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黒子「ジャッジmカズマ「ジャッジメントだ!」

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/22(日) 23:06:06.12 ID:3DE0wRSN0
―夕刻、とある街角―

黒子「ジャッジm
カズマ「ジャッジメントだ!」

まただ…。
まさにげんなりといった表情で、白井黒子は傍らに立つ青年を見上げる。
また自分より先に怒鳴り声を上げる。こいつは、ジャッジメントをどこかの野蛮な酒場の用心棒か何かと勘違いしているのではないだろうか?

青年、というよりは少年と呼ぶ方が正しい年齢のはずだが、荒場において精悍さを示したその顔に、あどけなさは微塵も無い。
彼は自分よりかなり背が高い。痩せ型だが、背中から肩にかけての厚みは容易に彼が「只者ではない」ことを相対するものに感じさせる。
もっとも

黒子(戦う人間の筋肉量とか見た目なんて、この町では大した意味を持ちませんが)
3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/22(日) 23:09:17.33 ID:3DE0wRSN0
いわゆるクロスSSである。
書き溜めあり。100~150レスで完結すると思われる。

以降のレスは、以下の条件のうちのいずれかが満たされた場合に投下する。
・最新のレスの投稿時間から4分以上が経過する
・最新のレスが>>1のものではない

*ただし、>>1が何らかの規制を受けた場合はこの限りではない
**規制について>>1は「短い間隔で連投すると受ける」程度しか知らない。回避の為に有効な情報があればスムーズな投下の為に教えて欲しい。

支援レスは「支援」の一言でも嬉しい。
が、もし簡単な感想でも添えてもらえれば、書き込んだ側には特にメリットは無いが、>>1のやる気が*激しく*うpする。

4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/22(日) 23:13:12.68 ID:3DE0wRSN0
冷ややかに思いながら、眼前にたむろする、分かりやすくらいに不良らしい不良の群れを見やる。
一ヶ月程前から、不良が増えた気がする。
特にこの手の…有り体に言って「頭の悪そうな」不良や軽犯罪者が。

カズマ「神妙にお縄につきやがれい!」

言葉とは裏腹にその両手はワキワキと蠢き…黒子は「わたくしがお姉様の横たわるベッドに近づくときの手の動きと似てますわね」と連想した…恐らく「神妙になんかすんなよ抵抗しろよ暴れさせろよ」とか考えているのだろう。

不良A「ああん?なんだてめ…」

不良B「ま、待てよおい。あいつぁ確か…」

不良C「やべぇ、カズマだ!」

不良A「『ロストグラウンドの悪魔』!?」
5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/22(日) 23:17:14.81 ID:3DE0wRSN0
カズマ「ああ?」

ぼそぼそと肩を寄せて囁き合う不良たち。
一応、いつでもテレポートできるよう身構えておく。
しかし次の瞬間。

不良達「「へへぇーーーおとなしくしますから命だけは!!」」

不良たちは、全員がその場で土下座して許しを乞うていた。



カズマ「つまんねぇ…せっかく面白そうな仕事だったのによー」

黒子「ぼやかないでくださいまし。そうそうしょっちゅう荒っぽいお仕事をされては困りますの、ここはあなたの故郷とはちがいましてよ」

カズマ「つまんねぇ…」

ぼやきたいのはこちらの方だ。なんでわたくしが、こんな粗野で低脳な野蛮人といっしょに…
6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/22(日) 23:21:36.06 ID:3DE0wRSN0
―――
――


一ヶ月前に学園都市と、とある街―というか地区―が姉妹地区提携を結ぶこととなった。

連(むらじ)経済特区、通称、ロストグラウンド。
20年以上前に、神奈川県の一部が原因不明の大地震と大地の隆起現象により外界と隔絶された、この国の最後の秘境。

そこには取り残された人々が細々と生き延びていたのだが、その大地の復興は遅々として進まなかった。
その理由は、そこに生まれた子供に2~5%の割合で発現する、特殊能力―黒子自身は噂でしか知らないが、強能力(LV3)クラス以上の能力者がゴロゴロしているのだそうだ―によるものだ。
それは生まれてくる子供にしか発現しないが故に、能力者の平均年齢は低く、倫理観・社会的規範意識の薄いそういった能力者による犯罪が多発し、復興の妨げとなっているらしい。

11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/22(日) 23:24:59.73 ID:3DE0wRSN0
一時の欲望のために自分達の首を絞めているんだから、愚かなものだと黒子は思う。

そう冷ややかに見ていられるうちは良かった。
どういうわけか、その能力者達が大挙してこの学園都市にやってくることになり…
しかもその一人と、自分がジャッジメントとしてペアを組まされることになるまでは。

どういった思惑・陰謀・折衝があったのかは想像もつかない。しかし、
「連経済特区特有の特殊能力の解析とその能力者達の教育は、同じく超能力開発を行っている学園都市の使命である」
「その成果は連経済特区復興の手助けになるばかりでなく、学園都市の研究の発展にもおおいに資するものである」
という大義名分のもと、彼ら…「留学生」はやってきた。
12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/22(日) 23:26:48.08 ID:VLec4u/O0
普通に連投してほしいが
13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/22(日) 23:27:49.72 ID:3DE0wRSN0
―――
――


―ある日の放課後、ジャッジメント活動中―

街を歩いている人間の中から、ロストグラウンドから来た連中を見分けるのは簡単だ。
いかにも「おのぼりさん」風なのか、「頭の悪い不良」っぽいのがそうだ。

別にこれは黒子の個人的偏見というわけではなく、学園都市在住の人間達大勢の見方である。
何せロストグラウンドにはまともな学校が殆ど無く、やってきた能力者の少年少女たちは年齢に関わらずほぼ全て、中学校レベルの教育さえ満足に受けていない。

識字率だけは95%を超えているらしいが、それさえ怪しいものだ。
目の前で地図を縦にしたり横にしたりしている青年、カズマを見ながら、黒子は胸中つぶやいた。

15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/22(日) 23:31:44.14 ID:3DE0wRSN0
カズマ「黒子よぉ…俺は今どこにいるんだ?」

黒子「馴れ馴れしく名前で呼ばないで頂けますの?白井先輩、とそう呼んでくださいまし。まったく、話もろくに聞かずに出て行ったと思ったらこれですの」

カズマ「いやぁー悪い悪い。だってあの人おっかなくってよー」

黒子「ふぅ…こっちですのよ。今日のお仕事は、公園のお掃除ですわ」

カズマ「ったくかったりぃなぁ…なんでんなの俺達がやんなきゃなんねぇんだ?」

黒子「気持ちよく暮らせる空間を維持するためには、こういった地道な活動が不可欠ですの。あなたの故郷では、必要なかったかも知れませんが」
最後の一言は、余計だったか。ちらりと今は自分についてきているカズマを見る。特に気にした風でもない。

18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/22(日) 23:34:04.99 ID:3DE0wRSN0
黒子「特にこの街は学生が主な住人ですわ。学生の汚した場所は学生の手で片付ける。当たり前のことですの」

カズマ「俺は一番アルターを気兼ねなく使える役目だっつぅから、ジャッジメント引き受けたんだがなぁ…」

黒子「あら、それは間違っていませんですのよ。事件のとき限定とはいえ、測定器の前以外で能力を使うことが許可されているのは、ジャッジメントくらいですもの」

カズマ「へいへい…」

黒子「返事は1回」

カズマ「へーい」

黒子「延ばすのも駄目ですの」

カズマ、ため息。

20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/22(日) 23:35:33.15 ID:3DE0wRSN0
――――
――


カズマという、この一見して、そして中身まで間違いなく社会的規範というものから最も遠そうな人間が、
よりにもよって風紀委員、ジャッジメントを任じられているのには理由がある。

一つは、先ほど彼自身が述べた、能力の使用制限によるもの。

もう一つは、学園都市側の都合。
ジャッジメントは学生による自治風紀維持組織であるため、それは学生の代表者によって運営・構成されるべき、という理念がまず前提。

そして今、学生は大きく学園都市在来組と、ロストグラウンドからの留学組に分かれている。

先述の理念を敷衍し、それら双方の風紀を守る風紀委員(ジャッジメント)は、当然それら双方の代表者たちを構成員として含むべき、
という論の下、ロストグラウンド出身者からジャッジメントが選出されることとなった。

しかしこの作業は難航した。元々学校組織というものになじみの無い連中であるからしてそれは当然であった。
21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/22(日) 23:39:46.54 ID:3DE0wRSN0
妥当な帰結として、ロストグラウンドで治安秩序維持機構を担っていた者たちがそのまま任じられることとなる。
そして彼らは即ち暴力装置として機能していた者たちであり、いわば腕ずくで周りを従えていたガキ大将が、そのままジャッジメントになったような按配であった。

カズマという男も大体似たようなものだろう。そう黒子は認識していた。

そんな連中とペアを組まされて、要はお守りをしろと言われているようなものだ。
学園都市のルールを覚えて風紀委員としての自覚を云々という説明は受けたが、黒子にはただのお題目にしか聞こえなかった。


学園都市の治安維持は自分達の仕事だ。
理念はどうあれ、そんな山出しのガキ大将に任せられる仕事は一つも無い…。そう考えていた。

23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/22(日) 23:43:10.48 ID:3DE0wRSN0
―――
――


―またある日の夕刻、とある街角―

カズマ「ジャッジメントだ!神妙にしやがれ!」

似合わない腕章を見せ付けながら、カズマが怒鳴る。
最初の声掛けは自分がやる、といつも事前に言っているのに、また今日も無視された。

黒子「あなた達がたむろすることで周辺住民から苦情が来てますの。直ちに解散して、自宅へお帰りくださいまし」

いい加減諦めの境地で、黒子が続きを告げる。この日も不良たちは、不満そうな目をしながらも、
カズマの期待に沿うことなく―つまり、能力等を使用して強硬に抵抗することなく―その場を去った。

このうだつの上がらない男が、それほど怖いのだろうか?情報では、大能力(LV4)に相当する力らしいのだが。
黒子はどこか残念そうなカズマを見る。この男の能力、アルターを、黒子はまだ見たことがない。

24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/22(日) 23:47:04.34 ID:3DE0wRSN0
―――
――


合併以降、街にたむろする不良たちが増えた。ロストグラウンドからの大量留学は、元々あったこの街の不良グループをも刺激したようだ。

勢力図は不安定になり、日夜街のどこかで小競り合い―能力をナイフ代わりにした喧嘩といった派手なものではなく、本当にちょっとした言い争いや小突きあい―が頻発している。
やがて大掛かりな抗争に発展することを危惧し、ジャッジメントは巡回を強化していた。

黒子たちも、本来は校内限定という治安維持権限を、一時的に学外まで拡大されていた。

確かにたむろしている連中は増え、彼らを注意することも多くあった。が、いつも彼らは大人しく退いた。
しかし結局彼らは縄張りの中を移動しているだけであり、根本的な解決にはなっていまい、
いつかこの緊張が最高に達したとき、大きな事件が起きる。

黒子はそう感じていて、日々変わらない仕事にも緊張感を忘れることはなかった。

26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/22(日) 23:48:56.12 ID:3DE0wRSN0
―――
――


―ジャッジメント支部―

「怪我人は…」 「…でレベル…」 「アンチスキルに出動要請を…」 「みのりさーん!…」 「このりです。…」


黒子「ただいま戻りましたの」

初春「あ、白井さんおかえりなさい」

カズマ「うーっす」

初春「カズマさんもお疲れ様です」

カズマ「おう」

黒子「●●交差点のそばの路地で、4人ほどたむろしてたのを注意しましたわ。今日の成果はそれくらいですわね」

初春「えーと●●交差点そば…と」メモメモ

28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/22(日) 23:52:16.61 ID:3DE0wRSN0
カズマ「何かあったのか?ちっと騒がしいみてーだが」

初春「ああ、第4学区で喧嘩みたいです。私達は管轄外ですし、アンチスキルが出動したんで出番はないと思いま…」

カズマ「ちょっと見に行ってくる」ダッ

黒子「お待ちなさい」

カズマ「何だよ、ちょーっと様子を見てくるだけだって!」

黒子「あらそうでしたの、わたくしには、隙あらば混じって暴れてやろう、という顔に見えたのですが」

カズマ、ぎくりと硬直。

黒子「はぁ…カズマさん。わたくし常々申し上げている通り…」

Pllllll...

初春「はい、ジャッジメント第177支部です…はい」

初春「カズマさんの願いが届いたのかも知れませんね。××交差点付近で喧嘩だそうです、能力者もいるとか」
29 :>>27hahahahahaha[]:2009/11/22(日) 23:54:32.28 ID:3DE0wRSN0
カズマ「なんだって!そいつぁ大変だ、すぐに行かねぇと。なぁ白井先輩」ウキウキ

黒子「すぐに向かいますわ。…喧嘩を止めにいくんですからね?参加するためじゃないですわよ?」

カズマ「ヒャッホゥ、分かってるってー!」

31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/22(日) 23:57:50.91 ID:3DE0wRSN0
―――
――

初春『追加の情報です、当事者の内訳が割れました。アルター能力者が1名に、学園都市のLV2程度らしき能力者が2名、無能力者と思しき者が1名』
初春『アルター能力者と他の3人の喧嘩だそうです』

黒子「アンチスキルと、救急車の手配を」

初春『了解です』


アルター、精神感応性物質変換能力。自らの意思により周囲の生体を除く物質を原子レベルで分解し、各々固有の特殊能力形態に再構築する能力。
最終的な特殊能力形態の能力の高低に関わらず、分解・再構築が出来る時点で学園都市の基準では強能力者(LV3)と判定されるため、
ロストグラウンドからの留学生は全て強能力者以上ということになる。
32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 00:01:11.73 ID:7yS+G7Mr0
強能力者1VS異能者2+無能力者1。
これが例の不良グループの勢力争いと地続きの出来事とすると、全員それなりに戦いの心得のある連中ということになる。

黒子「まずいですわね…」
走りながら呟く。
お互いにも手加減できる力関係ではない。成り行き次第では、大怪我ではすまないかも知れない。

不安要素は他にもある。

カズマ「よーし喧嘩だ喧嘩だ」ニヒヒヒヒ

この男。
小声だがいかにも楽しそうだ。スキップしていないのが不思議に思えるほどだ。

33 :二十分ほど離籍[]:2009/11/23(月) 00:04:34.92 ID:7yS+G7Mr0
黒子「カズマさん、事態が一刻を争いますので、わたくし先行しますの。場所はお分かりでしょう?」

カズマ「おう、こっからなら場所は分かる…でもちっとは残しとけよ!」

後半を聞くより先に、黒子はテレポート、連続。現場へ急行する。
残しておいてなどやれるものか。ここは彼が到着するより先に自分が収めなければ。


ペアを組まされている間、ずっとこんな心労を抱えなければならないのだろうか。黒子はあらためて憂鬱になるのだった。

36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 00:29:41.61 ID:7yS+G7Mr0
―――
――


黒子「ジャッジメントですの!あなた方を器物損壊及び傷害の現行犯で拘束いたします!」

到着したとき既に決着は半分ついていた。
学園都市側の不良と思しき男が2人倒れており、最後の1人も、自立稼動型と思しきアルターに殴り倒されようとしている。
アルター使いの方も服の所々が破れたり焦げたりして―パイロキネシストが学園都市側にいたようだ―満身創痍といった様子だ。

「ジャッジメント?ガキが、すっこんで…!?」
アルター使いが凄んだが、黒子には最後まで言わせるつもりは無かった。一瞬で背後にテレポートし、膝裏を蹴り付けて突き倒す。
間髪入れずにガーターベルトから鉄釘を抜くと、アルター使いの服を貫通するようテレポートさせ、地面に縫いつけた。

黒子「アルターを消して大人しくしてくださいまし。さもなければ、次は直接体内に打ち込みますわよ?」
37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 00:33:16.88 ID:7yS+G7Mr0
「ぐっ…」
アルター使いは苦しげにうめくと、がくっと力を抜いた。
独立型のアルター―手足の末端部の大きい人型、説明は受けたが、実戦で見るのは初めてだった、と黒子は気付いた―が虹色の粒子となって散っていく。

カズマ「オラオラオラオラ暴れてんのはてめぇかおら!」ガン!!

背後でやかましいわめき声と鈍い打撃音。
振り返ると、いつの間にか逃げようとしていた学園都市側の最後の一人を、カズマが現場に着きざまに殴り倒したところだった。もんどりうって倒れる不良。

カズマ「さぁ後はどいつだ、ジャッジメントのカズマ様が付き合って…」
カズマ「…なんだ、終わっちまってんのか」

黒子「ええ、あなたの出番はおしまいでしてよ。初春に報告して下さいまし」

カズマ「へーい…」

カズマは一目で見て取れるほど落胆すると、携帯電話を取り出した。
38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 00:37:12.35 ID:7yS+G7Mr0
「アルター能力者だ…」 「ロストグラウンドの犯罪者ども」 「怖かったー」 「チンピラどもめ…」

事態の収拾がついたと知れたのか、あたりには人が戻ってきた。街を騒がす不逞の輩たちへ批難の視線が向く。心なしか、アルター能力者に向くそれが多い。
誰もが思っていた。「ロストグラウンドのごろつきどもなんて、迎え入れるべきじゃなかった」と。

黒子はほんの少しだけ彼らに同情した。学園都市にも元々ガラの悪い連中はいたのに、そこへ向かうべき不満も今彼らに向かっている。

カズマ「黒子ー、これどうやって使うんだっけか?」
そんな気分に水を差す間抜けな声。

黒子「呼び捨てにしないでくださいまし。そして以前にもお教えしたじゃありませんの!」
少なくともこの男には、こういった周囲の反応に傷つくような繊細さはないだろう、と黒子は思った。

それは半分正しく、半分は間違っていた。知ったのは、数日後のことだった。

41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 00:41:09.20 ID:7yS+G7Mr0
―――
――


―数日後、とある公園―

カズマはベンチに座っていた。
誰かを待っているというわけではない、ただの暇つぶしだ。あるいは、補習授業からのエスケープの結果。
カズマも学校に通わされている。
ちなみに彼の知能レベルは7歳児相当と判定を受けている。


「なぁサトシ、見せてみろよ、お前のアルター」

ぼーっと空を眺めていたのだが、同じ公園の中から聞こえてきた会話にふと目を向ける。
小学校低学年くらいの子供が4人、しゃべっている。
どうやら一人がロストグラウンド出身者で、他はこの街の子供らしい。

42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 00:44:40.28 ID:7yS+G7Mr0
「いやだよ、ジュン君、先生は勝手に使っちゃだめだって」

「いいじゃんか、誰も言いつけやしないさ。皆も見たいよな」

口々に同意の声を漏らす子供達。
その後も嫌がるサトシと呼ばれた少年を、彼らは囃し立てるようにして追い詰める。
仲のいい友達のふざけあいというよりは、つるし上げだ。

「じゃあ、1回だけだよ」

ついにサトシは折れ、能力を発動させた。その体が虹色の燐光を発し、周囲の地面から同じ色の粒子が渦を巻いて集まる。
見た目には小さな帽子のようなアルターだった。融合装着型。
まだ発展途上なのか、小さい。機能は不明。

「うわー意外としょぼいな」

「ちょっと触らせろよ」

他の子供達が口々に言いながら手を伸ばす。
43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 00:49:16.93 ID:7yS+G7Mr0
「こんなのがLV3かよー」

「俺ののがすごいのにな、絶対」


どうやら彼らは、サトシが―ロストグラウンド、未開の地からやってきた野蛮人が―自分達より
高位の能力者とされているのが気に入らず、彼で鬱憤晴らしをしているらしい。

幼稚なイジメだ。カズマには分かっていたが、手も口も出す気はなかった。
イジメにあうのは、弱いからだ。カズマは心底そう考えていた。
弱いというのは、喧嘩になって殴られるというような直接的な苦痛を恐れることでなく、孤立することを恐れることだ。

弱さから来る災いには、周囲の手助けは無駄だ。
その本人がその弱さを克服しなければ意味が無い。
カズマはそう思っていたから助け舟を出す気は無かった。見ていて気分のいい光景では、もちろんなかったが。

45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 00:52:28.05 ID:7yS+G7Mr0
実際、サトシは曖昧に笑いながらされるがままになっている。
ふざけあいというには、アルターや彼自身に触れる手には悪意がこもっているのに。

内心がどうあれ、これは彼らの中で遊びの延長という了解がある。
拒否したり誰かに言いつけたりすれば、一緒に遊ぶことを嫌がる奴、というレッテルを貼られ、今後輪に加えてもらえなくなるかも知れない。
だから、彼は耐えている。周囲はそれをいいことに、「ふざけあい」を超えない程度の行動で悪意を好き放題ぶつけるのだ。飽きるまで。

「そういえば明日さー。あ、お前もういいよ」

「あ、うん…」

話題が次に移った。サトシはほっとしたようにアルターを消し、ぎこちなくその話題に乗っていく。


カズマ、静かに舌打ち。
46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 00:56:30.62 ID:7yS+G7Mr0
公園の入り口を、新たに数人の子供が通りかかった。そのうち一人が声をあげる。

「ジューン、」

「よう、ケンじゃん」

「何やってんだ?」

「あのなー…」
ジュンの目が嗜虐的にサトシを見る
「ああ、サトシにアルター見してもらってたんだよ」

「えーいいなぁ!俺も見てぇ」

「見してやれよ、サトシ」

「で、でも1回だけだって…」
サトシ、やんわりと拒否しようとする。しかし。

「おれみてねーもん」

「いーじゃんかさー」

またさらし者にされる。サトシは助けを求めるように周囲を見る。
しかし全員、先ほどと同じように囃し立てるばかり。

49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 01:01:45.51 ID:7yS+G7Mr0
と、サトシとカズマの目が合う。
サトシがびくっと体を強張らせる。カズマ、自分が彼を睨みつけていることに気付く。
サトシは目をそらせない。

カズマ(抗え!そうでなければずっと負け犬だぞ。戦え!)

そんなカズマの念が届いたのか、サトシ、前を向いてうつむくと、小さく言った。
「…嫌だ」

「えー」とか「つまんねーな」とか、周囲は囃し立てたが、サトシは俯き、口を引き結んで黙っていた。

しかし業を煮やしたジュン―その場のガキ大将―が
「空気読めよおまえさぁ…」
と彼を小突くと、ついにサトシはキッと顔を上げ、ジュンに飛び掛った。

最初は一対一の喧嘩で、後は乱闘だった。乱闘というよりは、袋叩きだ。
サトシの感情が高ぶり、ついにアルターが発現しそうになる。
50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 01:05:00.31 ID:7yS+G7Mr0
カズマはこの段になってようやく立ち上がり、割って入った。
潮が引くように乱闘が収まる。

「な、何だよあんた…」

まず一発、ジュンの頭に拳骨を落とす。
「いぎ!!」
次にサトシに一発。
「ー!!」

「喧嘩は一対一でやれ。それと、能力は禁止だ、次はしょっ引くぞ」
ジャッジメントの腕章を見せながら。

声も無く全員逃げ出した。一拍遅れて駆け出したサトシの背に声をかける。

カズマ「よう」
足を止める。
カズマ「ま、よくやったんじゃねぇの、弱いなりにはよ」

サトシ、一瞬振り向く。しかし

「サートーシ、何やってんだ!逃げろ!」

友達の呼ぶ声に再び駆け出し、もはや振り返ることは無かった。
51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 01:09:14.95 ID:7yS+G7Mr0
―――
――


黒子「…休憩は終わりまして?」

カズマ「見てたのか」

黒子「ええ」

カズマ「アルター使いはどこだろうと鼻つまみもんだ。その上よそ者となりゃ、まぁ、簡単じゃねぇ」
カズマ「能力者がゴロゴロしてるっつぅこの街なら、何か違うんじゃね―かと思ったんだがな…」

黒子「…意外ですわ。てっきりそういったことは気にしないタイプかと」

カズマ「俺はそうさ。俺のルールに従って生きる。立ち塞がるものは、躊躇いなくこの力でぶっとばす」

カズマ「だが、俺みてーなのばかりじゃねぇ。カタギでまっとうに生きようって奴も多いのさ」

黒子「…」

カズマ「そういう連中には、アルターもアルター使いも邪魔なだけだ」

黒子はカズマに関する認識を改めねばならなかった。ロストグラウンドの人間に対するそれも。
52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 01:13:17.16 ID:7yS+G7Mr0
―――
――

―数日後、夕刻、とある街角―

初春『第7学区内、複数地域でグループ同士が交戦中です。未確認ですが、複数のLV3以上の能力者が居ます。恐らくアルター能力者もです』

黒子「ええ、そのようですわね」

夜闇の迫る空に立ち上る黒々とした煙と、混じる炎。
それなりの規模の破壊を伴う能力が行使されている、しかも、街の複数箇所で。

着いた最初の現場は、まるで戦場の前線のようだった。道路上でちょっとしたゴミ箱や車をバリケードにして、能力や銃弾が飛び交っている。
街路樹の一本が炎上しており、辺りを赤々と照らしていた。

黒子「ああ、もう、これはどっちから手を出していいやらですわ…」

一瞬の逡巡、その隣を迷うことなくカズマが飛び出していく。虹色の渦を巻いて。
その右腕が砂に変わるように崩れ、そして再構築される。

元の腕よりはるかに力強くマッシブな黄金色の腕、赤銅の拳、そして拳と同じ色の羽状のユニットが3つ、背中に現れる。
53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 01:17:49.71 ID:7yS+G7Mr0
黒子(あれが彼のアルター)

カズマ「衝撃の…」
羽の一枚が砕け散る、背から虹色の粒子が噴出し、ミサイルのように加速。

カズマ「ファーストブリット!!」

拳はバリケードの車の一台に命中、爆散させる。強烈な衝撃音が腹に響く。
不良たちが何人か、衝撃波に吹き飛ばされる。

カズマ「うっしゃあ!残りはどれだ!」

黒子「もう片付けましたわ」

カズマ「うえっ!?」

黒子、カズマのアルターの威力に呆然としていた残党を、ちゃっかり片付けている。

カズマ「んだよ…。まぁ、いいか」
いまだビル越しに見える黒煙を見やる。

カズマ「今夜はまだまだたっぷり食えそうだかんな」

黒子はそんなカズマの様子を見ながら思う。
黒子(楽しそうなのが気になりますが、一応喧嘩に参加するんではなく、止める、という役目は果たすようですわね)
黒子(にしても…彼のアルター、見かけ以上の凄まじい威力ですわ。もしかしたら、お姉様のレールガンかそれ以上…)

54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 01:22:21.47 ID:7yS+G7Mr0
―――
――

アンチスキル(モブ)「連中はあの奥、細い路地に篭城してます」

黒子「まずは偵察を」

カズマ「必要ねぇ、俺を飛ばせ」

黒子「性急ですこと。では、行ってらっしゃいまし」

カズマの背に触れ―そのときちょっとした好奇心から、そっと羽状のユニットにも触れてみた。
それは内に秘めたエネルギーが漏れ出しているかのように温かかった―、その路地奥、不良たちの真上にテレポートさせる。

先日の公園の件等から、黒子は当初のように自分がすべてやらなくても、
少しはカズマに任せてみても大丈夫かも知れないと思い直していた。

テレポートさせた直後、
「うぉりゃああああ」
「ぎゃああ」
「ぐわあああ」
路地から絶叫と爆煙。

黒子は早速自分の決断を後悔しかけたが、カズマはその後キチンと気絶した不良たちを引きずって出てきた。

56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 01:25:36.85 ID:7yS+G7Mr0
―――
――


ジャッジメント(モブ)「仲間が捕まってて、手が出せない」

カズマ「まとめてぶっ飛ばす」

アンチスキル「人の話を聞いてないのか!?あそこには味方がいるんだぞ、これだからロストグラウンドの野蛮人は」

カズマ「関係無…」

黒子「(ヒュ)救出してきましたわ」

カズマ「…」
ジャッジメント(モブ)「…」

黒子「行ってらっしゃいまし」

カズマ「おぅよ!」ヒュ

どかーん

黒子「なんだかミサイルの発射台にでもなった気分ですの」

カズマ「終わったぜ!」

黒子「便利な弾頭ですわ。自分で帰ってきますの」

カズマ「?」

58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 01:30:52.36 ID:7yS+G7Mr0
―――
――


その夜、最後の現場に先に着いたのはカズマだった。

そこには殆ど動ける者はいなくなっていて、立っていたのは、道路のど真ん中に小柄な女生徒が一人だけだった。
女生徒?カズマは自分がそう思ったことに一瞬疑問を抱く。そう、そいつは黒子と同じ制服を着ていた。だから女生徒だと思ったのだ。

カズマ「ジャッジメントだ!神妙にしやがれ!」
言いながら、しかし殴りかかる。今夜警告を聞いて大人しくなった不良はいない。

???「うわ、ちょっと!あたしは…」

カズマ「問答無用!」

相手は身を捻ってカズマの拳をかわし、能力による攻撃を仕掛けてきた。

60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 01:34:11.10 ID:7yS+G7Mr0
―――
――

先行したカズマを追って最後の現場に向かう途中、黒子は見た、青白い電光がその通りの上空に迸るのを。

黒子「あれは…!」

―――
――

カズマ「へっ、中々やんじゃねぇか。こんだけ歯ごたえのあるやつぁ、こっちに来て初めてだぜ」

???「あんたもね。私の電撃をくらって倒れないなんて」
???「それに、その右腕…あんた、アルター能力者?」

カズマ「だったらなんだってんだ」

???「へぇ…いいじゃない。ロストグラウンドの能力者、どれほどのものか見てあげるわよ。この、学園都市第3位…」
御琴「御坂御琴がね!」

62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 01:38:35.94 ID:7yS+G7Mr0
御琴、ポケットからコインを取り出す。カズマに狙いを定め、眼前に筒状の電磁力場を形成、荷電開始。
充分な電荷が溜まったと肌で感じ取るや、コインを親指で弾いてその力場に放り込む。
彼女の得意技であり、二つ名でもある、電磁加速砲、レールガン。

カズマ、御琴のレールガン発射より一瞬早く動いている。
カズマ「抹殺の、ラストブリット!!」

超音速のコインと拳が激突、発生した衝撃波で周囲の建物の窓ガラスが砕け散る。

御琴「えっ!?」

押し勝ったのはカズマの拳だった。そのまま御琴へ殺到する。
御琴、思わず身を庇うように顔の前で手を交差させ

黒子「おやめなさい!」
カズマの拳が御琴に届く前に、その横っ腹にテレポートしてきた黒子のドロップキックが炸裂した。

カズマ、加速していた分、派手にバランスを崩して転げる。
カズマ「うぉああああ!?」ゴロゴロゴロ
63 :>>61ねぇよ。かなみや劉邦すら存在しねーのに。[]:2009/11/23(月) 01:42:05.88 ID:7yS+G7Mr0
御琴「あ、黒子」

カズマ「いてててて…あん?何だ、知り合いだったのか?」

黒子「まったく…見境なしに殴りかかるものじゃありませんわ。このお方を何方と心得ますの?」
黒子「学園都市に7人しかいないLV5の一角、御坂御琴お姉様ですのよ!」

カズマ「いや、だってよ、そいつがここに…」

御琴「私はあんた達ジャッジメントが来ないから、代わりにここの不良どもを片付けてあげてたの。言わば、あんた達の味方よ」

言われて見れば、周囲には不良と思しき黒焦げの男達が転がっている。

黒子「お姉様!学園都市の治安維持はジャッジメントのお仕事ですって、わたくし何度申し上げたことか!」

御琴「う…」

カズマ「そうだそうだ、味方だってのも先に言え!」

御琴「問答無用で殴りかかってきたのはそっちじゃない!」

黒子「話をそらさないで下さいまし。今日という今日は…」

ガミガミぎゃんぎゃんゲコゲコビリビリ。

65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 01:48:13.83 ID:7yS+G7Mr0
―――
――


―翌日朝、常盤台中学校通学路―

黒子「ふわぁーあ、うーん…」
欠伸、そして伸び。

御琴「大変ね、昨日の今日で学校なんて。あの後も事後処理で結構起きてたんでしょ?」

黒子「仕方ありませんわ…大事件でしたもの」

御琴「あんまり無理しちゃだめよ?」

黒子の顔がぱっとほころぶ
黒子「まぁ!お姉様ったらわたくしを心配して下さってるんですの!?」
黒子「でもでも、わたくし労いなら言葉よりも熱ぅーいヴェーゼを頂けたらなって…」クネクネ

御琴、無視してスタスタと歩いていく

黒子「ああんお姉様!待って下さいましー!」

67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 01:54:38.51 ID:7yS+G7Mr0
御琴「そういえばさ」

黒子「はい?」

御琴「昨日、あんたと一緒にいたアイツが、例のペアを組まされてるっていう?」

黒子「ええ、カズマさんとおっしゃいますの。アルター能力者ですわ」

御琴「あたしのレールガンを、ものともせずに弾いたわ。ま、私も本気じゃなかったけど…」

黒子「まぁ、打撃力だけなら大したものですわ。LV4相当というのも頷けますの。」

御琴「へぇ…。今、アイツはどうしてるの?」

黒子「特別クラスで授業を受けているはずですわ。でも、しょっちゅう逃げ出してるようで、週末わたくしまで補習に協力させられますの」
68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 01:58:48.20 ID:7yS+G7Mr0
黒子「…ところでお姉様、なぜそんなにカズマさんを気になさるんですの?まさかあの山猿がちょっと強いからって」

御琴「確かに、強いわよね。あの勝負は、どちらかといえば私の負けだわ」

黒子「へ?えと、お姉様、あれは勝負などではなく…」

御琴「学園都市のLV5が、よそ者相手に負けっぱなしッてわけにはいかないわよねぇ」

黒子「…。お姉様、一般人であるお姉様が能力を使って、低俗な諍いを起こしますのは、黒子どうかと思いますの」

御琴「分かってる分かってるって…。ところでアイツの連絡先は?」

黒子「彼は携帯電話が扱えないのでなんとも…ていうか、やる気満々じゃありませんこと!?お姉様!」

70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 02:00:46.63 ID:7yS+G7Mr0
御琴「いいじゃない、教えてよ。今度あんたの買い物に好きなだけ付き合ったげるからさぁー」

黒子「う…、でもでも、ジャッジメントといたしましては…」

御琴「黒子ーお願ーい」

黒子「はぐ…(お姉様がわたくしにお願いをお姉様がわたくしにお願いをお姉様がわたくしにお願いをお姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様…)」

そして黒子は、誘惑に負けた。

72 :今更気づいたがスレタイ間違えてる…[]:2009/11/23(月) 02:05:20.05 ID:7yS+G7Mr0
―――
――

―その日の放課後、ジャッジメント第177支部―

黒子「おはようございます」

初春「あ、白井さん、おはよーございまーす」

カズマ「うーす」

黒子「初春、その後どんな様子ですの?」

初春「えーと、昨夜起きた抗争の当事者グループについて、拘束したメンバーを尋問中のようです。まだ大したことは分かってないみたいですね。何せ病院送りの人が多くて…」

黒子、ちらりとカズマを見る。カズマ、そ知らぬ風に目をそらす。

76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 02:11:31.62 ID:7yS+G7Mr0
黒子「…とそういえば、カズマさん。お姉様がお話したいそうですの。後で電話していただけます?」

カズマ「ん?お姉様ってーと、昨日の、あー…」

黒子「御坂御琴お姉様ですの。昨日の今日で忘れましたの?」

カズマ「悪い悪い、人の名前覚えんの苦手でよ」

初春「ふふ、私や白井さんの名前も、覚えてもらうのに少しかかりましたよね」

カズマ「面目ねぇ」

78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 02:15:20.12 ID:7yS+G7Mr0
御琴『というわけで勝負なさい』

カズマ『いいぜ』

御琴『…あっさり乗ってきたわね。ちょっと拍子抜け。私のことを知ってる奴で、二つ返事で了解してきたのはあんたが初めてだわ』

カズマ『変な理屈はよく分かんねぇが、要は後腐れなく喧嘩がしたいってんだろ?いいぜぇ、俺そういうの大好きだ』

御琴『気が合いそうだわ…。じゃあ日時は、明後日の放課後、XX交差点そばの河原で』

カズマ『明後日?ツリーなんちゃらとか言うのの天気予報で、雨だっつってたぜ?』

御琴『人通りが少ない方がいいでしょ』

カズマ『なるほどな』

80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 02:19:05.57 ID:7yS+G7Mr0
―――
――


―決闘当日―

あめが ふっている

御琴「逃げずに来たのは誉めてあげるわ」

カズマ「ぬかすなよ。行くぜ先手必勝!衝撃のぉ…」

カズマ、アルターを発動しざま、地面を殴りつけて反動で跳躍、空中から御琴を狙う。
御琴、不敵に笑うと、右腕を突き上げ、天を指差す。

御琴「先手必勝、ね。私も同感だわ。ただ、私の一手は約束の段階で打ってあったけど…」

御琴が指差した雨雲の中で、雷音が轟く。

カズマ「…!お前!このために雨の日に」

御琴「気付くのが遅かったわね」

御琴 の かみなり!


御琴VSカズマ、通算戦績、一勝一敗。

83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 02:26:47.64 ID:7yS+G7Mr0
―――
――


―後日、とある病院―

御琴「ふふ、卑怯って言うかしら?」

カズマ「ふん、別に。だが、底が知れるぜ」

口を尖らせるカズマ、ベッドの上で、包帯ぐるぐる巻き。

黒子「お姉様ったら、大人げないですわ…」

御琴「兵は詭道なり、よ」

カズマ「塀は木と銅…?」

85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 02:30:26.48 ID:7yS+G7Mr0
御琴「じゃあ、お見舞いも済んだし、私帰るね。黒子は?」

黒子「ではわたくしも…」

御琴「あ、そうそう、リベンジマッチならいつでも受けて立つわよ」

黒子「お姉様、カズマさん、ジャッジメントとしましては、能力を使用した私闘は…」

カズマ「望むところだ、後で見てろよ御琴!」

黒子「聞いてませんわね」
黒子「…」


黒子「彼、お姉様の名前を…」

御琴「ん?黒子なんか言った?」

黒子「…いえ、何でもありませんの」

87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 02:35:05.48 ID:7yS+G7Mr0
―――
――


―ジャッジメント支部―

初春「…それにしても」

黒子「どうかしまして?」

初春「カズマさんいないと、静かですねぇ」

黒子「そうですわねぇ…つい秋の終わりごろまでは、これが当たり前だったなんて、信じられませんわ」

初春「白井さん、ちょっと寂しいとか思ってません?」

黒子「うーいーはーるー?何を言い出すのですか、誰があんな山猿…」

初春「だってだって、最近はカズマさんも馴染んできてたじゃないですかー」

88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 02:39:07.46 ID:7yS+G7Mr0
初春「だってだって、最近はカズマさんも馴染んできてたじゃないですかー」

黒子「まぁ、…確かに、世間で言われてるようないわゆる野蛮人ではないことは、認めてあげなくもなくもないといったところですわ」

初春「いい人ですよ、カズマさん。意外と優しいところあるし、自分より弱い人には噛みつかないし」

黒子「単に反骨心が異常に強いだけで…」


カズマ「ういーす!」
スナック菓子をぽりぽりとかじりながら、唐突に現れる。

初春「カズマさん!」

黒子「あなた…病院は?」

カズマ「退院したぜ!」

黒子「全治一ヶ月の大怪我を一週間で…でたらめですわ」

90 :>>89出ねぇ。[]:2009/11/23(月) 02:44:44.37 ID:7yS+G7Mr0
カズマ「ういーす!」
スナック菓子をぽりぽりとかじりながら、唐突に現れる。

初春「カズマさん!」

黒子「あなた…病院は?」

カズマ「退院したぜ!」

黒子「全治一ヶ月の大怪我を一週間で…でたらめですわ」


初春、カズマのスナック菓子を指差して、
初春「それは?見かけない商品ですが」

カズマ「ああ、入院中暇だったんでな。懸賞とか試供品とか、端から応募してたんだ。手紙書くだけでいろいろタダでもらえんだぜ、字を覚えといてよかったと思ったのは初めてだ」

黒子「運動もせずに食べるだけだと、太りますわよ?」

カズマ「お前にもやるよ」

カズマ、袋を差し出す。黒子、中身を見る、チョコでコーティングされた豆のようなものが数粒だけ残っている。
黒子、ため息。

91 :tyottoミスった[]:2009/11/23(月) 02:46:10.72 ID:7yS+G7Mr0
「わたくし、入院していなくても不必要なカロリーは摂りたくありませんの」
袋にぷーっと息を吹き込む。端をきりりと縛って、膨らんだその袋を

カズマ「あ、黒子待て」

ぱん、と叩いた。
バンという音がして、袋が破裂する。黒煙が立ち上った。

黒子「…ケホ」

カズマ「そいつはカンシャク玉みたいになっててな…」

黒子「あなたの頭はどうなってますの。胃は!」

カズマ「食べ方にコツがあるんだ。新商品だとさ」

黒子「その会社の商品開発担当をしょっ引いてやりたいですの…」



初春「ふふっ、やっぱり白井さん、カズマさんがいた方が楽しそうです」

黒子「うーいーはーるー、あなた頭の外ばかりでなく中までお花畑になってるんですの」ムシリムシリ

初春「きゃあああ花はむしらないで下さい花は!」

95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 02:52:11.29 ID:7yS+G7Mr0
―――
――


―巡回中―

黒子「で、お姉様にまた挑むんですの?」

カズマ「ああ、もう申し込んだ。次の週末だ」

黒子「無駄なことですのに。勝てるとお思い?」

カズマ「無駄かどうか、勝てるか負けるか、それはお前の決めることじゃねぇ」

98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 02:56:33.22 ID:7yS+G7Mr0
黒子「お好きに。でも、どうやって約束をとりつけたんですの?」

カズマ「電話さ。二つ返事だったぜ」

黒子「わたくしがいくら言っても覚えなかった携帯電話の操作法も、お姉様のためなら覚えられるんですのね」

カズマ「ま、いい女ではあるな」

黒子、思わず足を止める。カズマの横顔を凝視。


カズマ「…ん?どうかしたか?」

黒子「ああ…いえ、何でもありませんわ」
黒子(「いい女」ってどういう意味でしょう、いい女って…)

100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 03:03:07.39 ID:7yS+G7Mr0
カズマ「よう、あれうまそうだな、ちょっと休憩していこうぜ」

カズマ、移動屋台型のクレープショップを指差す。黒子の返事を聞く前に買いに行ってしまう。

カズマ「買わねーのか?」

黒子、好物を前に逡巡を見せるも、かろうじて耐える。美容こそ正義、一時の快楽は悪魔の誘惑、今のカズマは悪魔の手先だ。

黒子「高カロリー過ぎですの。太りますわよ?」

カズマ「腹が減って動けないよかマシだ」

カズマ、クレープを買うと、ベンチに座る黒子の隣に腰掛ける。
一口、二口で大半を食べ終える。残りを口の中に放り込むと

カズマ「美味いなこれ。もう一個買ってくる」

黒子は結局二個目を買いに行くカズマについて列に並び、カズマにからかわれた。

103 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 03:08:04.57 ID:7yS+G7Mr0
カズマ「…あれからドンパチはねーのか?」

黒子「ええ、小康状態、といったところですわ」

カズマ「だからこうやってのんびりしてられるってわけだ」

黒子、カズマに見つめられていることに気付き、やや緊張。
やがて、彼が見つめているのは自分が食べているクレープだと気付く。彼のそれは既に無い。
少し落胆。落胆している自分に気付き、動揺、それを隠すべく

黒子「差し上げますわ」
クレープをカズマに押し付ける。

カズマ「お、悪いな」

カズマ、笑顔を見せて受け取ると、半分ほど残っていたそれを二口で食べきった。

黒子(…間接キス)
唐突に気付いて、黒子、激しく赤くなる。なぜ自分がそれほど動揺しているのかもわからない。

104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 03:13:19.31 ID:7yS+G7Mr0
―――
――


―週末、決闘二回目―

空は快晴、雲ひとつ無い。

カズマ「この天気じゃ、そうほいほい雷は呼べねぇだろ」

御琴「まぁ、そうかもね」

カズマ「卑怯と思うかい?」

御琴「まさか。でも、底が知れるわ」

カズマは、へ、と不敵に笑うと、アルターを発現。その体から虹色の燐光を発し、周囲の地面や小石が金属が割れるような音を立てて分解、右腕へと渦を巻いて集まっていく。

カズマの右腕が、そこだけ鎧を着けているような金属光沢を放つ。
元の腕の筋肉の曲線を強調したような、マッシブな金色の腕、指先まで赤銅色の手甲に覆われた拳、
それと同じ色の羽根が3枚、最後に背中に現れる。

105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 03:20:07.37 ID:7yS+G7Mr0
カズマ「衝撃の!ファーストブリット!!」
羽根の一枚が砕け散り、二次色の粒子がその根元付近から噴き出す。カズマ、独楽のように横回転しながら御琴へ殺到する。

御琴「今回は…手加減は無し!」

御琴もレールガンで応戦する。前回超音速程度だった初速が、今回は音速の3倍近くまで加速されている。

激突、轟音。
衝撃波で大地がクレーター状に陥没し、川の水が吹き飛ぶ。


黒子「はぁ…」

やりすぎにならないようにの見張りがてら、立会人を務める黒子はため息を漏らした。

黒子(お姉様もカズマも…なんて楽しそうなのでしょう)
黒子(わたくしといるときより、二人ともずっと活き活きとしているように見えますわ)

憂鬱であった。御坂御琴が楽しそうなのは喜ぶべきことだ。
しかし、この決闘もどきを通じて彼女にカズマが接近しすぎるのは、どうしても歓迎できない。

カズマがお姉様につく悪い虫にならなければいいが。


そんな思いと同時に、あるいは裏表に、「カズマに」御琴が接近していることもどうしても面白くないのだ。
黒子自身は、決してそれを認めようとしないが。

107 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 03:26:46.59 ID:7yS+G7Mr0
その勝負は、結局カズマが勝った。

御琴が牽制に放った砂鉄の鞭の攻撃に対し、防御より攻撃を優先することで裏をかいたのだ。
砂鉄の鞭は砂鉄を電磁力で操り高速振動させることで、金属板すらバターのように両断する。
御琴は、突進してくるカズマはそれをかわさざるを得ないだろうと考え、体勢を崩したところを二の矢で仕留めるつもりだった。

カズマは敢えて防御無しでそれを受けた。結果彼はアルター化していた右腕を斬り飛ばされたが、突進の勢いは死ななかった。
カズマはそのまま御琴に突っ込みながら、アルターを再発現、斬り飛ばされた右腕と砂鉄の鞭を分解して、繋がった状態の右腕に再々構成、拳を叩き込んだ。

御琴はかろうじて砂鉄を操ってガードし、直撃は免れたが、それでも今度は彼女の方が病院送りになった。


その後カズマは激怒した黒子に、半日ほどコンクリート壁に埋め込まれた。

109 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 03:32:30.78 ID:7yS+G7Mr0
―――
――

―後日、御琴の入院する病院―

黒子「おっ姉っ様ー!!黒子がお見舞いに参りましたわー!!」

御琴「あ、黒子ー。いらっしゃーい」

今日も御琴の加減は良さそうだった。
大事を取って入院しているが、実際大怪我ではあるのだが、主なものは骨折であるので、ギプスさえきちんとすればすぐに退院できるとのことだった。

しかしそれより重大な問題が、病室に発生していた。

カズマ「よう」

黒子「…なぜあなたがここにいるんですの?」

カズマ「見舞いにきちゃいけねーか?ま、俺の方はもういい、じゃーな御琴」

御琴「またね」
110 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 03:36:14.49 ID:7yS+G7Mr0
黒子「ずいぶん、彼と気安げにお話になるんですのね」

御琴「うん?まーね。馬鹿だけど、いい奴よ」

黒子(知っていますわ、お姉様よりずっと。決闘以外の場面では、わたくしの方がずっと多く一緒に過ごして…)

黒子(今わたくしは、どっちに嫉妬しているんですの?お姉様と仲良くなりつつあるカズマに?それとも…カズマと仲良くなりつつあるお姉様に?)

御琴「それにほら、私が、ある程度本気で考えないと勝てない、そんな相手で、かつ気安く喧嘩の相手をしてくれるのって、あいつくらいだし」

黒子「『喧嘩』なんて…そんな低俗な単語、お姉様には相応しくありませんわ」

御琴「そうかしら。でも確かに、あいつのがうつったのかも」

へへへ、と御琴は恥ずかしそうに笑う。
黒子は思わず目を逸らした。この笑顔を見るのが、何故か、辛い。

113 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 03:41:00.30 ID:7yS+G7Mr0
黒子「けれど…信じられませんわ。確かに彼の能力は強力ですが、あくまでLV4相当の力のはず。LV5のお姉様と、どうしてこうまで互角なのでしょう?」

御琴「能力の質とか、才能の問題だと思うな」

黒子「才能なら、お姉様が負けているわけがありませんわ」

御琴「なら、戦う本能の強さ、と言い換えてもいいかもね。アルター能力がどうして発現するか知ってる?」

黒子「この世ならざる物理法則の支配する別の宇宙、通称『向こう側』の力、でしたっけ?」
黒子「この世で唯一、偶然にその『向こう側』との一時的に接続が生じたのが、二十数年前、連経済特区での、再隆起現象」

御琴「そう。以降、そこで生まれる子供達の一部は、先天的・無意識的に『向こう側』とアクセスする方法を知っている。それがアルター能力者」
御琴「だからアルター能力は、本人の意思の力・特性がものすごく強く作用する。カズマのあれは『立ち塞がるものを打ち砕く』という意思の発現」

黒子「戦うため、それだけのために生み出された能力、というわけですのね」

御琴「要するに、私はあいつほど喧嘩馬鹿にはなれないってこと」クスクス

黒子「ふふふ、それは仕方ありませんわね」

115 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 03:50:31.81 ID:7yS+G7Mr0
黒子「けど、いつまで続けるおつもりですの?今のところこの程度の怪我ですんでますけども、いえ、この程度、というには重過ぎますわ。次はどうなってしまうか」

御琴「大丈夫よ、あいつも私も手加減してるし」

黒子「そうなのですの?」

御琴「ええ、『当たり所が悪ければ死ぬかも』くらいの攻撃はしてるけど、『殺す』ってつもりで撃ってないもの」

黒子「それは手加減と言うのですの…?」

御琴「あっちもそうよ。っていうか、あっちはもっと露骨に手加減してるっぽい」

黒子「と言いますと?」

御琴「あのアルター、完全な形じゃないんだって」

黒子「お姉様相手に…ですの?」

御琴「第二段階のアルターは、体にかかる負担も威力も大きすぎるからって、さっき教えてくれたの。でも、次は見せてくれるってさ」


御琴「こっちに来て見せるのは、私が初めてだって」
御琴、またはにかむように笑う。

黒子「…」
胸が痛い。ひどく痛い。

119 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 03:55:24.88 ID:7yS+G7Mr0
―――
――



カズマと御琴に、共有する秘密が出来る。
今までそんなものは無かったのに。

自分だけが知っていて、御琴は知らないカズマの顔、秘密、性格、そういったものがたくさんある。
三白眼は笑うと意外なほど人懐こく見えること。意外と甘いものが好きなこと。算数が嫌いなこと。社会のルールは破っても、自分の中のルールは意地でも曲げないこと。

当然だ。
ジャッジメントとして、あるいは友人として、学園都市でカズマと一番多く時間を共有してきたのは、間違いなく自分、白井黒子なのだから。

それなのにもうすぐ、カズマは御琴にだけ、彼のアルターの本当の姿を見せる。






そんなの、嫌だ。

120 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 03:59:47.96 ID:7yS+G7Mr0
―――
――


―二週間後、夕刻、決闘三回目―

今回、黒子は都合が悪いといって立会人を辞退した。
いい加減目立つので、街外れの建設途中で計画が廃棄された未整備地区に場所を変更した。
ここなら滅多に人は通らない。

はずだったのだが。

御琴「いくらなんでもアンチスキル来るのが早過ぎない?」

カズマ「ちっくしょーまだ始めてもいねえっつーのによー」

二人が待ち合わせ場所に到着し、いざ始めんとしたところに、アンチスキルの声がしたのだ。
「アンチスキルだ!お前達を能力無断行使、及び決闘未遂により、拘束する!」

ぼやきながらも二人は駆ける。幸いまだ包囲は完成していないようだ。
顔は見られていないから、このまま脱出できればお咎め無しで済む。

と、御琴、行く手に小柄な人影を見る。こちらに気付いていない。あれは…

121 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 04:05:05.31 ID:7yS+G7Mr0
御琴「黒子?」

カズマ「ああん?」

コンテナの陰から様子をうかがっていた黒子、背後からの声にぎくりと動きを止める。

御琴「…あんた、なんでこんなところに」

黒子「あ…え…」

御琴「…!まさか、あんたが通報したの?」

カズマ「そうなのか?」

黒子「!!」
何も言わずにテレポート。

カズマ「あ、おい!」

御琴「どうしたのかしら、あの子…」

カズマ「…」

「居たぞー!まてーい」

御琴「やっば、逃げなきゃ!」

122 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 04:08:44.54 ID:7yS+G7Mr0
―――
――


―一時間後、初春の部屋―

部屋の主は困ったように、彼女のベッドをうつぶせに占領する同僚を見ていた。

初春「白井さーん、いったいどうしちゃったんです、こんな時間に」

黒子「初春…何も言わずに、しばらくここに置かせて欲しいですの…」

初春は、同僚のいつもからは考えられないほど弱々しい声に内心驚く。

初春「そ、それは構いませんけど…。せめて御坂さんに連絡を、」

黒子「やめて!」

初春「え?」

黒子「お姉様には…お姉様とカズマには、私がここにいるってことは秘密にしておいて欲しいんですの」

初春「白井さん…」

124 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 04:11:21.36 ID:7yS+G7Mr0
初春がさらに何か問おうとしたとき、二つの携帯着信音が同時に部屋に響いた。
黒子の、そして初春の携帯が同時に鳴り出したのだ。

黒子は、もしや御琴かカズマからではないかと、携帯を取り出すのを一瞬躊躇する。
初春は即時に確認、ジャッジメント本部からの連絡である事を知る。

初春「はい、初春です…はい…了解しました」カチ

初春「白井さん、XX地区の廃墟で、大規模な抗争です。私はバックアップに向かいますが…白井さんはどうしますか」

黒子「…、行きますわ。当然。」
ここで役目からも逃げては、もうきっと立ち直れない。
立ち向かわなければ、自分の弱さに。

125 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 04:16:33.02 ID:7yS+G7Mr0
―――
――

―深夜、事件現場付近のビル屋上―

まだカズマは来ていない。御琴も。
御琴は一般人、本来いてはいけない人間なのだから、当然ではあったが。
しかし、いずれはどちらもここにやってくるに違いない。

こういったことを、知っていて放置できる人間じゃないのだ、どちらも。
そう黒子は知っていた。

愛すべき人間性、ある意味で、バカっぽさ。
そんな彼らを裏切ったのだ、自分は。

初春『現場にいる能力者は、恐らく20人以上、無能力者を含めると50人近くによる抗争です…。少なくとも2人の大能力者(LV4)がいます』
初春『外から能力が観測されていないと言うだけで、恐らく廃ビルの中にはもっとたくさん高位能力者がいると思われます。アンチスキルも突入しあぐねているようです』

初春『危険ですから、くれぐれも慎重に行動してくださいね。増援を待って…白井さん!?』

黒子「待っていられませんわ」ヒュ
黒子(どんな顔をして増援でやってくるであろうお姉様や…カズマに会えというんですの…)

半ば自棄気味に、黒子は廃ビル内にテレポート、突入する。

127 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 04:19:15.30 ID:7yS+G7Mr0
廃ビルの中では、各階の要所を4つのグループが占拠し、様々な思惑から動かず、動けず、膠着状態になっていた。

黒子が突入したのは、最上階窓の側の、人がいないと思しき部屋の中。
確かにそこには誰もいなかったが、すぐ隣の廊下にいた感知系能力者が、テレポートによるAIM力場異常を探知し、黒子の存在は知られてしまった。

「突入してきたぞ!」

それからは蜂の巣をつついたような騒ぎになった。

黒子は投降を呼びかける暇も無く戦った。
サイコキネシスに頭を割られそうになり、クレボヤンスにカズマの幻影を見せられ、無能力者に殴られて、なお戦った。

しかし、ついに一人の大男に組み敷かれて、動けなくなってしまう。

128 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 04:23:40.08 ID:7yS+G7Mr0
大男が酒くさい口を近づけて告げる
「俺はLV2のテレポーターさ。ま、あんたからしたらゴミみたいな能力だな。」
「だが、同じテレポーターが相手なら、こうやって触れて押さえつけちまえば、能力を封じられるんだ」

「よくやった!」 「捕まえたぞ」 「女?」 「ジャッジメントめ」

野卑な声が上がる。
黒子は渾身の力でもがくが、相手は大男でどうにもならない。口元を片手で押さえられ、声すら出せない。

黒子「ふー!んー!」

「ぶっ殺しちまえ!」

周囲の一人がわめく

「まぁ待てよ、よく見りゃ、結構な上玉だぜ?」

「ガキじゃねぇか、変態め」

「構うもんか、穴はある」

129 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 04:26:01.14 ID:7yS+G7Mr0
「見ろよこの下着、やらしーぞ」

黒子「んー!んんー!!」

黒子の顔が青ざめる。のしかかられている為本人からは死角になっているが、
暴れた拍子に短いスカートがはだけ、下着が露になっているのだ。下腹部と腿が夜の冷気に曝されている感覚。

黒子(布の擦れる感覚で、テレポートの位置演算を邪魔されないように、あえての選択ですの)
黒子(百歩譲って見られるのを許すとしても、相手はお姉様だけですわ!)

自分はこのままこいつらにいいようにされてしまうのか。
それを許容しろというのか、それほど自分は無力なのか。

黒子(冗、談、じゃ、ありませんわ)

怒りを込めて、無理やり口を開き、口を押さえる手に噛み付いた。

「いってぇ!この、ガキ!」

大男は思わず手を離し、その手で黒子の頬を張る。

131 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 04:28:44.19 ID:7yS+G7Mr0
しかしできる抵抗もそれで打ち止めだった。もう、何もできない。
黒子、悔しさのあまり涙が溢れる。

黒子(お姉様…不本意でございますが、黒子はこれまでのようです。申し訳ございません…)

黒子(…あなたとも、あんな形で別れたくなかった)
黒子「カズマ…!」


しかし次の瞬間、廃ビルの壁がミサイルの直撃を受けたかのように吹き飛んだ。
黒子を取り囲んでいた男達が巻き添えを食って投げ出される。
崩れた壁の向こうに、虹色の燐光。

黒子「…カズマ?」



カズマ「あいよ」

133 :もう残り少ないし連投しよう規制喰らったらもしもしつかうし[]:2009/11/23(月) 04:30:50.97 ID:7yS+G7Mr0
全く無造作に、カズマは横たわる黒子に歩み寄ると、黒子にのしかかったまま呆然としている大男を蹴り飛ばした。
大男は轢かれたヒキガエルのような声を出す。

カズマ「あーあー、派手にやられたな」
返事を聞く前に黒子を抱え上げる。左腕一本で丸太でも抱えるように。

黒子「えと、あの、助けてくれるならせめて両手でぇぇぇぇぇ!!」

黒子が言い終わる前に、カズマは右腕を床に打ちつけ反動で跳躍、黒子は舌を噛みそうになる。

数件離れた廃建築物の屋上に、飛び立ったときのように床を破壊しながら着地。
衝撃でまた舌を噛みそうになった黒子を下ろす。

黒子「…他人の能力で移動させられるって、結構怖いものですのね、次から気をつけますわ、うぷ…」

カズマは、改めて黒子の様子を見る。口から出る言葉は軽妙だが、服も手足も傷だらけ、顔には痣、涙の痕まで。
カズマ、無言で黒子に背を向け、再び廃ビルに向き直る。


カズマ「黒子、ここで待ってろ」

黒子は、その静かな声に込められた巨大な怒りを感じ取った。声をかけられない。

135 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 04:31:56.29 ID:7yS+G7Mr0
アルター化した右腕を身体の真横、水平に伸ばす。

カズマ「あいつらもお前も運がいい、コイツを見せんのは、こっちじゃ初めてだ」

黒子「え?」


破裂音、周囲の廃材が爆ぜ、虹色の粒子となってカズマに、水平に伸ばした右腕に集まってゆく。
カズマのアルターが、形を変える。

顔の右半分を覆うように金色の装甲が現れ、肩のユニットがより無骨に大きく。
腕部に大きな違いは無いが、拳を覆う赤銅色の手甲には掌よりやや大きめの、円盤状のユニットが追加されている。
そして背中にあった3枚の羽根は、融合して金色の一枚羽の風車に。

黒子「…」
雄々しさ、猛々しさ、圧倒的なエネルギー。黒子は息を呑む。

137 :早速さる食らった[]:2009/11/23(月) 04:39:06.40 ID:Cj6WLjxPO
カズマが拳を握る、人差し指から順に小指までを掌に折りこみ、最後に親指で締める。
皮ひもを絞るような音を立てて、握りこむ。拳の円盤状のユニットが開放され、光が渦を巻く。

カズマ「シェルブリット・バースト…!」

カズマの身体から、金色の光があふれ出す。

次いで背中の風車が回転を始める、それはどんどん加速し、風切音が高くなる。
やがて身体が浮かび上がる、ヘリコプターのように、しかしもっと爆発的な加速。

地面を毛嫌いする生き物のように身震いし、怒りを大地に叩きつけるように上昇、

空中の一点から、今度はまっすぐに廃ビルに向かって飛び込んでゆく、黄金の尾を引いて。

矢のように?いや。黒子は思う。
矢のようなスマートなイメージではない。もっと無骨で力強く、そう、まるで隕石だ。
金色の流れ星。

141 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/23(月) 04:42:43.86 ID:Cj6WLjxPO
着弾。

これまでとは比較にならない、音波を肌で感知できるほどの衝撃音と、大火事でも起きているかのような土ぼこり。
それがはれたとき、もうそこにビルは建っていなかった。

142 :>>140 43kbくらい[]:2009/11/23(月) 04:45:01.97 ID:Cj6WLjxPO
カズマ「終わったぜ。…傷、痛むか?」

戻ってきたカズマが、黒子の隣に腰を下ろしながら言った。

黒子「聞くならさっき聞くべきだったと思いますの」

カズマ「憎まれ口叩けるなら、大丈夫だな」


黒子「その…ありがとう。おかげで助かりましたわ」

カズマ「しおらしいじゃねぇか」

黒子「それと…」

カズマ「ん?」

黒子「決闘、邪魔してごめんなさい…」

144 :あと2[]:2009/11/23(月) 04:48:13.34 ID:Cj6WLjxPO
カズマ「…別に、喧嘩に横槍が入るなんざ、よくあることさ」

黒子「…」

黒子は、カズマの言葉にホッとすると同時に、じわりと怒りがこみ上げてくるのを感じる。

すなわち、コイツ、理由を訊かないで済ませる気だ、と。
気づいているのに、知らないで済ませるつもりだ。

理不尽だとは分かっている。自分が隠そうとして逃げ出したんだから、彼のそういう行いは、むしろ気遣いだろう。

どちらかと言えば、間違いなく自分が悪い。
それでも、これでは収まらない。

145 :あと1[]:2009/11/23(月) 04:52:22.82 ID:Cj6WLjxPO
黒子はカズマの横に、彼に背を向けて座り込む。

そのまま肩からしなだれかかってやる。丁度彼の胸に頭を乗せて見上げれば彼の顔が見えるように。
そして彼の胸元に、顔をこすり付ける。甘えるように。

カズマ「お、おい」

困ってる困ってる。黒子は怒りが消え、代わりに嬉しさがこみ上げてくるのを感じる。

黒子(きっとお姉様は、戦いの中で、わたくしの知らないカズマを見つけていくのでしょう)

147 :ラスト[]:2009/11/23(月) 04:53:37.31 ID:Cj6WLjxPO



黒子(でも、こんな困った顔をさせられるのは、きっと、わたくしだけ)



―了―

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面白いな。関係が小さくまとまっているから読みやすい

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