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梓 唯先輩は……」

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 16:39:50.55 ID:YM2Kstca0 [1/70]
『遅すぎる回想』


その日、唯は梓の家に招待された。

泊り込みに必要な荷物は全て憂が用意してくれたので、
苦労しなかった。

「いらっしゃい。唯先輩」

玄関先で笑顔の梓が唯を向かえた。

「こんばんわーあずにゃん! あずにゃんが私をお泊りに
 誘ってくれるなんてすごくうれしいよぉ。
 今日はたっぷりあずにゃん分を補給するからね」


唯はそう言いながらあずさに抱きつき、頬すりをする。

普段からけいおん部でしている行為だ。
唯にとってはスキンシップのつもりだが、梓はいつも
人目を気にして恥ずかしがっていた。

だが、そんな梓の態度も唯は好きだった。

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 16:43:54.00 ID:YM2Kstca0
「ふふ。私もうれしいです。両親は旅行に行ってますので
 自分の家だと思ってくつろいでくださいね」

そう言いながら、梓は特別嫌そうな素振りを見せず、
余裕の表情で唯の頭を撫でていた。
それどころか歓迎してくれているようだ。

「?」

それゆえ、唯の頭にクエスチョンマークが浮かんだ。
今日の梓は唯とのスキンシップを
嫌がらないのに違和感を感じたのだ。

「さあ、中に入ってください。とりあえず夕食にしましょう」

「あ、うん」と、唯が玄関に足を踏み入れる。

いつもより事務的な口調で手招きする梓は、
なんと言うか、大人びているというか、淡々としている印象を受ける。

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 16:49:54.05 ID:YM2Kstca0
ちなみに、現在の時刻は夕方である。
唯はお風呂を事前に自宅で済ませてきたが、
食事は梓と一緒にとる約束になっていたのだ。

落ち着いた足取りで廊下を歩く梓の後姿を見ていると、
食卓まで案内された。

「ほえー。これあずにゃんが作ったの?」

唯が感嘆をもらしたのは、既にテーブルに用意してある
料理に対してだった。

「はい。両親がほとんど家にいないので、自分で
 作ることが多かったんです。お口にあえばいいんですけど」

梓は控えめに言うが、普段から憂の手料理を食べている
唯からしても、それは高校生が作るにしては
十分な腕前といえる料理だった。

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 16:55:17.74 ID:YM2Kstca0
「私、料理なんか全然できないからあこがれるなぁ。
 あ、そうだ。このお惣菜。憂が持たせてくれたの」

「くすくす。こんなに? あの子らしいですね。
 量が多すぎちゃいます」

唯が差し出したのは重箱だった。

梓が微笑みながら、重箱の中を開けてみると、
明らかに女の子二人が食べるにしては
多すぎる量のおかずが入っていた。

姉がお腹をすかせないようにと持たせてくれたのだろうか。
過保護な憂らしい選択だ。

「食べられる分だけ食べることにしましょう。
 食べ過ぎてもお腹に悪いですから」

「うん。そうしよっか!」

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 17:01:28.32 ID:YM2Kstca0
そして少々呆れ顔の梓に唯が元気に同意したのだった。
梓は唯の対面に座り、二人は向き合う形となる。

「あ、そうだ。飲み物は何がいいですか?」

まるで今思いついたような梓の問いに対し

「適当にジュースでいいよ」と唯。

「はい。ちょっと待っててくださいね」

自然な笑顔でそう答えた梓が席を立つと、
冷蔵庫からペットボトルを取り出して
2つのコップにオレンジジュースをついでいった。

「なんだか今日は悪いねえぇ。料理まで用意してもらって。
 いたれりつくせりだよ」

唯はまるで妹に面倒をみているような感覚だった。
梓が一つ年下の後輩であることが、妹の面影を
感じさせているのかもしれない。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 17:07:13.25 ID:YM2Kstca0
「ふふ。気にしなくていいですよ?
 唯先輩は座っててください。今日はお客様なんですから」

テーブルにコップを置いていく梓の横顔は、
うっとりするくらいかわいかった。

それから食事中、梓はほとんどしゃべらなかった。
話をするのは唯の方で、梓は愛想よく
相槌をしてくれてはいるが、
話を振ってくることはほとんどなかった。

「あずにゃんは、家だとこんなに静かなの?」

「はい。両親が仕事の関係で家を留守にすることが
 多いので、家は静かだから、それで……」

「ふ~ん。そうなんだぁ」

自嘲げに話す梓は儚げに見えたので、
あまり突っ込んではいけない話かもしれないと
唯は判断し、軽く受け流した。

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 17:13:07.63 ID:YM2Kstca0
唯の家も同様に両親が不在な時が多い。
唯は妹の憂がいるから寂しくはないが、梓は一人っ子だ。
いままで寂しい思いをしてきたというのは、
想像に難しくない。

家と学校では態度の違う人はいるものだ。

普段と雰囲気の違う梓も、これはこれで
かわいいかな、というのが唯の感想だった。

それから話題を変えて適度に雑談をしながら
食事を楽しんでいたが、
まもなくして唯は異変に気がついた。

それは梓の視線だった。

気のせいであってほしいのだが、彼女は
唯の箸を凝視していた。

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 17:19:08.60 ID:YM2Kstca0
「…?」
唯は首をかしげる。

今唯が食べているのは重箱に入っていた
普通の玉子焼きである。
梓は玉子焼きが食べたいのだろうか?

それとも何か自分は悪い振る舞いでもしたのだろうか?
少々不安気味になり、

「あずにゃん? どしたの」と尋ねてみた

「はい?」

「さっきから同じとこばかりじーっと見て
 どうしたの?

唯の密かに探りを入れた質問に帰ってきたのは
意味深な反応だった。

「いえ、ただおいしそうだなぁって」

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 17:25:08.52 ID:YM2Kstca0
まるで小さい子供のように自分の指を
口に加えながら梓がそう言った。

まるで物を欲しがる子供のようだなと唯は思った。
しかし寒気がするのはなぜだろう。
根拠はないが梓の目には、食欲以外の怪しい欲求が
含まれているように見えた。

唯は戸惑いながらも聞き返してみる。

「な、何が?」

「唯先輩の……箸が……」

「……ええ!?」

仰天した唯の声が響く。
新手のジョークだろうか。
梓の発言には完全に意表をつかれた形になった。
だが、普段は真面目な梓が冗談を言うとは珍しい。

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 17:31:16.39 ID:YM2Kstca0
そんな唯をよそに、梓はテーブルに
置いてあった唯のコップを取り上げた。

「え…?」
なぜ自分のコップが取り上げられたのか?
だが、そんな素朴な疑問はすぐに吹き飛ぶことになる。

次の瞬間、なんと梓が唯が口をつけた部分を
中心に舐め始めたのだ。

「ん…」

梓は目をつむって唯が口をつけたあたりを
一心不乱に舐めている。
貴重な果実を味わうような神妙な面持ちでだ。

「は…はは。何をしているのかな?あずにゃん。
 そんなにオレンジジュースが飲みたかったのかな…?」

突拍子もない事態に、唯は現実逃避したくなった。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 17:37:04.12 ID:YM2Kstca0
しかし、コップの中にオレンジジュースはほとんど
入っていない。
それに彼女は明らかにジュースを飲んでおらず、
コップそのものを舐めている。

ましてオレンジュースは梓のコップにも
注いであるのだ。わざわざ唯のコップを飲む理由がるとすれば…。

「あ、あのぉ。それ、私のコップなんだけど…?」

「……んん。これが、唯先輩の味…」

唯のささやかな抗議は、梓の耳に入っていないようだった。
人の唾液にどんな味があるのか理解できないが、
梓は自分の世界に入り込んでいる。

唯はどうしようかと考え、「わわ、私、新しいコップ、とってくるね!!」
箸を置いて立ち上がり、戸棚からコップを取り出すことにした。
これ以上梓の痴態を見ていられなくなったのだ。

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 17:43:18.37 ID:YM2Kstca0
戸棚の扉を開けながら、これから梓にどう接するべきかと考え、
ふと梓のいる方を振り向くとすぐに後悔することになる。

唯の目は点になっていた。

「えーっと……君は何をしてるのかな? 
 あずにゃん…?」

「おいし……唯先輩の…お箸……」

梓は唯の箸を口に加え、ちゅばちゅばと
いやらしい音を立てながら舐めている。

舐めるのに夢中なようで、唯の箸から、それを
持っている自身の手までよだれでいっぱいになっていた。

「はぁ……はぁ……私、唯先輩と間接キスしてる…」

さらに信じられないことに、梓は目をつむりながら、
スカートの中に差し込まれた手をいやらしく動かしている。
自慰の最中のようだ。

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 17:56:59.26 ID:YM2Kstca0
そのままスカートの中で梓はの手の動きは早まり、同時に
梓の吐く息が荒く、艶かしさを交えたものに変化していく。

「はぁ…はぁ……すごい……」

目はとろんとしており、箸を舐めている口の
周りはだらしなくよだれをたらしているが、
今の彼女にとってはどうでもいいこのようだ。

「…これは…一体?」

唯はポカンと口を開けた。

梓のことは、生真面目な後輩というイメージが強かった。
真面目といえば澪もそうだが、梓はそれに輪を掛けた
神経質という印象。

目の前で痴態を見せているのは……本当に梓なのか。

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 18:02:09.43 ID:YM2Kstca0
いくら家の中とはいえ、外と中とで、
ここまで豹変する人はそういないだろう。
数分前までは食事を楽しんでいたのが嘘のような惨状である。


「んん……はぁ…ちゅ…先輩?」

その梓の目が一瞬だけ、唯の視線と交差したとき、

「ひいい!」
唯は全身の毛が逆立ってしまった。
頭の中に、裸で梓に迫られる想像がよぎったのだ。

今判断できるのは、これ以上ここに留まっては
大変なことになるということ。

貞操の危機を感じた唯の行動は早かった。

「た、助けてえええええええ!」

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 18:08:26.33 ID:YM2Kstca0
唯は一目散に逃げ出した。
梓は異常だ。早く、早く家に帰りたい。

「どこ行くんですかー!? 待ってくださいよ!!」

後ろから梓の声が聞こえるが構う必要はない。
玄関はすぐそこだ。

しかし、 

「ひゃあ!」

逃げる途中で何かに足を引っ掛けた。
受身を取る暇もなく、派手に転倒してしまう。

「い、いたたたた?」
よく見ると足元にロープが張ってある。
どうやらこれに足を引っ掛けたらしい。
まるで子供がしかけたようなトラップだが、
冷静さを失った唯には充分な効果があったようだ。

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 18:14:06.88 ID:YM2Kstca0
そして梓が追いつくにも。

「捕まえましたよ。
 駄目じゃないですか食事中に逃げたりしたら」

梓は唯の手をがっしりと掴んでいる。
一見すると笑顔のようで、目は全く笑っていなかった。

「ひ…」と心底嫌そうな顔で梓を見上げる唯。

「……さあ、食卓に戻りましょうか」

梓は唯の手を強引に引っ張る。
その有無を言わさぬ迫力に圧倒されそうになったが、

「嫌」 唯ははっきりと否定した。
対して梓が聞こえない風を装って聞き返す。

「? 何て言いました?」

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 18:20:12.97 ID:YM2Kstca0
「やめて……あずにゃんはこんなことする子じゃない」

唯は強い意志を込めた瞳で梓を睨みつけるが、「……きひひひ」

「ヒヒヒヒヒヒヒヒひひひひひひっひひいひひひっひひいっひいっひい」

突然、梓は笑い始めた。
その顔は唯の知っている可愛い後輩のものではない。

何かが間違っている.唯はそう感じていた。
彼女の顔には人間とは思えないほどの狂気が宿っていた。

「都合の悪いことは全て忘れようとするんですかぁ?
 いつもあんなに愛し合ってたのに……酷いですよ」

梓は笑っていたときとはうって変わって哀しそうな顔をしていた。
まるでいまくなってしまった恋人を思うような顔だった。

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 18:26:22.45 ID:YM2Kstca0
「な、何をするつもりなの?」

「思い出してもらうんです」

梓が唯の服を脱がそうと手をのばすが、

「やめてええええええええええええ!!」

唯は絶叫し、梓の腕を振り解いて全力で突き飛ばした。

「ぐぇ」
すごい勢いで壁に激突した梓は、そのまま
ぐったりと倒れてしまった。


梓はそのまま動かなくなった。
特に目立った外傷はなさそうだが、起きる気配がない。
しばらく沈黙が続いていたが、

「先輩」 梓は倒れたままの状態で声をだした。

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 18:32:12.83 ID:YM2Kstca0
「また、私を置いて行っちゃうんですか?」

それは寂しそうな声だった。
回りの空気が一瞬で冷たくなるのが分かる。
外では風が吹いているのか、窓がガタガタ揺れる
音がやけに大きく響いている。

唯がそう感じていると、異変はすぐに起きた。
(どうしてだろう。頭がフラフラする)

その感覚は、例えるなら螺旋を見ているよう。
唯の視界は反転し、光と闇が交互に入れ替わるような
ゆったりとした点滅を繰り返した後、意識が飛んでいく。

「~~~~~~~」
梓の声がやかましく聞こえるが、よく聞き取れない。
そんなことより今は強烈に頭が痛い。

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 18:38:10.69 ID:YM2Kstca0
(目の前が、真っ暗で何も見えない……)

自分が自分でなくなるような焦燥感は
生まれて初めて感じるものだった。
何も考えられなくなる。

そのまま唯の意識は完全に飛んでしまった。





「お姉ちゃん」
あれからどれだけの時間がたったのか。
今の唯にはわからない

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 18:44:08.98 ID:YM2Kstca0
「お姉ちゃん。いつまで寝てるの?
 早く次のお店に行こう?」

これは懐かしい妹の声。
毎日聞いているはずの声が懐かしく聞こえるなんて滑稽だな。
唯はそう思いながら、鉄のように思いまぶたを開ける。

「あ、ようやく起きたんだね お姉ちゃん」

優しい妹が唯に微笑んでいた。
意識が覚醒すると、ようやく自身の置かれている
状況に気がついてく。

「もう、食事の途中で寝るなんて唯先輩らしいですね」

そう言って苦笑するのは梓だった。
普段学校で見せるような、今にもやれやれと
言われそうな苦笑した顔。いつもの梓だった。

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 18:50:14.95 ID:YM2Kstca0
「え? ここはどこ?」 唯は眠たい目をこすりながらあたりを見渡す。

「どこって喫茶店ですよ。忘れたんですか?」

梓がしれっと言い放った。
同時に店の喧騒が耳に入ってくる。

ここは唯達がよく利用している喫茶店の店内だった。
憂と梓と3人で4人掛けのテーブルに座っているようだ。
回りを見渡すと客の入りはそこそこといったところ。
そのへんを忙しそうにウエイトレスが行きかっている。

「もうずいぶん長い時間ここにいるし、
 そろそろおいとましようか」

憂が腕時計を確認しながら言った。唯が店内の壁掛けの
時計を見ると、すでに時刻は昼過ぎのようだった。

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 18:56:48.15 ID:YM2Kstca0
「そうだね。次はどこいこっか」
憂の提案に梓が同意すると、二人は席を立った。

テーブルにはパフェなどのデザートの容器が
空になっている。既に食後ということか。
よく見ると自分が食べたと思われる空の皿がいくつか
並んでいるが、なぜか記憶にない。

「唯先輩。ボーっとしてないで早くいきましょう」

「え? あ、うん」

梓に促され、唯があわてて席を立つ。
先に席を立った憂は、レジスターで
会計を済ませているところだった。

それが済むまで、
梓と唯は、先に外に出て待つことにした。

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 19:02:11.61 ID:YM2Kstca0
「ふぅ。今日も暑いですねぇ」
梓が店の外に出たと同時に伸びをしていた。

日差しは嫌味なくらいに照っており、空は
晴天だ。車道では車の通行が激しく、
遠慮なく排気ガスを撒き散らしていた。

耳をすますと、遠くからセミの鳴き声が聞こえる。
しばらくそのままでいると、会計を済ませた憂が
こちらに小走りで近寄ってくるのが見えた。

「お待たせ~。二人とも 次はどこに行こうか?」

「う~ん。カラオケなんてどうかな?」

梓がそう答えると、憂は乗り気のようだった。

「いいね~。お姉ちゃんもカラオケでいいよね?」

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 19:08:09.69 ID:YM2Kstca0
憂が唯に同意を求めてくる。
正直、唯はあまりの夢見の悪さでうなされそうな
気分だったが、気晴らしにはいいかなと思った。

「う、うん。行こうかカラオケ」

曖昧な返事をした唯は、背中の冷や汗をぬぐうため、
家に帰ったらすぐにシャワーを浴びようと
決心したのだった。


唯にとって、カラオケはいい気晴らしになった。
遠慮なく歌えたし、
心の奥底にある鬱憤を晴らせた気がする。

その後は中古の楽器販売店や雑貨店を回り、
その日は解散した。

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 19:14:10.26 ID:YM2Kstca0
「今日は楽しかったね、お姉ちゃん」

帰り道は憂と二人だった。
今日は夢の中のような恐ろしい事態は何も

起きない普通の休日のようだった。
梓も普段通りのまともな様子だった。

喫茶店では変な夢を見たが、夢はは所詮夢だったのだ。
そう自分を納得させ、
喫茶店で見た悪夢のことは忘れることにした。

憂と共に自宅に帰ると、
玄関に見知らぬ物が置いてあるのに気がついた

「これ、お姉ちゃんのDVD?」
憂が手に取ったのは、1枚のDVD-Rだった。
不思議そうにディスクケースを眺めている。

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 19:20:02.93 ID:YM2Kstca0
「違うよ。私、DVDなんて滅多に見ないし、
 こういう機械の操作ってよくわからないもん。
 誰かが置いていったのかな?」

唯にとっても見覚えのないディスクだった。
PCをいじらなければ、DVDプレイヤーで
録画をすることもない彼女にとって、普段は無縁のものだ。

「わからないけど、なんだか気味が悪いね。
 いならないなら後で捨てておこうか?」

心配そうに言う妹に対して、唯は迷った。
DVDの中身が何なのか気になるが、それ以上に
家に置いてある理由がわからない。

やはり誰かが意図して置いていったのか。
もしかしたら律達が考えたいたずらの可能性もなくはない。
今日、憂が施錠を忘れて外出していればの話だが。いずれにしても謎だ。

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 19:40:11.51 ID:YM2Kstca0
しばらく悩んでいたが、
見る決心がついたのは、その日の夜だ。

「…とりあえず、見てみよう。いらなければ捨てればいいんだし」

夕食後、DVDを再生することになった。

唯はあまり乗り気ではなかったが、
映像を見るだけだし、悪くはないかと思った。
現在、憂は入浴中なので、おもしろい内容だったら、
後で一緒に観ようと思った。

「それじゃあ、再生っと」
DVDをプレイヤーに挿入し、リモコンを操作する
液晶テレビに映像が映し出された。

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 19:46:09.36 ID:YM2Kstca0
「あぁ カミサマお願い…」

耳を澄まさなければ聞き落としてしまいそうな小さな声が
流れ始めた。
例えば映画のオープニングなどの類ではなく、画面の中の
人物がアカペラで歌っているようだ。

「二人だけのDream Timeください…♪」

「お気に入りのうさちゃん抱いて今夜もオヤスミ…♪」

薄暗くてよく見えないが、ここは放課後の音楽室だろうか。
歌っている人物はこちらに背を向けているため、
顔は特定できない。

目を凝らして画面を見ていると、
「~~~!」別の人の声が聞こえてきた。
歌っている人物とは違うものだ。どうやら中に居るのは1人ではないらしい。

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 19:52:16.58 ID:YM2Kstca0
「ふわふわ時間(タイム) ふわふわ時間(タイム)……♪」 

尚も歌い声が聞こえるが、その合間に、
「ああ……もっと………すごい…」
別の人物の呟きが聞こえる。一体、中で何が起きているのか

それにしても画面が暗い。
部室は電気が全て消えており、
窓からかすかに漏れる夕方の空が室内を照らしている。

意図的に暗くしているようで、中の様子は
ほとんど視認できないし、人物の顔さえよく見えない。

これを撮影した人はよほど不親切な人物なのだな
と唯が思っていると、「うう……っ……」
今度は押し殺した声が聞こえてきた。

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 19:58:24.14 ID:YM2Kstca0
「ふわふわ時間(タイム)……♪」 

「ふとした仕草に今日もハートZUKI★ZUKI…♪」

歌っている者は、まるで子守唄のような小声で歌いながら、
椅子ごと窓の方を向いて座っているため、カメラに
背を向けてる形だ。興味がなさそうに外の景色を眺めていた。

「さりげな笑顔を深読みしすぎてover heat!…♪」

歌っている者の手には鈍く光る縄のような形をしたものが握られていた。
よく見るとそれは鎖であり、数メートル離れた床の辺りまで
伸びている。

視線をそちらに移行すると、椅子に鎖で固定されている物体がある。
カメラはその物体をズームアップした。

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 20:04:05.65 ID:YM2Kstca0
「うぅ………お願い………もっと…」

暗がりの中でもわかる特徴的な黒髪のツインテールヘア。
物体の正体は人だ。中野梓だった。

(どうしてあずにゃんが…?)

梓は鎖で体中を拘束され、椅子に縛られている。

両手は後ろ手に、両足はそれぞれの椅子の足に固定されており、
ちょうど足を開いた状態だ。
衣服は一切身に着けておらず、首輪が装着されていた。

「はぁぁ……ん………あぁ……」

梓はあえぎ声を上げていた。
梓の近くにいる人物が梓の秘所に太いバイブを
出し入れしており、その度に梓が声を漏らしていた。

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 20:10:07.64 ID:YM2Kstca0
「もっと…強く…ついてぇ」

だらしなくよだれを垂らしながらおねだりをしていた。
口をパクパクと空け、快楽に酔っているようだった。
椅子の下は梓の愛液で一杯になっている。

「はぁ…はぁ… ~~先輩…!」

ーーっ
梓が誰かの名前を呟いたところで映像は途切れた。

(これは一体何?信じられない…
 どうして放課後の音楽室でこんなことが…)

再生中、唯は映像に釘付けになっていた。
自分の背中がびっしょり濡れているのは、
ずっと冷や汗が流れていたからだった。

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 20:16:18.24 ID:YM2Kstca0
一体どれだけの時間がたったのかもわからない。
液晶画面には、真っ暗な自分の顔が映っている。

だが、何かが引っかかる感じがした。
あきらかに現実離れしているのに、
なぜかこの映像が他人事ではないような気がする。
唯は頭を抱えながら記憶の底を探ろうとするが、
酷い頭通がして何も考えられなくなってしまう。


「お姉ちゃん? お風呂、あがったよ?」

「!」

妹の声で意識が現実世界に戻った気がする。
憂が風呂からでたようだ。

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 20:22:07.36 ID:YM2Kstca0
「あ、そ、そうなんだ。それじゃ次は私が入るね」

そう言いながら唯はこっそりとディスクを忍ばせ、
着替えを取りに行こうとしたところで
妹からのピンポイントの質問に見舞われる。

「そういえばあのDVD、どんな内容だった?」

「…………内容はつまらないものだったよ?
 後で私が捨てておくからね」

とりあえず適当に誤魔化しておくことにした。
そして早歩きでその場から立ち去る。

このDVDは妹に見せない方がいい。
これ以上余計な追求をされる前に、あのDVDは
自分の部屋の机の中にしまっておくことに決めたのだった。

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 20:28:10.75 ID:YM2Kstca0
入浴後、すぐに唯はベッドで横になった。
今日は色々と訳のわからない事が起きたが、
誰にでも嫌な1日はあるものだ。

あまり気にしすぎるのは精神衛生上良くない。
そう判断して眠ることにした。

きゅっと目をつむる。
時計を見ると、まだ眠るには早い時間だが、かまわない。
もう二度と怖い夢を見なくていいように祈りながら、
唯は静かに眠りについた。

……。

今日は精神的に疲れていたのか、あっというまに睡魔に負けて眠りに着いた。

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 20:35:06.31 ID:YM2Kstca0
……。

頭がふわふわしている不思議な感覚。
ここは……夢の中だろうか?

「…」

梓が玄関で倒れている。

見覚えのあるこの玄関は、梓の家のものだ。
唯は梓を突き飛ばしたままのポーズ
で立ち尽くしている。

ーー

感じたのは、強烈な既視感。
また、戻ってきてしまったのか?

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 20:55:13.22 ID:YM2Kstca0
ーー

これは悪夢だ。直感でわかる。

「よかった。覚えてたんですね? 私のこと」

梓がゆっくりと起き上がり、
唯の顔を心配そうに覗き込んでいた。

(何を言っているの?)

「あなたに思い出して欲しくて
 ここで待っていました」

それは、唯にとって意味がわからないセリフだった。
唯の夢の中で待っていたという意味なのだろうか。

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 20:58:05.77 ID:YM2Kstca0
「さあ、私の部屋に行きましょう。
 まだ夜は長いですから」

梓はフラフラとした様子で立ち上がり、唯の手を引いた。
淡々とした、大人びた梓の口調。あの時と同じだ。
唯の知っている梓とは違う、もう1人の梓。

唯は廊下を進んでいく梓の後姿をずっと見ていた。

梓はそのまま階段を上がり、唯を自室へ連れ込もう
とするが、唯は抵抗しようと思わなかった。

どうせ夢なのだから、ここで何が起きてもいずれは
覚めるのだと思ったからだ。
一つ気がかりなのは、梓の小さな腕に掴まれている感触は
妙にリアルだったことだった。

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 21:04:12.75 ID:YM2Kstca0
梓のベッドに運ばれてから、すぐに行為は開始された。


「ああ、唯先輩のココ、すごい濡れてます。
 私が、キレイにしてあげますね?」

「……あ……あ…も、う……やめ…てよ」

唯はベッドの上で拘束されていた。
両手をばんざいするような形で縛られており、
縄はベッドで固定されている。

「はぁはぁ……私、唯先輩のあそこに、顔を埋めちゃってる…」

唯のスカートの中に、梓の顔が侵入していた。
せめてもの抵抗として足を閉じようとしたが、
梓の手で押さえられている。

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 21:10:28.45 ID:YM2Kstca0
「唯、先輩……感じてるんですか?」

素肌に感じるのは、梓の獣のような熱い吐息だった。

秘所の割れ目をなぞるように梓の舌が上下にはっていく。
そして時間と共に流れ出す唯の愛液が、
シーツに染み込んでいった。

「先輩のここ、すごいことになってますよ。
 まるで洪水みたい」

下品にピチャピチャと音を立てて唯の秘所を舐めていく梓。
その舌の感触がくすぐったくて、唯は足を
くねらすようにするように動かしていた。

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 21:16:13.07 ID:YM2Kstca0
「先輩、さっきから静かですね。気持ちよくなかったですか?」

梓が不満そうに唯の顔を覗き込んだ。

「……」

唯は返事をしないかわりに、
唯は行為の間中、ずっと考えていた疑問を口にした。

「あなたは、中野梓ちゃんなの?」

前回の夢の時から抱いていた疑問だった。
夢の住人とはいえ、オリジナルの中野梓からは
かけ離れている。

「…………私と一緒にいるのは、いやですか?」

なぜか梓は哀しそうに目をふせている。

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 21:22:10.69 ID:YM2Kstca0
だが唯は梓のことを
さらに突き放すように心情を吐露した。

「うん。私、あなたのことが怖いもん」

「…………そうですか。残念です。でも
 私のこと、忘れないで下さいね。
 またいつでも再開できるんですから」

はっきりとした拒絶は梓にとって
つらいものだったらしい。
梓が達観したように目をつむる。

その次の瞬間、

唯の視線はぼやけ、意識が遠のいていく。

(ああ。まただ。この感覚……)

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 21:27:17.86 ID:YM2Kstca0
デジャブ。

目の前で火花が散るような明暗の連続。
体中から力が抜けていき、
脳が酸素欠乏のような状態に陥る。

そして…

「お姉ちゃん。起きないと駄目だよ!」

それはどこからか聞こえてくる声だった。

「お姉ちゃん。早く起きないと、
 遅刻するよ?」

ベッドの上で布団に包まるという安心感。
そんな夢心地から覚ましてくれるのは、妹の憂の声だった

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 21:32:16.28 ID:YM2Kstca0
もう何度繰り返されてきたかわからない朝のやりとりだ。
ベッドから起き上がると、唯の意識は
驚くほどはっきりしていた。

「いつも起こしてくれてありがと。
 すぐに支度するね」

唯が手で髪の毛を触り、今日も寝癖が酷いことを確認しながら
ベッドから降りる。カーテンの隙間から入る日光が眩しい。
今日もいい日になりそうだった。

「うん。急いでね。
 私、玄関で待ってるから」
憂はいつになく急かしていた。

目覚まし時計で時間を確認したが、
もう朝食を食べる時間はないようだ。

80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 22:02:37.22 ID:YM2Kstca0
その後、唯は急いで身支度を済ませ、
玄関で憂と合流した。

学校についてからも、唯はずっと考えごとを
していた。

昨日見た夢のことだ。

喫茶店で見た夢と、昨夜見た夢は連続して続いていた。
まるでビデオテープを連続して再生したように。

あの世界の淫乱な梓は、唯の妄想の産物なのか。

考えても分からないが、唯はあの梓に対して、
酷く嫌悪感を感じていた。

できれば、もう二度と見たくない。

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 22:07:33.49 ID:YM2Kstca0
「おいっす。お、みんなそろってるねぇ」

唯が元気に挨拶すしながら扉を開けると、
部室には他のメンバーは全員そろっていた。


「おっす。唯、お茶にしようぜ~」

「唯ちゃん。今日はこんなケーキを用意したんだけど
 どうかな?」

いつも明るい律と、おっとりした雰囲気の紬だ。
紬はヨーロッパから仕入れたというケーキの
説明をしているが、そんなことは唯の頭に入っていなかった。

82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 22:13:12.70 ID:YM2Kstca0
けいおん部ではお茶の際、四つのテーブルを
小中学校の給食のようにくっつけている。
そのテーブルの上座的な位置に座っているのが中野梓だ。

今は彼女のことしか考えられない。

「先輩、私のことをじっと見てどうしたんですか?
 私の顔に何かついてます?」

梓が警戒するような目つきで唯を見ていた。
怪しまれるわけにはいかないので、
唯はできるだけ普通に返した。

「え、えっと、別にぃ。ただあずにゃんにこうしたかっただけ!」

「にゃ!?」

「あずにゃん分の補給~! ごろにゃ~ん!」

83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/12(土) 22:23:18.57 ID:YM2Kstca0
何か感ずかれては困るのだ。少しでも自然に
接するため、唯はふざけた風を装いながら
梓に抱きついた。

「も、もう恥ずかしいじゃないですか!
 やめてくださいよ~」

「え、えへへ~ かわいいなあずにゃんは~」

返ってきたのは、普通の反応だった。
心底よかったと唯は思った。
これが日常だ。いつもと変わらない
風景を眺めているのと同じこと。

85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 22:26:13.72 ID:YM2Kstca0
「まあ、二人ともとっても仲良しさんで
 うらやましいわー」

紬がうっとりとした目でこちらを眺めているが、
こんなものはけいおん部の日常風景だ。

唯は安心した。
いつもと変わらないこの空気が好きだった。
この後も特に変わったことはなく、練習もせずに
雑談ばかりして部活は終了した。

87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 22:32:13.85 ID:YM2Kstca0
その日の帰り道、部活メンバーと別れた後、
1人で歩道を歩いていると、
見知らぬ生徒に声をかけられた。


「先輩、待ってください。お話したいことがあるんです」

後ろを振り向くと、
そこにいたのは気弱そうな下級生だった。

黒髪で眼鏡をかけたおとなしそうな女の子。
着ている制服は同じ高校のものだが、
間違いなく初見の生徒だ。見覚えはない。

88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 22:37:16.16 ID:YM2Kstca0
「私、けいおん部のファンなんです。それで、
 平沢先輩とは一度お会いしたいと思っていたんです」

もじもじしながら話すのは初々しさを醸し出し、
可愛らしくもあるのだが、

「へぇ、そうなんだ。それで、用件は?」

正直、唯はいらいらしていた。
昨日二回連続で悪夢を見たため、
精神的に不安定になっていたのだ。

何より今日は早く家に帰って休みたい。

89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 22:43:31.85 ID:YM2Kstca0
「平沢先輩は、何か大切なことを忘れていませんか?」

恐る恐るそう言う女の子。
出会って間もないのに、ずいぶんと意味深な
質問をする娘だった。

「大切なこと? ……ごめん。意味が分からないないや」

冷たくあしらおうとする唯に対し、女の子は
諦めたように一言呟いた。

「…たぶん、家に帰ってじっくり考えると、分かると思います」

「え? さっきから意味がわからないよ。
 結局何が言いたいの?」

91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 22:48:06.70 ID:YM2Kstca0
唯が冷たく返すと、見知らぬ生徒は黙ってしまった。
二人の間に息のつまるような沈黙が流れる。

これ以上ここにいても時間の無駄だと判断した唯は、
踵を返してその場から立ち去ろうとした。

「言いたいことはそれだけ? なら私、帰るけど?」

「はい。私が言いたかったのはそれだけです。
 もしかしたら、もう一度お会いすることがあるかもしれません」

最後にそう言い残してその娘は去っていった。

93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 22:53:27.53 ID:YM2Kstca0
帰宅後、唯はカバンの中にディスクケースが
入っていることに気がついた。
昨日見たあのDVD-Rと同じ種類のものだ。

「!!」

唯は一瞬で寒気がしてしまった。
眩暈さえ覚えるほどの嫌悪感で鳥肌が立つ。
ただでさえイライラしているのに、なぜ
こんなものが入っていたのか?

現状では犯人は特定できないが、
これがもし誰かの嫌がらせだとしたら、
そいつの頭を引っ叩いてやりたいほどだ。

95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 22:58:29.97 ID:YM2Kstca0
唯は衝動でこのDVDを破壊したいと思ったが、
自生した。何者かが私に見て欲しいというのなら、
内容を観てやろうと思ったのだ。

幸い、今の時間なら憂は帰ってきてないから
隠れて鑑賞するにはもってこいだ。


さっそくDVDを再生した。
液晶ディスプレイに映像が映し出される。


ーー。

96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 23:03:08.29 ID:YM2Kstca0
「フガ……ああああ……もう……許し…て、くだ…さ」

画面にドアップで映し出されたのは、またしても梓だ。
縄で両手両足を縛られ、床に寝させられている。

彼女は一切の衣装を身に纏っておらず、
縛り付けている縄がきつく素肌に食い込んでいて
痛そうだった。

「ああ……もう……やめ……てぇ…」

~~~~。

先程から持続して流れ続ける振動音。
それは梓の秘所につけられたローターの音だった。
外れないようにコードの部分を梓の太ももあたりに
テープで固定してある。

97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 23:08:15.77 ID:YM2Kstca0
「ア……ああん……おね、がい……外してぇ……」

ローターの快楽から逃れようと梓は体を芋虫のように
動かすが、無駄のようだった。

それまで画面は梓の姿だけを拡大で映し続けてが、
突然、何者かの声が聞こえてきた。

「すごく、すごくかわいいよ」

「その羞恥で真っ赤になった顔、すごくかわいい。
 興奮して息をするのも苦しそうだね」

「すごくいいよ。顔が涙でぐしゃぐしゃになってるよ?
 それにほら、あなたの体の下、水溜りができてるよ?
 あなたの愛液で一杯のエッチな水溜りが」

98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 23:14:07.91 ID:YM2Kstca0
先程から流されてる声は妙に艶かしい。
誰の声かは分からないが、梓の痴態を
見ながら興奮して話していることはわかる。

言葉責めを好む人物なのだろう。

「やぁ……許して……おか……しく……なっちゃう」

梓はいじらしく体を動かしながら、涙を流し続けていた。
 
「ふふふ。いいわぁ。私も、おかしくなりそう。はぁ……!
 はぁ……はぁ……なんてかわいいの、あずさ」

やがてカメラが移動し、その人物の顔を映し出しす。

99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 23:19:04.28 ID:YM2Kstca0
(…………え!?) 画面を見ている唯が驚愕した。

サドスティックな笑みで宙を仰いであるその人物は、
信じられないことに平沢唯だった。

画面の中の唯は自慰を行っているようだ。
大きく開いた足の間に、ゆっくりとバイブを出し入れ
して自身を刺激していた。そして……

「い……いや……んあああああああ!!」

突如響いた嬌声は梓のものだった。
彼女は体を大きくのけぞらせると、達してしまったようで、
床には噴出した彼女の液体が染み込んでいた。

102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 23:24:30.23 ID:YM2Kstca0
「またイっちゃたんだ。これで何回目? 
 それじゃあそろそろ……」

次の瞬間、ぷつりと音がして映像がシャットアウトされる。


映像はここまでだった。

唯はしばらく呆然としていたが、やっとの思いで
感想をもらした。

「なぜ、私があずにゃんを…!?」

梓の痴態。

そして唯の出演。

混乱しすぎて頭がショートしそうだった。

103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 23:30:06.48 ID:YM2Kstca0
「はは……だれかのいたずらかな?
 一体誰が、こんな手が込んだいたずらを……」

この映像のことを考えるとなぜか頭痛がした。
頭の中にノイズが走っているような感覚。

何か思い出しそうになるが、何かが引っかかって
出てこないようなもどかしい感じは昨日と同じだった

いらいらする。

背中に嫌な汗が流れる。

気持ち悪い。

104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 23:35:32.72 ID:YM2Kstca0
だんだんと精神が不安定になっていくのが自分でもわかるが
どうしようもない。

結局、憂が帰ってくるまで、唯はそのまま頭を抱えていた。


「遅くなってごめんね。スーパーが混んでて大変だったの。
 すぐに夕飯作るから、テレビでも見てて待っててね」

最愛の妹が帰宅したようだ。

憂はエプロンを着ながら、手際よくスーパーの買い物袋から
食材を取り出していった。その動作だけでも
無駄がないのがわかる。
あいからわず、妹の料理のスキルは抜群だ。



105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/12(土) 23:40:03.82 ID:YM2Kstca0
それから少しして流し台で水道水の流れる音が
聞こえてきた。
憂が野菜でも洗っているのだろう。

唯は今日最悪の気分で
テレビなど見たい気分ではない。

することもなく床に横になり、天上を見続けていた。


聞こえるのは、キッチンで水の流れる音だけだ。

106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 23:45:04.59 ID:YM2Kstca0
もう何も考えたくない。
このままでは鬱になりそうだ。

憂が作ってくれたご飯でも食べて元気を
出そうと思った。

その時、


prrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr


静寂をかき消すようなタイミングで電話の音が鳴った。

108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 23:50:03.80 ID:YM2Kstca0
「お姉ちゃーん。出てくれるぅー?」

憂が調理の手を休ませずそう言った。
憂は料理中なのだから、暇な唯が出るのは当然だ。

「うん。今出るから……」

唯が力なく立ち上がって受話器を手に取る。

「はい。ひらさわですけど…」

「唯先輩ですか?」

唯がその声を聴いた瞬間に感じたのは、
なんとも不気味な低いトーンだということ。
まるで感情のこもってない機会音声のようだ。

111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 23:55:12.87 ID:YM2Kstca0
「この声は、あなたもしかして」

唯はこの声に心当たりがあったので聞いてみると、

「はい。梓です」

案の定、梓からの電話だった。
この無機質で淡々とした声は聞き覚えがあったのだ。

「そ…そうかあずにゃんか。元気のない声だから
 誰かと思っちゃよ。それで、わ、私に何の用かな?」

112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/13(日) 00:01:17.49 ID:YM2Kstca0
否が応でもあの夢を思い出してしまう。
だが冷静に考えればここは現実なのだ。
あの梓が出てくるわけがない。
そう信じたかったが、

「明日、家に誰もいないんです。
 1人じゃ寂しいから、泊まりに来てくれませんか?」

電話口でもわかる梓の寂しそうな声。
よほど1人でいるのが寂しいのだろうか。

「べ、別にいいけど、寂しいなら、憂も一緒に連れて行こうか?
 憂ならご飯作ってくれるし」

114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/13(日) 00:06:08.84 ID:agniIgIP0 [1/11]
「ううん。憂は呼ばないで。
 唯先輩と二人きりになりたいです。
 また、いつかのように愛しあいましょうね」

そして一方的に電話は切られた。
それと同時に、混乱する唯の頭の中で、
猛烈な既視感が警笛を鳴らしていた。

最後に梓が言った言葉の意味を探っていると、

「お姉ちゃん。誰からの電話ー?」

キッチンから妹の声。

115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/13(日) 00:11:06.77 ID:agniIgIP0 [2/11]
まさか梓からの電話だとは言いにくい。
やはり適当に誤魔化しておくべきだろうと判断した。

「え、えっといたずら電話、かな……?」

「そうなんだぁ。ご飯できたから、食器並べるの手伝って」

曖昧そうに答える唯だが、憂は大して気にした様子は
なかった。

キッチンからは出来立ての料理のいい香りがしてくる。
ちょうどお腹がすいたし、
とにかく早くご飯を食べて忘れることにした。

119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/13(日) 00:17:29.28 ID:agniIgIP0 [3/11]
食事中、急に気分でも悪くなったのか、
憂はずっと俯いていた。

「…? どうしたの憂、ご飯冷めちゃうよ?」

心配そうに憂を見つめる唯。

だが、

「…」

憂の返事は返ってこない。
いつになく深刻そうな顔をして黙っていた。

「憂? ど、どうしたの? 体の具合でも悪いの?」

122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/13(日) 00:23:07.89 ID:agniIgIP0 [4/11]
唯は妹のただならぬ雰囲気を感じ取っていた。
同時に、家中の空気が歪んでいくような、奇妙な
錯覚を感じる。

なぜだろう。
さっきから寒気がするのは。

「昔から、お姉ちゃんは都合の悪いことは忘れちゃうんだね。
 ねえ、お姉ちゃんはまだこの世界にいるつもりなの?」

唐突に憂が質問した。
理由はわからないがすごい顔でこちらを睨んでいる。

妹の憎悪を秘めた黒い瞳を目にするのは初めてだった。

123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/13(日) 00:28:55.74 ID:agniIgIP0 [5/11]
「お、落ち着いて……憂……」

唯は脅えた声で妹をなだめようとするが、

「早く、早く帰ったほうがいい…!! 」

憂は突然席を立ち上がり、唯に襲い掛かってきた。
唯の上にのしかかり、すごい力で首を絞めてくる。

「ぐ…くるし……」

首の骨ごとへし折られそうな勢いで締めてくる。
情け容赦のないその攻撃は、とても血を分けた
妹の者とは思えない。

124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/13(日) 00:34:51.93 ID:agniIgIP0 [6/11]
このまま私は殺されるのか……

「うあああああああああぁぁぁぁあぁああああああああ!!」

それは自分と妹のどちらの叫び声かも分からない。
隣の家にまで聞こえるんじゃないかと
思うほどの音量だった。
唯は耳鳴りがすると同時に意識が遠のいていく。

視界が色素をったように反転していく。
パチパチと明暗が繰り返される。

(この娘は本当に、私の妹なの?)

それは、この世界で彼女が抱いた最後の疑問だった。

125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/13(日) 00:38:02.85 ID:agniIgIP0 [7/11]
目が覚めると、唯はベッドの上に寝かされていた。

目の前にあるのは中野梓の顔。
彼女は唯に覆いかぶさるように抱きついており、
動物を観察するような目でこちらを見ている。

ここはいつも見る夢の世界のようだ。

唯は梓が何か話し出すのを期待していたが、
話す様子は一向に見受けられない。

改めてあたりを見渡すと、部屋の中は小奇麗に
片付けらている。

127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/13(日) 00:44:13.28 ID:agniIgIP0 [8/11]
目立つのは大きな本棚と机、そして
壁に立てかけてあるギター。あれは梓のムスタングだろう。

部屋の中に漂うのは、自身と梓の性と汗の混じった
蒸せ返すような匂い。どれだけの時間、ここで
行為を続けたのだろうかわからないし、考えたくもない。

一つ気になったのは、ベッドのすぐそばの
テーブルに置いてある透明のビニール。
ビニールに中には怪しい白い薬が入れてある。
知識のない唯でも直感で分かるのは、
あれがドラッグだということだ。

128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/13(日) 00:49:09.26 ID:agniIgIP0 [9/11]
色々考えた末に、達観した唯が呟く。

「ようやく気がついたよ。
 ここが本当の現実世界だったんだね」

「うふふ。ようやく思い出したんですね。
 おかえりなさい。先輩」

梓はほっとした顔で唯の髪を撫でていた。
一見、慈悲深いように見えて、
その顔にはっきりとした狂気が滲み出ている。

131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/13(日) 00:54:14.74 ID:agniIgIP0 [10/11]
「受け入れてくれたんですね。現実を?」

「うん。もう夢をみるのは止めにしたよ。
 私があずにゃんに酷いことをしたからね。
 その罰を受けるべきなのかもね」

唯はだるそうに、最後の力を振り絞るように言った。
自嘲気味に話す唯の瞳には、意思が宿っていなかった。

この後は梓が1人で延々と話し続けるが、
はたして唯の耳に届いていたかは誰にも分からない。

「思い出すのが、遅いですよ先輩。
 都合の悪いことはすぐ忘れようとしちゃうんだから。
 先輩の悪い癖です」

132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/13(日) 00:56:34.77 ID:agniIgIP0 [11/11]
「両手両足を縛って酷いくらいにめちゃくちゃに
 してくれたじゃないですか」

「本当は怖かったけど、最高に気持ちよかった。
 すぐに病みつきになりました」

「今度は私の方から先輩に愛してくれるように
 唯先輩を壊すコトにしたんです。もう私なしでは
 生きていられないように」

「ずっと一緒にいましょうね。平沢唯さん」



『遅すぎる回想』
             THE END


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