだよ!?

まず帰っていないことは確かだ

その二人を置いていく訳にもいかない

それと…あの今女が向かっている山道。

なんとなく…本当になんとなくだけど。

入ってはいけない気がして。単に怖がってるだけかもしれないけど

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 00:14:55.29 ID:5Swonsfl0 [2/21]
男「ま、待って…まだ…帰るなって…ヤバいから…」

俺は必死に引きとめようと女の肩を弱弱しく掴み引こうとする

女はそんな俺の手を乱暴に振り払い、尚も歩き続ける

だが、断固として行かせる訳にはいかない

もう一度説得を試みようとしたその時だった

女「いい加減にしろテメェ!!」

一瞬

何が起こったのかは解らなかった

あまりに唐突な出来事に気を失ったのかとさえ思った

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 00:20:41.57 ID:5Swonsfl0 [3/21]
気が付けば俺は仰向けに倒れていて

女は俺の身体に馬乗りになっている

女「帰らせろって言ってんのに…帰らせろって言ってんのに…!」

気が付いた時にはもう遅く

女は俺の喉を潰す気なんじゃないかという程の力で俺の首を絞めていく

女の両目は真赤に血走り、食いしばった歯を露出させ時折『ふーっ…ふーっ…』と息を荒げている

男「…ッっ!!…カっ…!」

一気に意識が遠くなる

死ぬ

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 00:22:04.70 ID:5Swonsfl0 [4/21]
どうしちゃったのお前

わかった

いや、わかったから

帰っていいから

帰っていいから

手ぇ離せって

しゃべれねぇって

死ぬって

死ぬって

死ぬって

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 00:28:06.86 ID:5Swonsfl0 [5/21]
朦朧とした意識の中、渾身の力を込めて俺の首を絞める女の手首を握った

そして

自分でも出したことの無いような力で女の手首に爪を食い込ませる

女「…ッ、い、痛…痛い痛いッ…って…ってーんだよ!!」

俺の首から女の両手が離れた

さらに俺の腹に跨っていた腰も一瞬浮く

その隙を見逃さず俺はガバっと上半身を起こし女の顔面に頭突きを叩き込む

女「…ッぷ」

女は派手に倒れこむ

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 00:31:36.26 ID:5Swonsfl0 [6/21]
俺が女の手首に爪を食い込ませた時点で

女に襲われたという恐怖は怒りに変わっていた

俺は何も考えず

ただその怒りに身を委ね、仰向けに倒れこんでいる女に飛び掛る

そして同じように女に馬乗りになり

殴る

殴る

鼻血が噴き出し唇も切れて女の顔は血まみれだ

それでも殴る

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 00:38:00.98 ID:5Swonsfl0 [7/21]
そして十分に女が弱ったところで

女の首に手をかける

そして思いっきり

全体重をかけ絞めていく

女「…グゥ…ゲッ…」

女は喉の奥から搾り出したような呻き声をあげ、頭をグラグラと揺らしている

そこで急に我にかえる

タイミングとしては最悪だ

これ以上やったら…女は死んでしまう

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 00:43:16.24 ID:5Swonsfl0 [8/21]
迷った

…いやいや迷うとかじゃなくてさ

手を離せよ。すぐに

だって手ぇ離したら…今度はどんな仕返しされるか…

両手の力を少し緩める

人殺しなんて嫌だ

でも手を離したらこっちが危ないかもしれない

女の指先がピクリと動いた

ダメだ

まずい

ヤバいかも

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 00:49:10.41 ID:5Swonsfl0 [9/21]
…結局

結局こんなことになっちゃう

女はもう動かない

ダメだもう

俺もうダメっぽい

ヘナヘナと座り込みひざを抱えて泣く

もう死なずとも俺の人生は終わった

もうどうにでもなれ

空はいつの間にか赤く染まり太陽も沈みかけていた

もうすぐ夜が来る

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 00:54:35.79 ID:5Swonsfl0 [10/21]
…俺は車の中でずっと泣いていた

夜が来るまで

そして、夜が来ても俺は泣いている

だって泣くしかすることがない

もうここで飢え死にするまで泣いてやろうか

俺はこれからずっと

死を迎えるまでここにいることを決めた

少なくとも何か変化が訪れるまではここを動かない

もういい。

もう疲れたもん

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 00:59:41.78 ID:5Swonsfl0 [11/21]
そう決めてから10分経っていないだろう

変化が訪れた

人影が見えたのだ

方向的におそらく廃ビルから出てきたのだろう

反射的に身を隠してしまう

運転席の足元にもぐりこみ

そーっと外の様子を窺う

と、突然の眩しい光に俺は目を固く瞑る

おそらく懐中電灯でも持っているのだろう

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 01:04:45.88 ID:5Swonsfl0 [12/21]
辺りはどんどん暗くなっていき

気が付けばまるで停電になったような暗さになっていた

男「で、…電気…」

俺は素早く、というか焦って後部座席から荷物を取り出し

事前の準備で持ってきていた懐中電灯を探した

…あれ?

懐中電灯がない

懐中電灯が

ない

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 01:09:37.87 ID:5Swonsfl0 [13/21]
いや

いやいや

そんなはずないだろ

持ってきたって。確かに

辺りは真っ暗闇で目が見えないのでもっと慎重に探す



ない

…唐突に

本当に唐突にさっきまで忘れかけていた恐怖が一気にぶり返してきた

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 01:14:34.63 ID:5Swonsfl0 [14/21]
だってよく考えたら

あの人影が誰か知らないけどさ

こんなところに車が停まってたら誰だって不自然に思う…!

…またしても息苦しくなってきた胸を手で押さえ

そっと外の様子を窺ってみる

…ッ!!

やはり光でよく見えなかったがこれで確信できた

あの人影は間違いなくこの車に向かってきている

運転席以外の鍵を閉めていない!

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/07/14(水) 01:20:33.98 ID:5Swonsfl0 [15/21]
や、ヤバい…本気でヤバいってこれ…

今から鍵を閉めようとすれば車の外からでも俺の姿が見えてしまうだろう

…いやいや鍵閉めなきゃ開けられるに決まってるだろ!

いやでも

別に悪い人じゃねーんじゃ…?

ふざっけんなッ!

そんな奴がこんなところにいるわけねーって

俺は姿を見られるのを覚悟で車の

全てのドアの鍵を閉めていく

76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 01:24:48.96 ID:5Swonsfl0 [16/21]
これで大丈夫なはずだ

窓でも破られない限り

窓を破られれば終わり

怖い

とんでもなく怖いぞこれ

あの人影は誰?

しかし窓が割られたらなんて心配などをする必要は無くなった



全ての鍵が開いたからだ

79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 01:29:32.48 ID:5Swonsfl0 [17/21]
おい

おい

何で?

なんでかぎがかっt

運転席のドアが開いた

即座に反対側のドアから飛び出る

声も出さずに飛び出して走る

暗闇の中を

どこに向かってるのかすらわからない

80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 01:35:42.80 ID:5Swonsfl0 [18/21]
こけては走り

こけては走り

それを繰り返している内に

俺はいつの間にか動けなくなっていた

身体中を派手に切ったり折ったりしたようだ

いや…

もしかしたら気付いてないだけで

俺、既に死んでるんじゃねーのか…?

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 01:39:15.86 ID:5Swonsfl0 [19/21]
とか思ってたら

向こうから懐中電灯の光が

…やっぱ、まだ

生きてんだ

でも

多分これから

死ぬ

「うっう”う”っ…ぐっ…」

その人影は泣いていた

83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 01:44:58.71 ID:5Swonsfl0 [20/21]
…女?

女の声だ

それも聞き覚えのある…

…何で…泣いてんだ?

「…もぉ…やだぁ…」

その人影は…その言葉を最期にその場に倒れ

動かなくなってしまった

血塗れの女

それは女友だった

…つーか…なんでお前…

84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 01:50:20.06 ID:5Swonsfl0 [21/21]
もう何が何だかわっかんねぇや…

もういいや…

俺も助からない

目をゆっくりと閉じる

…意外に心地いい

何でかは判らないけれど

目を開けたら待ってるのは

天国なのかな

地獄なのかな

…もう寝よ


おわし
気が向いたら女友視点とか男友視点とかやりたい
やりたいよぉ

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