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上条「今日も生徒会……か」

133 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/12(土) 11:50:41.77 ID:kmMX0L60 [1/9]
8レスくらいお借りしますねー

134 名前:上条「今日も生徒会……か」1/8[saga] 投稿日:2010/06/12(土) 11:52:06.92 ID:kmMX0L60 [2/9]

 上条当麻は廊下を疾走していた。爆走と言い換えたほうが正しいかもしれない。とにかく彼は全力で廊下を駆け抜けていたのである。
 遡ること数分前。いわゆる帰りのSHRの時間、彼は担任の月詠小萌からある連絡を受けた。
 ――上条ちゃーん。生徒会の仕事があるそうなので、SHRが終わり次第生徒会室に行ってくださいねー。
 その言葉に上条が沈み込んだのは言うまでもない。
 彼の友人が二人揃って「まあまあカミやん、お仕事頑張ってくださいにゃー」、「ええやんかあ、美人がふたりもおんねんで?」と声をかけてもなお、上条のモチベーションは下がる一方だった。

 しかし、いくら彼の機嫌が急降下しようがテンションがダダ下がりしようが、生徒会室に行かねばならないという運命から逃れることは不可能である。
 生徒会庶務。そんな役職を不幸にも与えられた上条は、「廊下は走るなじゃーん」と体育教師兼風紀顧問の黄泉川愛穂から指導を受けつつも走っている。
 なにせ、教室から生徒会室までが遠いのだ。不幸だ不幸だ不幸だと呟き続けた彼の隣に、さっと人が並ぶ。

「よう庶務! 何でお前が爆走しているのかはよくわからねえが、きっと根性をつけるためなんだろうな!」

 ひくりと上条の口端が引き攣った。隣を一瞥する必要さえないが、念のため視線をちらりと向けてみる。
 案の定、疾走している上条の横を汗一つかかずに並走しているのは削板軍覇。根性だけですべてを乗り切ってきたといわれる運動部主将だ。

「ちっげえよ! 呼び出されてんだ、生徒会室に!」

 上条は削板の問いかけに叫び返すと、走る速度を上げた。もちろん、削板も同じようにスピードを上げてついてくるが無視である。
 こういう輩は相手をすればするほどつけあがるのが世間一般の常識なのだ。
 待て待てちょっとオレの話を聞けー! とやはり息を乱すこともなく削板は話しかけてくるが、上条はとことん聞こえないふりをして、一直線に生徒会室を目指した。

 バタン! と大きな音を立てて生徒会室のドアを開けた上条を、中にいた全員(とはいえ実質ふたりしかいない)が一斉に見つめる。
 怪訝そうな顔を向けていた一方通行が真っ先に鼻で笑うと、上条の後ろに立っている削板に視線を移した。

「オイ、なンでそいつ連れてきた」

「連れてきてねえ。なんか勝手に並走してきて……」

 上条が言い訳を並べ立てる前に生徒会室に入った削板が冷房を完備している事実に驚き、「生徒会役員は根性が足りん!」と言い出す。
 はあ、と思いっきり顔をしかめた一方通行は、相手をするのも面倒になったのか、ため息を落とし手で白い髪をかきあげるとと視線を机上に戻した。
 ちょっとあんたねえ、と削板に鋭い声を飛ばしたのは御坂美琴だ。彼女はそろばんを片手に立ち上がっている。

「こちとら経理の計算してんだけど、集中切らすような真似すんな!」

 あ、やべえ。これはお怒りだ。そう考えた上条は首を傾げる削板の頭をがしっと掴んで下げさせると、自身も頭を下げながら謝罪した。誠心誠意、謝った――

「本当に申し訳ございませんバチバチ様!」

 ――謝った、のだが。どうやら言葉のチョイスを間違えてしまったらしい。バチバチと呼ばれた御坂は額に青筋を浮かべながら、おそろしい顔でにこりと笑う。

「だ、か、ら……私にはバチバチじゃなくて御坂美琴って名前があんのよぉぉぉぉおおっ!」

 これは上条が悪いな、と呟いて一方通行は心中で合掌する。生徒会会計である御坂のそろばんを使用した滅多打ちはけっこう痛い。
 削板がついてきたことそのものは上条にとってはとばっちりだったが、今の御坂の怒りはバチバチ呼びにある。


135 名前:上条「今日も生徒会……か」2/8[saga] 投稿日:2010/06/12(土) 11:54:42.12 ID:kmMX0L60 [3/9]

「だっておまっ、痛、んな毎日バチバチバチバチ、いった、たた、そろばん鳴らしてたら、でっ、こっちだってバチバチって呼びたくなっ、いったああああ!」

「あんたは私の仕事を真っ向から否定する気かぁぁぁぁあああ!!!」

 ばしばしばちばち。御坂が上条をそろばん攻撃している間に、削板はあっさりと部活に行ってしまった。
 何のために上条についてきたのかと最後まで一方通行は首をひねったが、あの男のことである。どうせ大した意味もなく疾走する上条に便乗しただけだろう。
 一方通行は何とはなしに壁時計を見る。ちょうど四時半といったところだった。あと少しで初等部の授業も終わるはずだ。

「そこの、三下共」

 御坂と上条が動きを止めて一方通行を見やる。
 三下共というワードは本来ならば罵倒に近いが、彼の場合、相手に呼びかけるときは「オマエ」か「三下」「格下」で済ませようとするきらいがあるため、生徒会役員はもはや慣れてしまっている。

「クソガキ迎えに行ってくるから、オマエらで書類片付けとけよ」

 これもまたいつものことだ。へいへいと頷く上条、会計モードに切り替わった御坂は揃って持ち場に着く。
 すたすたと、あまり足音を立てずに一方通行が生徒会室を出て行った。後姿が見えなくなったことをしっかり確認してから、上条が口を開いた。

「御坂さん、ちょっとよろしいでせうか」

「何よ?」

「いや、一方通行のことなんだけど。あいつ、なんで生徒会長やってんだ?」

 御坂が呆れたように半眼になる。そりゃ、成績が一位だからじゃないの、と彼女は至極当たり前に返し、こつこつとそろばんで机を叩いた。
 くだらないことを訊くな、というオーラは出ているものの、相手はしてくれるらしい。上条は、御坂の眉間に皺が寄っていないことを確認しながら続けた。

「そりゃそうなんだけどさ。なんていうか……生徒会長、ってガラじゃないだろ」

「それは否定できないわねー」

 小中高一貫教育を行っているこの学園では、成績の優秀なものに生徒会役員になる権利が与えられる。
 試験では常に一位をキープしている一方通行が生徒会長、そして次点の垣根帝督が副会長。
そこに中等部では一位の成績を誇る御坂や、高等部三位の麦野沈利がそれぞれ会計と書記を担当しているのだが、
 庶務だけは高等部最下位の成績をとっているものが任命される――というなんとも恥ずかしい制度なのだ。

 生徒会役員には目鼻立ちの整った人間が多い。
 そのため一部には庶務になりたいがために最下位になってやろうという強者もいるそうだが、今のところ上条が庶務を引き継いでから順位に変動はないようだ。
 いっそ誰か代わってくれ、と彼は切に思う。

「あいつんちと私んち、隣同士だって知ってるわよね」

「ああ、聞いてる。幼馴染なんだって?」

「そう。それでさ、昔の話になるんだけど、あいつってアルビノでしょ。周囲から浮いてて、それでいじめられたこともあったの」

「一方通行が?」

 上条は現在の一方通行といじめがあまりにもかけ離れているせいか、目を丸くする。


136 名前:上条「今日も生徒会……か」3/8[saga] 投稿日:2010/06/12(土) 11:55:27.09 ID:kmMX0L60 [4/9]

 たしかに悪目立ちする要素は数多く持っている彼だが、腕っ節も相当強いはずだ。
 骨と皮しかねえひょろいもやしなのにな、と以前垣根がからかっていたことを思い出す。そして数秒後、一方通行に半殺しの刑に処されていたことも鮮やかに蘇った。

「そ。今からじゃ想像できないでしょうけど……ああ、それでね。いつだったか、私も妹も両親もいなくて、打ち止めだけが家に残されていた日があって」

 御坂によれば、当時、彼女の末の妹である打ち止めはまだ四、五歳であった。
 家にひとりで留守番をさせるには抵抗がある年齢だったために、隣の一方通行家に預かってもらっていたのだという。
 昔から打ち止めはあいつに懐いてたのよね、と御坂は懐かしむように言った。
 その日、一方通行の家も両親がいなかったらしく、少女と少年は公園で時間を潰していたそうだ。
 どちらかといえば一方的に打ち止めが一方通行にくっついているようにみえる構図だったが、御坂にしてみれば「一方通行も打ち止めを一番可愛がってたんじゃないかしら」とのことである。

 ともかく、事件はその暇を潰していた公園で起こった。
 ぶらんこを楽しそうに漕いでいた打ち止めを見守っていた一方通行に馴れ馴れしく話しかけてきた数人の子ども。
 子ども達は近所でも有名な悪ガキ共であったらしい、打ち止めから話を聞いた御坂はすぐにピンと来た。
 当時の一方通行は他人と関わるのを極力避けている節があり、そのときも最初はシカトを決め込んでいたのだが、
 何を言っても動じない一方通行に苛立ちを募らせたひとりが、ぶらんこを漕いでいる打ち止めに近付き、小さな背をどんと突き落とした。
 小柄な体が地面に落ちるぎりぎりのところで一方通行が抱きとめたものの、火のついた子ども達は次々に囃したてた。

「こんなのと一緒にいたら目が赤くなる、とか、白髪野郎、なんでおまえみたいな気持ち悪いのが生きてるんだ、とか。
 言い返すのも嫌だったらしくて、一方通行は打ち止めを抱きかかえたまま帰ろうとしたの」

 そのとき、反論したのが幼い打ち止めだったのだ。
 あなたたちよりもこの人のほうが素敵だし、ミサカはこの人が大好きなんだから。
 そう言って落ちていた子供用のシャベルをリーダー格の子どもに投げつけ、一方通行の手を引くとさっさと逃亡した――らしい。

「勇ましいなあ、打ち止め」

「そりゃ、私の妹だもん。それからしばらく、打ち止めは悪ガキに目をつけられてたんだけど、一方通行がずっとあの子のそばにいたのよ。自分のせいだって思ってたみたい」

「うーん……ああ、じゃあそれがきっかけで体を鍛えたとか?」

「大体そんな感じね。だから、一方通行は今でも打ち止めを迎えに行くでしょ。生徒会長をやっていることだって、あの子のためってわけよ」

「ん、なんでだ?」

「生徒会長っていう最高の役職についたら、誰も表立って文句は言えないじゃない。それだけで威圧効果だってあるし」

「おお……そりゃそうだな。なんかすげえいい話を聞いたような気がするぞ」

 打ち止めもそろそろ一方通行を鬱陶しく思う思春期になるんじゃないか、そう思った上条だが、口に出さないでおく。
 あのふたりを見ていると、どうもそんな気がしないのだ。しかしまあ、過保護である。
 話し終えた御坂が再びそろばんを弾き出す。上条も慌てて書類に目を通していく。

 バチバチ、ぺらり。
 バチバチ、ぺらり。
 とんとん。バチバチ。

 一定のリズムを心地よく思っていると、法則を乱すかのようにばたばたと垣根が駆け込んできた。


137 名前:上条「今日も生徒会……か」4/8[saga] 投稿日:2010/06/12(土) 11:55:56.58 ID:kmMX0L60 [5/9]

「ふー、セーフ……!」

 普段から飄々としている彼にしては珍しく、汗だくで余裕がない。
 荒い息を吐く彼の姿は何かの脅しにでも使えそうだ、と御坂はこっそり携帯電話のカメラ機能を立ち上げる。
 不思議に思った上条が、「何かあったのか?」と問いかけると、垣根はそこではじめて生徒会室に人がいることに気づいたらしかった。

「あった、っていうか会った、かな。いやー、昔の女なんだけど、ひっでえ振り方したから根にも持たれてたらしいんだわ」

「一応訊くけど、どんな振り方したのよ」

「ん? どんなって……てめえの顔なんて見たくねーしストーカーとかほんとやめてほしい、ていうか俺束縛されんのマジ嫌なんだけどケータイ勝手に見んないじんなどうせてめえはセフ、ぶふっ!」

 携帯電話をデスクに置いて、バチン、と威勢よく御坂が垣根の後頭部をぶっ叩く。よほど脳に響いたのか、垣根が頭を抱えた。
 キンキンする、と呟いている。たしかに随分いい音がした。

「痛えよなー、そろばん」

「アンタもっかい喰らいたいの」

 垣根を気遣った上条にそろばんをちらつかせる御坂は、そういえば麦野さん遅いなあ、と呟いた。

「麦野、まだ来てねえの? 駄目だねあいつ、役員なら放課は生徒会室直行じゃあべしっ」

「女に追いかけられてきたあんたが言うかっ!」

 バチバチン。そろばんという名の鉄槌が二度下される。垣根はしばらく悶絶していたが、御坂は一向に気にする気配がない。
 心配されないことに憤りを覚えた垣根が頭を抱えるのをやめて、きっとふたりをにらみつける。

「ところで、一方通行は?」

「あいつなら今頃初等部よ。もうそろそろ打ち止め連れて戻ってくるんじゃないかしら」

 ああそう、と訊いておきながらもなおざりな返事をすると、垣根は世間話をするような声音で切り出した。
 彼は生徒会室に設置されているソファに身を沈め、悠々と足を組んでいる。すっかり普段の垣根帝督だ。

「あのさ、お前らが警察官だったとするじゃん」

「……?」

 上条と御坂は顔を見合わせたが、垣根は続ける。足を組み替え、わざとらしく背伸びをしながら。彼が動くたびに、香水のにおいが周囲にふわりと広がる。

「そんで、世の中から犯罪者がみーんな消えたとする。全員だ、殺人から窃盗まで、すべての犯罪者が消えちまったとするだろ。
 そのとき、お前らはどう思うよ」

 垣根の言わんとするところがわからずに御坂は眉をひそめた。上条は至って普通に「仕事なくなって一安心だよな」と答える。
 ぶは、と垣根が吹き出した。どこか馬鹿にしたような風で、垣根が上条に整った顔を向ける。


138 名前:上条「今日も生徒会……か」5/8[saga] 投稿日:2010/06/12(土) 11:56:23.52 ID:kmMX0L60 [6/9]

「っはは、やっぱてめえは傑作だな。犯罪者がいねえってことは、お前らも仕事がなくなって無職になっちまうってのに――一安心って訳?」

「じゃあ垣根はどうなんだ? お前が警察で、犯罪者がいなくなったらどうするんだよ」

 上条がそう質問を重ねたとき、御坂は垣根が無表情になったのを見た。まるで心を閉ざしているかのような顔に、嫌な予感が胸を過ぎる。
 垣根の顔は一瞬で普段通りの余裕が滲み出ている大胆不敵な笑みに変化した。

「善人をそそのかしてでも悪人をつくる。まあ、俺ならハナっから『犯罪者を撲滅』させようなんて思わねえけどさ」

 垣根は人差し指をくるりと回し、教師が生徒に諭すような調子で言った。世の中には利害関係ってモンがあんだろ、と彼は告げる。
 上条がとりあえず頷くと、垣根は満足そうに口元の笑みを深めた。

「俺らにしたって同じじゃねえか? 生徒会長サマは不良撲滅をスローガンに掲げてる、それはきっと正しいんだよ。けど、世の中はそう上手くはいかねえもんだ」

「何、言ってるんだ、垣根……」

「べつに何も。ていうかさあ、俺も大概ガラ悪いって自覚はあんだけど、一方通行もヤンキーみてえなナリしてるよなあ」

 けらけらと笑いながら、垣根はドアへと歩いていく。ちょっとどこ行く気、と御坂がその背に声を投げるが、垣根はただ笑うだけだった。
 ぱたん、とドアが静かに閉まる。

「……今の、何だったんだろうな」

「……、……」

 考え込んでいる御坂を見つめ、上条はため息を吐き出した。垣根が突拍子のないことを言い出すのはこれがはじめてではない。
 頭がいいやつの考えてることってわかんねえ。そんな結論を導き出して、上条は書類の仕分け作業に戻る。

 数分後、晴れやかな顔付きで麦野が入室してきた。
 ご機嫌な彼女は鼻歌まじりに席に着くと、いまだに考え込んでいる御坂の顔の前でひらひらと手を振る。ピンクに色づいている指先が揺れた。
 校則では過度の化粧は禁止されているが、生徒会役員の場合は多少の融通がきく。
 年上好きの上条にしてみると、麦野のネイルアートで彩られた指先や、薄くひかれたアイラインや、きれいにカールされている睫毛は見ていていい興奮剤になる。
 もっとやれ、とは言わないが。

「ねえ、どうしちゃったのこの子。私が入ってきたのに挨拶もなし?」

 反応のない御坂に飽きたのか、麦野は矛先を上条に変更する。え、いや、と上条はどもった。

「さっきまでいた垣根が妙なこと言ってて、その意味をまだ考えてるんだと思う」

「垣根が? あ、そうだそうだ。生徒会長はまだきてないの?」

 麦野がきょろきょろとあたりを見回しながら訊ねる。打ち止めを迎えに行きましたよ、と上条は答えたが、あれ、と同時に何かが引っ掛かる。
 打ち止めを初等部に迎えに行くのは彼の日常で、習慣になっている。また、生徒会における一種の約束事でもある。普段はもうそろそろ帰ってくる頃だ。
 すでに長針は十二をまわっているというのに、優に三十分が経過しているというのに、どうして彼らは戻ってないのだろう?
 麦野は顔を曇らせ、少し唸った。御坂に話しかけることは諦めたらしい。


139 名前:上条「今日も生徒会……か」6/8[saga] 投稿日:2010/06/12(土) 11:56:57.79 ID:kmMX0L60 [7/9]

「私さ、ちょっと浜面ブチ殺してきたんだけど、変なこと聞いたのよ」

 麦野は浜面で遊んだことが楽しかったらしく、物騒な言葉をいけしゃあしゃあと吐き捨てているが笑顔は輝いている。

「変なこと?」

御坂がようやく顔をあげ、興味深そうに、しかし不安と心配が混ざり合ったような表情で訊き返す。
うん、と麦野は頷き、ベージュのカーディガンの袖をいじりながら爆弾発言を投下した。

「最近、垣根が不良とつるんでるって知ってる――?」



 ネクタイを抜き取りカッターシャツを第三ボタンまで外す。ブレザーの前は全開で、さきほど走ったせいで乱れていた髪を丁寧にセットしなおす。
 人を食ったような薄い笑みを顔に貼り付け、垣根帝督が向かったのは取り壊しが決定されている第二体育館だ。
 彼は焦らない。計画はすでに佳境へと入っている。垣根の携帯電話が振動した。たっぷり数コール待ってから、彼は電話に出る。

「もしもし、見つけたか?」

『ああ。小さいのを先に捕まえたらあっさり拘束させてくれた』

「……はっ。相変わらず甘ぇ野郎だよ」

 電話相手は「彼」から離れたところで電話をかけているらしい。本来ならば聞こえてくるはずの怒鳴り声も罵倒も、垣根の耳には届いてこなかった。

『前からムカついてたんだ。男だか女だかわかりづれえ体してるくせに、俺らをブチのめしやがって』

 聞こえてくる声には喜びの色がある。その、男だか女だかわかりづらい相手にブチのめされてんのはお前らだろ、と垣根は心中で嘲笑する。

『あんな、馬鹿の一つ覚えみてえに俺らをぶっ潰していくだけの生徒会長じゃだめだ。俺達はお前に期待してんだよ』

 ああそう、と垣根は笑いをこらえながら相槌を打った。電話相手はなおも馬鹿な生徒会長だ、学校のことを守れていない、最悪にもほどがある、といい続けている。
 彼が馬鹿の一つ覚えのように不良を殲滅していることは事実だ。生徒会副会長として、彼の下についている垣根が一番よく理解している。
 じゃあ今から行くから、と垣根は相手に告げ、通話を切った。

「問題はさあ、馬鹿みてえに片っ端から不良を潰すっていうクソみたいな行動で、ホントに学校をまとめあげてるってとこにあるだろ」

 わかってねえな、と垣根はゆるく首を振る。わかっていれば、不良などにはならないのだろうが、あまりにも底が浅い。
 底が浅いからこそ、垣根の甘言にあっさりと乗る。
 一方通行という人間の手腕が最悪だなんて、垣根は考えたことがない。自分はあの男に劣っているとさえ思う。

 だが、だからこそ気に食わないのだ。

 彼はあまりにも優秀すぎる。不良を真っ向から退治していくという愚策が、これ以上ないほどの最善策にみえてしまうほどに。
 もっと、他に道があるだろう。犯罪者がこの世から消滅すれば、警察官だって用済みだ。不良がいなくなってしまえば、生徒会の存在意義も減ってしまう。


140 名前:上条「今日も生徒会……か」7/8[saga] 投稿日:2010/06/12(土) 11:58:12.85 ID:kmMX0L60 [8/9]

「持ちつ持たれつ、利害関係――ってな。適度に利用しとかねえとだめなんだって、こういうのは」

 くつくつと喉の奥で笑い、垣根は第二体育館の重い扉を開けた。
 そこにいたのは百人は下らないであろう不良の集団、そして囲まれている少女と少年だ。
 少女のほうは眠っているのかぐったりしていたが、拘束された少年は体育館に足を踏み入れた垣根を赤い目でにらんでいる。

「ナニ、してやがる。バ垣根」

「んー……とりあえず、お前が会長やめますって言えば解放してやるけど」

 一方通行が眼光を鋭くした。そして、誰が言うかボケ、と低い声で返答する。その暴言に不良が色めき立ったが、垣根は片手で制した。

「お前のやり方じゃ、どうしようもねえんだよ。わかるか? 俺らとこいつらって、共存していったほうがいい訳」

「クソ、ったれが……ンなこともう一遍言ってみろ、ブチ殺すぞ万年二位」

「はいはいどうせ万年二位ですよっと。でもな」

 にこりと垣根が笑みをつくる。初対面であったなら騙されてしまいそうな、人懐っこい笑顔。
 しかし、一方通行が騙されるはずもない。それは、普段の垣根の、ぶつくさと文句を垂れつつも浮かべていた皮肉まじりの笑みではないのだから。

                               リコール
「こんだけいりゃ、さすがに通るはずだよなあ――解職請求もよぉ」


「!!!」

 悪いな。
 そう短く呟いて、垣根はつかつかと一方通行に歩み寄る。この男の下につくのは悪くなかった。唯一、自分に勝っている人間だと、今でさえ言い切ることができる。
 惜しむらくは、彼がその優秀さを生かしきれなかったことかもしれない。世の中には、バランスというものがある。暗黙の了解というものが、ある。

「ラストチャンスだ、もう一度訊くぜ。お前は生徒会長をやめる気はあん、」

 のか、と垣根が言い切る前に、体育館の扉がバンッ! と派手な音を立ててブチ壊された。全員がそちらを見る。
 真っ先に口を開いたのは一方通行だった。

「オ、マエら……?」

 あー、すっきりした、と麦野が高くあげていた足をぱんぱんと払いながらで感想を述べ、これってやりすぎじゃないですか、と御坂がつっこむ。
 そのやり取りを背後で聞きながら、しっかりとした足取りで一方通行と垣根に近付く男。


141 名前:上条「今日も生徒会……か」8/8[saga] 投稿日:2010/06/12(土) 12:00:54.07 ID:kmMX0L60 [9/9]

 右手を強く握り締めて、生徒会庶務の上条は、迷うことなく垣根の前に立つ。

「おいおい、どうなってんだよ。生徒会総出でなんでここにきてんだお前ら」

 垣根が余裕を失わずにおどけてみせた。だが、上条は視線をそらさない。ぴたりと垣根の目を見据えた。

「犯罪者がいなくなったら警察官もいらなくなる、だったら悪人をつくりあげる? 馬鹿言ってんじゃねえよ。不良がいないと困るから手を結ぶ? ふざけんな。
 垣根帝督、お前はずっと生徒会副会長としてやってきたじゃねえか。
 生徒会室ではじめて俺に会ったとき、これからあのもやしの下で頑張ろうぜって言ったじゃねえか、んで殺されかけてただろうが!」

 そこまで言わなくても、と御坂がぼそりと呟く。まあまあ、と麦野はなだめた。それどころかひゅーひゅーと上条を煽っている。

「そんな初心も全部忘れて! 一方通行のやり方が気に食わねえからって不良と組んで生徒会長になろうってんなら――まずはそのふざけた幻想をぶち殺す!」

 バキィ、と上条の拳が垣根の頬に躊躇なく入ったとき、同時にバリン! と体育館の窓ガラスが割れる音がした。
 え? と思わず不良集団は倒れた垣根ではなく窓ガラスに視線を向ける。生徒会役員も一様に窓ガラスを見つめた。ころころと体育館の床に落ちているのは野球ボール。
 そして。

「あ、すまん。なんか練習してたら根性でこっちまで飛ばしちまった……」

 バリィィン! とさきほどとは比べ物にならない破壊音が響き、窓ガラスが全壊した。
 人がひとり通り抜けられるくらいに壊された窓ガラスから、バット片手によっこいしょと体育館に入ったのは削板である。

「……まあでもここって取り壊しだし問題ないんじゃねえのか? なあ生徒会長、この通り! 謝るから許せ!!!」

 なンかもういいわ、だりィ。そう呟きをもらした一方通行の拘束を、顔面をおさえた垣根はしおらしくも外していった。
 なんだこいつと削板にかかっていった不良は全員バットでブチのめされたために、上条の拳も一回きりしか出番がなかったようである。




最後どうすればいいかわからなかったのですごパに任せたらこうなった
扉をブチ壊したのは麦のんと美琴の蹴りなわけで! 上条さんは何もしてないんですけど!!!
それでは失礼しましたああああ

Tag : とあるSS総合スレ

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